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テニスにおける 3 種類のサービスのバウンドの軌道と速度変化 Changes
テニスにおける 3 種類のサービスのバウンドの軌道と速度変化 Changes of the trajectory and the velocity of bounce in three types of tennis service 1K07A059-3 指導教員 主査 川上泰雄 先生 【目的】 加藤 雅之 副査 矢内利政 先生 は衝突後に左方向へバウンドするのに対して、スライスサー 近年、テニスにおいてラケットの軽量化や、ボール・ラケ ビスとスピンサービスは衝突後に右方向へバウンドした。バ ット間の反発性能の向上、それに伴う技術の進歩によって、 ウンド前後の上下方向への角度変化(反射角-入射角)は、 テニス競技における打球速度は年々速くなってきている。中 フラットサービスで 1.08±1.30(度)、スライスサービスで でもサービスはストロークよりも打球速度が速いことから、 1.81±0.80(度)、スピンサービスで 3.03±0.88(度)であり、 近代テニスにおける球速の向上を象徴している。これより、 全ての種類のサービスにおいて入射角よりも反射角の方が 球速の増加によってサービスの軌道、バウンド後の変化の予 大きくなることが明らかになった。 測がサービスとレシーブにおいて非常に重要な役割を担っ ている。しかし、異なるサービス間でのバウンド前後におけ 【考察】 る軌道の変化について詳細に検討した研究はこれまでにな 各サービスのバウンド前後の速度差に着目するとスピンサービ い。そこで本研究の目的は、テニスのフラットサービス、ス スが最も小さく、最も球速の速いフラットサービスの減速が大きか ライスサービス、スピンサービスの 3 種類のサービスにおけ った。その理由としてスライスサービスもスピンサービスもトップス るバウンド前後の球速の変化、および軌道の変化を明らかに ピン方向の回転を含むため、ボールが地面に衝突する際、摩擦 することとした。 により相対的に重心を加速させようとする力が働くことが考えられ る。この考えから、テニスコートの摩擦係数が小さいほどバウンド 【方法】 後の速度がバウンド前の速度を強く反映し、摩擦係数の高いコー 被験者は、大学庭球部員 5 名と同部を卒業したプロテニス トほどスピン、スライス、フラットの順にバウンド前の回転の方向と プレイヤー1 名の計 6 名(年齢:21.5±2.5 歳,身長:168± 速度が有効的にバウンド後の変化となって表れることが考えられ 3cm,体重:65.5±5.5 ㎏,競技暦:13.5±4.5 年)であった。 る。 本実験はハードコートで行い、被験者にはサービスエリア内 スライスサービスは衝突後に左方向へバウンドすると言われて に設けた 1m 四方の枠内に全力で 3 種のサービスを行わせた。 いるが、本実験では衝突直前の軌道から右方向へバウンドする この時におけるバウンド前後のボールの軌跡を 2 台の高速度 結果となった。この理由として、スライスサービスは空中で左方向 カメラ(CASIO 社製,Exilim EX-F1)を用いて撮影した。撮 にカーブを描くため、感覚的に衝突後もさらに左方向へバウンド 影条件は 600fps、シャッタースピード 2500Hz に設定した。2 すると錯覚していることが考えられる。 台の高速度カメラで得られた映像をビデオ解析ソフト (FRAME-DiasⅣ バウンド時の球種による速度や角度変化が、ベースラインに DKH 社製)でボールのデジタイズを行い、 到達する際の位置を予測すると、フラットサービスを軌道の 三次元座標を取得した後、バウンド前後の速度と角度変化を 基準にした場合、スライスサービスの軌道は 0.14m 左方向に 分析した。 ズレ、スピンサービスの軌道においては 0.11m 右方向にズレ る結果になった。また、フラットサービス、スライスサービ 【結果】 フラットサービス、スライスサービス、スピンサービス ス、スピンサービスのそれぞれのサービスがサービスエリア のセンターラインのコーナーにバウンドすると仮定した際、 のバウンド直前のボールの速度は、それぞれ 35.2±2.2(m/s)、 バウンド後から仮想レシーバー位置(ベースライン上)まで 30.7±3.7(m)、25.3±2.9(m/s)であり、バウンド直後におい にボールが到達する時間はそれぞれ 0.22(s)、0.26(s)、 てはそれぞれ 26.8±1.9(m/s)、22.5±3.2(m/s)、18.1±2.2 0.33(s)であった。これより、スピンサービスはフラットサービス (m/s)であった。バウンド前後の速度差においては、それ とスライスサービスに比べ、1 スイング分(約 0.1 秒差)の時間的余 ぞれ-8.4±0.5(m/s)、-8.2±0.6(m/s)、-7.2±1.0(m/s)であ 裕があると考えられる。 り、バウンド前後の減速が最も大きかったサービスがフラッ トサービスでその次がスライスサービスであり、スピンサー ビスが最も減速が少なかった。また、3 種サービスにおける バウンド前後の左右への角度変化(バウンド前の軌道に対し て左方向への変化を正)は、それぞれ 0.2±0.4(度)、0.2± 0.6(度)、2.0±1.3(度)であり、フラットサービスにおいて