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2004年10月号 - 信金中金 地域・中小企業研究所

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2004年10月号 - 信金中金 地域・中小企業研究所
ISSN1346-9479
Shinkin Central Bank Monthly Review
第 3 巻 第 1 1 号( 通 巻 3 7 9 号 )
● 地方財政と三位一体改革
−中長期的には地方交付税制度の抜本的な見直しが焦 点−
● 米国の田舎におけるコミュニティバンキング
● 業況改善が続く中小精密機械製造業の現状
−業況好転の背景と好調企業の取組事例−
● 預金者行動からみた金融機関の情報開示
● 経済見通し
実質成長率は04年度3.4%、0 5 年 度 2 . 5%と予 測
−輸出の増勢は鈍化するが、05年度も景気回復が続く−
● 知的財産権担保融資の概要
● 信用金庫職員を対象とした
平成16年度中小企業経営改善支援実務研修の開催
● 統計
2004.10
「信金中金月報掲載論文」募集のお知らせ
○対象分野は、当研究所の研究分野でもある「地域金融」「中小企業金融」「協同組織金融」に関
連する分野とし、これら分野の研究の奨励を通じて、研究者の育成を図り、もって我が国にお
ける当該分野の学術研究振興に寄与することを目的としています。
○かかる目的を効果的に実現するため、本論文募集は、①懸賞論文と異なり、募集期限を設けな
い随時募集として息の長い取り組みを目指していること、②要改善点を指摘し、加筆修正後の
再応募を認める場合があること、を特徴としています。
○信金中金月報への応募論文の掲載可否は、編集委員会が委嘱する審査員の審査結果に基づき、
編集委員会が決定するという、いわゆるレフェリー制を採用しており、本月報に掲載された論
文は当研究所ホームページにも掲載することで、広く一般に公表する機会を設けております。
詳しくは、当研究所ホームページ(http://www.scbri.jp/)に掲載されている募集要項等をご参
照ください。
編集委員会 (敬称略、順不同)
委 員 長
堀内昭義
中央大学総合政策学部教授
副委員長
藤野次雄
横浜市立大学商学部教授(信金中金総合研究所長)
委 員
筒井義郎
大阪大学社会経済研究所教授
委 員
濱田康行
北海道大学経済学部教授
委 員
吉野直行
慶應義塾大学経済学部教授
問い合わせ先
信金中央金庫総合研究所「信金中金月報掲載論文」募集事務局(担当:落合、稲葉)
Tel : 03(3563)7541 / Fax : 03
(3563)7551
Shinkin
Central
B a n k
Monthly
Review
研 究
2004年10月号 目次
地方財政と三位一体改革
荒井宏文
2
青木 武
20
平井昌夫
42
廣住 亮
63
角田 匠
78
谷地向ゆかり
92
総合研究所
101
−中長期的には地方交付税制度の抜本的な見直しが焦点−
米国の田舎におけるコミュニティバンキング
業況改善が続く中小精密機械製造業の現状
−業況好転の背景と好調企業の取組事例−
預金者行動からみた金融機関の情報開示
調 査
経済見通し
実質成長率は04年度3.4%、05年度2.5%と予測
−輸出の増勢は鈍化するが、05年度も景気回復が続く−
解 説
知的財産権担保融資の概要
信金中金だより
信用金庫職員を対象とした
平成16年度中小企業経営改善支援実務研修の開催
信金中央金庫総合研究所活動状況(8月)
102
統 計
信用金庫統計、金融機関業態別統計
103
2004
10
個人名による掲載文のうち意見にわたる部分は執筆者個人の見解です。
投資・施策実施等についてはご自身の判断によってください。
地方財政と三位一体改革
−中長期的には地方交付税制度の抜本的な見直しが焦点−
信金中央金庫 総合研究所研究員
荒井 宏文
(キーワード)三位一体改革、国庫補助負担金、税源移譲、地方交付税、財源調整機能
(視 点)
小泉政権は、構造改革の柱の一つとして、国と地方の税財政改革に着手した。三位一体改革
と呼ばれる政策の狙いは、①国庫補助負担金の削減、②地方への税源移譲、③地方交付税の削
減、という3つの改革を同時に進めることにより、歳出の削減と地方自治の確立を目指すもの
である。改革初年度の04年度には、地方交付税が大幅に削減され、小規模自治体を中心に不満
が続出した。しかし、改革の進め方に異論はあるにしても、財政再建と地域経済の活性化に
は、地方が自らの責任の下に行政運営を行うことが必要である。本稿では、改革の背景と目
的、進捗状況を整理するとともに、地方への影響度合いを試算し、今後の課題にも言及した。
(要 旨)
●
税収伸び悩みと90年代の公共投資拡大などで、国・地方とも財政は危機的な状況にある。
●
地方の歳入不足を国からの財政移転で賄う現行の財政システムの下では、地方の歳出削減が
財政再建のカギを握っている。また、国庫補助負担金や地方交付税による国から地方への財
政移転は、地方の自立を阻害し、画一的な地方行政と無駄な歳出をもたらしている。
●
これを打開するには、補助金・交付税の削減と税源移譲を一体的に行う三位一体改革を推進
し、地方の権限・責任の拡大で効率的な財政運営を促し、財政再建につなげる必要がある。
●
改革初年度は、国庫補助負担金の削減に比べて税源移譲が少なく、地方交付税の削減が大き
かったことから、財政力の弱い地域を中心に地方は大幅な歳出削減を余儀なくされた。
『基本方針2004』に基づいて改革のシミュレーションを行ったところ、地方の財政面の自由
●
度が増す反面、歳入総額は落ち込む。地域間の財政力格差は一段と拡大する。
●
中長期的には交付税制度の抜本的な見直しが焦点となるが、小規模自治体が財政力の地域間
格差を自助努力で解消することには限界があり、財源調整機能は引き続き必要となる。
2
信金中金月報 2004.10
的に実施された。それと同時に、高齢化が世
1.はじめに―三位一体改革の概要
(1)改革の目的は、国・地方の財政再建と地
界に例をみないスピードで進行し(注)1、社会保
障関連の支出が膨れ上がった。その結果、国・
方分権・地方自治の促進
地方とも財政赤字が拡大し、債務残高が累増、
小泉首相は、日本経済の構造改革の柱の一
元利払い負担の増大で赤字が赤字を生む悪循
つとして、三位一体の改革を推進しようとし
環に陥っている。
ているが、その背景には、国と地方の財政危
また、現行の国と地方の財政システムは多
機と国の地方に対する過度の関与による地方
くの問題点を内包している。とりわけ、国に
行政の自立性の著しい低下がある。
よる地方行政への過度な関与は、地方の自立
まず、国と地方の財政状況について概観す
ると、バブル崩壊後、景気の長期低迷とデフ
性や財政規律を阻害し、画一的な地方行政、無
駄な支出の温床となっている。
レなどにより税収が伸び悩む一方、90年代前
こうした状況を打開すべく、今年度から三
半には景気対策として公共事業の追加が断続
位一体改革が本格的に推進されているわけだ
図表1 三位一体改革の背景と目的
●バブル崩壊後の景気の長期低迷、90年代前半の公共
事業の膨張、高齢化の進展
●国による地方行政への過度の関与
弊
害
●国と地方の財政危機
が、その目的は、国と地方の財政再建と地方
分権・地方自治の促進であり、最終的には、地
方に財源と行政の裁量権を与え、地方の特性
を活かした地域経済の再生を促すことで、日
本経済全体の活性化につなげることを狙って
いるといえよう。
●画一的な地方行政
必
要
性
●国と地方の財政再建
…地方の財政責任の確立と財政運営の効率化を促す。
国の地方に対する一律・画一的な縛りによって生
じる無駄な歳出の削減
●地方分権・地方自治の促進
…地方に財源と裁量権を与え、地方の特性・知恵を
活かした再生を促すことで、日本全体の活性化に
つなげる。
(備考)信金中金総合研究所が作成
(2)三位一体改革の主な内容と望ましい姿
三位一体改革とは、①国庫補助負担金(注)2の
改革、②税源移譲を含む税源配分の見直し、③
地方交付税(注)3の改革、という3つの改革を同
時並行的に進める改革のことである(図表2)
。
その目的の一つが財政再建であることからす
れば、補助金・交付税の改革は削減を意味し、
(注)1.先進諸国の高齢化率(総人口に占める65歳以上の人口の割合)を比較すると、日本は80年代までは下位、90年代には中位、
21世紀初頭には最も高い水準となった。
2.国庫補助負担金とは、国が地方自治体に対して、特定の事業を促進する目的で資金の使途を指定して、その経費の全部また
は一部に相当する金額を交付する国庫負担金および国庫補助金のこと。
3.地方交付税とは、地方財源の均衡化を図り(財源調整)、かつ地方行政の計画的な運営を保障する(財源保障)ために、国
税のうち、所得税、法人税、酒税、消費税、たばこ税それぞれの一定割合の額を、国が地方自治体に対して交付する使途制限
のない一般財源。地方交付税には、普通交付税と、災害など特別な事情に応じて交付する特別交付税がある。普通交付税は、
基準財政需要額(図表12)が基準財政収入額(図表12)を超える地方自治体に対して、その差額(財源不足額)を基本として
交付される。
研 究
3
図表2 三位一体改革の概要
〈三位一体の改革の主な内容〉―『基本方針2003』―
①補助金(国庫補助負担金)の改革
・事務事業・補助金のあり方を抜本的に見直す。
・
「改革と展望」の期間中(2006年度まで)に概ね4兆円程度をメドに廃止、縮減等を行う。
②税源移譲を含む税源配分の見直し
・「改革と展望」の期間中に、補助金改革に対応して税源移譲
・税源移譲に当たっては、個別事業の見直し・精査を行い、補助金の性格等を勘案しつつ8割程度を目安として移
譲し、義務的な事業については徹底的な効率化を図った上でその所要の全額を移譲
③交付税の改革
・「改革と展望」の期間中に地方の自立に向け、交付税の財源保障機能全般を見直し、縮小する。
・地方歳出を見直し、交付税総額を抑制
〈三位一体の改革で達成されるべき「望ましい姿」〉
―地域のニーズに応える地方主導の行政システム
●行政面…国の関与を縮小し、地方の権限と責任を拡大
地方自治体が自らの創意工夫と責任で行政サービスを選択
●財政面…地方一般財源の割合引き上げ
地方税の充実、地方交付税への依存の引下げ
効率的で小さな政府の実現
(備考)1.一般財源は、使途が特定されておらず、地方自治体の裁量によって自由に使える財源。地方税、地方譲与税、地方特例
交付金、地方交付税の合計
2.内閣府『経済財政運営と構造改革に関する基本方針2003』などより作成
税源移譲は補助金・交付税の削減額より小さ
施する必要があるものについては、基幹税(注)5
くなる。具体的内容は、03年6月に閣議決定さ
の充実を基本として税源移譲を行うというも
れた『経済財政運営と構造改革に関する基本
のである。税源移譲に当たっては、個別事業
方針2003』
(いわゆる骨太の方針第3弾。以下、
の見直し・精査を行い、補助金の性格などを
『基本方針2003』という。
)で示された。
勘案しつつ、削減額の8割程度を目安として移
まず、補助金改革では、事務事業(注)4・補助
譲する。ただし、義務的な事業については、徹
金のあり方を抜本的に見直し、「改革と展望」
底的な効率化を図った上でその所要額の全額
の期間と定めた04年度から06年度までにおお
を移譲するとしている。
むね4兆円程度をメドに廃止、縮減を行うこと
とした。
税源移譲に関しては、
「改革と展望」の期間
中に、補助金削減に対応して、国から地方へ税
交付税改革については、交付税の財源保障
機能(注)6を全般的に見直すとともに、地方歳出
を見直し、交付税総額を抑制することを目指
している。
源移譲を行う。つまり、廃止する補助金の対
また、三位一体改革の結果として、達成さ
象事業の中で引き続き地方が主体となって実
れるべき「望ましい姿」としては、
「地域のニ
(注)
4.事務事業とは、施策を達成するために行う個々の事務および事業のこと。自治体が関与するすべての仕事が該当する。
5.税源が普遍的に存在し、国や地方の税収において中核的な役割を果たしている税
6.財源保障機能は、地方が一定水準の行政を運営できるように、国が地方の財源を保障する仕組みである。
4
信金中金月報 2004.10
ーズに応える地方主導の行政システム」の構
残高は、すでに700兆円を上回り、名目GDPの
築が挙げられている。すなわち、行政面では、
1.5倍にも達している。OECDが発表している
国による地方への関与を縮小し、地方の権限
国と地方の債務残高(対名目GDP比)の国際
と責任を拡大する。財政面では、地方税の充
比較をみてみると、90年代初めの日本は60%
実を図り、効率的で小さな政府を実現するこ
台で米国とほぼ並んでいたが、その後は急速
とが期待されている。
に悪化し、03年には157.3%と主要先進国の中
本稿では、三位一体改革の背景と目的を踏
まえた上で、改革の現状、その影響、今後の
で突出している(図表3)
。
小泉政権は、財政再建への第一歩として、公
課題について検討・分析するが、第2章では、
共事業の削減を進めているが、それだけでは
三位一体改革の背景として重要な国と地方の
自ずと限界がある。国の歳出の推移を主要経
財政危機について、具体的な数字を用いて確
費別にみると、社会保障関係費、国債費が大
認してみたい。
きなウエイトを占めているが(図表4)、高齢
化が進むなかで前者の抑制は極めて困難であ
2.三位一体改革の背景①―国と地方
の財政危機
り、後者は財政再建の結果としてのみ、その
(1)国の財政再建のためには、地方の財政責
するという観点から、国から地方への支出の
削減が可能となる。そこで、国の歳出を抑制
任の確立と財政運営の効率化が必要
削減に焦点が当てられているわけである。地
前述したように、税収の減少と公共事業・
方への支出を削減するためには、地方の歳出
社会保障費の拡大で、日本の財政は90年代に
自体の削減、すなわち財政運営の効率化が必
入って急速に悪化し、新規国債の発行額は98
要となる。そして、そのためには、地方財政
年度以降30兆円を突破している。また、地方
の国への依存体質を是正し、地方の財政責任
の財政も大幅な赤字を抱え、国と地方の債務
の確立を促すことが不可欠である。ちなみに、
図表3 国と地方の債務残高の国際比較
(名目GDP比)
図表4 国の一般会計歳出(主要経費別)の
推移
(兆円)
(%)
157.3
社会保障関係費
150
20
130
イタリア
17.6
地方財政関係費
日本
110
19.8
国債費
15
公共事業関係費
16.5
カナダ
フランス
90
ドイツ
10
米国
70
イギリス
7.8
5
50
30
(年)
90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 00 01 02 03
(備考)OECD Economic Outlook No.75 より作成
0
(年度)
70 72 74 76 78 80 82 84 86 88 90 92 94 96 98 00 02 04
(備考)財務省資料より作成
研 究
5
図表4の地方財政関係費は、地方交付税と地方
図表5 地方の歳入構造(02年度)
特例交付金の合計であり、国庫補助負担金な
100
どは含まれていない。
地方の歳入構造をみてみると、02年度で地
(%)
90
16.7
13.7
地方債
70
方交付税は歳入全体の20.1%を占めている(図
60
表5)
。これに、その他の一般財源1.6%と国庫
50
13.6
国庫補助負担金
20.1
40
補助負担金13.6%を加えた「国からの財政移
その他
80
地方交付税
1.6
30
転」の合計は35.3%に達し、地方税の34.4%を
20
上回る規模となっている。
10
その他の一般財源
34.4
0
国
か
ら
の
財
政
移
転
地方税
地方歳入
また、小規模な市町村は、財政基盤が脆弱
(備考)総務省『地方財政白書』より作成
な地域が多く、国に対する依存度が著しく大
きい。02年度の歳入に占める地方税の割合が
図表6 歳入に占める地方税の割合(02年度)
(%)
「10%未満」である市町村は全市町村の23.5%、
同じく「10%以上20%未満」の市町村は30.0%
にものぼる(図表6)。全国の半分以上の市町
村は、歳入に占める地方税の割合が20%にも
満たないわけで、国からの財政移転と借金に
頼っている。
そもそも、こうした財政移転システムはな
ぜ作られたのであろうか。国と地方の税の配
30.0
30
︵
市
町
村
全
体
に
占
め
る
割
合
︶
25
23.5
20
18.9
15
13.6
10
8.0
4.6
5
1.3
0
(%)
10未満 10-20 20-30 30-40 40-50 50-60 60以上
(歳入に占める地方税の割合)
(備考)地方財務協会『市町村別決算状況調』より作成
分は6対4と国の方が多く、一方、最終的な支
出は4対6と地方が多い(図表7)。その差額を
図表7 財政移転の概念図
国:地方
財政移転で埋めるわけだが、国から地方への
財政移転システムは、社会資本の整備や福祉
国 税
が立ち遅れていた時代には、ナショナル・ミ
6:4
地方税
ナショナル・ミニマム達
成のため、地方交付税、
国庫補助負担金等による
財政移転
ニマム(どの地域も最低限満たすべき行政の
水準)の達成に大いに寄与した。財源を国が
配分し、地方財政の均衡化を図ることによっ
て、豊かな地域も貧しい地域も、同じ基準で
施設やサービスを住民に提供することが可能
国 の
最終支出
4:6
地 方 の
最終支出
となったからである。また、特定の分野に対
し、一定の基準で補助金を出すことによって、
6
信金中金月報 2004.10
(備考)総務省『地方財政白書』、財務省資料より作成
国が望ましいと考える方向に地方を誘導する
を求めたため、地方歳出は大幅に上昇した。実
という機能も果たしていた。
際、歳出が増加した80年代末から90年代前半
こうしたシステムは、戦後の復興期、ある
には、歳出の前年比に対する普通建設事業費
いは高度成長期には、十分に機能し、日本の
(国からの補助事業や自治体の単独事業など)
発展に貢献したと考えられる。しかし、その
の寄与度が大きくなっている(図表9)。この
一方で、国による財源の配分は、地方の財政
ように、地方の税収が伸び悩む中で、歳出を
規律を阻害し、公共サービスの受益と負担の
増加させたため、歳出額から税収額を差し引
関係を希薄化させ、バブル崩壊後に財政赤字
いた税収不足額は、90年代前半に大きく拡大
の拡大という形で、その弊害が浮き彫りにな
した。
った。国の財政再建のためには、国から地方
このため、地方財政は多額の負債を抱える
への財政移転システムの抜本的な見直しが必
こととなった。地方債現在高と債務負担行為
要である。
額(注)7の合計から積立金現在高を差し引いた
「将来にわたる実質的な財政負担額」は、90年
(2)地方財政の現状①―税収の低迷、公共事
業の膨張、公債費負担の増大
度の46兆円から02年度には132兆円へと3倍近
くに膨れ上がった(図表10)。
国と同様に地方財政も危機的な状況にある。
債務残高の増加は、地方財政を圧迫し、財
地方税収は80年代に順調に増加したものの、バ
政の硬直性を高める。公債費(地方債や借入
ブル崩壊後は頭打ちとなり、おおむね30兆円
金等の元利払い費用)は年々増加し、02年度
台前半で推移している(図表8)。税収が伸び
には13兆円に達した(図表11)
。公債費負担比
悩む中、政府は90年代前半に数次にわたる景
率(使途が自由である一般財源のうち公債費
気対策を打ち出し、地方にも公共投資の拡大
に充てられた額の割合)も上昇し、02年度に
図表8 地方の税収と歳出の推移
図表9 地方歳出の前年比と普通建設事業費の
寄与度
(兆円)
(%)
税収不足額
(歳出−地方税)
地方税
歳出
100
90
80
94.8
その他
普通建設事業費
歳出
8
70
61.5
60
6
4
50
2
40
30
33.4
0
-2
20
10
10
80
82
84
86
88
90
92
94
96
98
00
02
(年度)
(備考)地方財政協会『地方財政統計年報』、総務省『地方財
政白書』より作成
-4
緊急経済対策
総合経済対策
新総合経済対策
(87.5.29)
(92.8.28)
(93.4.13)
公共投資:5兆円 公共投資:8.6兆円 公共投資:10.6兆円
80
82
84
86
88
90
92
経済対策
(95.9.20)
公共投資:7兆円
94
96
98
00
02
(年度)
(備考)地方財政協会『地方財政統計年報』、総務省『地方財
政白書』、内閣府『経済白書』などより作成
(注)
7.債務負担行為は、複数年度にわたる事業を将来の支出を約束して実行する行為
研 究
7
図表10 将来にわたる実質的な財政負担の推移
図表11 公債費と公債費負担比率の推移
(兆円)
(兆円)
(%)
14
140
132兆円
120
100
20
18
12
16
10
14
8
12
80
60
40
①地方債現在高
②債務負担行為額
(翌年度以降支出予定額)
③積立金現在高
①+②−③
46兆円
20
10
6
8
4
地方債元金償還額(左目盛)
利払い額
(地方債+一時借入金、左目盛)
公債費負担比率(右目盛)
0
2
-20
-40
87
89
91
93
95
97
99
(備考)総務省『地方財政白書』より作成
0
01
(年度)
91 92 93 94 95 96 97 98 99 00 01 02
(備考)総務省『地方財政白書』より作成
6
4
2
0
(年度)
は19.2%と、財政運営上の危険ラインとされる
存しない1.0以上の市町村が多いのは関東と中
20%に急接近している。また、公債費の内訳
部といった大都市圏である。
をみると、超低金利のために利払い額は抑制
財政基盤が比較的弱い地域にはいくつかの
されているが、地方債の元金償還額は増加傾
特徴がみられる。
まず、
公共投資への依存度(注)8
向にある。今後、金利が上昇することになれ
が高い傾向がある。例えば、北海道の公共投
ば、利払い額も増加し、公債費の負担はます
資依存度は、97∼01年度の5年間の平均で12.9%
ます大きくなる。地方にとっても、財政再建
と全国平均の7.1%を大幅に上回る(図表13、
は喫緊の課題である。
左図)
。財政力指数と公共投資依存度の相関図
を都道府県別にみると、公共投資への依存度
(3)地方財政の現状②―公共投資依存度が高
く、高齢化地域ほど財政基盤が脆弱
これまでは地方財政を全体的にと
が高い地域ほど、財政力指数が低い傾向が読
み取れる(図表13、右図)
。政府は、05年度の
らえてきたが、次に地域による財政
図表12 地域別の財政力指数の状況
(市町村シェア、02年度)
状況の違いをみていく。
100
(%)
一般的に、地方圏では、都市圏に
80
比べ財政基盤が弱い傾向がある。財
60
政基盤の強弱を示す財政力指数(図
40
表12)を地域別にみると、北海道で
は0.25未満の市町村がおよそ7割を占
め、東北、中国、四国、九州・沖縄
でも5割近い。一方、地方交付税に依
20
0
全北東関北中近中四
国海北東陸部畿国国
道
信金中金月報 2004.10
九
州
・
沖
縄
・財政力指数
…「基準財政収入額÷基準財政需
要額」の3か年平均で表され、
値が大きいほど財政基盤が強い
ことを示す。
・基準財政収入額
…標準的に収入し得るものとして
算定された税収入額
・基準財政需要額
…一定水準の行政を実施するのに
必要な一般財源
(備考)地方財政協会『市町村別決済状況調』より作成
(注)
8.公共投資依存度は、名目GDPに占める公的固定資本形成の割合
8
0.25未満
0.25以上∼0.5未満
0.5以上∼0.75未満
0.75以上∼1.0未満
1.0以上
当初予算でも公共事業の削減を進め
る方針を示しており、公共投資依存
度が高い地域の経済は一段と厳しさ
を増す可能性もあろう。
また、高齢化が進展している地域
ほど財政基盤は弱い。高齢化率(注)9と
図表13 公共投資依存度(左図)、財政力指数と公共投資
依存度の相関図(右図)
(%)
14
12.9
12
10.3
10.5 10.3
10.2
10
8 7.1
6.4 6.4
財政力指数の相関図を市町村別にみ
4.7
4
ると、高齢化率が高くなるほど財政力
0.2
2
左図)。
今後は、高齢化が一段と進展する。
国立社会保障・人口問題研究所の推
計によると、00年の全国の高齢化率
0
0.8
財
政
力
指 0.6
数
︵
02
年 0.4
度
︶
9.3
6
指数が低下する傾向がある
(図表14、
全 北 東 関 北 中 近 中 四
国 海 北 東 陸 部 畿 国 国
道
九
州
・
沖
縄
0.0
30
20
予測
28
26
財 1.5
政
力
指
数 1.0
24
22
20
18
0.5
維持した場合、地方圏では国への依
一体改革を推進する必要がある。
15
32
2.5
い。行財政に関する現状の枠組みを
政再建、地方自立の両面から、三位
10
図表14 高齢化率と財政力指数(市町村、02年度、左図)、
高齢化率の推移(右図) (%)
2.0
存がより高まることが予想され、財
5
(備考)内閣府『県民経済計算』、総務省『都道府県決算状況調』より作成
10ポイント以上も上昇が見込まれて
方圏は3大都市圏に比べ高齢化率が高
0
公共投資依存度(%)
は17.4%であるが、30年には29.6%と
いる(図表14、右図)
。とりわけ、地
都道府県
1.0
全国
3大都市圏
地方圏
16
0.0
0
20
40
高齢化率(2000年)
60
14
00 05 10 15 20 25 30
(%)
(年)
(備考)総務省『国勢調査』、地方財政協会『市町村別決算状況調』、国立社
会保障・人口問題研究所『都道府県の将来推計人口』より作成
いて整理してみた。
3.三位一体改革の背景②―補助金・
地方交付税の問題点
(1)地方の自立を阻害し、画一的な地方行政
まず、補助金に対して指摘されている主な
問題点としては、①補助事業の内容が時代の
要請に沿っていない可能性がある、②補助事
と無駄な歳出をもたらす
業の基準が過剰であるために、補助を受けず
現行の財政システムに対しては多くの問題
に、地方が自前で事業を実施した方が負担を
点が指摘されており、三位一体改革では、補
削減できる場合がある、③煩雑な手続き・陳
助金と地方交付税の見直しが進められている。
情行政が地方行政の効率化を阻害している、な
以下では、補助金と地方交付税の問題点につ
どが挙げられる(図表15)
。こうした指摘に対
(注)
9.高齢化率は、総人口に占める65歳以上の人口の割合
研 究
9
図表15 補助金制度に対して指摘される主な問題点
〈国による不当な干渉の可能性〉
交付を通じて、地方に対して国の不当な干渉が行われるおそれがある。
〈時代の要請にそぐわない内容〉
補助金として創設されてから25年以上経過しているものが、全体の4割程度(2000年度)ある。創設後相当程度経過した補助金や補助対象
事業は、奨励項目がすでに達成されているか、社会経済情勢の変化に対応できていない可能性がある。
〈超過負担等の金銭的な問題〉
対象、単価、数量等が不当で実情に合わず、不足分を地方が補わなければならない。補助事業としてではなく、自前で実施した方がコスト
を削減できる場合もある。
〈煩雑な手続き〉
細部にわたる補助条件や煩雑な交付手続きなどによって、多くの時間、労力、経費がかかり、行政の簡素・効率化を妨げている。
〈陳情行政〉
地方の国への依存を助長
〈国と地方の責任の所在の不明確化〉
補助金の交付を通じて、国が地方行政に関与する結果、国と地方の行政責任の所在が不明確になる。
〈地方の自主的な行政運営の阻害〉
国からの関与が、地方の知恵や創意・工夫を生かした自主的な行政運営を阻害
(備考)財団法人自治総合センター『やさしい地方自治』などより作成
応して、三位一体改革では、補助事業を見直
薄にしている、などの問題点が指摘されてい
し、引き続き必要なものは税源移譲するとい
る(図表16)。
図表17は、1人当たりの一般財源(地方税
う形で、地方の自由度を高め、効率的な行政
運営を促そうとしている。
地方交付税に関しては、①交付額が膨張し、
等+地方交付税)と国庫補助負担金を都道府
県別にみたものだが、財政力指数が小さい(財
国税で賄いきれない分は借金までしている、②
政基盤が弱い)地域ほど1人当たりの交付税、
ほとんどの地方自治体が交付を受け、小規模
国庫補助負担金の額が多い傾向が読み取れる。
自治体に有利な段階補正(注)10が行われるなど、
財政基盤が弱い地域ほど、国からの移転が多
再配分機能が過度になっている可能性がある、
いということ自体は自然ともいえようが、地
③事業費補正(注)11が地方のコスト負担意識を希
方税を加えた1人当たりの合計金額でみても、
図表16 交付税制度に対して指摘される主な問題点
〈多額の交付金と借入金〉
地方交付税の総額は膨張し、ピークの2000年度には21.4兆円に達した。巨額な総額を確保するために借入れまでしており、
2000年度の交付税特別会計借入金は8.1兆円にものぼった。
〈過度な再配分機能〉
ほとんどの地方自治体が交付を受けており(2000年度の不交付団体は78団体(東京都23特別区を除く)と全体の2.4%)、交付
基準が緩い可能性が考えられる。
〈交付額算定の問題〉
・補正係数(各地方自治体固有の自然的・社会的条件などを反映させるための係数)は、膨大な数が存在しており、基準財政需
要額の算出を複雑かつ難解なものにしている。
・段階補正(小規模自治体など団体の規模に応じて交付税の配分を調整する措置)による行き過ぎた再配分で、財政の合理化や
効率化のインセンティブを弱める。
・事業費補正(特定の事業に地方債を充てた場合に、その元利償還金を後年度に交付税措置する仕組み)による負担意識の希薄化
〈税収確保、歳出削減のインセンティブの阻害〉
産業誘致などによる税収の確保に努めても、基準財政収入額の増加に伴う普通交付税の減少によってメリットが大きく減殺さ
れる。
(備考)岡本全勝『地方財政改革論議』(ぎょうせい)などより作成
(注)
10.段階補正は、小規模自治体など団体の規模に応じて交付税の配分を調整する措置
11.事業費補正は、特定の事業に地方債を充てた場合に、その元利償還金を後年度に交付税措置する仕組み
10
信金中金月報 2004.10
図表17 1人当たりの一般財源と国庫補助負担金(01年度)
(千円/人)
600
国庫補助負担金/人口
地方交付税/人口
地方税等/人口
500
右の都道府県ほど財政力指数が小さい(財政基盤が弱い)
400
300
200
100
0
東愛神大静埼千福茨京兵群栃宮広三滋岐長福岡石新香富山北奈福山愛熊山佐大鹿岩青和徳宮長秋沖鳥島高
京知奈阪岡玉葉岡城都庫馬木城島重賀阜野島山川潟川山口海良井梨媛本形賀分児手森歌島崎崎田縄取根知
都県川府県県県県県府県県県県県県県県県県県県県県県県道県県県県県県県県島県県山県県県県県県県県
県
県
県
(備考)1.地方税等は、地方税、地方譲与税、地方特例交付金
2.地方財務協会『地方財政統計年報』より作成
財政基盤の弱い地域の方が概して大きい。財
額(一定水準の行政を実施するのに必要な一
政基盤の弱い地域は、総じて高齢化や過疎化
般財源)が100億円、地方税収が40億円であっ
が進んでおり、人口密度や自然・社会条件の
たと仮定する。その時、基準財政収入額(標
違いで行政コストが比較的多くかかるという
準的に収入しうるものとして算定される税収
面は否定できない。ただ、1人当たりの一般財
入額)は、税収の75%の30億円となる(40億
源と国庫補助負担金の合計額において、都道
円×0.75)。税収40億円のうち残りの10億円は
府県中の最低と最高で3.4倍もの格差がついて
自由に使える留保財源とされる。ここで、基
いることは、行き過ぎの感が否めない。地方
準財政需要額が100億円であるのに対し、基準
交付税の過度な配分機能は、公平性に欠ける
財政収入額が30億円であるので、差し引き不
と同時に、地域住民と自治体の公的サービス
足分の70億円は、国から普通交付税として支
に関するコスト意識を希薄化させるおそれが
給されることになる。その結果、地方税と普
ある。
通交付税の合計110億円が当該市町村にとって
(2)地方交付税は税収確保のインセ
図表18 地方交付税の財政調整機能
∼地方税収が増加した市町村の仮設例∼
ンティブを阻害
また、地方交付税の算定方式は、
基準財政需要額 100億円
(一定水準の行政を実施するのに必要な一般財源)
税収確保、歳出削減のインセンティ
ブを阻害していると指摘されている。
このことを、地方税収が増加した市
町村の仮設例を用いて説明しよう
留保財源
10億円(40×0.25)
基準財政収入額
30億円
(40×0.75)
普通交付税 70億円
(財源保障機能、財源調整機能)
40億円
地方税収入
80億円
40億円
60億円(80×0.75)
20億円
(80×0.25)
(図表18)。
まず、ある市町村の基準財政需要
(備考)地方交付税制度研究会『地方交付税のあらまし』より作成
研 究
11
の一般財源となる。地方交付税は、一定水準
の推進期間を04∼06年度としている。改革初
の行政を保障する財源保障機能と自治体間の
年度に当たる04年度の予算の内容をみると、国
税収格差を調整する財源調整機能(注)12の2つの
庫補助負担金の削減額に比べ、税源移譲が小
役割を同時に果たしているとされる。
さかったほか、地方交付税が大幅に削減され
次に、この市町村が産業誘致などによって
るなど、国の財政再建が優先され、地方に大
税収を40億円から80億円に倍増させたとする。
きな負担をもたらすこととなった。以下では、
これによって、基準財政収入額は60億円(80
改革の具体的な内容をみていく。
億円×0.75)となるため(留保財源は20億円)
、
まず、補助金改革に関しては、04年度に
普通交付税額は40億円(100億円−60億円)に
10,313億円が削減された(図表19)
。このうち
減少することになる。地方税と普通交付税合
一般財源化(注)13の対象となった事業は、公立保
計の一般財源は120億円となり、税収が40億円
育所運営費等2,440億円と義務教育費国庫負担
増えたにもかかわらず、一般財源は10億円し
金(退職手当・児童手当)2,309億円、の合計
か増えない。普通交付税の交付を受けている
4,749億円である。一般財源化の対象とならな
市町村にとって、税収の確保に努めるインセ
かった残りの5,564億円は主として公共事業関
ンティブは大きく減殺されることになる。
係であった。
「引き続き地方が主体となって実
施する必要のある事業」とはみなされなかっ
4.改革初年度(04年度)の影響―財
政力の弱い地域では深刻な問題に
(1)国庫補助負担金は1兆円の削減
たことから、一般財源化の対象にはされなか
った。
次に、税源移譲に関しては、6,558億円が04
内閣府『基本方針2003』は、三位一体改革
年度に実施された。このうち2,309億円は義務
図表19 改革初年度(04年度)の実態
●国庫補助負担金の削減
一般財源化された事業合計
公立保育所運営費等
10,313
(15,938)
4,749
(7,093)
2,440
義務教育費国庫負担金
公共事業関係等
03年度の削減措置(改革の芽出し)
義務教育費国庫負担金等
公共事業関係等
2,309
5,564
5,625
2,344
3,281
(単位:億円)
税源移譲
所得譲与税
所得譲与税
税源移譲予定特例交付金
移譲なし
6,558
2,198
2,051
2,309
0
(備考)1.カッコ内は03年度分(改革の芽出し)を含めた数字
2.税源移譲は義務的経費10割、その他8割を目安に移譲
●地方交付税等の削減…2.9兆円(うち地方交付税1.2兆円、臨時財政対策債1.7兆円)
●地方交付税の算定方式の見直し…都道府県の事業費補正(災害等を除く)を原則廃止
(備考)1.臨時財政対策債は、地方交付税が足りない場合に発行が許可される赤字地方債。
後年度に各団体へその元利償還額が交付税配分額に上乗せされる。
2.内閣府、財務省資料より作成
(注)
12.財源調整機能は、自治体間の税収格差を調整する機能
13.地方への税源移譲、地方交付税での手当て、など使途が特定されない財源に置き換えること。
12
信金中金月報 2004.10
教育費国庫負担金(退職手当・児童手当)の削
算編成において、補助金改革以上に大きな影
減に対するものであり、税源移譲予定交付金
響を与えた。政府は、地方財政計画(注)16におい
(将来の税源移譲までの暫定措置)として配分
て歳出を厳しく抑制し、地方交付税と臨時財
された。残りの4,249億円は、新たに創設され
政対策債(図表19、備考)を前年比で計2.9兆
た所得譲与税となった。このうち、2,198億円
円(12.0%減)削減した。
は公立保育所運営費等(2,440億円)の削減に対
こうした大幅な削減は地方の予算編成に大
するものであるが、残りの2,051億円は、03年
きな混乱をもたらし、全国町村会が04年1月に
(注)
14
度に先行して実施された「改革の芽出し」
『町村財政運営に関する緊急要望』を発表する
において、義務教育費国庫負担金(共済長期
など、多くの団体・関係者から批判が相次い
負担金等)等が削減されたことに対する移譲
だ。なかでも混乱の主因となったのは臨時財
である。つまり、04年度の補助金削減に対す
政対策債の削減である。地方交付税に関して
る税源移譲は4,507億円であった。
は、前年比1.2兆円減(6.5%減)と削減幅が大
このように、04年度の改革では、補助金の
きいことは確かであるが、減少は4年連続であ
削減額10,313億円に対し、税源移譲額は4,507
り、減少率も03年度の7.5%減から縮小してい
億円に過ぎなかった(注)15。上述したように、補
る。また、地方交付税改革として地方交付税
助金削減のうち5,564億円が、引き続き必要な
ものとみなされなかったからであるが、この
図表20 歳出の前年比と交付税依存度の相関図
(道府県)
(%)
内訳をみると、公共事業関係の削減が4,527億
6
円と大部分を占める。こうした補助金改革に
4
対しては、地方の自由度を高めることを目指
したものというよりは、①国の財政再建を優
先、②単なる公共事業削減の一環、③補助金
削減1兆円という目標達成のためだけの数合わ
せ、といった批判の声が地方を中心にあがっ
ている。
歳
出
の
前
年
比
︵
04
年
度
予
算
︶
2
0
-2
-4
-6
-8
(2)地方交付税の削減で地方の歳出は大幅に
減少
交付税改革に関しては、地方の04年度の予
-10
0
10
20
30 (%)
地方交付税依存度(04年度予算)
(備考)1.不交付団体の東京都と骨格予算を組んだ熊本県を除く。
2.各都道府県04年度予算案資料より作成
(注)
14.03年度の「改革の芽出し」では、補助金が5,625億円削減され、このうち義務教育費国庫負担金等の2,344億円が一般財源化
された。この2,344億円のうち半分は、地方特例交付金(人口を指標として配分)として、残り半分が地方交付税として配分
された。
15.03、04年度の改革を合計すると、補助金の削減は15,938億円であり、このうち税源移譲されたのは6,558億円である。
16.地方財政計画は、内閣府が作成する、翌年度の地方自治体の歳入歳出総額の見込み額に関する計画。これをもとに財源不
足額を地方交付税で保障する。
研 究
13
の抑制が掲げられていたことから、その削減
もある。こうした地域では、交付税改革の影
はある程度は予想されていたと考えられる。一
響が特に大きかったと考えられる。
方、臨時財政対策債は前年比1.7兆円減(28.6%
以上でみてきたように、改革初年度の三位
減)と大幅な削減であり、かつ、01年度の発
一体改革は、特に財政力の弱い地域に大きな
行以降初めての減少であった。地方交付税と
影響を与えた。ただ、三位一体改革に対して
臨時財政対策債の合計が減少したのも初めて
は前向きな意見が多い。
のことである。
内閣府が04年2∼3月に学者や地方自治体な
こうした大幅な削減は、地方税が少なく、交
どに対して、三位一体改革に対するアンケー
付税への依存度が高い地域ほど大きな影響を
ト調査を行ったところ、財政の健全化につな
受けたと考えられる。図表20は道府県別に歳
がることや自治体の自由度が高まることなど
出の前年比と交付税依存度(歳出に対する地
を理由に「積極的に進めるべき」という考え
方交付税の割合)の相関関係を示したもので
を持つ回答者が59.2%にのぼった(図表22)。
あるが、地方交付税依存度が高い地域ほど04
これに対し、行政サービスの低下につながる
年度は歳出の大幅な削減を余儀なくされたこ
などを理由に「慎重に進めるべき」との考え
とがうかがわれる。また、歳出項目のうち、人
を持つ回答者は31.2%にとどまった。
件費や普通建設事業費(単独)についてみて
ただ、アンケートの回答者を地方自治体に
も、概して地方交付税依存度の高い地域の減
限ると、「積極的に進めるべき」は29.9%に低
少率が大きい(図表21)。
下し、「慎重に進めるべき」が57.9%に上昇す
以上は道府県別にみた結果だが、市町村別
る。三位一体改革に対する期待は全体的には
にみると、さらに財政基盤が脆弱な自治体が
大きいが、04年度の予算編成の苦労を味わっ
数多く存在する。交付税依存度が30%以上の
た地方自治体、特に財政基盤が脆弱な地域は
市町村は、02年度で2,058団体(全体の64%)
改革に消極的なようである。
図表21 交付税依存度と人件費前年比(左図)、普通建設事業費前年比
(単独、右図)の相関図(道府県)
0
0
(地方交付税依存度)
10
20
30
(%)
40(%)
(地方交付税依存度)
30
20
-1
︵
人 -2
件
費
前 -3
年
比 -4
︶
-5
-6 (%)
(備考)図表20と同じ
14
信金中金月報 2004.10
︵
単
独
事
業
費
前
年
比
︶
10
0
-10
-20
-30
-40
-50
0
10
20
30
40(%)
図表22 三位一体改革に対するアンケート結果
●地方の歳出抑制や財政の健全化につながるため、
積極的に進めるべき
30.5
●自治体の自由度が拡大し、自立性の向上につな
がるため、積極的に進めるべき
44.7
●自治体の行政サービスの効率化、向上につなが
るため、積極的に進めるべき
積極的に
進めるべき
59.2%
30.3
●自治体の行政サービスの低下につながるため、
慎重に進めるべき
18.8
●自治体サービスの地域間格差につながるため、
慎重に進めるべき
慎重に
進めるべき
31.2%
25.5
1.0
●進めるべきではない
●その他
地方自治体回答
積極的に進めるべき 29.9%
慎重に進めるべき 57.9%
10.5
0
5
10 15 20 25 30 35 40 45 50(%)
(総回答者に占める割合)
(備考)1.学者、地方自治体等に対するアンケート結果(複数回答、04年2∼3月に実施)
2.「積極的に進めるべき」と「慎重に進めるべき」の割合は、それぞれの範疇の回答を1つでも選択した者の割合
3.内閣府『構造改革評価報告書2』より作成
まず、全体としては、04年の秋までに三位
5.三位一体改革のシミュレーション
と今後の課題
(1)『基本方針2004』で示された今後の方針
04年6月に発表された『基本方針2004』では、
一体改革の全体像を明らかにし、年内に決定
するとした。
補助金改革に関しては、削減額は今後(05、
06年度)、3兆円程度を目標とするとした。こ
三位一体改革の今後の予定が示された。主な
れによって補助金削減額は、03年度の「改革
内容は以下のとおりである(図表23)。
の芽出し」分0.6兆円と、04年度に実施された
図表23 『基本方針2004』の三位一体改革に関する主な決定事項
補助金
削 減
・今秋までに改革の全体像を明らかにし、年内に
決定。地方の意見を考慮
・補助金改革は今後3兆円程度を目標
・補助金改革の内容については、自治体が具体案
を作成(→8月20日までに全国知事会など地方6
03年度実施分
0.6兆円
(改革の芽出し)
基本方針
2003
税源移譲
地方交付税
(一般財源化) 削 減
0.2兆円
1.5兆円
今後目標 継続必要事業は8割
義務的事業は10割
4兆円
抑 制
団体がとりまとめを行う)。
これを踏まえて検討
04年度実施分
1.0兆円
(改革初年度)
・税源移譲は3兆円(今後2.3兆円)を目標
・税源移譲については、06年度までに所得税から
個人住民税へ移譲
・地方の歳出を見直し、地方交付税を抑制する。
基本方針
2004
今 後
3兆円
残りの分
3兆円
(05、06年度)
0.5兆円
1.2兆円
全体で目標
3兆円
抑 制
2.3兆円
自治体の安定的な財政運営に必要な一般財源の
総額を確保
合計目標
4.6兆円
3兆円
―
(備考)内閣府資料より作成
研 究
15
1.0兆円を合わせ、合計4.6兆円となる。
ば、対象に入れざるをえなかったことがある。
税源移譲に関しては、全体で3兆円規模とし
これに対しては、文部科学省のみならず一部
た。今後の税源移譲額は、この3兆円から、04
の知事も反対を表明、義務教育は国の責任で
年度の税源移譲額0.7兆円(
「芽出し」における
実施すべきものと強く反発している。また、
「3
一般財源化の0.2兆円と04年度における一般財
兆円」達成のための数合わせとの批判もある。
源化の0.5兆円)を除いた2.3兆円ということに
このほか、公共事業や施設整備関連の補助
なる。この「3兆円」の明示は、04年度の改革
金削減に関して、財務省は、その財源が国債
における税源移譲の少なさに対して猛反発し
であることなどを理由に、税源移譲する必要
た地方に配慮した面もあると考えられる。た
はないとの立場を崩していない。2年間の税源
だし、税源移譲の前提条件として、補助金の
移譲額を『基本方針2004』の2.3兆円を上回る
具体的な削減案を地方に作成するよう要請、政
3兆円としたことにも反発がでており、税源移
府はこれを踏まえて検討するとしている。
譲額の行方は一段と不透明である。
地方交付税改革に関しては、特に目新しい
