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インターネット株式掲示板の投稿内容を用いた ファクターモデルの検討

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インターネット株式掲示板の投稿内容を用いた ファクターモデルの検討
人工知能学会研究会資料
SIG-FIN-003-01
インターネット株式掲示板の投稿内容を用いた
ファクターモデルの検討
Development of Factor Model based on Stock BBS Posting
阿部有希 1
梅原英一 2 諏訪博彦 1
太田敏澄 1
Yuki Abe1, Eiichi Umehara2, Hirohiko Suwa1 and Toshizumi Ohta1
1
1
電気通信大学
University of Electro-Communications
2
野村総合研究所
2
Nomura Research Institute
Abstract: We investigate whether the number and content of postings of the posting of BBS become the
explanatory variables of the stocks return. In previous work, the possibility that these factors are related to
the stocks return and risk is suggested. We verify whether CAPM approve a portfolio by the number and
contents of postings in TSE. We find the possibility CAPM is not approved in a portfolio with the highest
number of postings and the fewest number of postings as well as the highest number of bullish postings
and the highest number of bear postings. We argue an index of the difference of the return of a portfolio
with the highest number of postings and the return of a portfolio with the fewest number of postings as
well as the posting contents.
1
そ の た め 、 2節 に お い て 先 行 研 究 を 概 観 し 、
はじめに
そ れ ら を 踏 ま え 、 3節 に お い て 仮 説 を 設 定 す る 。
仮 説 検 証 の た め の 分 析 方 法 を 4節 に お い て 説 明
C GM ( C o n s u m e r G e n e r a t e d M e d i a ) の 増 加 が 報
告されている。その一つであるインターネット
し 、 そ の 結 果 と 考 察 を 5節 に お い て 述 べ る 。 最
株式掲示板(以下、株式掲示板)は、他の投資
後 に 、 6節 に お い て 結 論 と 今 後 の 展 開 を 述 べ る 。
家の生の声を直接知ることができるツールで
ある。そのため株式掲示板と株式市場との関連
性 に 注 目 が 集 ま っ て お り 、 例 え ば An t we i l e r &
2
先行研究
F r a n k は 、メ ッ セ ー ジ の 投 稿 が 株 式 指 標 と 関 連 し
ファクターモデルとは、各銘柄・ポートフォリ
て い る こ と [ 1] 、株 式 掲 示 板 の 投 稿 量 が リ タ ー ン
オのリターンをいくつかのファクターを用い
と関連しており、掲示板活動が標準的なファク
て説明するモデルである。これを用いることで、
ターモデルには組み込まれていない要因を反
