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スギ及びヒノキの系統別の挿し木苗と実生苗による生長比較試験(PDF

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スギ及びヒノキの系統別の挿し木苗と実生苗による生長比較試験(PDF
課 題 38
スギ及びヒノキの系統別の挿し木苗と実生苗による成長比較試験
( 平 成 26 年 度
繰上完了報告)
九州森林管理局 森林技術・支援センター
1
目的
九州を代表する造林樹種であるスギとヒノキについて、
同一立地条件下、同一系統で挿し木苗と実生苗との成長比
較を目的とする。
2
試験方法
(1) 場 所
宮崎県宮崎市高岡町 楠見国有林
233 ち 4 林 小 班 ( ス ギ 試 験 地 )
233 ぬ 2 林 小 班 ( ヒ ノ キ 試 験 地 )
(2) 方 法
① 面積及び期間
ス ギ 試 験 地 0.23ha 平 成 11 ~ 26 年 度
ヒ ノ キ 試 験 地 0.47ha 平 成 12 ~ 26 年 度
② 植 栽 内 容 ( 表 - 1)
ス ギ 試 験 地 640 本 (8 系 統 )
ヒ ノ キ 試 験 地 1,248 本 (25 系 統 )
③ 調査項目
根 元 ・ 胸 高 直 径 (cm)、 樹 高 (cm)、
形 質 (幹 曲 、 根 曲 を 5 段 階 評 価 〔 図 - 1〕 )
図- 1
④
表- 1
植栽本数
形質調査の方法
試験地概況(被害状況及び解析方法)
ス ギ 試 験 地 及 び ヒ ノ キ 試 験 地 で は 、植 栽 後 野 兎 に よ る 食 害 が 発 生 し 、平 成 18・ 19
年度に野兎駆除及び野兎被害防除ネットの設置を行った。その他、台風による風倒
被 害 に よ り 芯 折 れ 等 が 発 生 し た 。本 試 験 地 に お い て は 、調 査 期 間 中 に 枯 死 し た 個 体 、
何 ら か の 被 害 に よ り 、前 回 調 査 時 よ り 数 値 が 低 下 し た 個 体 を 除 い て 、解 析 を 行 っ た 。
な お 、 本 試 験 に お け る 成 長 量 の 比 較 に つ い て は 、 一 元 配 置 分 散 分 析 ( Tukey) の
方 法 を 用 い た 。 こ の 解 析 に は 統 計 解 析 ア ド イ ン ソ フ ト の Excel 統 計 2012 で 行 っ た 。
-1-
(3) 施 業 履 歴
年度
H11 H12 H13 ~ 16
スギ 植付 下刈 下刈
調査 調査 つる切
調査
ヒノキ
植付 下刈
調査 つる切
調査
3
H17
H18
つる切 つる切
調査
野兎駆除
調査
下刈
野兎駆除
つる切 調査
調査
H19
H21
H22
H23
調査
つる切 つる切 除伐
野兎駆除 枝打
調査
H26
調査
枝打
つる切
つる切 つる切 調査
野兎駆除
調査
調査
枝打
結果と考察
(1) ス ギ の 系 統 と 苗 種 別 の 成 長 量 ( 図 - 2 ~ 17)
平 均 根 元 直 径 及 び 平 均 胸 高 直 径 は 、 8 系 統 中 5 系 統 ( 曽 於 1、 早 良 1、 大 分 2、 東 臼
杵 11、 南 高 来 13) に お い て 、 実 生 苗 が 挿 し 木 苗 よ り 成 長 良 好 な 傾 向 で あ り 、 最 終 調
査 時 の 胸 高 直 径 を 苗 種 別 に 比 較 す る と 、 8 系 統 中 3 系 統 ( 曽 於 1、 早 良 1、 大 分 2) に