内容は見受けられず、引き続き歳出の見直し
を図り、抑制していくこととされた。
(2)シミュレーション―地域間の財政力格差
は一段と拡大
『基本方針2004』を受けて、地方六団体(注)17
次に、三位一体改革が進められた場合、地
は補助金削減の具体案を8月20日までに取りま
方財政にどのような影響が現れるのかを試算
とめる段取りとなった。地方六団体は8月24日、
してみることにする。以下では、『基本方針
全国知事会が8月19日に決定した3.2兆円の補助
2004』に基づき、補助金削減、税源移譲、交
金削減案(税源移譲は3兆円)を小泉首相に提
付税削減が行われた場合を想定し、下記の前
出した。削減の内訳は、公共事業が0.6兆円、
提の下で都道府県を対象にシミュレーション
施設設備が0.6兆円、義務教育費が0.8兆円、そ
を行った。なお、改革前の数値は01年度の実
の他が1.2兆円となっている。
績を使用した。
ただ、この削減案に対しては、関係各省庁
の反発が強く、どこまで取り上げられるか不
『基本方針2004』に基づいてシミュレーション
を実施(2001年度の都道府県ベース)
透明な状況にある。なかでも、批判が強いの
(1)税源移譲3兆円
は、地方の取りまとめ段階でも意見が分かれ
た義務教育費国庫負担金に対してである。地
方が義務教育費を削減対象に入れた背景には、
義務教育費は規模が大きく、社会保障関連を
除いて3兆円の補助金削減案を作成するとすれ
・所得税から個人住民税へ3兆円の税源移譲
・移譲分は個人住民税に応じて配分(都道府県への移
譲分は0.8兆円)
(2)国庫補助負担金を4.6兆円削減
・削減分は、2001年度の国庫補助負担金額に応じて配
分(都道府県の削減分は3.0兆円)
(3)地方交付税は2004年度比横ばい
(注)
17.全国知事会、全国都道府県議会議長会、全国市長会、全国市議会議長会、全国町村会、全国町村議会議長会
16
信金中金月報 2004.10
改革が地方の歳入に与える影響をみると、国
いが、地方圏では57.9%を占めることになる。
からの財政移転である、地方交付税と国庫補
3大都市圏では、地方税収が多く、国からの財
助負担金が歳入に占める割合は、38.2%から
政移転への依存が小さいため、地方圏に比べ
31.4%に低下する(図表24、左図)
。一方、地
影響が小さくなるからである。改革の結果、地
方税収が歳入に占める割合は、32.3%から36.7%
方の自由度は高まるものの、地方圏、とりわ
に上昇する。このように、改革の結果、地方
け国への依存度が大きい小規模自治体は、歳
の歳入基盤はある程度の改善が図られ、地方
入が大きく落ち込む可能性がある。
行政の裁量余地が拡大する効果が期待できる。
ちなみに、都道府県別に1人当たりの一般財
ただ、歳入の規模は54.0兆円から49.9兆円に
源と国庫補助負担金の合計額をみると、01年
7.6%減少するため、地方は無駄な歳出の削減
度には最低と最高との格差が3.4倍であったが
と行政の一層の効率化を余儀なくされる。ま
(図表17)
、改革後には2.8倍と0.6ポイント縮小
た、歳入の減少の度合いは、財政基盤の強弱
によって、ばらつきが出てくる。
図表24の右図は、歳入の増減率別
の状況を3大都市圏と地方圏でみたも
することになる(図表25)
。
図表24 歳入の変化(左図)と歳入の増減率(改革後/
01年度)別のシェア(右図)
(%)
歳入
54.0兆円
(%)
歳入
49.9兆円
100
100
のであるが、改革の結果、地方圏で
歳入が大幅に減少する地域が多くな
90
80
32.3
60
る都道府県は、3大都市圏には33.3%
40
60
20.5
50
また、歳入の減少率が10%を上回る
都道府県は、3大都市圏には存在しな
20
10
0
39.5
70
17.7
18.3
地方税
50
13.1
地 方
交付税
40
30
あるものの、地方圏には存在しない。
33.3
80
36.7
70
っている。歳入が4%減までにとどま
2.6
90
国庫補助
負担金
29.5
32.0
2001年度
改革後
その他
-4%以上
-4∼-7%
55.6
30
-7∼-10%
57.9
-10%未満
20
10
0
11.1
3大都市圏
地方圏
(備考)地方財務協会『地方財政統計年報』をもとに、信金中金総合研究所が試算
図表25 1人当たりの一般財源と国庫補助負担金(改革後)
(千円/人)
500
400
国庫補助負担金/人口
地方交付税/人口
地方税等/人口
右の都道府県ほど2001年度の財政力指数が小さい(財政基盤が弱い)
300
200
100
0
東愛神大静埼千福茨京兵群栃宮広三滋岐長福岡石新香富山北奈福山愛熊山佐大鹿岩青和徳宮長秋沖鳥島高
京知奈阪岡玉葉岡城都庫馬木城島重賀阜野島山川潟川山口海良井梨媛本形賀分児手森歌島崎崎田縄取根知
都県川府県県県県県府県県県県県県県県県県県県県県県県道県県県県県県県県島県県山県県県県県県県県
県
県
県
(備考)図表24と同じ
研 究
17
(3)今後の課題―交付税の抜本的な見直しが
らしている財源保障機能を廃止、地域間の財
必要だが、何らかの財政調整機能は必要
政格差の是正については、水平的財政調整制
地方六団体が05∼06年度の補助金削減案を
度(都道府県・市町村間で税を配分し調整す
提出したことで、三位一体改革は正念場を迎
る制度)を導入し、人口1人当たりの税収を基
えているが、補助金削減と税源移譲は07年度以
準として調整を行うとしている。第2に、財源
降も継続していく必要がある。その意味で、三
保障機能を縮小していくという主張である。例
位一体改革は緒に就いたばかりともいえよう。
えば、地方制度調査会では、地方交付税の算
また、地方交付税制度については、段階補
定方式に着目し、①国の法令基準に基づく「財
正の見直し、事業費補正の見直し、交付総額
源保障的要素の強いもの」と、②地方単独事
の抑制などの改革が一部実施されているもの
業など「財源保障的要素の比較的弱いもの」と
の、抜本的な改革には手が付けられていない。
に分け、法令基準の緩和などによって、①の
前述したように、地方交付税は財源保障機能
比重を下げることを提案している。第3に、財
と財源調整機能を同時・一体的に担っている
源保障機能は不可欠であり、小直しにとどめ
が、財源保障機能については、これまでみて
るとする主張である。
きたように地方の財政責任を見失わせるおそ
一方、財源調整機能については、国が担う
れがあり、今後、交付税制度を抜本的に見直
べきか、地方が主体となるべきかの違いはあ
していく必要がある。
るが、引き続き必要との見方ではほぼ一致し
見直しをめぐっては、これまで議論されて
ている。地域間の財政力格差は大きく、シミ
きた中で、大きく分けて3つの主張がある(図
ュレーションでみたように、三位一体改革後
表26)。第1に、財源保障機能を廃止するとい
は、3大都市圏と地方圏で格差が一層広がるこ
う主張である。例えば、財政制度等審議会で
とが予想されるからである。小規模自治体は、
は、地方の財政運営のモラルハザードをもた
こうした格差を埋めるために歳出削減など自
図表26 地方交付税の改革案
〈財源保障機能を廃止〉
●地方の財政運営にモラルハザードをもたらしている財源保障機能を廃止し、財源調整機能に限る。財政格差の是正については、水平的財
政調整制度(都道府県・市町村間で税を配分し調整する制度)を導入し、人口1人当たりの税収を基準として調整を行う。
(財政制度等審議会等)
〈財源保障機能を縮小〉
●地方交付税の算定方式に着目すると、①国の法令基準に基づく教職員の数などを指標として需要を算定するような「財源保障的要素の強
いもの」と、②地方単独事業など、面積などを指標とする「財源保障的要素の比較的弱いもの」とがある。法令基準の緩和など、地方歳
出に対する国の関与の縮小に応じて、地方交付税の算定方法についても①の比重を引き下げ、②にシフトさせる。
(地方制度調査会)
●交付税の法定率分と法定率以外の分とを明確に区分し、法定率分は、極力国の関与を排し、地方公共団体の参画の仕組みを導入しつつ、
客観的、透明な手法で配分する。法定率以外の分については、国による政策的な経費配分とする。法定率分は将来的には地方税とし、地
方公共団体の創意に基づいて水平的財政調整を行う。
(地方分権改革推進会議)
〈財源保障機能は必要不可欠〉
●国が地方公共団体に対して、仕事を義務付けしていることや、一定の行政水準を確保する必要があることから、国が財源を保障すべきで
あり、財源保障機能は必要不可欠である。
(地方財政審議会等)
(備考)財政制度等審議会、地方分権改革推進会議、地方制度調査会資料などより作成
18
信金中金月報 2004.10
助努力を図ることになろうが、これには限界
三位一体改革は、小規模な財政基盤の弱い
がある。市町村合併でスケールメリットを図
地域に対し負担を強いることになり、経過措
ることは有効な手段となろうが、地理的制約
置としては、何らかの支援策も必要となろう。
などから、合併が困難な市町村もあろう。各
しかし、国と地方の財政再建、地方自治の確
地方自治体が歳出・歳入の徹底的な見直しを
立と地域主導による日本経済の活性化のため
したうえで、なお残る財政力格差を埋めるため
には、三位一体改革は必要不可欠な政策であ
に何らかの財源調整機能は必要と考えられる。
り、着実に推進していくことが重要である。
〈参考文献〉
岡本全勝『地方財政改革論議』ぎょうせい(2002)
岡本直樹・吉村恵一『地方財政改革シミュレーション』ぎょうせい(2002)
総務省『地方財政白書』
(各年版)
内閣府『構造改革評価報告書2』(2004)
内閣府『経済財政白書』
(各年版)
研 究
19
米国の田舎におけるコミュニティバンキング
信金中央金庫 総合研究所主任研究員
青木 武
(キーワード)米国金融機関、田舎、優れた顧客サービス、高い資産の質、低い経費率
(視 点)
日本においても、米国においても、都市の人口は増加し、雇用も増え、地元経済も発展して
いく一方で、田舎においては、新たな雇用を創出することも容易ではなく、経済活動も停滞気
味である場合も少なくない。こうした環境の中、地域金融機関はどのように地域経済をサポー
トし、また自らも発展していくべきか、については、日本でも、米国でも重要な課題となって
いる。そこで、本稿においては、米国の田舎のコミュニティバンクに注目し、必ずしも地元経
済が発展していない田舎において成功している米国のコミュニティバンクの施策がどのような
ものか、考察することとしたい。
(要 旨)
●
米国には約9,000もの預金取扱金融機関があり、そのうちの約半数は都市以外の地域、つま
り田舎を本拠地としている。田舎の銀行の多くは規模が小さく、直ちに問題となるほどでは
ないが、都市の大銀行よりは収益性が低い傾向にある。
●
連邦準備銀行および連邦預金保険公社の最近の調査によると、米国の田舎のコミュニティバ
ンクの業績は全体としてはやや見劣りがすることは否めないが、過疎など田舎が現実に直面
している問題と比較すると、むしろ健闘しているといえる。
●
田舎のコミュニティバンクでも高成長・高収益と成功している銀行も少なくない。その鍵
は、①優れた顧客サービス、②高い資産の質、③低い経費率、という基本事項である。
●
リスクをリターンに変えることが銀行の業務である。成功している田舎のコミュニティバン
クは、基本事項を守ることを中心としながらも、リスクを管理しつつ成長している市場に参
入を図っている。
20
信金中金月報 2004.10
行ある(注)4。本節では、これを総資産規模別に
1.米国における都市と田舎の銀行
(1)都市と田舎(注)2
我々は普段何気なく都市と田舎という表現
並べ、中間点より大きな銀行を大銀行、小さな
銀行を小銀行と定義する。その中間値は106百
万ドル(116億円($1=¥110換算。以下同じ)
)
を用いるが、実際には、都市と田舎には明確
と日本の金融機関と比較すると必ずしも大き
な定義があるわけではなく、人口密度が比較
いわけではない(注)5。例えば、後述するウェブ
的高い地区、低い地区のことをそれぞれ指す
シティ銀行およびデニソン銀行はいずれも総
ことが一般的である。米国では、都市の概念
資産でいうと200億円程度の、日本の感覚では
を示す場合に、MSA(Metropolitan Statistical
かなり小さい銀行であるが、116億円は超えて
Area)と呼ばれる概念を使うことが多い。MSA
いるので、本節の分類では「大銀行」となる。
は米国行政管理予算局(OMB)が定義してお
図表1は米国の都市、田舎別および規模別に、
り、5万人以上の人口がいるコアとなる都市を
銀行数、収益性等を比較したものである。ま
中心として、経済・社会活動を一体として行
ず、銀行数をみると、都市と田舎ではほぼ半々
っている都市圏のことである。仮に、行政区
となった。ただし、大銀行は都市に多く、小
域上は2つの市だとしても、実態的には一つの
銀行は田舎に多いことがわかる。総資産ベー
都市圏として機能している場合は、一つのMSA
スでみると、極端に大銀行に偏っており、大
となる。2000年6月現在で米国には362のMSA
銀行が総資産の97%を占めている。また、全
がある(注)3。本節では、MSAに属する地区を都
体の約3割の都市の大銀行が米国の銀行総資産
市とし、それ以外の地区を田舎と定義し、ま
の9割以上を占めているのに対し、田舎の小銀
ず都市と田舎の銀行の収益性を検証する。
行の数は都市の大銀行と同様に3割強を占めて
いるものの、総資産のシェアは2%にも満たな
(2)米国における都市と田舎の銀行の収益性
の比較
連邦預金保険公社の統計では、2003年12月
末時点における米国の預金取扱金融機関は9,133
い状況である。
次に、収益性の指標である総資産利益率
(ROA)と自己資本利益率(ROE)をみると、小
銀行の収益性は大銀行に比べ劣っている(注)6。
(注)
1.本稿作成は、カンザスシティ連邦準備銀行のケネス・スポング氏はじめ、巻末にあるとおり多くの監督当局および米銀関係
者等のご協力がなければなしえなかったものである。この場をお借りして深く感謝申し上げたい。
2.日本語の「田舎」にはやや差別的なニュアンスが含まれることもあるが、米語のRuralにはむしろいい意味での「田舎」の
ニュアンスがある。ただし日本語に適切な訳語がないことから、本稿では人口密度の低い地区という意味で「田舎」という表
現を用いている。
3.Office of Management and Budget, MSA Bulletin 2003 Attachment
4.本稿において特に断りがない場合、銀行計数関係のデータの出典は連邦預金保険公社データベース
5.米国の銀行が平均的には日本の銀行よりも小さい理由としては、①米国では支店設置の規制が厳しく、成長に限界があった
こと、②負債サイドについては、日本では貯蓄率が高く、直接金融が必ずしも発達していないため、銀行等に預金が集まりや
すいこと、③一方の資産サイドについては、米国の銀行は住宅ローンなどの貸出金を売却してオフバランスとする場合が多い
こと、などがあげられる。
6.図表1では、都市大銀行、都市小銀行、田舎大銀行、田舎小銀行の各グループごとに当期利益、総資産および自己資本額を
合計してROAおよびROEの比率を計算しており、各行のROA等を単純に平均しているわけではない。よって、平均の差の優位
水準検定を行っているわけではない。
研 究
21
図表1 米国の銀行の都市・田舎および規模の比較(2003年12月末)
銀行数
大銀行
小銀行
合 計
都市(MSA内に本店)
2,906行
1,623行
4,529行
田舎(非MSA内に本店)
1,660行
2,944行
4,604行
合計
4,566行
4,567行
9,133行
総資産構成比
大銀行
都市(MSA内に本店)
田舎(非MSA内に本店)
平均
ROA
小銀行
合 計
91.54%
1.03%
92.57%
5.74%
1.69%
7.43%
97.28%
2.72%
100.00%
大銀行
小銀行
加重平均
都市(MSA内に本店)
1.34%
0.75%
1.33%
田舎(非MSA内に本店)
1.24%
1.04%
1.19%
加重平均
1.33%
0.93%
1.32%
ROE
大銀行
小銀行
加重平均
都市(MSA内に本店)
14.88%
6.17%
14.74%
田舎(非MSA内に本店)
11.82%
9.46%
11.26%
加重平均
14.67%
8.13%
14.45%
(出所)連邦預金保険公社(FDIC)
一般的に、米国では銀行の規模の経済性は少
なっている。特に都市部での大銀行と小銀行
なくとも総資産100億円レベルまでは、顕著に
を比較すると、ROA、ROEとも小銀行が大き
見られることは定説になっている(注)7。ここで
く劣後しており、これに対し、田舎の小銀行
は中間値116億円を境に大銀行と小銀行を分け
は比較的健闘していると言える。この背景に
ているので、ここでいう大銀行の収益性が高
は、都市型の大銀行は成長が望める都市部に
くなっている要因は、もっぱら規模の経済性
集中しており、田舎のシェアまでを無理には
によるものと考えてよいであろう。都市と田
とろうとしていないことが考えられ、その結
舎を比較すると、都市の銀行の方が収益性は
果として都市と比較すると田舎の競争は厳し
明らかに高いが、これは都市の銀行は大銀行
くなく、小銀行でもある程度の収益を得られ
が多いためとも考えられ、さらに規模による
る環境にあると推定される。以上を総合的に
内訳を見ると、大銀行同士の比較では都市の
見ると、米国の田舎の銀行の収益性は、都市
銀行の方が収益性が高いが、小銀行では平均
の大銀行よりは見劣りがするものの、水準と
的にはむしろ田舎の銀行の方が収益性は高く
してはただちに問題になるほど悪くはないと
(注)
7.銀行の規模の経済、不経済の詳細については、
「米国における銀行合併」
『信金中金月報』
(2003年5月号)を参照
22
信金中金月報 2004.10
言え、都市の小銀行が相対比較では収益性が
約的ではなくなっていることもあり、雇用機
低いと言える。
会も少なくなっている。
低成長地区においては、銀行の成長力は限
2.田舎の銀行に関する先行研究
定的であり、預金の増加率も低い。1店舗あた
田舎の過疎化および経済の低迷により、田
りの人口を低成長地区と高成長地区とで比較
舎の銀行の業績が悪くなるのではないか、と
すると、高成長地区の銀行の方がおよそ2倍と
いうことは、米国の監督当局にとっても重大
なっている。また、収益性を総資本利益率
な関心時である。最近、連邦準備銀行(FRB)
(ROA)で比較すると、低成長地区の銀行が約
および連邦預金保険公社(FDIC)の両監督当
0.9%、高成長地区の銀行が約1.1%となってお
局から相次いで「田舎の経済とコミュニティ
り、水準としてはただちに問題となるほど収
バンク」に関する研究が発表されたので紹介
益性が低いわけではないが、やはり差が見ら
する。
れる。この差を分析してみると、高成長地区
の銀行と比較して低成長地区の銀行の総資産
(1)連邦準備銀行(FRB)による研究
に対する貸出金の割合が低いわけではなく、融
FRBのMyers & Spong〔2003〕の研究は、カ
資機会がないわけではない。このため、低成
ンザスシティ連邦準備銀行の研究者によるも
長地区の銀行においても金利収入は確保され
のであるため、対象は同連銀の管内、つまり
ているものの、金利調達コストが高く、利鞘
地理的に見て米国の真ん中にあたるカンザス
が薄くなっている。さらに、低成長地区の銀
州を中心とした米国中部地区(注)8のコミュニテ
行は非金利収入が少ない傾向がある。経費に
ィバンクに関する研究である。さらにその中
関しては、一般的には「田舎は人件費が低い」
でも、州の中の郡(注)9ごとに1990年∼2000年の
というイメージがあるが、実際は低成長地区
10年間の個人所得増加率が、4.4%以上となっ
の銀行の人件費は収入の割には高い傾向にあ
ている地区を高成長地区、2.98%以上を中成長
る。
地区、2.98%未満を低成長地区と分類してい
さらに、低成長地区の銀行は若干不良債権
る。このうち低成長地区の一般的な特徴は、大
が多く、FRBのモデルによる査定の今後2年以
きな都市から離れており、また風光明媚な観
内の銀行の破綻確率で見ると1.35%となってお
光地もなく、人口増加率は低く、しかも高齢
り、水準としては必ずしも高いわけではない
者が多い。主要産業は農業であるが、米国の
が、これは高成長地区の銀行の2倍の数値とな
農業は機械化・合理化が進み、もはや労働集
っている。低成長地区では融資のリスク分散
(注)
8.具体的には、ワイオミング州、コロラド州、ニューメキシコ州、ネブラスカ州、カンザス州、オクラホマ州およびミズーリ
州(図表2)
。
9.米国の郡は、州内の行政区分単位(郡の役所等は州政府の出先機関)。日本の郡のような市以外の町や村の地区ではなく、
米国の郡の中には市町村も中に含む。
研 究
23
図表2 本稿関連地図
おおよそのGP地区(FDIC研究)
おおよそのカンザス
FRB管内(FRB研究)
トピーカ市(デニソン銀行・後述)
ジョプリン市(ウェブシティ銀行・後述)
(出所)地図はマイクロソフト社 Streets & Trips
が難しいからとも考えられている。
でありながら、現実的な視点を持って行動し
ただし、このような低成長地区の中でも優
ている。具体的には、同研究における優れた
秀な成績をあげている銀行も少なくない。こ
コミュニティバンクの経営者へのインタビュ
の研究では、データ分析にとどまらず、低成
ーによると、次の点が重要であるとしている。
長地区で成功している10の銀行に対し、イン
タビューを行っている。ここでは、具体例を2
つ紹介する。
①卓越した顧客サービス
優れたコミュニティバンカーは、
「大銀行が
・地元だけでは融資のニーズが限られている
行うことと同じことを、よりよい金利で、よ
ので、クリエイティブに成長市場を見つけ
り早く、よりパーソナルタッチで行う。顧客
ていく必要があり、他の銀行とのローンパ
には土日でも(頭取の)自宅にでも電話する
ーティシペーションに熱心である。
ように言っている。
」
、
「他の銀行は口で言うこ
・ジリ貧を打開するために、より成長してい
る市場に支店を設置している。
とを、我々は実行する。
」等の顧客サービスを
重視した経営哲学を持っている。
さらに、成功している10の銀行の共通点を
整理すると、次のようになる。
成功している銀行は、地元に対して前向き
24
信金中金月報 2004.10
②高い資産の質
「資産の質は最優先。疑問のある貸付は行わ
ない。」、「審査基準を下げない。」、「1980年代
制の変化に対応し、専門ソフトウェアなども
の教訓を忘れてはならない。
」など、田舎のコ
活用してコンプライアンス体制の構築に努力
ミュニティバンクにとっては不良債権は致命
している(注)10、⑦地元地域社会の次の若い世代
的であることが十分に理解されている。
の顧客を育てることに留意しているなどの点
があげられる。
③低い経費率
「適正な利益を確保するためには、人件費か
ら紙代まで厳しく管理する。
」という古典的な
(2)連邦預金保険公社(FDIC)による研究
連邦預金保険公社のWalser & Anderlic〔2004〕
手法だけでなく、「テクノロジーを駆使して、
による最近の研究では、主にグレート・プレ
融資のドキュメンテーションを効率化し、よ
ーンズ地区(以下「GP地区」という。)と呼
り多くの取引を人を増やさずに行えるように
ばれる、広大な米国中部の地区における過疎
なった。」という前向きの経営者もいる。
化減少とコミュニティバンクへの影響等につ
また、上記以外にもいくつかの共通点があ
いて論じている(注)11。図表3は2000年の都市・
り、例えば、④新しい業務、ビジネス、地区
田舎別の郡の数、本店がある銀行数と、田舎
等へ参入する勇気を持っているが、闇雲に参
の郡における1970∼2000年の人口の増減別の
入するのではなく、ゆっくりと慎重に行う、⑤
数を、全米およびGP地区で比較したものであ
役職員がよく働く。その見返りとして、その
る。
地区の水準としてみればよい給与を支払って
GP地区では、地区内の郡のうちの主に都市
いる。取締役に対しては、ストックオプショ
により構成されている53郡を除く田舎の424郡
ンなどのインセンティブを与えている、⑥規
のうち、1970年∼2000年の間に人口が減少し
図表3 全米、GP地区における都市・田舎別郡の数と本店所在の銀行数
田舎の郡
都市の郡
郡の数(全米)
郡の数(GP地区)
銀行等の数(全米)
銀行等の数(GP地区)
計
人口増加
人口減少
合計
うち減少加速
1,089
2,052
1,390
662
210
3,141
53
424
120
304
115
477
5,021
4,143
2,692
1,451
390
9,164
286
813
306
507
184
1,099
(備考)減少加速は、1970∼2000年の間に人口が減少し、なおかつ1990年代の人口減少率がその前の20年間よりも大きい郡
(出所)Walser & Anderlic〔2004〕
(注)10.米国銀行界では、決算報告書を電子化して当局宛に送付したり、口座開設の本人確認の際に、顧客がテロリスト等でない
ことを確認するなど、コンプライアンス関連ソフトウェア類が普及している。
11.グレート・プレーンズは、主にノースダコタ州、サウスダコタ州、ネブラスカ州、カンザス州、オクラホマ州およびテキ
サス州北西部。つまり、(1)FRBの研究地区と一部重なるが、やや縦に伸ばした感じ。アメリカの地図でいうと真ん中の縦
型帯状となる(前掲図表2)
。
研 究
25
ている郡は304郡(田舎の郡の72%)にも達し、
助金等の支援となっていることから、政府の
うち115郡(同27%)では、1990年代に入り、
農家への支援が間接的にコミュニティバンク
その前の20年間よりも人口減少率が加速して
をサポートしていること、また田舎の人口減
いる。図表3にあるとおり、米国全体と比較す
少は急激なバブル崩壊のプロセスとは異なり、
ると、このGP地区の過疎化の深刻さがうかが
ジリジリと減少していく現象なので、銀行側
われる。
も時間をかけて環境に適合できている点をあ
また、GP地区に本店を持つ銀行1,099行中、
げている。
田舎の人口減少郡に本店を持つ銀行は46%と
さらに同調査では、総資産2.5億ドル未満の
約半数にも達している。こうした過疎地の銀
銀行のうちGP地区内の人口増加地区に本店の
行の業績はやはり低迷しているのであろうか。
ある銀行、同じく人口減少地区、加速減少地
しかしながら、実際のWalser & Anderlicの調
区の銀行の収益性を比較しているが、やはり
査によると、田舎の郡に本店を持つ総資産2.5
収益性の指標であるROAや、資産の健全性を
億ドル(275億円)未満のコミュニティバンク
示す貸出金償却/貸出金率などに大きな違い
の比較では、より過疎に苦しんでいるGP地区
は見られない。この点は、田舎でも高成長地
とそれ以外の地区の銀行等では収益性および
区と低成長地区では銀行の収益性や健全性が
資産の健全性において顕著な違いは見られな
やや異なるとした先のFRB研究とは結果が異
かった。一方、大きな違いが見られたのは総
なっている。一方、総資産増加率は大きく異
資産成長率であった。GP地区以外の銀行では、
なっており、例えば1993年∼2003年の預金増
2003年までの10年間で総資産が85%増となっ
加率(年率)は、人口増加地区では4.3%、人
たのに対し、GP地区の銀行では53%増にとど
口減少地区では3.5%となっている。田舎の人
まった。
口減少地区では高齢化が進行しており、預金
同調査では、GP地区の内外で銀行の収益性
を持った高齢者が死亡した場合に遺産相続を
が大きく違わなかった理由として、GP地区の
した若年層は人口増加地区等に住んでいるこ
田舎の銀行は農業に対する融資が多くなって
とが多いため、預金が人口減少地区から増加
いるが、農家の利益のうちの40%は政府の補
地区に流出する傾向があることもその一因と
図表4 GP地区の銀行の総資産成長率および税引前ROAによる分類
低成長
高収益
安定銀行 44行
高成長
成功銀行 49行
中間十字ゾーン
中収益
低収益
中成長
280行
低迷銀行 61行
ハイリスク銀行 49行
(備考)GP地区内の郡に本店を持つ総資産2.5億ドル未満かつ設立後10年以上の銀行483行を対象に分類
(出所)Walser & Anderlic〔2004〕
26
信金中金月報 2004.10
なっていると同研究では分析している。
低く、結果的に収益性が高くなっている。一
同調査では最後に、人口減少地区の銀行の
方、低迷銀行は、本店しか持たない銀行が7割
うち、収益率が高く、資産成長率が高い銀行
弱を占め、支店網の拡大による貸出金の増加が
の特徴を探っている。1970年以降人口が減少
限定的であったことなどもあって、資産の成長
しているGP地区内の郡に本店を持つ総資産2.5
は横ばいにとどまっていることが推察できる。
億ドル未満かつ設立後10年以上の銀行483行の
なお、収益性に関しては、高収益率銀行は
うち、収益率(税引前ROA)と資産成長率と
成長率の高低にかかわらず総資産に対する経
で相対的に高中低に分け、図表5にある3×3の
費率が低く、特に人件費率が低い傾向がある。
9つのグループのうち、特徴があると思われる
一方、低収益率組(低迷銀行・ハイリスク銀
4隅にあたる高収益率・高成長率(成功銀行)
、
行とも)は総資産に対する経費率・特に人件
高収益率・低成長率(安定銀行)
、低収益率・
費率が高い傾向にある。このうち、成功銀行
高成長率(ハイリスク銀行)
、低収益率・低成
は高成長により、分子である経費の増加割合
長率(低迷銀行)の4グループの銀行について
よりも分母である総資産の増加割合が大きく、
調査している(括弧内の名称は原文にはなく
規模の経済が働いているからと同調査では分
本稿内での便宜上の呼称)
。
析している。一方、安定銀行では、経費が少
成功銀行のグループといえる高収益率・高
ない傾向にあり、経営者が成長機会が少ない
成長率組と、低迷銀行のグループといえる低
ことを理解していて合理化に努めているため
収益率・低成長率組とを比較すると、図表5の
と分析している。このように、田舎で成功し
とおりとなる。これによると、成功銀行は低
ている銀行は経費を抑えていることや、田舎
迷銀行に比べ、経費率、人件費率が低く、貸
の銀行は人件費の割合が高い点は先述のFRB
出金の割合が高い一方で、不良貸付の割合は
研究と共通している(注)12(先ほどと同様に、田
図表5 GP地区内の人口減少郡内の銀行のうち、成功銀行と低迷銀行の比較
成功銀行
(高収益・高成長)
低迷銀行
(低収益・低成長)
対象銀行数
49行
61行
税引前ROA
1.96%
0.64%
資産成長率
7.47%
△ 0.80%
経費/総資産率
2.67%
3.18%
人件費/総資産率
1.55%
1.84%
貸出金/総資産率
64.68%
52.21%
不良貸付/貸出金率
単店銀行の割合
2.21%
3.75%
38.78%
65.57%
(出所)Walser & Anderlic〔2004〕
(注)12.一方、成長地区の銀行と低迷地区の銀行との比較において、FRB研究では総資産に対する貸出金の割合が大きく違わなか
った等、両研究では若干の相違点もある。
研 究
27
舎では人件費の金額的な水準は低い傾向にあ
長率)はハイリスク銀行(低収益率・高成長
るが、総資産や収入に対する割合にすると高
率)と比較して、都市以外の成長地区に出店
い、つまり人件費のレベルの割には生産性が
している銀行が多く(高収益率・高成長率
低い傾向がある、ということ)
。
18.37%:低収益率・高成長率10.20%)、都市
成長性に関しては、低成長の地区の中でも
に出店している銀行の割合が少ない(同
比較的経済活動が活発で高い成長が見込まれ
6.12%:同16.33%)
。つまり、ハイリスク銀行
る地区に支店を出すという戦略は、コミュニ
はマーケットが大きく魅力的な都市に進出は
ティバンクの中でも比較的よく行われている。
するものの、都市は競争が激しく、またマー
実際、成功している銀行に単店銀行が少ない
ケットの特性も田舎とは大きく異なるため、コ
(38.78%:49行中19行)ということは、多くの
スト倒れとなってしまう可能性が高いことを
成功銀行は支店の設置による業務拡大に成功
調査結果は示している。この点は、後述する
していると言える。成功銀行(高収益率・高
筆者の実地調査の結果とも一致しており、例
成長率)のうち47%の銀行は本拠地以外の地
えば成功している田舎のコミュニティバンク
区(郡)に支店を出しており、これは低迷銀
の一つであるデニソン・ステイト銀行は、都
行(低収益率・低成長率)の15%と比較する
市の近くに買収の形で進出はしているものの、
とかなり高くなっている。つまり、自らの本
都市そのものではなく、都市近郊の自らの本
拠地を離れて成長地区に進出することのでき
拠地と類似した田舎町に進出することにより、
る勇気と能力を持っているかどうかが成功す
市場を拡大しようとしている。
るかジリ貧となるかの分かれ目の一つとなっ
ている。
成功銀行となるもう一つの要因としては、リ
スク許容度があげられる。そもそも金融とは
一方、これまで慣れ親しんだ本拠地以外の
リスクをリターンに変えていくビジネスであ
新しい市場に進出することはもちろんリスク
る。リスクをまったくとらなければ地域とと
も高い。支店設置が必ずしも成功するわけで
もに銀行も没落してしまう。実際、高成長銀
はない。例えば同じく高成長銀行でも収益性
行は低成長銀行と比較して総資産のうちの貸
が低いハイリスク銀行のグループでも、単店
出金の割合が高く、債券の割合が低い。一方、
銀行の割合は低いが(34.69%:49行中17行)
、
管理できないリスクを取れば失敗することも
経費/総資産率(3.25%(成功銀行は2.67%)
)
明らかであり、同じ高成長銀行でも、成功銀
および人件費/総資産率(1.83%(同1.55%)
)
行とハイリスク銀行のグループを比較すると、
からみて、支店設置のコストを必ずしも吸収
不良債権/総資産比率は2.21%:3.25%と歴然
できていないという結果となっている。同研
としている。つまり、管理可能なリスクを適
究では、この点をさらに掘り下げており、同
切にとり、リターンに変えることのできる銀
じ支店設置でも、成功銀行(高収益率・高成
行が成功しているといえる。
28
信金中金月報 2004.10
・経費/収入率:57.85%(同業同規模平均
3.田舎のコミュニティバンクの事例
研究
次に、田舎で実際に成功しているコミュニ
64.40%)
・90日延滞および不良債権/貸出金率:0.26%
(同業同規模平均0.87%)
ティバンクの事例について紹介することとし
たい。もちろん、田舎といっても様々であり、
②経営戦略
また成功する方法も一つではないが、以下で紹
イ.ウェブシティ銀行のジョプリン市への進
介する実際の事例は先述の先行研究の結果と
出・拡大
共通点も多いことから、成功の法則とまでは言
ウェブシティ銀行は、もともとはウェブシ
わないまでも、一定の原則はあると思われる。
ティ市(人口1万人)に本店を持つコミュニテ
ィバンクであった。1882年の設立後、100年間
(1)ウェブシティ銀行およびジョプリン銀行
は本店のみの単店銀行であったが、1982年に
(法人格としてはウェブシティ銀行という同
本店と同じウェブシティ市内に最初の支店を
じ銀行であるが、ジョプリン市内の支店はジ
設置した。そこまでは普通の田舎の小さなコ
ョプリン銀行という別の名称でビジネスをし
ミュニティバンクとしての典型的なストーリ
ている。)
ーであるが、1980年代∼1990年代になると、米
銀界の外部環境は大きく変化した。米銀の成
①銀行の概要(注)13
長を妨げていた支店設置規制や州をまたいだ
・総資産:212百万ドル(233億円)
業務を制限する州際業務規制が緩和され、多
・ROA:1.18%(同業同規模平均1.19%)
・設立:1882年
・本支店数:4店舗
・営業地区:ミズーリ州ウェブシティ市およ
びジョプリン市。同地区は、ミズーリ州、カ
ンザス州、オクラホマ州、およびアーカン
ソー州の4州の州境に近い(前掲図表2)
。両
市における預金シェア:13.44%(USバンク
(全国的な大銀行)26.68%、南西ミズーリ銀
(地元の銀行)14.68%に次ぎ3位)
ジョプリン銀行(法的にはウェブシティ銀行ジョプリン支店)
(注)13.本節の銀行の財務データは2004年3月末現在。なお、ウェブシティ銀行のあるウェブシティ市は、人口1万人と大きな町で
はないが、人口4万人強のジョプリン市の近郊にあるため、
「ジョプリンMSA」に含まれる銀行となる。よって第1節の定義で
は「田舎」の銀行ではないが、ジョプリンMSAは米国でも最小のMSAの一つであること、近郊の大都市カンザスシティから
車で3時間もかかる田園地帯の中にあること、同行の成功・成長が顕著であることから、本稿における調査対象としている。
研 究
29
くの地方都市に大銀行が進出していった。こ
た。3行は別々の法人・免許を持ちそれぞれが
の人口1万人の小さなウェブシティ市も例外で
活動しており、子銀行のCEO(頭取・理事長
はなかった。1999年には、本拠地ウェブシテ
にあたる。
)も異なっていたが、持株会社のト
ィ市で預金シェア2位であった銀行が現在のUS
ップがグループ銀行全体を統括していた。持
バンク(米国10大銀行の一つ)に買収される
株会社のトップは、このジョプリン問題を解
など、大銀行が同行の本拠地であるウェブシ
決するため、思い切ってウェブシティ銀行の
ティにも参入するようになり競争が厳しくな
新しいCEOとして、スコット・ローゼンター
った。このため、このままでは同行もジリ貧
ル氏をライバルである地元の他の銀行からス
になる懸念があったため、隣のより大きな市
カウトした。同CEOは当時の同僚2名と一緒に
であるジョプリン市(人口4.5万人)への進出
転籍し、3名の新経営陣チームによる新しい体
を試み、2000年8月にジョプリン市内で最初の
制により再スタートさせることにした。3名と
支店を設置した。しかしながら、ジョプリン
もこのジョプリン近辺で20年間以上も銀行業
市と隣のウェブシティ市は昔からライバル関
務を行っており、ジョプリンの銀行市場には
係にあり、例えばお互いに地元では人気があ
精通していた。
る高校フットボールチームがあり、対抗意識
が強かった(注)14。こうした背景の中で、より小
ハ.「ジョプリン銀行」の設立
さな町である「ウェブシティ」の名を冠した
ウェブシティ銀行の新CEOであるローゼン
銀行がより大きく、かつ対抗意識を持ってい
タール氏は、2001年9月に就任し、さっそく企
るジョプリン市の住民に受け入れられるはず
業改革に乗り出した。まず行うべきは、ジョ
はなかった。新支店を開設したものの顧客数
プリン支店問題の解決であった。先述のとお
も少なく、このままではコスト倒れとなり、新
り、ジョプリン支店に人気がないのは、ジョ
規市場参入の典型的な失敗例になるところで
プリンとウェブシティの歴史的なライバル関
あった。
係にあることは明らかであった。このため、ま
ずは、ジョプリン市内の支店の名称を「ウェ
ロ.新CEO登場
ブシティ銀行ジョプリン支店」ではなく、
「ジ
ウェブシティ銀行は、後述するミズーリ州
ョプリン銀行(ウェブシティ銀行の支店)
」と
南部を本拠地とするミッドミズーリ持株会社
表記することにした(注)15。もちろん、法的には
の傘下にある3行の子銀行のうちの1行であっ
あくまでウェブシティ銀行という一つの銀行
(注)14.米国では、地元のプロスポーツのチームがない田舎では、地元の大学や高校のチームが驚くほど人気があることが少なく
ない。
15.連邦準備銀行の検査官の話によると、本来の銀行名とその支店であることを併記するのであれば、マーケティング上のブ
ランド名・愛称として特定の支店に特定の名称をつけることは問題ないとのこと。なお、このように各地区の支店にその地
区の名を付けて、独立した(擬似)銀行のように見せる例は他の地区にもある。例えば、バージニア州のシェナドアバレー・
ナショナル銀行はロードン郡とロッキンガム郡の支店にそれぞれロードン・ナショナル銀行、ロッキンガム・ナショナル銀
行という愛称をつけている。この銀行の場合は、さらにその擬似銀行ごとに地元の(擬似)取締役会を設置し、地元の意向
に基づき経営されていることをPRしている。
30
信金中金月報 2004.10
ジョプリン銀行のロゴ
(下に小さくウェブシティ銀行の支店と書いてある。)
昔からあるウェブシティ銀行のロゴ
であるので、ロゴや看板などにも、ウェブシ
同行の評判となった。この他、ローゼンター
ティ銀行の支店であることは併記している。電
ルCEOはジョプリン市の商工会議所の会頭と
話帳などにも両方のロゴを同時に記載してお
なり、商工会議所の活動にも積極的に関与し
り、契約書などもわかりやすくしているため、
た。同CEOの話では、商工会議所等は単に名
現在ではこの新名称はすんなり受け入れられ
を貸すだけでなく、イベント企画などに積極
ている。この名称変更のインパクトはかなり
的に関与することがコミュニティバンクとし
大きいものであった。
て重要であり、銀行業務に役立っている。例
また、CEOが常駐する場所も本来の本店で
えば、商工会議所のミーティングで金曜のコ
あるウェブシティではなく、このジョプリン
ーヒーを提供したり、夜のカクテルなどのス
側の新しい支店とすることにより、新生ウェ
ポンサーになるだけでなく、2003年は、商工
ブシティ銀行がいかにこのジョプリン市での
会議所のイベントとしてイースターエッグハ
銀行業務に力を入れているかを内外に示すこ
ンティング(注)16を行った。このイベントでは、
ととなった。
3,000もの玉子を銀行員が総がかりで全部で2時
ただし、単に支店の名前を変えただけでお
間半もかけて隠したが、いざ始まってみると
客さんが集まるわけではない。多くの日本人
顧客には3分で玉子を見つけられてしまった。
が飲み会が好きなことと同様に、米国人の多
玉子を見つけた人には、景品やキャンディー
くはパーティーが大好きである。このため、ブ
を進呈した。このほか、役職員には地元のコ
ロックパーティーという大規模な地元の人々
ミュニティでの活動を行うよう奨励している。
とのパーティーを開催した。最初の年(2001
コミュニティにとって銀行が何をしているか
年)は3∼400人の市民が参加し、次の年は5∼
見えるようにすることが大事であり、それが
600人、さらに2003年は1,000人ほどのジョプリ
宣伝にもなると同CEOは考えている。このほ
ンの市民が参加した。地元のレストランから
か、市内のマクドナルドの店内にATMを設置
食事を仕入れ、銀行と地元の人々とで楽しい
しており、マクドナルドの看板のロゴの下に同
食事を共にした。仕出を行う地元のレストラ
行のロゴを入れてあり、PR活動に余念がない。
ンにとってもありがたい話となった。これが
こうした地道な努力が実り、2003年6月現在、
(注)
16.4月上旬のイースター(復活祭)で行われる遊びで、色や柄をつけた玉子を隠し、それを見つけると幸運があるといわれている。
研 究
31
つまり新CEO就任後2年弱で、同行のジョプリ
のビルも内装・外装とも改善した。顧客重視
ン市での預金シェアは7.31%にまで達してい
の姿勢をはっきりさせるため、営業時間も運
る。もともとはほとんどゼロ(2001年6月は
用上は5分早く始めて5分遅く閉めることによ
0.97%)であったことを勘案すると、急成長し
り、時間際の顧客も逃さない、という態度を
ていると言えるだろう。また、先述のFRB研
明確にした。(R)結果については、結果主義
究にあるとおり、地元コミュニティへの関与
で利益を出すこと、そして(E)は情熱を持っ
を通した顧客サービスが田舎のコミュニティ
て仕事をすることを職員に徹底させた。全職
バンクにとって重要であることを示す好例と
員はこのビジョンに基づき行動することを求
も言える。
められており、これらを達成すれば、職員は
クリスマス時のボーナスで報いられる。この
ニ.新しいビジョン「CARE」
ように、企業文化を変革することに力を注い
新CEOは、こうした対外的な活動だけでな
だ。例えば、コミュニティへの貢献などもボ
く、社内の改革にも着手した。新しい経営方
ーナスの査定項目に含めた。なお、こうした
針は、「CARE」である(careという言葉自体
プラクティスの多くは、CEOはじめ新経営陣
には、他人に気を使い世話をすること、とい
が以前勤めていた銀行等のプラクティスのう
う意味がある)。この「CARE」は、Community
ち、有効と思われるものを導入している。
(地域社会)Attitude(態度)Result(結果)
Enthusiasm(情熱)の頭文字でもある。
この方針をとってから同行の業績は急成長
した。例えば、新体制発足時の2001年9月末と
具体的には、(C)地域社会については、先
2年半後の2004年3月末を比較すると、総資産
述のとおり、ブロックパーティーや商工会議
は約3倍(年率52%)で成長しており、ROAも
所への積極的な関与など、単にコミュニティ
1.03%から1.18%に改善している。
に奉仕しようとするだけでなく、コミュニテ
ィからみて同行の存在感を増す方法は何かを
常に考えた行動を職員に対して求めていった。
ホ.大銀行等との競争
同行からみて、大銀行のライバルとしては
(A)態度については、銀行員にとって第一印
USバンク(全米トップ10レベル)
、コマース銀
象がいかに重要であるかを徹底させた。例え
行(近隣の都市カンザスシティでは最大(注)17)
ば、通常は米国の銀行には制服がないことも
があるほか、多くの小さなコミュニティバン
あり、以前はジーンズで職場に来る職員すら
クがある。同行の大銀行との差別化は、各支
いたが、原則として月∼木曜日はネクタイ着
店に融資担当者を設置し、顧客の融資ニーズ
用、金曜日はカジュアルだが、同行のロゴ入
に迅速にかつ柔軟に対応できるようにしてい
りポロシャツを着るようにした。また、銀行
ることである(米国の大銀行の場合、支店の
(注)
17.
