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Title ニュージーランド法システム入門 : 解題と翻訳 Author(s) 近藤, 真 Citation [岐阜大学教養部研究報告] no.[34] p.[73]-[89] Issue Date 1996-09 Rights Version 岐阜大学教養部法学研究室 (The Faculty of General Education, Gifu University) URL http://repository.lib.gifu-u.ac.jp/handle/123456789/3982 ※この資料の著作権は、各資料の著者・学協会・出版社等に帰属します。 岐阜大学教養部研究報告第34号 ( 1996) 73 ニ ュ ー ジ ー ラ ン ド 法シ ス テ ム入 門 解 題 と 翻 訳 近 藤 真 法学研究室 (1996年 6 月28日受理) The lntroduction to the L egi l System of N ew Zea14nd 一 the Explanatory notes and the Translation 一 M akoto K OND O 解 し 題 こ こ に訳 出す る論文 「ニ ュ ー ジ r ラ ン ド の法 シ ス テ ム (The Lega1 System of New Zealand) 」 は, ウェ リ ン ト ン ・ ビク ト リ ア大学のア ンソ ニー ・ H ・ ア ンジェ ロ教授 (憲法学) がロ ーズマ リ ー ・ ゴー ド ン弁護士 と共著で海外読者向けの出版物において発表さ れた もので あ る 。 日本で も こ の種のニ ュ ージーラ ン ド法体制の紹介はな さ れていない と思われるので訳 出す る価値があ る と考え, 邦訳 と し て発表す る もので ある。 ニ ュ ージーラ ン ドの政治体制の歴史について は筆者 も, 1994年に拙稿 「ニ ュ ージー Tラ ン ド にお ける政党への国庫補助」 において若干紹介 した こ とがある(1) が, ア ンジェ ロ教授の同論 文はニ ュ ージーラ ン ドの ト ータ ルな法 シス テ ムの紹介なので, ニ ュ ージーラ ン ドの憲法のみ な らず裁判システ ムや民, 刑事法の今 日の重要なシス テ ムやマ オ リ 問題の法的状況やク ッ ク 諸島な どのア イ ラ ン ダーの法的地位な どが非常 に簡潔に理解で きる。 さ ら にニ ュ ージーラ ン ド法 を学ぶための最 も重要な基本的文献 も示 さ れている。 現在, 私はニ ュ ージーラ ン ド に滞在 中で あ り , ウェ リ ン ト ン ・ ビ ク ト リ ア大学法学部にお いて ア ンジ ェ ロ教授の指導下にあっ てニ ュ ージーラ ン下憲法の研究中で ある。 同論文は, 最 初, 1988年オラ ンダにおいて各国法制度 を概説 した文献に収録 さ れた(2) が, その後の変化 に 対応す る改訂版 と して1996年フ ラ ンス領ポ リ ネ シアにおいて発行 さ れた 「ポ リ ネシア法研究 第 2巻」 にフ ラ ンス語で発表 さ れた もので あ る (3)。 本稿で は, その原文で あ る英語版 を教授 か らお借 り して翻訳 したがレ こ の英語版原文は未発表の もので ある。 そ して今回の拙訳に対 し , さ ら に若干の付加すべ き補足 を同教授 自身か ら頂いた。 74 近 藤 真 す で に ア ン ソ ニ ー ・ H ・ ア ン ジ ェ ロ教授 の西サモ ア諸 島の法 体 制 に関す る論文 は 日本 で も 翻訳 さ れて お り(4), 教授 自身東京大学法学部の1994年度比較法 原論客員教授 と し てあ る い は立命館大学での研究会でのパネラ ーと して 日本の大学の教壇 に立っ た こ と もあ り, 日本に おける知己 も多い。 また教授は日本法の紹介のために野田良之著 「 日本法入門」 を英訳され, 東京大学出版会か ら だ さ れて いる (5)。 本翻訳に対 して は, ア ンジェ ロ教授のみな らず ビク ト リ ア大学法学部滞在中の和田仁孝九 州大学教授 ( 法社会学) にも邦訳に関 して貴重なご教示 をいた だいた。 あわせて謝意を表 し たい。 万一私の力及ばず誤訳の可能性があ る と すれば一切の責 めは私に帰す る。 註 (1) 拙稿 「ニュ ージーラ ン ドにおける政党への国庫補助」 森英樹編著 『政党国庫補助の比較憲法的総 合的研究』 柏書房レ 1994年, 453頁以下o ㎜ ■㎜ (2) A. H. Angelo, NIEUW ZEELAND , D. Kokkini-latridou, e. aバ EEN INLEIDING TOT H E T R E CH T SV E R G E L I JK E N D E ON D E R ZOE K (3) A . H. Angelo, R. Gordon, K L U W E R -D E V E N T E R -1988, p. 440. Lesyst6meL6gal dela Nouvelle Z61ande , Revuejuridique p01yn6sienne, V ol . 2, 1996・ p. 479. (4) j A. ア ンジェ ロ著, 浅香吉幹訳 「 ト ケ ラ ウに憲法 ? 一自治, 自決, 非植民地化。 太平洋の小地域の 経験 と課題」 ジュ リス ト N0. 1078 ( 1995.11. 1) , 94頁以下。 (5) 野田良之著, A. ア ンジェ ロ訳 『lntroduction toJapaneseLaw』 東京大学出版会, 1976年。 「ニ ュ ージーラ ン ドの法 システ ム」 ビク ト リ ア大学教授 弁護士 岐阜大学助教授 ア ン ソ ニー ゜H ア ン ジ ェ ロ *, ロ ー ズ マ リ ー ・ ゴ ー ド ン ** 近藤 真 共著 訳 I 。 序 A. 地 理 ニ ュ ージ ーラ ン ドは南西太平洋上 に位置 し, オース ト ラ リ ア の南東か ら1920キロ メ ー ト ル 離れている 。 ニ ュ ージーラ ン ドの面積 は27050平方キロメ ー ト ルである。 ニ ュ ージ ー ラ ン ド は二つ主要 な島か らな り, 北島と南島と呼ばれる。 両島はク ッ ク 海峡で隔て られている。 ま た他 に もた く さ んの小 さ な島々がある。 ニ ュ ージ ーラ ン ドの排他的な経済領域はニ ュ ージーラ ン ドの領海を こ え かつ 隣接 し た200 カ イ リ の範囲か ら なる。 こ の範囲でニ ュ ージーラ ン ドは経済的 な権利 を主張 し, 外国漁船は 領域内での操業の許可を得なければな ら ない。 B. 人 口 十 340万人の人口は主に ヨ ーロ ッパ系であ り,」 9世紀に世界各地 と く にイ ン グ ラ ン ドお よ び ス コ ッ ト ラ ン ドか らニ ュ ージーラ ン ドへやって きた移民の子孫 で あるか近年の移民で ある。 ニ ュ ージーラ ン ド法 シス テ ム入門 一 解題 と翻訳 - 75 人口の約13% はニ ュ ージーラ ン ドマ オ リ で あ る。 マ オ リ も また移住民で あ る 。 彼 らの祖先 も おそ ら く 12世紀以後太平洋の他の地域か らニ ュ ージーラ ン ドへやっ て きた。 マ オ リ に加 えて 約 4 % の人々はポ リ ネシア系で あ り, 彼 ら は近年の移民で ある。 C. 歴 史 十 最初 に接触 し た ヨ ーロ ッパ人はオ ラ ン ダの探検家, アペル ・ タ スマ ンで あ り , 彼は1642年 にこ の国を発見 した。 1769年にキ ャ プテ ン , ジ ェ イ ムズ ・ ク ッ ク がニ ュ ージー ラ ン ドに最初 に上 陸 し た ヨ ー ロ ッ パ人 と な っ た。 キャ プテ ン ・ ク ッ ク はイ ギリス王室の名において領土 と した。 しか し, ( 領土 と な っ た と すれば) それは1839年においてほかにない。 その年イ ギ リスはその帝国の権力をニュ ージー ラ ン ドを含むまで に拡張 した。 