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Twinkle:Tokyo Women`s Medical University

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Twinkle:Tokyo Women`s Medical University
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臓器中の微量金属測定時における湿重量と乾重量の問題
点
中川, 清; 岩佐, 靄子; 竹内, 富美子
東京女子医科大学雑誌, 48(9):787-790, 1978
http://hdl.handle.net/10470/3652
Twinkle:Tokyo Women's Medical University - Information & Knowledge Database.
http://ir.twmu.ac.jp/dspace/
1
倭矯さ鯵、。第繍5鵡言)
著〕
〔原
臓器中の微量金属測定時における.
湿重量と乾重量の問題点
東京女子医科大学無機化学教室
中 川
清・岩佐需子
ナカガワ キヨシイワサアイコ
東京女子医科大学内科学教室
竹 内 富 美 子
タケ
ウチ
フ
ミ
コ
(受付 昭和53年6月3日)
S加dy on Wet鋤d Dry Weigbts㎞Var董ous Ofgans at T∬ace Metal Measureme且ts
K三yos}直NAKAGAWA a血d Aiko IWASA
Department of I皿organic Chemls曾y, Tokyo Women’s Medical Collcge
Fu㎡ko TAKEUCHI, M.D.
Department of Internal Medichle, Tokyo Women’s Medical College
Trace metal content in organs is expressed either as metal content/wet ogag豆weight(M/wet),
or as metal content/dry organ weight(M/dry), Although the latter value is lnHuenced by the
method and/or the extent of tbe dryin gμocedure, the discussion on this problem appears to have
not been done in the literature.
Here, drying temperature, drying time and weight of organ,s sample were studied by thermal
analysis, isothermal drying and倉eezedrying.
はじめに
よって金属濃度も左右される.
生体組織内に微量金属が必須であると認識され
臓器乾燥法には,通常100℃∼200℃大気圧の空
て以来,これらの金属の含有値を検索することが
気中にて行なう恒温乾燥法と,試料を凍結させ,
重要となり,それらの測定が盛んになってきた.
減圧中にて行なう凍結乾燥法とがあるが,試料の
この金属測定に際しては,新鮮な臓器を重量測
量,形状,乾燥温度,乾燥時間などの条件が報告
定して湿重量とし,その湿重量当りの金属濃度
者により一定せず,乾燥条件を明確にした文献も
(M/wet weight)を算定する場合と,乾燥した
臓器を重量測定して乾重量とし,その乾重量当り
ない現状であり,データを比較検討することが困
難である.
の金属濃度(M/dry weight)を算:定する場合との
今回これらの問題点を解明すべく,ウサギおよ
二つに大別されるが,後者の場合は,乾燥度合に
びラットを使用し,その臓器の恒温乾燥につい
一787一
2
て,熱分析で検討を行ない,また,真空凍結乾燥
を石英皿に採取し精回して測定した.その測定条件は,
も検討した.これら各臓器の湿重量/乾重量(wet/
昇温速度4。C/min, TG感度250mg/fu11 scale, DTA感度
dry)などの関係について,若干の知見を得たの
100μv/full sca玉e, DTG感度2・5mg/full scaleである.な
で,ここに報告する.
おこれらの測定は大気圧の空気中にて行なった.
3)恒温乾燥
実験方法
予め105℃に設定した恒温乾燥器内に,湿重量を測定
1.測定機器
した成熟ラットの肺0・79,0.99,肝1」9,4・39の4検体
真空凍結乾燥機は東亜真空技研製VFD・16D−FAM・BF
型,恒温乾燥器はタバイ製作所製熱風循環式恒温乾燥器
を入れ,6時間後,11時間後,15時間後に取り出し,精
秤して各時間の乾重量とした.
L20A型,熱分析装置は長計量器製作所製自動微分示差
結
熱天秤TRDA−L型(自動熱天秤)を用い,また精準用
果
各乾燥方法による測定結果は,湿重量/乾重量
天秤はメトラーH20型を使用した.
(wet/dry)として表わした.