『New York通信第27号』で紹介されている銀行
32
信金中金月報 2004.10
役割はもっぱら預金集めであり、融資担当者
の意味を実態的にも持っているのが普通)も
はローンオフィスという支店とは別の場所(ま
ちろん、プライムレートが6%であれば若干の
たは一部の支店の2階など)に在住しているの
アンダープライムはありうるが、プライムが
が普通)。
4%のような低いときにアンダープライムで貸
一般的に、大銀行には支店・ATM網という
し出すことは金利リスクにより自分の首を絞
武器があるほか、資金力があるので、かなり
めることになる。また、仮に140万ドルの案件
攻撃的な金利競争を行うこともある。例えば、
を逃しても、50万ドルの案件を数件プライム
同行はある法人優良顧客をめぐって140万ドル
レートまたはそれ以上で貸し出せばよいとい
(約1.5億円)の貸付の案件で大銀行と競争とな
ったスタンスである。また、同行は幅広く圏
った。同行はプライムレートである4%で提示
内の企業を取引対象にしているが、巨大企業
したが、その大銀行は2.85%でその案件をとっ
や国際業務を行うような企業とは取引をしな
てしまった。そのような低金利は同行のよう
いなど、こうした点においても大銀行とは差
な小さなコミュニティバンクには提示できな
別化を図っている。
いし、同行経営陣もやるべきでもないと考え
ている。このほかにも優良企業をとられたこ
へ.ウェブシティ銀行の組織
ともあったが、原則として、同行はアンダー
ウェブシティ銀行は、親持株会社の傘下に
プライムの貸付はやらない方針である。
(米国
ある3つのコミュニティバンクのうちの一つで
ではプライムレートがプライムレートとして
ある。兄弟銀行である他の2行は、同じ州内で
図表6 ウェブシティ銀行の組織図
親持株会社
中間持株会社
ウェブシティ銀行
ウェブシティ銀行
(ウェブシティ市内の支店)
中央ミズーリ銀行
保険代理店
タウン&カントリー銀行
住宅ローン会社
ジョプリン銀行
(ジョプリン市内の支店)
(出所)連邦準備銀行(FRB)
研 究
33
はあるが、やや離れた地区を本拠地としてお
基本、とのことである(実際、この審査部長
り、子銀行3行にはそれぞれの経営者がおり、
との取材は銀行の外で行われたが、町の人の
実態的には営業に関しては独立して活動して
多くはこの審査部長の顔見知りのようであり、
いる。地域のニーズは地域により異なるため、
よく手を上げて挨拶していた)
。
米国、特に地方ではこのように地域ごとに独
リレーションシップバンキングにおいて債
立した子銀行をおく組織形態が珍しくない。同
務者のキャラクター以外に大事な点は、中小
行の持株会社は先述のとおり全体の統括を行
企業向け貸付審査におけるキャッシュフロー
うほか、バックオフィスやスタッフ部門は親
の評価、つまり対象となるビジネスから返済
会社に集約し、各子銀行は営業に専念できる
財源が出るかどうかが審査上の最大のポイン
ようにしている。例えば、各行が実行した住
トである。もちろん担保は可能な限り徴求す
宅ローンは、持株会社でプール化し、2次市場
る。担保としては不動産がベストであるが、サ
に売却する仕組みとなっている。また、人事
ービス業が多いので売掛金や動産を一括して
などの管理部門も持株会社に集中している。各
担保に取ることも多い。
子銀行は独立採算となっており、集中化サー
ビスに対する手数料を親会社である持株会社
に支払っている。
④ウェブシティ銀行についての考察
ウェブシティおよびジョプリン市は田舎と
はいっても小さなMSAに属する小都市であり、
③融資戦略
地域経済自体は成長しているようである。言
言うまでもなく、わずか本支店4店舗のコミ
うまでもなく、米国の田舎といっても地区に
ュニティバンクである同行のビジネスモデル
よって栄えているところとそうでないところ
はリレーションシップバンキングである。同
があり、田舎だからといって一律に経済が不
行の審査部長によると、リレーションシップ
調なわけでもない。ただし、この銀行は比較
バンキングの審査で大事な点は債務者のキャ
的小さなウェブシティから、より大きく、発
ラクター(経営能力、人格等)をどう見るか
展の可能性が高いジョプリン市に進出するこ
である。特にその債務者の地元での評判をど
とにより、ウェブシティにとどまることによ
のように判断するかがリレーションシップバ
るジリ貧と大銀行の攻勢を打開している。も
ンキングの重要なポイントとなっており、債
っとも、最初からジョプリン市で成功したわ
務者のキャラクターを本当に理解していれば、
けではなく、むしろ進出当初の1年間は失敗で、
トラブルになるような融資を実行することも
それを打開するために強力なリーダーシップ
少ない。キャラクターを理解するためには、顧
を持った新CEOを招聘することになった。米
客との対話を重視し、家族構成やニーズなど
銀は田舎の銀行でもこのようにトップクラス
を顧客との常日頃の会話から聞き出すことが
の人材の流動性が高く、これによりよい銀行の
34
信金中金月報 2004.10
優れた実務が他銀行に移りやすい環境にある。
同行の戦略は基本的には、先述のFDICの研
究にあるとおり、成長しそうなマーケットに
支店を出すという、田舎の銀行におけるオー
ソドックスな戦略といえる。同行がそれによ
り高収益・高成長を遂げた理由は、やはりそ
の新しい市場に精通したCEOを中心とした新
経営陣を招聘したことが大きいと考えられる。
企業カルチャーを変えることは一般的には難
しいが、トップが替わり、トップダウンで新
・ROA:2.41%(同業同規模平均1.19%)
・設立:1901年
・本支店数:5店舗(2004年5月に統合した買
収銀行支店を含む。
)
・本支店所在地(ホルトン市およびホイット
市)の預金シェア:63.99%
・経費/収入率:45.44%(同業同規模平均
64.40%)
・90日延滞および不良債権/貸出金率:1.12%
(同業同規模平均0.87%)
しいやり方を実行し、インセンティブシステ
ムを変え、新しい方針を職員にコミュニケー
②デニソン銀行の経営戦略
トしていけば、それなりに変わることも可能
イ.現在までの発展の経緯
といえる。
デニソン銀行は1901年にホルトン市から16
また、FRB研究にあったとおり、当行はコ
キロ程南東のデニソンで発足した銀行である
ミュニティに対して深く関与し、顧客サービ
が、1939年に現在の本店があるホルトン市に
スを向上させようと努力している。例えば商
移転した(現在のデニソンは人口わずか230人
工会議所への参加も名誉職的に名前を貸して
の寂れた町)
。その後はホルトン市などに支店
会合等に出席するだけでなく、率先してリー
を増やし、地域のコミュニティバンクとして
ダーシップを発揮してイベントなどを企画し
の地位を固めていった。1988年にホルトンの
てネットワークを広げている。さらに、同行
やや南にあるホイット市に支店を設立した(人
は積極性が先行する経営を行っているように
口は両市合わせて約4千人)。昨年は、実質破
も見えるが、経費率、不良債権率とも同規模
平均を大きく下回っており、基本である先述
のFRB研究の3要素(顧客サービス、高い資産
の質、低い経費率)を見事に達成した上での
積極経営と言える。
(2)デニソン・ステイト銀行
①デニソン・ステイト銀行(以下デニソン銀
行)の概要
・総資産:153百万ドル(168億円)
デニソン銀行本店
研 究
35
綻していたトピーカ市近郊のメルディンを中
であって、トピーカ市周辺のエリアではこれ
心としたカントリーサイド銀行をデニソン銀
まで培ったと同様のビジネスモデルが使える
行の持株会社が買収し、2004年5月14日にデニ
からである。
ソン銀行と合併させることとなった。トピー
同行経営者によると、田舎の銀行では、相
カ市は、カンザス州の州都であり、ホルトン
対的に成功・成長する場所にいることが大事
周辺では最大の都市である。つまり、デニソ
である。具体的には、銀行は不動産融資が多
ン銀行としては、カントリーサイド銀行の買
いので、住宅価格を含めて不動産価格が高い
収により、州都トピーカへの進出の足がかり
場所の方が銀行にとっては有利である。また、
を得たことになる。
付加価値の高い産業が発達するためには教育
図表7にあるように、州都トピーカの北から
が不可欠なことから、地域経済が発展するた
本拠地のあるホルトン市までが同行のもとも
めには、地元にいい学校があることも大事な
との主な営業エリアであるが、同行の重点営
要因となっている。なお、このホルトン地区
業地区は州都トピーカの方へシフトしている。
に関して言えば、インディアン居留地内にカ
支店としては、メルディンおよびトピーカに
ジノができたために人の行き来が増え、さら
あるカントリーサイド銀行の本支店2行が加わ
に数年前に近くを通るハイウェイ75号線が2車
るとさらにトピーカ周辺で強くなる。ただし、
線から4車線に変わってからは、通行量が増え
トピーカ市内の中心部分というよりは、周辺
経済も活発化した。近くの湖やカジノへ行く
のエリアをターゲットとしている。これは、同
客も増え、それを目当てにするロードサイド/
行がもともと小さな町のコミュニティバンク
ファーストフードレストランなども増えたと
図表7 デニソン銀行周辺図とそれぞれの町の人口(ホルトン∼トピーカまで約50km)
ホルトン(本店所在地・3,400人)
インディアン居留地
デニソン(発祥の地・230人)
ハイウェイ75号線
ホイット(支店・570人)
メルディン(買収・700人)
トピーカ(州都・12万人)
(出所)2000年国勢調査(American Fact Finder)
地図はマイクロソフト社Streets & Trips
36
信金中金月報 2004.10
のことである。つまり、コミュニティバンク
功している田舎のコミュニティバンクでも、ウ
のような小さな銀行の場合は、銀行が中心と
ェブシティ銀行とデニソン銀行の2行をとって
なって地域経済を活性化させるというよりは、
みてもそれぞれ異なる考え方と戦略をとって
地域内の比較的良好な経済状態の地区に支店
おり、成功する方法は一つではないといえる。
を設置することが重要であると言える。
ハ.競争環境と同行の競争優位
ロ.名称問題
田舎とはいえ、同行の競争環境は楽なわけ
このように、デニソン銀行はもともとはデ
ではない。特に住宅ローンに関しては、銀行・
ニソン市の銀行であったが、現在はより大き
ノンバンク等を合わせてこの周辺だけで167も
な町であるホルトン市の銀行であり、かつ今
の業者がいる。農業関連貸付については、農
後さらに大きな都市であるトピーカ市に本格
業金融システム(Farm Credit System:農家
的に進出しようとしている(注)18。にもかかわら
向け協同組織的ノンバンク(注)19)がライバルで
ず、同行は一番古くて小さなデニソンの名を
あり、消費者ローンについては信用組合がラ
変えていない。先述のウェブシティ銀行のよ
イバルとなっている。特に信組は非課税なの
うに、地元の支店は地元のブランド名をつけ
で、銀行との競合上有利な立場にある。州都
た擬似銀行にしているわけでもない。この点
トピーカまで行くと大型金融機関もあり、競
については、同行の経営陣の中でもその都度
争はさらに厳しい。
議論はあったが、結局のところは名称を変更
こうした状況のもと、同行の競争優位・差
していない。その理由としては、ここ数十年、
別化のポイントとしては、顧客とのリレーシ
このエリアではデニソン銀行の名は浸透し、顧
ョンシップが強いこと、そして信頼関係があ
客からの評価も良いこともあり、新しい名前
ること、長期間この地域でやってきた実績が
でゼロから始めるのも大変なので、結局デニ
あること、必要なレベルの支店網、ATM網お
ソン銀行の名を使い続けている、ということ
よびインターネット・バンキングサービスが
である。こうした町の大きさと名称の問題は
あることであるといえる。
コミュニティバンクにはつきまとうが、一般
論としては、同行のように最終的にはもとの
名前を残す場合が多いようである。つまり、成
ニ.コンピュータシステム
カンザス地区のコミュニティバンクでは、コ
(注)
18.人口数百人の町が市というのは違和感もあるが、これらの町は行政上はcityとなっている。
19.農業金融システムは、全米で約100のAgricultural Credit Association(ACA)等のネットワークである。各ACA等は借り手
である地元の農民により所有・運営された協同組織的金融機関であるが、業務は貸出のみで預金は受け入れないという点で
はノンバンクである。ACA等の資金調達は、ホールセールバンクである全米で5つのFarm Credit Banks等が管理し、最終的
には1つの連合会(Federal Farm Credit Banks Funding Co.)が債券発行という形で市場から調達している。そもそもは議会主
導で作られた制度であるが、1980年代には農地価格下落、穀物価格下落などの農業危機があり、農業金融システムも大きな
打撃を受け、40億ドル相当までの税金投入支援を中心とした仕組みにより救済された。現在ではACA等の統合が進んでいる。
農業金融の分野においては、日本の農協のような支配的な力はないものの、依然として主要プレーヤーであり、農業融資を
行うコミュニティバンク(民間銀行)にとっては強力なライバルとなっている。なお、日本の農協のように商社機能まで有
しているわけではなく、金融機能中心となっている。
研 究
37
ンピュータシステムをアウトソーシングして
一般の農業貸付は大きく分けて2種類あり、
いる銀行と保有している銀行はほぼ半々であ
農地貸付と種・肥料などの運転資金貸付があ
るが、同行では、コンピュータはアウトソー
る。農地貸付の審査は、一般の不動産審査と
シングしている。費用としては、買うよりも
同じようにキャッシュフローなどを見て審査
アウトソーシングの方が若干高いとのことで
を行う。一方、農業運転資金については、春
あるが、テクノロジーの変化に対応したり、新
に種の購入資金を貸して収穫時に返済を受け
商品開発や支店開設などが多い場合は、長期
るというタイプが普通で、畜産にしても牛を
的に大手ベンダーが対応してくれるアウトソ
売るのは年1∼2回であり、返済の機会は年に1
ーシングのほうが効率的であるといった点が
∼2回しかない。このため、運転資金貸付につ
背景となっているようである。
いては、単年度では天候等の影響を受けやす
いことから、現実的には担保価値に応じて貸
③融資戦略
イ.農業金融
付を行っている。
農業貸付でも、当然のことながら担保は徴
米国には日本の農協金融のように農業への
求している。農地貸付であれば農地は担保と
金融が特定の金融機関グループの独占状況に
なる。個人保証は、その農家が個人事業でな
あるわけではなく、農業金融システムという
ければ徴求する。小さな農家は個人事業扱い
農業に特化した農業金融に強い協同組織的な
なので、個人保証はとらない(債務者個人へ
ノンバンクはあるものの、実際には田舎のコ
の貸付となるため)
。
ミュニティバンク、つまり一般の商業銀行も
与信管理については、通常の事業性融資も
農業への融資は積極的に行っており、農業金
同じであり、家畜を担保にとっている場合は、
融システムとコミュニティバンクとの競争と
その健康状態などをチェックして、担保価値
なっている。
が下がっていないかどうかを確認している。
先述のとおり米国の農業全体が合理化の方
向に進んでいることもあり、デニソン銀行に
おいても、これまでは貸付業務の中心であっ
ロ.住宅ローンおよび消費者ローン
デニソン銀行では、住宅ローンに関しては、
た農業関連貸付(農業貸付+農地担保貸付)の
変動金利のものは自行で保有し、固定金利の
貸出金に対する割合は、1993年末の32%から
ものは2次市場に売却している。銀行は短期調
2003年末には26%に減っている。農業貸付は
達なので、固定長期の住宅ローンを保有する
競争が厳しく、例えば農機具に関しては、農
金利リスクを負うことはできないからである。
機具メーカーが自動車メーカーと同様のロー
2次市場に売れる住宅ローンは規格が厳密であ
ン制度を持っており、一般の農業貸付では農
り、例えば5万ドル未満の小額のローンを売却
業金融システムとの競合が厳しい。
することはできない。売るときは回収権も売
38
信金中金月報 2004.10
る(元利金を債務者から回収する権利だけ売
が、成功しているアメリカの田舎銀行は姿勢
らずに自行で回収することも可能。顧客との
が前向きであるように思える。何事にもプラ
つながりを維持するため、貸付債権だけ売って
ス面とマイナス面があるが、アメリカの田舎
この回収権は売らないコミュニティバンクも
銀行は積極的にプラス面を見て、成長を遂げ
少なくない)住宅ローンは、本拠地であるホ
ようとしていることが最も強く感じられた。
ルトン市だけでなく、極力広い地区から集め、
デニソン銀行も、保守的とはいえ、近くの
地域リスクを分散させるよう努力している。
町でしかもより大きな町に近いところにある
自動車ローンについては、新車はディーラ
破綻銀行をあえて買収することにより、支店
ーのゼロ金利ローンには勝てないので、中古
網を広げようとしている。その一方で、あく
車のカーローンを主に行っている。クレジッ
まで対象とするのは大きな町の中心部ではな
トカードは、本体で10年前からやっているが、
く、自分の本拠地と類似した郊外の小さな町
それほど大きな残高にはなっていない。米国
であり、無理な背伸びをしていない。
においても、同行のような事業貸付中心の銀
FRBの論文にあった成功する田舎銀行の共
行が積極的に個人向け商品であるクレジット
通事項である、①地元サービス、②低コスト、
カードを売り込むというのは実際には難しい
③資産の質についてはいずれも当てはまるよ
ようである。個人相手と法人相手ではかなり
うに思える。また、テクノロジーや規制の変
異なるビジネスであり、一般のコミュニティ
化にも付いていこうとする姿勢が感じられた。
バンクは中小企業などの法人を得意とする場
一方で課題としては、経営者が高齢である
合が多い。
こと、田舎では優秀な人材の確保が難しいこ
と、農業が全体として停滞していることなど
④デニソン銀行についての考察
最初に紹介したウェブシティ・ジョプリン
銀行はどちらかといえば積極経営で拡大・成
があげられるが、そうしたマイナス面を考慮
してもやはりプラス面が多く、全体としてみ
れば良好に経営されている銀行である。
長志向の銀行であったが、デニソン銀行はFRB
インタビューの後で、この取材に同行して
の論文にあった「田舎で堅実にやっている銀
いただいたカンザスシティ連邦預金保険公社
行」のイメージにより近い。ただし、田舎で
(FDIC)の検査官も同意していたが、銀行に
じっとしているわけでもない。今回訪問した2
とって大事なのはロケーション(場所)であ
行とも、田舎を営業基盤としているからとい
る。今の営業エリアが本当に停滞しているの
って後ろ向きの姿勢はほとんどなく、
「このコ
であれば、リスクを管理しつつも成長している
ミュニティはすばらしい。機会に満ち溢れて
地区に進出せざるを得ないのが現状であろう。
いる」
、というものであった。基本的な状況は
日本もアメリカも大きくは変わらないはずだ
研 究
39
FDICの研究にあるとおり、また実際にウェブ
3.全体を通しての考察
シティ銀行やデニソン銀行が行っているとお
連邦預金保険公社(FDIC)の研究(Duncan
り、成長の可能性がある市場への支店設置や
et al〔2003〕
)によると、1997∼2002年の間に破
買収という形で進出することは、現実的な選
綻した34行の米国金融機関のうち、地域経済の
択肢であると言える。ただし、この際に、闇
衰退が原因で破綻した銀行は1行しかない(注)20。
雲に競争の厳しい都市に参入するのであれば、
しかしながら、先述のFRBの研究(Myers &
高成長だが低収益、という結果に終わること
Spong〔2003〕)によると、全体的にみれば、
も少なくない。このため、新しい市場へは十
米国の田舎の銀行は都会の銀行と比較すると
分に研究をしてから時間をかけて参入するこ
収益性、成長性、資産の質について、大きな
と、またデニソン銀行のように、自分の本拠
懸念ではないにしても、やや低い傾向にある。
地に似た市場であり、自行のビジネスモデル
また、FDICの調査(Walser & Anderlic〔2004〕
)
が活かせる市場に進出することが必要である。
によると、米国の田舎の銀行が生き残ってい
さらに、もし可能であれば、ウェブシティ銀
る背景として、その主要顧客である農家が政
行のように、思い切って新しい市場をよく知
府の補助金により支えられているという事実
る有能な人材をスカウトして、その新しい市
も見逃してはならないとしている。すなわち、
場の経営を任せることも有効な戦略であると
米国の田舎、特に過疎地のコミュニティバン
考えられる。
クの多くは、直ちに大きな問題が発生すると
なお、先述のFDICによる研究では、インタ
は考えられないものの、次第に存続が困難に
ーネットの普及が田舎の銀行にとって有利か
なっていく銀行が少なからず出てくることも
どうかについて考察している。実は電話が発
懸念されている。
明されたときも、自動車が普及したときも、こ
一方、FRBの研究にもあるとおり、過疎と
れで田舎と都会の地域格差がなくなると言わ
いう厳しい現実に直面しながらも、成功して
れていたが、結果的にはそれぞれ過疎と過密
いるコミュニティバンクも少なくない。現実
を加速させる要因となってしまったと同研究
に、ウェブシティ銀行やデニソン銀行のよう
では指摘している。インターネットの普及に
に田舎でも成功している事例もある。成功し
より、田舎の銀行にもチャンスが広がると同
ている銀行の共通点としては、先述のとおり、
時に都会の銀行も田舎の優良顧客を獲得する
①優れた顧客サービス、②良好な資産の質、③
ことが可能となるので、インターネットの影
低い経費率、が基本であるが、保守的な経営
響については、今後とも注視する必要がある
だけでは限界があり、少なくとも将来的に大
だろうとしている。
成功はしないことも事実といえる。このため、
低迷する田舎においては、銀行の果たす役
(注)
20.カリフォルニアのモニュメント銀行という総資産約11億円の小銀行1行。その町の主要企業が大規模なレイオフを実施
40
信金中金月報 2004.10
割が期待されがちとなるが、実際には銀行だ
理化・効率化など当たり前のことを基本とし
けで地域経済にできることは限界がある。米
つつ、リスクを十分に検討したうえで新たな
国でも、銀行が地域を興すというよりは、興
チャレンジに取り組むという、基本とチャレ
りそうなところに銀行が集中しているといっ
ンジのバランスの取れた経営が重要であり、こ
た方が正確だろう。
の点は日本の信金にもおおいに参考になる点
リスクをリターンに変えるといった銀行経
と思われる。
営の原点のもと、顧客サービス、資産の質、合
〈取材協力〉
連邦預金保険公社(FDIC)カンザスシティ事務所
カンザスシティ連邦準備銀行
デニソン・ステイト銀行
スーパーコミュニティバンクコンファレンス
ウェブシティ銀行
〈参考文献〉
Duncan, M.C. et al (FDIC) , “The Root Causes of Bank Failures,” FDIC Working Paper, 2003
Myers, F. & Spong, K., “Community Bank Performance in Slower Growing Markets : Finding Sound Strategies for Success,” Financial
Industry Perspectives, Federal Reserve Bank of Kansas City, October 2003
Office of Management and Budget, MSA Bulletin 2003 Attachment
Walser, J. & Anderlic, J., “Rural Depopulation : What Does It Mean for the Future Economic Health of Rural Areas and the Community
Banks that Support Them?,” Future of Banking Study, FDIC, April 2004
研 究
41
業況改善が続く中小精密機械製造業の現状
−業況好転の背景と好調企業の取組事例−
信金中央金庫 総合研究所上席主任研究員
平井 昌夫
(キーワード)精密機械、計測機器、カメラ、医療用機器、時計、事務用機器、デジタル
(視 点)
中小企業の景況は改善傾向にあるが、そのけん引役となっているのが製造業で、中でも、精
密機械においてその傾向が顕著である。本稿では、この精密機械の業況改善の背景を探るべ
く、業界の動向、業界の概要・特徴と業況が好調な企業事例の調査・分析を行うとともに、中
小精密機械製造業の今後の方向性について概観することを試みた。近年は、機械と電気がクロ
スオーバーする中で、電子技術、光学技術、エレクトロニクス技術、精密加工技術の目まぐる
しい進展やIC化、デジタル化等も相まって、従来の統計上の精密機械製造業という分類だけで
は全体像がとらえにくくなっている。このため、調査・分析にあたっては、経済産業省の工業
統計表の「精密機械器具製造業」だけでなく、前述した点で関連性が高いと考えられる周辺業
種(電気機械器具製造業等)を含めることとしたが、結果としてこの視点が精密機械の今後の
方向性と密接に関係することが確認できた。
(要 旨)
●
工業統計表による「精密機械器具製造業」は計測機器、医療用機器、光学機器・レンズ等が
主要なものであるが、電気計測器や、近年需要拡大が顕著なデジタルカメラ等の、既存の精
密機械の範疇では括りきれない周辺分野が比較的活況を呈している。
●
精密機械を構成する主な個別業界をみると、①半導体・IC測定器など電気計測器の回復、②
デジタルカメラ市場の急拡大、③複写機分野におけるアナログ機からデジタル機、カラー機
へのシフトが顕著、など、デジタル技術革新を背景とした大きな変化がみられる。
●
今後の精密機械業界では、①特定の分野で独自技術を発揮しやすい計測機器など独立型中小
企業においては、最終ユーザーのニーズ変化に対応した周辺技術の習得、自社技術の補完な
どが重要となっていく一方で、②下請型企業においては、親企業の事業多角化の進展による
ビジネスチャンスの拡大に積極的に対応していくことが必要であろう。
42
信金中金月報 2004.10
るとはいっても、
「機械」と「電気」がクロス
1.中小精密機械製造業の現状
オーバーする中で、電気・電子技術を用いな
(1)景況調査でみる中小精密機械製造業の景
い機械がすでに存在し得ないくらいに、代表
況改善
的な精密機械である計測器やカメラ等の電子
当研究所の全国中小企業景気動向調査(回
化が進展している。このため、現実には、
「電
答企業は従業員規模20人未満企業が約70%を
気計測器」や「デジタルカメラ」がその事業
占める)によると、最近の中小企業の景況は
内容に取り込まれているのが実情である。
改善傾向が続いており、そのけん引役となっ
また、下請型中小企業の受注先親企業であ
ているのが製造業、中でも、機械器具型業種
る大企業においても、精密加工技術、光学技
であり、とりわけ精密機械の改善が顕著とな
術とエレクトロニクス技術の複合化が進んで
っている。これを業況判断D.I.(前期比「良
おり、部品等を受注する中小企業の事業内容
い」−「悪い」企業割合)でみると、2004年4∼
も「精密機械器具製造業」の範疇を超えてい
6月期は、全業種△20.7、製造業が△9.6に対し
ることは想像に難くない。
て、精密機械はプラス17.8と回復傾向が顕著と
したがって、本稿では、日本標準産業分類
なっており、前回回復期のピーク(2000年10
に準拠する「精密機械器具製造業」に加えて、
∼12月期13.1)をすでに上回っている(図表1)
。
景況調査で「精密機械」とされる企業が事実
2004年7∼9月期見通しについても精密機械は
上その事業内容として含むとみられる、いわ
プラス20.6とさらなる改善が見込まれている。
ば広い意味での精密機械を別途「その他の精
ちなみに日銀短観調査(2004年6月)をみても、
密機械」として括り、両者を合わせて「精密
精密機械の業況判断D.I.が、大企業で36、中堅
機械」として、業況改善の背景を探ることと
企業43、中小企業(おおむね従業員20人以上)
した。
21といずれも大幅なプラスで、精密機械の関
連分野は従業員規模にかかわらず業
況が好調であることを示している。
日本標準産業分類に準拠する工業統計表(産
図表1 業況判断D.I.の推移
(D.I.)
30
20
(2)精密機械業界の概要と特徴
景況調査における「精密機械」は、
10
0
△10
基本的に日本標準産業分類による
△20
「精密機械器具製造業」を対象とする
△30
ものである。
しかしながら、調査対象が基本的
17.8
△9.6
△20.7
△40
△50
△60
2000.3 6
に「精密機械器具製造業」に準拠す
全業種
製造業
電気機械
輸送用機械
精密機械
一般機械
13.1
9
12 01.3 6
9
12 02.3 6
9
12 03.3 6
9
(時期)
12 04.3 6
(備考)信金中金総合研究所『全国中小企業景気動向調査』
研 究
43
業編)の業種分類による「精密機械器具製造
でそれぞれ32.8%、27.0%、22.1%(あわせて
業」と、これに「その他の精密機械」を加え
82%)を占めている。このほか、測量機器、時
た本稿での精密機械の関係は図表2のとおりで
計・同部品、眼鏡などが含まれる(図表3①)
。
ある。
なお、
「精密機械器具製造業」全体では事業
まず、工業統計表(産業編、2002年、従業者
所数で4,622、出荷額で3兆5,502億円となって
4人以上事業所)における「精密機械器具製造
いる。
業」の内容をみると、
「計量器・測定器・分析
一方、本稿では、
「その他の精密機械」とし
機器・試験機」、「医療用機器・用品」、「光学
て、
「電気機械器具製造業」に含まれる「電気
機器・レンズ」が主要なものであり、出荷額
計測器」
、
「電子応用装置(X線装置、医療用電
図表2 工業統計表による業種分類
26 一般機械器具製造業
261
262
263
264
265
266
267
268
2681
269
ボイラ・原動機製造業
農業用機械製造業
建設機械・鉱山機械製造業
金属加工機械製造業
繊維機械製造業
特殊産業用機械製造業
一般産業用機械・装置製造業
事務用・サービス用・民生用機械器具製造業
事務用機械器具製造業
その他の機械・同部品製造業
27 電気機械器具製造業
271
272
273
274
275
発電用・送電用・配電用・産業用電気機械器具製造業
民生用電気機械器具製造業
電球・電気照明器具製造業
電子応用装置製造業
電気計測器製造業
︵
広
い
意
味
で
の
精
密
機
械
︶
﹁
そ
の
他
の
精
密
機
械
﹂
31 精密機械器具製造業
311
312
313
314
315
316
317
計量器・測定器・分析機器・試験機製造業
測量機械器具製造業
医療用機械器具・医療用品製造業
理化学機械器具製造業
光学機械器具・レンズ製造業
眼鏡製造業(枠を含む)
時計・同部品製造業
﹁狭
精義
密の
機
械
﹂
本
稿
の
﹁
精
密
機
械
﹂
(備考)経済産業省『工業統計表』(2002)から信金中金総合研究所作成
図表3 本稿での「精密機械」の概要(2002年)
①「精密機械器具製造業」
事業所数
・計量器・測定器・分析機器・試験機
・測量機器
・医療用機器・用品
・理化学機器
・光学機器・レンズ
・眼鏡
・時計・同部品
合 計
1,491
67
1,194
189
1,068
414
199
4,622
従業者数
(人)
48,121
3,237
37,580
4,417
38,520
11,820
11,018
154,713
出荷額
付加価値額 1人当たり生産性(百万円) 付加価値率
(億円) 構成比(%) (億円)
出荷額
付加価値額
(%)
11,644
32.8
5,132
24
11
44.1
677
1.9
309
21
10
45.6
9,589
27.0
5,250
26
14
54.8
929
2.6
436
21
10
47.0
7,830
22.1
2,879
20
7
36.8
1,768
5.0
800
15
7
45.2
3,065
8.6
646
28
6
20.9
35,502
100.0
15,452
23
10
43.5
従業者数
(人)
42,283
77,332
61,319
180,934
出荷額
付加価値額 1人当たり生産性(百万円) 付加価値率
(億円) 構成比(%) (億円)
出荷額
付加価値額
(%)
10,469
14.9
4,488
25
11
42.9
34,978
49.6
9,037
45
12
25.8
25,021
35.5
6,510
41
11
26.0
70,468
100.0
20,035
39
11
28.4
②「その他の精密機械」
事業所数
・電気計測器
・電子応用装置
・事務用機器
合 計
963
1,275
924
3,162
(備考)経済産業省『工業統計表』から信金中金総合研究所作成
44
信金中金月報 2004.10
子応用装置、ビデオ機器(デジタルカメラが
ると、時計・同部品(2002年は94年比42%)、
含まれる)
、その他の電子応用装置)
」
、および
計量器等(同83%)や「光学機器(ウエイト
「一般機械器具製造業」に含まれる「事務用機
の大きいカメラについては銀塩カメラのみが
器(複写機等が含まれる)
」を取り上げた。こ
含まれる)」(同79%)の落ち込みが大きい一
れは、①計測器や医療用機器、光学機器の大
方で、
「医療用機器・用品」
(同136%)の堅調
半を占めるカメラ関係が、電気・電子技術の
さが目立っている。一方、
「その他の精密機械」
著しい進展の結果、その応用製品が「精密機
の内訳をみると、「電気計測器」(同110%)、
械器具製造業」でなく「電気機械器具製造業」
「電子応用装置」
(同109%)
、
「事務用機器」
(同
の一部に分類されているのが実態となってい
105%)のいずれも比較的堅調に推移している。
ること、②一般的に精密機械と考えられている
さらに「電子応用装置」の内訳をみると、
「医
ことの多い複写機等の事務用機械器具(以下
療用電子応用装置」(同214%)および「ビデ
「事務用機器」という)は「一般機械器具製造
オ機器」(同110%)が伸長しているのが目立
業」の一部に含まれているという実
態もあること、などが主因である。
図表4 「精密機械器具製造業」の出荷額推移
(億円)
50,000
この「その他の精密機械」という括
45,000
りでみると、事業所数で3,162、出荷
40,000
時計・同部品
35,000
眼鏡
額で7兆468億円であり、出荷額では
30,000
光学機器
前出の「精密機械器具製造業」のほぼ
25,000
理化学機器
20,000
医療用機器
2倍の規模となっている(図表3②)
。
測量機器
15,000
計量器等
10,000
5,000
(3)精密機械の出荷額推移
次に、「精密機械器具製造業」と
「その他の精密機械」について、近年
(94年∼2002年)の出荷額推移をみる
0
1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002
(年)
(備考)経済産業省『工業統計表』から信金中金総合研究所作成
図表5 「その他の精密機械」の出荷額推移
(億円)
80,000
と、
「精密機械器具製造業」では、98
70,000
年をピークに落ち込んでいる(2002
60,000
年は94年比84%)のに対して、
「その
50,000
他の精密機械」は比較的堅調に推移
40,000
しており、落ち込みは小さい(同
事務用機器
その他電子
医療用電子
ビデオ機器
30,000
X線装置
電気計測器
20,000
107%で、直近ピーク2000年に対して
も95%)(図表4、5)。
「精密機械器具製造業」の内訳をみ
10,000
0
1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002
(年)
(備考)経済産業省『工業統計表』から信金中金総合研究所作成
研 究
45
っている。
割を持っている。また、計量計測機器の分野
「精密機械器具製造業」と「その他の精密機
は一部の汎用品を除いて多品種少量生産が多
械」を総合して言えることは、いずれも従来
く、特定分野において独自の技術を持つこと
型の精密機械の相当部分が電子化された機器
で中小企業でも相応の存立基盤を有している
に代替されていく中で、
「計量器等」や「光学
ようなケースはめずらしくない。一方、電気
機器」が低調なのに対して、「電気計測器」、
計測器はエレクトロニクス産業をはじめ、鉄
「医療用機器・用品」および「ビデオ機器」が
堅調に推移していることである。
鋼、化学、電力、食品などの広範囲の業種に
おいて、生産システムの監視、制御、品質検
査、研究開発など多種多様な用途に利用され
(4)個別業界の動向
ており、産業の発展に欠かせない重要性を持
ここでは、
「その他の精密機械」を含めて精
っている。
密機械関連の主要な業界について個別にみる
ことで、その業界ごとの特徴と最近の市場動
向を概観することとする。
(ロ)市場動向
従来、計測機器製造業は、景気の好不況の
影響をあまり受けない産業といわれてきたが、
イ.計測機器
電気計測器を中心に産業用の比重が高まるに
(イ)特徴
つれ、受注産業的色彩が濃くなり、近年では
計測機器は、
「計量計測機器(精密機械器具
民間設備投資、公共投資等に大きな影響を受
製造業)
」と「電気計測器(電気機械器具製造
けるようになってきた。すなわち、機械統計
業)」とに大別されるが、計量計測機器も電
によれば、
「計量計測機器」はここ数年出荷額
気・電子技術の応用が進み、実態的には電気
がほぼ4,000億円前後で比較的安定的に推移し
計測器との区分が難しいという実態がある。
ているのに対して、
「電気計測器」は半導体・
一般に、計量計測機器はあらゆる産業の基
IC測定器を中心に、パソコン、携帯電話、情
盤技術を支える「マザーツール」として、ま
報家電等の急速な普及に伴いその動向に大き
た、「計量法」等の法令に基づく公正な取引、
な影響を受けている。最近の動向としては、半
証明を確保するという標準器として重要な役
導体・IC測定器を中心に2000年7,734億円をピ
図表6 計量計測機器の生産額推移
図表7 電気計測器の生産額推移
(億円)
5,000
その他
分析機器
(億円)
10,000
4,000
8,000
3,000
6,000
2,000
4,000
1,000
2,000
0
2003
(年)
(備考)経済産業省『機械統計』から信金中金総合研究所作成
46
1998
1999
2000
2001
信金中金月報 2004.10
2002
0
1998
その他
半導体・IC測定器
1999
(備考)図表6に同じ
2000
2001
2002
2003
(年)
ークに02年には4,102億円まで減少したものの、
頃からカシオ、コニカ(現コニカミノルタ)等
その後、出荷額は03年には4,719億円と回復に
が市販を開始したが、非常に高価であったた
転じており、続く04年も引き続き堅調に推移
め、主なユーザーは報道関係や一部の業務用
しているものと推察される(図表6、7)。
に限定されていた。デジカメが一般ユーザー
に受け入れられるようになったのは、1995年3
ロ.光学機器(カメラ)
ここでは光学機器の代表であるカメラ業界
を取り上げる。
月にカシオが25万画素の「QV-10」を発売開始
した頃からである。「QV-10」はメーカー希望
小売価格が6万5,000円と当時としては破格の安
図表8 カメラの出荷台数推移
(イ)特徴
(総出荷)
(千台)
80,000
光学・精密加工・電子技術の上に成立して
いる近年のカメラ業界は、開発・技術面で国
際競争力を有する輸出主導型産業であり、
「日
本の顔」として世界で高い評価を受けてきた。
しかし、90年代後半以降のデジタルカメラ(以
下「デジカメ」という。
)の台頭に伴い、従来
の銀塩カメラ(フィルム式カメラ)は苦戦を
余儀なくされている。かつては「デジカメが
70,000
60,000
50,000
40,000
30,000
20,000
10,000
0
1999
2001
2002
2003
(年)
2004
(国内)
(千台)
12,000
8,000
はない」ともいわれていたが、パソコンの普
6,000
及や小型化、画素数の増大といった技術進歩
4,000
で、デジカメは完全に銀塩カメラと競合する
2,000
商品に成長した。しかも、銀塩カメラは、携
2000
(見通し)
10,000
銀塩カメラの利便性や画像の質をしのぐこと
銀塩カメラ
デジカメ
合計
0
1999
銀塩カメラ
デジカメ
合計
2000
2001
2002
2003
(年)
2004
(見通し)
帯電話の普及を促す形で登場したデジカメ付
(輸出)
(千台)
携帯電話の画素数の急速な増大、利便性、画
質の向上などで、ますます市場を狭められつ
70,000
60,000
50,000
つあるといえる。デジカメは、今やわが国の
40,000
もっとも国際競争力のある工業製品の一つと
30,000
銀塩カメラ
デジカメ
合計
20,000
なり、かつての花形輸出商品であった銀塩カ
メラに代わる地位を占めている。
デジカメは、1981年にソニーが世界で初め
て試作機を開発したといわれている。1986年
10,000
0
1999
2000
2001
2002
2003
(年)
2004
(見通し)
(備考)1.2004年はカメラ映像機器工業会見通し
2.カメラ映像機器工業会資料から信金中金総合研究所
作成
研 究
47
値で話題を集め、大ヒットとなった。
なっており、国内市場以上に海外市場での伸
デジカメは、フィルムに映像を記録する従
びが大きくなっている。この結果、デジカメ
来のカメラと異なり、CCD(電荷結合素子)と
の輸出比率は2000年72%から03年には81%に
呼ばれる電子の目で光や色素を捕捉し、半導
上昇している。日本メーカーは世界で約9割の
体(メモリカード)に映像を記録する。フィ
シェアを有し、04年は国内を中心に減速感が
ルムは不要で気軽に撮影ができ、eメールで送
強まるものの、引き続き海外を中心に需要拡
受信もできることが一般消費者に支持され、こ
大の見通しである(図表8)。
こへきて一気に市場を拡大している。最近の
いまや電子部品のかたまりともいえるデジ
デジカメ市場は、①従来より銀塩一眼レフ等
カメには既存のカメラメーカーだけでなく、ソ
を使用してきた本格ユーザー向けのハイエン
ニーや松下電器産業といったエレクトロニク
ドクラス(画素数500万超)、②一定の画質と
スメーカーも参入している。通常であれば、参
機能を求めるクラス(画素数300∼500万程度)
、
入企業が増えれば競争が激化し企業間格差も
③日常での使用に耐える画質と携帯性を重視
拡大しやすいが、デジカメ市場の拡大ピッチ
するクラス(画素数200∼300万)
、④入門ある
が速いために今のところ各社とも業績を伸ば
いは遊び目的の低画素クラス(画素数200万以
し、相応の恩恵を受けているようである。こ
下)
、などと一段と多様化が進みつつあり、つ
うしたなかで、既存のカメラメーカー各社は、
れて、商品開発サイクルも急ピッチで短縮化
精密加工、光学、電子技術を複合化させるこ
する傾向にある。
とで、OA機器や半導体製造装置、医療機器等
を一段と強化し、事業の多角化を図っている。
(ロ)市場動向
カメラ映像機器工業会調査によれば、銀塩
カメラの出荷台数は2000年3,172万台から03年
には1,630万台と半減している。これを国内、
ハ.医療用機器
(イ)特徴
医療機関で使用される病状診断、治療、予
輸出別でみると、国内が62%減に対し、輸出
防用の装置・機器・用品を一般的に「医療用
は46%減で、内需の減少が目立っており、つ
機器」というが、薬事法では「医療用具」の
れて、もともと高い輸出比率が2000年の89%
名称が用いられており、公式統計などでは「医
から03年には93%まで高まっている。
療用具」が使われる。ほとんどが病院など医
一方、デジカメは2000年1,034万台から02年
療機関向けである。医療用機器は、明治時代
には銀塩カメラを抜き去り、03年には4,341万
のドイツ医学、戦後のアメリカ医学など外国
台へとわずか3年程度で4倍を超える驚異的な
からの輸入から出発して国産化の道を歩んだ
伸びを示している。これを国内、輸出に分け
ものが多い。現代のME(Medical Electronics)
てみると、国内が2.9倍に対し、輸出は4.7倍と
機器時代を迎えて、医療用機器分野もわが国
48
信金中金月報 2004.10
の得意分野のひとつとなっており、
図表9 医療用機器の出荷額推移
世界に通用する装置・機器を数多く
