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養成技術者の研究・研修成果等

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養成技術者の研究・研修成果等
養成技術者の研究・研修成果等
1.養成技術者氏名: 川地克明
2.養成カリキュラム名: 人体運動のリアルタイム生成に関する研究
3.養成カリキュラムの達成状況
本研究では、計算機上で一連の人体動作をきわめて高速に生成する手法を開発した。動作生
成はあらかじめ用意しておいたいくつかの短い動きのパターンを次々に接続することによっ
て行うが、ユーザによって対話的に人体の動きを変化させるアプリケーションでは、運動の拘
束条件の変化に対応してパターンを変形する必要がある。本研究では、変化する運動拘束条件
と運動の連続性とを満足するようにモーションを変形する高速な逆運動学アルゴリズムと運
動の表現形式を開発し、ユーザの対話的な入力を反映したヒューマノイドの運動をリアルタイ
ムで生成することを可能にした。
4.成果
人間にとって危険を伴う事故調査やメンテナンスには、遠隔操作によって動作するロボット
の活用が有効である。特に、人間やこれに類する形状のヒューマノイド・ロボットを用いるこ
とで、人間に合わせて設計された設備に対する遠隔作業をより容易に行うことが可能になる。
このようなヒューマノイドの遠隔作業を行う場合には状況の変化に応じて適切な作業を行う
ことが必要であり、事前にオフラインによる計算で固定された運動全体を生成しておくのでは
なく、臨機応変に運動を変化させなければならない。現在、ヒューマノイド・ロボットを動作
させるためには、あらかじめ計算機上で詳細な力学的シミュレーションを行って計画した動作
の実行可能性を検討してから実際の動作にとりかかるという手順を踏む。しかし、こういった
操作体系では遠隔作業における予期されない外的環境条件の変化に臨機応変に対応すること
が難しいという問題がある。
そこで、本研究で開発する手法は下の図に示すような手順によって運動を生成する。まずは
じめに、ヒューマノイドの運動を測定したり計算機シミュレーション上で動作させることによ
り、あらかじめ多様な動作のデータベースを生成しておく。次に、実際に動作を生成する場合
には、蓄積しておいた動作パターンから運動の状況に応じて適切なものを選択し、現在の運動
と不連続にならないようにパターンを変形し、次々に接続する。このようにあらかじめ準備し
た動作パターンを利用することで、実際の運動の生成は簡単な操作によって動作パターンを組
み合わせ、直感的にヒューマノイドの運動を生成することができる。高い運動の自由度をもつ
ヒューマノイドの関節の運動を制御するための複雑な力学的計算は前処理として行っておく。
また、このような動作パターンを用いたインタラクティブな動作生成技術は、ヒューマノイ
ド・ロボットだけではなく、計算機上で人体運動の生成を行うアプリケーション全般において
動作の高速なプロトタイピングを行う目的のためにも応用することができると考えられる。自
動車等の工業製品の詳細設計においては、人間が使用した場合の使用感や疲労度等を評価する
ために CAD システムによって設計された製品形状とさまざまな体格の人間の動作を組み合わ
せ、起こりうる使用状況を計算機上で検討したいという要求がある。
以上のようなリアルタイムでの動作生成を実現するために、本研究ではリアルタイムでの動
作パターンの変形・結合手法の開発と、このような操作を実現するために必要な、データベー
ス中に格納される中間動作パターンデータの表現形式の研究を行う。動作のパターンは「走る」
「歩く」「停止する」のような短い運動を用意しておき、リアルタイムに運動を発生させる際
にユーザの入力による拘束条件によって動作パターンを変形する問題は、逆運動学 (Inverse
Kinematics, IK) の問題によってこれを解く。これまでにも人体の姿勢を逆運動学の手法によ
って拘束するさまざまな手法が提案されている。しかし、利用可能な計算時間の制約があるた
め、実際のアプリケーションでは腕や足などの部分的な姿勢の変形にとどまっている場合が多
い。本研究では運動特徴点による姿勢の表現形式を利用し、複雑な構造のヒューマノイドに対
して元の姿勢の特徴を保存しながら拘束を満たす姿勢を高速に計算する逆運動学アルゴリズ
ムを開発した。この手法を用いることで、動作パターンを用いた実時間運動生成において不自
然さのない動作パターンの変形が可能になり、少ない動作パターンから多様な外的拘束に対応
する運動を生成することが可能になる。本研究においては、動作パターン変形手法として
Spacetime Constraints というオフラインモーション変形手法を簡略化した手法を利用する。
本研究で開発した手法による動作生成の例題として、両足で地面に直立して静止した CG キ
ャラクタ(1) をヒューマノイドに見立てて配置した。このキャラクタの両手の位置を棒の上に
拘束し、また、この対面にもう一体 CG キャラクタ (2) を組み合わせて動作を生成した。キャ
ラクタ (2) はトレッドミルのように動作する青い床の上を走る動作パターンから一連の動作
を生成しており、両手は向かい側のキャラクタと同じ棒の上に拘束されている。双方の CG キ
ャラクタの手の位置は、操作者がインタラクティブに変更することができる。本研究のモーシ
ョン変形手法の計算量は特徴点の数に比例し、 2 体のインタラクションがあるこの例題では 1
体の場合の 2 倍の計算時間 (1 フレーム当たり 0.4ms) を要する。また、この動作生成におい
ては簡単なスクリプト言語を用いてヒューマノイドの動作生成に用いるパターンや拘束条件
を記述している。本研究で定めたフォーマットにのっとった動作パターンを準備することによ
り、スクリプトの記述を編集することによって自由に差し替えて必要な運動を生成することが
可能である。
5.成果の対外的発表等
(1)論文発表(論文掲載済、または査読済を対象)
・モーションデータベースによる実時間モーション合成手法.
日本バーチャルリアリティ学会論文誌, Vol.7, No.4, pp. 453-458, 2002.
川地克明, 鈴木宏正.
発表件数:1件
(2)口頭発表(発表済を対象。予稿集等のコピーを添付。
)
・モーションデータベースを用いた実時間モーション合成手法.
グラフィックスと CAD 研究会 情報処理学会研究報告,
pp. 31-36, 2002, 2002-CG-107.
川地克明, 鈴木宏正.
・実時間人体アニメーション生成における姿勢拘束のための逆運動学アルゴリズム"
Visual Computing グラフィクスとCAD合同シンポジウム2003予稿集,
pp. 147-152, 2003
川地克明, 鈴木宏正, 金出武雄
・対話的アニメーション生成のための関節角度制約手法
Visual Computing グラフィクスと CAD 合同シンポジウム 2004 予稿集
pp. 203--208, June 2004
川地克明, 鈴木宏正, 金出武雄,
・A Lightweight Algorithm for Real-Time Motion Synthesis
Proceedings of the ACM Symposium on Virtual Reality Software and Technology
pp. 49--56, November 2004
Katsuaki KAWACHI, Takeo KANADE and Hiromasa SUZUKI
発表件数:4件
(3)特許等(出願件数を記載。
)
なし
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