その年に開封勅許状 (LettersPatent) が発せ られ, ニ ュ ー ジーラ ン ド はイギリス王室の主権において獲得 されたなんらかの領土と してニユーサウス ウェ ー ルズの当時の ( then) 植民地の内に編入 さ れる ものと さ れた。 1840年まで にニ ュ ージーラ ン ドはその固有の権利 において イ ギ リ スの植民地になっ た。 法的な独立は1947年にやって きた。 そ の年, ニ ュ ー ジ ー ラ ン ド は, 1947年 ウェ ス ト ミ ンス タ ー憲章 ( the Statute of West- minster) 採用法によっ て イギリス本国の1931年のウェ ス ト ミ ンス タ ー憲章を採択 した。 U。 執行府 (TheExecutive) A. づ ニ ュ ージーラ ン ドの王国 (Realm) ニ ュ ージー ラ ン ド は国家の元首 と し て 世襲の君主 を もつ統一国家で あ る 。 連合王国のその 時代 に存在す る君主がニ ュ ージーラ ン ド の君主で あ る。 なぜな ら連合王国 と ニ ュ ージーラ ン ドは王位継承 について 同 じ法 を有す るか らで あ る 。 それゆえに, 女王エ リ ザベスニ世が資格 ある正式の国家元首である。 彼女は非居住者 ( nonresident) で あるが, ニ ュ ージー ラ ン ド において は, 総督によっ て代表さ れる。 総督 ( theGovernor-General) は, 首相の推薦 に よっ て女王に よ っ て一般に 5年の任期で任命 さ れる。 以前総督は開封勅許状お よび1917年 5 月11日の王室訓示 (RoyaO nstruction) の も と で 就任 した。 最近の開封勅許状は1983年に発せ られた。 そ してそれらは総督の職務 ( office) を構成す る。 一般原則 と して総督は政府大臣の助言に基づいて受諾 しかつ行動 し なければな ら な い。 十 総督の重要な役 目は, 形式的な国家元首 と し て の行動 に加えて, 会議のために議会 を招集 (ca11) し, それぞれの会期の終了後に議会を閉会 ( prorogue) し, 総選挙の前 に議会 を解 散 ( dissolve) し, そ して議会の多数を しめた政党の指導者を総選挙後に政府 を形成す るた めに招待 (invite) する こ とである。 ニ ュ ージー ラ ン ドの政府は, 王国の権力の行使 において は, 国王 ( the Crown= the state) と 同一視 され, かつ国王 と呼ばれる。 B. 大臣 (Ministers) ニ ュ ージーラ ン ドの執行政府は, 大臣に よっ て コ ン ト ロールさ れる。 彼 ら はそれぞれ任ぜ られた管轄領域 に責任 を有す るレ C. 執行評議会 ( ExecutiveCouncil) 補助的な立法の公布 ( promulgation) のための主要な正式の機関で あ る執行評議会 は, 76 近 藤 真 全大臣か ら な り, かつ総督 に よ っ て主宰 さ れる。 D. 内閣 (Cabinet) 政治的伝統の創造物であ る内閣は殆 どの大臣か ら な り, 最 も重要な政治的, 行政的お よび 立法的問題の討論が行なわれる会議であ る。 それは首相 によっ て主宰 さ れる。 Ⅲ。 立 A. r■ ■ ■ 法 (TheLegislature) 一般的考察 議会の議員は三年に一度の普通成人の選挙権 に よっ て選挙さ れる。 18才以上であ り, ニュ ー ジーラ ン ドの公民権を持っ ているか永住権 を持っ ている, そ し てう 定期間少な く乙 と も 1年間 ニ ュ ージー ラ ン ドに継続的に住んでお りかつ彼 らが選挙人登録 (enroH) さ れる選挙 区で少 な く と も 1 ヵ 月継続的に住んでいる人は誰で も選挙人 と しての資格があ りかつ選挙人登録 し なければな ら ない。 選挙人登録 さ れた人々は一般選挙区で投票す る こ とが許 さ れる。 B. △議会 (Parliament) ト ニ ュ ージ ーラ ン ドの主要な法制定機関で ある議会は一院制で あ る。 も と も と議会は上院に あたる立法評議会 (LegislativeCounc11) を持っ ていた。 それは全ての立法を, それが法に なる前に, 吟味 していた。 こ れは1951年に廃止 さ れた。 そ して議会は今は原則 と して総督に 代表 さ れる君主お よび代議院 ( theHouseof Representatives) からなる。 C. マ オ リ議席 (Maori Seats) 十 十 マ オ リ 人の代表を確保す るために別にマ オ リ選挙区がある。 選挙人資格のあるマ オ リ はマ オ リ 選挙 区で選挙人登録す る か一般選挙 区で登録す る か選ぶ こ と が許 さ れる 。 マ オ リ だ けが マ オ リ 選挙 区にお ける候補者 に投票す る こ と が許 さ れる 。 こ の 目的のためにマ オ リ はニ ュ ー ジーラ ン ドのマ オ リ 人種の人であるかマ オ リ の子孫である。 D; 1994年 以 前 の 政 治 シ ス テ ム 犬 二 ダ ニ ュ ージ ーラ ン ドは, 選挙改革 (E節皿 を見1) の到来 (Advent) 以前 は, 第三政党が一般 選挙区に挑戦 しかつその議員が議会に時々選ばれたこ とはあったけれども, 本質的に二大政 党制で あ っ た。 犬 十 上 ‥ 議会 には99議席あ っ た。 その内の 4 議席はマ オ リ 議席で あっ た。 ‥十 南島の議席は25議席に固定 さ れ, 北島の議席は南島の選挙区の選挙民の数に応 じて割 り振 られた○ 。 ・・ - 。 ・ 議員は単記, 無記名, 「小選挙区 ( FPP = first past thepost)」 投票で選挙 さ れた。 言い 換える と, 選挙区で最多得票を確保 した候補者は代議院め門を く ぐった。 最多当選者を出し た政党は政府 を形成 した。 E. 選挙改革 I・ し 1985年に政府は選挙 システ ムの運用を調査す るための王立委員会を任命 した。 議員を選挙 する ために用い られる方法が調査の主な 目的であっ た。 委員会は1986年に小選挙区比例代表 併用制 (M MP = themixedmember proportiohal system) を推奨す る と 報告 し た 。 国民 の意向を伺 う ためだけの国民投票が1992年 9 月19日に行なわれた。 投票者 には, 現行 シス テ ムを維持す る こ と を望むかそれ と も変化 を選ぶか ど う かが問いただ さ れた。 MMP を含 む 4 つ の選択肢 が リ ス ト ア ッ プ さ れた。 国民投票の結果は, 選挙制度の変化 を選択 し, 人気 を博 ニ ュ ージーラ ン ド法 シス テ ム入門 一 解題 と翻訳 - 77 した選択肢 は M M P で あ っ た。 続いて拘束力ある国民投票は, 1993年11月の総選挙 と 同時に行なわれた。 そ こ で投票者は FPP と MMP か ら どち らかを選択する よ う 求め られた。 投票結果 は MMP の選択で あ り, かつ1993年選挙法の も と に1994年 7 月 M MP シス テ ムは法にな っ た○ 新選挙 シス テ ムのい く つかの特徴は以下の諸点で ある。 ① 議員の数は120議席に拡大 される。 ② 議員の約半数は選挙区 (constituency) をベ イス に選ばれ, あ と半数は政党リ ス ト をベ イ ス に選 ばれ る と し た。 ③ 南島の選挙母体 (electorate) は16に固定されよう 。 北島の選挙母体は南島の選挙母体 の選挙民数に応 じて割 り振 られよ う 。 ④ マオ リ選挙母体は同様に他の選挙母体の規模お よびマオリ選挙人登録上の選挙民数に依 存す る。 < ⑤ 選挙民には2票が, 一票は選挙区議員そ して も う 一票は政党への投票のために与え られ る○ ■ ■ ㎜ ⑥ 政党には, 彼 らが獲得 した選挙区議席の数と彼 らが得た全土の得票率の間の不均衡を是 正す る ために リ ス ト に基づ く 議席が与え られ よ う (1)。 ⑦ リス ト に基づ く なんらかの議席が政党に割 り当て られる には, 政党は, 全国で投票の少 な く と も 5 % を獲得 し なければな ら ない。 しか し なが ら, こ の要請は, た と え投票率が 5 % よ り少な く て も一議席 またはそれ以上の選挙区議席 を獲得 し た政党に対 し て は撤回さ れる。 その政党には均衡 を と るためにリ ス ト に基づ く 議席が与え られる こ と になろ う 。 F. 憲法文書 (Constitutional documents) : ニ ュ ージーラ ン ドは特別に確立 した (entrenched) 立法文書の意味で成文憲法を もたない。 しか し なが ら, 憲法のい く つかの重要な要素 を扱 う た く さ んの通常の制定法た と えば1986年 の憲法 ( ConstitutionAct/1986, 統治構造法) , 1993年の選挙法お よび1990年の二耳大ジー ラ ン ド権利章典法がある○ ㎜ 次のこ とが記憶に留められるべ きであ る。 すなわち, 上記の制定法は ( 特別には) 確立さ れてお らず, それ故に代議院の単純多数によっ て修正さ れ得る とい う こ とで ある。 ただ1993 年の選挙法のみが さ ら にい く つかの安全弁 を規定 してい る。 そののべ る と こ ろ に よれば, そ の規定のある一定の ものは, また1986年の統治構造法のある ( 議会の期間に関係す る) 規定 は, 提案が代議院の全議員の75% によっ て通過させ らるかまたは国民投票で投 じ られた投票 の過半数によっ て もた ら さ れたので ないか ぎ り , 修正 または廃棄 さ れる こ と は許 さ れない。 この要請それ自体は議院の単純多数によっ て廃棄 さ れ得る。 あ と重要な憲法の特徴は, かな り多 く ( asignificant number of) が判例法お よび慣行に よづて規律 さ れている とい う こ とである。 例えば内閣は憲法慣行によっ てのみ存在 している。 内閣の集団的責任お よび個人的大臣責任 を含 む大臣責任の原理 ( doctrin of ministerial responsibility) も また, 憲法慣行の問題である。 マ グナカルタ ( 1297年) お よび権利章典 (1688年卜のよう な, た ぐさんの重要なイギリス憲法文書がニュージーラ ン ド法の一部 を形 成す る。 ¥ / 78 G. 近 藤 真 権 力の分立 (separationof powers) 権力の分立の原理 (doctrin) は原則 と して (lnprinciple) 支持 されてい る 。 司法が他の 統治機能から明確に区別さ れるのに対 して, 実際上立法府 と執行府の一線は多 く の点でぼや けている。 二大政党制お よび一院制議会のために, 政府は事実上立法府 も執行府 もコ ン トぼー ルす る ので あ る。 IV。 司 法 (TheJudiciary) A. ,. 普 通 裁 判 所 ( the general courtド シ ス テ ム 普通裁判所システムは, その基盤に地方裁判所 ( theDistrict Court) を有す る 。 地方裁 判所 は, 第一審 レベルの仕事 を し, かつ さ ま ざ まな刑事事件お よび比較的軽微の民事事件を 扱 う 。 た と えば, 地方裁判所は, 請求が20万 ドルを こ えない訴訟を審理す る ( hear theaction) 民事司法管轄権 を有する。 た く さ んの地方裁判所判事は一般 に103人 を こ え ない。 地 方裁判所 を統治す る制定法は1947年の地方裁判所法であ る。 地方裁判所からからの上訴 (Appea1) は, 高等法院 ( theHigh Court) に届 く 。 そ・れは ニ ュ ージ ーラ ン ドのための普通司法管轄権 を もつ裁判所で あ る。 高等法院は首席裁判官お よ び32人の他の裁判官か らな る。 高等法院は殆 どの重要な刑事事件, 比較的大 きな民事請求事 件, かな りの数の行政法事件を扱い, かつ下位裁判所お よび審判所 ( tribuna1) か ら の控訴 を審理す る。 高等法院を規律する制定法は, 1908年の裁判所法 ( theJudicatureAct) で あ る。 高等法院からの民事お よび刑事の控訴 ( Appea1) は控訴院 ( theCourt of Appea1) に行 く 。 控訴院は院長 と しての総督によっ て任命 さ れた高等法院判事であるニ ュ ージーラ ン ドの 首席裁判官お よび総督によっ て任命 さ れた6人の高等法院判事から なる 。 控訴院は1908年の 裁判所法 ( theJudicatureAct) において規定さ れる。 最終的な上告 (Appea1) はロ ン ド ンにある枢密院の司法委員会 ( theJudicia1Committee of the Privy Counc11) に よ っ て 審 理 さ れ る 。 控 訴 院 の 全 判 事 は 枢 密 院 委 員 で あ り , かつ し ばし ば枢密院がニ ュ ージーラ ン ド以外の国々か らの上告を審理 している と き に も出席七てい る。 地方裁判所 と高等法院は独任制職業判事 に よっ て主宰 さ れる。 地方裁判所 は12人の陪審員 を持 っ て開廷 さ れる こ とが許 さ れる。 彼 ら は通常かな り重大な刑事事件のために陪審員 と し て働 く 。 高等法院は, 通常, 3判事の小法廷 ( abench) で開廷 されるが, 特別重要 な事件 で は5人の判事の大法廷 (a Fu11Court) と して開廷 さ れる。 枢密院は通常5人の判事 で 開廷 さ れる。 近年枢密院は毎年 3 ない し 4 のニ ュ ージーラ ン ドか らの上告事件 を扱っ ている。 枢 密院への上告の権利は世紀の変わ り 目には廃止 さ れる と予想 さ れる。 そ して も し枢密院の代 わ りに何かを代置する とすれば何 を置 く べ きかについてニュ ージーラ ン ドには多 く の議論が あ る。 B. 特別裁判所および審判所 ( Special courtsandtribunals) 主流の普通裁判所の他 にた く さ んの特別裁判所お よび審判所があ る。 こ れ らの内で著名な も のは以下 の も ので あ る 。 ① 家庭裁判所 (Family Courts) 。 これは, 地方裁判所システムの一部と して機能する。 ニ ュ ージーラ ン ド法 シス テ ム入門 一 解題 と翻訳 - 79 総督は家庭裁判所判事 を任命する。 なかんず く 家庭裁判所は婚姻, 養子縁組, 後見人, そ し て家事 ( domesticaction) に関する事件を審理する司法管轄権 を有す る 。 家庭裁判所 にお ける手続 きは他の裁判所ほど形式的で はな く , 判事 も弁護士 ( counse1) も法鬘 と 法衣 を着 けな い。 十 ② 少年裁判所 (YouthCourts) 。 この裁判所は17才以下の子 ど もおよび少年によっ て犯 さ れた犯罪について扱 う 。 地方裁判所判事は, 少年裁判所における判事 と して出席する。 そ し て少年裁判所の所長が任命 される。 全ての任命は総督によっ て な さ れる。 少年裁判所 は1989 年の子 ど も, 少年お よびその家族に関す る法律 によっ て確立 さ れた。 ③ 治安判事 (Justiceof thePeace) 。 総督は適切な人材を治安判事に任命する。 判事 は, 証人に宣誓お よび宣言 させ, 逮捕状 を発令 し, かつ地方裁判所判事のかわ り に軽微な事件を 審理す るす る よ う な, さ ま ざ まな職務 を執行す る。 ④ 雇用裁判所 ( Employment Court) 。 この裁判所は首席判事およ び数名の他の判事か ら なる。 判事は全て総督によっ て任命 さ れる。 裁判所は労働 に関す る事件を扱 う 。 上 ⑤ 雇用審判所 (EmploymentTribuna1) 。 その審判所は審判所長お よび総督に任命 さ れた 他の審判員からなる。 