12,000
生産している。
一般に医療用機器には高い安全
性・倫理性が要求され、ユーザーと
(億円)
医療用機器
X線装置
医療用電子応用装置
10,000
8,000
6,000
の相互協調が求められる。また、
4,000
MRIなどの先端技術装置から包帯、
2,000
注射器などの用品類までその種類や
技術内容が多岐にわたる。このため、
0
1994
1995
1996
1997
1998
1999
2000
2001
2002
(年)
メーカーは専門分化されており、業
(備考)経済産業省『工業統計表』から信金中金総合研究所作成
界は特定機種に特化した中小企業から先端技
1%減)
、医療用電子応用装置2,701億円(同2.1
術を持つ大企業まで幅広い業態・規模の企業
倍)がある。前者は需要が安定しているが、後
で構成されている。
者については、放射線物質応用装置、超音波
画像診断装置等であり、最近の成人病等高度
(ロ)市場動向
医療の普及等から市場は順調に伸長している。
機械統計には「医療用機器」が含まれない
ため(「電子応用装置」の中でX線装置等一部
ニ.時計
が含まれている)
、工業統計表でみると、前出
(イ)特徴
のとおり「精密機械器具製造業」に含まれる
わが国の時計産業は、戦後の復興期から1960
ものとしては、
「医療用機械器具・医療用品製
年代の国内消費拡大、1970年代以降の輸出産業
造業」の02年出荷額が9,589億円、94年比36%
としての成長、などを経て、1980年ごろまでは
増となっており、おおむね順調な伸びをみせ
ほぼ一貫して高い成長を続けてきた。なかでも
ている(図表9)。内訳は、「医療用機械・器
当業界の歴史的転換点は1969年のクオーツ腕
具」
(主として内視鏡、手術用機器など外科用、
時計(水晶発振式電子時計)の発売である。こ
内科用、眼科用等の機器を製造)が7,072億円
れ以降、日本企業は世界市場を席巻、1980年
(94年比で48%増)で主体(74%)を占める。
には日本は世界第1位の時計生産国となった。
このほか、
「電気計測器」中の医療用計測器と
しかし、クオーツ化により時計は電子部品
して1,476億円(94年比で3.7倍)があり、これ
の集合体である大量生産品に変貌し、国内で
も高い伸びをみせている。
は電子機器メーカーの業界参入をもたらし、国
また、
「その他の精密機械」に含まれるもの
際的には大量生産される廉価なムーブメント
として、
「電気機械器具製造業」中の「電子応
(駆動体)の外販・輸出を通じ、アジア諸国の
用装置」として、X線装置2,003億円(94年比
業界参入をもたらした。この結果、日本の時
研 究
49
計産業はアジアに主要部品を供給し
図表10 ウオッチの国内生産数量の推移
ながら、グローバルオペレーション
(百万個)
600
を展開することになった。クオーツ
完成品
ムーブメント
500
化以降、完成品メーカーの多くはク
400
オーツで培ったエレクトロニクス技
300
術をテコに事業多角化し、時計製造
200
に技術的源泉を持つ「精密電子機器
100
メーカー」に変貌した。
0
1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003
(年)
(ロ)市場動向
(備考)経済産業省『機械統計』から信金中金総合研究所作成
メーカー各社による労働集約工程の残る完
成品事業の海外生産シフトはすでに一巡して
水晶アナログに限れば72%程度と推定される。
一方、国内市場は飽和しており、買替え・
おり、国内製造拠点は空洞化が著しい。一方、
買増し需要が中心である。加えて、国内市場
ムーブメントは国内製造拠点における製造工
は低価格品と高価格品(機械式が中心)に二
程の自動化が進展していることから、国内生
極化が進行し、いずれもスイス、香港からの
産でも価格競争力を持ちえており、相応の国
輸入品が台頭している。かかる状況の中で、日
内生産体制を維持している(図表10)。
本の時計メーカーは高級品や電波時計(注)1など
時計は日系メーカーによるグローバルオペ
付加価値の高い分野に注力している。
レーションの先行モデルとされ、日本時計協
会によれば、日系メーカーによるウオッチの
総生産(海外生産を含む完成品+ムーブメン
ホ.事務用機器
(イ)特徴
ト)は数量では近年7億個台で推移している
事務用機器は「工業統計表」
(02年、従業者
(03年実績では7.7億個(前年比6%増)、1,861
4人以上事業所)では「一般機械器具製造業」
億円(同3%減)
)
。なお、03年の総輸出(海外
に分類され、前出のように、事業所数924、出
からの出荷を含む完成品+ムーブメント)は
荷額(同)2兆5,021億円である。業界構造をみ
7.3億個(同8%増)
、1,814億円(同3%減)で、
ると、従業員300人以上の事業所は全体924の
仕向け先は、低価格品でアジア、高級品で米
うち、32とわずか3%に過ぎないが、従業者数
国が最大のウエイトを占める。ちなみに、世
(54%)や出荷額(72%)では過半を占め、少
界のウオッチの総生産は近年12億個前後で安
数大手企業への集中度合いが高い。また、出
定推移しており、03年実績が12.95億個である
荷額は02年で94年比4.5%の伸び(98年ピーク
ことから、日系メーカーのシェアは59%程度、
比では11%減)となっている。IT化、OA化の
(注)
1.標準電波送信所からの電波を内臓アンテナでキャッチしながら常に正確な時刻を表示できる時計
50
信金中金月報 2004.10
進展を背景として、デジタル化、カラー化、モ
図表11 複写機の国内・海外生産台数推移
バイル化の進展・拡大が期待され、周辺・隣
3,500
(千台)
接技術の革新とも相まって、事務用機器製造
3,000
業には市場ニーズやシーズが多数存在してお
2,000
り、それに応えるように技術革新が進展して
いる。国際化の進展、技術革新、商品ライフ
2,500
1,500
1,000
500
0
サイクルの短縮化など、市場環境は激変して
いるが、当業界は強力な新商品開発力を有し
ており、ポテンシャルは高いとみられる。
(ロ)市場動向
デジタル化の波は事務用機器の世界も飲み
込んでいる。代表的な事務用機器のひとつで
ある複写機について最近の生産動向をみると、
海外生産比率(逆輸入のほか国内の他社生産
委託分を含む)が98年の45.4%から03年の66.0%
へと上昇していることを背景に、国内生産台
海外生産
国内生産
1998
1999
2001
2002
2003(年)
①国内生産
(千台)
2,000
1,800
1,600
1,400
1,200
1,000
800
600
400
200
0
2000
フルカラー機
デジタル機
静電間接式
1998
1999
2000
2001
2002
2003(年)
2002
2003(年)
②海外生産
(千台)
2,000
1,500
1,000
数は、98年173万8,000台から03年の93万8,000
500
台まで落ち込んでいる。その内容を見ると、ア
0
1998
1999
2000
2001
ナログ機は110万8,000台から4万9,000台へと急
(備考)経済産業省『機械統計』から信金中金総合研究所作成
減している一方で、デジタル機は98年の58万
務用機器は複写機を中心にアナログ機からデ
7,000台から99年、2000年と100万台を超えた
ジタル機、カラー機への移行が顕著である(注)2。
後、03年は52万5,000台まで再び減少し、これ
に代わってフルカラー機が98年4万3,000台から
03年36万4,000台へと急拡大している様子がう
2.精密機械業界を取り巻く環境変化
(1)デジタル技術革新による業際化の進展
かがえる。一方、海外生産は一部にフルカラ
前出のように、日本標準産業分類に準拠す
ー機の台頭はみられるものの、かつての国内
る工業統計表によれば、
「精密機械器具製造業」
生産と同様にデジタル機へのシフトにより増
には、計量器・測定器等、医療機器、光学機
加傾向にある(図表11)
。このように近年の事
器等、測量機器、眼鏡、時計等が含まれる。計
(注)
2.複写機のデジタル化(原稿をデジタルのレーザー信号に変換する)はレーザープリンタの書き込み方式と同じであり、両用
のコントローラ(画像処理システム)搭載により一体化が可能になる。また、ファクシミリ機能を併せ持つことで多機能プリ
ンター(MFP)となり、パソコンやサーバーと併用すればネットワーク複合機としてオフィスの文書作業に一大革命を起こす
といわれる。
研 究
51
測機器についても、ここではメカニカルな計
野に関連する精密機械業界は、電気・電子機
測機構を持ったものに限定されており、電子
器業界との参入障壁が消滅し、デジカメのよ
計測器・測定器など電気・電子的な計測機器
うに電気・電子機器メーカーの参入により競
は「電気機械器具製造業」の方に含まれる。同
争が激化する一方で、技術革新をテコにした
様に、光学機器の代表であるカメラについて
新市場の創出によってビジネスチャンスもそ
も、近年急速に需要が拡大しているデジタル
れ以上に広がっている。
カメラが「電気機械器具製造業」に含まれる
(2)デジタル家電がけん引する精密機械製造
などデジタル化の技術革新によって、精密機
械と電気機械のクロスオーバーが進展し、精
業の景況回復
密機械の外延が急速に広がっている。こうし
前述したように、精密機械は、旧来の「精
た技術革新を背景とする精密機械分野の拡大
密機械器具製造業」よりもむしろ本稿でいう
により、従来のカメラ・時計等の精密機械メ
「その他の精密機械」を中心として、市場を拡
ーカーが精密加工、光学、電子技術を複合化
大している。具体的には電気・電子機器等、と
してOA機器や半導体製造装置、医療用機器等
りわけ電気計測器、デジカメ、医療機器、複
への事業多角化を図っている(図表12)。
写機などのデジタル化の著しい進展のみられ
これに伴い、部品加工などで精密機械業界
る機器類が精密機械分野の市場拡大をけん引
の裾野を支える下請型中小企業も、ユーザー
している。すなわち、最近の精密機械分野の
の情報収集、新たな周辺技術の習得など、新
景況感改善は、デジカメに代表される“デジ
たなニーズに対応するための受注体制の整備
タル家電”がリード役になっているものと推
に迫られている。
“デジタル家電”など成長分
察される。
図表12 大手精密機械メーカーの事業多角化例
(単位:%)
企業名
キヤノン
事 業
カメラ
光学機器等
オフィスイメージング
機器
コンピュータ周辺
機器
オリンパス 映像
医療
ライフサイエンス
産業
その他
コニカミノルタ 情報機器
オプト
フォトイメージング
メディカル&
グラフィック
計測機器
主 製 品
半導体製造装置、
液晶基板露光装置
デジタル複合機、
複写機
レーザプリンタ、
ファクシミリ
デジタルカメラ
内視鏡
血液分析器
顕微鏡、測定器
システム開発
MFP、プリンタ
光ピックアップレンズ
デジタルカメラ
医療・産業用フィルム
3次元形状計測機器
(備考)各社HPから信金中金総合研究所作成
52
信金中金月報 2004.10
企業名
事 業
24 セイコーエプソン 情報関連機器
電子デバイス
精密機器
7
その他
23 シチズン時計 時計
情報・電子機器
産業用機械
46
その他
47
34 リコー
事務機器
11
その他
7 HOYA
エレクトロオプティクス
ホトニクス
1
主 製 品
売上構成比
プリンタ、プロジェクター
65
半導体、ディスプレイ
29
ウォッチ、FA
5
1
34
49
7
10
MFP、プリンタ
47
デジタルカメラ
53
半導体用フォトマスク
43
レーザー機器
3
50
9
眼鏡レンズ
コンタクトレンズ
クリスタルガラス
情報システム構築
売上構成比
26
14
1
ビジョンケア
ヘルスケア
クリスタル
サービス
39
10
4
1
デジタル化の進展した機器類の好調が国内
れているものと考えられる。
景況感の改善へ大きく寄与しているのは、一
デジタル化技術は、精密加工技術、光学技
般に新製品開発期にみられるような、国内を
術、電気・電子技術をベースにした複合技術
重視した生産体制が継続していることが背景
であり、最終製品を製造するためには、素材
にある。例えば、デジカメは3か月ともいわれ
や部品の加工・組立にとどまらず、素材・部
る極めて短期間の開発サイクルの中で各社が
品の製造装置、検査・測定機器およびそれに
先を争って新製品を開発・投入しているため、
伴う部品や加工など、その関連する分野は広
生産体制も迅速性に勝る国内を重視せざるを
範囲に及ぶ。後述の事例にもみるように、多
えないのが実情となっている。このため、デ
くの中小精密機械製造業が半導体、液晶、電
ジカメの国内生産比率も近年一段と上昇し、国
子デバイスなど様々な形でデジタル化に関連
内生産が海外生産を上回る状況にある。一方、
していることを考えれば、
“デジタル家電”に
銀塩カメラをみると、逆に国内生産比率は低
代表されるデジタル化関連機器の需要拡大が
下傾向にあり、海外生産に重点がシフトして
精密機械の景況改善をけん引しているといえ
いる(図表13)。
よう。
一般的に、デジタル家電等民生用電子機器
の国内生産体制は、その製品の普及状況に応
じて、①国内での新製品開発段階、②海外需
要の立ち上がりによる輸出段階、③海外需要
3.中小精密機械製造業の今後の方向
性と業況好調企業事例
(1)中小精密機械製造業の今後の方向性
の拡大とコストダウンのための海外生産への
ここでは、中小精密機械製造業を、
(イ)主
シフト段階、④海外からの逆輸入段階、と順
として計測機器に代表される独立型中小企業
にシフトするといわれる。このパターンから
と、
(ロ)精密部品加工等の下請型中小企業に
みると、銀塩カメラは④逆輸入段階にあるの
大別し、後述の企業事例も踏まえつつ、今後
に対し、デジカメは①∼②の国内開発・輸出
の方向性を考えてみた。
段階にあり、目下のところ国内生産が重視さ
図表13 カメラの国内・海外生産台数推移
①銀塩カメラ
(千台)
(%)
(千台)
②デジタルカメラ
(%)
25.0
30,000
60.0
20,000
20.0
25,000
58.0
15,000
15.0
20,000
56.0
15,000
54.0
25,000
10,000
10.0
10,000
52.0
5,000
5.0
5,000
50.0
0.0
2003(年)
0
0
1998
1999
2000
2001
2002
国内生産
海外生産
2000
2001
2002
48.0
2003 (年)
国内生産比率(右目盛)
(備考)経済産業省『機械統計』から信金中金総合研究所作成
研 究
53
イ.独立型中小企業にビジネスチャンス
小企業がオンリーワン企業として活躍してい
中小精密機械メーカーには、計測機器分野
るケースも少なくない。今後は、需要先やニ
を中心に独立型の中小企業が多数存在する。こ
ーズの変化に積極的に対応し、得意分野をベ
こでは、精密機械の主要業種であり、製造業
ースとしながらも、周辺技術の習得、自社技
の基盤を支えるマザーツールである計測機器
術を補完するためのネットワークの活用、ア
を取り上げることにより、独立型中小企業と
ウトソーシングなどにも取り組む姿勢が必要
しての中小精密機械製造業の今後の方向性を
であろう。
考えてみたい。
また、計測機器以外の精密機械分野におい
計測機器は、一部の汎用品を除いて典型的
ても、独立型中小企業の活躍するチャンスは
な多品種少量生産であり、生産に一品料理的
広がっている。需要が拡大していくなかで多
な熟練を要する点で中小企業性の高い業種で
様化の進展も著しい“デジタル家電”分野で
ある。また、あらゆる産業に計量基準を提供
は、大手メーカーが量産しにくい小ロットも
するという意味でものづくりの基盤産業でも
のや、大手メーカーが量産に至るまでのいわ
ある。計測機器業界も他の製造業と同様に、海
ば時間的な隙間を埋める商品などで中小企業
外からの低価格攻勢により競争が激化してお
がオリジナル製品を開発する余地も生まれて
り、汎用品・量産品で納期に猶予のあるもの
いる。近年では、大手のブランドでなくても
は海外生産に移行し、国内生産は、技術レベ
デザインや機能が優れていればユーザーに受
ルの高い、短納期の製品が主体となっている。
け入れられるケースもめずらしくない。アナ
一方、需要先についても、鉄鋼、化学等の基
ログに比べて企業間の技術水準の垣根が低い
幹産業から、近年は半導体、自動車、食品、な
といわれる“デジタル家電”では、製品の性
どの分野へと広がっている。今後も、新規成
能を左右する要素がシステムLSI(1つのシリ
長産業として期待される生命科学、情報通信、
コンチップ上にシステムを構成する主要部分
環境保全などの分野で一層の需要拡大が見込
を搭載し、それ自体をひとつのシステムにす
めることなどから、中小計測機器メーカーに
るLSI)など一部基幹部品に集中していること
おいても、自社の得意分野をベースに、産学
から、こうした部品を外部から調達すること
連携等による技術開発等を進め、こうした分
でオリジナル製品を擁しながら新市場を創出
野でのビジネスチャンスに積極的に対応して
していくことも可能となってきているものと
いくことが何よりも重要である。
考えられる。精密機械分野を手がける中小企
後述の事例にみられるように、計測機器市
業は、局面によってはこうした新しいビジネ
場は個々の用途や市場が特殊で規模も小さい
スチャンスに対して果敢に挑む姿勢も求めら
ため、中小企業にとっても独自技術を発揮し
れよう。
やすく、特定の分野で高いシェアを有する中
54
信金中金月報 2004.10
ロ.下請型中小企業に受注の広がり
重要である。
一方、下請型の中小精密機械製造業者にお
いても、親企業の業際化、事業多角化の進展
(2)中小精密機械製造業の業況好調企業事例
により、受注分野や内容の変化、ニーズの拡
以下では、業況が好調な中小精密機械製造
大、高度化という形で様々な対応が要請され
業の様々な取組事例をみてみたい。事例企業
ているのが一般的な流れとなっている。こう
をあえて分類すれば、イ.∼へ.は自社製品開
したなかで、下請型中小企業が生き残りを図
発志向型の独立型企業であり、ト.チ.は精密
っていくためには、①多品種少量生産、短納
加工技術に強みを持つ下請型企業である。
期への対応、②一括発注(モジュール化、ユ
ニット化)への対応、③問題解決能力や情報
発信力の発揮、などが今後ますます求められ
ていくことになろう。
一般に、中小精密機械メーカーは、その沿
イ.日本分析工業㈱―特殊な研究開発用分野
で高シェア
(業種:分析機器製造業 本社:東京都西多
摩郡瑞穂町 創業:1965年9月 資本金:
革・経歴にもよるが、多くは部品の精密加工
6,220万円 従業員:22名 年商:7億円)
をコア技術として得意技術・分野を拡大しつ
当社は1965年、大手の電子顕微鏡メーカー
つ、成長してきた企業が多いとみられる。親
に勤務していた現社長が同僚とともに独立し
企業が時計・カメラなど旧来の精密機械をル
創業した分析機器メーカーである。ガスおよ
ーツとしつつ「精密・電機メーカー」へと変
び液体クロマトグラフィ(混合物からそれら
容している中で、下請型中小企業にとっても、
を構成する個々の物質を分離する手法の一つ)
受注を確保する上で電気・電子技術は不可欠
をコア技術として独自の製品を擁し安定した
あり、こうした周辺技術の習得や異業種との
事業基盤を有している。
ネットワークによる技術補完等の重要性は今
後ますます高まっていくことになろう。また、
(イ)事業内容
中小精密機械製造業ならではの現場の熟練と
事業内容は、①プラスチックの組成分析装
ノウハウは、わが国製造業の次世代の担い手
置(売上構成比約25%)
、②リサイクル分取液
といわれ超精密加工技術が不可欠なナノテク
体クロマトグラフ(同約50%)
、③ハードディ
ノロジーの発展においても大きな役割を果た
スク駆動装置(HDD)用アウトガス捕集およ
すことが期待されている。
び測定装置(同25%)、の大きく3つに分類さ
親企業の業際化、事業の多角化の進展によ
れる。
る受注の多様化は、下請型の中小精密機械製
①のプラスチック組成分析装置は、キュー
造業者にとってもそのままビジネスチャンス
リーポイント加熱法という当社独自の方法を
の拡大であり、積極的に対応していくことが
用いた自社開発製品で、大学、試験研究機関
研 究
55
をはじめ、自動車や家電製品などの量産メー
ーカーが優位性を強めており、今後は国際競
カー向けに納入台数は累計1,000台を超えてい
争力の強化が当社をはじめとした分析機器メ
る(同分野における国内シェアは推定約70%)
。
ーカー各社の課題である。
しかし、近年は需要先であるプラスチック業
界の海外生産シフトや、より安価な競合製品
の出現等により、売上はやや低調に推移して
ロ.㈱三鷹精工―精密測定技術をベースに自
社製品開発
いる。②は、カラムと呼ばれるシリカゲルな
(業種:ねじゲージ、真円度測定機等製造業
どを充填した分離管を用いた試料分離用の高
本社:東京都昭島市 創業:1955年 資本金:
速液体クロマトグラフで、注入した試料を再
1,000万円 従業員:26人 年商:3億円)
循環させ分離を向上させる方法の採用により
当社はねじゲージを中心とするゲージの専
高純度の分離が可能となるという特徴がある。
門工場としてスタートし、強みである測定技
用途は国内や韓国などの大学等の研究開発向
術、超精密加工技術を応用して開発した静圧
けが主体で需要は国の予算に左右されやすい。
空気軸受(エアーベアリング)
、真円度測定機
③は、HDD製造装置やHDD内の汚染状況を正
等を事業内容とする精密機械メーカー。大手
確に測定できる装置で、ガスの測定方法から
有力先約10社(売上の約70%を占める)を得
測定装置に至るまでHDD製造の事実上の世界
意先に擁し事業基盤を有する。
標準になっている。仕向け先はHDDのメーカ
ーおよびユーザーである。
(イ)事業内容
事業内容は、ゲージ類(売上比約20%)
、エ
(ロ)業況と課題
アーベアリング(同約30%)、真円度測定機
当社の業況は、バブル崩壊後、設備投資の落
(同約10%)
、精密加工(同約40%)である。ゲ
込みなどから伸び悩んできたが、最近では、研
ージについては、大手メーカーを中心とする
究開発投資の回復等から持ち直しがみられる。
国内7社のねじゲージJIS表示許可工場の1社と
市場規模約2,500億円(医療関係約700億円を
して、現在でも安定した事業基盤を持ってい
含む)といわれる分析機器業界は、島津製作
る。一方、エアーベアリング(静圧空気軸受)
所、日立製作所等の大手メーカーを除くと年
は、1972年に都立航空高専の専門家との連携
商10億円以下の中小企業が多い。大手メーカ
によって開発したもので、大手同業者の中で
ーは薬品など既知分野の検査用など量産もの
自社ブランド製品を有するなど新しい事業の
を主体とするのに対して、中小企業は差別化
柱の1つに育っている。同製品は回転精度の高
を図りながら、未知の物質の分析装置を中心
いベアリングとして、超精密加工機械や回転
にニッチの分野に存立分野を見出しているケ
機能を要する計測器などに使われる。また、真
ースが多い。デジタル化の流れの中で欧米メ
円度測定機は、エアーベアリングを活用した
56
信金中金月報 2004.10
応用製品として自社開発したもので、当社を含
む同業4社の中でも高い精度水準を有している。
(イ)事業内容
流量計は、水道メーター等の汎用機種を除
いた市場規模約200億円のニッチ市場である。
(ロ)業況と課題
こうしたなかで、当社は東京計装など主力同
最近の業況については、エアーベアリング
業5社の一角を占める存在となっている。当社
が好調に推移している。自社ブランド品がレ
は面積式流量計を中心に小型の量産品を得意
ーザープリンターの部品加工機械用として、ま
とし、半導体製造装置向けに限れば50%程度
た、OEM製品がDVDレコーダーなどデジタル
の高いシェアを有すると推定される。最近で
家電向けのHDDの製造過程(ディスクへの書
は、従来の機械式に代わり電気信号による発
き込み)用として、ともに受注が増加してい
信器を付けた流量計や、超音波による計量を
る。特に今後のHDDについては小型化、高密
行う超音波流量計に移行しつつある。
度化が進む中で今後とも需要の拡大が期待で
きる分野となっている。
なお、主力製品の流量計が、半導体関連で
景気の波を受けやすいうえに、成熟製品とし
当社の精密加工を支える熟練技能について
て海外も含めて競争激化していることから、当
は、これまでは社内での現場経験を積むこと
社では流体を測るノウハウをベースに蓄積し
で対応してきたが、今後どう継承するかが課
てきた流量コントロール技術等を活用して、周
題になっている。また、真円度測定機に次ぐ
辺機器や環境事業分野等での製品開発にも注
新しい事業の開発も重要な課題である。現在
力している。一例を挙げると、91年、鹿児島
のところ、真円度測定機の改良版として、横
工場開設を契機に、ケミカルサーキュレータ
型の測定機を開発し、ニーズの見込める高精
などの純水、薬液などの制御システムを手が
度のパイプメーカーへの販売を考えている。
けたほか、関連機器としてオゾン水分解装置
なども開発している。すなわち、半導体・液
ハ.㈱東フロコーポレーション―半導体向け
流量計で高シェア
晶製造工程における洗浄液として従来の薬品
に代わりオゾン水が使われているが、環境に
(業種:流量計等製造業 本社:東京都日野市
やさしいはずのオゾンが高濃度になると人体
創業:1973年 資本金:3,000万円 従業員:
に危険であるため、当社では紫外線でオゾン
160人 年商:27億円)
を分解する技術を開発し、これを商品化して
当社は半導体製造装置向け面積式流量計等
いる。今ひとつは、脱酸素装置で、ボイラ供
のメーカーで、流体を測るノウハウをベース
給水の中の溶存酸素を除去するのに、これま
に流量コントロール技術を蓄積して、周辺機
では薬剤処理が主流だったが、有害性が残る
器やオゾン水分解装置等の環境分野に進出す
可能性があるため、薬剤を使わない脱酸素処
るなど新製品開発力を有する。
理で酸素を除去し錆を防止するものである。
研 究
57
(ロ)業況と課題
衛星からの電子時計の信号をキャッチし、衛
最近の業況は、半導体製造装置など需要業
星からの電波到達までの遅延時間を計測する
界の景気回復を背景に、主力製品の面積式流
ことで、その場所での世界標準時をマイクロ
量計をはじめとして、半導体市場向けオゾン
秒の精度で決定することができるという、当
分解装置が伸長するなどで売上は順調に増加
社が独自に開発した技術(特許取得済み)を
し、04年は過去のピーク(01年27億円)を更
ベースにしたものである。東大地震研究所が
新する見通しである。また、中期的にも新製
中心となって進めていた地震観測システム構
品の投入効果などから順調な推移が見込めそ
築のプロジェクト(全国数千か所で、同一時
うである。
刻に振動データをとることで地震を観測)へ
当社の経営方針として、経営の透明度を高
の参画を通じて当社技術の評価が一気に高ま
めつつ、企業と社員がともに成長することを
り、今日では地震観測システムの分野で独占
目指しており、大学との共同研究などにも積
的な地位を確保するまでに至っている。なお、
極的に取り組んでいる。
当社のこの技術は、政府の進める「e−Japan
計画」における電子政府の各種手続き・業務
ニ.白山工業㈱―独自技術で地震用計測器市
場をリード
(業種:環境計測機器、精密スリッター製造業
本社:東京都府中市 創業:1958年 資本
や電子商取引、オークション、株式取引、な
ど正確な時刻を必要とする様々な分野に用途
が広がることが期待される。
一方、スリッターについては、金属流通業
金:8,000万円 従業員:62人 年商:16億円)
者、金属メーカー向けに、高い精度とコント
当社は1958年に金属流通業者向けのスリッ
ロール機能を備えたトータル・スリッター・
ター製造を個人創業で手掛けたのを嚆矢とし、
システムとして年間10∼20台を製造販売して
86年の法人化を機に高精度計測とIP技術を利
いる。
用した計測、ネットワーク、解析システムの
開発に取り組み、現在では地震用計測器で90%
のシェアを有するなど、安定した事業基盤を
持つ企業となっている。
(ロ)業況と課題
環境計測機器は気象、防災関係の官公需が
中心で予算に左右されやすい。一方、スリッ
ターは設備投資関連で景気に左右されやすい。
(イ)事業内容
最近期(04/3)の事業内容は、大学・研究
所等向け環境計測機器(売上構成比75%)お
最近は防災関係等の受注増等から環境計測機
器を中心に売上は増加している(03/3期 13
億円、04/3期 16億円)
。
よびスリッター(同25%)である。当社の環
当社では、製品の独自性を重視し「世界中
境計測機器(主として地震計測用)は、GPS
に他にないものを生み出していくこと」を基
58
信金中金月報 2004.10
本的な経営方針としながら、社員のやりたい
品質管理、プロセスコントロールなど多用途
テーマを実現するための場を提供する企業作
で使われることから安定した需要に支えられ
りを行っている。そのため、規則でしばった
ている。
り、命令で仕事を進めるのではなく、社員の
自発性を重視する組織を目指している。
(ロ)業況と課題
当社製品は資本財であり設備投資動向に左
ホ.京都電子工業㈱―特定分析機器で堅固な
事業基盤を有する
右される面はあるものの、需要分野が広いこ
とから、近年の不況下にあっても売上げは比
(業種:分析機器製造業 本社:京都市南区
較的順調に伸長してきた。最近では、機械関
創業:1958年 資本金:3,000万円 従業員:
連を中心とする設備投資の改善を背景に業況
236人 年商:44億円)
も好調である。
当社はラボ用(売上構成比約50%)および
当社は経営方針として、電気・化学・物理
環境用(同約50%)の分析機器メーカー。電
といった基礎技術をベースに長年培ってきた
位差自動滴定装置、カールフィッシャー水分
センサー技術、分析技術など独自技術に先端
計、密度比重計等で高い国内シェアを持ち安
技術を融合させ、多様化、高度化するニーズ
定した事業基盤を有する。
に応えられる分析機器の開発に注力している。
とりわけ、機器の使いやすさ、操作性の向上
(イ)事業内容
当社は、電位差自動滴定装置(電気の流れ
を重視し、パソコンによる分析データ活用な
どユーザーの利便を図っている。
方で化学薬品等の成分分析を行う装置)
、カー
また、グローバル化の中で、海外のディー
ルフィッシャー水分計(水と反応する物質の
ラーと連携して営業・メンテナンス活動を展
使用量で、物質中の微量の水分を測定する計
開し、ラボ用機器を中心に輸出比率は約18%
測器)でともに国内シェア約30%、密度比重
にも達しており、今後もさらなる海外需要の
計(液体密度を短時間で測定することにより
開拓を進めていく意向である。
成分を分析する計測器)で同約80%を有する。
このほか、ゴミ焼却場向け排ガス中塩化水素
濃度計、排ガス中水銀濃度計など、環境・公
へ.京都EIC㈱―ガラスプラントの計装で高シ
ェア
害用分析機器で安定した事業基盤を持つ。扱
(業種:各種工業プラント計装の設計・施工
い製品が多品種少量型であり、業界内である
本社:京都府久世郡 創業:2001年 資本
程度得意とする製品分野のすみわけがなされ
金:3,000万円 従業員:12人 年商:5.5億円)
ていることや、官公庁、地方自治体、産業界、
当社は現社長が長年の同業での勤務経験を
研究機関など多分野で、環境保全、基礎研究、
活かして01年に設立した各種工業プラント計
研 究
59
装の設計・施工業者である。とりわけ、ガラ
専門メーカーとして、世界のオンリーワン企
スの生産プロセス統合管理・制御システムを
業を目指していく意向にある。
得意とし、約6割の国内シェアを有する。ちな
みに、当社はN社向けを中心として、ほぼすべ
ト.旭光精工㈱―大手下請から脱下請を目指す
ての国内ガラスメーカーと取引がある。
(業種:事務機器・自動化省力化機器製造業
本社:京都市南区 創業:1944年 資本金:
(イ)事業内容
6,000万円 従業員:130人 年商:34億円)
当社は、ガラスを中心とする工業プラント
当社は、事務機器(売上構成比33%)
、自動
計装の設計・施工業者である。当社の経営の
化省力化機器(同67%)を手がける精密機械
特徴は、当社(営業窓口・システム設計を担
メーカー。創業以来、大手企業の下請として
当)のほか4社のパートナー(製造、工事、メ
事務機器・自動化省力化機器の製造を行って
ンテナンス、設計を担当)が事業を分担する
きたが、最近ではこれにより培ってきた技術
ほか、当社の株主でもあるという“専門技術
をベースに製本機などの自社製品開発にも取
者集団”を形成しているところにある。これ
り組んでいる。
により、管理要員を削減し、管理費が節減で
きるほか、固定費の変動費化によって経営の
(イ)事業内容
効率化が図られている。また、グループ全体
当社の主力製品は事務機器と自動化省力化
で23人にも及ぶ専門技術者の連携・協力によ
機器に大別される。前者は、1976年からの取
り、EIC(電気制御・計装制御・計算機制御)
引であるミノルタ(現コニカミノルタ)を主
に関する一括受注の要請に応えることができ
なOEM先としてマイクロ機器(金融機関等で
る体制を構築している。
のデータ記録・保存用)、ブックスキャナー
(図書館等向け書籍専用スキャナー)、電子写
(ロ)業況と課題
真プリンターを手がけている。一方、後者は、
最近では、デジタル家電の活況を背景に大
地元大手精密機械メーカー等の社内製造ライ
手ガラスメーカーの液晶ガラス分野への参入
ンを受注するもので、設備投資の動向に左右
が相次いでおり、ここへきて大手ガラスメー
される。いずれも大半は図面を受けてからの
カーは一斉に設備投資に取り組んでいる状況
加工・組立にとどまるものの、長年の取引に
にある。このため、当社では主力得意先であ
よって培われた精度・性能要求に応えられる
るN社等からの受注増により、フル操業状態に
総合生産能力が当社の強みとなっている。
ある。
なお、最近では、保有技術を活かした自社
今後は、専門技術者の育成が不可欠である
が、人材育成により将来はガラスプラントの
60
信金中金月報 2004.10
製品として無線綴製本機を開発した。これは、
コピー感覚で使えるオフィス向けの小ロット
(200∼300冊)用製本機で、簡単な操作で1時
削材等に徹して、長い取引をベースにオープ
間当たり最大211冊の本格的な無線綴製本が可
ンな関係を保つなど取引先との信頼関係を築
能になる。製品化してまだ1年であるがすでに
いていることが強みで、製造業の海外シフト
海外向け等で約100台を販売しており、今後は
が進む中にありながらも比較的安定した受注
低価格化が課題となる。
基盤を有している。
(ロ)業況と課題
(ロ)業況と課題
最近の業況は、デジタル家電等の活況を背
取引先に半導体関連の電子部品メーカーを
景とする電子デバイスの好調推移を背景に地
擁することから、最近のデジタル家電等が主
元大手精密機械メーカー等の受注が増加して
導する景気回復の好影響を受けて受注は増加
おり、売上は順調に伸長している。自動化省
傾向にある。アルミ材の品薄化など材料仕入
力化機器が需要先の設備投資動向に左右され
価格が上昇傾向にあるが、企業努力により上
ることから、今後は自社製品に注力すること
昇分を吸収できるように工夫していることな
としているが、販売ルートの開拓など営業力の
どから収益への影響も現状では少ない。課題
強化や開発費の捻出などが課題となっている。
は、熟練者の育成であり、職場環境作りなど
により後継者育成に努めている。
チ.㈱エール機械―デジタル家電関連の好調
で受注増加
おわりに
(業種:精密機械の部品加工 本社:京都府
わが国製造業の事業所数が小規模層を中心
宇治市 創業:1985年 資本金:3,100万円
に大幅に減少しており、ものづくりの基盤が
従業員:22人 年商:3億円)
失われるとの懸念が生じている。本稿でいう
当社は地元・京都の電子部品(半導体など)
、
「精密機械器具製造業」と「その他の精密機械」
同製造装置メーカー向けの精密部品加工メー
でみても、1∼19人の小規模層が02年でそれぞ
カーで、業種柄、景気変動に左右されやすい
れ69%、60%と大きなウエイトを占めるが、98
ものの、比較的安定した事業基盤を有する。
年に比べて、それぞれ事業所数で25.0%、32.3%
の減少をみている。両者を比較すると「その
(イ)事業内容
他の精密機械」の方が減少率が大きいが、最
当社は1978年創業の㈱エール精工から85年
近の機械関連業種の景況改善が、ある意味で
に分離独立した精密機械の部品加工専業者で
は近年の構造変化の中での生き残りをかけた
ある。取引先に、松下電子部品、サムコイン
企業間競争の結果とも言えるのである。
ターナショナルなど地元有力メーカーを擁し
いうまでもなく、最近の景況回復の背景に
ており、他社では対応の難しい多品種少量、難
は、
“デジタル家電”に代表されるデジタル技
研 究
61
術の浸透、活用がある。時計、カメラ等にル
おいても、産学連携等により一層の技術開発
ーツを持つ大手精密機械メーカーは製品の電
を進め、独立型企業にあっては、新たな産業・
子化が進む中で「精密電子機器メーカー」に
分野のニーズに応えた新製品を継続的に投入
変貌し、その中核を担っているが、中小精密
していくことが期待されるとともに、下請型
機械メーカーにあっても、事例にみるように
企業においても、受注確保という受身の対応
独自の精密加工技術をベースに受注拡大に取
にとどまることなく、熟練を要する技能を伝
り組んでいるケースが少なくない。
承しつつ、技術革新に伴う新たなニーズに積
また、加工、組立、測定などの精密技術は
極的に対応し自ら新分野を切り開いていくよ
ものづくりの基盤をなすものであり、今後も
うな経営姿勢を持ち続けることが重要である。
デジタル技術、情報技術が進展していくなか
時計、カメラに代表される精密加工技術はわ
で、超精密加工技術が不可欠なナノテクノロ
が国の得意分野であり、こうした産業の基盤
ジーにみられるように、ますます高精度の精
技術と、デジタル技術の融合を図ることで、こ
密加工技術が要請されていくであろう。こう
れからのわが国製造業全体の再生が図られる
したなかで、今後の中小精密機械メーカーに
ことが期待される。
〈参考文献〉
『日本の機械産業2003』(財)機械振興協会経済研究所(2003)
加藤良平『エプソン∼「挑戦」と「共生」の遺伝子』実業之日本社(2004)
経済産業省『平成14年工業統計表(産業編)
』(2004)
経済産業省『平成15年機械統計年報』(2004)
齊藤繁『カメラ・時計・磁気メディア業界』教育社(1990)
中村新『よくわかる精密機械業界』日本実業出版社(2003)
62
信金中金月報 2004.10
預金者行動からみた金融機関の情報開示
信金中央金庫 総合研究所主任研究員
廣住 亮
(キーワード)預金者の金融機関選択理由、限定合理性、信認、情報開示
(視 点)
2005年3月に預金保険制度における全額保護解除の一連のプロセスが完了する。これは、こ
れまで無リスクと考えられていた預金のリスクが改めて顕在化する契機となる。このため、
「預
金者が取引金融機関を選択する基準は何か」という問題を考える必要が生じる。
この点について、本稿では視点を個人の行動は必ずしも完全合理的ではないことに置き、こ
の限定合理性のもとでの金融機関選択行動の特徴等を概観する。
また、金融機関に関する情報のいかなる側面がこうした個人預金者の選択行動に影響を持つ
のか、逆にいかなる情報を預金者に供給すれば信認を維持できるのかという問題について議論
を整理する。加えて、預金という基本的な金融商品のリスクに関するパラダイムが変わること
で生じる、預金金融機関が個人の金融機関選択に対して直接アプローチするような情報開示の
重要性について若干の示唆を行いたい。
(要 旨)
●
個人が金融機関を選択する際に最も重視するのはその利便性であるが、健全性もある程度重
視している。また、近年の金融危機などにより金融機関の経営に関する不安は高まっている。
●
個人預金者は、金融機関の健全性に一定の不安を抱きながらも、多くが経営内容をチェック
するための情報収集はしておらず、限定合理性にもとづく情報の非対称が存在している。
●
預金者による金融機関の信認は、情報非対称による「不確実性」が高く、極めて脆弱である
と考えられる。このため、一度信認が崩壊すると「取付」のようなパニックが生じる。
●
人は「不確実」な状況よりも「リスク」が明らかになっている状況を選好する。したがっ
て、逆選択を回避し、預金者の信認を得るためには理解可能性や比較可能性を重視した情報
開示が求められる。
研 究
63
影響を最小化するための方策として情報開示
はじめに
の効果について若干の足がかりとなるような
「預金者は何を基準に取引金融機関を選択す
考察も加えたい。
るのか」
、このことは、長らく非競争的環境に
おかれてきた預金金融機関にとって考慮する
1.個人預金者の金融機関選択
必要のなかった問題である。また、預金者の
個人預金者は、どのような理由で取引金融
側においても、預金は元本を保証され、金利
機関を決定しているのだろうか。図表1は、金
も横並びであったため、金融機関を選択・選
融広報中央委員会が毎年実施している「家計
別する誘因はなかった。
の金融資産に関する世論調査(注)2」による個人
しかし、規制緩和、金融行政の変化は状況
を一変させた。預金者は銀行が不倒ではない
ことを知り、金融機関も風評や環境の変化が
の金融機関選択理由を時系列で示したもので
ある。
70∼80%の回答者が近隣に店舗・ATM等が
大きな経営上のリスクとなることを認識した。
あること、つまり物理的な利便性を挙げてい
この問題は、預金金融機関における資金調
る。一方、経営の健全性を重視するという回
達上の不安要因として、多くの検証が行われ
答は、漸増傾向にはあるものの1993年以降40%
ている。しかし、それらは主に金融機関の財
程度で横ばいとなっている。また、大手行の
務状況と預金残高の変動の相関により影響を
利点として挙げられるような全国的店舗展開
計測しようとするものが多いと思われる。
や中小金融機関に関して語られることの多い
そもそも預金者の信認が、金融機関の健全
性に左右されることは言うまでもない。しか
し、本稿では視点を変え、個人の行
動が必ずしも完全合理的ではない
「限定合理性(注)1」に基づくことを踏
まえ、金融機関自身やその他第三者
が発する情報が預金者の行動にどう
影響を与えるのか、逆にいかなる情
報を預金者に供給すれば信認を維持
できるのかという問題について議論
を整理する。また、風評やその他の
偶発的要因による金融機関経営への
担当者との密接な関係は、あまり重要視され
ていないように見られる。
図表1 個人(家計)の金融機関選択理由
(%)
90
近所に店舗や
ATMがあり便
利だから
80
70
店舗網が全国
的に展開され
ているから
60
50
経営が健全で
信用できるから
40
30
勧誘員が熱心
で印象が良い
から
20
10
0
その他
1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003
(年)
(備考)1.3項目まで複数回答可(上位4項目のみ図示)
2.金融広報中央委員会『家計の金融資産に関する世論調査』より
信金中金総合研究所作成
(注)1.限定合理性:人はその知識や計算能力の限界から、すべての情報を入手、検証し最適な行動を選択するための費用を忌避
し、自己の要求水準を満たす「途中」段階で選択を決定してしまうという行動基準
2.金融広報中央委員会サイト(http://www.shiruporuto.jp/)参照
64
信金中金月報 2004.10
図表2は、同調査で、金融商品の
選択基準を聞いたものである。
「利回
り」、「値上がり益」という収益性に
図表2 個人(家計)の金融商品選択基準
(%)
100
利回りが良いから
将来の値上がりが期
待できるから
80
元本が保証されてい
るから
関する回答が減少する一方、
「元本保
60
取扱金融機関が信用
できて安心だから
証」という安全性に関する回答が
現金に換えやすいから
1996∼97年頃から急増している。
40
この両図表から、個人は「近所に
20
ATMや店舗がある」金融機関の「元
0
本が保証されている」金融商品を最
も選好することがわかる。つまり個
少額でも預け入れや
引き出しが自由にでき
るから
商品内容が理解しや
すいから
その他
1992
1994
1996
1998
2000
2002 (年)
(備考)金融広報中央委員会『家計の金融資産に関する世論調査』より信金中
金総合研究所作成
人においては、ATM、店舗を多く持
図表3 金融機関の健全性に関する認識
つ金融機関の預金が最も一般的な金
100
融商品である理由がここにあると言
80
えよう。
一方で、預金者は金融機関の健全
(%)
経営内容は健全だと
思っているので、不
安はない
多少経営内容は悪化
していても、経営破
綻する不安はないと
思っている