映 す る こ と を 報 告 し て い る [ 2] 。し か し 、ア セ ッ
投資家は、株式投資の意思決定支援を受ける事
が 出 来 る 。 代 表 的 な モ デ ル と し て Sharp[4] ら に
トプライシングモデルに株式掲示板の投稿を
より提唱された市場感応度をファクターとし
た 資 本 資 産 価 格 モ デ ル ( C AP M ) や F a m a &
ファクターとして加えた研究は、米国市場にお
い て 投 稿 数 を フ ァ ク タ ー と し た An t w e i l e r &
French[3] の 3フ ァ ク タ ー モ デ ル 等 が あ る 。 Fama
F r a n k[ 2 ] し か 見 当 た ら な い 。
& F r e n c h は 、C AM P の マ ー ケ ッ ト フ ァ ク タ ー に 、
本研究では日本市場において株式掲示板を
SMB フ ァ ク タ ー と HML フ ァ ク タ ー の 2 種 類 の
利用した新たなファクターモデルを構築し、株
ファクターを追加した3ファクターモデルを
式掲示板の投稿数および投稿内容が株式リタ
構築し、その有効性を回帰モデルにより検証し
ーンの説明変数になるかを明らかにする。
ている。
1
丸 山 ら [ 5] は 、 日 本 の Ya h o o ! フ ァ イ ナ ン ス 掲
ま た 丸 山 ら [ 5] よ り 、投 稿 数 が ボ ラ テ ィ リ テ ィ
示 板 の 投 稿 数 To p 5 0( 2 0 05 - 2 0 0 6 年 )の 企 業 を 対
と関係している事が示唆されている。投稿数が
象に掲示板指標と株式指標の関係を実証的に
多いほど、ボラティリティは高くなるならば、
検証している。彼らは、掲示板より取得した投
投 稿 数 の 違 い に よ り CAMPの 市 場 感 応 度 (β)が 変
稿 デ ー タ を 、自 然 言 語 処 理( 形 態 素 解 析( M e c a b )、
ノイズ除去(数字・英字・記号の除去、品詞の
化する。そして、これらが確認されたファクタ
ー を 加 え た フ ァ ク タ ー モ デ ル は C AP M の マ ー ケ
制 限 、否 定 語 の 処 理 )、T F・ I D F 法 )と 機 械 学 習
ットファクターと同等に働くと考えられる。こ
( S u p p o r t Ve c t o r R e g r e s s i o n ( 以 下 S V R ) ) を 用 い
れらに基づき以下の仮説を設定する。
仮 説 1: 投 稿 数 が 大 き な ポ ー ト フ ォ リ オ は ジ
て 、 メ ッ セ ー ジ を 「 弱 気 」「 中 立 」「 強 気 」 の 三
種類に分類している。その結果、第一に掲示板
ェ ン セ ン の αの 値 が 0か ら 正 に 乖 離 し 、
の投稿数だけでは株式リターンを予測する事
投稿数が小さなポートフォリオは0
は難しいが、投稿内容分析を考慮して考えると、
から負に乖離する。
仮 説 2: 投 稿 数 が 大 き な ポ ー ト フ ォ リ オ は βの
値 が 1か ら 正 に 乖 離 し 、 投 稿 数 が 小 さ
弱気投稿数が多いと翌日の株式リターンがマ
イナスとなる傾向があること、第二に投稿数が
な ポ ー ト フ ォ リ オ は 1か ら 負 に 乖 離
ボラティリティ・出来高と関連していること、
第三に強気投稿数と弱気投稿数の差により作
する。
成した掲示板指標「強気比率」が株式リターン
仮 説 3 : 投 稿 数 フ ァ ク タ ー N M Q は C AP M に 加
やボラティリティ、出来高と関連している可能
えると、全てのポートフォリオにお
性があることを報告している。
い て ジ ェ ン セ ン の α は 、0 か ら 乖 離 し
An t i w e i l e r & F r a n k[ 2 ] は 、米 国 の Ya h o o !掲 示 板
ない。
を 1 9 9 9 年 か ら 20 0 1 年 の 期 間 で 、 上 場 米 国 企 業
の 3 5 00 万 以 上 の 投 稿 を 分 析 し 、 仮 の も の で あ
3.2 投稿内容に関する仮説
