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児童期前半の性役割態度
児童期前半の性役割態度 ○山崎利紘・相良順子 (独立行政法人国立病院機構・聖徳大学児童学部) キーワード:性役割,態度,児童期前半 Attitudes towards gender roles among young children Toshihiro YAMAZAKI, Junko SAGARA (National Hospital Organization, Faculty of Child Studies, Seitoku University) Key word: Gender, Attitudes , Young children 問題と目的 子とも同士の会話から、「男の子のするもの」「女の子の もの」というジェンダーに関するステレオタイプの言動を 耳にすることがよくある。子どもの性役割態度について、 相良(2000)は小学校低学年から高学年にかけて態度が柔 軟になることを報告している。本研究では、現在の児童期 前半(2010)の子どもが、どういう性役割態度をもってい るか検討する。 方法 調査対象:関西の某都市の学童クラブに通う小学生、1 年 生 22 名(男子 13、女子 9)、2 年生 25 名(男子 14、女子 11)、3 年生 15 名(男子 5、女子 10)の計 62 名。 調査内容:子どもの日常生活で性役割態度を調べるため、 家庭に関する 5 項目、職業での性役割に関する 6 項目を (Table1 参照)設けた。各項目については、「男の人(子)」が したほうがいいか、 「女の人(子)」がしたほうがいいか、そ れとも「男女両方」がしたほうがよいかの 3 つの選択肢を 設け、各項目について回答してもらった。 「男女両方」と答 えた場合に、性役割態度が柔軟であると考える。また、日 常的に子どもがよく遊んでいる遊び 12 項目(野球・ドッジ ボール・一輪車など)について「男の人(子)の遊び」か「女 の人(子)」か「両方」かの 3 つの選択肢で回答を得た。さ らに、持ち物の色に対しても「男子」 「女子」を分けたステ レオタイプにとらえる言動を耳にすることから色の好き嫌 いについても 10 色の選択肢を設け択一式で回答を得た。 結果と考察 家庭・職業の性役割:家庭に関する性役割では、「赤ちゃ んの世話をする」について、 「女の人(子)」と回答した人が 71.0%と高かった。 「男女両方」と回答した割合が高かった のは「家族のために働く」(80.6%)、「車の運転をする」 (67.7%)、「料理をする」(59.0%)、「家のそうじをする」 (58.1%)であった。「男の人(子)」と回答した割合が高か った項目はなかった。一方、職業に関する性役割において、 「男の人(子)」と回答した人の割合が高かった項目は、 「ト ラックの運転手」(79.0%) 、「電車の運転手」(64.5%)であ った。 「女の人(子)」と回答した人の割合が高かったのは、 「ファッションモデル」(80.6%)、 「花屋さん」(75.8%)、 「看 護師さん」(66.1%)であった。 次に、本研究の 2 年生で「両方」と回答した人の割合を、 相良(2000)の 2 年、4 年、6 年生を対象とした性役割態度を 調査した 2 年生の結果と比較した(Table1)。職業での性役割 では、大きな違いは見らなく、職業では今回の対象児もな お、ステレオタイプなとらえ方をしていることが明らかと なった。しかし、家庭に関する性役割では、相良(2000)に 比べ、「赤ちゃんの世話をする」を除き、「男女両方」と回 答した割合が高く性役割を柔軟に考えている傾向が示され た。この結果は、社会での家事役割観の変化に加え、対象 者が学童クラブに通う小学生であり、両親が共働きの世帯 であったためであると考えられる。 また、各項目について、学年によって「男女両方」と答 える人の割合が変化するのか「男女両方」とそれ以外の反 応にわけて検定した。その結果、 「ファッションモデル」に ついて 3 年生になると 1,2 年生より「男女両方」と認識す る割合が高くなった(χ(2)=13.8,p<.001)。学年が上がるにつ れ、考え方が柔軟になっていくことが示唆される。 Table1 「男女両方」と回答した比率 家 庭 職 業 家族のために働く 料理をする 家のそうじをする 赤ちゃんの世話をする 車の運転をする 電車の運転手さんになる コックさんになる 花屋さんになる トラックの運転手さんになる 看護師さんになる ファッションモデルになる 山崎(2009)n=62 相良(2000)・2年生n=130 80.6% 41.8% 59.0% 34.0% 58.1% 34.8% 25.8% 38.2% 67.7% 15.6% 33.9% - 49.2% - 22.6% 21.3% 16.1% 10.3% 29.0% - 12.9% 10.4% 遊びの性役割:子どもがよく遊んでいる遊び 12 項目のう ち、 「男の子」と回答した割合が 6 割を超えた項目は「野球」 (70.9%)「サッカー」(69.4%)であった。 「女の人」と回答し た割合が 6 割を超えたのは、 「一輪車」(72.6%)「人形遊び」 (64.5%)であった。「両方」と回答した割合が 6 割を超えた のは、 「おにごっこ」(95.2%)「トランプ」(88.8%)「つみき」 (75.8%)「なわとび」(64.5%)「おにごっこ」(64.5%)であ った。子どもが日常的に遊んでいる遊びの中でも「男の人 の遊び」 「女の子の遊び」といったステレオタイプを抱いて いることが示唆される。 色のステレオタイプ:色の好みについては男子、女子に分 け調査した。その結果、好きな色について男子は、 「青」 (32 人中 11 人)が最も多く、続いて「黒」(32 人中 6 人)、 「赤」 「緑」「みずいろ」(32 人中 4 人)という順であった。女子 は、「みずいろ」(30 人中 11 人)が最も多く「きいろ」「ピ ンク」(30 人中 5 人)という順であった。好きな色について は、男子、女子共に人数にばらつきがみられた。 嫌いな色については、多くの男子が「ピンク」(32 人中 27 人)を選択していた。女子は、 「ピンク」 「みずいろ」(30 人中 8 人)、「黒」(30 人中 7 人)と人数がばらついていた。 このことから、男子の場合「ピンク」を一様に嫌う傾向 が強く、一方、女子の間では、特に嫌う色がみられないこ とが明らかとなった。色の好みのステレオタイプ化は女子 よりも男子に強いものといえる。 引用文献 相良順子 (2000) 児童期の性役割態度の発達-柔軟性の観 点から- 教育心理学研究, 7,174-181.