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設計・施工のポイント
◆加圧方式の選定と加圧性能に応じた散布ブロックの編成
高い位置の水源からの自然流下式,ポンプ圧送方式,いずれでも利用できますが,自然流下式の場合は,散
布開始時のウォータハンマーに留意する必要があります。スイングスプリンクラーは普通のスプリンクラーと違って
内部機構が精密にできているので,急激な水圧変化で故障をおこす恐れがあります。加圧ポンプは,その流量特
性をよく吟味し,性能曲線からみて少なくとも 20%程度の余裕率を見込んで設計します。
◆薬液の混入・調整方式の選定
散布薬液の混入方式には,薬液混入器を用いて一次希釈液をパイプラインに自動注入する注入方式,調合
槽で所定の濃度に調合した薬液を流下,またはポンプで圧送する調合槽方式があります。施設設計に先だって,
いずれの方式を採用するかを決定する必要があります。
◆スプリンクラーの配置法と配置間隔
農薬散布に使用するスイングスプリンクラーは,配置間隔や配置法が散液の付着を直接左右するので,散布
施設を設計するうえで極めて重要です。スプリンクラー数を節約せず,適切な間隔で配置するよう心がけて下さ
い。
◆均等な散布水圧を確保する厳密な水利計算
スイングスプリンクラーは水圧作動式ですから,水圧が適切でなかったり,変動するとスプリンクラーはもとより,
本体の揺動速度が変わって,均等散布に支障がでる恐れがあります。スイングスプリンクラーの入り口圧を正確に
0.34±0.005Mpa(3.4±0.05kgf/㎝ 2)(動水頭:34.0±0.5m)となるよう管径や水圧を設計して下さい。
◆散布後に管内残液を回収または排出可能な配管方式
農薬散布や潅水の後,管内に薬液や水を溜めておくとスイングスプリンクラーの作動不良の原因になったり,
冬季に凍結して配管や機器の破損原因になります。管内残液の有効利用,農薬資材の節約のためにも,回収や
排出可能な配管として設計することが重要です。また,回収薬液を有効に散布するため,基地に近い位置に回収
薬液相当量の散布ブロックを配置するようにします。
◆配管施工後の排泥通水の徹底
配管工事中に,管内に泥や石ころが入り込み易いので配管施工後,スプリンクラーを取り付けるまでに,十分
に通水して排泥して下さい。ゴミが入ったままスプリンクラーを取り付けると,後々ノズルの目詰まりや揺動装置の
故障原因になります。
◆スプリンクラーの適正な散布角度の調節・設定
スイングスプリンクラーを取り付け,試験散布を実施する前に水を散布しながら,スプリンクラーの散布角度を調
整します。ちょっとした角度設定の誤りで,無駄な領域への散布が増えたり,付着不良な部分が発生しますから,
十分確認しながら角度を設定して下さい。
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◆散液の到達性や園内作業に支障のないスプリンクラーの設置位置
スプリンクラーを樹幹に近い位置に設置すると,散液が幹に遮られて散布死角を生じて付着むらを起こします。
また,園内の作業や運搬通路に邪魔にならない場所を考えて設置位置を決めて下さい。例えば,樹の列間,樹株
間など,その園地の作業条件にあわせて配置して下さい。
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設計と施工の手順
(1)園地の測量と計画図面の作成
設計しようとする園地を平面測量し,縮尺1/300(
小規模園地)∼1/500(
大規模園地)程度の図面を作成します。
この場合,傾斜地での区間距離は斜面で測定するものとします。(傾斜地の場合は,地積よりも大きくなることに注
意)
出来上がった園地の平面図をもとに,次項のスプリンクラー配置考慮しながら図面上に書き入れます。全円タイ
プは○印,半円タイプは半○として一連番号を付けます(例:①②など)。
(2)スプリンクラーの配置
①配置間隔
スイングスプリンクラーの配置間隔は,農薬散布における散液の棚面への最大到達距離を基準とします。地上に
配置したスプリンクラーの散液到達距離は第 1 図の通りで,棚高さ1.8m の場合,約 6m である。従って,6m×6m
程度が最良の配置間隔ですが,園地の都合で若干は広げても差し支えございません。