る と い う 注 釈 の も と 、C A P M や F a m a & F r e n c h [ 3 ]
のモデルに、新しいファクターとして掲示板投
丸 山 ら [ 5] に よ り 、投 稿 内 容 と 株 式 リ タ ー ン の
稿 数 フ ァ ク タ ー N M Q を 加 え た 所 、投 稿 数 は 株 式
関連性が示唆されている。そのため強気指数に
よ り 投 稿 内 容 フ ァ ク タ ー B M B を 作 成 し 、 C AP M
リターンに影響を与えている可能性を報告し
ている。
にそれを加えることで投稿内容が株式リター
ン の 説 明 変 数 に な る か 検 証 を 行 う 。 そ こ で 3.1
本研究では、これらの先行研究を踏まえ、次
節で設定する仮説に基づき、検証を行う。
3
節と同様に、以下の仮説を設定する。
仮 説 4: 強 気 指 数 が 大 き な ポ ー ト フ ォ リ オ は
ジ ェ ン セ ン の αの 値 が 0か ら 正 に 乖 離
仮説設定
し、強気指数が小さなポートフォリ
オ は 0か ら 負 に 乖 離 す る 。
3.1 投稿数に関する仮説
て 、 日 本 の Y a h o o !株 式 掲 示 板 に お け る 投 稿 数 フ
仮 説 5: 強 気 指 数 が 大 き な ポ ー ト フ ォ リ オ は β
の 値 が 1か ら 正 に 乖 離 し 、 強 気 指 数 が
ァ ク タ ー N M Q を 作 成 す る 。 そ れ を C AP M に 加 え
小 さ な ポ ー ト フ ォ リ オ は 1か ら 負 に
本 研 究 で は 、 An t w e i l e r & F r a n k の 手 法 を 用 い
乖離する。
ることで投稿数が株式リターンの説明変数に
な る か 検 証 を 行 う 。 投 稿 数 フ ァ ク タ ー NMQは 、
仮 説 6 : 投 稿 内 容 フ ァ ク タ ー B M B は C AP M に
東 証 1 部 の 企 業 を 投 稿 数 に よ り 単 純 5分 割 し 、
加えると、全てのポートフォリオに
ポートフォリオを作成する。このポートフォリ
オ が C AM P の マ ー ケ ッ ト フ ァ ク タ ー に 対 し て ア
お い て ジ ェ ン セ ン の α は 、0 か ら 乖 離
しない。
ブノーマルリターンを持つならば、y切片が0
か ら 乖 離 ( ジ ェ ン セ ン の α) す る 。 ま た 、 株 式
4
掲示板の投稿がそれ自身ファクターのとして
働くならば、投稿数の大きなポートフォリオか
分析方法
本節では、前節にて示した仮説を検証するた
め に , 「 Y a h o o !株 式 掲 示 板 」 を 対 象 に 分 析 を 行
ら小さなポートフォリオになるにつれてジェ
ン セ ン の αに お け る 単 調 パ タ ー ン を 観 測 す る こ
う.
とが出来ることとなる。
2
4.1 分析対象
4.3 投稿数ポートフォリオ
4.3.1 投稿数ポートフォリオの作成
本 研 究 の 分 析 対 象 企 業 は 、 Y a h o o !株 式 掲 示 板
仮 説 1・ 仮 説 2・ 仮 説 3を 検 証 す る た め 、 投 稿
における東証一部上場銘柄のうち取得可能で
あ っ た 1360 社 で あ る 。 分 析 対 象 期 間 は 、
数によるポートフォリオの作成を行う。まず、
2 0 0 3 / 0 1 / 0 1 か ら 2 0 0 8 / 1 2 / 31 ま で の 6 年 間 で あ る 。
投稿の全くない企業をポートフォリオXとし
図 1 は 、 20 0 5 年 1 月 の 掲 示 板 の ラ ン ク に 対 す
て分類した。その後各月でその月の投稿数に従
い 、 残 り の 対 象 銘 柄 を 5分 割 す る 。 ポ ー ト フ ォ
る投稿数(対数スケール)をプロットしたもの
で あ る 。 1番 目 の 企 業 は 最 大 の 投 稿 数 を 持 ち 、 2
リオAはその月でもっとも投稿数の多い企業
番 目 の 企 業 は 2番 目 に 大 き な 投 稿 数 を 持 つ 。 こ
群で、ポートフォリオEは最も投稿の尐ない企
の結果から、非常にアクティブな掲示板とそう
業群である。ポートフォリオA~Eに分類され
