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組合活性化のために組合青年部 ・女性部が取り組むべきこと
組合活性化のために組合青年部 ・女性部が取り組むべきこと (株)茨城総合研究所専務取締役 経済産業コンサルタント 大 1.青年部・女性部についてのいくつかの課題 提起 ~実態調査結果を読んで~ (1)本県の組合青年部・女性部活動は「低迷してい る」のか 今回の調査結果によると、回答企業における組合 青年部の設置割合は約 2 割で、若手経営者等による 準青年部的なグループを併せても 3 割に満たない状 況である。つまり、約 7 割の組合で青年部活動が行 われていないのが現状となっている。 さらに、女性部については、 「設置している」と 「時々集まる」を併せても 1 割を少々超える程度に 留まっている。これほどまでに青年部・女性部の活 動が低迷している(活発でない)理由はどこにある のだろうか。 (2)本県青年部・女性部は「魅力がない」のか 調査結果では、 青年部を設置しない理由として 「対 象者(後継者等)が少ない、あるいはいない」こと や「必要性を感じない」が多くあげられている。規 模別に青年部の有無をみると、 「30 人以下」の組合 で、青年部を設置している割合が 1 割に満たないの に対し、それ以上の規模では 3~4 割が「設置してい る」と回答していることから、 「対象者が少ない」た めに青年部を設置していない(あるいはできない) という点は仕方ないだろう。問題は、 「必要性を感じ ない」という理由である。 調査結果では、青年部の設置目的として最も多く あげられたのが「親睦と交流」であった。また、青 年部の活動内容としては、やはり「親睦と交流」が トップにあげられている。 また、 女性部についても、 活動内容は青年部と同様の傾向であった。 この結果から、回答企業における青年部・女性部 の多くは、 「親睦と交流」 を主たる目的のひとつとし、 実際の活動も「親睦と交流」を中心にしているとい う現状が浮かび上がってくる。 こうした現状に対し、 場 泰 博 多くの組合員は 「必要性を感じていない」 のである。 この辺に現在の青年部・女性部の抱える問題点があ りそうだ。 多くの組合員企業の経営者は、 「親睦と交流」 を中 心とした、所謂「仲良しクラブ」的な青年部・女性 部は魅力がなく、 「参加するだけ時間の無駄」 だと考 えてはいないだろうか。 青年部の運営上の問題点として、 「部会員数の減 少」や「部会員に時間的余裕がない」 、 「活動のマン ネリ化」 、 「会議等への出席率が低い」 、 「加入資格は あるが加入しない者がいる」といった点があげられ ている。これらはすべて、青年部・女性部の活動に 魅力がないことが原因であると考えられる。魅力が ないために、部会員は辞める、新たな参加者がいな い、会議にも参加しない、といった現象が起きる。 また、 「活動のマンネリ化」も魅力のなさに拍車をか けているのだろう。 (3)魅力ある青年部・女性部とは このような現状では、青年部・女性部の活動を活 性化するのは難しい。しかし、めまぐるしく変わる 経営環境のなかにあって、組合、企業は若い力を必 要としているのである。青年部・女性部がそうした 人材を育成する場となり、また活躍の場となり得る のは事実である。手をこまねいて現状を眺めている だけでは、困難な現状を乗り切ることはできない。 では、青年部・女性部の活性化のためには、どう すれば良いのだろうか。魅力ある青年部・女性部の 条件とは何だろうか。以下の先進事例を通じて「魅 力ある青年部・女性部」の条件を探ってみたい。 2.全国先進進事例にみる青年部・女性部の事 業活動と特徴 全国には各県青年中央会に入会している組合青年 部を合せても約 2500 あり、部員規模的にも 300 人近 くものからひと桁台のものまでさまざまである。ま た同様に組合女性部についても約 600 あり、規模的 にも 200 人近くものからひと桁台のものまで様々で ある。それぞれが各種の事業活動を行っている。そ こで、既存資料から全国の先進事例を、知りうる範 囲で組織の設立経緯や運営の仕組みや事業活動等か ら見てみると、以下の 5 つタイプに分けられるよう だ。 (本稿執筆に際し、瀬賀孝子著「あなたの組合も 女性部で活性化を」 『にいがた中小企業情報』 No.444 を始め、全国中小企業団体中央会の既存資料を参考 にさせて頂いたことをお断わり申し上げたい。) (1)明確な問題意識や活動目標をもつ組織 ①青年部の事例 全国の商店街振興組合(以下(振)と略す)では、 CI事業やアーケード建設等のまちづくりを機に商 店街の生き残りをかけて青年部が結成された例は多 い。青年部が定期的に集客イベントを展開し、消費 者の好評を博す一方で、同時に組合員の活動も一層 活発になり、若い後継者も定着傾向にあるところが 多い。また松山青年塾のように中心市街地がもつ社 会的機能を認識し、商店街全体を経営する発想で、 商店街の諸問題を解決していこうとするものもある。 自主独立型の青年部をめざし、組合事業をより円滑 化・活性化させる創造的事業を研究、実現化してい る佐賀県貨物自動車事業協同組合(以下(協)と略 す)青年部がある。青年部が中心となりプロドライ バー教本や実践的採用教育マニュアルを刊行し、組 合員企業や全国同業者に愛用されているそうだ。 ②女性部の事例 全国的に見て、女性の感覚や感性が事業経営に必 要だと感じている業界は少なくない。そういった時 代の変化を女性自ら感じ取って、現状打開に対する 明確な問題意識、活動目標をもち、ユニークなネー ミングをするなどして女性部を結成、組合の活性化 に貢献している例は多い。 石川県の織物産地の小松織物工業(協)では、組 合員の奥さん達が、男性中心の産地のものづくりに 女性の感性を活かしたいと女性部ラ・クロス・アミ カを発足させた。やがてこの女性部はその多彩な活 動を通じて、組合内外で高く評価されるようになる と、 組合が女性会員の意見を取り入れるようになり、 組合や産地の活性化に一役かっているという。 岐阜県眼鏡商業(協)では、質の高い女性従業員 を育てようと開催されたレディースフォ-ラムの成 功を契機に女性部が結成された。各会員には良い店 づくりのための幅広い教養や接客術が身につき、女 性の感覚を活かした自信とやる気も得られ、各店舗 の活性化につながっている。 東京きのも染洗(協)では、きもの文化や和服需要 の振興を図ろうと組合員の奥さん方を中心に婦人部 が結成された。以来、積極的な事業展開を図って、 組合内外にアピ-ルしてきたが、こうした婦人部の 活動が組合自体の団結を呼び、業界内外に組合やそ の婦人部の存在を広く知らしめる結果となった。 また別府観光旅館(協)では、経営者としての女 将の資質向上を目的として女将の会が結成された。 以来、 奥の仕事から表に立つ顔へ移った女将の会は、 各種事業を通じて「知・心、技のレベルアップ」を はかり、組合や旅館経営の活性化に貢献している。 以上の事例と比べてもより男性中心の職場、業界 で、男女共同参画社会への時代変化の流れを感じな がら、内助の功で組合の活性化に一役かっている女 性部もいくつかある。 (2)有能で実践型のリーダーをもつ組織 ①青年部の事例 奈良県家庭薬配置商業(協)青年部会は、優秀な 青年部長の強力なリーダーシップのもと、組合員の 子弟のほか従業員が多数含まれ、また業態の特性か ら県外に勤務している部会員も多数参加する大所帯 の青年部会をまとめあげている。次世代の業界人に ふさわしい能力を身につけるべく、 研修や交流事業、 福祉活動を長年にわたり展開しているという。 熊本県葬祭事業(協)青年部では、後継者の成長 やUターン等による世代交代が進み、積極的に経営 改革をめざす意識の高い意欲ある若手リーダーのも とで、四つの委員会を組織して青年部の再編に着手 した。事業活動としては、消費者ニーズ調査を実施 したり、葬祭手引書などパンフレットを作成・配布 して業界PRに積極的に取り組んでいるという。 ②女性部の事例 全国初の女性だけの異業種組合に(協)浅草おか みさん会がある。活動の歴史は古く、いうなれば組 合女性部の草分け的存在だ。理事長の富永照子さん が同会二代目会長に就任してから、タウン誌発行、 ジャズフェスティバル興行など事業活動が多様にな った。全国商店街おかみさん交流サミットの中心的 存在になって以来、人物・情報の総合拠点として全 国各地とネットワークを結ぶようになった。