ただ,一個当たり平均支配面積(配置間隔am×bm)が 50m2 を超えないようにして下さい。また,園地の周縁部
にも必ず散液が2方向以上から到達するように配置して下さい。
第1図 スイングスプリンクラーの散液飛跡
②配列方式
配列は方形,または三角形,いずれでも差し支えございませんが,散液の均等なオーバラップを考慮すると,三
角形,つまり千鳥配置が理想的です。
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方形配置
第2図 配列方式模式図
三角形配置
③設置高
農薬散布の場合,樹下から上に向かって散布されるので,散布領域をより大きくするには,極力低く設置すること
が必要で,高く設置した場合はスイングスプリンクラーの配置間隔を縮小しなければなりません。
第3図は,散布液滴が棚面に到達するまでは直線に飛ぶと仮定(実際は放物線を描いて飛ぶが)して棚面への
散布領域を概算したものです。
第3図 スイングスプリンクラーの配置高と棚面への散液領域の関係(模式図)
(3)散水ラインの配管方式
①配管は,地下埋設が最適です。
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第4図 地下埋設配管模式図
棚上配管は掘削工事を要しないので,配管工事が簡略化されます。しかし,配管が直射光線に曝されるので,
塩化ビニル管の場合は耐用期間が短くなる他,ポリエチレン管を用いると,継ぎ手類の経費が嵩みます。また,管
内を完全に排水(完全排水は現実に不可能)しておかないと,冬季に凍結して破損する恐れがあります。さらに,
棚上からOSP までの導水ホースが果樹の管理作業に邪魔になることがあります。
埋設配管にはコストの安い塩化ビニル管を用いることができ,冬季に凍結の恐れもなく理想的です。しかし,上
記の問題点を十分考慮した上で,現場の事情によっては棚上配管も全く否定されるものではありません。ただ,棚
上配管の場合に注意すべきは ,幾本もの配管を同じ場所にまとめて配置すると通水した時にその重みで棚が歪
むので,極力,分散して配置するようにします。
第5図 棚上配管模式図
②散水ラインは樹枝状配管を基本とします。
散水ラインの配管方式は,樹枝状と櫛状に大別することができます。各スプリンクラーへの散液到達の斉一化と
噴射圧の均一な設計には樹枝状配管が適しています。櫛状配管として設計する場合は,1ライン上のスプリンクラ
ー数を3個以内にするのが理想的です。配管全体の管容積をより小さくし,管内残液を少なくするためにも重要で
す。
第6図 樹枝状配管と櫛状配管模式図(左:樹枝状 右:櫛状)
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③上り勾配か下り勾配か
傾斜地園の場合,操作バルブを起点に,上り勾配に配管するか,下り勾配とするかは,管内残液を回収するか,
それとも末端で放流,廃棄するかによって決まります。つまり,管内残液を極力少なくすることを目的に,散水ライ
ンの配管口径をより小さく設計するためには,下り勾配に配置します。この場合,散布終了後に管内残液は末端
から自然に放流させます。
一方,管内残液を自然落差を利用して加圧基地に逆流回収して再利用しようとする場合は,配管をすべて上り
勾配に配置することが必要です。いずれの方式が経済的かは,残液損失額と配管設備コストの兼ね合いで決まり
ます。管内残液損失,つまり配管容積は園地の勾配や散水ブロックの大きさによって左右されますが,傾斜 15 度
以上の園地では,下り勾配配管とし,残液損失を少なくして管内残液を自然に放流するのが経済的には得策です。
ただ,残液が完全に排出されるように,最末端の各スプリンクラーにドレンバルブを取り付けるなどの注意が必要
です。
上り勾配配管では園地の傾斜度にもよりますが,各スプリンクラーの噴射圧を均一化するために,管容積が大き
くなり,配管資材のコストも高くなります。そればかりか,スプリンクラーの噴射のタイムラグが出やすいので,これを
避けるために,樹枝状配管として散水ブロックを比較的小さく編成するよう心がけます。
(3)加圧ポンプの所要能力と機種の選定
加圧ポンプの選定にあたっては,流量(吐出量)は 20%程度の余裕率を見込んで決めて下さい。使用時間の経
過とともに生じる性能の低下に対応するためです。
1) ポンプの吐出量(Qt)=散布ブロックの流量(Q)×余裕率(η)(l/min)
