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土壌微生物細胞性粘菌を利用したハンチントン病原因遺伝子活性化機構

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土壌微生物細胞性粘菌を利用したハンチントン病原因遺伝子活性化機構
土壌微生物細胞性粘菌を利用したハンチントン病原因遺伝子活性化機構の解明
(Analysis of activation pathway of Huntington's disease-causing gene in Dictyostelium discoideum.)
筑波大学生命環境系
講師・桑山 秀一
ハンチントン病は不随意運動(体が自分の意志と関係なく動いてしまう)や精神異常、行
動異常、認知力低下等を伴う重篤な神経変性疾患であり、その発症機構は未だ十分に理解さ
れておらず、根本的な治療薬もない難病(特定疾患)に指定されています(参考:難病情報
センター;http://www.nanbyou.or.jp/sikkan/092.htm)。この病気はハンチントン病原因遺
伝子(以下ハンチンチン)の変異が原因ですが、もともと細胞内で働いている正常なハンチ
ンチン遺伝子がどのような機能を持つのか?という点に関しての研究は進んでおらず、特に
どのようにしてハンチンチン遺伝子産物が活性化されるのか?という点に関してはこれまで
全く報告がありません。この大きな理由のひとつは、マウスなのでモデル動物ではハンチン
チン遺伝子を破壊してしまうと死んでしまうからです。
..
一方、細胞性粘菌はヒトと同様に細胞分化や多細胞化を起こす土壌微生物
d
. ....
a
であり(右図)
、さらにヒトハンチンチンの相同遺伝子を有しハンチンチン遺
伝子を破壊しても生育が可能であることからハンチンチン遺伝子の機能解析c
集合
には格好のモデル生物です。私は昨年度、細胞性粘菌のハンチンチン遺伝子
b
の単離、遺伝子破壊株の作製と解析から有力なハンチンチンの活性化因子候
補を発見しました。本研究の目的は、もともと細胞の中で働いている正常な 細胞性粘 菌の生活史
a: 増殖期(単細胞期)
ハンチンチン遺伝子の機能解明と細胞内での活性化機構を遺伝子工学や細胞 b-d:形態形成期(多細胞期)
工学技術を利用することにより解明することです。
助成期間においては、以下の研究の成果を得ることができた。1.ハンチンチン遺伝子は
約 9kbp と通常の2-3倍もある非常に大きな遺伝子であり、クローニングは非常に困難な作
業であったが、分断した遺伝子をPCRにより増幅し順次つなげる作業により全長をクロー
ニングに成功した。2.全長クローンの末端に蛍光タンパク質遺伝子(Yellow Fluorescent
Protein の改変体である yPET)を融合した遺伝子発現ベクターを作製し、細胞性粘菌に形質
転換、ハンチンチンタンパク質の細胞内局在を解析した。その結果、細胞性粘菌ハンチンチ
ンタンパク質は細胞質に局在することが判明した。3.ハンチンチンの活性化遺伝子候補と
して細胞外からの情報(刺激)を細胞内伝達するきわめて重要な役割を担っている3量体G
タンパク質のαサブユニットを同定した。このGαサブユニットに yPET と色調の異なる蛍光
タンパク遺伝子(Cyan Fluorescent Protein の改変体である seCFP)を融合させ、細胞内
FRET*による相互作用の有無を確認した。その結果、細胞外刺激依存的に相互作用を示す
蛍光色調の一過的変化が確認され、Gαサブユニットがハンチンチンと直接相互作用する有力
な証拠を得ることができた。今後は断片化した Gαたんぱく質やハンチンチンたんぱく質を生
化学的に解析することにより、相互作用様式の全体像とその生理機能について解析を行う予
定である。
*FRETとは Fluorescent Resonance Energy Transfer の略で色調の違う蛍光物質が近接す
ると一部エネルギーの移動により蛍光強度の変化が起こることであり、この変化を計測する
ことにより相互作用の有無を検出することが可能となる。
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