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調べたことを順序に沿って説明する授業

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調べたことを順序に沿って説明する授業
生活科(小学校第1学年)
調べたことを順序に沿って説明する授業
本事例の言語活動のポイント
①
説明メモを活用することで、カレーづくりについて調べた内容や感想などを、相手に伝
えるための文章構成を意識してまとめさせたり、説明させたりする。
②
グループで発表する場を設定し、自分と友達の発表内容を比較させることで、その内容
の違いに気付かせる。
単元名
うちのしごとのひみつをさぐろう
単元目標
【生活への関心・意欲・態度】
進んで家の人の仕事の工夫を探そうとする。
【活動や体験についての思考・表現】
〇
絵や写真、具体物を使って発表したり、友達の意見を聞いて質問したりすることがで
きる。
〇
家族の一員としての自覚をもち、家族のためにできることを探すことができる。
【身近な環境や自分についての気付き】
家庭のカレーの秘密を探る活動を通して、家族の温かい愛情に気付くことができる。
単元を構想するに当たって
生活科では、
「体験と言語等の関わりを重視した合科的・関連的な活動」が重視されている。
そこで、本単元では、生活科と国語科の合科的・関連的な活動を位置付けることを試みた。
具体的には、児童は家の人に「カレーについて調べたいので作ってほしい」という主旨の
手紙を書く。そして、カレーづくりの様子を見たり、家の人にインタビューしたりしながら、
調べたことをメモし、教師自作のモデル文から学んだ書き方で、我が家のカレーの作り方の
説明文を書く。我が家のカレーについて発表するときは、絵や写真、動作化などを用いて、
聞き手に分かりやすく発表できるようにする。グループ活動も設定し、友達との関わりを通
して、一人調べの不十分さや友達のよさに気付かせ、さらに調べたいという意欲をもたせる。
より分かりやすい説明ができるように文章や伝え方を工夫する時間も確保していきたい。ま
た、児童にはこれまでに調べてきたカレーの材料や調理方法などを基に、実際にカレーづく
りを体験させる。この学習過程を通して、家の仕事を軽視しがちな児童に、楽しく家庭生活
を過ごすため、時間や労力を惜しみなく使っている家族の愛情に気付かせたい。
このように、生活科の言語活動として重視されている「体験したことを伝え合う」
「感想を
述べ合う」活動を単元の中に位置付けた。
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指導計画(全 15 時間)
学習活動
(授業時間)
第1次
(3)
指導上の留意点
○家で普段しているお手伝いを ・事前に、道徳の時間で「家のお手伝い」に
関わる主題を扱い、意欲付けをする。
発表する。
○家の人がしている仕事の内容 ・家の仕事調べを通して、食事の準備や片付
けには、多くの時間が費やされていること
について話し合う。
に気付かせる。
第2次
(5)
○カレーづくりに関わる学習の ・家の人にカレーづくりを依頼する手紙を書
かせ、家庭での調べ学習に意欲をもたせる。
見通しをもつ。
・言葉だけでなく、絵に描いたり写真を撮っ
○課題を確認する。
たりした資料や、動作化などを用いて発表
○カレーについて、家族が料理し
するように助言する。
ている様子を調べ、友達の家の
カレーづくりの内容と比べる。 ・友達の発表や話し合いから、一人調べの不
十分な点や友達のよさに気付かせ、もう一
○我が家のカレーの秘密につい
度調べたいという意欲をもたせる。
てまとめる。
第3次
(7)
○自分たちで作るために、どんな ・家庭によってカレーの材料や作り方に違い
があることに気付かせる。
材料を使うかを考え、グループ
・友達と自分の内容を比較して考えるように
で役割を決める。
させる。
○家庭の仕事について考える。
○家族のために、自分たちができ ・家庭の中で、自分ができることをやろうと
いう気持ちを高めさせる。
ることを考える。
指導の実際
1
家の仕事を探る(第1次)
第1次では、 家庭の仕事について考える。
児童に普段しているお手伝いを発表させる
と、「お皿を並べる」「玄関をはく」「お風呂
を掃除する」など、得意気に話した。そこで
「いつもは誰がしているのか」と問い返し、
家の人が家族のためにいろいろと仕事をし
てくれていることに気付かせた。
次に、「家の人の仕事をよく見よう」とい
う課題を設定した。すると、家庭の仕事に興
【写真1
お手伝いについて話す児童】
味をもち、家庭でも進んで手伝ったり調べた
りする児童が増えた。家で観察した結果を発表させると、買い物、掃除、洗濯、食事の準
