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輸血療法の説明書

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輸血療法の説明書
輸血療法の説明書
■輸血療法とは
血液は細胞成分(赤血球、白血球、血小板)と血漿成分(蛋白成分、凝固因子など)に大きく分けられ
ます。赤血球は身体の中に酸素を運ぶ役目を、白血球は細菌やウィルスなど異物の侵入を防ぎ、自分の
身体を守る働きをします。血小板や凝固因子は出血を止め、血漿成分は栄養分の保持や血液の循環を安
定させる働きをしています。
健康な時は、これら血液の成分は産生と消失のバランスがうまく取れていますが、急な出血あるいは産
生不足などにより、バランスが崩れ生命に危険が及ぶことがあります。このような場合に、不足してい
る血液成分を治療のために補充することを輸血療法といいます。
■輸血の必要性(適応)
① 事故や手術、または疾患による大量出血や持続的な出血による貧血がある
② 患者さん自身で十分な血液成分を造れない
以上のような状態で生命に危険が及ぶと思われる場合、輸血が必要になります。
■輸血を行わない場合の危険性
血液中の酸素を運ぶ成分(赤血球)が不足した状態を貧血といい、貧血が高度になると体の各組織に酸
素を運ぶことが出来なくなります。輸血を行わなかった場合、出血性ショック、心不全など重症かつ致
命的な合併症が起こる可能性があります。血小板や凝固因子の不足により出血が起こった場合、それら
を補充しないと出血が止まらず、血液はどんどん体外に失われていきます。
■輸血の選択肢について
① 他の薬剤で治療が可能な場合は、まず薬による治療を行います
鉄分が不足して起こった貧血は、鉄剤の投与を行い、出血量があまり多くない場合は、まず輸液剤
を投与します。
② 自己血輸血(自分からの輸血)
手術が予定され、手術までの期間が十分あり、全身状態がほぼ良好で医師が適応と判断した場合、
患者さん自身の血液を前もって採血保管し、その血液を手術時に使用します。
自己血輸血は後で述べる副作用の大部分を避けることができ、最も安全な輸血といえます。
自己血輸血には一定の条件(患者さんの血液が正常であること、全身状態が良好であることなど)
が必要であり、患者さんのそれぞれの条件も異なるため、自己血輸血の可能性については主治医に
お問い合わせください。
自己血輸血の適応のある患者さんには、別紙でさらに詳しくご説明します。
③ 同種血輸血(献血による他人からの輸血)
赤血球製剤、血小板製剤、新鮮凍結血漿など日本赤十字血液センタ-から供給される血液製剤を、
原則として必要な成分のみを輸血します。
■輸血による副作用と危険性について
日本赤十字血液センタ-から供給されている血液製剤は、輸血副作用を防ぐための検査が可能な限り行
われています。しかし、ごくわずかに以下のような危険性があります。
① 感染症
極めてまれですが、肝炎ウィルス、エイズウィルス、成人T細胞性白血病ウィルス、その他のウィ
ルスや細菌などによる感染症や梅毒などの病原体が、検査の検出限界や患者さんの状態により感染
する場合があります。
② 免疫反応
血液製剤中の他人の血液成分に対するアレルギ-反応のため悪寒、発熱、蕁麻疹程度の副作用や、
溶血性輸血反応や、まれに呼吸困難を伴う急性肺障害(TRALI)やアナフィラキシ-ショック
など重篤な副作用が起きる場合があります。
③ 輸血後GVHD(移植片対宿主病)
血液製剤に入っているリンパ球が、患者さんの身体を他人と認識して攻撃する重篤な免疫反応を輸
血後GVHDといいます。
当院では輸血後GVHDを防止する目的で、血液製剤への放射線照射を厚生労働省の血液製剤に関
する使用指針に従い実施しています。
■安全な輸血療法を行うための対応
① 輸血前に行う検査
血液型、不規則性抗体検査(赤血球に対する抗体の有無)
、交差適合試験(輸血血液との適合性を
みる)などの検査を行います。
② 輸血前の感染症検査と検体保管
輸血による感染の有無を確認するために、輸血前と輸血後3ヶ月頃に肝炎ウィルス(B型、C型)
エイズウィルスなどの検査を行います。また、これらの感染症検査のために採取した血液検体は、
副作用が発生した場合の原因究明のために、一定期間(約1年以上)当院で保管させていただきま
す。
③ 投与記録の保管と遡及調査時の使用
将来、血液製剤の使用によりウィルス感染などのおそれが生じた場合に対処するため、使用に関す
る記録は最低20年間当院に保管されます。また、その記録は、遡及調査等、患者さんの利益にな
る場合に限り、関係機関に法に基づき情報提供させていただくことがあります。
④ 生物由来製品感染症等被害救済制度について
血液製剤などの生物由来製品を介した感染等により健康被害が生じた場合に、医療費等の諸給付を
行う救済制度があります。
■緊急時の対応について
緊急事態発生時や輸血療法中に予期せぬ副作用が生じた場合の処置は、主治医の判断により最善の対策
をとって治療いたします。
■同意書への自署又は記名押印のお願い
以上、輸血の概要について説明いたしましたが、ご質問などありましたらご遠慮なく担当医にお尋ね下
さい。そして十分なご理解とご承諾をいただいたならば、別紙『輸血療法の同意書』に自署又は記名押
印をお願いします。
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