た 企 業 は 月 平 均 約 1 9 3 社 、ポ ー ト フ ォ リ オ X に 分
ではない掲示板があることが分かる。中央値は
180社 目 で あ る 。 こ の 事 か ら 掲 示 板 投 稿 と 株 式
類 さ れ た 企 業 は 月 平 均 約 422社 で あ る 。
市場の関係は投稿数の多い企業と尐ない企業
では分けて考えられる事が見受けられる。この
4.3.2 投稿数ポートフォリオのリターン
結果、ポートフォリオの作成を投稿数の多い銘
柄 、 尐 な い 銘 柄 で 単 純 に 5分 割 し て も 、 投 稿 数
ポートフォリオ別の月別超過リターンの推
移 を 図 2に 示 す 。 ポ ー ト フ ォ リ オ A の 平 均 超 過
という特徴を捉えたポートフォリオを作るこ
リターンは最も高く、ポートフォリオEの超過
とが出来る。
リターンが最も低い。投稿の多い企業ほど超過
リターンが高い結果になっていることは、投稿
数が超過リターンと関連している可能性を示
唆 し て い る 。 ま た 、 ポ ー ト フ ォ リ オ A と TO P I X
4.5
2005年1月の投稿数
4
3.5
の軌跡に注目すると、ポートフォリオAは、ほ
3
ぼ全期間においてリターンが最も高いポート
フ ォ リ オ で あ っ た 。 た だ し 、 TO P I X が 急 激 に 低
2.5
2
1.5
下した時、ポートフォリオAのリターンは急激
に 低 下 し た 。 こ れ は ポ ー ト フ ォ リ オ A が C AP M
1
0.5
の 意 味 で 非 常 に リ ス キ ー な 高 βで あ る 事 を 示 唆
0
1
122 243 364 485 606 727 848 969 1090 1211 1332
している。このことから、投稿数が株式リスク
投稿数による企業順位
と関連している可能性が考えられる。
図 1 企業順位による投稿数のグラフ
4.2 株式指標
分析対象の株式指標は「超過株価リターン
( AR ( t ) ) 」に よ り 表 す 。株 式 指 標 は 東 洋 経 済 の「 株
価 CD-EOM2009」 を 使 う 。 資 本 移 動 や 額 面 変 更
があった場合、株価は調整係数で調整し、連続
性を保障する。
月 次 ベ ー ス の 株 価 リ タ ー ン R(t)は 、 R(t)=終 値
( t ) / 終 値 ( t - 1 ) - 1 と す る 。 超 過 リ タ ー ン AR ( t ) は 、
R(t) よ り 東 証 株 価 指 数 (TOPIX) の 月 次 リ タ ー ン
図 2 投稿数ポートフォリオ別月別リターンの推移
を差し引く事により算出する。後述のポートフ
ォリオのリターンは、各ポートフォリオに分類
されている銘柄のリターンの平均として定義
4.4 投稿内容ポートフォリオ
する。
4.4.1 強気・弱気分類
丸 山 ら [ 5] の プ ロ グ ラ ム を 用 い て 対 象 期 間 の
全銘柄の投稿メッセージを強気・中立・弱気に
3
移 を 図 4 に 示 す 。 ポ ー ト フ ォ リ オ 1の 超 過 リ タ ー
ン が 最 も 高 く 、 ポ ー ト フ ォ リ オ 5の 超 過 リ タ ー
分類した。その結果、強気に分類される投稿が
多いことが確認されている。
ンが最も低い。強気指数の高い企業ほど超過リ
強 気 指 数 と は 、月 毎 に お け る 強 気 / 弱 気 意 見 の
多寡を示す掲示板指標であり、①式で定義する。
 1  強気投稿数(t ) 

強気指数(t )  ln
 1  弱気投稿数(t ) 
ターンが高い結果になっていることは、強気指
数が超過リターンと関連している可能性を示
唆 し て い る 。 ま た 、 ポ ー ト フ ォ リ オ 1 と TO P I X
・・・①
の 軌 跡 に 注 目 す る と 、 ポ ー ト フ ォ リ オ 1は 、 投
稿数のポートフォリオAと同様に、ほぼ全期間
図 3に 、 強 気 指 数 の 高 低 に よ る 企 業 順 位 毎 の
においてリターンが最も高いポートフォリオ
で あ っ た 。た だ し 、TO P I X が 急 激 に 低 下 し た 時 、