お い て 、 実 生 苗 が 挿 し 木 苗 よ り 胸 高 直 径 の 値 が 高 か っ た ( P<0.01,P<0.05)。 そ れ 以 外
の 5 系統では有意差は認められなかった。また、実生苗は挿し木苗より、標準偏差が
大きくなり、個体差が大きい傾向が見られた。
平 均 樹 高 は 、 8 系 統 中 3 系 統 ( 曽 於 1、 早 良 1、 東 臼 杵 11) に お い て 、 実 生 苗 が 挿
し木苗より成長良好な傾向であり、それ以外の 5 系統では同等もしくは実生苗より挿
し 木 苗 が 成 長 良 好 な 傾 向 で あ っ た 。ま た 、最 終 調 査 時 の 樹 高 を 苗 種 別 に 比 較 す る と 、8
系 統 中 2 系 統( 曽 於 1、早 良 1)に お い て 、有 意 に 実 生 苗 の 方 が 樹 高 の 値 が 高 く( P<0.01)、
それ以外の 6 系統では同等または挿し木苗が実生苗より樹高の値が高い結果となっ
た。また、挿し木苗は実生苗より、標準偏差が小さくなり、個体差が少ない傾向が見
られた。
スギでは、挿し木苗と実生苗の違いが肥大(根元直径及び胸高直径)成長に比べ、
上長(樹高)成長に顕著に現れた結果となった。
図- 2
図- 3
スギ曽於 1 の苗種別
図- 4
スギ曽於 1 の苗種別
樹高推移(平均値+標準偏差)
根元・胸高直径推移(平均値+標準偏差)
スギ早良 1 の苗種別
図- 5
根元・胸高直径推移(平均値+標準偏差)
スギ早良 1 の苗種別
樹高推移(平均値+標準偏差)
-2-
図- 6
図- 7
スギ大分 2 の苗種別
樹高推移(平均値+標準偏差)
根元・胸高直径推移(平均値+標準偏差)
図- 8
スギ八女 9 の苗種別
図- 9
根元・胸高直径推移(平均値+標準偏差)
図 - 10
スギ八女 9 の苗種別
樹高推移(平均値+標準偏差)
ス ギ 三 重 10 の 苗 種 別
図 - 11
根元・胸高直径推移(平均値+標準偏差)
図 - 12
スギ大分 2 の苗種別
ス ギ 三 重 10 の 苗 種 別
樹高推移(平均値+標準偏差)
スギ長崎署 2 の苗種別
図 - 13
根元・胸高直径推移(平均値+標準偏差)
スギ長崎署 2 の苗種別
樹高推移(平均値+標準偏差)
-3-
図 - 14
ス ギ 東 臼 杵 11 の 苗 種 別
図 - 15
根元・胸高直径推移(平均値+標準偏差)
図 - 16
ス ギ 東 臼 杵 11 の 苗 種 別
樹高推移(平均値+標準偏差)
ス ギ 南 高 来 13 の 苗 種 別
図 - 17
根元・胸高直径推移(平均値+標準偏差)
ス ギ 南 高 来 13 の 苗 種 別
樹高推移(平均値+標準偏差)
(2) ス ギ の 系 統 と 苗 種 別 の 形 質 ( 図 - 18)
系 統 別 に 根 曲 と 幹 曲 の 形 質 を 5 段 階 評 価 ( 図 - 1) し 、 平 均 値 を 比 較 す る と 、 挿 し
木苗において根曲の値が実生苗より高い傾向であった。幹曲については、挿し木苗と
実生苗の違いによる明確な傾向は見られなかった。
図 - 18
スギの系統・苗種別形質(平均値+標準偏差)
-4-
(3) ヒ ノ キ の 系 統 と 苗 種 別 の 成 長 量 ( 図 - 19 ~ 68)
平 均 根 元 直 径 及 び 平 均 胸 高 直 径 は 、 全 25 系 統 に お い て 、 実 生 苗 が 挿 し 木 苗 よ り 成
長 良 好 な 傾 向 で あ り 、 最 終 調 査 時 の 胸 高 直 径 を 苗 種 別 に 比 較 す る と 、 全 25 系 統 に お
