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地中冷却栽培技術
「地中冷却栽培技術」 東北農業研究センター 地域基盤研究部 土壌環境制御研究室 青木和彦 夏作ホウレンソウの問題 • 元々ホウレンソウは秋∼冬の野菜。 • 暑さに弱い。/高冷地で生産 • 雨の多い日本: 湿害・病害の危険 > 雨よけハウスで栽培 • 盛夏時高温・高日射 < 遮光が必要。 品質低下は避けられない (糖・ビタミン低下・硝酸増加) 1 地中冷却技術 • • • • • 「高温障害」を回避する技術 冷水で地温を下げる。 花卉栽培などですでに活用。増収効果も。 地温は作物体温と密接に関連。 >生育への影響が大きい。 品質向上技術への応用 • 寒締め(低温処理)で糖ビタミン増加 &硝酸シュウ酸減少/気温・地温と関連。 • 冬は外気低温 >夏には低温湧水? • 品質への影響は? 2 低温湧水=中山間地域の気象資源 • 湧水または井戸水をポンプで汲み上げる (電気代はそれだけ・高低差を使えば不要?) • 例:岩手県県北では10℃前後の冷水を 利用可能。 • 低温のため灌漑に不適な湧水>活用可。 ホウレンソウハウス近くの湧水 (岩手県山形村) 3 栽培試験の実際 • 通常の雨よけハウスでホウレンソウ・ コマツナを栽培。 冷却方法をどうするか? • 直接土壌に冷水注入>湿害(&病害)。 • パイプに冷水を通し間接的に冷却 • (ただし)地表に置けば、結露>湿害。 4 今回使用した方法 • 25cm深さに水道用パイプを埋設。 (硬質塩化ビニル管・VPW13) • 耕起時にも邪魔にならない深さ。 >そのまま連作も可能。 岩手県山形村の農家圃場ハウス (低温湧水使用) 東北農業研究センター(岩手県盛岡市) 圃場のハウス(冷水循環装置使用) 5 地中冷却区 と対照区を 同一ハウス 内で比較。 (東北農研内ハウスでの試験) 30 日平均地温(℃) 地中冷却による地温低下 60 6/23 深さ10cm地温 6/26 6/29 7/2 対照区 20 地中冷却区 10 6/14 30 30 -30 6/20 0 40 -20 6/17 6/17 6/20 6/23 6/26 6/29 7/2 50 0 -10 30 20 10 0 5/3 5/28 6/23 7/17 8/13 9/9 10/3 10/28 日平均地温(℃) 10 地中冷却区 10 6/14 日平均地温(℃) 70 20 日積算日射量(MJ) 日平均気温(℃) 30 対照区 0 • 実験的に10℃の冷却水を常時通水。 > 地表近くでは 冷却効果小。 深さ5cm地温 20 対照区 0 6/14 日平均地温(℃) ホウレンソウなど葉菜類は 深根性。 >効果は? 地中冷却区 10 30 試験期間中の気温・地温(2001年・盛岡) 深さ15cm地温 20 6/17 6/20 6/23 深さ20cm地温 6/26 6/29 7/2 対照区 20 地中冷却区 10 0 6/14 6/17 6/20 6/23 6/26 6/29 7/2 6 NO3 (mg/g dry wt.) 50 品質への影響 • 地中冷却で 硝酸含量低減 葉身 葉柄 40 30 20 10 0 地中冷却区 対照区 total ascorbate (mg/g dry 6.0 ビタミン ・シュウ酸 への影響は小 葉身 葉柄 5.0 4.0 3.0 2.0 1.0 0.0 地中冷却区 対照区 80 oxalate (mg/g dry 葉身 葉柄 60 40 20 0 地中冷却区 対照区 (盛岡、2001/7/2収穫) 農家ハウス(山形村)栽培試験でも同様の結果。 葉身 葉柄 120 90 葉身 180 60 葉柄 150 30 0 冷却ハウス 対照ハウス (2001/ 8/ 1 収穫) NO3(mg/g dry wt.) 120 90 60 30 0 冷水ハウス 対照ハウス (2001/ 9/ 3 収穫) 葉身 70 葉柄 60 NO3(mg/g dry wt.) NO3 (mg/g dry wt.) 150 盛夏(高温)時に は効果劣る。 50 40 30 20 10 0 冷水ハウス 対照ハウス (2001/10/15 収穫) 7 ホウレンソウだけでなくコマツナにも同じ効果。 1500 地中冷却区 対照区 1194 1105 950 1000 NO3 mg/100g 生重 909 743 コマツナはホウレンソウ に比べ葉身部の硝酸 含量高い。 607 500 443 364 0 葉身 葉柄 ホウレンソウ (2003.7.30収穫) 葉身 葉柄 コマツナ (2003.7.31収穫) 地中冷却 で低減。 ホウレンソウ品質成分等の比較 地中冷却区 対照区 地上部生体重(g/株) 24.8 27.5 水分含量(%) 92.8 93.3 葉色(SPAD) 43.5 40.5 葉柄糖度(Brix) 2.2 2.4 硝酸(mg/100g生重) 615 769 アスコルビン酸(同上) 46.8 41.0 シュウ酸(同上) 1530 1595 (2003.7.30収穫) 東北農研センター圃場:品種・晩抽銀河21 8 硝酸含量低下のメカニズムは? • 硝酸の増加=土壌からの吸収増大 • 葉菜類など野菜は生育に必要な量以上 の硝酸を吸収・蓄積する(ぜいたく吸収)。 • 地中冷却>地温低下で吸収抑制? • (今後も検討必要) 光合成 伸長 タンパク質・クロロフィルを生 成 (生命の維持) 消費 NO3減少 硝酸(NO3)の 形で蓄積 養分吸収 土壌中の窒素 低温 9 今後の課題 • 糖・ビタミン類の増加は可能か? • (一部ではビタミンC増加。さらに検討要。) • 寒冷紗等、遮光資材との併用効果検証 • 栽培現場での応用 これからの高品質栽培技術 • 低コスト :高価な資材等を使わない。 • 省力 :煩雑な管理が不要。 • 省エネルギー&低環境負荷。 • 安定的 :一定の収量・品質を確保。 「安全・安心、高栄養、良食味」 10 (そのためには) • 栽培地域の気候等、 環境条件を利活用する農業生産を。 • 科学的解析(気象・植物生理・土壌肥料・病理・昆虫学…) • 地域に適した品目/栽培技術を積極的に 適用。 • 冬の低温>寒締め、夏の冷水>地中冷却 (さらなるアイディア・可能性を。) 11