その審判所の機 能はい く つかの労働 に関す る事件 を裁定 (adjudicate) し, 労使紛争の援助お よび調停 ( mediate) する こ とであ る。 ⑥ 紛争審判所 (DisputesTribunals) 。 た く さ んのこの審判所 は, ニ ユージーラ ン ド にあ まね く 設置 さ れている。 こ の審判所は小 さ な請求事件 を扱 う 。 このシス テムは弁護士 を必要 とす る事無 く 総額3000 ドルを上回ら ない請求を解決す るために相対的に早 く て, 容易で, 費 用の高 く かか ら ない方法 を提供す る こ と で あ る。 ⑦ 人権委員会 (HumanRightsCommission) 。 この委員会は, 総督に よっ て任命 さ れた 委員長お よび他の 5 人までの委員か ら な る。 委員会の機能は人権の分野での活動 を奨励お よ び促進 し, かつ差別事件の調査 をす る こ とで ある。 ‥ ⑧ 差別事件審判所 (ComplaintsReview Tribilna1) 。こ の審判所は, 議長と してのニ ュ ー ジーラ ン ド高等法院の法廷弁護士し( barrister) お よび事務弁護士 ( soliciter) な らびに司法 大臣によっ て維持 さ れる陪審員名簿の中から各審理のために議長によっ て任命 さ れた他の 2 名の審判員か らなる。 こ の審判所の機能はも し訴訟手続 きが差別を理由と して行なわれた と き裁定 ( adjudicate) する こ とである。 ⑨ 々 オリ土地裁判所 (Maori LandCourt) 。 この裁判所は√ 1993年のマ オ リ土地法 (Te Ture W henua M aori A ct 1993) の 下 に マ オ リ の 土 地 に 関 す る 殆 ど の 問 題 を 扱 う 司 法 管 轄 権 を有す る。 総督は, 首席判事お よびこの業務 を処理す るために必要な他の判事 を任命す る。 上訴はマ オ リ控訴院に行 く 。 マオ リ控訴院は3人かそれ以上めマ オ リ土地裁判所判事 か ら な り, 一般に主宰する首席判事 を含む。 ⑩ ワイ タ ンギ審判所 (Waitangi Tribuna1) 。 この審判所は1975年のワイ タ ンギ条約法に 従い1975年に設立 さ れた。 それはニ ュ ージーラ ン ド法シス テムの発展に大いな る効果を与え た。 ニ ュ ージーラ ン ドに対す るイ ギ リ スの主権獲得の時代にワイ タ ンギ条約 は1840年 2 月 6 日にイ ギ リ ス政府の代表 とマ オ リ種族の非常にた く さ んの指導者との間で調印 さ れた。 条約 の原文は英語 とマ オ リ語の両方があ る。 再編の一般 目的は, 国際 レベルで イ ンク テ ン ト の女 王に帰属せ しめられるべ き主権を規定 し, かつイギ リ ス政府の責任で もある領土内での一般 80 近 藤 真 的統治お よび安全 を規定す る こ とで ある。 しか し なが らマ オ リ 人の伝統的な権利は守 られる べ き もの と さ れた。つ 19世紀 を通 じて徐々にこ の創設文書で与えられた地位における縮減があっ た。 そ して20世紀中葉 には, 法 によっ て条約は確定的な もので も権利 を保障す る もので もな い とみな さ れる に至っ た。 マオ リ の事物への関心の復活 ( ルネ ッサンス) と同時にワイ タ ン ギ審判所が1975年のワイ タ ンギ条約法のも と に設立さ れた。 その審判所は, 総督によ り任命 さ れた, 審判議長で あるマ オ リ土地裁判所の首席判事 と他の16人までの審判員か ら なる。 そ の審判所の機能は, 条約が調印さ れて以来, ワイ タ ンギ条約の原則 と矛盾す る立法 また は国王の実務, も し く は政策に よって 引 き起 こ さ れた, マ オ リ の苦情 について調査 し, 勧告 する こ とで あ り, そ してその規定がワイ タ ンギ条約の原則 と矛盾する提案 さ れた立法に関 し 吟味 し, 報告す る こ と で あ る。 その審判所の決定の効果は, 現在 まで の と こ ろ , ニ ュ ージー ラ ン ド に と っ て第一の法的重要性 を もつ文書 と しての条約 を復権 させ, かつ なかんず く マ オ リ の土地, 漁業権お よ び言語 に保護 を与 え る も ので あ っ た。 上 1986年にその審判所は, マ オ リ語は条約によっ て保護さ れた 「taonga ( 高価 な財産) 」, または 「価値ある所有物 (valuedpossession)」 である と認定 した。 結果と し て, マ オ リ語 を保護す る条約上の義務 を履行す るために, 議会 は, 1987年のマ オ リ 言語法 を通過 させた。 それはなかんず く TeReoMaori ( マ オ リ 語) をニ ュ ージーラ ン ドの公式言語 と し て認 め, かつ法的訴訟手続中にマ オ リ語で話す権利 を与 え る。 政府 も ラ ジオ周波数 を保障 し, かつマ オ リ 放送局のための基金 を提供 し た。 裁判所 は, 国王 に対 し条約上の義務 と し て , いつ まで にこ れ らが法に表現 さ れるべ きかを判決す る こ と す ら も許 さ れる (2)。 。 ・。・ ・ I- - こ れ らの発展は裁判 シス テ ムのなかで取 り上げ られかつ認識 さ れて きた。 重要 な事件であ るニ ュ ージーラ ン ドマ オ リ評議会対法務長官 ( Attorney-Genera1) において(3), 控訴院大法 廷は,¥ 法的システムにおける ワイ タ ンギ条約の地位を確認するい く つかの認定 を した。 初期 の枢密院判決に言及 して(4), 控訴院長は次のよ う にのぺた。 十 丿 「今や国王によっ て保有 さ れた土地に関 して, その枢密院判決のよ う な方法でマ オ リ の苦 情が無視 さ れる こ と は, 二度 と けっ して な さ れう るべ きで はない」 ∧ 。 そのかっ ての枢密院判決で判示 さ れていた こ と は, 条約によっ て授与 さ れた権利 も, 制定 法に よる権利の認知がみ と め られ得ない もので あ る な ら ば, 裁判所 によ っ て は強制 さ れ得な い ものであ る と い う こ とであ っ た。 卜 同様に, 審判所の様々な奨励 に従い, 議会は, 商業漁業へのマオ リ の参入を奨励 しかつワ イ タ ンギ条約の下で保障 さ れたマ オ リ 漁業権の認知 を よ り し っ か り と規定す る1989年マオ リ 漁業法を制定 した。 国王 ( Crown) の利益 とマ オ リ の利益 との間の拡張交渉は1992年のワイ タ ンギ条約 ( 漁業補償請求) 解決法 ( theTreaty of Waitangi (FisheriesClaims) Settlem ent A ct 1992 ) に帰 結 し た 。 そ れ は条 約 に基 づ く 補 償 請 求 の解 決 に効 果 を 与 え るこ と を 目 的とす る。 その法の下で, 様々なマ オ リ ・トグループ と,の交渉を通 じて解決 ( Settlement) が 達成 さ れる がゆえ に, 商業漁業権 をめ ぐる請求は も はやワイ タ ンギ審判所へは持 ち込 まれな く なるで あ ろ う 。 しか し なが らその法は非商業漁業に関する国王の義務 を免れさせない。 1863年にワイ カ ト種族か ら没収 さ れた土地に関 して さ ら なる解決のための交渉が行なわれ た 。 1995年 11月 に 国 王 の 伺 意 ( the Roya1 Assent) が ワ イ カ ト征 服 補 償 請 求 解 決 法 (WaikatoRaupatuClaimsSettlement Act) に与え られた。 1994年 5月に調印 さ れた解決 ニ ュ ージーラ ン ド法 シス テム入門 一 解題 と翻訳 - 81 の証書に効果を与える この法は, 土地の誤っ た没収に対する十分な謝罪 と多 く の土地の返還 と損害賠償 を規定 し た。 ∧ 1994年末 に政府は歴史的な補償請求 ( すなわち1992年 9 月以前の請求) に対する 自発的な 解決のための提案 を提唱 した。 