い て 、 有 意 に 実 生 苗 の 方 が 胸 高 直 径 の 値 が 高 か っ た ( P<0.01,P<0.05)。 ま た 、 標 準 偏
差は挿し木苗と実生苗は同程度であった。
平 均 樹 高 は 、 全 25 系 統 に お い て 、 実 生 苗 が 挿 し 木 苗 よ り 成 長 良 好 な 傾 向 で あ り 、
最 終 調 査 時 の 胸 高 直 径 を 苗 種 別 に 比 較 す る と 、 25 系 統 中 24 系 統 ( 国 東 18 以 外 ) に お
い て 、 有 意 に 実 生 苗 の 方 が 胸 高 直 径 の 値 が 高 か っ た ( P<0.01,P<0.05)。 ま た 、 標 準 偏
差は挿し木苗と実生苗は同程度であった。
図 - 19
ヒノキ姶良 3 の苗種別
図 - 20
根元・胸高直径推移(平均値+標準偏差)
図 - 21
樹高推移(平均値+標準偏差)
ヒ ノ キ 姶 良 14 の 苗 種 別
図 - 22
根元・胸高直径推移(平均値+標準偏差)
図 - 23
ヒノキ姶良 3 の苗種別
ヒ ノ キ 姶 良 14 の 苗 種 別
樹高推移(平均値+標準偏差)
図 - 24
ヒ ノ キ 姶 良 17 の 苗 種 別
ヒ ノ キ 姶 良 17 の 苗 種 別
樹高推移(平均値+標準偏差)
根元・胸高直径推移(平均値+標準偏差)
-5-
図 - 25
ヒ ノ キ 姶 良 19 の 苗 種 別
図 - 26
根元・胸高直径推移(平均値+標準偏差)
図 - 27
樹高推移(平均値+標準偏差)
ヒ ノ キ 姶 良 26 の 苗 種 別
図 - 28
根元・胸高直径推移(平均値+標準偏差)
図 - 29
ヒ ノ キ 姶 良 26 の 苗 種 別
樹高推移(平均値+標準偏差)
ヒ ノ キ 姶 良 28 の 苗 種 別
図 - 30
根元・胸高直径推移(平均値+標準偏差)
図 - 31
ヒ ノ キ 姶 良 19 の 苗 種 別
ヒ ノ キ 姶 良 28 の 苗 種 別
樹高推移(平均値+標準偏差)
ヒ ノ キ 姶 良 31 の 苗 種 別
図 - 32
根元・胸高直径推移(平均値+標準偏差)
ヒ ノ キ 姶 良 31 の 苗 種 別
樹高推移(平均値+標準偏差)
-6-
図 - 33
図 - 34
ヒ ノ キ 姶 良 32 の 苗 種 別
根元・胸高直径推移(平均値+標準偏差)
図 - 35
ヒ ノ キ 姶 良 34 の 苗 種 別
図 - 36
根元・胸高直径推移(平均値+標準偏差)
図 - 37
ヒ ノ キ 姶 良 34 の 苗 種 別
樹高推移(平均値+標準偏差)
図 - 38
ヒ ノ キ 姶 良 43 の 苗 種 別
ヒ ノ キ 姶 良 43 の 苗 種 別
樹高推移(平均値+標準偏差)
根元・胸高直径推移(平均値+標準偏差)
図 - 39
ヒ ノ キ 姶 良 32 の 苗 種 別
樹高推移(平均値+標準偏差)
図 - 40
ヒ ノ キ 姶 良 45 の 苗 種 別
ヒ ノ キ 姶 良 45 の 苗 種 別
樹高推移(平均値+標準偏差)
根元・胸高直径推移(平均値+標準偏差)
-7-
図 - 41
図 - 42
ヒ ノ キ 姶 良 52 の 苗 種 別
樹高推移(平均値+標準偏差)
根元・胸高直径推移(平均値+標準偏差)
図 - 43
図 - 44
ヒ ノ キ 国 東 18 の 苗 種 別
ヒノキ佐賀 1 の苗種別
図 - 46
根元・胸高直径推移(平均値+標準偏差)
図 - 47
ヒ ノ キ 国 東 18 の 苗 種 別
樹高推移(平均値+標準偏差)
根元・胸高直径推移(平均値+標準偏差)
図 - 45
ヒ ノ キ 姶 良 52 の 苗 種 別
ヒノキ佐賀 1 の苗種別
樹高推移(平均値+標準偏差)
図 - 48