強 気 指 数 の グ ラ フ を 示 す 。 1番 目 の 企 業 は 最 大
の 強 気 指 数 を 持 ち 、 2番 目 の 企 業 は 2番 目 に 大 き
ポ ー ト フ ォ リ オ 1の リ タ ー ン は 急 激 に 低 下 し た 。
な強気指数の値を持つ。結果として投稿数と同
こ れ は ポ ー ト フ ォ リ オ 1 が C AP M の 意 味 で 非 常
様に、強気指数が非常に高い値の掲示板と、低
に リ ス キ ー な 高 βで あ る 事 を 示 唆 し て い る 。 こ
い掲示板がある。この事から掲示板投稿と株式
のことから、投稿内容が株式リスクと関連して
市場の関係は強気指数の高い企業と小さい企
いる可能性がある。
業では分けて考えられる事が見受けられる。
図 4 投稿内容ポートフォリオ別月別超過リターン
図 3 企業順位における強気指数
4.4.2 投稿内容ポートフォリオの作成
4.5 ポートフォリオのアブノーマルリター
ンの算出
仮 説 4、 仮 説 5、 仮 説 6を 検 証 す る た め 、 強 気
指数によるポートフォリオの作成を行う。丸山
ら [5]は 強 気 指 数 を 定 義 す る 際 、 銘 柄 ご と に 8時
TO P I X を ベ ン チ マ ー ク と し た C AM P を 、 4 .4
間の時間の区切りで強気投稿数と弱気投稿数
の 和 が 合 計 3未 満 の も の を 分 析 か ら 除 外 し た が 、
節 、 4.5 節 で 示 し た 投 稿 数 お よ び 投 稿 内 容 ポ ー
本 研 究 で は 1月 単 位 で 強 気 ・ 弱 気 投 稿 数 の 和 が 3
ォリオ別のジェンセンの α の導出を行う。ここ
未満のものは強気指数を判断できないと考え
ポ ー ト フ ォ リ オ Xと し て 分 類 す る 。 そ の 後 各 月
する。
で 強 気 指 数 に 従 い 、 残 り の 対 象 銘 柄 を 5分 割 す
ri  r f  i (rM - rf )  i
トフォリオに対して適用する事で、各ポートフ
で C AP M を 利 用 し た 回 帰 モ デ ル は 、② 式 で 定 義
る 。 ポ ー ト フ ォ リ オ 1は そ の 月 で も っ と も 強 気
・・・②
r M は 市 場 の リ タ ー ン で あ り 、こ こ で は TO P I X
指 数 の 高 い 企 業 群 で 、 ポ ー ト フ ォ リ オ 5は 最 も
強気指数の低い企業群である。
の リ タ ー ン を 使 用 す る 。 ri は 投 稿 数 ポ ー ト フ ォ
ポ ー ト フ ォ リ オ 1~ 5に 分 類 さ れ た 企 業 は 月
平 均 約 1 2 9社 、ポ ー ト フ ォ リ オ X に 分 類 さ れ た 企
リ オ i の リ タ ー ン 、 rf は 無 リ ス ク リ タ ー ン で あ
り、今回は日本銀行発表の無担保コールレート
を 用 い る 。 ま た βi は ポ ー ト フ ォ リ オ i の 市 場 感
業 は 月 平 均 約 745社 で あ る 。 強 気 指 数 の 最 も 高
応 度 、 α i は ジ ェ ン セ ン の α と 呼 ば れ 、 C AP M の
い ポ ー ト フ ォ リ オ 1 は 強 気 指 数 が 平 均 3.41 で あ
アブノーマルリターンを表している。α の検定
る 。 逆 に 最 も 投 稿 の 尐 な い ポ ー ト フ ォ リ オ 5は
は、α が 0 から有意に乖離するという帰無仮説
平 均 1.03で あ る 。
のもと行う。同様にして β の検定は1から有意
に乖離するという帰無仮説のもと行う。
4.4.3 投稿内容ポートフォリオのリターン
ポートフォリオ別の月別超過リターンの推
4
4.6 掲示板ファクターモデルの構築
4.6 節 の 回 帰 モ デ ル で ア ブ ノ ー マ ル リ タ ー ン
が観察された場合、掲示板の投稿数および投稿
内容(強気指数)が株式リターンの説明変数に
な る 可 能 性 が 示 唆 さ れ る 。 Fama & French[3] の
手 法 を 用 い 、 掲 示 板 フ ァ ク タ ー NMQ と BMB を
作 成 す る 。 NMQ(Noise minus Quiet)は 投 稿 数 フ