総額10億 ドルが補償請求を解決す るために特別に準備された。 提案は, 個別事業 ご と にその特性 に応 じ て処理 さ れる形で, 請求人が直接国王 と交渉す る と い う もので あ っ た。 解決に到達 している ものついて は補償請求の道は閉ざ さ れるであろ う 。 現在 までの と こ ろ こ の提案は√マ オ リ 人には歓迎 さ れていない。 ⑩ フ イルムお よび文献検閲委員会 ( Film andLiteratureBoardof Review) この委員会は総督に任命さ れた 9人の委員からなる。 委員長が任命 される。 委員長は少な く と も 7年 の経験 を有す る法廷弁護士お よび事務弁護士で なければな ら ない。 こ の委員会の 機能は法の も と に分類 さ れた (classified) 資料 を検閲 (review) する こ とである。 C. 訴訟手続 ( Procedure) 基本的な 訴訟手続 シス テ ムはイ ギ リ ス ・ コ モ ンロ ーの訴訟手続であ り, 対審構造のシステ ムであるよ 刑事訴追は私人 (privatecitizen) によっ て も開始 さ れる こ とが許 さ れるが典型 的には殆 ど全ての場合, 政府の代理人す なわち 警察か警察のための検事 ( Cr6wn prosecutor) によっ て執行 さ れる。 V。 法律専門職 (Legal Profession) ニ ュ ージ ーラ ン ド における法律専門職は法廷弁護士お よび事務弁護士か らなる。 全て の法 律家は法廷弁護士 と して もお よび事務弁護士 と して も両方の資格がある。 しか しなが ら彼 ら の年間許可 の取得の際に法廷弁護士か事務弁護士の どち らか と してのみ選択 して許可を求め る人 々がい る。 両者の間には区別が存在す る 。 た と え ば法廷 弁護士 だ けが上位裁 判所 (sperior courts) の法廷に立う 権利 (right of audience) を有するが, 法廷弁護士は素人依 頼人か ら直接的に仕事の依頼を受ける こ と はで きない。 また彼 ら はその弁護料 を訴求で きな χ / ゝ。 I 法律専門職の訓練は, 大学の法の学位 を得た う えで, 専門法学研究の教育機関 (研究室, 司法修習所 な ど) での13週間の専門的訓練のプ ログラムを受けるこ とを条件とするこ とになっ てい る。 判事は実務専門職の上級メ ンバーか ら総督 によっ て任命 さ れる。 司法官職への任命は, 制 定法の定年 まで のテ ニ ュ アの確保 を意味す る 。 典型的にはシス テ ム内で の昇進はない。 検事の独 立専門職はない。 Ⅵ。 法 ¥ 源 (Sources of Law) 2つの主要な法源がある。 立法 (Legislation) と先決例 (Precedent) であ る。 議会主権 の原則のゆ えに立法は優越的 (s卯erior) な法源で あ る。 議会の法 (1aw) は最 高 ( supreme) で ある。 裁判所は無効である陳述を宣言する こ と はで きない。 立法の主要な形式は 議会の法律 (Act) である。 多 く の議会の法律は規則 ( regulations) の形式で制定され るべ き補助立法 を規定する。 執行評議会は評議会命令によっ て規則 を制定する。 も し議会が権限 を委任すれば, 立法が規則 (rules) または条例 (bylawi) の形式で制定 さ れる こ とが許 さ 82 犬 近 藤 真 れ る (5)。 卜 A. 犬 先決例の原理 ( Doctorineof precedent) 先決例の原理の本質は, 事件に対 し判決を下す下位裁判所が同じ事件に関する上位裁判所 のよ り早期の決定に拘束 さ れる と いう こ とである。 大量の判例法があ り, かつ先決例の運用 が上位裁判所の決定に法の源泉 と して の非常に大 きな実務的重要性 を与 える。 B. 法の区分 ローマ ・ ゲルマ ン法的意味での例え ば公法, 私法, 民事法お よび商法 と い う よ う な法の区 分はない。 ほと ん どのヶ - ス において 法の分野は含 まれて い る主要な問題のみに よ っ て選定 さ れる。 唯一意味のある実務的お よび概念的区分は民法 と刑法の間の区分であっ て, た とえ ば証明の基準が民事事件 と刑事事件 と で は異なっ てい るか らである。 歴史的にイギ リス における大法官 ( 衡平法) 裁判所 ( Courts of Chancery) の諸規範 に よっ て発展 した よ う な衡平法 ( Equity) の諸規範は, ニ ュ ージ ー ラ ン ドの法 シス テ ムの本 質的かつ基盤 と な る部分で あ る○。・ C. ㎜ ■ 外国の影響力 法改革の レベルでは英連邦 ( theCommonwealth) の外側からの法の影響力は無視 し得る。 しか し なが ら, 英連邦のコ モ ン ・ ロー ・ シス テ ムの内部で は他国のシス テ ムの法の影響力は かな りある 。 外国の決定はニ ュ ージー ラ ン ドの裁判所 をある事件において特別な結論に到達 す る よ う に拘束す る こ と はで きない。 しか し, 外国の決定は部分的にはも し外国のシス テム におけるた と えばイ ギ リ ス貴族院, カ ナ ダ最高裁判所, あるいはオース ト ラ リ ア高等法院の 決定のよ う に最高裁判所 (court of eminence) からでた も ので あればニ ュ ージー ラ ン ドの 裁判所 に対 し高い説得力 を持 ち得る。 実際問題 と して イ ギ リ ス の上位裁判所の決定は, ほと ん どニ ュ ージーラ ン ドの裁判所の決定以上にた く さ んニ ュ ージ ーラ ン ド における注 目を浴び る 。 こ れは大 まかに言って , よ りた く さ んの人口を抱 えた裁判管轄権か ら はた く さ んの有用 な決定がで る と い う 理由に よ っ ている 。 D. 法 づ 典 ローマ法的意味においてはニ ュ ージ ーラ ン ドに法典 ( codesof law) はない。 た く さ んの 分野が立法の課題で あ るが, その内のい く つかの分野は, コ モ ン ・ ローを排除また は揉嗣す る立法において処理 さ れる。 最 も理解 しやすい制定法は, 刑事法分野お よび会社 = 商法分野 におけ る制定法である 。 それ ら は, 強 く イ ギ リ ス法に基づ き, そ して世紀の変わ り 目頃か ら 始まっ ている。 現行の制定法の例は, 1961年の犯罪法 ( Crimes Act) お よび1908年の為替 手形法 ( theBillsof ExchangeAct 1908) である。 1986年の高等法院規則 は立法形式 にお いて手続法のかな りの部分 を規定 して い る。 しか し, 契約, 不法行為お よび私有財産の基礎 的な諸原則のよ う な私法の要 と なる領域が立法の外に残 さ れている。 E. 裁判官の役割 犬 理論的には裁判官は立法の従者であ り, かつそれを適用す るのみで なければな ら ない。 し か し なが ら, コモ ン ・ ロー ・ シム ステムにおける司法官職の本質は, 裁判官は, 適用が複雑に なっ た立法の高度な特異性 によっ て促 さ れて, しば し ば創造的な方法で, 活動する と い う こ と であ る 。 時々立法は広い裁量権 を与 え る。 と く に家族法の分野で はた く さ んの特別規範が ある一方で , 効果 と して司法官職に重要 な創造的役割を残 したた く さ んの広い裁量権 も存在 ニ ュ ージーラ ン ド法 シス テ ム入門 一 解題 と翻訳 - 83 して いる。 裁判所は規則 (regulation) のよ う な補助立法を議会によっ て与え られた権力 を越 え る と きに審尋 しかつ無効にす る こ と が許 さ れる。 Ⅶ。 家 族 法 A. 婚姻 (Marriage) 婚姻を規律する法は, 1955年の婚姻法 ( MarriageAct 1955) に見いだ される。 