備などが挙がってきた。食事の準備に関しては、
「1日に3回も作るなんて、料理が一番大
変そう」という意見が出て、みんなが共感する場面があった。これにより、家庭の仕事調
べを通して、家の人が、食事の準備や片付けに多くの時間を費やしていることに気付かせ
ることができた。
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2
【資料1
おいしい料理の秘密を探る(第2次)
お願いの手紙】
「我が家のおいしい料理の秘密を探り、学校で作ってみ
よう」と投げかけ、
「うちのカレーをよく見て、友達と比
べよう」という課題を設定し、これからの学習に見通しを
もたせた。
ここで、家の人の協力を依頼するため、資料1の「お願
いの手紙」を書かせた。児童は手紙を書いたことで、これ
からの学習に対する意欲を高めていった。
児童にカレーについて調べた内容を発表させると、「野
菜を切るときに手が切れないように猫の手みたいにして
切る」
「鍋を二つにして大人用と子ども用を作る」
「チョコ
レート、ヨーグルトを入れる」などがあり、作り方、家族
への思い、材料の三つに分けて整理した。質問は「なぜ〇
〇を入れるのか」 「〇〇は入れないのか」など、
材料についての内容が多く、児童は一人調べの不
【資料2 調べたことをまとめた説明メモ】
十分な点や友達との内容の違いに気付き、もう一
度家庭で調べたいという意欲をもった。
そこで、
「うちのカレーの秘密を探ろう」と課題
を設定した。
「秘密」という言葉も児童の追究意欲
を刺激し、
「野菜を炒めてからの煮込む時間を調べ
る」「隠し味はいつ入れるかを聞く」「買い物につ
いていく」など、資料集めに意欲的に取り組もう
とする姿が見られた。調べた結果は資料2のよう
に説明メモにまとめさせた。その中で、児童は、
「おいしく食べられるように、いろんな工夫をし
てくれているよ」
「自分も作ってみたい」などの感
想を出し合っていた。
その後、この説明メモを基に、我が家のカレー
づくりについて説明する活動に入った。
5月の生活科の単元「おおきくなあれ」では、
国語科の学習を生かし、資料3の作文メモを
活用して、アサガオの様子を文章と絵で表す
活動を取り入れていた。この経験を生かし、
我が家のカレーの作り方でも資料4の説明
メモと、資料5の教師自作のモデル文を準備
し、児童が簡単な説明文を書いたり、発表し
たりすることに活用させた。発表の際には、
絵や写真を使ったり、動作を交えたりして、
友達に分かりやすく伝える工夫をしながら
説明することができた。我が家と友達のカレ
ーの違いに、児童は興味津々であった。
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【資料3
アサガオ作文メモ】
【資料4
3
カレーの作り方説明メモ】
自分でやってみる(第3次)
【資料5
カレーの作り方の説明モデル文】
これまでの学習を通して育まれて
きた「自分も作ってみたい」という
気持ちを生かして、課題「自分たち
でカレーを作ろう」を設定した。
おいしいカレーを作るには、どん
な野菜を使うか、道具は何が必要か
など、これまで調べてきたことを基
に話し合い、グループで作るカレー
のレシピをまとめ、役割分担もして
調理計画を立てた。
調理当日は、多くの保護者にも参
加していただき、児童のカレーづくりのお手伝いをしていただいた。
カレーづくりの後、家庭の仕事について再度考えさせた。
「ぼくたちのために頑張ってく
れている」など、家族に対する感謝の気持ちを話す児童がほとんどであった(資料6)
。
【資料6
A子さんのお母さんへの手紙】
【写真2 カレーづくりに挑戦する様子】
がっこうでカレーをつくったよ。じゃがいも
を水であらうのがつめたかったよ。おかあさん、
まい日、ありがとう。これからは、わたしもお
手つだいするね。そして、じぶんのできること
は、じぶんでやるようにするよ。
考
○
察
児童が好きであり、家庭独自の工夫を凝らすことができる料理であるカレーを題材とし
て扱ったことにより、児童は意欲的に調べたり、まとめたりする姿が見られた。
○
グループでの発表や話し合いを通して、自身の一人調べの内容と友達が調べた内容を比
べて、その内容の不十分さやよさに気付かせたにより、比較を通して違いを見付ける思考
力、判断力を育むことができた。
○
国語科で学習した作文メモの内容を生かした説明メモを活用して、カレーの作り方を説明
させたことで、相手に伝えるための文章構成を意識して、調べたことをまとめたり、発表した
りすることができ、児童の表現力を育むことができた。
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