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外国人住民と社会包摂の課題
外国人住民と社会包摂の課題 ダイバーシティ研究所 代表理事 田村太郎 外国人住民の「3つの脆弱性」 • 日本語や日本の習慣がわからない – 施策へのアクセスができない – 就学や就労でも障壁になる • 法制度や社会資源の不備 – 日本語習得機会や多言語情報提供が未整備 – 「就学義務がない」「民生・児童委員になれない」 • 日本社会からの偏見 – 「外国人は勝手に来た人なので自己責任だ」 – 「外国人が増えて治安が悪くなった」 「外国人=弱者」ではなく、外国人の持つ「脆弱性」に失業や離婚など 「別のリスク」が重なったとき、日本人より困難な状況に陥る 日本における外国人の様子 • 外国人住民の総数は約230万人(2009年末現在。外国人登 録者数約219万人+非正規滞在者約11万人) – 経済危機で初の減少も予想より減少幅は小さかった • 滞在の長期化で「出稼ぎ」から「永住」へ指向が変化 – 永住者資格の新規取得者は年間4〜5万人 – 出産、子どもの呼び寄せによる児童・生徒の増加、高齢者福祉も課 題として顕在化 • 国際結婚も増加し、多様な文化背景を持つ子どもは年2万 人以上、生まれている 3 日本で暮らす外国人住民の概要 4 出典:平成21年末における外国人登録者統計について(法務省入国管理局) 5 永住者資格を取得する外国人が増加 特別永住者 一般永住 者 法務省入国管理局統計より作成 7 日本人と外国人の婚姻件数 年次推移 45,000 40,000 夫妻の一方が外国 夫日本・妻外国 妻日本・夫外国 35,000 30,000 25,000 20,000 15,000 10,000 5,000 0 昭和45年 50年 55年 (厚労省人口動態統計資料より田村作成) 60年 平成2年 7年 12年 17年 8 母子保健領域での課題 • 総出生数の2.15%が 「父母のうちいずれ かが外国人」(平成2 1年) • 母の国籍が外国の 場合、乳児死亡率が 高いとの指摘も • 健康保険未加入や 未受診出産のリスク が高い(外国人の保 険加入率は日本人よ り低い) • 周産期医療制度や 習慣のちがいへの配 慮も必要 父母のいずれかが外国人の出生数の年次推移 (厚生労働省人口動態統計より作成) 就学児童・生徒の課題 • 日本語指導が必要な外国人児童・生徒数の増加 • 不就学(≠不登校)児童・生徒が存在、「児童労働」も • 中学生や就学年齢を超えてから来日する場合、高校進学が 難しい 日本語指導が必要な外国人児童 生徒の母語別在籍数の推移 (文部科学省作成) 就学児童・生徒の課題 外国人登録している 就学年齢児童生徒 のうち、 17%が 「所在不明」 (文部科学省「外国人の子どもの不就学実態調査結果について」より) 11 就学児童・生徒の課題 不就学の理由のトップは 「お金がないから」 不就学の子どもの20.2%は働いてい る 文部科学省「外国人の子どもの不就学実態調査結果について」より) 12 製造業・派遣労働を支える外国人 外国人の雇用は、平成19年10月1日から雇用状況の報告が義務化 • 外国人労働者を雇用している事業所数は108,760か所(前年同期比13,466か所、14.1%増)、 外国人労働 者数は649,982人(前年同期比87,164人、15.5%増)。 • 産業別にみると、外国人労働者を雇用する事業所、外国人労働者ともに、製造業が最も多く、全体に占 める割合はそれぞれ31.6%、39.9%。 (平成22年10月末現在外国人雇用状況届け出状況より) 製造業・派遣労働を支える外国人 • 労働者派遣・請負 事業を行っており、 外国人労働者を雇 用している事業所 は18,830か所で、 事業所全体の 17.3%。 • 当該事業所に就労 している外国人労 働者は181,021人 で、外国人労働者 全体の27.9%。