マスコ ミにも大きく取り上げられ、全国の女性たちに大き な影響を与えてきた。 (3)参加・運営しやすい仕組み・場・環境をもつ組 織 ①青年部の事例 (協) 山梨県鉄構工業会青年部会や石川県電気工事 工業組合青年部では、各県内をいくつかの地域支部 や総代区域に分けて、それらを事業活動の行動単位 としている。そうすることで、地域密着型の事業活 動を展開したり、事業推進役の総代を設けて青年部 活動を効率的に推進している。 青年部員を6つの班に分け、持ち回りで月例会を 実施している青年部もある。例会ごとの予算が決め られ、 その予算範囲内であれば活動は何でもできる。 定例化することを極力避け、班の構成員も適時組み 替え、事業計画にもこだわらず、自由な発想で例会 活動を実施してる。 親組合の青年部へのニーズと青年部員の能力向上 が合致し、活性化している和歌山ニット商工業(協) 青年部がある。青年部内部では固定組織を設けず、 事業テ-マに合わせ青年部員の中から適任者を選び、 参加させるなどの弾力的運営が成功要因だといわれ ている。 ②女性部の事例 青年部員の妻はすべて入会し、あくまで青年部を 補佐する青年部の一委員会として位置づけられた郡 山市大町商店街(振)青年部レディース委員会があ る。組合員の殆どが同一商店街に居住しており、普 段の付き合いも多く、ごく自然にレディース委員会 の結成が行われた。現在では単にイベントを補佐す るだけでなく、独自の企画や主体的に活動する委員 会へと成長している。 瀬戸大橋の開通を記念した誘客キャラバン隊に全 面協力した女将さんたちが、この経験を契機に組合 の委員会活動に参加するようになり、自然発生的に 組合女性部が結成された例もある。 (4)門戸を広げ、組合内外との連携強化に努める組 織 ①青年部の事例 後継者不足や青年層減少で青年部活動に停滞の兆 しが見えかけた時期に、青年部資格や活動方針の見 直しを図って活性化した青年部もある。京都府塗装 商業(協)では青年部を発展的に解消して、組合員 企業の全従業員が年齢・性別を問わず参加できる組 織に再編した。沖縄市管工事業(協)青年部若水会 でも会員資格を拡大し、各事業所の幹部候補生を積 極的に青年部活動に参画させていった。 両組織とも、 そうすることで青年部活動の活性化を図ってきた。 那覇市観光ホテル旅館(事)青年部では関連業界 からも賛助会員としての参加者があり、当業界の現 状を多方面から分析し、課題解決に向けて協力しな がら取り組んでいる。青年部の活性化は組合の活性 化であり、当業界の発展は関連各業界の発展にも寄 与することになり、今後とも積極的に協力・連携す ることにしている。 またネットワーク拡大のための対外交流事業とし て、 県内外の関連業界青年部や地元経済団体青年部、 青年会議所等と積極的に交流している青年部も少な くない。 ②女性部の事例 前述の浅草おかみさん会の影響を受けて結成され、 同会とネットワ-クを結び、さらにそのネットワー クの輪を広げている女性部は少なくない。沼津あげ つち商店街(振)あげつちおかみさん会や伏見大手 筋商店街(振)あてらの会がその例だ。特にあてら の会は京都開催の全国商店街おかみさん交流サミッ トに中心的な役割を果たして、 成功に導いた。 以来、 京都府内の各地におかみさん会が創設され、同会が 事務局的な役割を果たしながら、活動の輪のネット ワークを広げている。 (5)下部組織を育む支援環境(サポーター)をもつ 組織 ①青年部の事例 異業種企業で構成される団地組合の鳥取鉄工セン ター(協)では、青年部独自の研究開発プロジェク トにより組合員企業の技術を融合させた製品の開発 に成功した。この開発活動の成果が生まれた背景に は、組合や組合員が自主的で自由な青年部活動に対 して積極的な活動支援と資金支援を続けてきたこと、 組合員の役員や企業の中核になっている青年部卒業 生から多くの助言を受けることができたことが大き な要素となっている。 名古屋市指定水道工事店(協)では、後継者難に よる組合脱退者続出の経験を教訓に当時の理事長が、 魅力ある業界づくりのため青年層の意見を積極的に 取り入れ、親組合と協力し合う組織として結成を呼 びかけた。そうして創設された青年部は、企業発展 に直結する実利的事業に取り組んで、管工事業者用 情報マップを作成し、 販売に至る成果を生み出した。 