婚姻意志 の通知は婚姻登録官に届け られ, かつ制定法上の宣言がな さ れねばな ら ない。 婚姻許可はそ の時発せ られる。 婚姻は両当事者が望むなん らかの形式に したがっ て婚姻司祭の前で式をあ げるか, または登録官の事務所で登録官の前で式をあげる。 両ヶ - ス において婚姻は公開で 午前6時か ら午後10時まで に少な く と も 2人の証人の下で挙式 さ れねばな ら ない。 親族関係, 姻戚関係 に関す る婚姻能力 に対す る少数の禁止があ る。 16才以下の子 ど も には 婚姻許可が与え られる こ と は許 さ れず, 16か ら20才 まで の場合 には両親か後見人の同意が要 求さ れる。 も し同意が拒否 さ れた場合, 同意の申請が家庭裁判所判事にな さ れる こ と が許さ れる 。 特定 さ れた時間外の婚姻のよ う な手続的瑕疵は, 婚姻を無効に しない。 しか し なが ら 例え ば両当事者が婚姻許可な し に婚姻 し た場合, も し く は婚姻司祭または登録官な し に, あ るい は禁止 さ れた親等内で , 婚姻 し た場合, 婚姻は無効で あ る。 B. 婚姻解消 (Dissolutionof Marriage) 婚姻解消を支配する法は1980年の家事訴訟手続法 (Family ProceedingsAct 1980) に見 いだ さ れる。 婚姻解消の唯一の理由は婚姻が回復不能な まで に破綻 し た と い うこ と で あ る。 も し両当事者が現在別居 してお りかつ申請に先立つ2年間別居 し続けて いた と す れば基準 は 満た さ れる。 C. 監護, 後見および面会 ( Custody, guardianshipandaccess) 監護, 後見お よび面会の裁定 (Arrangements) は, つ ぎのよ う な原則 に よっ て支配 さ れ る。 それは子 ど もの福祉が第一義的で最高の考慮点だ とい う こ とである。 特定の性別の後見 人の下にお く こ とが子 どもの福祉のために最高に役立つであろ う とい う前提は存在 し ない。 そ し て確認可能な場合 には子 ど もの望みが考慮 さ れる。 共同監護はニ ュ ージーラ ン ド において一般的なパ タ ー ンで はない。 通常の方法は一方の親 は監護義務 を有 し, 他方の親は面会権が与え られる と い う もので ある。 D. 扶養 ( Maintenance) 婚姻が解消 された と こ ろで は, 配偶者への引 き続 く 扶養 ( maintenance) のための規定 (provision) は, そのよ う な扶養 ( provision) を必要 とす る特別の事情がないか ぎ り , な χ /ゝ。 。 ・ 子 どもの扶養に関する法は1991年の児童援護法によっ て カバーさ れている。 申請は内国税 省の当該関係機関にな さ れる。 E. 夫婦財産 ( MatrimoniaI Property) 婚姻解消に関 し夫婦の財産分与におけ る基本原則は両当事者が財産を均等に分有す る とい う こ とで ある。 不均等な分有が命 じ られる こ とが許さ れるのは, 婚姻が3年間以下 し か維持 さ れなかっ たか, 裁判所の意見で は均等 に分有す る こ とが正義 と矛盾するで あろ う 事情があ 84 近 藤 真 る場合で ある。 そのよ う な事情においては分与は婚姻生活に対するそれぞれの配偶者の貢献 度に したがっ て決 定 さ れる。 貢献度は, 広 く 定義 さ れ, かつそれぞれの配偶者の財産的貢献 度に限定 さ れないが, 夫婦の子 ど もの養育の よ う な要素 を含んで いる。 Ⅷ/ 契約法 ( Law of Contract) △ 契約法 の基本原則 はコ モ ン ・ ロ ーの原則で あ る 。 契約は申込 ( offer) と承諾 (acceptance) を含まねばな らない。 そ して拘束力を持つ合法的契約は, 約因 ( Consideration) の 必要, 合法的に契約関係 に拘束力を持たせる意思 (lntention) , 重要な法律上の形式要件の 遵守 (compliance) な どた く さ んの他の要件 を満た さ ねばな らない。 上 以下の ものを含むた く さ んの制定法 も契約法の分野 に影響力 を持っ てい る。 ① 1969年の未成年者契約法 ( theMinors ContractsAct 1969) 未成年者の契約の能力 を 扱 う 法律 ② 1970年の違法契約法 ( thelllega1ContractsAd 1970) 契約が許さ れない問題を特定す る法律 犬 卜 ③ 1977年の契約錯誤法 ( theContractua1MistakesAct 1977) 契約 にお ける錯誤 に関す る法律 ④ 1979年の契約救済法 ( theContractua1RemediesAct 1979) 虚偽表示や契約破棄 に対 する救済法律 し l ⑤ 1981年のク レジ ッ ト契約法 ( theCredit ContractsAct 1981) 契約における暴利行為の 防止お よ び金額明細公表の規定法律 ⑥ 1982年の契約関係当事者法 (theContractsPrivityAct 1982) 第三者 に よる契約の強 制法律 IX. ‥ 不法行為法 (Law of Torts) 不法行為法の基本原則はコモ ン ・ ローの原則である。 多様な不法行為 は, 広 く 過失 ( negligence) , 妨害 ( nuisance) , 誹毀 ( defamation) コお よび誤判 ( falseimprisonment) にお ける行為 を含 む。 不法行為が故意 または過失に よ り侵 さ れた と い う こ と ↓お よび不法行為が 訴求可能であ り得 るだめには, 一般的にいっ て, 損害が生ぜ しめ られた にちがいない とい う こ とが, 概 して証明さ れねばな らない。 こ の分野で の重要な立法的影響は, 事故補償体制 (゛lc節以下参照) で あ る 。 X。 商法 ・ 会社法 ( Commercial/ Company Law)¥ ニ ュ ージー ラ ン ドの商法 ・ 会社法は, オース ト ラ リ アの影響 もオース ト ラ リ ア ・ ニュ ージー ラ ン ド緊密経済関係条約 と の効果的調和の結果 と し て商法領域でみ られる のだが, 広 く はイ ギリ ス法に基づ く 。 く わえて非常に多様な制定法がこの領域 を支配 している。 た と えば流通証券 ( negotiable instruments) は1908年の為替手形法お よび1960年の小切手法 ( theChequesAct 1960) に よっ て カバーさ れる。 債務超過支払不能 (lnsolvency) は, 1967年の債務超過支払不能法 ( thelnsolvencyAct 1967) で扱われる。 1978年の証券法 ( theSecuritiesAct 1978) は公衆 ニ ュ ージ ー ラ ン ド法 シス テ ム入門 一 解題 と翻訳 - 85 に提供 さ れた証券 を規律す る。 1986年の商法 ( theCommerceAct 1986) は取 り引 き実務 を 扱 う 。 1990年の重大詐欺局法 ( theSeriousFraudOfficeAct 1990) は, 商法にお け る詐欺 の事件を扱 う 重大詐欺局を設立 した。 1986年の公正取引法 ( theFair Trading Act 1986) は不公正な取 り引 き実務 を禁止 し , 1 993年の消費者保護法 ( theConsumer GuaranteesAct 1993) は消費者に対す る物 品お よ び サービスの供給における制定法上の保護 を規定する。 会社は1993年の会社法ノ( theCompany Act 1993) によっ て規律 さ れ, かつ組合 は1908年 の組合法 ( thePartnershipAct 1908) によっ て規律 さ れる。 XI . 刑 法 ニ ュ ージーラ ン ドにおける刑法は1961年の犯罪法によっ て規律 さ れる。 こ の法は解 りやす く , かつ刑事法お よび訴訟手続の全局面を カバー している。 