2.湿重量
1)真空凍結乾燥
湿重量については,これらの動物を解剖後,臓器を別
成熟ウサギおよびラットの臓器の湿重量/乾重
出し,口紙にて余分の血液をとり,直ちに秤量びんに入
れ,精果して湿重量とした.
量の結果は表1に示した.ウサギの平均値では肝
3.乾重量
が3.49で最小であり,肺は4.63で最大となってい
乾重量は,湿重量を測定した臓器を用い,これを恒温
るため,肺が最大の脱水量を示している.またラ
乾燥または真空凍結乾燥を行なった後,精干して乾重量
ットの肝は3.18,肺は5.85であった.
とした.
2)熱分析
結果を図1に示したが,DTGの第1ピークは
4.乾燥方法
各乾燥法とも試料は原則として19程度のスライスに
100℃∼llO℃付近,ブロードな第2ピークは290
して,十分に拡げ,乾燥器の容量に相応した量を入れる
ように努めた.
表1 裏山凍結乾燥の湿重量/乾重量(wet/dry)
1) 真空凍結乾燥
動物
成熟ウサギ4匹とラットi匹の湿重量を測定した臓器
汪? w/d
を冷凍庫に入れ,一40℃∼一45℃にて凍結した後,真空
凍結乾燥機で0・05Torr,20∼30時間乾燥し,これを精写
して乾重量とした.
ウサギ
ラット
平均値
S.D
w/d
肝
3.49
±α29
3.18
腎
3.83
±0.15
一
脾
3.93
士0.32
一
筋
4.20
±0.14
一
熱分析に使用する自動熱天秤は,電気炉と天秤を連結
心
4.31
=LO.72
させてあり,電気炉内に試料と熱的に安定な物質(α一A1、
脳
4.45
±0,19
03)を入れ,温度変化に伴なう試料と安定物質の温度差
肺
4.63
±0.35
恒温乾燥については,臓器乾燥に最:適な温度を検索す
るため,熱分析を行なった.
2) 熱分析
一
一
5.85
および重量変化とを自動記録する装置である.なお,昇
温は自動制御される,試料下にある熱電対で実際の試料
示差熱歪塾
温度(T)は計測され自動記録される.熱重量(TG)は
〔DTA)吸熱Ψ
熱重量璽
昇温中に起る試料の重:量変化を測定して自動記録する.
(TG)減罫
熱重量微分測定(DTG)はTGの変化率,すなわち単位
微分熱重量__二
(DTG)増量変花
中差熱分析(DTA)は昇西中に吸熱または発熱する試料
τ5℃
温 度__主
(T)レ O分
と熱的安定物質との温度差を自動記録する.
290℃
減量変化
時間当りの減量または増量を自動記録するものであり,
200C
15℃
10D℃
9DロC
30分
’
60分
図1 熱分析曲線(肺)
・この熱分析に際しては,試料は成熟ラットの肺70mg
一788一
90分
3
℃付近にあり,DTA曲線より第1ピークでは吸
る125℃付近まで続いており,重量減量率を示す
熱,第2ピークでは僅かな発熱を生なっていた.
DTG曲線のピークが100℃∼110℃付近にあるた
なお,この肺の熱分析による湿重量/乾重量は5,60
め,この温度範囲で重量減量率が最大になると判
断される.またDTA曲線は90℃付近で吸熱の最:
であった.
大を示すピークがあるが,これは脱水反応に吸熱
3)恒温乾燥
二の結果は図2に示した.肺は2検体とも6時
が先行する事実からも100℃∼110℃で最大の脱水
間で82%,肝も2検体とも11時間で70%の減量を
を示すというDTGの結果が適正であることを裏
示し,それ以後は同じ減量率を示した.また肺と
付けている.
125℃∼200℃の温度範囲では.TG, DTA, DTG
肝では臓器乾燥度に約12%の差が認められた.
曲線がほぼ水平に保たれて,おのおのの変化が
100
〔%1
1、
、こ、
50
温
度
認められないため,脱水もしくは酸化分解による
至
試料の変化は起きていないと判断される.