このほか青年部員の得意分野の事業(例えば、情報・ 新技術事業)の企画から運営までの多くを青年部に 任せている組合は多い。資金面でも別枠で補正予算 を計上するなど、親組合の支援が青年部の積極的な 活動を支えている事例は多い。 ②女性部の事例 富山市の(協)中央通商栄会では、郊外型大型店 の出店、組合員の高齢化や青年部員の減少等により 商店街活動が停滞するなか、組合理事長の要請を受 けて女性部さんぽーろママsun会が結成された。 以来、女性の感性を活かし、商店街を花と緑で飾る など柔かな風をおこしている。また女性側から組合 に女性部をつくることを要請したケ-スもある。伹 尼崎工業会では、経営者婦人から情報交換や勉強す る会を作ってほしいと要請され、女性部AE会を結 成したという。 3.組合活性化のために組合青年部・組合女性 部が取り組むべきこと ここでは、組合活性化のために組合、青年部員や 女性部員あるいはその予備軍たる人々が今後取り組 むべき 5 つの事柄について述べてみたい。 (1)活動目標の明確化にし、将来構想を構築せよ 青年部や女性部の部員各人が現状に対する問題意 識をもち、また現状打開に対する明確な目的意識を もって、各種の事業活動を行うことが必要である。 また時代の流れを読み取り、現在の事業分野の再構 築を視野に入れ、将来の事業分野についての議論を 深めたり、構想力を養うことが必要であろう。 (4)組合青年部・女性部において優秀なリーダーを 求め、育てよ 組織として明確な活動目標をもって事業活動をす る場合に必要となるのが、優秀なリーダーである。 優秀なリーダーとは組織員の人望を集め、彼らの意 見をまとめ、理念を形成したり将来ビジョンを構想 し、そのために「今しなければならないこと」を組 織員に説得して実践させる指導者のことだ。そうい ったリーダーに恵まれることが必要だが、そうでな い場合には、優れたリーダーを捜したり、時間をか けてでも育ていくことが必要だ。 (3)参加・運営しやすい仕組みづくり、場づくり、 環境づくりに努めよ 理想をいえば、日常茶飯事のように自然な形で青 年部・女性部活動に参加できる方法やその仕組み、 運営方法を考えることが重要である。事業内容、活 動単位、活動地域、会合場所や雰囲気、会費などに ついての青年部員や女性部員のニーズを推し量って、 特に制約の多い会員(例えば、遠隔地に住む会員、 家庭の事情をもつ主婦会員など)でも、組織活動に 参加しやすい仕組みや環境づくりに努めることが必 要である。 (4)門戸を広げ、組合内外での協力・連携に努めよ 組織員一人ひとりが元気に活性化しても、それが 伝播して組織全体が活性化することはなかなか容易 ではない。ひとりの元気が全体の活性化を導く媒体 はネットワーキングといわれる仲間づくりである。 そこに組合とか青年部・女性部の存在意義があるわ けだが、所謂ネットワーク時代といわれる今日にあ っては、発想や活動の範囲を自分たちの業界や組合 青年部・女性部内だけに固執せず、広く会員資格の 門戸を開放したり、可能な限り広く、多くの個人、 組織、ネットワークと協力・連携して自己啓発や切 磋琢磨に努めることが必要だろう。 そうすることで、 会員個人の元気は仲間(青年部・女性部)の元気と なり、仲間の元気は組織全体(組合・業界)の元気 に結びつく善循環の仕組みが産業界に構築されるの ではないだろうか。 (5)親組合は青年部・女性部スポンサーからパート ナーへ 青年部・女性部の活性化は、それらが組合全体で どのように位置づけられているかで決まるともいわ れる。青年部や女性部は親組合の下部組織であって も、過度の主従関係に陥らず、つかずはなれずの関 係が望ましい。勿論ある程度の成長期間、物心両面 で支援を続けていく必要はあろう。 しかし青年部や女性部は親組合に過度の依存をす ることなく、商人、企業人として日々精進して、可 能な限り早い時期に実力をつけ、対等の関係で、新 しい発想をもち、新たな事業分野への挑戦を提案し ていく位の気概が必要だろう。そういう段階をめざ して、親組合も青年部や女性部を次世代の経営者の 集まり、同時代の経営パートナーと位置づけ、青年 部・女性部のスポンサーやサポーターではなく、自 らのパートナーと考えていくべきだろう。