60
経営内容が悪化し、
経営破綻もあるので
はと、不安に思って
いる
40
性に一定の不安も感じている。金融
20
民間金融機関との取
引はないので関係な
い
機関選択理由においても約4割が健全
性を挙げていたが、図表3に示され
ているとおり、金融機関の経営内容
0
1998
1999
2000
2001
2002
2003(年)
(備考)金融広報中央委員会『家計の金融資産に関する世論調査』より信金中
金総合研究所作成
に懐疑的な層は、年々増加している。これは、
近年、金融機関の破綻が相次いでいることや
2.預金者行動に影響を与えるもの
預金保険制度におけるペイオフの凍結解除が
以下では、預金者による金融機関選択に影
預金者のマインドに大きく影響しているもの
響を与える「信認」を形成する内的要因を概
と思われる。
観してみたい。
このように、預金者が金融機関を選択して
きた要因が環境の変化により揺らいできてい
(1)情報収集の機会費用と限定合理性
る。このような中、動揺を抑え、従来どおり
図表4は、前出の調査において、金融機関経
選択されるためには、金融機関としての経営
営に関する情報収集についての認識を示した
内容に関する預金者の「信認」を維持すると
ものである。
「経営内容を確認したことがある」
いうことが最も重要であろうと思われる。
と回答した比率は、上昇傾向にはあるが、10%
以下にとどまっており、
「確認方法がわからな
い」、「情報が不十分」、「確認しようと思わな
研 究
65
い」として情報収集を行っていない
図表4 金融機関の健全性の確認について
層が90%を超えている。
100
この中で注意すべきは「経営に関
する情報が十分でないと思っている
ので∼」と「確認の方法がわからな
(%)
経営内容を確認しよ
うとは思わない
80
経営に関する情報が
十分ではないと思っ
ているので、確認し
ていない
60
確認の方法がわから
ないので、確認して
いない
40
いので∼」と回答している層が60.6%
20
経営内容を確認した
ことがある
(2003年)に上るということである。
この層は、情報が容易に入手、理解
できれば経営内容を確認したいと思
0
1998
1999
2000
2001
2002
2003(年)
(備考)金融広報中央委員会『家計の金融資産に関する世論調査』より信金中
金総合研究所作成
っているが、情報収集の手間に比べて利益が
(2)意思決定におけるバイアス
少ないと考え、忌避している層である。この
限定合理的な個人が、最適ではないが「妥
ため、もし、取引金融機関への信認が揺らい
当な」選択をすることで合理性を満足させる
だ場合には、「質への逃避(注)3」に走る可能性
という行動原理は、不確実な状況下でも迅速
が高い層であると言える。
な意思決定を維持するために重要であるとさ
個人には合理性の判定能力に限界があるた
れる。しかし、状況が不確実であるため、こ
め、与えられた情報から即座に最適解を見出
うした近似的選択は誤りを犯すことも考えら
すことは困難であり、機会費用の面でも合理
れる。この近似的選択によるバイアスを「ヒ
的ではない。このため、情報入手・分析のコ
ューリスティックス」と呼ぶ。D. Kahneman
ストを回避し「最適ではないが妥当である」点
とA. Tverskyは、このヒューリスティックスの
で妥協することになる。
代表的類型を3つ挙げ、それぞれ①代表性ヒュ
これは例えば、ある商品を購入する際に、最
ーリスティックス、②利用可能性ヒューリス
安値で販売している店を探すには大きな労力
ティックス、③アンカリング(係留効果)と
を伴うが、平均より安い販売店を探すのは比
している。
較的容易であり、最安値の店を探すコスト(労
これらの意思決定バイアスは、社会生活に
力+時間)を回避し、この店で購入すること
おけるあらゆる場面に登場していることが容
が妥協点となるのと同様である。
易に想像できる。個人の行動は、これらの影
このため、金融機関選択においても、ペイ
響を受けながらも限定合理性下で迅速な意思
オフ凍結解除のような環境変化が生じた場合
決定を行うための近似的妥当性に支えられて
には、郵便貯金等の「とりあえず妥当な」資
いることを認識しておく必要があろう。
産へ預け替える誘因を生じるのである。
(注)3.「質への逃避」:金融市場が混乱し先行きに対する不安が著しく高まった時、リスクを避けるため安全性、流動性の高い投
資対象に投資家が殺到する現象。社債、株式などが暴落した場合に投資家が国債を始めとする安全資産に殺到する現象は、都
度見られている。
66
信金中金月報 2004.10
※3種類のヒューリスティックス
①代表性ヒューリスティックス
代表性ヒューリスティックスとは、本来、厳密な統計による推測を行うべき状況において、ある特定の事例を代
表として類似のケースにおける判断基準としてしまうこと、つまり、相互に関連性の低い要素に関しても両者を含
む事例が生じた過去の経験に照らし合わせて、両者を結びつけて考えてしまうこととされている。
例)4打席凡退の3割打者の5打席目にはヒットが出ると思ってしまうこと
(打者がヒットを打つ確率は3割であり、7割は凡退である。これはどの打席でも同じで、前回の結果は次回
の確率に影響しない。したがって凡退の可能性のほうが高い。)
②利用可能性ヒューリスティックス
利用可能性ヒューリスティックスとは、記憶や印象に残っている事例、つまり容易に想起できる事例を過大評価
してしまうこととされている。この利用可能性ヒューリスティックスのもとでは新しい情報、頻出する情報、極端
かつインパクトの強い情報に過大な影響力を与えてしまうとされる。
例)自動車よりも飛行機の方を危険であると考えてしまうこと
(航空機事故は、自動車による事故よりも発生確率が低いにもかかわらず、事故の際のインパクトが強いこ
とから判断基準にバイアスが生じている。)
③アンカリング(係留効果)
アンカリングとは、最初に得られた情報(第一印象)を基準として状況の判断を行ってしまうため、新たな情報
に対する過少もしくは過剰反応が生じ、結果的に意思決定にバイアスが生じることとされている。また、自らの選
択を正当化したいという心理から新たに得られたネガティブな情報に対しても好意的解釈を行い、客観的判断を歪
める傾向にあることを言う。
(3)情報のフレーミングの効果と合理性
一方で、情報発信者の意図がそのインパク
例では、単純化しているが、A社について同
じ内容のことを述べている。後段の「経営に
トを操作しうることも情報開示の効果を考え
不安がある(ない)
。
」という表現については、
る上では重要である。これはフレーミングと
発信者の主観であり、本来、情報の部類に入
呼ばれ、同一の情報でも表現方法によって受
らない。しかし、前段の確率に関する見せ方
け手のリスク認識を変える効果があると言わ
の相違により、①では経営不安の印象を与え、
れている。そもそもメディアなどでも完全に
②では経営が健全であるという印象を与える。
客観的な情報発信は不可能であり、政治、外
後述する認知的不協和や損失回避性の影響も
交から企業広告にいたるまで、およそ情報発
あり、フレーミングは情報発信者による受け
信といわれるものはすべてこのフレーミング
手のリスク認識の操作を可能にしてしまうの
の効果を内包している。
である。
例)①A社は10%の確率で1年以内に倒産するので経営に不安がある。
②A社は90%の確率で1年以内には倒産しないので経営に不安はない。
研 究
67
ここまでは、個人の一見非合理的な行動の背
景を概観した。個々の預金者は、必ずしも完全
(1)金融機関選択理由と変更のコスト
イ.スイッチング費用によるロックイン
合理的には行動しておらず、自らの満足する
消費行動において、ある特定の製品・サー
「妥当性」を基準として、それを満たすように
ビスを一度選択すると、その供給者を変更す
行動する。次項では、この個人の行動基準に照
る際にコスト(機会費用)を生じる場合があ
らした場合、預金金融機関の「信認」というも
る。例えば、携帯電話ではキャリアを変更す
のはどう考えられるべきなのか考察していく。
ると電話番号も変更される。このため、直接
的な電話機の購入代金だけではなく、知人や
3.預金者の「信認」の本質
取引先への通知や登録の変更などの間接的な
資産を預金で保有する目的は、①収益性(金
費用がかかる。このことは、選択の変更に対
利)、②安全性(防犯・防災、元本保証)、③
するハードルを高める効果がある。これをス
流動性(振込や支払)などが考えられる。こ
イッチング費用によるロックインという。携
の中で、収益性に関しては、低金利や代替金
帯電話の場合、競争制限的な意図で設けられ
融商品が多数あることから大きなものではな
ているスイッチング費用であるが、これは、金
い。また、流動性に関しても、基本的サービ
融業においても見られるものである。例えば、
スはどの預金金融機関でもほぼ均一に受けら
英国では中小企業が取引銀行を変更するのに、
れることから、ここでは安全性要因が預金者
手続き費用と数十日という期間がかかり、近
に与える影響を中心に考察する。
年、独禁当局より排除勧告が出ている。これ
安全資産として選択する以上、預金は無リ
スクが理想であり、預金者は預け先に対して
も、顧客の流出を防止しようとして設定され
ているスイッチング費用である。
絶対的な安全を求める。一方、預金金融機関
は民間企業であり、絶対に安全ということは
ありえない。このギャップが預金を取り巻く
様々な問題の根源であり、
「絶対」ではないが、
ロ.金融機関選択理由とスイッチング費用
図表1で見たとおり、個人の多くは金融機関
選択理由として「店舗、ATMが近いこと」を
「信認」することで、預金者は自らの選択の
あげている。店舗の近さは利便性に資するも
「妥当性」を満足させると見ることもできる。
のであり、商品特性の一部とも考えられる。し
したがって、この「信認」が揺らいだ場合に
たがって、金融機関を変更することは、預金
大きな混乱が生じるのである。
者にとって利便性の低下をもたらし、また、
以下では、前項で見た限定合理性にもとづ
く預金者行動と「信認」の関係、預金者個人
が集団として行動する際の行動原理などを考
察していく。
68
信金中金月報 2004.10
様々な手続きも伴うため、一定のスイッチン
グ費用が生じると考えられる。
この費用を他の効果が上回る場合、つまり
利便性を犠牲にしても安全性や他のメリット
を確保したい場合のみ預金者は金融
図表5 貯蓄を安全にするためにとった行動
機関を変更するはずである。
18
(%)
また、図表5は、前出の「家計の
15
∼調査」において、回答者が貯蓄を
12
安全にするためにとった行動である。
「より健全で信用度が∼」と「預け入
れ先を複数に分散した」という回答
は、このスイッチング費用を負担し
ても、金融機関の変更を選んだ層で
ある。
金 融 商 品の安
全性に関する情
報を収集した
より健全で信用
度が高いと思わ
れる金融機関に
預け替えた
9
預 金 保 険が 適
用される商品に
預け替えた
6
3
0
預け入れ先を複
数に分散した
1998
1999
2000
2001
2002
2003(年)
(備考)1.複数回答可
2.「何もしていない」を除外
3.金融広報中央委員会『家計の金融資産に関する世論調査』より
信金中金総合研究所作成
このような層は常にある程度存在すると思
答する一方、図表4においては同じ標本にもか
われるが、近年、増加傾向にあることを見て
かわらず「経営内容を確認したことがある」と
も、預金の保全に関する不安が増大している
いう回答者が10%以下にとどまっており、多
と言えるであろう。
くが「経営内容を精査したわけではないが、自
分の銀行は大丈夫だろう。
」という自分の選択
(2)自信過剰とパニック
イ.自信過剰
に対する自信過剰にもとづいて信認している
面があると言えよう。
個人は自分の選択に対して「自信過剰」に
陥りやすいとされる。原因は明らかではない
ロ.認知的不協和とパニック
が、心理学などでは、自然災害等の困難な状
この「自信過剰」は、新たな情報、特に不
況に直面した際にも、過度に悲観的にならず
利な情報に対する反応感度を低下させると言
生存していくため人類が進化の過程で獲得し
われている。これは認知的不協和と言い、
「間
た生存本能であるとも言われている。この「自
違いを認めたくない」心理として現れる。
信過剰」は、今日でもいたるところで観察さ
認知的不協和では、人がある選択をした後
れており、合理的根拠が薄いにもかかわらず
に、その選択に対する不利な情報が流れても
・・・・
受容できず、情報量が一定のしきい値を超える
「自分の選択は正しいはず」と信じてしまうこ
とは、ごくありふれた考え方でもある。
預金金融機関の選択においても、図表3にお
まで選択を変更しないことが報告されている。
・・・・
しかし、
不利な情報量がしきい値を超えると、
いて、約6割の回答者が取引金融機関について
人は判断基準を失い、他者追従の行動に移行す
「経営内容は健全だと思っているので、不安は
るようになる。これが大規模化すると集団行
ない。
」
、
「多少経営内容は悪化していても、経
動「パニック」
となるとされている
(図表6)
。
営破たんする不安はないと思っている。
」と回
これまで見た個人の金融機関選択と考え併
研 究
69
せると、多くの預金者が金融機関の
経営状態に漠然とした不安を感じな
図表6 認知的不協和とパニック
(%)
100
選択を維持する人の割合
がらも、不安定な「自信」のもと選択
の維持にとどまっていると言えよう。
このため、例えば金融機関の経営
悪化を伝える報道など、不利な情報
量が増加すると、非合理的な自信は
揺らぎ、情報量がある水準に達した
・・・・
ときに、認知的不協和のしきい値を
選
択
を
維
持
す
る
人
の
割
合
A
0
超え、人々が一斉に選択の放棄に走
る可能性が高い。この結果、預金金
融機関であれば、
「取付」というパニ
パニック
B
少 ← ネガティブ情報の量 → 大
・・・・
ネガティブな情報量がしきい値Aまでの場合、信認は維持され、多くの人は選択
を維持する。Aを超えると、脆弱な自信に依っていた人の信認が揺らぎ、不安から
選択を放棄する人が一気に増加する(B)。このA−B間では、ネガティブな情報の
増大量に比してはるかに多くの人が選択を放棄し、パニックへとつながる。
ックに発展するのである。また、加えて留意
わせて発表することが多い。これは、ネガテ
すべき点は、過去の例を見ても情報の真偽はパ
ィブな要因に対する解決への道筋を同時に提
ニック発生の要因ではないということである。
示することで、株主などのマインド悪化によ
このパニックが発生するための理論的条件
るパニック発生を回避する狙いがある。
として挙げられている点と預金金融機関の環
境を比較すると(図表7)、現在の預金金融機
関は極めてこうしたパニックに対して脆弱な
(3)「リスク」と「不確実性」の違い
ここで言う「リスク」とは、事前に判明して
いる確率のもと、ある事象が生じる危険性を示
状況にあるのが理解できる。
上場企業が株式市場などを対象に業績悪化
すものであり、一方「不確実性」とは、情報量
や赤字転落などネガティブな情報を発表する
が少なく事象の発生確率が判明していないた
際には、改善の見通しや次期の予想などを合
め、
危険性も判断できない状態であるとされる。
図表7 パニックの発生要因と預金金融機関を取り巻く環境
パニックの発生要因
1
構造的矛盾
預金金融機関を取り巻く環境要因
金融機関を取り巻く政治経済環境に関する矛盾に対して、不安・不満が
存在する。
2
その矛盾がもたらす不安、不満
3
きっかけ、予測不能性、影響力
大口融資先の倒産など予測不能な出来事が突然発生することにより、
資産が危険にさらされるおそれが生じる。
4
集団の連帯感およびリーダーの欠如
都市化の進行により、個人や世帯間の連帯が薄れており、風評が発生、
拡大しやすい状況となっている。
5
70
競争的代替手段の存在
信金中金月報 2004.10
郵便貯金など、より安全な代替手段が存在する。
このリスクと不確実性について、人は確率
ことを前提に、銀行の通常営業状態、つまり
自体が判明していない状況における選択より
預金者が同時には引出しに来ない状態と、預
も事前に確率が判明している選択を好む「曖
金者が一斉に引出し要求を行うパニック状態
昧性の回避」という行動原理を持つことが様々
が両方とも均衡状態であることを示している。
な実験により判明している。
前節で述べた限定合理性とフレーミングの
どのような契機で通常均衡からパニック均
衡へ移行するかは明らかではないが、例えば
効果から、完全に客観的な情報入手、分析は
(注)5
では、ネガティブな情報を
小早川(1999)
不可能であり、与えられた情報にもとづく主
先行取得した市場参加者等が預金解約に動く
観的確率に依存するのは避けられない。しか
結果、情報の非対称下に置かれている他の預
し、情報が存在しない状況に比べれば主観的
金者の追随行動を誘発するとし、情報の非対
確率にもとづく判断を下せる状況がより好ま
称下にある預金者の減少、つまり情報開示が
しいと考えるのは、このリスクと不確実性の
取付行動の抑止につながることを示している。
選好の差によるものである。
また、D-Dでは、預金者信認の脆弱性を補強
昨今続く企業の情報隠蔽行為などが、消費
し、パニック均衡へ移行するのを防止するの
者に過剰反応を起こさせることもこの行動原
は預金保険制度であると結論づけている。こ
理によるものであると考えられる。
れは直感的に理解可能だが、人々の「取付が
起きるのは預金者が同時に引出し要求をした
(4)銀行取付、情報非対称と預金保険制度
前述したように、パニックによる預金者行
動の具体例が銀行取付である。この銀行取付
とき、だから自分も引出さなければ損をする。
」
という心理を抑制し、パニックを防止する効
果を持つからである。
のメカニズムについて、直感的イメージを初
ただし、日本では、預金全額保護下にあっ
めてモデル化したのがDiamond, Dybvig(注)4
た銀行でも取付はたびたび発生している。払
(1983:以下「D-D」という。
)による複数均衡
出しに一定の期間を要するという問題もあり、
モデルであると言われており、以後の銀行制
預金保険のみでの取付の完全抑止は困難だと
度に関する多くの研究もこのモデルを出発点
思われる。前出の小早川(1999)でも結論付
としている。
けているように、情報の非対称性が預金者に
銀行は部分準備性を有しており、資産(投
おける「不確実性」を高めることを認識し、金
資)と負債(預金)の流動性ミスマッチは避
融機関による預金者を対象とした情報開示の
けられず、全預金者の同時引出し要求に応じ
質的向上を図るべきであると考えられよう。
るのは不可能である。D-Dのモデルでは、この
(注)
4.Douglas W. Diamond, Philip H. Dybvig “Bank Runs, Deposit Insurance, and Liquidity” Journal of Political Economy Vol.91, No.3, June
1983
5.小早川周司「銀行取付の発生と情報の役割」Discussion Paper Series No.99-J-8, 日本銀行金融研究所(1999年4月)
研 究
71
(5)預金者の
「価値参照点」
とペイオフ凍結解除
預金保険制度がパニック抑止に一定の効果
変更の方向性(利益の増減)ということになる。
ペイオフ凍結解除により、これまで全額保
を持つことに疑問はないと思われる。しかし、
護されていた預金に1,000万円の保護上限額が
留意する必要があるのは、ペイオフの凍結解
設けられることになる。これは、預金者にと
除と預金者の「価値参照点」との関係である。
って明らかに効用の悪化であり、損失回避的
個人がある行動の価値を判断する場合、そ
な預金者は、経済理論の想定(上限額までは
の絶対的価値を基準とせず、現状の価値との
預金を維持する等)より大きな心理的悪影響
差により判断するとされている。その基準点、
を受けている可能性がある。これがここ数年
つまり現状を「価値参照点」と呼ぶ。このと
のペイオフの段階的解禁における要求払の急
き、人は価値参照点から同単位の利益の増減
増や郵便貯金、大手行へのシフトの要因とな
でも、減少(損失)を増加(利得)より大き
ったとも考えられよう。
く感じるとされる(注)6(損失回避性:図表8)。
例えば、前出のKahnemanによる実験では、イ
4.預金者信認の維持と情報
ンフレ率12%の時の7%の賃金上昇とゼロイン
ここまでは、預金者による金融機関への信
フレ時の5%の賃金カットという無差別な条件
認に影響をあたえる個人の価値判断と行動原
下でも、明らかに後者を忌避する人が多いこ
理、外的ショックについて概観してきた。
経済政策では、大数の法則により完全合理
とを証明している。
この損失回避性にもとづきペイオフ凍結解
性を元に預金者行動を考えることが可能だが、
除を考えると、預金者にとってより重要なの
個々の預金者と対面する金融機関経営におい
は、保護される絶対額(水準)ではなく、制度
ては、限定合理的な個人行動を無視できない。
個別金融機関での対応には限度があるが、個
図表8 価値参照点と損失回避性
効用
人の行動原理を踏まえて預金者にアプローチ
改
善
しない限り、信認の維持・向上には結びつか
ないと考えられる。したがって、こうした行
効用関数
減少
増加
価値参照点(現状)
利
益
︵
収
益
︶
動原理を踏まえた情報開示も経営戦略として
考えていく必要があろう。
(1)預金者行動と情報開示
個人預金者はリスクよりも不確実性を忌避
悪
化
する。そして不確実性を削減するには「情報」
(注)
6.前出のD. KahnemanとA. Tverskyが提唱したプロスペクト理論によると、個人は同額の損失と利益を比較した場合、損失の方
を約2倍大きく感じるとされている。
72
信金中金月報 2004.10
が必要である。ただし、情報自体の効果は曖
に包括的で、個別性に欠くような場合には、限
昧で、たとえ、正確な情報が発信されたとし
定合理的な個人にとって開示情報を分析、経
ても、それが個人行動にどのように影響する
営状態を評価するコストは高くつく。これで
かは一義的には決まらない場合が多い。これ
は、情報供給が非対称性の解消にはつながら
は、個人による「情報解釈」という作業が関
ないことになる。このため、発信される情報
与するからであり、これまで見てきた心理的
の理解の容易さや比較可能性も同時に求めら
バイアスや認知的不協和はこの情報解釈の過
れるのである。
程に影響を及ぼすのである。
こうした意味では、市場参加者向けIR情報
この観点に立てば、まず金融機関の情報開
等は、個人預金者にとっては、分析、評価コ
示姿勢が重要となると言えよう。金融機関が
ストが高く感じられるのではなかろうか。個
情報の過少開示、部分開示や恣意的開示とい
人預金者向けに評価の容易性、比較可能性と
う姿勢をとっている(と思われている)場合、
いった限定合理性を踏まえた尺度から情報開
預金者はすでに開示されている情報の信頼性
示姿勢を見直す必要があろう。
にも疑問をいだき、報道や格付機関といった
二次的情報に判断基準を求める。このため、危
(2)情報開示シグナルと逆選択問題
機が生じても、自社発表の情報が信用されな
企業と顧客の関係を考えると、製造業であ
いため、預金者の行動を全くコントロールで
れば製品の品質、サービス業であればサービ
きないということが起こりうる。
スの質によって顧客は購入を判断する。では
また、規制当局にも同様のことが言える。
預金の商品性はどう決定されるのであろうか。
“Too Big To Fail (TBTF)(注)7”のような政治的恣
個人の金融機関や金融商品の選択基準は図表
意性による救済対象の決定は、社会に非合理
1、2で見たとおり、金融機関の「利便性」や
的期待を形成することになり、結果的に金融
「健全性」が重視されるという傾向が見えてい
システムの不安定化を招くことになろう。こ
る。すなわち商品としての預金の質は、預金
のため、早期是正措置等の健全性基準の明示
金融機関そのものの質を指していると考える
や検査結果の公表など情報透明性の高い政策
ことも可能であり、経営に関する情報開示は、
が求められる。
こうした商品の質をアピールするためのシグ
加えて、金融機関や規制当局が開示する情
報の質にも留意を要する。開示される情報が、
硬質で解釈に高度な専門性を必要としたり、逆
ナルの意味を持っている。
顧客や市場に選択されるため自社を差別化す
るシグナルを送ることは、逆選択による過小評
(注)
7.Too Big To Fail:大規模金融機関が破綻すると、金融システムの安定性を損なうため、場合によっては破綻させるよりも政
府が救済した方が結果的に国民コストは安くなるという考え方。米国では1991 年12 月成立の連邦預金保険公社改善法(The
Federal Deposit Insurance Corporation Improvement Act of 1991)において経営者のモラルハザード防止、早期是正措置、最小
コスト原則等を明確化し、
“Too Big To Fail”の概念を公式には放棄している。
研 究
73
価を回避する上で極めて重要な戦略でもある。
こうしたことを考えると、
「情報を開示する
と不安を煽る」という考え方は、健全な金融
イ.逆選択問題
機関にとっては、
「情報を見せないことにより
情報開示と透明性が経営の基本として叫ば
れる中でも、不利な情報を秘匿したいという
生じる逆選択」に転化される可能性が高く、む
しろリスクは大きいと考えられる。
のは、ごく自然な考えであり、また、拙速な
情報開示により「数字が一人歩きする」危険
性も経営上のリスクとして十分に認識される
必要があろう。
ロ.個人の限定合理性とメディアの影響力
情報が十分でないことによる市場での逆選
択の問題を考えると、個人にとって金融機関
しかし、情報を開示しないことがトータル
で金融機関の利益になるとは限らない。個人
が情報を開示すること自体が健全性のシグナ
ルとなる可能性が高い。
の行動基準として曖昧性の回避が存在するた
規制緩和が進行する中では、規制により要
め、情報開示が不十分な金融機関にはむしろ
求される情報開示水準は最低限であり、より
「何かあるのでは」という疑心暗鬼を招き、逆
積極的な情報開示姿勢を持つことが企業イメ
選択による過小評価の対象となりうる。
ージを高めうる。このため、逆に最低限の情
また、預金金融機関全体がこうした消極的
開示姿勢の場合には、不人気競争となり、預
報開示しか行わない金融機関は、評価を実態
以上に下げ、淘汰の対象となりうる。
金者は「より悪くない」選択へと移行する。こ
また、数次の金融危機により、国民の金融
の場合、本来であれば「良い金融機関」には
機関健全性に対する関心が高まったことから、
質の高さをアピールするため積極的に情報開
安価な情報源としてのメディアの影響力も大
示し、逆選択を回避しようとするインセンテ
きくなっている。
図表9のように、銀行破綻等が続いた時期に
ィブが働くはずである。
図表9 日経新聞および全国4紙に「ペイオフ」、「自己資本比率」という言葉が登場した回数
(回)
(回)
「ペイオフ」
1,600
「自己資本比率」
1,600
2,000
日経
4紙
1,200
日経
4紙
1,200
800
800
400
400
0
1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004
(年)
0
1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004
(年)
(備考)1.日経新聞および全国4紙(読売、朝日、毎日、産経)の朝夕刊において、見出し、本文に「ペイオフ」、
「自己資本比率」
という言葉が登場した記事の本数(2004年は7月末時点での本数)
2.『日経テレコン21』より信金中金総合研究所作成
74
信金中金月報 2004.10
メディアにおける「ペイオフ」や「自己資本
預金者信認のもと、大きな資金調達力を発揮
比率」といった用語の登場頻度が急増してい
する金融機関(グループⅠ)と利便性は高い
る。このことから、これらメディアが、金融
ものの健全性に疑義があり、小口決済性預金
機関の健全性に対する国民的関心を呼び起こ
のみが集中する金融機関(グループⅣ)に二
し、定着させた可能性が高い。
極化し、コスト競争力格差は拡大することも
こうした環境の変化が、個人預金者の預金
予想される。こうした意味でも、預金者に対
金融機関への信認を流動化させていると思わ
する戦略的な情報開示により、健全性の面で
れ、ここ数年のペイオフ凍結解除にかかる大
の逆選択を避けることが、預金金融機関の収
きな資金シフトはこうした動きにより増幅さ
益力をも左右すると言えよう。
れたものと思われる。したがって、
「取付」が
また、経済政策では、保護から外れる大口
発生した場合の事後的対応のみではなく、平
預金者が、市場規律の担い手として経営をモ
時からこうしたメディアの影響力を考慮に入
ニタリングすることにより預金金融機関のガ
れた上での情報管理や情報開示が預金金融機
バナンスが強化され、健全性向上に寄与する
関の経営戦略上極めて重要な意味を持つよう
ことも期待している。加えて、市場からの透
になってきていると言えよう。
明性向上要求は今後さらに強まることが予想
され、預金保険制度を含む金融システム全体
5.まとめ―預金金融機関における情
報開示の意味―
2005年3月には預金保険制度の全額保護解除
プロセスが完了する。これが預金者心理にど
う影響するかいまだ計り難い部分もあるが、こ
れまで見てきたとおり、価値参照点からの利
を最小限の規制と市場規律による調整に委ね
る方向性はもはや不可逆なものと考えられる。
図表10 利便性・健全性と金融機関の資金調達力
利
便
性
Ⅳ
Ⅰ
益の減少に相当し、想定を超える効用の悪化
資金調達力
を預金者にもたらす可能性がある。
そもそも、これまで預金は無リスク資産と
同義であったが、今回の全額保護解除措置に
Ⅲ
Ⅱ
よりリスク資産へ変換されるという意味を持
つ。したがって、預金者にとっては、全額保護
解除により「預金」というサービスの質の判
定要素が根本的に変わることも意味している。
このため、図表10のように、今後、預金金
融機関では、利便性と健全性を両立して高い
健全性
※図表における各グループの特徴
Ⅰ:利便性、健全性ともに高く、決済性・貯蓄性資金と
も調達でき、資金調達力は高い。
Ⅱ:利便性は低いが、健全性は高く、大口貯蓄性資金の
吸収力が高い。
Ⅲ:利便性、健全性とも低く、営業の継続は困難
Ⅳ:利便性は高いが、健全性は低く、預保保護範囲内の
小口決済性資金が集中する。
研 究
75
一方で、全額保護下で預金者が全く意識し
特に情報開示に関しては、一般預金者に対す
ていなかった金融機関のモニタリングという
る情報の「過負荷(注)8」を避けるため、理解可
概念が突然機能するはずもなく、結果として
能性と比較可能性を重視した
“Key Information
2000年以後、預金保険制度が大きく注目され
Summary(注)9”を発行するよう義務付けたので
ると、大口預金者を中心に大規模な資金シフ
ある。
トと預金の流動化という「質への逃避」を招
限定合理性を前提とした預金者と預金金融
機関との関係を考えるにあたって、同国の対
いたのは記憶に新しい(図表11)。
こうした、預金という経済活動の根本的イン
応は示唆に富むものである。金融当局が曖昧
フラにおけるパラダイム変更には、やはり規制
に裁量余地を残さず、個別行救済へのコミッ
当局による強力なイニシアチブも必要となろう。
トを断ち切ることで預金者によるTBTF等の期
一例を挙げると、ニュージーランドでは、
待形成を防止し、一方、銀行にも情報開示方
1987年に行政コスト削減の一環として預金保
法の工夫により預金者との情報の非対称性削
護制度を廃止した。金融当局はこの措置に際
減への努力を求めている。これにより初めて、
して、個別行の救済には一切コミットしない
市場による選別、淘汰が機能し、預金者に対し
ことを表明する一方、銀行に徹底した情報開
て自己責任を問う条件が整うと思われる(注)10。
示と刑事罰を含む経営責任の明確化を課した。
こうした情報の非対称性削減への努力のほ
図表11 業態別種類別預金残高推移
(億円)
1,600,000
①要求払預金
(億円)
1,600,000
1,200,000
1,200,000
800,000
800,000
400,000
400,000
0
1997
1998
1999
2000
2001
信用金庫
2002(年)
都市銀行
0
地方銀行
1997
②定期性預金
1998
1999
2000
2001
2002(年)
第二地銀
(備考)日本銀行『金融経済統計月報』より信金中金総合研究所作成
(注)8.NZ中銀は、「各国で銀行や企業に対し幅広くかつ複雑な情報開示を要求する流れとなっているが、これでは、複雑な情報
の中に重要な情報が埋没してしまう情報の過負荷(Information Overload)を招く危険性がある。このため、銀行の情報開示
制度は、
“木を見て森を見ず”にならないよう慎重にデザインしなくてはならない。
」とコメントしている。
9.大口債権者や市場参加者向けのアニュアルレポートとは別に一般預金者向けの簡易情報を発行するよう義務付けた。簡易
版では「格付」
、
「債務保証(の受信)
」
、
「自己資本比率」
、
「不良資産」
、
「大口与信先」
、
「利害関係者への与信」を必須開示項
目とし、簡潔な報告書として4半期ごとに公表することを義務付けている。
10.ニュージーランドの銀行改革は、結果的には豪州資本による大手銀行の買収をもたらした(同国内預金シェアで70%を豪
州資本が占める)
。現地法人化や情報開示など一定の規制を設けているものの、収益性に劣る非都市部の支店は軒並み閉鎖さ
れ、買収後支店数は2/3に減少したと言われる。この結果、非都市部住民に居住地周辺に銀行支店が存在しないことに対する
不満が大きくなり、郵便局が運営する国営「キウイ銀行」の設立に至った(以前にも郵便貯金は存在していたが、民営化後
豪州銀行に売却されている)
。
76
信金中金月報 2004.10
か、リスク資産となる預金の商品設計にも工
抜け出せない。このため、金融機関にも同等
夫の必要が出てこよう。新たな預金保険制度
の安全性を求める心理が働く。一方、預金金
では「決済用預金」を設け、無利息ながら全
融機関が政府保証と同等の安全性を確保する
額保護される商品も認めている。しかし、今
には、部分準備性を捨てナローバンクとして
後、金利が上昇した場合、実質的に減価する
資産の大部分を国債等安全資産に投資する必
無利息預金に資金を長期間滞留させることは
要があり、これは、採算面から店舗営業の金
困難となろう。
融機関にはまず不可能であろう。
この場合、1,000万円を超える預金者をつな
したがって、2005年4月以降、預金者にとっ
ぎとめる商品設計が必要となる。米国では、投
ての預金の効用が悪化するのはある程度やむ
資銀行との競争や流動性と収益性の両立ニー
を得ず、預金者は安全性の観点から預金金融
ズから、自動スウィープ預金やMRF(マネー
機関の経営の質に商品性を見出すことになろ
(注)
11
が生まれてきた。この
リザーブファンド)
う。こうした中で、預金者における不確実性
ように既存の概念にとらわれず、預金者ニー
と情報の非対称を解消し、安定的な資金調達
ズにマッチした貯蓄商品も求められていくこ
を図るためにも、ガバナンスの強化等実際の
とになろう。
経営の質的向上は当然として、そうした経営
預金者にとっての預金の商品としての本質
実態を限界合理的である預金者に浸透させる
は安全性であり、全額保護解除後も個人は預
ような情報開示戦略というものが預金金融機
金が無リスクだという思い込みから容易には
関にとって極めて重要な経営課題となろう。
〈参考文献〉
バーゼル銀行監督委員会(日本銀行仮訳)
『銀行の透明性の向上について』
(1998年9月)
角田康夫『行動ファイナンス―金融市場と投資家心理のパズル』金融財政事情研究会(2001年12月)
小早川周司「銀行取付の発生と情報の役割」Discussion Paper No.99-J-8, 日本銀行金融研究所(1999年4月)
多田洋介『行動経済学入門』日本経済新聞社(2003年12月)
C. Camerer “Prospect Theory in the Wild : Evidence from the Field” Social Science Working Paper 1037, California Institute of Technology,
May 1998
D. W. Diamond, P. H. Dybvig “Bank Runs, Deposit Insurance, and Liquidity” FRB Minneapolis Quarterly Review Vol.24, No.1, Winter
2000
M. Glaser, M. Noeth, M. Weber “Behavioral Finance” Sonder Forschungs Bereich 504, No.03-14, University of Mannheim, Sep. 2003
K. Murata, M. Hori “End of the Convoy System and the Surge of Market Discipline : Evidence from Japanese Small Financial
Institutions” Discussion Paper Series No.105, ESRI(内閣府経済社会総合研究所)May 2004
(注)
11.自動スウィープ預金やMRFは当座預金(チェッキング口座)残高が預金者の設定する額を超えた場合、自動的に貯蓄性預
金やMMF等に資金が移転される預金商品であり、1980年代に銀行規制緩和の結果導入されている。また、地方政府など大口
預金者向けの安全性をより高めた預金代替商品として、国債等を担保とするレポ取引も用意され、盛んに用いられている。
研 究
77
経済見通し
実質成長率は04年度3.4%、05年度2.5%と予測
−輸出の増勢は鈍化するが、05年度も景気回復が続く−
信金中央金庫 総合研究所主任研究員
角田 匠
(要 旨)
1.04年4∼6月の実質成長率は前期比0.4%―5四半期連続のプラス成長
4∼6月の個人消費は、消費マインドの改善を主因に前期比0.6%増となった。設備投資は前
期比横ばいと伸び悩んだが、輸出は3.5%増と引き続き景気のけん引役を果たした。輸入も増
加が続いたが、輸出から輸入を差し引いた純輸出は実質成長率を0.3ポイント押し上げた。
2.米経済は巡航速度での成長が続き、日本の景気も回復基調を維持
アジア向けを中心に輸出は増勢を維持し、生産はデジタル関連をけん引役に引き続き底堅
い。企業収益の回復は続いており、設備投資の拡大傾向にも変化はない。日本経済の先行きの
カギを握る米経済は、企業収益の拡大や雇用の回復を背景に今後も巡航速度での成長が続き、
実質成長率は04年が4.4%、05年が3.4%と予想される。
3.実質成長率は04年度3.4%、05年度2.5%と予測―05年度も景気回復が続く
デジタル関連を中心に電機各社が設備投資を前倒ししていることに加え、猛暑の影響で個人
消費が押し上げられているため、04年度の実質成長率を3.4%へ上方修正した。05年度はデジ
タル関連の投資が一服するものの、中小企業や非製造業の構造調整が山場を越えることで、設
備投資のすそ野が広がりをみせよう。米中景気の減速で輸出の増勢は鈍化すると予想される
が、景気の回復基調は維持されよう。05年度の実質成長率は2.5%と予測した。
4.需給ギャップの縮小が続くが、量的緩和の解除にはなお時間を要する
景気回復の持続で需給ギャップは徐々に縮小しよう。ただ、コア消費者物価(生鮮食品を除
く総合)は04年度も下落が続き、プラスに転じるのは05年度と予想される。民需主導による景気
の自律回復にはなお時間を要するとみられ、量的緩和の解除は早くとも05年度下期となろう。
(注)本稿は2004年8月13日現在のデータに基づき記述されている。
78
信金中金月報 2004.10
図表1 GDP成長率の推移と予測
(単位:%)
2001年度 2002年度 2003年度 2004年度 2005年度 前回(04年5月)
〈実績〉 〈実績〉 〈実績〉 〈予測〉 〈予測〉 04年度(予) 05年度(予)
△ 1.2
1.1
3.3
3.4
2.5
2.9
2.5
実 質 G D P
1.3
1.0
1.5
2.3
1.6
1.8
1.5
個 人 消 費
△ 7.9 △ 2.3
0.3
0.9
0.5
0.4
0.2
住 宅 投 資
△ 3.4 △ 3.5
12.3
8.7
8.3
7.9
8.8
設 備 投 資
△ 5.2 △ 5.1 △ 12.1 △ 11.8 △ 5.9 △ 9.9 △ 5.8
公 共 投 資
(
(
(
(
(
(
0.8 )
0.8 )
0.8 )
0.2 )
0.7 )
0.1 )
純輸出(寄与度) (△ 0.5 )
△ 2.4 △ 0.7
0.8
1.1
1.3
0.9
1.1
名 目 G D P
(備考)内閣府『四半期別GDP速報』より作成。予測は信金中金総合研究所
続で増加した。
1.04年4∼6月の実質成長率は前期比
0.4%―5四半期連続のプラス成長
04年4∼6月の実質成長率は、前期比0.4%、
設備投資は前期比横ばいと伸び悩んだ。デ
ジタル家電の需要増に対応して、電気機械や
その周辺産業の設備投資は底堅い動きが続い
年率に換算して1.7%と5四半期連続のプラス成
たものの、都市再開発など大型プロジェクト
長を記録した。ただ、景気の実感に近い名目
の一巡などが押し下げ要因となった。また、前
成長率は、前期比0.3%減と5四半期ぶりのマイ
2四半期の実質設備投資が高い伸び(10∼12月
ナス成長となった(図表2)。
前期比6.6%増、1∼3月1.7%増、2四半期の平
4∼6月の動きを需要項目別(実質)にみる
と、個人消費は前期比0.6%増と5期連続で増加
均4.1%増)となった反動も影響したと考えら
れる。
した。足元の雇用者所得は伸び悩んでいるも
輸出は前期比3.5%増と引き続き好調に推移
のの、大企業のボーナスの回復や雇用情勢の
した。電子部品や鉄鋼を中心としたアジア向
着実な改善で、消費者マインドが上向いてい
けが引き続き好調なうえ、米国向けも底堅い
ることが背景にある。消費関連指標から個別
動きが続いた。海外旅行の持ち直しに加え、日
商品の動きをみると、アテネ五輪を前に、薄
本の景気回復を反映して輸入も前期比2.0%増
型テレビやDVDレコーダーなどデジ
タル家電の販売が好調に推移したほ
図表2 実質GDP前期比と寄与度
(%)
2.0
か、エアコンや洗濯機などの家電製
1.5
品も伸びた(図表3)
。また、今年の
1.0
ゴールデンウイークが曜日配列に恵
0.5
まれたこともあって、旅行や映画
0.0
館・遊園地などのサービス消費も堅
-0.5
公的需要
民間需要
純輸出
実質成長率
名目成長率
-1.0
調に推移した。消費者マインドの改
善は住宅建設にも好影響をもたらし
ており、住宅投資も0.3%増と2期連
-1.5
-2.0
2000
01
02
03
04(年)
(備考)内閣府『四半期別GDP速報』より作成
調 査
79
図表3 個人消費関連指標(前年比増減率)
03年
(単位:%)
04年
03年
7∼9月 10∼12月 1∼3月 4∼6月 10月
全 世 帯 実 質 消 費
平均消費性向(勤労者)
乗
用
車
販
売
(普通+小型乗用車)
(軽乗用車)
△ 1.6
0.2
2.1
73.2
73.6
73.2
△ 2.1 △ 1.3
04年
11月
2.3 △ 0.8
75.4
1.8 △ 3.3
12月
8.4
12.5
5.9
2月
3月
4月
0.7
0.4
1.3
5.2
0.2
4.6
72.1
76.5
73.0
73.6
73.1
76.9
3.0 △ 6.7
0.3
72.3
△ 1.3 △ 4.9 △ 2.1 △ 6.8 △ 2.1 △ 8.5 △ 3.9
△ 4.1
1月
17.0 △ 2.2
11.4
4.2 △ 0.0
5月
6月
4.8 △ 2.6
72.8
76.6
1.8 △ 0.4 △ 6.3 △ 2.8
1.0 △ 3.9 △ 2.5 △ 4.5 △11.1 △ 4.7
12.6
10.6
13.7
9.0
6.9
2.3
百 貨 店 販 売 額
△ 2.9 △ 2.3 △ 1.1 △ 3.0
0.6 △ 4.1 △ 3.0 △ 0.1
ス ー パ ー 販 売 額
△ 5.2 △ 4.0 △ 3.0 △ 4.5
0.1 △ 6.7 △ 4.9 △ 3.3 △ 0.7 △ 4.8 △ 4.8 △ 4.2 △ 4.6
家電量販店売上高
△ 5.6
3.0 △ 1.5
(パソコン)
0.5 △ 1.5 △ 2.2
0.4
2.5
2.3 △ 4.5 △ 1.0 △ 2.4 △ 5.5
2.8 △ 8.6 △ 3.6
0.4 △ 3.3
1.0 △10.0 △10.9 △14.3 △ 2.2 △ 9.8 △15.2 △ 2.4 △10.7 △18.2 △16.6 △ 2.3 △22.5