ヒ ノ キ 佐 伯 17 の 苗 種 別
ヒ ノ キ 佐 伯 17 の 苗 種 別
樹高推移(平均値+標準偏差)
根元・胸高直径推移(平均値+標準偏差)
-8-
図 - 49
図 - 50
ヒノキ鹿児島 3 の苗種別
根元・胸高直径推移(平均値+標準偏差)
図 - 51
図 - 52
ヒノキ神崎 6 の苗種別
ヒノキ川辺 3 の苗種別
図 - 54
根元・胸高直径推移(平均値+標準偏差)
図 - 55
ヒノキ神崎 6 の苗種別
樹高推移(平均値+標準偏差)
根元・胸高直径推移(平均値+標準偏差)
図 - 53
ヒノキ鹿児島 3 の苗種別
樹高推移(平均値+標準偏差)
ヒノキ川辺 3 の苗種別
樹高推移(平均値+標準偏差)
ヒ ノ キ 川 辺 29 の 苗 種 別
図 - 56
根元・胸高直径推移(平均値+標準偏差)
ヒ ノ キ 川 辺 29 の 苗 種 別
樹高推移(平均値+標準偏差)
-9-
図 - 57
ヒ ノ キ 川 辺 34 の 苗 種 別
図 - 58
根元・胸高直径推移(平均値+標準偏差)
図 - 59
樹高推移(平均値+標準偏差)
ヒノキ曽於 3 の苗種別
図 - 60
根元・胸高直径推移(平均値+標準偏差)
図 - 61
ヒノキ曽於 3 の苗種別
樹高推移(平均値+標準偏差)
ヒノキ曽於 4 の苗種別
図 - 62
根元・胸高直径推移(平均値+標準偏差)
図 - 63
ヒ ノ キ 川 辺 34 の 苗 種 別
ヒノキ曽於 4 の苗種別
樹高推移(平均値+標準偏差)
ヒノキ大分 8 の苗種別
図 - 64
根元・胸高直径推移(平均値+標準偏差)
ヒノキ大分 8 の苗種別
樹高推移(平均値+標準偏差)
- 10 -
図 - 65
ヒノキ中津 9 の苗種別
図 - 66
根元・胸高直径推移(平均値+標準偏差)
図 - 67
ヒノキ中津 9 の苗種別
樹高推移(平均値+標準偏差)
ヒ ノ キ 藤 津 10 の 苗 種 別
図 - 68
根元・胸高直径推移(平均値+標準偏差)
ヒ ノ キ 藤 津 10 の 苗 種 別
樹高推移(平均値+標準偏差)
(3) ヒ ノ キ の 系 統 と 苗 種 別 の 形 質 ( 図 - 69 ~ 71)
系 統 別 に 根 曲 と 幹 曲 の 形 質 を 5 段 階 評 価( 図 - 1)し 、平 均 値 を 比 較 す る と 、幹 曲 、
根曲共に挿し木苗と実生苗の違いによる明確な傾向は見られなかった。
図 - 69
ヒノキの系統・苗種別形質(平均値+標準偏差)
- 11 -
図 - 70
図 - 71
4
ヒノキの系統・苗種別形質(平均値+標準偏差)
ヒノキの系統・苗種別形質(平均値+標準偏差)
まとめ
(1) ス ギ の 挿 し 木 苗 と 実 生 苗 の 違 い に つ い て
肥大成長及び上長成長は、挿し木苗より実生苗が良好な系統が多かったが、実生苗
より挿し木苗が個体差が小さい傾向が見られた。形質は、実生苗より挿し木苗が根曲
の値が高い傾向が見られた。幹曲の値は挿し木苗と実生苗の違いによる明確な傾向は
見られなかった。
(2) ヒ ノ キ の 挿 し 木 苗 と 実 生 苗 の 違 い に つ い て
スギと比較するとヒノキの方が挿し木苗と実生苗の違いがより明確に現れており、
特に肥大成長については、挿し木苗より実生苗が全ての系統において良好であり顕著
な差が確認できた。また、上長成長についても、挿し木苗より実生苗がほぼ全ての系
統において成長良好であった。形質は、根曲、幹曲共に挿し木苗と実生苗の違いによ
る明確な傾向は見られなかった。
- 12 -
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