図 5
投稿数ポートフォリオによる α
図 6
投稿数ポートフォリオによる β
ァクターであり、③式で定義する。
・・・③
BMB(Bull minus Bear)は 本 研 究 で オ リ ジ ナ ル
に作成する投稿内容ファクターであり、④式で
定義する。
・・・④
ジェンセンの α は投稿数が大きいポートフォ
リオ A および B において 0 から正に乖離してい
N M Q お よ び B M B を C AP M に 加 え た 掲 示 板 フ
ァクターモデルとしてそれぞれ⑤、⑥式で定義
る。この結果は、仮説 1 を一部支持している。
する。
また β について、投稿数が大きいポートフォリ
ri  r f βi (rM  r f )  ni NMQ
ri  r f βi (rM  r f )  bi BMB
オ A に お い て 1 か ら 正 に 乖 離 し 、投 稿 数 の 小 さ
・・・⑤
いポートフォリオ D および E において 1 から負
・・・⑥
に乖離している。この結果は、仮説 2 を支持し
ている。人々はリスクの高い銘柄に投稿してい
ここで、⑤、⑥式によりポートフォリオのリ
る可能性がある。
ターンが全て表現されるなら、⑤、⑥式を検証
するための回帰モデル⑦、⑧式の α は 0 から乖
以上の結果から、投稿数が株式リターンの説
明変数になる可能性が示唆されたため、仮説 3
離しないはずである。
ri  r f βi (rM  r f )  ni NMQ αi ・・・⑦
の 検 証 を 行 っ て い る 。 NM Q と C AP M の マ ー ケ
ri  r f βi (rM  r f )  ni NMQ αi ・・・⑧
あれば、⑦式の α は観測されないはずである。
ットファクターだけで市場が説明できるので
結果を表 2 に示す。掲示板投稿数ファクター
5
N M Q モ デ ル は 、各 ポ ー ト フ ォ リ オ に 対 し て ア ブ
分析結果と考察
ノーマルリターンが観測されていない。よって
仮 説 3 は 支 持 さ れ る 。 こ れ は An t w e i l e r
5.1 投稿数に関する結果と考察
が株式リターンの説明変数になる可能性を示
投 稿 数 ポ ー ト フ ォ リ オ の リ タ ー ン を C AM P に
す結果である。
基づき分析し、ジェンセンの α と β を求めた。
そ の 結 果 を 表 1 と 図 5、 図 6 に 表 す 。 こ こ で 全
表 2
社ポートフォリオとは、分析対象銘柄全てを含
んだポートフォリオである。
表 1
投稿数ポートフォリオ別 α と β
A
投稿数切片
β
p値(切片)
p値(β )
0.01217
1.266749
0.0049
0.013835
B
0.008205
1.073227
0.004865
0.304784
C
D
E
x
0.00565 0.002192 -0.01372 0.000588
0.937354 0.856014 0.75161 0.990579
0.052716 0.403596 1.03E-06 0.863332
0.388814 0.03288 0.000236 0.913077
&
F r a n k[ 2 ] の 結 果 を 支 持 し 、 日 本 に お い て 投 稿 数
全社
0.002692
1.006201
0.335209
0.929705
5
掲 示 板 投 稿 数 フ ァ ク タ ー NMQ モ デ ル
表 4
5.2 投稿内容に関する結果と考察
掲 示 板 投 稿 数 フ ァ ク タ ー BMB モ デ ル
5.1 節 と 同 様 の 手 法 を 用 い 、 投 稿 内 容 ( 強 気
指数)ポートフォリオの α と β を算出した。結
果 を 表 3 と 図 7、 図 8 に 示 す 。
表 3
投稿内容ポートフォリオ別 α と β
1
2
3
4
投稿内容切片 0.020491 0.010956 0.007534 0.003391
β
1.300571 1.167642 0.998574 0.931346
p値(切片)
6.5E-06 0.001177 0.015582 0.261649
p値(β )
0.005484 0.043023 0.985163 0.367467