XII. ニ ュ ージーラ ン ド。 法にお ける革新者 はるか前世紀以来ニ ュ ージーラ ン ドは偉大 な法の革新者で あっ た。 例 えば家族法の分野で はニ ュ ージーラ ン ドは1881年に養子縁組の観念 を採用 した。 養子縁組はそれ以前はコ モ ン ・ ローの部分にはなかっ た。 ( ローマ法思考によっ て影響 さ れて ) ニ ュ ー ジー ラ ン ド も 1900年 に相続における留保の権利 を規定 した。 現行法規で あ る1955年の家庭保護法は死者の財産の 分配 において適切な給付がな さ れなかっ た場合 に死者の財産か らの給付 を一定の人々(6) が 申 請で きる よ う に定めて いる。 こ の両問題にお いて ニ ュ ージーラ ン ドは英連邦のリ ーダーだっ た。 そ して養子縁組 と相続にお ける家族保護はコ モ ン ・ ロ ー世界における ほと ん どのシス テ ムに と っ て今や共通の特徴で ある とい う 意味において影響力があっ た。 A. オム ブ ズマ ン ー , 1962年 にニ ュ ージーラ ン ド はス ウェ ーデ ンのオ みブズマ ンの思想 を採用 しかつ発展させた。 ニ ュ ージーラ ン ド にお ける実験の成功は英連邦 にあ まね く そ七て英連邦外の世界のシス テ ム においてす ら同 じか同様のシス テムの採用に導いた。 1975年のオムブズマ ン法は代議院の推薦に基づいて総督による一人かそれ以上のオムブズ マ ンの任命を規定す る。 オムブズマ ンの主要な 目的は政府活動お よびある機構の行為に関し て個人に よっ て だ さ れた苦情 を調査す る こ と で あ る。 その原則は商業 レベ ルで の自発的な産 業規制にまで一般化 さ れてい る (7)。 B. 犬 社会福祉 卜 ゜ ト ニ ュ ージーラ ン ドは1930年代に創出さ れたその社会福祉 システ ムの強力な発展で知 られた。 主要な給付は無料の保健医療, 無料の教育, 一般的な年金そ して向学心のある子 ど も を援助 する金銭給付であ っ た。 1984年以来, 新経済政策 と一致 して歴代の諸政権は福祉国家 を縮減 して きている。 その結果 と して, 保健医療, 教育, 年金お よび子 ど もの向学心への援助 とい う 給付 は今や資産基準による判定の形式に服 している。 C. 事故補償 し ¥ ‥ : ‥ ‥‥ 1972年の事故補償システ ムの導入は社会福祉思想の拡張で あ っ た。 1972年の事故補償法 ( theAccident CompensationAct 1972) お よび1982年のその継承物はと も に, ニ ュ ージ ー 86 . 近 藤 真 ラ ン ドにおける事故による身体的傷害に苦 しむ人々に過失責任 ( fault) の有無 にかかわ り な く 支払い得る給付のシス テ ムを規定 した。 法は事故に関 して は身体傷害に対する求償権 を 廃止 し た ○ 1992年の事故後 リハ ビ リ ・補償保険法 ( theAccident Rehabmtation and Compensation A ct 1992) は 1982年 法 を 廃 棄 し た 。 新 法 は 無 過 失 責 任 に 基 づ く 身 体 傷 害 へ の 補 償 の 原 則 を 尚 も具体化 しているが, 資格は補填についてはかな り縮小 さ れた。 D. 公情報 ◇ 1982年の情報公開法 ( theOfficial lnformationAct 1982) はニ ュ ージーラ ン ド人のた め の公情報の利用可能性 を増大 さ せる こ と を 目的 とす る。 情報公開法は, 情報に対す る要求に たい して, 法の下で細か く 規定 さ れている よ う に, 情報 を非公開にする理由があるので なけ れば, 情報は利用に供 させ られるべ き ものと さ れる, とい う 原則が形成さ れる こ と を許 しか つそれに基づいて機能す る。 非公開理由は, 国民的お よび国際的関係お よび安全の理由を含 む。 E. プ ラ イ バ シー立法 さ らなる有益な法は, 1993年のプラ イバシー法 ( thePrivacyAct 1993) であ る 。 こ の法 は, 公私の部門の機関に よっ て保持 さ れた個人に関す る情報の収集, 利用, 保管に関す るた く さ んの指導原則 を規定す る。 ごの法は, プ ラ イバシー監督官 ( Commissioner) を規定す る。 プラ イバ シー監督官は, と りわけ (inter alia) プ ラ イバ シー問題への干渉に関す る苦情 を調査す る 。 こ の法 も また 様々な国家機関の間で の情報の統合 を規制す る原則 を規定す る。 XⅢ。 財 産 土地の権原は登記によっ て保護 さ れる。 運用 さ れている シス テ ムは大陸 ヨ ーロ ッパの土地 登記 シス テ ムか ら19世紀 にオ ース ト ラ リ アで ロバー ト ・ ト ー レ ンズ卿 に よ っ て発展 さ せ られ た シス テ ムに基づ いて い る 。 マ オ リ の土地は1993年のマ オ リ 土地法 (Te Ture Whenua M aori A ct 1993) で 扱 わ れ る 。 X皿 他 の法 シ ス テ ム 比較法の観点か らニ ュ ージーラ ン ドの法システ ムは明 らかにコモ ン ・ ロー系の主流のなか にあ り, 英連邦の他の殆 どのメ ンバーの法シス テ ムに十分 にちかいので英連邦の どこ かで訓 練 さ れた法律家な らニ ュ ージーラ ン ドで容易 に操作す る こ とがで きる。 マ オ リ法の分野における意義深い発展について言及 して きた。 これらの発展 もニ ュ ージー ラ ン ドの主要 な シス テ ムの文脈の中に位置付 け られる。 加えてニュ ージーラ ン ド本国 ( metropolitanNew Zealand) の法 シス テ ムに関係す る以 下の他の4つの法シス テ ムがあ る。 A. ニ ュ ージーラ ン ド と 自由に結合 した諸国家 2つの南太平洋国家の法 シス テ ムがあ る。 す なわち ク ッ ク 諸島 と ニ ウエ で あ る。 こ れ ら の 両国家はニ ュ ージー ラ ン ドの王国の一部であ っ た。 しか し, 1965お よび1974年の自決の行為 によ っ てそれぞれ, 両者は憲法上独立 した国家にな り , かつ今選択の結果 と して ニ ュ ージー ニ ュ ージー ラ ン ド法 シス テム入門 一 解題 と翻訳 - 87 ラ ン ド と 自由に結合 した 自治国家 にな っ て い る。 両国は当分の間外交お よび防衛の問題 にお いて 国際的にはニ ュ ージーラ ン ド によっ て 代表 さ れてい る。 両国の現在の立場の重要な実際 的帰結は両国の住民がニ ュ ージーラ ン ド公 民で あ り, かつそれゆえにニ ュ ージーラ ン ド旅券 を使用す る権利 を有す る点で ある○ B。 属領 ( D ependent territories) 第二に, 2つの属領がある。 す なわち ト ケ ラ ウは, 南太平洋の赤道に近い, 三つの小 さ な 珊瑚環礁か ら なる。 約1700人の住民はポ リ ネシア系の子孫であ り, かつ三つの環礁 に分散 し てい る。 ト ケ ラ ウは, 1889年か ら1949年 までの間連合王国の管轄責任下にあっ た。 1926年に ト ケ ラ ウはニ ュ ージーラ ン ド総督の管理下 におかれた。 そ して1949年に主権は正式にニ ュ ー ジーラ ン ド に移管 さ れた。 ■ ■ ■■ ト ケ ラ ウの上級公務員は ト ケ ラ ウの行政官である。 行政官の機能お よび権力の殆 どは委任 の方法で ト ケ ラ ウの指導者によ っ て行使 さ れる。 ト ケ ラ ウはそれ自身の法を有す る。 しか し, ト ケ ラ ウはニ ュ ージーラ ン ド本国の立法府か ら独立 した 自身の立法府 を持たない。 ト ケ ラ ウは, 1962年にニ ュ ージーラ ン ドの同意で植民 地の国家お よび国民への独立の付与に関す る国連の宣言によっ て規定 さ れる領土のリス ト に 入れ られた。 