(エアコン)
△25.2
(D V D)
55.9
61.8
47.2
(洗 濯 機)
9.3
10.8
6.9
(テ レ ビ)
9.1
10.7
12.4
―
―
―
外 食 産 業 売 上 高
1.5 △ 5.7
8.4
10.2 △12.5
10.5
2.9 △ 0.3 △14.9 △ 7.5 △ 2.8
32.5
61.4
61.0
62.4
59.8
56.6
26.8
15.1
34.7
5.1
8.3
8.0
15.4
10.4
13.7 △ 0.4
5.8
9.7
0.3
22.8
10.9
15.1
7.7
13.1
19.4
16.7
24.3
27.5
― △ 3.8 △ 2.7 △ 3.8 △ 2.2
6.9
20.7
49.1
0.2 △ 7.6 △ 3.6 △ 0.1 △ 4.1
(備考)1.平均消費性向は季節調整済みの実数。百貨店、スーパー、家電販売、外食産業売上高は既存店ベース
2.総務省『家計調査報告』、経済産業省『商業販売統計』などより作成
と伸びたが、輸出から輸入を差し引いた純輸
大幅な増加となり、その後も、04年1∼3月2.2%
出は、4∼6月の実質成長率を0.3ポイント押し
増、4∼6月4.9%増と堅調な伸びを示した。電
上げた。
子部品や鉄鋼を中心にアジア向け輸出の拡大
が続いていることが主因である。輸出向け出
2.米経済は巡航速度での成長が続き、
日本の景気も回復基調を維持
荷の好調で生産活動も堅調な動きを続けてい
4∼6月の実質成長率が2四半期連続で減速す
増と4四半期連続のプラスを達成した(図表4)
。
るとともに、名目ベースでは5四半期ぶりのマ
イナスに転じるなど景気の回復テンポは鈍化
した。ただ、4∼6月の減速は前2四半期の前期
る。04年4∼6月の鉱工業生産指数は前期比2.6%
さらに、足元の需要もデジタル関連や素材を
図表4 鉱工業生産指数と輸出数量指数の推移
(季節調整値)
(00年=100)
比年率5%を上回る高成長から、維持可能なペ
118
ースへの減速であって、景気後退に向かう兆
114
しとは考えにくい。日本経済は今後も堅調な
輸出数量指数
生産指数
110
106
世界景気や企業収益の拡大を背景に、輸出と
102
設備投資をリード役とする安定的な回復が続
98
94
くと予想される。
景気回復のけん引役である輸出は依然とし
て増勢を維持している。輸出数量指数(季節
調整値)は、03年10∼12月に前期比6.8%増と
80
信金中金月報 2004.10
90
86
82
98
99
00
01
02
(備考)1.シャドー部分は景気後退期
2.財務省『貿易統計』などより作成
03
04
(年)
中心に底堅く、製造工業生産予測指数は、7月
業は正社員からパートへのシフトで人件費を
が前月比1.6%増、8月が1.0%増と堅調な推移
抑制するスタンスを継続している。夏のボー
が見込まれている。
ナスは大企業では2年連続の増加となったが、
輸出・生産の拡大に伴う企業収益の回復で、
中小企業では引き続き減少している。生産拡
設備投資も増加基調で推移している。GDPベ
大に伴う残業代の増加がプラス要因ではある
ースの実質設備投資は、04年4∼6月に前期比
が、企業のコスト削減意欲は根強く、今後も
横ばいと伸び悩んだが、前年比では8.0%増と
雇用者所得の回復は緩やかなペースにとどま
好調を維持している。先行指標である機械受
るとみられる。さらに、04年1月からは配偶者
注(船舶・電力を除く民需)は、03年10∼12
特別控除の上乗せ部分が廃止され、10月から
月に前期比8.5%増と高い伸びを記録した反動
は厚生年金保険料の引き上げが予定されてい
で、04年1∼3月は5.6%減と落ち込んだが、4∼
る。住民税の増税(均等割り部分)などを含
6月は10.3%増と統計開始以来最大の伸びを示
めた04年度の家計の税・社会保障負担増は1兆
した。さらに、7∼9月の受注見通しも1.8%増
円を上回ると試算される。景気回復に伴う雇
と堅調な推移が見込まれている(図表5)。日
用不安の後退などで消費者マインドは改善し、
銀短観の設備投資計画調査(6月調査)をみて
猛暑効果も相まって個人消費は堅調に推移し
も、回復のすそ野は中小企業にも広がり始め
ているが、所得の回復テンポが高まらないな
ており、設備投資の拡大傾向に変化はみられ
かでは個人消費の回復には限界がある。
ない。
日本経済の先行きのカギを握る米経済は、今
一方、足元の家計所得の回復テンポは緩慢
後も巡航速度での成長が続くと予想される。04
である。04年度の平均賃上げ率は7年ぶりに前
年4∼6月の米実質成長率は前期比年率3.0%(事
年度の伸びを上回ったとみられるものの、企
前推定値)と4%を上回る成長を記録した過去
4四半期に比べ鈍化したが、堅調な企業収益と
図表5 機械受注と名目設備投資の推移
(年率換算値)
(兆円)
雇用の回復を背景に、今後も前期比年率3∼4%
(兆円)
機械受注
7∼9月
見通し
85
13
程度の巡航速度での成長が維持されよう。米
実質成長率は04年4.4%、05年3.4%と予想され
12
80
る。一方、中国経済は政府当局の引き締め政
75
11
策によって徐々に減速しよう。
70
10
3.実質成長率は04年度3.4%、05年度
2.5%と予測―05年度も景気回復が続く
65
98
99
00
01
02
03
9
04 (年)
設備投資(名目GDPベース)左目盛
機械受注(船舶・電力を除く民需)右目盛
(備考)内閣府『四半期別GDP速報』、
『機械受注統計』より作成
実質成長率は04年度3.4%、05年度2.5%と前
回予測(04年度2.9%、05年度2.5%)から上方
調 査
81
修正した(図表6)。デジタル家電の需要拡大
もかかわらず堅調な動きとなろう。実質個人
を背景に、電機各社が設備投資を前倒しして
消費は2.3%増と03年度の伸び(1.5%増)を上
いることや、猛暑の影響などで個人消費が押
回ると予測した。
し上げられていることが、04年度の上方修正
05年度は、米中景気の拡大テンポが鈍化す
の主因である。05年度は米中経済の減速など
ると予想され、輸出は実質ベースで前年比5.2%
で輸出の伸びが鈍化するものの、景気の回復
増へ鈍化しよう。純輸出の寄与度は0.2ポイン
基調は維持されるとの見方に変化はない。
トまで低下すると予想される。個人消費の伸
04年度は、米国やアジア経済の堅調持続で
びも04年度に比べて鈍化しよう。企業のリス
輸出は増加傾向が続こう。実質輸出は前年比
トラ圧力は弱まるとみられるものの、家計の
12.2%増と3年連続で2ケタの伸びが予想され
税・社会保障負担増が続くため、家計所得の
る。海外旅行の持ち直しでサービス輸入が回
本格回復までは期待できない。猛暑効果の反
復に転じるものの、純輸出は実質成長率を0.8
動などもあって、実質個人消費は1.6%増にと
ポイント押し上げるとみられる。企業収益の
どまると予測した。
回復を背景に投資マインドは上向いており、実
一方、設備投資はデジタル関連の投資が一
質設備投資は8.7%増と引き続き高い伸びが予
服するものの、中小企業や非製造業の構造調
想される。ただ、03年度の設備投資が、研究
整が山場を越えることで、回復のすそ野は広
開発・IT投資減税や排ガス規制に伴うトラッ
がりをみせると考えられる。デフレ圧力が一
ク特需で実勢以上に押し上げられており、03
段と低下することも企業の収益性を高める要
年度(12.3%増)に比べ増勢は鈍化しよう。個
因になるとみられる。実質設備投資は8.3%増
人消費は、景気回復期待に伴う消費マインド
と引き続き回復傾向で推移すると予想される。
の改善と猛暑効果などで、所得の伸び悩みに
輸出の増勢一服で実質成長率は鈍化するもの
図表6 実質GDP成長率の推移と予測
年度ベース(前年比)
半期ベース(前期比年率)
(%)
(%)
4.5
4.0
3.5
3.0
2.5
2.0
1.5
1.0
0.5
0.0
-0.5
-1.0
-1.5
-2.0
予測
95
96
97
98
99 2000 01
02
公的需要
03
04
05(年度)
民間需要
7.0
6.0
5.0
4.0
3.0
2.0
1.0
0.0
-1.0
-2.0
-3.0
-4.0
2000上期 01上期
純輸出
(備考)内閣府『四半期別GDP速報』より作成。予測は信金中金総合研究所
82
信金中金月報 2004.10
予測
02上期
実質GDP
03上期
04上期
05上期
の、05年度も景気の回復基調は維持されると
は、04年度が1ドル112.0円(上期110円、下期
想定している。
114円)、05年度が115.0円(上期117円、下期
ただ、予想どおりに推移したとしても、景
気の本格回復を実感できる状況には至らない
113円)と想定した。
(原油価格)
と考えられる。05年度までの実質成長率は3年
原油価格(WTI)は、6月後半にかけてイラ
連続で高い伸びを予測しているが、GDPデフ
クの主権移譲で原油輸出力が回復するとの期
レーターの大幅な下落で嵩上げされている。名
待感から1バレル35ドル台まで下落した。しか
目成長率は、04年度1.1%、05年度1.3%と緩や
し、サウジアラビアのヌアイミ石油鉱物資源
かな景気回復にとどまろう。
相が、原油バスケットの適正価格を従来の1バ
レル25ドルから32ドル程度とする意向を表明
(1)前提条件―為替相場、原油価格、財政政
策、海外経済
(為替相場)
したことで、原油相場は上昇に転じた。さら
に、OPECの増産余力は乏しいとの見方が強ま
ったことや、ロシア石油大手ユーコスの経営
円ドル相場は、ここ数か月、1ドル110円前
危機などを材料に投機資金も流入し、8月には
後で方向感の乏しい展開が続いている。最近
1バレル45ドルを突破した。当面は中東情勢の
の円ドル相場の動きをみると、ドルは6月末に
不透明感が強く、原油価格は高値圏での推移
かけて米経常赤字の拡大などを材料に107円台
が続く可能性がある。ただ、このところの上
まで売られたものの、7月には米景気の回復期
昇は投機的な動きが大きく影響している。米
待から112円台まで上昇した。8月6日に発表さ
国の原油在庫は増加傾向にあり、今後、需給
れた7月の米雇用統計が市場の予想を大幅に下
のひっ迫感は徐々に低下しよう。経済見通し
回ったことで、米景気に対する先行き不安が
の前提となる原油価格(通関ベース)は、04
高まったものの、その後もドルは底堅い動き
年度1バレル36.0ドル、05年度33.0ドルと想定
を続けている。米景気は今後も堅調に推移す
した。
る公算が大きく、FFレートの誘導目標は年末
(財政政策)
までに2%程度まで引き上げられると想定して
04年度の予算は、公共投資関係費(公共事
いる。日米の金利差拡大から年末にかけてド
業関係費+その他施設費)が前年度当初予算
ルは緩やかに上昇すると予想される。05年度
比3.3%削減され、地方自治体が独自の財源で
は米景気の拡大テンポが鈍化するものの、米
実施する地方単独事業も同9.5%削減された。
国の成長率は引き続き日本を上回ると予想さ
05年度予算の概算要求基準(シーリング)で
れる。ただ、日銀が量的緩和政策を解除する
も公共投資関係費は今年度予算比3%削減され
と想定している年度下期にかけて、やや円高
ており、引き続き緊縮型の財政運営スタンス
に振れると予測した。年度平均の為替レート
が維持されると想定した。
調 査
83
(海外経済)
で人件費を抑制しており、足元の1人当たり所
〈米国〉…堅調な生産活動を背景に、今後も
定内給与は依然として低迷している(図表7)
。
雇用の回復は持続すると予想され、個人消
夏のボーナスは大企業では2年連続の増加とな
費は引き続き景気拡大を支えるとみられる。
ったが、中小企業では引き続き減少しており、
企業収益の拡大で設備投資も回復傾向で推
全体でみれば前年水準を下回っている。生産
移しよう。05年は利上げの影響などでやや
の回復などに伴う雇用者数の増加が、賃金の
減速すると予想されるが、2000年にみられ
低いパートや派遣社員に偏っていることもあ
たような資本ストックや雇用の本格調整を
って、家計所得全体の回復に波及していない。
必要としないことから、景気後退には至ら
04年度の雇用者所得は横ばい圏にとどまろう。
ないと考えられる。実質成長率は04年4.4%、
05年度には中小企業や非製造業の構造調整
05年3.4%と予測した。
が山場を越えることで、雇用・所得環境は明
〈欧州〉…ドイツ経済は、米景気の持続的回
るさを増すとみられる。雇用増は引き続き派
復やユーロ高の是正などを前提に、輸出主
遣など非正社員が中心になる可能性もあるが、
導で回復が続くと予測した。ただ、個人消
労働需給が改善するなかで優秀な人材を確保
費の回復力は弱く、景気の回復テンポは緩
するためには、正社員の採用増も必要となろ
やかにとどまろう。実質成長率は04年1.7%、
う。雇用者所得の本格回復までは期待できな
05年1.4%、ユーロ圏の実質成長率は04年
いが、緩やかな回復傾向が続くと予想される。
2.0%、05年1.5%と予測した。
一方、税・社会保障負担の増加が家計の可
〈アジア〉…中国経済は、政府当局による引
処分所得の下押し要因となる。04年度は配偶
き締め政策によって徐々に過熱感が薄れて
者特別控除の上乗せ部分廃止で4,000億円程度
きた。ただ、農産物やエネルギー価格の高
の増税となり、年金給付の減額(03年の消費
騰が続いており、当面、引き締め政策が継
者物価下落分、0.3%減)や、公的年金等控除
続されるとみられる。05年にかけ
て中国の成長テンポは減速すると
図表7 現金給与総額の前年比と寄与度
(%)
1.5
みられる。
1.0
0.5
0.0
(2)税・社会保障負担増に伴う可処
-0.5
分所得の伸び悩みが個人消費の抑
-1.0
-1.5
制要因
-2.0
04年度の平均賃上げ率は7年ぶりに
-2.5
所定内給与
時間外給与(残業代)
特別給与(ボーナス等)
現金給与総額の前年比
-3.0
前年度を上回ったとみられるものの、
企業は正社員からパートへのシフト
84
信金中金月報 2004.10
-3.5
98
99
00
(備考)厚生労働省資料より作成
01
02
03
04(年)
の縮小、厚生年金保険料の引き上げなどで家
には現れない潜在的な失業者)
。景気回復に伴
計の負担増(給付増減を含む)は、1.13兆円程
って潜在的失業者が労働市場に参入する(求
度と03年度に続き1兆円を上回るとみられる。
職活動を開始すると失業者としてカウント)こ
さらに、05年度も国民年金、厚生年金保険料
とが予想され、雇用増の一方で失業者の減少
の引き上げなどで、家計の税・社会保障負担増
は小幅にとどまる可能性が大きい。失業率は04
は1.00兆円程度に達すると試算される(図表8)
。
年度が前年比0.5ポイント低下の4.6%、05年度
失業率は04年6月に4.6%まで低下し、有効求
が4.4%と緩やかな低下にとどまると予測した。
人倍率は上昇傾向で推移するなど、雇用情勢
景気回復期待などから消費者マインドは改
は改善している。リストラの一巡や企業収益
善傾向で推移し、アテネ五輪特需や猛暑効果
の改善で、企業の人員削減に歯止めがかかっ
も相まって足元の個人消費は堅調に推移して
てきたことが背景にある。04年度は前述した
いる。04年度の実質個人消費は2.3%増と03年
ように景気回復の持続で雇用者数は増加傾向
度の伸び(1.5%増)を上回ろう。05年度は、
で推移しよう。ただ、求職活動を一時的に休
雇用・所得環境が上向くと予想されるが、税・
止している離職者は、統計上、失業者ではな
社会保障負担の増加も続くため、家計所得の
く非労働力人口に計上されている(公式統計
本格回復までは期待できない。アテネ五輪特
図表 8 04 年以降の税・社会保障制度の変更に伴う家計の負担増減額
実施年月
04年 1 月
04年 4 月
ポ イ ン ト
配偶者特別控除・上乗せ分(最高38万円)の所得控除廃止
(平年度、国税5,000億円+地方税2,000億円)
年金給付額の物価スライド適用(03年△0.3%)
〃
消費税の事業者免税点の上限引き下げなど
上限3,000万円→1,000万円
〃
児童手当(支給対象年齢延長)〈就学前→小3終了時〉
住民税均等割り(市町村)の人口区分廃止
6月
(年2,000∼3,000円→一律3,000円)
10月
厚生年金保険料の引き上げ(毎年0.354%労使折半)
13.58%→2017年度18.30%(労使折半)
(平年度、家計負担4,000億円)
高齢者への所得課税強化
(公的年金等控除の最低控除額を140→120万円)
05年 1 月
(65歳以上・老年者控除50万円の廃止)
(平年度、国税2,400億円+住民税1,400億円)
05年 4 月
〃
国民年金保険料の引き上げ(月280円)
月1万3,300円→2017年度・月1万6,900円
負 担 額
(※)年度計
1,000億円
03年度計
健保、タバコ他
1.86兆円
1,200億円給付減
5,000億円
1,700億円給付増
400億円
2,000億円
400億円
04年度計
1.13兆円
700億円
雇用保険料引き上げ(1.4%→1.6%労使折半)
1,500億円
6月
配偶者特別控除・上乗せ分控除廃止(住民税)
1,700億円
10月
厚生年金保険料の引き上げ(毎年0.354%労使折半)
4,000億円
05年度計
1.00兆円
(備考)1.(※)年度計には、制度変更の平年度化に伴う負担増を含むため、内訳の合計とは一致しない。
2.信金中金総合研究所作成
調 査
85
需や猛暑効果の反動もあって、実質個人消費
一巡しつつあるなかで、一段の上積みは期待
の前年比は1.6%増にとどまると予測した。
できない。新設住宅着工戸数は04年度、05年
度とも118.0万戸と予測した。
(3)消費者マインドの改善が下支え要因なが
ら、住宅投資の回復は限定的
(4)企業の投資マインドは強く、設備投資は
05年度まで増加が続くと予測
04年度の実質住宅投資は、前年比0.9%増と
予測した。景気回復に伴う雇用不安の後退な
04年度の設備投資は、企業収益の拡大を背
どで、消費者マインドが上向いていることが
景に引き続き回復傾向で推移しよう(図表10)
。
主因である。また、住宅ローン減税が継続さ
デジタル家電の需要拡大やストック調整の進
れたこともプラス材料である。昨年までの減
展なども設備投資を押し上げる要因となろう。
税制度は、04年に減税額が大幅に縮
図表10 企業収益と設備投資の前年比
小され、05年には廃止される予定で
(%)
あったが、改正後は04年も旧制度が
40
20
継続され、05年以降はやや規模を縮
30
15
小して08年まで継続されることにな
20
10
10
5
0
0
-10
-5
った(図表9)。
05年度も家計所得の本格回復は見
込めず、実質住宅投資は前年比0.5%
増と横ばい圏の動きにとどまろう。
ここ数年大量供給が続いてきたマン
ション建設も、一次取得者の需要が
(%)
経常利益
(左目盛)
設備投資
(右目盛)
-20
-30
-40
93
94
95
96
97
-10
-15
98
99 2000 01
02
03
(備考)財務省『法人企業統計季報』より作成
図表9 住宅ローン減税の内容
入居時期
04年末
借入残高最高額
5,000万円
05年末
4,000万円
06年末
3,000万円
07年末
2,500万円
08年末
2,000万円
(参考)旧制度
03年末
5,000万円
期 間
10年
1 ∼ 8 年目
9 ∼10年目
1 ∼ 7 年目
8 ∼10年目
1 ∼ 6 年目
7 ∼10年目
1 ∼ 6 年目
7 ∼10年目
減税最高額
50万円×10年
=500万円
40万円× 8 年
=360万円
20万円× 2 年
30万円× 7 年
=255万円
15万円× 3 年
25万円× 6 年
=200万円
12.5万円× 4 年
20万円× 6 年
=160万円
10万円× 4 年
1.0%
50万円×10年
=500万円
1.0%
20万円× 6 年
04年末
3,000万円
6年
=150万円
0.5%
5 万円× 6 年
※04年の控除率は借入残高2,000万円以下の部分が1%、2,000万円超から3,000万円以下の部分が0.5%
05年∼
減税廃止
(備考)財務省資料より作成
86
信金中金月報 2004.10
10年
控除率
1.0%
1.0%
0.5%
1.0%
0.5%
1.0%
0.5%
1.0%
0.5%
04
-20
(年)
ただ、03年度の設備投資が研究開発・IT投資
がある。名目設備投資は03年度の前年比6.3%
減税や排ガス規制に伴うトラックの買い換え
増に続き、04年度4.8%増、05年度4.3%増と予
需要で実勢以上に増加したため、04年度の実
測しており、3年間の平均増加率は5.1%とな
質設備投資の伸びは前年比8.7%増と03年度
る。3年連続で増加した95∼97年度(年平均
(12.3%増)に比べると鈍化するとみられる。
4.8%)と同程度の伸びとなる計算で、04∼05
05年度には、デジタル関連の投資が一服す
年度の設備投資は実質値の増加率が示すほど
るとみられる。ただ、中小企業や非製造業の
力強い回復を見込んでいるわけではない。
構造調整が山場を越えることで、設備投資の
すそ野は広がりをみせると考えられる。ここ
(5)経常収支の黒字は04年度、05年度とも増
数年、設備投資を絞り込んできた分野では更
加の予想
新投資の必要性が高まっており、デジタル関
04年度の経常収支の黒字は18.7兆円と予測し
連の投資一巡をカバーする形で、設備投資の
た(図表11)
。世界景気の拡大を背景に輸出は
回復が続くと予想される。05年度の実質設備
堅調な推移が予想される。輸入も景気回復や
投資は8.3%増と3年連続のプラスと予測した。
原油高の影響で増加傾向が続くが、輸出の伸
実質設備投資は03年度に前年比12.3%増とな
びが輸入の伸びを上回るため、貿易黒字は引
り、04∼05年度も高い伸びを予測しているが、
き続き拡大するとみられる。新型肺炎SARSの
IT関連の大幅な価格下落で設備投資デフレー
影響一巡による旅行収支の赤字拡大が予想さ
ターの下落率が実勢より大きくなっているこ
れるものの、利子・配当収入の増加なども寄
とが影響している。GDPデフレーターは基準
与し、経常黒字の拡大傾向は続こう。
年(現行統計は95年基準)から時間が経過す
05年度は海外景気の拡大テンポが鈍化する
るほど下方バイアスが大きくなるという欠点
と予想され、輸出の伸びは低下しよう。ただ、
図表11 経常収支の推移と予測
(兆円)
予測
25
20
15
経常収支
所得収支
10
貿易収支
サービス収支
5
経常移転収支
0
-5
-10
90
91
92
93
94
95
96
97
98
(備考)日本銀行資料より作成。予測は信金中金総合研究所
99
00
01
02
03
04
05
(年度)
調 査
87
米国やアジアの成長率が日本を上回る状況が
総合)は、03年度下期に前年比横ばい圏での
続くため、貿易黒字は高水準を維持するとみ
推移が続いたが、医療費の自己負担比率引き
られる。所得収支の黒字も増加が続こう。対
上げに伴う診療代の上昇や発泡酒・たばこ増
外資産が年々積み上がっていくことに加え、海
税、天候不順によるコメの価格上昇などの特
外の金利上昇で、利子・配当収入の受取は一
殊要因の影響が大きかった(図表12)
。こうし
段と増加すると予想される。この結果、05年
た特殊要因は04年度に入って徐々に一巡して
度の経常収支の黒字は19.9兆円(名目GDP比
いるが、足元のコア消費者物価は前年水準を
では3.9%)と4年連続で増加すると予測した。
わずかに下回る程度にとどまっている。携帯
電話料金や外食の価格競争が一服しているほ
4.需給ギャップの縮小が続くが、量
的緩和の解除にはなお時間を要する
か、個人消費の持ち直しで衣料品や日用品の
(1)需給ギャップの縮小で、消費者物価は05
除いた部分の物価下落率が縮小しているため
物価が下げ止まりつつあるなど、特殊要因を
年度にプラス転換の見通し
である。原油高に伴うガソリン価格の上昇も
国内企業物価は04年3月に3年8か月ぶりに前
影響している。
年比プラスに転じ、その後も上昇テンポが加
04年度下期にはコメ価格が押し下げ要因と
速している。鉄鋼や非鉄製品の上昇が続いて
なるが、ガソリン価格の上昇でほぼ相殺され
いるうえ、原油価格の高騰で石油製品が大幅
るとみられる。さらに、特殊要因を除いた部
に上昇しているためである。当面は、石油製
分は、需給ギャップの縮小に伴って下落率が
品の上昇が企業物価を押し上げる要因となろ
縮小するとみられる。04年度のコア消費者物
う。ただ、昨年秋に急上昇したコメ価格が軟
価は前年比0.1%の下落と予測した。
化傾向にあるほか、機械類やIT関連製品の下
落も続いている。また、中国経済の
減速で鉄鋼など素材製品の物価上昇
も年度下期には歯止めがかかろう。
景気回復の持続を前提とすれば、05年度に
図表12 コア消費者物価の前年比と予測
(%)
予測
0.6
0.4
04年度の国内企業物価は、前年比
1.2%の上昇と予測した。05年度は、
素材価格の上昇が一服するほか、原
油価格も落ち着きを取り戻すとみら
れる。技術革新に伴う機械類の物価
0.2
0.0
-0.2
-0.4
-0.6
酒・たばこ・米・肉
保健医療
電気・ガス・石油製品
特殊要因以外の寄与
-0.8
-1.0
下落が続くこともあって、国内企業
物価は前年比0.1%の下落と予測した。
コア消費者物価(生鮮食品を除く
88
信金中金月報 2004.10
-1.2
01
02
03
04
(備考)総務省資料より作成。予測は信金中金総合研究所
05
(年度)
は需給ギャップは一段と縮小しよう。コメ価
が単月ではなく基調的にゼロ以上となる、②
格が05年度上期まで下落要因として寄与する
日銀の政策委員の多くがゼロを超える見通し
とみられるが、コア消費者物価は年度平均で
を持つ、などを挙げており、現時点では量的
前年比0.3%の上昇に転じると予想される。
緩和の解除を視野に入れる段階にはない。
なお、総合的な物価指標であるGDPデフレ
量的緩和が解除されるためには、コア消費
ーターは、04年度マイナス2.3%、05年度マイ
者物価が上方バイアスを持つことを考慮する
ナス1.2%と8年連続で下落が続こう。05年度に
と、0.5%程度の上昇が数か月程度続くことが
コア消費者物価のプラス転換を見込んでいる
必要であろう。また、経済情勢に関しては、景
ものの、下方バイアスやIT関連を中心とした設
気の自律回復が展望できるような状況にある
備投資デフレーターの下落の影響で、GDPデ
ことが条件と考えられる。
フレーターは引き続き水面下の動きが続こう。
今回の経済見通しでは、05年度のコア消費
者物価の前年比を0.3%(上期0.1%、下期0.5%)
、
(2)量的緩和の解除は早くとも05年度下期
名目成長率を1.3%と予測しており、これを前
金融政策は、日銀当座預金残高の目標を「30
提に量的緩和は05年度下期に解除されると想
∼35兆円」とする量的緩和が継続されている。
定した。ただ、日銀は、00年8月にゼロ金利を
量的緩和解除の基準であるコア消費者物価は、
解除して失敗したという経緯もあって、量的
依然として水面下の状態ではあるが、ガソリ
緩和の解除に関する判断は慎重を期すと予想
ン価格の上昇が加速した場合には、前年比プ
される。量的緩和の解除が想定より遅れる可
ラスに転じる可能性もある。ただ、日銀は政
能性もあろう。
策転換の条件として、①消費者物価の変動率
調 査
89
〈2004年度、2005年度の日本経済予測(前年比、前期比)
〉
名目GDP
実質GDP
国内需要
民間部門
民間最終消費支出
民間住宅投資
民間企業設備
民間在庫品増加
政府部門
政府最終消費支出
公的固定資本形成
財貨・サービスの純輸出
財貨・サービスの輸出
財貨・サービスの輸入
2003年度
2004年度
2005年度
〈実績〉
0.8
3.3
2.5
4.0
1.5
0.3
12.3
1,428
△
2.5
1.0
△ 12.1
18,767
11.0
4.9
〈予測〉
1.1
3.4
2.7
3.9
2.3
0.9
8.7
2,383
△
1.6
1.6
△ 11.8
23,462
12.2
7.5
前年度比
〈予測〉
1.3
2.5
2.4
3.1
1.6
0.5
8.3
2,404
△
0.2
1.3
△
5.9
24,820
5.2
4.9
(単位:%、10億円)
2004年度
2005年度
上期
下期
上期
下期
〈予測〉 〈予測〉 〈予測〉 〈予測〉
0.6
0.7
1.9
0.9
2.9
2.4
2.9
1.9
2.1
2.1
2.7
2.2
3.4
2.8
3.4
2.8
2.6
0.5
1.7
2.3
1.2 △
0.6
0.7
1.3
4.1
12.8
8.4
4.0
2,811
1,956
2,288
2,521
△
2.3 △
0.4 △
0.2 △
0.2
1.7
1.1
1.5
1.2
△ 15.0 △
6.4 △
6.2 △
4.9
22,939
23,985
25,085
24,555
12.3
5.4
6.5
2.3
7.5
3.8
5.3
5.3
前期比年率
(備考)内閣府資料より作成。在庫投資、財貨・サービスの純輸出は実額。予測は信金中金総合研究所
〈実質成長率の需要項目別寄与度〉
実質GDP
国内需要
民間部門
民間最終消費支出
民間住宅投資
民間企業設備
民間在庫品増加
政府部門
政府最終消費支出
公的固定資本形成
財貨・サービスの純輸出
財貨・サービスの輸出
財貨・サービスの輸入
(単位:%)
2003年度
2004年度
2005年度
〈実績〉
3.3
2.4
3.0
0.8
0.0
1.9
0.2
△
0.6
0.2
△
0.7
0.8
1.3
△
0.4
〈予測〉
3.4
2.6
2.9
1.3
0.0
1.5
0.2
△
0.3
0.3
△
0.6
0.8
1.5
△
0.7
前年度比
〈予測〉
2.5
2.3
2.4
0.8
0.0
1.5
0.0
△
0.0
0.2
△
0.3
0.2
0.7
△
0.5
2004年度
2005年度
上期
下期
上期
下期
〈予測〉 〈予測〉 〈予測〉 〈予測〉
2.9
2.4
2.9
1.9
2.0
2.0
2.5
2.1
2.5
2.1
2.6
2.1
1.4
0.3
0.9
1.2
0.0 △
0.0
0.0
0.0
0.7
2.2
1.5
0.8
0.4 △
0.3
0.1
0.1
△
0.5 △
0.1 △
0.0 △
0.0
0.3
0.2
0.2
0.2
△
0.8 △
0.3 △
0.3 △
0.2
0.9
0.4
0.4 △
0.2
1.5
0.7
0.9
0.3
△
0.7 △
0.3 △
0.5 △
0.5
前期比年率
(備考)内閣府資料より作成。予測は信金中金総合研究所
〈前提条件〉
2003年度
2004年度
2004年度
2005年度
上期
下期
上期
下期
〈実績〉 〈予測〉 〈予測〉 〈予測〉 〈予測〉 〈予測〉 〈予測〉
為 替 レ ー ト(円/ドル)
113.1
112.0
115.0
110.0
114.0
117.0
113.0
原 油 価 格(CIF、ドル/バレル)
29.4
36.0
33.0
36.5
35.5
34.0
32.0
(前年比、%)
7.4
22.7
△ 8.3 28.3
16.9
△ 6.8 △ 9.9 公 定 歩 合(%)
0.10
0.10
0.10
0.10
0.10
0.10
0.10
無担保コール翌日物(%)
0.00∼0.05 0.00∼0.05 0.00∼0.25 0.00∼0.05 0.00∼0.05 0.00∼0.05 0.00∼0.25
春 闘 賃 上 げ(%)
1.63
1.70
1.80
―
―
―
―
(備考)日本銀行資料などより作成。予測は信金中金総合研究所
90
信金中金月報 2004.10
2005年度
〈主要経済指標の推移と予測〉
鉱工業生産指数
(前年比、%)
第3次産業活動指数
(前年比、%)
完全失業率
(季調済、%)
企業物価指数(国内)
(前年比、%)
消費者物価指数
(前年比、%)
(除く生鮮食品)
(前年比、%)
2003年度
2004年度
2005年度
〈実績〉
96.6
3.5
102.5
1.3
5.1
95.0
△
0.5
98.1
△
0.2
98.0
△
0.2
〈予測〉
102.4
6.0
104.7
2.1
4.6
96.1
1.2
98.0
△
0.1
97.9
△
0.1
〈予測〉
106.0
3.6
106.3
1.6
4.4
96.0
△
0.1
98.3
0.3
98.2
0.3
2004年度
上期
下期
〈予測〉 〈予測〉
100.3
104.5
7.4
4.7
103.5
105.9
2.3
2.0
4.6
4.5
96.1
96.1
1.3
1.1
98.1
97.9
△
0.2
0.0
98.0
97.8
△
0.1 △
0.1
2005年度
上期
下期
〈予測〉 〈予測〉
104.0
108.0
3.7
3.4
105.3
107.4
1.7
1.5
4.5
4.4
96.2
95.8
0.1 △
0.3
98.2
98.4
0.2
0.5
98.2
98.3
0.1
0.5
(備考)経済産業省、総務省資料などより作成。予測は信金中金総合研究所
〈経常収支〉
(単位:億円、%)
2003年度
2004年度
2005年度
〈実績〉
172,972
前年差
39,100
名目GDP比(%)
3.4
貿易・サービス収支
96,053
前年差
32,445
貿易収支
132,992
前年差
17,081
サービス収支
△ 36,939
前年差
15,364
所得収支
85,120
前年差
4,914
経常移転収支
△ 8,201
前年差
1,740
〈予測〉
187,172
14,200
3.7
103,830
7,777
152,574
19,582
△ 48,744
△ 11,805
91,508
6,388
△ 8,168
33
〈予測〉
198,732
11,560
3.9
112,175
8,344
163,038
10,464
△ 50,863
△ 2,119
94,329
2,822
△ 7,772
396
経常収支
2004年度
上期
下期
〈予測〉 〈予測〉
94,318
92,854
11,369
2,831
3.7
3.7
50,280
53,550
6,723
1,055
74,013
78,561
13,813
5,770
△ 23,733 △ 25,011
△ 7,090 △ 4,715
47,741
43,767
4,822
1,565
△ 3,705 △ 4,463
△ 177
211
2005年度
上期
下期
〈予測〉 〈予測〉
102,373
96,359
8,055
3,505
4.0
3.7
56,437
55,737
6,157
2,187
81,436
81,602
7,423
3,041
△ 24,999 △ 25,865
△ 1,266 △ 854
49,469
44,860
1,729
1,093
△ 3,534 △ 4,238
171
225
(備考)日本銀行『国際収支統計』より作成。予測は信金中金総合研究所
〈主要国の実質成長率の推移と予測〉
国
名
米
国
ユ ー ロ 圏
ド イ ツ
フ ラ ン ス
イ ギ リ ス
韓
国
台
湾
香
港
シンガポール
タ
イ
マ レ ー シ ア
インドネシア
フ ィ リ ピ ン
中
国
1999年
4.5
2.8
1.9
3.2
2.8
9.5
5.4
3.4
6.9
4.4
6.1
0.8
3.4
7.1
(単位:前年比、%)
2000年
3.7
3.5
3.1
4.2
3.8
8.5
5.9
10.2
9.7
4.8
8.6
4.9
4.4
8.0
2001年
0.8
3.4
1.0
2.1
2.1
3.8
△
2.2
0.5
△
1.9
2.1
0.3
3.5
3.0
7.5
2002年
1.9
0.9
0.2
1.1
1.6
7.0
3.6
2.3
2.2
5.4
4.1
3.7
4.4
8.0
2003年
3.0
0.5
△
0.1
0.5
2.2
3.1
3.2
3.3
1.1
6.7
5.2
4.1
4.5
9.1
2004年(予) 2005年(予)
4.4
3.4
2.0
1.5
1.7
1.4
2.5
2.0
3.5
2.5
5.6
4.3
5.5
4.7
6.2
5.0
8.5
5.2
6.8
6.3
6.7
5.9
4.6
4.8
4.8
4.5
9.1
7.9
(備考)各国資料より作成。予測は信金中金総合研究所
調 査
91
知的財産権担保融資の概要
信金中央金庫 総合研究所研究員
谷地向 ゆかり
(キーワード)知的財産、特許、担保、価値評価、自己査定、ベンチャー支援
(視 点)
知的財産権担保融資は、1990年代半ばに不動産等の資産に乏しいベンチャー企業の資金調達
を支援するため、当時の通商産業省、日本開発銀行が中心となって開発した融資手法である。
政府が掲げる「知的財産立国」の実現に向けた諸施策に盛り込まれたことや、今年に入って2
つの地方銀行が相次いで実施したことなどから、再び注目が集まっている。
信用金庫をはじめとする中小・地域金融機関は、『リレーションシップバンキングの機能強
化に関するアクションプログラム』の中で、創業・新事業支援機能等の強化が求められている
ことから、ベンチャー企業向けの融資手法の一つである知的財産権担保融資については、高い
関心を有しているものと思われる。
そこで、本稿では知的財産権担保融資の概要をまとめた。
(要 旨)
●
知的財産権担保融資は、中小・ベンチャー企業の資金調達手段の多様化・円滑化に資するも
のとして期待されており、政府が取組みを奨励している。
●
こうしたなか、知的財産権担保融資については、実施している民間金融機関が現状では少な
く、今後の実施に向けて積極的な姿勢を示している金融機関も多くはない。
●
知的財産権には、知的財産権制度そのものが難しい、価値評価に手間がかかる、担保処分が
難しいなどの問題がある。また、債務者の信用力と担保価値が同時に低下することがあるた
め、担保としての有効性に疑問があるなど、担保として利用しにくい側面がある。
●
しかしながら、知的財産権は企業の競争力を左右する重要な要素であることから、融資判断
にあたって、知的財産権に着目することは重要であろう。
92
信金中金月報 2004.10
図表1 知的財産権担保融資のイメージ図
1.知的財産権に対する関心の
高まりと知的財産権担保融資
近年、企業経営における特許やブ
融資の返済
事業会社
(債務者)
融資の実行
ランド等の知的財産権の重要性に注
金融機関
目が集まっており、知的財産権の活
用戦略や会計・情報開示のあり方等、
知的財産権
担保権の設定
さまざまな観点から議論が行われて
いる。政府が「知的財産立国」を国家戦略と
中小・ベンチャー企業の資金調達手段の多様
して掲げていることもあり、知的財産権に対
化・円滑化に資するものとして期待されてお
する関心が高まっている。
り、
「知的財産立国」の実現に向けた諸施策の
中小・地域金融機関においては、
『リレーシ
一つとして、政府が取組みを奨励している。
ョンシップバンキングの機能強化に関するア
なお、近年、知的財産権を利用した投融資
クションプログラム』の中で、中小企業が有
手法は多様化しており、特別目的会社や信託
する知的財産権・技術の評価や優良案件の発
等を利用したものがみられるようになってき
掘等に関し、産学官とのネットワークの構築・
たが、本稿では知的財産権を融資の担保に利
活用や日本政策投資銀行との連携を図るよう
用しているのみで、他に特別な手法を組み合わ
に要請されていることもあり、知的財産権に
せていないものを中心にみていくこととする。
対する関心が高まっていることと思われる。ま
た、同プログラムの中では、地域におけるベ
ンチャー企業の育成を支援するため、ベンチ
2.知的財産権担保融資の概要
(1)知的財産権とは何か
ャー企業向け業務について、政府系金融機関
「知的財産」とは、発明、考案、意匠、著作
等との情報共有、協調融資等の連携強化が求
物その他の人間の創造的活動により生み出さ
められている。
れるもの、商標、商号その他事業活動に用い
このようななか、2004年2月に東京都民銀行
られる商品又は役務を表示するものおよび営
が、3月に横浜銀行が相次いで知的財産権担保
業秘密その他の事業活動に有用な技術上又は
融資を実施し、注目を集めた。
営業上の情報をいう。
知的財産権担保融資は、1990年代半ばの第3
「知的財産権」とは、特許権、実用新案権、
次ベンチャーブームの際に、不動産等の資産
意匠権、商標権、著作権その他の知的財産に
に乏しいベンチャー企業の資金調達を支援す
関して法令により定められた権利又は法律上
るため、当時の通商産業省、日本開発銀行が中
保護される利益に係る権利をいう(図表2)。
心となって開発した融資手法である(図表1)
。
解 説
93
図表2 主な知的財産権の種類と根拠法等
種 類
根拠法
保 護 対 象
特許権
特許法
新しい発明
実用新案権
実用新案法
物品の構造、形状、組み合わせ等に関する考案
意匠権
意匠法
物品のデザイン
商標権
商標法
商品、サービスに利用するマーク
著作権
著作権法
アニメ、映画、ゲーム、ソフトウェアプログラム等
(2)担保権の設定方法
用されていることが多い(図表4)。このよう
担保権の設定方法は、質権または譲渡担保
な場合には、一つの製品にかかる知的財産権
によることが一般的である。どちらの方法を
のすべてに担保権を設定することが望ましい。
用いるかは、個々の案件による。
一部の知的財産権のみに担保権を設定した場
譲渡担保を用いると、名義上、知的財産権
合、それらの知的財産権だけでは製品を製造・
が担保権者に移転したこととなるため、担保
販売できない場合が多いことから、担保の処
権者が知的財産権を直接管理できるという利
分が難しくなるためである。
点がある。また、質権の設定に比べ
図表4 一つの製品にかかる知的財産権(例)
て担保権の設定費用が低くなる場合
液晶技術
実用新案権
が多い(図表3)。
一方で、債務者によっては、名義
物品の構造、形状の考案
を保護(出願から6年)
アンテナの
収納構造
特許権
新しい発明を保護
(出願から20年)
上とはいえ知的財産権を担保権者に
移転することに抵抗感を持ったり、
事業上の不都合が生じる場合もある
ので、留意する必要がある。
商標権
ブランド名
商品やサービスに使用
するマークを保護
(登録から10年。更新可)
スマートな
デザイン
工業製品の場合、一つの製品の製
造・販売に、複数の知的財産権が利
意匠権
物品のデザインを保護
(登録から15年)
(出所)特許庁『知的財産権制度入門』(平成16年度版)
図表3 主な知的財産権の担保権設定費用と登録先
譲渡担保
(名義移転)
質 権
特許権
1件につき 15,000円
実用新案権
意匠権
商標権
債権金額の
1,000分の4
著作権
登 録 先
特許庁
〃
9,000円
特許庁
〃
9,000円
特許庁
〃
30,000円
特許庁
〃
18,000円
プログラム著作権:財団法人ソフトウェア情報センター
その他の著作権:文化庁
(備考)特許庁、財団法人ソフトウェア情報センターおよび文化庁ホームページより作成
94
信金中金月報 2004.10
ただし、担保権の設定には手間も費用もか
かることから、現実にはすべての知的財産権
に担保権を設定することが難しい場合が少な
ロ.類似事例比較法
類似事例比較法は、類似する知的財産権の
売買事例から類推する方法である。
くない。その場合、実務では重要な知的財産
現時点では、流動性の高い知的財産権の市
権のみに担保権を設定するという方法がとら
場が存在しない、売買事例に関する情報を収
れている。
集することが困難であるという問題がある。ま
た、仮に市場があったとしても、知的財産権
(3)価値評価の方法
知的財産権を担保とするにあたっては、不
動産を担保とする場合と同様に、担保価値の
の類似性を判断することは難しいことから、利
用できるケースはそれほど多くないと考えら
れる。
評価を行う必要がある。
知的財産権の具体的な価値評価の方法は、①
ハ.収益還元法
取得原価をベースとする原価法、②類似事例
収益還元法は、知的財産権が生み出す将来
と比較する類似事例比較法、③知的財産権の
のキャッシュ・フローを予測し、現在価値に
生み出すキャッシュ・フローに基づく収益還
割引く方法である。いわゆるDCF法である。
元法の3種類に大別される。
概念的には、知的財産権のキャッシュ・フ
ローは、知的財産権を利用した製品等のキャ
イ.原価法
ッシュ・フローをもとに算出することが可能
原価法は、知的財産権の取得に要した費用
であると考えられる。しかしながら、知的財
で評価する方法である。外部から購入したも
産権は製品等を製造・販売するために利用さ
のであればその購入価額、自社で作り上げた
れるものであることから、製品等と切り離し
ものであれば開発費用をベースとして、当該
て、知的財産権のみのキャッシュ・フローを
知的財産権の価値とする。
算出することは難しく、またその必要がない
この方法は、評価が容易であり、また評価
という考え方もある。そのため、実務では知
者の判断等が評価に反映されることがほとん
的財産権を利用した製品等のキャッシュ・フ
どないため、評価の客観性が高い。しかしな