2000C以上では290。C付近でDTG, DTA曲線に
」戴.一_一__一.....__温度
寸QO
\\
、
、、
肝
、
、
、
なだらかなピークを生じている.これは発熱を伴
なった減量であり,熱分析終了後,試料の灰化が
50
肺
11
6
15(h}
11
丁5
肝
68.9
700
70.1
肺
82.O
82.2
82.2
時間臓器
いたと考えられる.
。
6
O(時間)
観察されたことからも,ここで酸化分解が進んで
したがって熱分析を行なった程度の微量臓器を
乾燥させる場合は,125℃∼200℃までの温度範囲
で1時間以内で行なうことも可能であるが,この
図2 恒温乾燥における減量曲線
考
温度範囲になると,気散の著しい金属も多数あ
り,高温での乾燥は安易に採用できない.以上の
察
考察から,恒温乾燥の適切な温度として105℃を
臓器の恒温乾燥を行なう場合,微量金属の気散
を防ぐため,できる限り低温で行ないたいが,余
採用した.
り低温では能率が著しく低下する.そのため,最
次に乾燥時間の検討のため,ラット臓器を用い
も能率よく低温で行なえる温度を検索する目的で
て105℃で恒温乾燥を行なった.約11時間で恒量
熱分析を行なった.図1に示したごとく,室温か
減に達しているが,確証を得るために15時間まで
ら重量減少を示すTG曲線の降下と試料の吸熱を
行なったところ,肺,肝の各検体とも同じ結果に
示すDTA曲線の降下がみられ,明らかに室温か
ら脱水が始まっていることを示している.この
なったため,4g程度までならぽ,同じ臓器は同
脱水はTG, DTA, DTG曲線の大きな変化が終わ
分析を行なったときの湿重量/乾重:量は5.60で恒
じ乾燥度となると考えられる.またラット肺の熱
表2 臓器の恒温乾燥と凍結乾燥のwet/dry
種 類
ウサギ
ラッ ト
ダイコク
ヒ ト
lズミ
著 者
著 者
著 者
荒 地
荒 地
岸
恒温乾燥
凍結乾燥
凍結乾燥
恒温乾燥
恒温乾燥
恒温乾燥
105℃
24h
100℃ユ2h
20∼30h
100℃12h
100℃24h
肝
3.35
3.18
3.49
3.56
3.53
3.77
肺
5.61
5.85
4.63
}
5.91
5.07
報告者
乾 燥
?件
P5h
一789一
4
温乾燥の結果とよく一致する.
あった.
真空凍結乾燥については,われわれのラット臓
臓器の大きさは,恒温乾燥,真空凍結乾燥とも
器の乾燥条件では,恒温乾燥の結果と比較的近い
試料は19以下のスライスとし,十分に拡げ,乾
値を得た.乾燥条件が適切であれぽ,両乾燥法と
燥器の容量に相応した量を入れる.
恒温乾燥は,温度を105℃とし,乾燥時間は11
も分析の前処理として差支えないと思われる.
臓器の乾燥度については,乾燥法と種族差の
時間以上を必要とするが,臓器70mg以下は,1
違いを比較検討したのが表2である.これは荒
時間以内で完了する.真空凍結乾燥は0・05Torrに
地1),岸ら2)の臓器含有金属値より湿重量/乾重量
て24時間以上が適切であろう.
に換算したものであるが,肝または肺としては種
臓器乾燥度の検討の結果,従来乾重量:を湿重量
族が異なっても類似性の強い数値を示し,また乾
に換算する際,約4倍とするのは,臓器別に検討
燥法の差による著しい差も見い出せない.どの種
し直す必要がある.
族,どの乾燥法をとってみても湿重量/乾重量で
肝は約3.5,肺は約5.6となっていることからも,
本稿の要旨は昭和50年2月,東京女子医科大学学会第
209回例会において発表した.
従来,乾重量を湿重量に換算する際に約4倍とし
文
た慣習は臓器別に見直す必要があると考えられ
献
1)荒地秀明=生体内亜鉛に関する研究.奈医誌
23 177∼186 (1972)
る.
2)岸玲子=クロムによると思われる職業性肺
癌患老の臓器中クロム量.医学のあゆみ92
まとめ
臓器乾燥法の適切条件としては,次のごとくで
(9),387(1975)
一790一
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