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急成長する中国の携帯 コンテンツビジネス - Nomura Research Institute
02-NRI/p94-95 02.1.28 11:44 ページ 116 N E T 世界最大の携帯電話市場 B U S I N E S S W AT C H 急成長する中国の携帯 コンテンツビジネス 中国情報産業省の統計による と、中国の携帯電話利用者数は 2001年11月時点で1億3992万件 と、日本、米国を抜いて世界で最 安田範仁 も多い。また増加数も、2001年1 ∼11月だけで5465万件と、日本の 携帯電話利用者数に肉迫する規模 である。 現在の通信方式はアジアや欧州 で普及しているGSM(800メガヘ 中心が中国版iモードともいえる (携帯電話同士で短い文字メッセ 「モンターネット(移動夢網)」で ージを送受信できるサービス)が ある(図1)。 ベースとなっている。中国におけ ルツの周波数帯を利用する無線通 るSMSの利用は年間100億通に達 モンターネットのサービス 信方式で、デジタル携帯電話の事 する見込みで、その利用は急速に 実上の世界標準)が主流で、音声 モンターネットは、中国最大手 通話が中心である。しかし、その の携帯電話キャリアである中国移 コンテンツには、着メロ、待ち なかでも携帯コンテンツ利用への 動通信社が2001年1月に開始した 受け画像、天気・株価のニュース 動きが徐々に進みつつある。その サービスで、そのインフラはSMS などがあるが、携帯電話やサービ 拡大している。 スの機能的制約から、着メロは単 音、待ち受け画像は白黒といった 図1 中国における携帯コンテンツビジネス レベルにとどまっている。 中国情報産業部 外資コンテンツプロバイダー コンテンツ・ノウハウ提供、 出資、著作権処理 許可、 認可申請 監督 コンテンツ提供、 コンテンツ開発協力 欧米携帯電話 ICP メーカー (インターネット・コンテンツ・プロバイダー) 配信インフラ提供、 プロモーション協力 料金回収代行サービス、 サービス登録 コンテンツ配信 コンテンツ配信インフラ 申請、手数料 コンテンツは新浪網社、網易社、 捜狐社、リンクトーン社など大手 ICP(インターネット・コンテン ツ・プロバイダー)を中心に100 社余りがサービスを提供してい る。利用料金は着メロ、待ち受け 携帯電話キャリア(中国移動通信社) 技術協力、 対応機種投入 料金支払い モンターネット (移動夢網) MO コンテンツ 利用 WWW コンテンツ 利用 WAP コンテンツ 利用 携帯電話ユーザー 注)MO:ショートメッセージ経由でのコンテンツのリクエストと配信、WAP:ワイヤレス・アプリケ ーション・プロトコル、WWW:ウェブでのリクエストとショートメッセージでのコンテンツ受信 94 画像が1コンテンツにつき1∼2 元(1元は約15円)程度、ニュー ス情報が0.1∼0.5元程度である。 コンテンツ利用に対する課金に ついては、中国移動通信社が通話 料と合わせて利用者から徴収する 回収代行の形をとっており、利用 知的資産創造/2002年 2月号 当レポートに掲載されているあらゆる内容の無断転載・複製を禁じます。すべての内容は日本の著作権法及び国際条約により保護されています。 Copyright © 2002 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved. No reproduction or republication without written permission. 02-NRI/p94-95 02.1.28 11:44 ページ 117 料の15%が手数料となっている。 開始したり、占いコンテンツなど を進めているが、2002年中にも移 を手掛けるインデックスが、三菱 動体通信業務を許可証制度にし、 商事と組んでリンクトーン社に出 外資系企業にも門戸を開放すると ノキア社、モトローラ社、エリ 資したりするなど、日本企業の中 もいわれている。今後、外資系企 クソン社、シーメンス社といった 国進出もこれから本格化していく 業による資本参加や合弁会社設立 欧米の携帯電話メーカーは、すで と思われる。 など、市場参入が進むことは間違 進む外資の進出 に中国で熾烈な競争を繰り広げて いない。 おり、差別化のため大手ICPと組 技術進歩と対外開放が むケースが出てきている。 市場拡大の焦点 やや出遅れた感のある日系企業 の巻き返しも期待される。NTTド 例えばノキア社は、リンクトー 中国における携帯コンテンツビ コモは、すでに香港のハチソン・ ン社を通じ、各種プロモーション ジネスはまだ産声をあげたばかり テレフォン社に対してiモードコ と連動して自社の豊富なコンテン である。その成長には携帯機器と ンテンツの技術支援を行っている ツを提供している。また他のメー インフラの技術進歩、移動体通信 が、2002年中には欧州と台湾でi カーも、各地域の ICPと共同でプ 業務の対外開放が鍵となるだろ モードサービスを開始するなど、 ロモーションを展開するほか、コ う。 日本発ビジネスモデルの拡大を ンテンツ開発などで積極的な協力 現在のモンターネットは、技術 着々と進めており、世界最大の中 上の制約から非常にシンプルなサ 国市場へ参入する日もそう遠くな この背景には、メーカーにとっ ービスレベルにとどまっているた いものと思われる。 てコンテンツの充実が、機器の売 め、コンテンツビジネスの大幅 またKDDI も、2001年6月に中 り上げ増加のための重要な要素で な拡大は難しい。しかし、今後 国連合通信社と技術・業務提携を あることに加えて、制度上の制約 GPRS(GSM方式の携帯電話網を 行い、7月には中国移動通信社と から外資系企業が直接コンテンツ 使った第2.5世代のデータ伝送技 国際電話サービスに関する協定を 配信を行うことができないという 術)やCDMA(符号分割多重接 結ぶなど、積極的な動きをみせて 事情があり、今後も欧米企業と中 続)方式が普及するにつれて、イ いる。 国の ICPとの協力関係は深まって ンフラとしての制約が小さくなる 中国の携帯電話の市場は世界最 いくと思われる。 とともに、和音機能やカラー液晶 大とはいえ、その普及率はまだ 一方、iモードでは成功した日 を備えた携帯電話機が投入されれ 10%程度にすぎない。拡大余地が 本企業だが、GSM携帯電話市場で ば、より魅力的なコンテンツを提 非常に大きい携帯コンテンツビジ の劣勢もあり、中国での存在感の 供可能になり、市場の拡大に大き ネスの動向には注目したいところ 薄さは否めない。しかし、ヤマハ く寄与するだろう。 である。 を行っている。 が上海のイードン・シティ社と提 一方、2001年12月のWTO(世 携し、台湾に続いて2001年1月か 界貿易機関)加盟に伴い、中国政 ら上海での着メロ配信サービスを 府は国内通信市場の対外開放準備 安田範仁(やすだのりひと) NRI 香港主任システムコンサルタント 急成長する中国の携帯コンテンツビジネス 当レポートに掲載されているあらゆる内容の無断転載・複製を禁じます。すべての内容は日本の著作権法及び国際条約により保護されています。 Copyright © 2002 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved. No reproduction or republication without written permission. 95