5
-0.00961
0.896032
0.003886
0.202659
x
-0.00064
0.914312
0.82068
0.234944
全社
0.002692
1.006201
0.335209
0.929705
6.結論と今後の展開
本研究では投稿数および投稿内容が株式リ
ターンの説明変数になる可能性と、それに伴う
リ ス ク の 代 理 指 標 で あ る 市 場 感 応 度 ( β) に つ
いて検証している。その結果、株式掲示板の投
稿数および投稿内容が株式リターンの説明変
数になる可能性が示唆されたため、掲示板ファ
図 7
ク タ ー と し て NMQ と BMB を 用 い た フ ァ ク タ ー
投稿内容ポートフォリオの α
モデルの作成を行い検証している。結論として、
先 行 研 究 で 提 案 さ れ た 投 稿 数 フ ァ ク タ ー NMQ
モデルが支持されることを確認している。
本研究の問題として、各銘柄の規模が考慮で
きていないことがあげられる。このため、小型
株の影響を受けている可能性が否定できない。
今 後 、 Fama & French[3]の 3 フ ァ ク タ ー モ デ ル
への拡張することで、対応したいと考える。
図 8
投稿内容ポートフォリオの β
参考文献
ジェンセンの α は強気指数が大きいポートフ
[1]
ォ リ オ 1 お よ び 2、 3 に お い て 0 か ら 正 に 乖 離
Antweiler, W. and Frank, M. Z., “Is All That Talk Just
Noise? The Information Content of Internet Stock
し、強気指数の小さいポートフォリオ 5 におい
Message Boards,” Journal of Finance, Vol. 59, No. 3,
て 0 から負に乖離している。この結果は、仮説
pp.1259-1294, 2004.
4 を支持している。また β について、強気指数
[2]
が大きいポートフォリオ 1 において 1 から正に
Antweiler, W. and Frank, M. Z., “Internet Stock Message
Boards and Stock Returns”, University of British
乖離し、ポートフォリオ 5 において 1 から負に
Columbia
乖離している。この結果は、仮説 5 を支持して
Working
Paper,
2002.
http://strategy.sauder.ubc.ca/antweiler/public/returns.pdf
いる。人々はリスクの高い銘柄に強気な投稿を
(2009/05/25 現在)
している可能性がある。
[3]
以上の結果から、投稿内容が株式リターンの
Fama, E. F. and French, K. R. “Common risk factors in
the returns on stocks and bonds,” Journal of Financial
説明変数になる可能性が示唆されたため、仮説
Economics, 33, 3-56, 1993.
6 の 検 証 を 行 っ て い る 。BM B と C AP M の マ ー ケ
[4]
ットファクターだけで市場が説明できるので
Sharp, W. F. “Capital asset prices: A theory of market
equilibrium under conditions of risk,” Journal of Finance,
あれば、⑧式の α は観測されないはずである。
Vol.19
結果を表 4 に示す。掲示板投稿内容ファクター
[5]
B M B モ デ ル は 、ポ ー ト フ ォ リ オ 1 お よ び 5 に 対
No.3, pp.425-442.,1964.
丸山健,梅原英一,諏訪博彦,太田敏澄,”インター
ネット株式掲示板の投稿内容と株式市場の関係”,証
してアブノーマルリターンが観測されている。
券 ア ナ リ ス ト ジ ャ ー ナ ル , Vol.46
よって仮説 6 は棄却される。
pp.110-127,2008.
6
No.11 ・ 12
Fly UP