(別 表4) (平成22年10月末現在外国人雇用状況届け出状況より) (参考:雇用危機以前の外国人雇用状況) 社会保障やセーフティネットからの転落 • 健康保険、公的年金からの漏れ – 派遣労働による課題(保険未加入は「イノベーション」) – 制度のちがいによる認識不足 – 「帰国するだろう」という甘い見通し • 外国人が生活保護を受給することへの「反発」 – 「外国人は税金を払っていない」という誤解 – 生活保護目的の来日ケースの誇張 • 機能していない「緊急雇用支援」 – 雇用危機以降に配置された相談員の課題(適切な研修も受けていな い、相談員の雇用も不安定) – 「日本語ができなければ仕事はない」という指導 – 結果として、雇用危機以前より短期の派遣や請負労働へ回帰 政府によるこれまでの取り組み • 1990年に入管法改正も「いわゆる単純労働」は認めず。日系人や 研修・技能実習生を例外的に受け入れ、地域に必要な雇用を代 替。 → 国民的議論や合意形成のないまま、外国人人口が急増 → 日本語教育や多言語情報提供は未整備のまま20年が経過 • 05年度から総務省が「多文化共生の推進」を掲げて施策を体系 化。自治体が取り組むべき施策を体系的に示した「多文化共生推 進プラン」を発表(06年3月) • 06年末には、内閣官房が「生活者としての外国人への総合的対応 策」を発表。 18 雇用危機以降の政府・自治体の動き • 政府による対応 – – – – – – • 内閣府「定住外国人施策推進室」の設置、担当大臣の任命(09年1月) 内閣府「当面の対策」の発表(09年1月) 文科省「定住外国人子ども緊急支援プラン」(09年3月) 厚労省「日系人離職者に対する帰国支援事業」(09年4月) 厚労省「日系人就労準備研修」(09年4月〜) 文科省「虹の架け橋プロジェクト(不就学児童対策)」(09年4月〜) 自治体による対応 – 「ふるさと雇用再生特別交付金」「緊急雇用創出事業」の活用 • • 通訳や相談員としての臨時雇用 介護ヘルパー養成講座の開催 – 外国人コミュニティへのエンパワメント • • 「定住外国人自立支援センター」の設置 外国人相談員や通訳サポーターの養成 – 事業所への雇用促進 • • 「多文化な職場づくり」のためのセミナー開催 商工会議所等と連携した雇用の開拓 民間による取り組みの事例 • 生活オリエンテーションの実施 – 多言語による生活オリエンテーションを市役所などと共同で実施 • 多文化共生の保育、多言語対訳集の利用 – 保護者とのコミュニケーションを支援するツールの活用 • 放課後学習支援活動の実施 – 放課後に一人になりがちな外国人児童生徒への学習支援を地域の NPOが実施 • 高校入学をめざした多文化フリースクールの開設 – 日本語と教科学習を約1年間学び、公立高校入学をサポート • 外国人コミュニティによる相談活動の実施 – エスニシティを超えた相談活動を実施 • 異文化対応のできるデイケアセンターの運営 – 外国人高齢者のニーズに対応 今後に向けて • 社会統合政策、とりわけ日本語教育の法制化および体系的実施 – 総務省「多文化共生推進プラン」を発展させ、社会統合政策を法制化すべき – 文化庁、厚生労働省などが個別に行う日本語教育を一元的、体系的に整理 – 多様な地域事情に対応できる柔軟なプログラム実施が不可欠(テキストやカ リキュラムを選択できる、など) • 既存の政策・施策における外国人の包摂 – 「外国人」という切り分けではなく、「就学が困難」「就労が困難」という切り口 から、外国人にも共通の配慮が欲しい – 通訳・翻訳体制の整備による既存の相談窓口を活用や、外国人相談員によ る分野横断的なソーシャルワークの展開が有効 – 日本が人口変動社会に向かう中、外国人も地域に不可欠な存在であること が多くの国民の共通理解となるような社会的機運の醸成も必要 • 複合型支援モデルの実施 – カテゴリーを超えて就学や就労を実現するモデル事業の実施を期待(外国人 障害者支援、外国人シングルマザー支援など) 「外国人永住者100万人」時代にふさわしい取り組みを! ▲内閣府「治安に関する世論調査」(平成18年12月調査)より ▲愛知県の意識調査より(中日新聞2008年2月8日) 47%が否定的な意見 23 来日外国人犯罪検挙者数の推移 年間検挙者数 外国人犯罪者は 増えていない! 特別法犯 上期検挙者数 刑法犯 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 出典:「来日外国人犯罪の検挙状況(平成21年上半期)」(警察庁刑事局組織犯罪対策部国際捜 査管理官、平成21年8月) 24