ト ケ ラ ウは, なお もその自決権 を行使 し なければな ら ない。 ニ ュ ージーラ ン ドの他の属領で あ る属領 ロス は南極大陸にあ る 。 その少ない非定住の住民 の大多数は科学調査に従事 している。 それはニ ュ ージーラ ン ド本国の法システムに基づ く , あ ま り整備 さ れていない法シス テ ムを持つ 。 XV. ¥ 法律教科書 ニ ュ ージ ーラ ン ド ぱ小 さ く かつ それゆ え にニ ュ ージーラ ン ド法 にたいす る専 門教科書 は相 対的に少ない。 外国法律史家に と っ て有益 な も っ と も有用な一般出版物 は次のテ キス ト であ る 。 New Zealand: The Development of its L aws and Constitution, edited by Dr. J. L . Robson(8)。 こ のテ キス ト はい ま絶版で あ り , かつ, やや時代物 と な っ て し まっ たが, ニュー ジー ラ ン ド法, その歴史的発展お よびその強みと特徴についての傑出した入門書である。 ニ ュー ジー ラ ン ド法のよ り固有かつ現行の範囲の補強を含む ものは百科事典的な Thelawsof New Zealand(9) で あ る。 十 …… 現存す る教科書お よび雑誌は典型的には個別特殊な主題についての もので ある。 た と えば ニ ュ ージーラ ン ド憲法 を扱 う 最近の出版 は, Joseph, Congtitutional and Administrative L aw in New Zealand(10) で あ る 。 家族法の分野 にお い て は, Fisher on M atrimonia1 Property(11), Atkin and Henaghan, Family P011cy in New Zealand(12), Trapski, Tapp, Fowler, Trapski s F amily L aw(13) そ し て W ebb, A dams, A tkin, Johnson, Butterworth Family L aw Service(14) を み よ 。 契 約 法 領 域 で は, Cheshireand Fifoot s Law of Contract(15) お よ び Nico11, Contract Law in New Zealand(16) をみ よ。 重要な不法行為教科書 は Todd, Law of TortsinNew Zealand(17)である。 有用 な土地法教科書 は Hinde, McMorland, Sim, Land Law(18) で あ る 。 刑 法 の分 野 で は Adams on Crimina1 L aw (19) お よ び Garroxv and Tutkington s Crimina1 L aw in New 近 88 藤 真 Zealand(゜) を み よ 。 マ オ リ 問 題 に 関 し て は Orange, The Treaty ・。of W aitangi(21) お よ び Treaty lssues: U nfinished Buisiness(22) を み よ 。レ 現行法情報のための最良の出版物は週刊 TheCapita1Letter(23) で ある。 法律雑誌については, 月刊で発行 さ れる TheNew ZealandLaw Journa1(24) をみ よ。 どの 大学 法 学 部 も そ れ 自身 の法律 雑 誌 を だ し て い る が諸 法学 部 が共 同 で A New Zealand U niversities L aw R eview を だ し て い る 。 The N ew Zealand L aw R eports(25) は 制 定 法 上 の 機 関 で あ る 「 ニ ュ ー ジ ー ラ ン ド 法 報 告 評 議会」 の コ ン ト ロールの下で 出版 さ れたニ ュ ージーラ ン ド判例が年毎に分巻 して綴 じ られて いる。 また法の個別領域に関する決定を年毎に分巻 した ものもある。 立法 は最初 はバ ラ バ ラ に刊行 さ れる 。 法律 のた め の年毎 に分巻 し て 綴 じ ら れ た The Statutes of New Zealand(26) お よ び 規 則 の た め の Statutory R egulations(27) も ま た 有 用 で あ る。 十 註 * A n th o n y H . A n g el o , P r o f e s s o r , * * R o sem a r y G or don , B A L L B , F a c u l ty o f L a w , V i c t o r i a U n i v er s i t y B a r r i s t er an d S o l i ci t o r o f th e H i g h o f W el l i n g to n C ou rt of th e N ew Zealand (1) た と えば政党はだだ1選挙区議席のみを得るか も しれないが, 全国で は10% の得票 を得て いたか も しれない。 政党は政党投票が当選資格 を与える120議席のう ちの総計即 ち10% にあた る12議席 を 政党 に与 え る よ う に11議席が政党 リ ス ト か ら与 え ら れる。 (2) N ew ZealandMaori Council vsAttorney-Genera1 [199212 NZLR 576. (3) [ 198711 NZLR 641, 668. (4) H oani TeHeuheuvAotea DistrictMaori LandBoad [1941] AC 308. (5) た と えば1974年の地方 自治法は地方機関に条令 を制定す る権限を与えた。 (6) た と えば死者の残 さ れた配偶者 と子 ども (7) た と えば銀行オムブズマ ンの任命 (8) 2 ed, StevensandSons,工 〇ndon, 1967。 (9) Butterworths, Wellington, 1992. (10) Law Book Co, Sydney, 1993レ し (11) 2 ed, Butterworths, Wellington, 1984. (12) Oxford University Press, Auckland, 1992. (13) Brooker andFriend, Wellington, 1981. (14) 2 vols, Butterworths, Wellington, 1986. (! 5) 8 ed, Butterworths, Wellington, 1992. (16) CCH New Zealand, Auckland, 199L (17) Law Book Co, NorthRydeNSW, 1991. (18) Butterworths, Wellington, 1978-1979. (19) Brooker and Friend, Wellington, 1992. 上 ニュ ージーラ ン ド法 シス テ ム入門 (20) 7 ed, Butterworths, Wellington, 1991. (21) A11enandUnwin (NZ) Ltd, Wemngton, 1987. (22) 一 解題 と翻訳 - 89 訴訟の会議が1995年 2 月ウェ リ ン ト ンで もたれた。 Victoria University of Wellington Law R eview , volum e 25, N um ber 2, July 1995. を 参 照 せ よ 。 (23) NZFinancia1PressLtd, Auckland, によ り出版 さ れている。 (24) Butterworths, Wemngton, によ り出版さ れている。 (25) Butterworths, Wellington, によ り出版 されている。 (26) ニュ ージーラ ン ド政府機関によ り印刷 されている。 (27) ニュ ージーラ ン ド政府機関によ り印刷 さ れている。