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浸透尻
地盤工学的見地からみた調査報告 名城大学 小高猛司 ○矢部川堤防調査委員会による破堤についての見解 ○浸透破壊(パイピング)に対する課題 ○沖端川の樋管付近の被災状況 矢部川堤防調査委員会による破堤についての見解 九州地方整備局筑後川河川事務所 矢部川堤防調査委員会資料より 矢部川堤防調査委員会による破堤についての見解 九州地方整備局筑後川河川事務所 矢部川堤防調査委員会資料より 九州地方整備局筑後川河川事務所 矢部川堤防調査委員会資料より 九州地方整備局筑後川河川事務所 矢部川堤防調査委員会資料より 九州地方整備局筑後川河川事務所 矢部川堤防調査委員会資料より ・堤外地高水敷にあった玉石は、上流の掘削 土の仮置き及び堤防断面で,高水敷にこの玉 石混じりの掘削土が盛土として,更にこの掘 削土を利用して川面側の堤体法面を腹付けし ている。 ・手前側の破堤箇所から下流側には,破 堤時に流入したと思われる粘性土やシル ト主体の細粒土砂が堆積している。 ・大型土嚢による法尻の応急復旧の様子 からも,破堤箇所よりも上流側にも漏水箇 所が見られたことが示唆される。破堤に影 響を及ぼしたと見られる基礎地盤の砂層 の分布は,この応急復旧箇所付近まで上 流側に広がっていた。 矢部川堤防破堤のまとめ ・破堤箇所は,昭和25年~28年の間に,水田のあった箇所に引堤された堤防 であった。 ・長時間にわたるHWL以上の浸水による基礎地盤の浸透破壊(パイピング破 壊)であった。 ・浸透破壊(パイピング)の原因は,基礎地盤のゆるい沖積砂層と高水敷と堤 体に積まれた砂礫を通る浸透水にあった。 ・破堤地点に河川横断構造物などはなかった。 ・破堤に至る激しい漏水はごく局所的に発生した。 ・堤体の粘性土の含水比はそれほど高まっていなかった。 ・砂層は河川氾濫物であり旧河道の堆積物と見られる。 今後の教訓 ①旧河道等の要注意箇所の堤防の照査方法の高度化 局所動水勾配0.5以下の判定法の限界 (水平と鉛直の動水勾配の違いなどなど) 九州地方整備局筑後川河川事務所 矢部川堤防調査委員会資料を参考 内閣府 大規模水害対策に関する専門調査会資料より 内閣府 大規模水害対策に関する専門調査会資料より 内閣府 大規模水害対策に関する専門調査会資料より 内閣府 大規模水害対策に関する専門調査会資料より 内閣府 大規模水害対策に関する専門調査会資料より 沖端川の樋管付近の被災状況 矢部川水系沖端川 調査状況(12k600m付近) ⑰ ⑮ ⑯ 堤防決壊箇所 沖端川左岸12k600 L=30m ⑥ ① ③⑪ ④ ⑫ ② ⑭ ⑦ ⑬ ⑤ ⑧⑱ ⑨ ⑩ 写真撮影位置 50m Googleマップより作成 200フィート 写真撮影位置 ⑤堤防の陥没状況 天端沈下 ↓ ←法面陥没 樋管 ↓ ⑬天端沈下と法面陥没と樋管の関係 ⑥堤防の天端の変状状況 ・天端の沈下変状は堤防川裏法面の陥没 に関連していると思われ,天端の変状か ら,堤体を横断して空洞化が発生した可 能性がある。 ・堤内地での樋管の出口には砂質土が堆 積していたが,堤体土から流失したもので あるかどうかは不明。 ・樋管周りに洪水まえから空洞があった可 能性は否定できない。 ⑦沖端川破堤点上流部堤防のすべり面 ⑧堤防の滑り状況 ・下流部での破堤の状況から,この場所 においても堤内地で長時間浸水していた と考えられる。川裏法面でのすべり面と 陥没は,水位低下時に発生した可能性 もある。 ・法尻部の水路には浸水によってかなり の土砂が堆積していたものと思われる。 ⑭堤防すべり面と水路 ⑮沖端川の矢部川分派点方向 ⑰水門横の階段に堆積した土砂 ⑯行基橋方向 ⑱樋管出口に堆積した土砂 ・左岸側の河岸および川面法面に広範囲にわたって土砂(砂質土)の堆 積が見られる。特に水門横には相当量の堆積があった。川裏の樋管出 口の水路にもほぼ同じ土質の土砂が堆積していた。 軟弱粘土層 ①初期状態 ②抜け上がり開始 亀裂 抜け上がり 空洞 ③空洞・クラッツの発生 ④樋管沿いに漏水発生 堤体内に空洞形成 樋管底盤直下の空洞をきっ かけとして側壁部に拡がる ゆるみ領域の発生・発達 21 浸透力の繰返し載荷により,底盤下の空間に側壁周辺の土が吸い出され, ゆるみ領域が徐々に拡大していく まとめ ・横断構造物がないような堤防断面においても,純粋な浸透破壊 で堤防決壊はやはり発生する。 ・旧河道はやはり厳重注意が必要。 ・それでも横断構造物はやはり厳重注意が必要。 ・照査法の限界を知ることが必要。