ローをそのまま利用することもある。
がら、多額の開発費用をかけた知的財産権が
将来のキャッシュ・フローを予測するため
高い価値を持つとは限らないことから、他の
には、知的財産権を利用した製品等の市場規
評価方法の利用が難しい場合に、利用を検討
模、シェア、製造・販売等にかかるコスト、知
すべき評価方法である。
的財産権の陳腐化するリスク等、数多くの情
報を収集・分析することが必要であるため、非
常に手間がかかる。また、何年分のキャッシ
解 説
95
ュ・フローを評価するか、現在価値への割引
現時点においては、流動性の高い知的財産
率をどの程度に設定するかなど、評価の基礎
権の市場が発達していないため、
「客観的な処
となる考え方をひとつひとつ決めていかなけ
分可能性」があると言える知的財産権は、限
ればならない。
られているものと思われる。
これらの一連の評価作業には、評価者の主
知的財産権担保融資の実績がある金融機関
観が入り込む余地が大きく、評価の客観性は
にヒアリングしたところ、一般担保として扱
あまり高くないことも指摘されている。
っている例はなかった。
一方でこの評価方法は、企業評価、事業評
価の分野においては、極めて一般的であるこ
とや、現実に知的財産権を評価するにあたっ
3.知的財産権担保融資の実施状況と
金融機関の取組み姿勢
ては、原価法、類似事例比較法が利用できる
知的財産権担保融資に最も積極的に取り組
ケースが限られているという事情もあり、実
んでいるのが、日本政策投資銀行である。同
務では最も多く用いられている。
行の前身である日本開発銀行が1995年に知的
他社にライセンス供与しており、安定した
ライセンス収入が期待できる知的財産権につ
いては、この評価方法を用いることで比較的
容易に価値評価ができる。
財産権担保融資を制度化してから現在までに、
250件以上の実績がある。
最近では、既述したとおり2004年2月に東京
都民銀行、同年3月に横浜銀行が相次いで実施
している(図表5)。
(4)自己査定上の取扱い
東京都民銀行は、東京商工会議所が施して
自己査定においては、知的財産権担保を不
いる技術評価事業(注)1において、高い評価を得
動産担保同様に一般担保として扱うことがで
た企業に対し、特許権を担保に融資を実施し
きるか、すなわち金融検査マニュアルにおけ
た。横浜銀行では、日本政策投資銀行との協
る「客観的な処分可能性」があると言えるか
調融資という形で、既往取引先が持つ特許権
どうかが論点となる。
およびソフトウェア著作権を担保に融資を実
【参考】金融検査マニュアル 信用リスク検査用マニュアルより抜粋(下線は筆者)
1.債権の分類方法
(4)担保による調整
担保により保全措置が講じられているものについて、以下のとおり区分し、優良担保の処分可能見込額により保全さ
れているものについては、非分類とし、一般担保の処分可能見込額により保全されているものについては、Ⅱ分類とする。
①優良担保(略)
②一般担保
優良担保以外の担保で客観的な処分可能性があるものをいう。例えば、不動産担保、工場財団担保等がこれに該当する。
(注)
1.詳細は東京商工会議所ホームページ(http://www.tokyo-cci.or.jp/techno/hyoukaintro.html)参照
96
信金中金月報 2004.10
図表5 東京都民銀行および横浜銀行が実施した知的財産権担保融資の概要
東京都民銀行
横 浜 銀 行
2004年3月
特許権、著作権
譲渡担保、質権
実 施 時 期
知的財産権の種類
担保権設定方法
2004年2月
特許権
譲渡担保
融 資 金 額
5,000万円
融 資 期 間
融 資 利 率
3年
通常の担保付き融資と同程度
5年
通常の担保付き融資と同程度
備 考
東京商工会議所の「東商テクノネット技術
評価事業」と連携
日本政策投資銀行との協調融資
総額8,000万円
(うち4,000万円を同行が融資)
(備考)ヒアリングにより作成
施している。
一方、その他の大手銀行の動向をみると、知
両行とも、高い技術力を持ち、成長性が見
的財産権担保融資よりも、特別目的会社、信
込まれる中小・ベンチャー企業に対して、資
託、民法上の任意組合等を用いた投融資への
金面からの支援を行い、地域経済の活性化に
取組み姿勢を強めている。
貢献するという観点から、知的財産権担保融
資を行っている。
かつて、知的財産権担保融資を実施したこ
とのある大手銀行によると、知的財産権担保
信用金庫業界においては、厳密に言えば知
融資は、担保価値の評価や担保権の設定等に
的財産権担保融資ではないが、債務者が保有
手間がかかるため、採算が合わないとのこと
する知的財産権の価値を評価して実施した融
である。
資事例がある。
産業基盤整備基金(現 中小企業基盤整備
これは、1999年と2000年に札幌信用金庫が
実施した日本政策投資銀行(当時は
日本開発銀行)との協調融資で、日
機構)が2000年12月に実施したアンケート調
図表6 札幌信用金庫が実施した知的財産権担保を利用
した融資のスキーム
融資の実行
本政策投資銀行が債務者から知的財
産権担保の差入れを受け、自ら融資
札幌信用金庫
債 務 者
融資の返済
を実施するとともに、札幌信用金庫
の融資部分に債務保証(80%の部分
保証)を付けたものである(図表6)
。
その他には、2004年3月にUFJ銀行
債
務
保
証
知的財産権担保の差入れ
債務保証の委託/保証料の支払い
融資の返済
が、通常の知的財産権担保融資とは
若干異なるスキームではあるが、
実用
日本開発銀行
新案権を担保とした融資を実施して
いる(注)2。
融資の実行
(備考)札幌信用金庫資料より作成
(注)
2.2004年4月17日付け日本経済新聞参照
解 説
97
査によると、知的財産権担保融資に積極的に
4.知的財産権担保融資の問題点
取り組むとしている金融機関は、全体の1%、
知的財産権担保融資に対する金融機関の姿
政府系の2行のみであった(図表7)。
勢が必ずしも積極的でないのは、以下のよう
知的財産権担保融資を行うにあたって必要
な問題点があることが考えられる。
とされる環境整備は何かという問いに対して
は、
「公的な機関による担保価値評価制度の確
(1)知的財産権制度の複雑さ
立」
(92%)
、
「権利移転を円滑化するための法
的整備」
(92%)
、
「知的財産権に関する担保設
知的財産権は、既述したように種類ごとに
定ノウハウのマニュアル」
(88%)
、
「公的な機
異なる根拠法によって規定されており、権利
関による知的財産権の買取り保証制度」
(84%)
の内容や性質、存続期間や管理方法等もさま
という回答(いずれも複数回答)が多く、全
ざまである。
般的に公的機関への期待が大きい。なお、マ
そのため、知的財産権を担保として利用する
ニュアルについては2001年に同基金が作成・
場合においても、知的財産権の種類によって、
公表している。
実務上留意しなければならない点が異なる。
例えば、知的財産権に担保権を設定する場
ただし、これらの環境整備が実施されれば、
知的財産権担保融資に積極的に取り組むとし
合、特許権については担保権を特許庁の登録
ている金融機関は、全体の2%、4行庫にとど
原簿に登録しなければ担保権の効力が発生し
まっている(図表7)。
ないのに対し、著作権については当事者の契
約だけで担保権の効力が発生し、登録は第三
者対抗要件に過ぎない。信託、財団抵当制度
図表7 知的財産権担保融資に対する取組み姿勢
調査対象と回答数
(単位:行庫)
調査対象数 有効回答数
政府系金融機関
都銀、長信銀、信託
地銀、第二地銀
外銀
4
3
19
3
122
53
30
4
信用金庫
384
181
合計
559
244
現在 1
環 境 2
整備後
0
26
35
11
19
57
20
40
20
23
60
80
7
100
(%)
積極的に行いたい
良い条件であれば行いたい
その他
(出所)産業基盤整備基金『知的財産権担保を活用した融資に関する調査研究報告書』(2001)
98
信金中金月報 2004.10
経済活性化に必要なので行う
あまり行うつもりはない
等を活用できるか否かという点も、知的財産
債務者の信用力と担保の価値は、互いに独立
権の種類によって異なっている。
していることが望ましい。
このような知的財産権制度の複雑さが、知
債務者が、主力製品等にかかる知的財産権
的財産権担保融資の定着を阻害している一つ
以外に、担保価値がある知的財産権を保有し
の要因であると考えられる。
ている場合は、それを担保として利用するこ
とで、このような問題を避けることができる
(2)価値評価と担保処分の難しさ
が、特に中小企業においては、主力の製品等
既述したように、知的財産権の価値評価に
に経営資源を集中している場合が多く、主力
は、収益還元法が用いられることが多いが、評
製品等にかかる知的財産権の他に、担保価値
価に非常に手間がかかるため、融資金額が小
がある知的財産権を保有している場合は、そ
さいと、採算が合わないこともありうる。
れほど多くないのが現実であろう。
また、不動産については、不動産鑑定制度
が確立されており、不動産鑑定士に依頼する
ことで信頼性の高い第三者評価を得ることが
できるが、知的財産権にはそのような制度は
なく、信頼性の高い第三者評価を得ることが
難しい。
加えて、流動性の高い知的財産権の市場が
ないことから、綿密な価値評価を実施しても、
(4)専門家である弁理士の偏在
知的財産権の専門家である弁理士は、大都
市に集中している(図表8)。
このため、地方の金融機関にとっては、知
的財産権担保融資を実施するにあたり、弁理
士のサポートを受けることが難しいという問
題もある。
それに近い価格で担保処分できる可能性が低
いという問題がある。
図表8 都道府県別弁理士数(2002年度末)
(単位:人)
北海道
9 石川県
4 岡山県
12
青森県
2 福井県
5 広島県
11
岩手県
1 山梨県
3 山口県
2
収益還元法による知的財産権の価値は、当
宮城県
5 長野県
16 徳島県
3
秋田県
2 岐阜県
23 香川県
3
該知的財産権を利用した製品等のキャッシュ・
山形県
4 静岡県
26 愛媛県
4
福島県
3 愛知県
217 高知県
2
茨城県
35 三重県
5 福岡県
34
(3)担保としての有効性に対する疑問
フローに依存している。
このため、債務者の主力製品等にかかる知
的財産権を担保とした場合、当該主力製品等が
不振に陥ると、債務者の信用力と担保とした知
的財産権の価値が同時に低下することとなる。
担保が、債務者が債務を履行できなくなっ
た場合の債権保全手段であることを考えると、
栃木県
6 滋賀県
10 佐賀県
1
群馬県
10 京都府
55 長崎県
1
埼玉県
63 大阪府
774 熊本県
3
千葉県
83 兵庫県
76 大分県
1
東京都
3,262 奈良県
神奈川県
303 和歌山県
9 宮崎県
1
3 鹿児島県
1
3
新潟県
4 鳥取県
4 沖縄県
富山県
5 島根県
2
(備考)特許庁『特許行政年次報告書2003年版』より作成
解 説
99
弁理士のサポートは必要不可欠というわけ
ただし、知的財産権は企業の競争力を左右
ではないが、万が一、知的財産権にかかる争
する重要な要素であり、担保として利用する
いが発生した場合のことを考えると、身近に
か否かにかかわらず、融資判断にあたって、企
頼れる専門家がいないということは、実施に
業が優れた知的財産権を有しているか、それ
向けての障害となるものと考えられる。
を活用することにより、将来的に安定した収
益が見込めるかといった視点を持つことは重
おわりに
要である。
これまでにみてきたように、金融機関の融
さらに、知的財産権信託の全面解禁等、知
資において、知的財産権は担保として決して
的財産権にかかる法制度の見直しが進められ
利用しやすいものではない。知的財産権担保
ていることから、今後、知的財産権を利用し
融資に取り組む場合においては、個々の知的財
た金融ビジネスの多様化が進むものと思われ
産権の処分可能性、担保としての有効性、事務
る。信用金庫において、今後の業務展開を考
コストを含めた採算性等を考慮した上で、担保
えていくにあたっては、知的財産権について
として利用するか否かを判断する必要がある。
理解を深めていくことも必要であろう。
〈参考文献〉
梶雅昭「知的財産権担保融資入門」
『金融財政事情』社団法人金融財政事情研究会(2003年5月19日∼2003年7月28日)
企業法制研究会『企業法制研究会(担保制度研究会)報告書』(2003年1月)
経済産業省『知的財産(権)の価値評価手法の確立に向けた考え方 中間論点整理』
(2004年6月)
産業基盤整備機構『知的財産権担保を活用した融資に関する調査研究報告書」
(2001年3月)
衆議院調査局経済産業調査室『中小企業金融の現状と今後の在り方』
(2004年2月)
特許庁『知的財産権制度入門』平成16年度版
中央青山監査法人『知的財産ビジネスハンドブック』日経BP社(2002年11月)
日本弁理士会『知的財産価値評価のニーズ調査報告書』
(2002年3月)
土生哲也『投融資実務の決め手「知的財産」の分析手法』中央経済社(2003年11月)
100
信金中金月報 2004.10
信用金庫職員を対象とした
平成16年度中小企業経営改善支援実務研修の開催
信金中央金庫
総合研究所
されたことなどから、平成16年度も全信用金
信金中金総合研究所では、
「リレーションシ
庫の職員を対象に集合研修を実施する。
ップバンキングの機能強化に関するアクショ
平成16年度は10月13日∼15日の四国支店で
ンプログラム」への対応として信用金庫が行
う中小企業経営改善支援(以下、「支援業務」
の開催を皮切りに、地区単位にて本中金の営
という。
)をサポートするため、平成15年度に
業店(北海道支店、東北支店、北陸支店、名
架空の中小企業の現状把握から経営改善計画
古屋支店、大阪支店、中国支店、四国支店、福
策定までを行う模擬コンサルティング形式で
岡支店)および本店において計11回実施する。
研修内容は、前回と同様に実践に近い模擬
の集合研修を実施したところである。
コンサルティング形式とする。今回の研修で
この集合研修は全信用金庫の職員を対象に、
平成16年1月∼4月にかけて本中金の全営業店
はより臨場感を持たせるため、経営者等への
および本店において、計15回実施したところ、
模擬ヒアリングや策定した経営改善計画のグ
267金庫から278名と多数の参加があった。
ループ発表、支援業務全般に係る諸問題につ
平成16年度はアクションプログラム対応の
いての全体討議などを新たに設けるなど充実
最終年度であり、各信用金庫において支援業
を図り、これに伴って研修期間は、前回の2日
務担当者のさらなる人材育成が必要と思料さ
間から3日間に延長した。
なお、今回の研修では、前回と異なる業種
れること、さらに前回の研修時において実施
の企業(架空)を題材として取り上げた。
したアンケート調査では、より多くの職員に
対して研修を実施して欲しいとの要望が散見
平成16年度中小企業経営改善支援実務研修の内容
講義名
演習①
内 容
対象企業(架空)の現状把握
―模擬ヒアリング調査を実施し、対象企業の経営者の経営についての考え方を把握―
演習②
対象企業(架空)の詳細な現状把握と現状分析
―各種調査結果(競合先調査、来店客調査、通行量調査等)などを基に対象企業のより詳細な現状の
把握およびSWOT分析による対象企業の現状の課題・問題点を抽出―
演習③
・対象企業(架空)の経営改善の方向性の検討と経営改善計画書の作成
―対象企業の課題・問題点を踏まえ、今後の経営改善の方向性の検討と経営改善計画支援ソフトを使
用した計数シミュレーションおよび経営改善計画書の作成―
・経営改善計画のグループ発表
全体討議
支援業務についての全体討議
―参加金庫における支援業務に係る諸問題について意見交換―
信金中金だより
101
信金中央金庫総合研究所活動状況(8月)
1.レポート等の発行
発行日
04.8.2
04.8.6
04.8.11
04.8.18
04.8.18
レポート分類
通巻
タ
イ
ト
ル
内外金利・為替見通し 16-5 ―
内外経済・金融動向
16-4 日本経済に大きな影響を与える米中経済の行方
―米国経済は巡航速度での成長維持―
NEW YORK通信
16-2 米国の田舎におけるコミュニティバンキング
貿易投資相談ニュース 112 ―
アジア業務相談室情報 16-3 中国華南地域の投資環境―珠海市の現況―
執筆者
斎藤大紀
黒岩達也
丸山順
青木武
―
荒谷正信
(香港支店)
地域の企業再生ファンドの実態
長山宗広
―信用金庫にとっての活用ポイント―
山田隆広
実質成長率は04年度3.4%、05年度2.5%と予測
角田匠
リレーションシップバンキング対応強化の「ガイド」としての 平野雅史
中小企業白書―地域金融機関はその利用価値を再認識すべき―
04.8.18
産業企業情報
16-4
04.8.19
04.8.25
経済見通し
金融調査情報
16-2
16-4
2.講座・講演・放送等の実施
実施日
04.8.4
04.8.5
04.8.6
種類
タ イ ト ル
講演 リレーションシップバンキングと
中小企業
講演 最近の経済・金融情勢について
講演 工務店の経営改善支援
04.8.6
講演
企業経営の見方
04.8.7
講演
企業経営の見方
04.8.25
講演
余市町のまちづくりについて
講座・講演会・番組名称 場所・放送局
中小企業の財務改善手法 中小企業大学校
関西校
金庫内勉強会
小松川信用金庫
中小企業経営改善支援 但馬信用金庫
セミナー
営 業 店 融 資 担 当 者 に 島根中央信用金庫
対する目利き研修
営 業 店 融 資 担 当 者 に 日本海信用金庫
対する目利き研修
余市町のまちづくりに 北海信用金庫
ついて
講 師 等
服部秀樹
小島一泰
斎藤大紀
長山宗広
藤津勝一
藤津勝一
笠原博
3.原稿掲載
発行日
04.8.20
102
タ
イ
経済見通し
信金中金月報 2004.10
ト
ル
掲 載 誌
日本経済新聞
発
行
日本経済新聞社
執筆者
角田匠
1.信用金庫統計
(1)信用金庫の主要勘定概況 ………103
(2)信用金庫の店舗数、合併等 ……105
(3)信用金庫の預金種類別預金、地区別預金 …106
(4)信用金庫の預金者別預金 ………107
(5)信用金庫の科目別貸出金、地区別貸出金 …108
(6)信用金庫の貸出先別貸出金 ……109
(7)信用金庫の余裕資金運用状況 …110
2.金融機関業態別統計
(1)業態別預貯金等 …………………111
(2)業態別貸出金 ……………………112
統計資料の照会先:信金中央金庫 総合研究所
Tel 03-3563-7541 Fax 03-3563-7551
(凡 例)
1.金額は、単位未満切捨てとした。
2.比率は、原則として小数点以下第1位までとし第2位以下切捨てとした。
3.記号・符号表示は次のとおり。
〔 0 〕ゼロまたは単位未満の計数 〔―〕該当計数なし 〔△〕減少または負
〔…〕不詳または算出不能 〔*〕1,000%以上の増加率
〔p〕速報数字
〔r〕訂正数字 〔b〕b印までの数字と次期以降との数字は不連続
4.地区別統計における地区のうち、関東には山梨、長野、新潟を含む。東海は静岡、愛知、岐阜、三重の4
県、九州北部は福岡、佐賀、長崎の3県、南九州は熊本、大分、宮崎、鹿児島の4県である。
※ 信金中金総合研究所のホームページ(http://www.scbri.jp/)よりExcel形式の統計資料をダウンロードすることができます。
1.
(1)信用金庫の主要勘定概況(2004年7月末)
○預 金
7月の全国信用金庫の預金は、月中1,294億円、0.1%減と、前年同月(4,169億円、0.3%減)と同様に減少した。
① 要求払預金は、月末休日による残高高どまりがみられたものの、年金振込金の流出や、営業資金および決
済資金のための流出等から、月中3,215億円、0.9%減と、前年同月(7,827億円、2.4%減)と同様に減少した。
② 定期性預金は、定期積金の満期流出がみられたものの、ボーナス預金の受入れや、預金増強キャンペーン
の実施等から、月中2,561億円、0.3%増と、前年同月(3,796億円、0.5%増)と同様に増加した。
③ 外貨預金等は、月中639億円、13.1%減少した。
なお、2004年7月末の預金の前年同月比増減率は、1.8%増となった。
○貸出金
貸出金は、月中4,393億円、0.7%増と、前年同月(1,454億円、0.2%増)と同様に増加した。
① 割引手形は、月末休日による商手決済の翌月へのズレ込み等から、月中2,014億円、9.2%増と、前年同月
(309億円、1.3%減)の減少から増加となった。
② 貸付金は、月末休日による回収分の翌月へのズレ込みや、住宅ローンの実行等から、月中2,378億円、0.4%
増と、前年同月(1,763億円、0.2%増)と同様に増加した。
なお、2004年7月末の貸出金の前年同月比増減率は、0.2%減となった。
○余資運用資産
余資運用資産は、月中4,524億円、0.8%減と、前年同月(4,977億円、1.0%減)と同様に減少した。
主な内訳をみると、預け金は、月中6,634億円、3.1%減となった。
金融機関貸付等は、買現先勘定が増加したものの、コールローンが減少したことから、月中28億円、4.9%減
となった。
有価証券は、社債(368億円減)が減少したものの、国債(1,112億円増)
、投資信託(315億円増)
、外国証券
(241億円増)等が増加したため、月中1,592億円、0.5%増となった。
統 計
103
信用金庫の主要勘定増減状況(2004年7月末)
(単位:百万円、%)
前 月 比 増 減
区
分
金
(小 切 手 ・ 手 形)
預
け
金
(信 金 中 金 預 け 金)
(譲 渡 性 預 け 金)
金 融 機 関 貸 付 等
金 融 機 関 貸 付 金
買
入
手
形
資
コ ー ル ロ ー ン
買 現 先 勘 定
債券貸借取引支払保証金
買 入 金 銭 債 権
金 銭 の 信 託
産 商 品 有 価 証 券
有
価
証
券
国
債
地
方
債
短
期
社
債
社
債
項
株
式
貸
付
信
託
投
資
信
託
外
国
証
券
そ の 他 の 証 券
貸 付 有 価 証 券
目
小
計 貸
出
金
(月
中
平
残)
割
引
手
形
貸
付
金
手
形
貸
付
証
書
貸
付
当
座
貸
越
預 金 ・ 積 金
(月
中
平
残)
要 求 払 預 金
当
座
預
金
負
普
通
預
金
貯
蓄
預
金
通
知
預
金
債
別
段
預
金
納 税 準 備 預 金
定 期 性 預 金
項
定
期
預
金
定
期
積
金
外 貨 預 金 等
目
実
質
預
金
譲 渡 性 預 金
借
用
金
預
貸
率
残
現
員
勘
定
増 減 額
1,584,834
(
259,387 )
20,071,011
△
(△
18,662,114 )
(△
41,000 )
54,982
△
0
0
44,982
△
9,999
0
423,844
316,791
15,035
△
28,338,921
7,930,327
2,942,602
299
11,322,271
△
518,236
217
△
663,126
4,899,272
62,566
0
50,805,421
△
61,971,483
(
61,397,357 )
2,369,776
59,601,706
7,193,232
49,401,489
3,006,984
△
106,966,385
△
(
106,392,024 )
33,798,278
△
2,544,214
29,245,215
△
1,316,882
△
181,874
470,853
△
39,237
△
72,745,362
65,609,220
7,136,142
△
422,744
△
106,706,998
△
97,774
544,036
57.8
(
(
(
(
(
会
会
員
勘
定
普 通 出 資 金
優 先 出 資 金
優 先 出 資 払 込 金
資 本 準 備 金
そ の 他 資 本 剰 余 金
利 益 準 備 金
特 別 積 立 金
前 期 繰 越 金
未 処 分 剰 余 金
土 地 再 評 価 差 額 金
株 式 等 評 価 差 額 金
処 分 未 済 持 分
自己優先出資払込金
自 己 優 先 出 資
高
△
5,663,294
579,255
43,590
0
30,977
0
358,533
4,332,125
120,045
17
199,609
2
863
0
0
△
△
△
増 減 率
46,311
(
117,390 )
663,422
△
(△
718,770 )
(△
10,000 )
2,842
△
0
0
4,842
△
2,000
0
643
7,837
202
△
159,275
111,246
18,184
100
36,838
△
10,273
5
△
31,549
24,103
663
0
452,400
△
439,379
(
137,637 )
201,489
237,890
45,062
208,228
15,400
△
129,415
△
(
485,876 )
321,582
△
237,065
124,621
△
613
△
30,965
464,185
△
193
△
256,116
328,062
71,945
△
63,949
△
246,804
△
3,951
35,838
310
922
0
0
0
0
1
2,769
285
1,145
0
0
108
0
0
△
△
△
0.0
0.1
0.0
―
0.0
―
0.0
0.0
0.2
―
0.0
0.0
―
―
―
信金中金月報 2004.10
2.4
3.8
147.8
―
122.9
△ 100.0
△
0.3
1.3
18.4
―
△
3.4
―
―
―
―
年
月中増減額
3.0
7.5
△
(
(△
82.6 )
82.0 )
3.1
△
0.0
△
(△
(△
3.7 )
1.8 )
( △ 56.9 )
(
19.6 )
4.9
△ 50.0
△
─
△ 100.0
─
─
9.7
△ 44.4
△
25.0
0.0
△
─
△ 100.0
△
0.1
△ 26.9
△
2.5
17.7
1.3
△ 39.9
△
0.5
8.0
1.4
21.6
0.6
14.4
50.2
△ 70.0
0.3
0.2
2.0
14.4
△
2.2
△ 77.0
△
4.9
8.6
△
0.4
3.7
1.0
0.6
─
△ 100.0
0.8
4.1
△
0.7
△
0.2
(△
(△
0.2 )
0.4 )
9.2
4.1
△
0.4
△
0.3
0.6
△
8.3
0.4
1.2
0.5
△
6.1
0.1
1.8
△
(
(
0.4 )
1.8 )
0.9
6.5
△
10.2
20.6
△
0.4
7.2
△
0.0
△
1.3
△
20.5
11.8
△
49.6
△ 42.2
△
0.4
17.7
△
0.3
△
0.1
0.5
0.3
0.9
△
4.5
△
13.1
△
5.8
△
0.2
1.7
△
4.2
51.0
△
7.0
△
5.3
(備考)預貸率=貸出金/預金・積金×100(預金には譲渡性預金を含む。)
104
前年同月比
増 減 率
前
△
△
同
113,064
△
(△
7,941 )
744,198
△
(△
561,294 )
(
10,001 )
10,556
△
0
0
9,558
△
1
△
998
△
38,351
△
1,616
1,304
△
408,151
229,688
23,530
999
32,077
5,206
△
150
△
4,719
△
131,718
214
0
497,706
△
145,468
(△
33,915 )
30,915
△
176,383
26,998
145,809
3,576
416,991
△
(
184,306 )
782,732
△
63,877
△
567,865
△
6,305
△
7,678
△
132,227
△
4,781
△
379,609
449,799
70,190
△
13,868
△
409,051
△
366
△
6,612
1,038
1,647
0
0
20
0
25
144
148
1,366
0
0
461
0
0
月
前年同月比
増 減 率
7.1
△
7.4
( △ 10.7 )
5.2 )
3.5
△
0.7
(△
2.8 )
0.0 )
( △ 11.3 )
11.7 )
8.7
48.1
0.0
─
─
─
10.5
9.1
0.0
─
10.0
─
6.1
37.6
0.6
△ 20.8
4.9
15.6
1.5
11.8
3.6
31.0
0.9
2.5
─
─
0.2
10.1
1.1
△ 12.4
13.7
△ 57.9
0.7
△ 27.7
2.8
9.8
0.3
8.2
0.0
△ 85.2
1.0
5.7
0.2
△
0.6
(△
0.0 )
0.9 )
1.3
△
8.1
0.2
△
0.3
0.3
△
7.0
0.2
1.0
0.1
△
4.3
0.3
2.2
(
0.1 )
1.9 )
2.4
4.4
2.9
5.4
2.0
5.2
0.4
△
4.3
4.5
△
6.8
13.9
△
5.3
12.5
△
1.3
0.5
1.2
0.6
1.9
0.9
△
4.5
2.9
△
0.9
0.3
2.2
0.5
149.9
1.1
49.0
月中増減率
0.0
0.2
0.0
―
△
0.1
0.0
0.0
0.0
0.1
△ 192.1
0.0
―
―
―
―
△
△
△
△
△
△
1.0
4.7
*
―
246.3
―
1.5
2.7
24.8
276.5
2.4
100.0
―
―
―
1.
(2)信用金庫の店舗数、合併等
信用金庫の店舗数、会員数、常勤役職員数
店
年 月 末
2000. 3
01. 3
02. 3
02.12
03. 3
6
03. 8
9
10
11
12
04. 1
2
3
4
5
6
7
8
本 店
支 店
(信用金庫数)
386
8,004
371
7,842
349
7,781
330
7,707
326
7,673
326
7,655
321
7,633
321
7,595
315
7,529
314
7,514
314
7,513
309
7,508
307
7,502
306
7,471
306
7,466
306
7,460
306
7,452
304
7,438
p
304
舗
(単位:店、人)
数
常
出張所
合 計
248
267
270
267
264
258
250
258
262
265
266
267
266
282
283
282
281
274
8,638
8,480
8,400
8,304
8,263
8,239
8,204
8,174
8,106
8,093
8,093
8,084
8,075
8,059
8,055
8,048
8,039
8,016
8,005
会 員 数
常勤役員
8,876,360
8,941,138
8,981,084
8,982,770
9,001,391
9,032,713
9,048,504
9,058,720
9,067,020
9,073,614
9,083,334
9,086,064
9,093,543
9,091,974
9,099,916
9,106,748
9,112,262
9,113,379
9,116,103
2,900
2,804
2,734
2,607
2,557
2,508
2,494
2,488
2,463
2,459
2,455
2,426
2,414
2,395
2,391
2,386
2,385
2,380
勤
男 子
98,124
94,112
91,451
89,712
87,922
88,196
87,502
87,065
86,761
86,522
86,194
85,865
85,489
84,341
85,575
85,307
84,696
84,388
役
職
職
員
女 子
43,781
41,004
38,851
38,706
37,086
38,559
37,858
37,429
37,204
37,095
36,622
36,380
36,149
35,053
36,926
36,720
36,381
36,040
員
数
計
141,905
135,116
130,302
128,418
125,008
126,755
125,360
124,494
123,965
123,617
122,816
122,245
121,638
119,394
122,501
122,027
121,077
120,428
合
計
144,805
137,920
133,036
131,025
127,565
129,263
127,854
126,982
126,428
126,076
125,271
124,671
124,052
121,789
124,892
124,413
123,462
122,808
122,280
信用金庫の合併等
年 月 日
2003年 7 月 7 日
2003年 7 月 7 日
2003年 7 月22日
2003年 7 月22日
2003年10月20日
2003年10月20日
2003年10月20日
2003年11月 4 日
2004年 1 月13日
2004年 1 月19日
2004年 1 月19日
2004年 2 月 9 日
2004年 2 月 9 日
2004年 2 月16日
2004年 3 月22日
2004年 7 月12日
2004年 7 月20日
芝
一宮
東京東
赤穂
秋田
富山
福岡ひびき
能登
王子
直江津
北伊勢
高松
鹿児島相互
興能
金沢
下関
彦根
異
東調布
愛北
小岩
伊那
五城目
射水
新北九州
共栄
太陽
高田
上野
さぬき
川内
(高浜信組)
福光
豊浦
近江八幡
動
金
庫
名
津島
門司
築上
荒川
日興
直方
新金庫名
芝
いちい
東京東
アルプス中央
秋田
富山
福岡ひびき
のと共栄
城北
上越
北伊勢上野
高松
鹿児島相互
興能
金沢
下関
滋賀中央
金庫数
325
323
322
321
320
319
315
314
311
310
309
308
307
307
306
305
304
異動の種類
合併
合併
合併
合併
合併
合併
合併
合併
合併
合併
合併
合併
合併
合併
合併
合併
合併
統 計
105
1.
(3)信用金庫の預金種類別預金、地区別預金
預金種類別預金
預金計
年 月 末
2000. 3
01. 3
02. 3
02.12
03. 3
6
03. 8
9
10
11
12
04. 1
2
3
4
5
6
7
8 p
1,020,320
1,038,043
1,028,198
1,047,505
1,035,536
1,054,744
1,056,653
1,053,808
1,050,779
1,055,159
1,068,100
1,055,949
1,061,010
1,055,175
1,063,080
1,061,345
1,070,958
1,069,663
1,071,058
(単位:億円、%)
前年同月比
増 減 率
1.4
1.7
△ 0.9
△ 1.2
0.7
1.8
2.3
2.1
2.2
2.3
1.9
2.4
2.5
1.8
1.7
1.6
1.5
1.8
1.3
要求払
214,497
230,205
297,903
320,432
312,842
325,170
323,633
322,502
322,398
327,046
336,074
324,452
331,166
328,610
336,762
334,117
341,198
337,982
338,902
前年同月比
増 減 率
4.1
7.3
29.4
27.1
5.0
3.5
4.7
4.6
5.0
5.4
4.8
6.7
6.6
5.0
4.5
4.4
4.9
6.5
4.7
定期性
797,284
801,008
723,681
722,295
716,192
724,946
728,684
726,178
723,891
723,409
727,873
727,359
725,787
720,951
721,817
722,676
724,892
727,453
727,436
前年同月比 外貨預金等 前年同月比
増 減 率
増 減 率
0.8
8,539 △ 9.2
0.4
6,829 △ 20.0
△ 9.6
6,613 △ 3.1
△ 10.0
4,776 △ 10.0
△ 1.0
6,500 △ 1.7
1.1
4,627
0.1
1.4
4,334 △ 8.6
1.2
5,127 △ 8.1
1.2
4,489 △ 13.4
1.1
4,703 △ 11.4
0.7
4,152 △ 13.0
0.7
4,137 △ 14.6
0.8
4,056 △ 11.1
0.6
5,614 △ 13.6
0.5
4,500 △ 3.3
0.4
4,551 △ 4.5
△ 0.0
4,866
5.1
△ 0.1
4,227 △ 5.8
△ 0.1
4,719
8.8
実質預金
1,016,862
1,033,760
1,024,192
1,043,490
1,032,788
1,053,240
1,054,039
1,051,883
1,049,323
1,052,500
1,065,180
1,053,362
1,058,358
1,052,971
1,061,047
1,059,865
1,069,538
1,067,069
1,069,717
前年同月比
増 減 率
1.4
1.6
△ 0.9
△ 1.2
0.8
1.9
2.3
2.2
2.2
2.3
2.0
2.3
2.4
1.9
1.7
1.7
1.5
1.7
1.4
譲渡性預金
122
105
114
321
244
650
891
915
1,005
1,084
766
965
855
789
716
824
938
977
1,207
前年同月比
増 減 率
△ 36.7
△ 13.3
7.9
129.4
113.7
189.0
250.1
202.8
177.5
230.4
138.1
225.6
162.7
223.1
86.9
62.4
44.1
51.0
35.3
(備考)1.預金計には譲渡性預金を含まない。
2.実質預金は預金計から小切手・手形を差引いたもの。
地区別預金
年 月 末
2000. 3
01. 3
02. 3
02.12
03. 3
6
03. 8
9
10
11
12
04. 1
2
3
4
5
6
7
8 p
年 月 末
2000. 3
01. 3
02. 3
02.12
03. 3
6
03. 8
9
10
11
12
04. 1
2
3
4
5
6
7
8 p
(単位:億円、%)
北海道
51,708
53,392
54,596
56,826
55,302
56,473
56,148
55,749
55,624
56,645
57,719
55,985
56,167
56,194
56,928
56,622
57,357
57,005
57,133
近 畿
206,301
207,950
201,814
203,462
201,600
204,930
205,269
205,386
204,412
205,232
207,067
205,239
206,117
205,213
206,682
206,367
208,296
208,205
208,434
前年同月比
増 減 率
2.5
3.2
2.2
0.4
1.2
1.5
2.0
0.8
1.6
1.9
1.5
2.3
2.0
1.6
1.4
1.6
1.5
2.1
1.7
前年同月比
増 減 率
0.7
0.7
△ 2.9
△ 3.3
△ 0.1
1.5
2.1
2.0
2.0
2.2
1.7
2.3
2.5
1.7
2.0
1.6
1.6
1.8
1.5
東 北
38,831
39,684
39,036
40,360
39,462
40,347
40,336
40,145
40,170
40,281
40,851
40,355
40,619
39,896
40,591
40,242
40,639
40,517
40,590
中 国
49,526
49,578
49,651
50,632
50,175
51,036
51,017
50,844
50,300
50,480
51,138
50,337
50,618
50,456
50,743
50,569
51,106
51,030
51,049
前年同月比
増 減 率
1.7
2.1
△ 1.6
△ 0.5
1.0
0.9
1.2
1.1
1.2
1.3
1.2
1.7
1.8
1.0
1.0
0.7
0.7
0.9
0.6
前年同月比
増 減 率
0.8
0.1
0.1
△ 0.7
1.0
1.9
2.3
1.8
1.5
1.6
0.9
1.1
1.3
0.5
0.7
0.4
0.1
0.6
0.0
東 京
192,017
194,416
190,125
194,208
193,270
196,425
197,315
196,553
196,386
197,385
199,155
197,620
198,294
196,903
198,198
198,014
199,329
199,319
199,038
四 国
17,198
17,773
18,064
18,341
18,206
18,483
18,540
18,491
18,438
18,494
18,769
18,634
18,730
18,625
18,722
18,699
18,887
18,946
18,952
前年同月比
増 減 率
0.3
1.2
△ 2.2
△ 1.8
0.8
2.2
3.2
2.4
2.7
2.8
2.5
3.1
2.9
1.8
1.9
1.4
1.4
1.8
0.8
前年同月比
増 減 率
2.0
3.3
1.6
△ 0.4
0.7
1.9
2.5
2.0
2.2
2.2
2.3
2.8
2.9
2.3
2.2
2.0
2.1
2.5
2.2
関 東
197,800
199,809
198,309
201,075
197,820
201,691
202,145
201,450
201,355
201,837
204,715
202,305
203,450
201,888
203,399
203,184
205,068
204,725
205,230
九州北部
17,411
17,940
17,916
18,439
17,984
18,597
18,612
18,452
18,455
18,486
18,766
18,558
18,645
18,298
18,652
18,577
18,751
18,728
18,745
前年同月比
増 減 率
0.9
1.0
△ 0.7
△ 0.9
0.4
2.3
1.3
1.8
2.0
2.0
1.8
2.2
2.3
2.0
1.7
1.7
1.6
1.9
1.5
前年同月比
増 減 率
2.5
3.0
△ 0.1
△ 0.6
0.3
2.2
2.4
2.0
2.3
2.2
1.7
2.8
2.6
1.7
1.2
1.0
0.8
1.4
0.7
(備考)1.沖縄地区は全国に含めた。
2.東京・関東地区の2002年6月以降の増減率は、地区間の事業譲渡を調整して算出
106
信金中金月報 2004.10
北 陸
30,732
31,560
31,829
32,600
32,313
32,818
32,994
32,778
32,774
32,796
33,108
32,812
32,992
32,710
32,996
32,912
33,249
33,132
33,199
南九州
24,139
24,392
23,556
24,424
23,746
24,269
24,274
24,306
24,119
24,230
24,855
24,312
24,226
24,219
24,320
24,331
24,541
24,539
24,587
前年同月比
増 減 率
1.6
2.6
0.8
0.4
1.5
1.2
1.8
2.3
2.4
2.1
1.5
2.6
2.7
1.2
1.2
0.7
1.3
1.1
0.6
前年同月比
増 減 率
1.2
1.0
△ 3.4
△ 1.9
0.8
1.9
1.8
2.1
1.9
1.9
1.7
2.5
2.4
1.9
1.2
1.2
1.1
1.6
1.2
東 海
193,122
200,034
201,901
205,777
204,281
208,291
208,601
208,248
207,358
207,916
210,580
208,431
209,789
209,402
210,488
210,500
212,288
212,039
212,642
全国計
1,020,320
1,038,043
1,028,198
1,047,505
1,035,536
1,054,744
1,056,653
1,053,808
1,050,779
1,055,159
1,068,100
1,055,949
1,061,010
1,055,175
1,063,080
1,061,345
1,070,958
1,069,663
1,071,058
前年同月比
増 減 率
3.4
3.5
0.9
0.2
1.1
2.9
3.2
3.1
2.7
2.9
2.3
2.5
2.6
2.5
1.9
2.2
1.9
2.0
1.9
前年同月比
増 減 率
1.4
1.7
△ 0.9
△ 1.2
0.7
1.8
2.3
2.1
2.2
2.3
1.9
2.4
2.5
1.8
1.7
1.6
1.5
1.8
1.3
1.