Q=1.667×{散布面積(a)/散布時間(hr)}×1回散水量(mm)
または
Q=散布ブロックの面積(bm2)/スプリンクラー1個の平均支配面積(㎡)×スプリンクラー1個の吐出量
(l/min)
例えば,散布ブロックの面積を6a(600m2 ),スプリンクラーの配置間隔を平均 6m×6m(支配面積 36m2 )
と仮定
すると,Q=600/36×9.7≒194 ㍑/min となり,これに余裕率 20%を見込むと232.8 ㍑/min の吐出性能をもつポ
ンプが必要となる。
2) ポンプに必要な全揚程(Ht)
加圧ポンプに必要な全揚程は,吸い込み揚程(m),実揚程(m),管摩擦損失水頭(m),スプリンクラー・ヘッド
の高さ(m),スプリンクラーの所要動水頭(m),その他水頭損失(m)の合計値(Ht)(m)である。
ここで,吸い込み揚程を2m,実揚程(ポンプ位置からスプリンクラーまでの高さ)を5m,スプリンクラーヘッドの高
さ0.15m,とすると,スイングスプリンクラーの水頭損失は 0.4m で,その所用動水頭 30.0m であるから,送水ライン
及び散水ラインでの管摩擦損失水頭(Hf m)とおくと,37.55m+Hfm の全揚程を必要とする。Hf は水理計算で求
めなければならないが,仮に 10m としますと合計 47.55m≒48.0m の全揚程をもつポンプが必要になりうる。
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3) 原動機の所要馬力(ps)
任意のポンプを選定し,原動機をセットしようとする場合,必要な馬力は次のように算出します。
ps={0.222QH/ポンプ効率(ηp)}/伝導効率(ηd)×余裕率(e)
ここで Q=m3/min
ポンプ口径
ηp
H=m
e=1.1∼1.25
ポンプの口径と効率
φ50
φ65
φ75
0.45
0.5
0.55
伝導方式と伝導効率
伝導方式 平ベルト V ベルト
ηd
0.8
0.95
直結
1
4)ポンプの流量特性
第7図ポンプの流量特性事例
タービン式やギヤ式ポンプの場合,その性能曲線を確認し,性能曲線のほぼ中央部で設計して下さい。
5)除塵対策
スイングスプリンクラーはゴミを吸い込むと,揺動やスプリンクラーの回転不良の原因になる。用水の除塵対策は
もとより,ポンプの吸水管には必ず適当なメッシュのストレーナを取り付けて運転して下さい。
(4)散水ブロックの編成と配管経路の決定
◎計画した平面図をもとに,施工現場において各スプリンクラー位置に杭打ちして番号をつけます。
◎ポンプ性能に余裕をもった範囲で1ブロックのスプリンクラー数を決めます。
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◎各散水ブロックごとに,散水ラインの配管経路を図面上に記入します。
散水ブロック内の配管ラインは,管内残液の回収や排出を考慮しながら,各スプリンクラー位置の高低関係を勘
案しながら,管路の配置を決めます。また,散布後の管内残液を回収利用するために,回収薬液を最後に散布す
るブロックを,基地に最も近い場所に設置するようにします。回収薬液の散布ブロックは,回収薬液量で散布をま
かなえる規模にしておくことが重要です。
なお,傾斜地園で管内残液を逆流回収しようとする場合,各散布ブロック内の低い位置のスプリンクラーに,スト
ップマチックバルブを取り付けます。傾斜地で上り勾配配管の場合,薬液の噴射を斉一化し,薬液回収途上で低
い位置のスプリンクラーからの薬液のぼた落ちを防止し,回収効率を高めるためです。
薬液噴射の斉一化と管内薬液回収時の
ぼた落ち防止にストップマチックバルブ
◎配管経路のテープ引き
配管計画図面に基づき,配管経路となる各測点(バルブ位置,分岐位置,スプリンクラー位置)をビニルテープ
などを引いて結びます。
◎配管経路に引いたテープの各区間距離(実際の配管長となる)を測り,図面に記入します。
(5)送水ラインの配置と配管経路の決定
◎ポンプから各散水ブロックの入り口(操作バルブ位置)を極力,最短距離で結ぶように配管位置を決めます。
◎ポンプ位置から分岐位置,散水ブロックのバルブ位置をテープを引いて,区間距離を測り,図面上に記入しま
す。
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