(4)信用金庫の預金者別預金
(単位:億円、%)
預金計
年 月 末
2000. 3
01. 3
02. 3
02.12
03. 3
6
03. 7
8
9
10
11
12
04. 1
2
3
4
5
6
7
年 月 末
2000. 3
01. 3
02. 3
02.12
03. 3
6
03. 7
8
9
10
11
12
04. 1
2
3
4
5
6
7
年 月 末
2000. 3
01. 3
02. 3
02.12
03. 3
6
03. 7
8
9
10
11
12
04. 1
2
3
4
5
6
7
1,019,963
1,037,617
1,027,696
1,047,491
1,035,334
1,054,739
1,050,573
1,056,651
1,053,806
1,050,777
1,055,157
1,068,098
1,055,947
1,061,009
1,054,774
1,063,078
1,061,344
1,070,956
1,069,662
個人預金
前年同月比
増 減 率
1.4
1.7
△ 0.9
△ 1.2
0.7
1.8
2.2
2.3
2.2
2.2
2.3
1.9
2.4
2.5
1.8
r
1.7
1.6
1.5
1.8
一般法人預金
r
201,155
200,268
182,602
182,904
173,622
174,582
172,593
176,231
176,942
173,553
179,661
183,661
177,071
176,720
175,486
177,528
175,508
175,929
178,942
要求払
3,433
3,569
12,046
12,262
11,804
14,234
13,611
11,572
11,960
11,363
11,290
9,971
9,673
9,677
9,986
11,937
14,002
12,748
10,885
768,266
792,296
802,012
821,867
820,195
832,512
831,375
837,644
833,099
836,650
835,115
846,003
842,122
847,639
842,751
846,867
842,430
851,169
850,365
前年同月比
増 減 率
△ 1.0
△ 0.4
△ 8.8
△ 7.4
△ 4.9
△ 2.8
△ 0.4
△ 0.1
△ 0.1
△ 0.0
0.2
0.4
3.4
3.5
1.0
0.2
△ 2.0
0.7
3.6
要求払
前年同月比
増 減 率
10.7
3.9
237.4
361.3
△ 2.0
△ 4.0
△ 12.5
△ 20.3
△ 17.0
△ 15.3
△ 15.7
△ 18.6
△ 25.1
△ 25.8
△ 15.4
△ 8.1
10.4
△ 10.4
△ 20.0
定期性
62,619
69,649
85,538
92,675
84,315
85,598
83,788
87,649
88,331
85,307
91,736
96,030
89,515
89,178
88,339
90,064
88,453
89,321
92,393
20,770
20,719
10,738
13,047
10,366
15,932
16,121
15,611
13,747
13,323
13,145
12,817
12,672
11,901
10,623
11,578
13,524
15,534
15,821
前年同月比
増 減 率
2.0
3.1
1.2
0.6
2.2
2.8
3.1
3.4
3.3
3.3
3.3
2.9
3.0
3.0
2.7
2.5
2.3
2.2
2.2
要求払
前年同月比
増 減 率
△ 0.2
11.2
22.8
27.2
△ 1.4
△ 1.2
3.4
3.4
3.0
3.3
3.4
3.6
10.3
10.2
4.7
2.9
△ 1.2
4.3
10.2
定期性
141,879
153,271
195,149
211,302
211,169
221,079
216,059
221,570
217,690
222,508
220,874
226,794
222,961
229,245
226,091
231,178
227,575
235,714
232,606
138,202
130,298
96,760
89,865
88,922
88,622
88,441
88,208
88,215
87,859
87,551
87,249
87,182
87,185
86,830
87,112
86,700
86,241
86,191
前年同月比
増 減 率
6.2
8.0
27.3
22.3
8.2
5.9
6.7
7.4
7.2
7.3
7.7
7.3
7.9
7.9
7.0
6.3
5.9
6.6
7.6
定期性
626,134
638,772
606,630
610,303
608,742
611,104
614,967
615,716
614,990
613,669
613,754
618,654
618,597
617,817
616,073
615,079
614,269
614,853
617,135
前年同月比 外貨預金等 前年同月比
増 減 率
増 減 率
1.1
238
119.2
2.0
240
0.5
△ 5.0
220
△ 8.3
△ 5.1
250
16.2
0.3
273
24.1
1.8
318
39.5
1.9
337
33.7
2.0
346
34.6
1.9
407
61.7
1.9
462
87.3
1.7
476
93.9
1.3
544
117.4
1.3
552
112.9
1.3
566
112.6
1.2
576
111.0
1.0
600
120.4
0.9
575
89.8
0.6
591
85.7
0.3
612
81.2
前年同月比 外貨預金等 前年同月比
増 減 率
増 減 率
△ 1.4
323
8.9
△ 5.7
309
△ 4.1
△ 25.7
293
△ 5.0
△ 27.8
354
9.0
△ 8.1
376
28.2
△ 4.4
353
△ 7.1
△ 3.8
354
0.5
△ 3.5
364
2.3
△ 3.2
386
11.3
△ 3.1
377
8.2
△ 2.9
365
4.2
△ 2.9
373
5.2
△ 2.8
365
△ 0.5
△ 2.3
347
△ 3.2
△ 2.3
349
△ 7.3
△ 2.4
343
△ 4.0
△ 2.7
346
△ 5.6
△ 2.6
358
1.4
△ 2.5
348
△ 1.6
前年同月比 外貨預金等 前年同月比
増 減 率
増 減 率
10.3
456
27.2
△ 0.2
611
33.9
△ 48.1
200
△ 67.1
△ 47.0
37
△ 70.7
△ 3.4
118
△ 41.2
7.1
208
98.3
5.8
15
△ 73.1
4.4
36
△ 67.8
△ 0.7
51
35.2
0.9
16
105.5
0.5
201
342.4
△ 1.7
57
54.1
△ 0.0
12
△ 63.9
△ 0.6
93
167.0
2.4
298
152.7
2.2
56
*
3.6
19
△ 74.8
△ 2.4
371
77.8
△ 1.8
11
△ 27.5
金融機関預金
25,857
20,141
20,084
17,361
19,217
17,259
16,845
15,546
17,995
15,861
15,733
15,577
14,386
14,969
15,579
15,100
15,851
15,195
13,628
公金預金
24,663
24,903
22,990
25,350
22,292
30,379
29,752
27,223
25,763
24,706
24,640
22,850
22,361
21,675
20,911
23,576
27,549
28,657
26,721
政府関係
前年同月比 預 り 金
増 減 率
△ 4.8
14
△ 22.1
2
△ 0.2
2
△ 7.9
1
△ 4.3
1
3.7
1
△ 5.3
1
△ 4.6
0
△ 6.5
1
△ 7.8
1
△ 5.4
1
△ 10.2
0
△ 11.9
0
△ 11.6
0
△ 18.9
0
△ 12.7
0
△ 1.2
0
△ 11.9
0
△ 19.0
0
前年同月比
増 減 率
10.6
0.9
△ 7.6
△ 7.5
△ 3.0
1.9
△ 3.5
△ 8.0
△ 8.9
△ 7.2
△ 7.1
△ 9.8
△ 12.8
△ 13.5
△ 6.1
△ 3.1
6.7
△ 5.6
△ 10.1
譲渡性預金
122
105
114
321
244
650
647
891
915
1,005
1,084
766
965
855
789
715
824
938
977
(備考)日本銀行『預金現金貸出金調査表』より作成。このため、
『日計表』による(3)預金種類別預金、地区別預金の預金計とは一
致しない。
統 計
107
1.
(5)信用金庫の科目別貸出金、地区別貸出金
科目別貸出金
(単位:億円、%)
貸出金計
年 月 末
2000. 3
01. 3
02. 3
02.12
03. 3
6
03. 8
9
10
11
12
04. 1
2
3
4
5
6
7
8 p
687,159
661,879
639,805
638,093
626,342
619,691
624,062
625,431
623,438
626,852
633,013
627,637
626,366
622,364
617,120
614,368
615,321
619,714
616,348
割引手形
前年同月比
増 減 率
△ 3.4
△ 3.6
△ 3.3
△ 2.6
△ 2.1
△ 1.2
△ 0.6
△ 0.6
△ 0.5
△ 0.5
△ 0.7
△ 0.2
△ 0.2
△ 0.6
△ 0.6
△ 1.1
△ 0.7
△ 0.2
△ 1.2
31,785
33,932
28,762
28,125
24,051
23,054
24,578
22,238
22,256
24,592
26,093
25,388
24,828
22,388
21,870
21,730
21,682
23,697
20,655
貸付金
前年同月比
増 減 率
△ 4.9
6.7
△ 15.2
△ 9.9
△ 16.3
△ 15.7
△ 8.3
△ 7.9
△ 7.7
△ 7.7
△ 7.2
1.0
1.8
△ 6.9
△ 5.7
△ 14.7
△ 5.9
4.1
△ 15.9
655,373
627,946
611,043
609,968
602,291
596,636
599,483
603,192
601,182
602,259
606,919
602,249
601,538
599,975
595,249
592,638
593,638
596,017
595,693
手形貸付
前年同月比
増 減 率
△ 3.4
107,804
△ 4.1
97,975
△ 2.6
90,943
△ 2.2
86,970
△ 1.4
84,739
△ 0.5
78,219
△ 0.3
78,595
△ 0.3
79,940
△ 0.2
79,025
△ 0.2
78,708
△ 0.4
80,066
△ 0.2
78,310
△ 0.2
78,116
△ 0.3 r 77,758
△ 0.4
74,314
△ 0.5
71,686
△ 0.5
71,481
△ 0.3
71,932
△ 0.6
72,150
証書貸付
前年同月比
増 減 率
△ 8.7
509,049
△ 9.1
493,986
△ 7.1
485,532
△ 8.4
489,691
△ 6.8
484,045
△ 6.6
486,415
△ 7.3
489,172
△ 7.5
490,191
△ 7.3
490,176
△ 7.5
491,561
△ 7.9
495,078
△ 7.7
492,647
△ 8.1
492,181
△ 8.2 r 490,499
△ 8.4
490,369
△ 8.5
490,291
△ 8.6
491,932
△ 8.3
494,014
△ 8.2
493,185
前年同月比
増 減 率
△ 2.2
△ 2.9
△ 1.7
△ 0.8
△ 0.3
0.6
1.1
1.2
1.3
1.3
1.0
1.3
1.4
1.3
1.2
0.9
1.1
1.2
0.8
地区別貸出金
年 月 末
2000. 3
01. 3
02. 3
02.12
03. 3
6
03. 8
9
10
11
12
04. 1
2
3
4
5
6
7
8 p
年 月 末
2000. 3
01. 3
02. 3
02.12
03. 3
6
03. 8
9
10
11
12
04. 1
2
3
4
5
6
7
8 p
38,520
35,984
34,567
33,306
33,506
32,001
31,715
33,060
31,980
31,988
31,774
31,291
31,239
31,717
30,564
30,660
30,223
30,069
30,357
前年同月比
増 減 率
△ 2.9
△ 6.5
△ 3.9
△ 4.6
△ 3.0
△ 3.1
△ 4.5
△ 5.0
△ 5.1
△ 4.4
△ 4.5
△ 5.9
△ 6.0
△ 5.3
△ 5.9
△ 4.5
△ 5.5
△ 6.1
△ 4.2
(単位:億円、%)
北海道
30,197
29,377
29,521
29,862
29,628
28,255
28,742
29,083
29,346
29,451
30,095
29,461
29,472
29,855
29,152
28,526
28,524
28,792
28,845
近 畿
144,784
136,814
130,271
127,566
124,418
123,725
124,396
124,171
123,680
124,553
125,340
124,471
124,035
122,626
122,063
121,745
121,845
122,789
121,660
前年同月比
増 減 率
△ 1.3
△ 2.7
0.4
1.0
0.3
0.4
1.1
0.3
1.1
1.1
0.7
1.7
1.7
0.7
1.1
0.5
0.9
1.4
0.3
前年同月比
増 減 率
△ 3.1
△ 5.5
△ 4.7
△ 5.9
△ 4.4
△ 2.5
△ 1.6
△ 1.6
△ 1.4
△ 1.4
△ 1.7
△ 0.9
△ 0.8
△ 1.4
△ 1.3
△ 2.0
△ 1.5
△ 0.8
△ 2.1
東 北
25,091
24,875
24,520
24,506
24,413
23,735
23,873
23,944
23,930
23,993
24,136
23,941
23,952
23,865
23,539
23,274
23,242
23,350
23,303
中 国
33,451
31,863
30,826
30,692
30,140
29,641
29,927
29,978
29,740
29,797
30,114
29,880
29,904
29,815
29,442
29,347
29,412
29,567
29,492
前年同月比
増 減 率
△ 1.2
△ 0.8
△ 1.4
△ 0.7
△ 0.4
△ 0.9
△ 1.2
△ 1.3
△ 1.1
△ 1.3
△ 1.5
△ 1.2
△ 1.2
△ 2.2
△ 2.0
△ 2.3
△ 2.0
△ 1.9
△ 2.3
前年同月比
増 減 率
△ 4.4
△ 4.7
△ 3.2
△ 1.6
△ 2.2
△ 1.7
△ 1.0
△ 1.2
△ 1.2
△ 1.3
△ 1.8
△ 1.0
△ 1.0
△ 1.0
△ 0.7
△ 0.8
△ 0.7
△ 0.7
△ 1.4
東 京
135,174
131,381
125,915
127,252
124,445
124,278
125,078
124,861
124,624
125,315
126,390
125,432
124,884
123,525
123,320
122,917
123,115
124,253
123,066
四 国
11,098
11,060
10,974
10,901
10,823
10,788
10,850
10,867
10,808
10,856
10,893
10,838
10,799
10,800
10,676
10,653
10,628
10,664
10,673
前年同月比
増 減 率
△ 6.0
△ 2.8
△ 4.1
△ 2.8
△ 2.1
△ 1.2
△ 0.6
△ 0.9
△ 0.6
△ 0.7
△ 0.6
△ 0.1
△ 0.2
△ 0.7
△ 0.6
△ 1.4
△ 0.9
△ 0.2
△ 1.6
前年同月比
増 減 率
△ 0.6
△ 0.3
△ 0.7
△ 1.5
△ 1.3
0.3
0.8
0.4
0.4
0.4
△ 0.0
0.2
0.0
△ 0.2
△ 0.6
△ 1.3
△ 1.4
△ 1.4
△ 1.6
関 東
133,558
125,418
120,357
118,814
116,756
115,768
116,496
116,985
116,639
117,227
118,457
117,704
117,604
116,513
115,727
115,322
115,517
116,136
115,785
九州北部
12,030
11,797
11,551
11,736
11,575
11,389
11,462
11,434
11,416
11,478
11,553
11,453
11,469
11,406
11,283
11,177
11,184
11,261
11,197
前年同月比
増 減 率
△ 3.7
△ 6.0
△ 4.0
△ 2.7
△ 1.9
△ 1.1
△ 0.7
△ 0.2
△ 0.2
△ 0.0
△ 0.3
0.1
0.2
△ 0.2
△ 0.1
△ 0.5
△ 0.2
0.0
△ 0.6
前年同月比
増 減 率
△ 1.7
△ 1.9
△ 2.0
△ 0.1
0.2
0.0
△ 0.1
△ 0.3
△ 0.3
△ 0.7
△ 1.5
△ 0.6
△ 0.6
△ 1.4
△ 1.2
△ 2.4
△ 1.7
△ 1.2
△ 2.3
(備考)1.沖縄地区は全国に含めた。
2.東京・関東地区の2002年6月以降の増減率は、地区間の事業譲渡を調整して算出
108
当座貸越
信金中金月報 2004.10
北 陸
20,387
20,088
19,287
19,419
19,061
18,720
18,839
18,847
18,773
18,879
19,077
18,939
18,942
18,768
18,690
18,530
18,580
18,722
18,666
南九州
16,971
16,530
15,972
15,874
15,489
15,232
15,380
15,498
15,505
15,594
15,788
15,584
15,560
15,470
15,240
15,239
15,336
15,412
15,473
前年同月比
増 減 率
△ 2.0
△ 1.4
△ 3.9
△ 1.3
△ 1.1
△ 1.4
△ 0.9
△ 0.8
△ 1.0
△ 1.1
△ 1.7
△ 0.7
△ 0.4
△ 1.5
△ 0.7
△ 1.4
△ 0.7
△ 0.4
△ 0.9
前年同月比
増 減 率
△ 3.1
△ 2.5
△ 3.3
△ 4.2
△ 3.0
△ 1.1
△ 0.6
△ 0.1
△ 0.2
△ 0.0
△ 0.5
△ 0.5
△ 0.4
△ 0.1
△ 0.2
△ 0.1
0.6
0.7
0.6
東 海
123,154
121,487
119,553
120,414
118,573
117,141
118,000
118,739
117,963
118,694
120,157
118,923
118,736
118,715
116,999
116,643
116,943
117,776
117,196
全国計
687,159
661,879
639,805
638,093
626,342
619,691
624,062
625,431
623,438
626,852
633,013
627,637
626,366
622,364
617,120
614,368
615,321
619,714
616,348
前年同月比
増 減 率
△ 2.1
△ 1.3
△ 1.5
△ 0.2
△ 0.8
△ 0.3
0.0
0.2
0.1
0.1
△ 0.2
0.1
0.1
0.1
△ 0.3
△ 0.8
△ 0.1
0.3
△ 0.6
前年同月比
増 減 率
△ 3.4
△ 3.6
△ 3.3
△ 2.6
△ 2.1
△ 1.2
△ 0.6
△ 0.6
△ 0.5
△ 0.5
△ 0.7
△ 0.2
△ 0.2
△ 0.6
△ 0.6
△ 1.1
△ 0.7
△ 0.2
△ 1.2
1.
(6)信用金庫の貸出先別貸出金
(単位:億円、%)
貸出金計
企業向け計
年 月 末
製造業
建設業
2000. 3
687,157
前年同月比
構成比
増 減 率
△ 3.6
100.0
480,319
前年同月比
構成比
増 減 率
△ 4.5
69.8
106,973
前年同月比
構成比
増 減 率
△ 5.5
15.5
01. 3
661,876
△ 3.6
100.0
459,367
△
4.3
69.4
102,550
△ 4.1
15.4
78,299
△
5.4
11.8
02. 3
639,803
△ 3.3
100.0
435,084
△
5.2
68.0
94,053
△ 8.2
14.7
71,366
△
8.8
11.1
02. 9
12
629,549
638,092
△ 3.6
△ 2.6
100.0
100.0
423,123
430,011
△ 6.2
△ 4.9
67.2
67.3 b
90,024
91,584
△ 9.5
△ 7.6
14.2
14.3
67,526
67,981
△
△
9.8
9.2
10.7
10.6
03. 3
6
9
12
04. 3
6
△ 2.1
1.2
0.6
0.7
0.6
0.7
100.0
415,696
△
4.4
66.3
86,168
65,371
△
8.4
10.4
100.0
100.0
100.0
100.0
100.0
410,032
412,646
418,470
405,917
400,204
△
△
△
△
△
3.2
2.4
2.6
2.3
2.3
66.1
65.9
66.1
65.2
65.0
84,676
84,541
86,344
82,052
80,845
△ 7.9
7.1
5.5
5.1
4.7
4.5
13.7
619,689
625,429
633,012
622,492
615,319
13.6
13.5
13.6
13.1
13.1
62,121
63,252
64,107
61,905
59,001
△
△
△
△
△
7.3
6.3
5.6
5.3
5.0
10.0
10.1
10.1
9.9
9.5
626,340
年 月 末
卸売業
2000.
01.
02.
02.
3
3
3
9
12
03. 3
6
9
12
04. 3
6
年 月 末
40,922
39,320
36,758
35,401
36,235
34,255
33,818
34,004
34,927
33,063
32,441
12
04. 3
6
前年同月比
構成比
増 減 率
△
△
△
△
△
△
△
△
△
△
△
6.0
3.9
6.5
7.9
6.2
6.8
5.5
3.9
3.6
3.4
4.0
5.9
5.9
5.7
5.6
5.6
5.4
5.4
5.4
5.5
5.3
5.2
小売業
49,905
46,557
42,824
41,245
40,983
39,648
38,977
38,752
38,757
37,365
36,586
前年同月比
構成比
増 減 率
△
△
△
△
△
△
△
△
△
△
△
5.5
6.7
8.0
8.5
8.2
7.4
6.4
6.0
5.4
5.7
6.1
7.2
7.0
6.6
6.5
6.4
6.3
6.2
6.1
6.1
6.0
5.9
b
飲食店
16,654
15,622
14,524
14,108
14,008
13,653
13,415
13,300
13,145
12,723
12,526
△
△
△
△
△
前年同月比
構成比
増 減 率
△
△
△
△
△
△
△
△
△
△
△
3.9
6.1
7.0
7.0
7.1
5.9
5.7
5.7
6.1
6.8
6.6
2.4
2.3
2.2
2.2
2.1
2.1
2.1
2.1
2.0
2.0
2.0
不動産業
73,187
71,861
74,989
76,218
77,439
78,217
79,366
80,787
81,889
82,419
83,358
前年同月比
構成比
増 減 率
△
△
1.1
1.8
4.3
2.9
2.8
4.3
5.9
5.9
5.7
5.3
5.0
10.6
10.8
11.7
12.1
12.1
12.4
12.8
12.9
12.9
13.2
13.5
個 人
地方公共団体
サービス業 前年同月比
(各種サービス) 増 減 率 構成比
2000. 3
01. 3
02. 3
02. 9
12
03. 3
6
9
△
△
△
△
△
82,844
前年同月比
構成比
増 減 率
△ 5.5
12.0
前年同月比
構成比
増 減 率
前年同月比
構成比
増 減 率
83,373
80,128
77,123
△ 2.7
△ 3.8
△ 3.7
12.1
12.1
12.0
11,695
11,762
13,527
2.5
0.5
15.0
1.7
1.7
2.1
195,143
190,747
191,192
75,897
76,674
86,254
85,633
85,831
△ 4.4
△ 4.0
―
―
―
12.0
12.0
13.7
13.8
13.7
12,824
13,426
15,680
13,637
13,957
21.7
23.5
15.9
10.8
8.8
2.0
2.1
2.5
2.2
2.2
86,476
84,192
83,353
―
△ 2.3
△ 2.6
13.6
13.5
13.5
14,630
16,933
15,293
8.9
7.9
12.1
2.3
2.7
2.4
△
△
住宅ローン 前年同月比
構成比
増 減 率
1.5
2.2
0.2
28.3
28.8
29.8
121,253
123,501
127,347
5.0
1.8
3.1
17.6
18.6
19.9
193,602
194,655
194,964
196,020
198,825
1.1
1.4
1.9
2.6
2.6
30.7
30.5
31.1
31.6
31.7
130,858
133,267
134,672
136,530
139,484
4.2
4.6
5.7
5.9
6.5
20.7
20.8
21.5
22.0
22.3
199,911
199,641
199,822
2.7
2.3
1.9
31.5
32.0
32.4
142,207
141,966
143,772
6.7
5.4
5.3
22.4
22.8
23.3
(備考)1.日本銀行『業種別貸出金調査表』より作成。このため、『日計表』による(5)科目別貸出金、地区別貸出金の貸出金計と
は一致しない。
2.企業向け計には、海外円借款、国内店名義現地貸を含む。
3.2003年3月の業種分類の見直しに伴い、製造業の対象業種から「出版業」が除かれ、従来の「出版・印刷業」に代えて
「印刷業」のみが対象となったことから、増減率の算出においては、出版業・印刷業とも除いて算出した。また「サービ
ス業」は「各種サービス」となり、飲食店等を含む。
統 計
109
1.
(7)信用金庫の余裕資金運用状況
(単位:億円、%)
年 月 末
2000. 3
01. 3
02. 3
02.12
03. 3
6
03. 8
9
10
11
12
04. 1
2
3
4
5
6
7
8 p
年 月 末
2000. 3
01. 3
02. 3
02.12
03. 3
6
03. 8
9
10
11
12
04. 1
2
3
4
5
6
7
8 p
年 月 末
2000. 3
01. 3
02. 3
02.12
03. 3
6
03. 8
9
10
11
12
04. 1
2
3
4
5
6
7
8 p
現 金
14,277
14,238
19,391
19,941
17,492
15,863
14,438
15,148
13,522
14,936
18,842
15,566
14,080
16,040
15,783
15,772
15,385
15,848
15,075
金融機関
預 け 金
買入金銭
貸 付 等 うちコール う ち 債 券 貸 借
うち譲渡性
うち信金中金預け金
債
権
預 け 金
ロ ー ン 取引支払保証金
146,973(
8.5)
1,373
129,402( 12.8) 24,425
5,900
―
4,182
183,867( 25.1)
2,553
166,783( 28.8) 11,180
7,556
―
4,134
182,044(△ 0.9)
845
159,156(△ 4.5)
3,004
2,104
―
2,084
199,514(△ 0.3)
1,103
187,256(△ 0.9)
1,301
1,301
―
5,213
194,070(
6.6)
883
159,131(△ 0.0)
2,654
1,654
1,000
3,274
208,191(△ 0.5)
853
195,676(△ 0.8)
1,205
905
99
6,188
198,658(△ 2.9)
933
188,171(△ 2.3)
969
660
89
5,514
192,727(△ 2.3)
853
163,256(△ 6.1)
1,424
945
89
4,579
194,467(△ 1.4)
880
184,147(△ 0.8)
613
443
89
4,789
195,734(△ 0.7)
775
185,067(△ 0.4)
662
511
80
4,536
199,978(
0.2)
605
189,285(
1.0)
582
449
63
4,555
196,366(
1.9)
550
186,157(
2.2)
744
597
87
4,229
206,613(
4.0)
550
195,765(
4.1)
745
595
90
4,020
196,398(
1.1)
910
154,855(△ 2.6)
2,175
1,575
0
3,095
206,247(△ 0.6)
700
195,116(△ 0.5)
734
634
0
3,679
206,666(
2.0)
510
195,228(
1.9)
699
609
0
3,900
207,344(△ 0.4)
510
193,808(△ 0.9)
578
498
0
4,232
200,710(△ 0.0)
410
186,621(△ 1.8)
549
449
0
4,238
208,705(
5.0)
410
194,193(
3.2)
482
372
0
4,053
金銭の
信 託
4,725
4,057
3,103
3,223
2,463
2,673
2,691
2,601
3,332
3,318
3,297
3,262
3,257
2,729
3,085
3,090
3,089
3,167
3,164
535
198
188
164
197
263
287
272
255
223
208
197
168
159
175
147
152
150
135
有価証券
国
198,272(
221,566(
236,169(
241,184(
248,064(
258,273(
269,405(
270,957(
269,930(
269,250(
267,560(
267,647(
265,686(
268,761(
272,413(
273,624(
281,796(
283,389(
280,791(
投資信託
15,654
14,226
8,034
7,517
5,176
6,149
6,124
5,976
6,003
6,146
6,106
5,842
6,033
5,650
5,856
6,199
6,315
6,631
6,691
9.8)
11.7)
6.5)
0.9)
5.0)
11.6)
14.6)
12.9)
12.6)
12.1)
10.9)
9.2)
7.8)
8.3)
9.3)
8.2)
9.1)
8.0)
4.2)
外国証券
34,184(
36,743(
39,660(
43,306(
41,917(
45,895(
47,698(
47,723(
47,916(
48,223(
48,380(
48,153(
47,939(
46,121(
47,416(
47,777(
48,751(
48,992(
49,106(
37,723(
50,807(
58,911(
52,105(
62,730(
62,868(
69,681(
72,767(
71,365(
69,919(
68,790(
69,463(
68,346(
73,655(
74,183(
73,268(
78,190(
79,303(
77,171(
債
地方債
41.0)
34.6)
15.9)
3.7)
6.4)
27.7)
40.1)
34.0)
37.6)
34.2)
32.0)
25.5)
18.2)
17.4)
21.6)
20.8)
24.3)
21.6)
10.7)
18,507
20,554
24,778
24,942
24,914
25,476
26,033
26,233
26,288
26,116
26,237
26,550
26,480
26,755
27,427
28,306
29,244
29,426
29,603
社
債
86,672(△
92,497(
99,328(
107,394(
108,534(
112,671(
114,679(
113,131(
113,106(
113,566(
112,821(
112,450(
111,599(
110,483(
112,166(
112,462(
113,591(
113,222(
112,321(△
公社公団債
5.4) 13,679
6.7) 15,595
7.3) 21,166
5.0) 24,993
9.2) 27,267
12.0) 30,091
11.4) 31,457
8.8) 32,126
6.6) 32,526
6.6) 33,066
5.0) 33,364
3.4) 33,538
3.0) 33,597
1.7) 33,875
2.3) 35,282
0.7) 35,947
0.8) 37,211
0.2) 37,412
2.0) 37,170
余資運用 信金中金
その他の 貸
付 資 産 計 利 用 額
(B)
証
券 有価証券 (A)
16.0)
―
5
393,392
147,096
7.4)
346
5
439,243
166,783
7.9)
442
0
445,987
159,156
1.2)
633
0
470,543
187,256
5.6)
565
0
468,216
159,131
8.5)
619
0
492,659
195,676
10.6)
623
0
491,965
188,171
12.1)
627
0
487,710
163,256
12.1)
632
0
486,910
184,147
12.0)
634
0
488,662
185,067
11.7)
630
0
495,024
189,285
11.5)
616
0
488,014
186,157
11.6)
622
0
494,572
195,765
10.0)
643
0
489,360
154,855
10.4)
606
0
502,119
195,116
7.6)
612
0
503,901
195,228
6.2)
619
0
512,578
193,808
3.7)
625
0
508,054
186,621
2.9)
619
0
512,408
194,193
金融債
29,579
31,849
34,374
37,994
37,894
37,722
37,440
36,287
35,526
35,479
35,081
34,922
34,644
34,274
34,556
34,358
34,586
34,368
33,987
預貸率 (A)
/預金
67.3
63.7
62.2
60.8
60.4
58.7
59.0
59.2
59.2
59.3
59.2
59.3
58.9
58.9
58.0
57.8
57.4
57.8
57.4
38.5
42.3
43.3
44.9
45.2
46.6
46.5
46.2
46.2
46.2
46.3
46.1
46.5
46.3
47.2
47.4
47.8
47.4
47.7
その他
43,412
45,052
43,787
44,406
43,372
44,858
45,780
44,717
45,053
45,019
44,376
43,990
43,357
42,334
42,327
42,155
41,793
41,441
41,163
株 式
信金中金月報 2004.10
5,467
6,325
4,987
5,256
4,206
4,581
4,548
4,492
4,610
4,640
4,587
4,565
4,660
5,449
4,752
4,993
5,079
5,182
5,273
貸付信託
57
58
24
26
17
10
6
4
4
4
4
3
3
2
2
2
2
2
2
預証率 (B)
/預金(B)/(A)
19.4
21.3
22.9
23.0
23.9
24.4
25.4
25.6
25.6
25.4
25.0
25.3
25.0
25.4
25.6
25.7
26.2
26.4
26.1
(備考)1.( )内は前年同月比増減率
2.預貸率=貸出金/預金×100(%)、預証率=有価証券/預金×100(%)(預金には譲渡性預金を含む。)
110
商品有価
証
券
14.4
16.0
15.4
17.8
15.3
18.5
17.7
15.4
17.5
17.5
17.7
17.6
18.4
14.6
18.3
18.3
18.0
17.4
18.1
37.3
37.9
35.6
39.7
33.9
39.7
38.2
33.4
37.8
37.8
38.2
38.1
39.5
31.6
38.8
38.7
37.8
36.7
37.8
2.
(1)業態別預貯金等
(単位:億円、%)
年 月 末
信用金庫
国内銀行
前年同月比
増 減 率
(債券、信託
を含む) 前年同月比
増 減 率
大手銀行
(債券、信託
を含む) 前年同月比
増 減 率
うち預金
前年同月比 うち都市銀行 前年同月比
増 減 率
増 減 率
地方銀行
前年同月比
増 減 率
2000. 3
1,020,320
1.4
6,639,673
1.0
4,298,016
1.7
2,433,587
0.8
2,090,975
0.4
1,742,961
1.5
01. 3
1,038,043
1.7
6,641,871
0.0
4,288,153
△ 0.2
2,466,900
1.3
2,102,820
0.5
1,785,742
2.4
02. 3
1,028,198
△
0.9
6,790,535
2.2
4,416,792
2.9
2,699,067
9.4
2,308,919
9.8
1,813,848
1.5
02.12
1,047,505
△
1.2
6,701,855
1.0
4,323,991
1.3
2,666,605
5.4
2,292,954
5.9
1,806,287
0.5
03. 3
1,035,536
0.7
6,798,976
0.1
4,424,063
0.1
2,760,299
2.2
2,377,699
2.9
1,813,487
△ 0.0
1.1
6
1,054,744
1.8
6,644,211
△
1.5
4,239,210
△ 2.7
2,753,332
2.5
2,365,201
1.3
1,850,150
03. 8
1,056,653
2.3
6,653,041
△
0.4
4,268,686
△ 1.4
2,768,453
3.9
2,383,157
3.6
1,831,946
2.1
9
1,053,808
2.1
6,641,341
△
0.8
4,271,387
△ 1.6
2,770,950
3.7
2,385,332
3.5
1,816,601
1.4
10
1,050,779
2.2
6,580,434
△
0.9
4,241,987
△ 1.7
2,733,683
2.8
2,353,812
2.8
1,792,664
1.5
11
1,055,159
2.3
6,653,866
△
0.8
4,288,017
△ 1.7
2,767,642
2.3
2,385,727
2.3
1,816,427
1.6
1.0
12
1,068,100
1.9
6,673,286
△
0.4
4,289,361
△ 0.8
2,757,888
3.4
2,368,299
3.2
1,825,041
04. 1
1,055,949
2.4
6,651,254
△
0.4
4,302,101
△ 1.2
2,760,911
2.6
2,378,636
2.9
1,799,432
1.6
2
1,061,010
2.5
6,687,936
△
0.5
4,326,416
△ 1.4
2,773,222
1.6
2,389,622
1.7
1,809,568
1.8
3
1,055,175
1.8
6,798,238
△
0.0
4,420,297
△ 0.0
2,842,197
2.9
2,456,008
3.2
1,825,541
4
1,063,080
1.7
6,810,122
2.3
4,427,542
3.6
2,825,196
1.5
2,443,326
1.7
1,829,132
5
1,061,345
1.6
6,834,449
2.6
4,448,122
4.0
2,850,634
2.4
2,469,833
2.8
1,833,797
6
1,070,958
1.5
6,820,754
2.6
4,413,657
4.1
2,801,267
1.7
2,415,082
2.1
1,849,677
7
1,069,663
1.8
6,799,707
2.4
4,411,376
3.4
2,807,968
1.7
2,420,989
2.0
1,832,415
8
p 1,071,058
1.3
年 月 末
第二地銀
信用組合
前年同月比
増 減 率
労働金庫
前年同月比
増 減 率
農業協同組合
前年同月比
増 減 率
郵便貯金
前年同月比
増 減 率
0.6
△
0.1
0.0
△
0.0
0.4
預貯金等合計
前年同月比
増 減 率
前年同月比
増 減 率
2000. 3
598,696
△
5.1
191,966
△
4.9
111,791
4.4
702,555
1.8
2,599,702
2.9
11,266,007
01. 3
567,976
△
5.1
180,588
△
5.9
117,212
4.8
720,944
2.6
2,499,336
△ 3.8
11,197,994
1.4
02. 3
559,895
△
1.4
153,541
△ 14.9
125,200
6.8
735,373
2.0
2,393,418
△ 4.2
11,226,265
02.12
571,577
△
0.3
149,872
△ 10.8
134,012
5.5
751,811
0.7
2,359,130
△ 1.8
11,144,185
03. 3
561,426
0.2
148,362
△
3.3
131,619
5.1
744,202
1.2
2,332,465
△ 2.5
11,191,160
△
0.3
△
△
0.6
0.2
0.0
6
554,851
△
1.2
150,940
0.6
136,476
2.6
757,417
1.6
2,323,381
△ 2.8
11,067,169
△
1.2
03. 8
552,409
△
1.0
151,677
1.4
135,935
3.1
757,023
1.8
2,315,280
△ 2.7
11,069,609
△
0.4
9
553,353
△
1.8
151,772
1.9
135,179
3.3
752,178
1.8
2,300,064
△ 2.7
11,034,342
△ 0.6
10
545,783
△
1.8
151,407
2.1
134,787
3.1
756,441
1.9
2,301,184
△ 2.7
10,975,032
△ 0.7
11
549,422
△
2.1
151,575
2.2
134,809
3.4
757,171
2.0
2,290,355
△ 2.6
11,042,935
△ 0.6
12
558,884
△
2.2
153,408
2.3
137,941
2.9
766,812
1.9
2,300,362
△ 2.4
11,099,909
△ 0.3
04. 1
549,721
△
1.6
152,296
2.7
137,193
3.1
760,884
2.1
2,294,158
△ 2.5
11,051,734
△
2
551,952
△
1.5
152,828
2.9
137,276
3.3
763,654
2.1
2,295,114
△ 2.3
11,097,818
△ 0.4
3
552,400
△
1.6
152,526
2.8
135,713
3.1
759,764
2.0
2,273,820
△ 2.5
11,175,236
△ 0.1
4
553,448
0.4
153,126
2.3
137,973
2.9
763,175
1.9
p 2,272,153
△ 2.5
p11,199,629
1.2
5
552,530
0.5
152,967
2.1
137,533
3.0
763,045
1.9
p 2,257,389
△ 2.6
p11,206,728
1.3
6
557,420
0.4
154,072
2.0
140,395
2.8
772,433
1.9
p 2,261,257
△ 2.6
p11,219,869
1.3
7
555,916
0.9
140,296
3.0
p 2,247,216
△ 2.8
p 2,241,378
△ 3.1
8
0.3
(備考)1.日本銀行『金融経済統計月報』、日本郵政公社ホームページ等より作成
2.大手銀行は、国内銀行−(地方銀行+第二地銀)の計数
3.国内銀行・大手銀行には、全国内銀行の債券および信託勘定の金銭信託・貸付信託・年金信託・財産形成給付信託を含
めた。
4.預貯金等合計は、単位(億円)未満を切り捨てた各業態の預貯金残高の合計により算出した。
統 計
111
2.
(2)業態別貸出金
(単位:億円、%)
信用金庫
年 月 末
大手銀行
前年同月比
増 減 率
地方銀行
前年同月比
増 減 率
都市銀行
前年同月比
増 減 率
第二地銀
前年同月比
増 減 率
信用組合
前年同月比
増 減 率
前年同月比
増 減 率
2000. 3
687,159
△
3.4
2,788,233
△
1.0
2,151,274
1.9
1,340,878
△ 3.0
505,738
△ 4.0
142,433
△ 7.6
01. 3
661,879
△
3.6
2,746,303
△
1.5
2,133,507
△ 0.8
1,357,418
1.2
465,931
△ 7.8
133,612
△ 6.1
02. 3
639,805
△
3.3
2,601,800
△
5.2
2,035,627
△ 4.5
1,359,864
0.1
444,432
△ 4.6
119,082
△ 10.8
02.12
638,093
△
2.6
2,519,538
△
5.5
2,135,044
3.0
1,354,958
△ 0.5
441,929
△ 2.0
93,079
△ 24.8
03. 3
626,342
△
2.1
2,451,214
△
5.7
2,072,578
1.8
1,352,514
△ 0.5
429,130
△ 3.4
91,512
△ 23.1
6
619,691
△
1.2
2,379,564
△
6.6
2,006,581
△ 7.4
1,330,607
△ 0.1
413,407
△ 5.1
90,545
△ 13.6
03. 8
624,062
△
0.6
2,359,386
△
7.2
1,986,811
△ 8.1
1,339,580
0.5
415,777
△ 4.7
91,103
△ 7.4
9
625,431
△
0.6
2,375,563
△
4.5
1,993,783
△ 5.2
1,345,276
0.6
416,370
△ 4.3
91,511
△ 5.1
10
623,438
△
0.5
2,336,226
△
6.4
1,962,538
△ 7.1
1,335,550
0.4
414,822
△ 4.3
91,409
△ 4.9
11
626,852
△
0.5
2,356,647
△
6.2
1,985,128
△ 6.8
1,340,065
0.2
417,592
△ 4.1
91,770
△ 4.7
△ 0.7
12
633,013
△
0.7
2,361,749
△
6.2
1,991,686
△ 6.7
1,352,962
△ 0.1
423,823
△ 4.0
92,384
04. 1
627,637
△
0.2
2,341,942
△
6.1
1,971,502
△ 6.7
1,346,007
0.3
420,122
△ 3.6
91,927
△ 0.3
2
626,366
△
0.2
2,330,705
△
5.6
1,951,514
△ 6.6
1,347,901
0.4
419,680
△ 3.5
91,897
△ 0.3
3
622,364
△
0.6
2,344,621
△
4.3
1,958,921
△ 5.4
1,352,081
△ 0.0
420,236
△ 2.0
91,234
△ 0.3
4
617,120
△
0.6
2,292,763
△
4.6
1,912,736
△ 5.9
1,337,101
△ 0.0
414,732
0.2
90,688
△ 0.2
5
614,368
△
1.1
2,287,430
△
4.1
1,913,218
△ 5.1
1,325,597
△ 0.6
412,920
△ 0.1
90,416
△ 0.4
6
615,321
△
0.7
2,280,592
△
4.1
1,910,458
△ 4.7
1,324,230
△ 0.4
413,043
△ 0.0
90,456
△ 0.0
7
619,714
△
0.2
2,283,623
△
2.6
1,915,566
△ 2.9
1,331,384
△ 0.2
415,252
0.1
616,348
△
1.2
前年同月比
増 減 率
うち中小
企業向け
前年同月比
増 減 率
8
年 月 末
p
労働金庫
農業協同組合
前年同月比
増 減 率
公的金融機関
前年同月比
増 減 率
うち住宅
金融公庫
合 計
前年同月比
増 減 率
前年同月比
増 減 率
2000. 3
73,830
4.0
220,863
0.2
1,729,489
8.0
297,448
4.3
745,413
3.3
7,488,623
0.0
01. 3
76,213
3.2
220,078
△
0.3
1,731,885
0.1
293,556
△ 1.3
759,220
1.8
7,393,319
△ 1.2
02. 3
81,054
6.3
217,357
△
1.2
1,693,486
△ 2.2
288,025
△ 1.8
726,516
△ 4.3
7,156,880
△ 3.1
02.12
85,122
7.8
213,487
△
1.7
1,645,069
△ 3.7
284,652
△ 2.4
690,486
△ 7.0
6,991,275
△ 3.7
03. 3
87,266
7.6
215,147
△
1.0
1,617,238
△ 4.5
279,743
△ 2.8
671,999
△ 7.5
6,870,363
△ 4.0
6
87,930
8.3
213,430
△
0.7
1,606,884
△ 4.6
278,349
△ 2.4
659,966
△ 8.1
6,742,058
△ 4.1
03. 8
88,882
8.5
214,368
△
0.5
1,583,101
△ 5.1
276,547
△ 1.6
642,128
△ 9.1
6,716,259
△ 4.1
△ 3.0
9
89,637
8.3
214,601
△
0.4
1,569,865
△ 5.2
277,987
△ 1.6
634,452
△ 9.5
6,728,254
10
90,443
8.1
214,696
△
0.1
1,560,756
△ 5.3
275,448
△ 1.4
629,594
△ 9.7
6,667,340
△ 3.8
11
91,205
7.7
214,889
0.0
1,559,932
△ 5.2
277,480
△ 1.3
626,931
△ 9.7
6,698,952
△ 3.7
12
91,749
7.7
213,529
0.0
1,556,901
△ 5.3
279,855
△ 1.6
622,745
△ 9.8
6,726,110
△ 3.7
04. 1
91,394
7.6
212,930
0.1
1,546,860
△ 5.1
276,757
△ 1.1
618,112
△ 9.7
6,678,819
△ 3.5
2
91,794
6.8
213,253
△
0.0
1,538,354
△ 5.1
275,699
△ 1.3
612,729
△ 9.7
6,659,950
△ 3.3
3
92,664
6.1
214,871
△
0.1
1,531,569
△ 5.2
274,726
△ 1.7
605,947
△ 9.8
6,669,640
△ 2.9
4
92,589
5.7
214,398
0.1
1,524,592
△ 5.2
272,383
△ 1.8
601,913
△ 9.8
6,583,983
△ 2.8
5
92,590
5.5
214,406
0.2
1,527,198
△ 5.4
270,630
△ 2.4
601,093
△ 9.8
6,564,925
△ 2.9
6
92,663
5.3
214,190
0.3
1,522,584
△ 5.2
272,745
△ 2.0
595,953
△ 9.6
6,553,079
△ 2.8
7
92,746
5.1
1,518,198
△ 4.7
277,180
0.0
589,569
△ 9.4
8
(備考)1.日本銀行『金融経済統計月報』より作成
2.大手銀行は、国内銀行−(地方銀行+第二地銀)の計数
3.公的金融機関は、日本政策投資銀行、国際協力銀行、国民生活金融公庫、住宅金融公庫、農林漁業金融公庫、中小企業
金融公庫、公営企業金融公庫、沖縄振興開発金融公庫、商工組合中央金庫の合計
4.公的金融機関のうち中小企業向けは、国民生活金融公庫、中小企業金融公庫、商工組合中央金庫の合計
5.合計は、単位(億円)未満を切り捨てた各業態の貸出金残高の合計により算出した。
112
信金中金月報 2004.10
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ーを下層のページにも表示し、使いやすくしたほ
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内容も、従来からの各種レポート、信金中金月
報等の掲載や当研究所業務の概要、講演内容、活
動記録などの紹介に加え、「信金統計」英語版
Statistics of Shinkin Banks やサイトマップを掲載
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このホームページのリニューアルにより、地域
金融、中小企業金融、協同組織金融等の当研究所
の研究調査活動の成果物が、これまで以上にご利
用しやすくなります。
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http://www.scbri.jp/
です。
ISSN 1346−9479
2004年( 平 成16年 )
10月1日 発行
2004年10月号 第3巻 第11号( 通 巻379号 )
発 行 信金中央金庫
編 集 信金中央金庫 総合研究所
〒1 0 4−0031 東京都中央区京橋3−8−1
T E L 0 3( 3 5 6 3 )7 5 4 1 F A X 0 3( 3 5 6 3 )7 5 5 1
<本誌の無断転用、転載を禁じます>
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