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江戸の町人文化と新しい学問
第6学年 社会科学習指導案 平成22年9月8日(水) 第6学年3組 30名 授業者 板橋区社会科部 宇田 和也 研究主題 よりよい社会の形成に参画する資質や能力の基礎を培う社会科教育 ~子どもが意欲的に学習する指導法の在り方~ 1.小単元名「江戸の町人文化と新しい学問」 2.小単元の目標 (1)○江戸時代の文化や学問の様子や活躍した人物に関心をもち、歌舞伎や浮世絵、国学や蘭学に ついて意欲的に追究することができる。 【関心・意欲・態度】 (2)○新しい学問が発達し、町人の文化が栄えたことや人物の動きを、国学や蘭学、歌舞伎や浮世 絵などの様子から考えることができる。 【思考・判断】 (3)○調べたことをもとに、町人の文化や新しい学問について、分かりやすくまとめたり発表した りすることができる。 【技能・表現】 (4)○社会が安定するにつれて、歌舞伎や浮世絵などの町人の文化が栄えたことや、国学や蘭学な どの新しい学問が起こったことが分かる。 【知識・理解】 3.小単元の評価規準 社会事象への 関心・意欲・態度 ○江戸の文化をつくりあげたそれぞれの人物のはたらきについて、必要 な資料を収集して調べようとしている。 ○学習問題を常に意識しながら意欲的に調べようとしている。 社会的な思考・判断 ○江戸の文化をつくりあげた人々の思いや願いを深く掘り下げて考える ことができる。 ○前小単元の学習内容を想起し、江戸幕府の政治体制下における社会の 安定と関連させて、文化の広がりの様子を考えることができる。 観察・資料活動の 技能・表現 ○江戸の文化をつくりあげた人物に関する図書や資料を活用して、その 人物の業績について詳しく調べることができる。 ○安定した社会での様々な人物の活躍により、新しい文化や学問が盛ん になったことが分かる内容の手紙を書くことができる。 社会事象についても 知識・理解 ○個々の人物の働きを理解するとともに、江戸の文化全体の特色を理解 することができる。 ○人物の果たした役割について、当時の社会の様子や、今日の社会との つながりから考えることができる。 4.小単元について (1)本単元は、学習指導要領 内容(1)のカ 歌舞伎や浮世絵、国学や蘭学について調べ、町人の文化が栄え、新しい学問が起こったことが分か ること を受けて、設定したものである。 「歌舞伎や浮世絵」について調べるとは、例えば、近松門左衛門などによって生み出された歌舞伎の作 品が数多く演じられ、それを人々が楽しんで見ていたことや、歌川広重などによって描かれた作品が人々 に親しまれたことを取り上げて調べ、町人の文化が栄えたことが分かるようにすることである。 「国学や蘭学」について調べるとは、例えば、本居宣長が我が国の古典を研究し国学の発展に重要な役 割を果たしたこと、杉田玄白がオランダ語の医学書を翻訳して、 『解体新書』を著したこと、伊能忠敬が 全国を測量して精密な日本地図を作ったことを取り上げて調べ、新しい学問が起こったことが分かるよ うにすることである。 「町人の文化が栄え、新しい学問が起こったことが分かる」とは社会が安定するにつれて、歌舞伎や浮 世絵などの文化が町人の間に広がったことや、国学や蘭学などの新しい学問が起こったことが分かるよ うにすることである。 歌舞伎や浮世絵を楽しむ人々に着目して当時の文化の担い手を考える学習、本居宣長、杉田玄白、伊 能忠敬の業績から、その努力の様子や果たした役割を調べる学習に取り組んでいきたい。 新学習指導要領で、言語活動を重視していることを受けて、調べて考えたことを人物新聞にまとめる 活動を取り入れていく。また、それらをもとに交流し合い、互いに調べた人物について知らせ合う活動 を行う。記事として文章化した内容を自分の言葉として発信する。さらに調べた人物に手紙を書くとい う活動も行っていく。記述させることや話し合う活動を多く取り入れることで、表現力等の育成に結び つけさせていきたい。 江戸の文化をつくりあげた人物の働きについて調べ、考えさせることで、同時に歌舞伎や浮世絵など、 江戸時代に花開いた文化が現代まで大切に受け継がれてきたり、その文化が世界の中でも貴重な価値を もつことに気づき、我が国の伝統や文化を尊重し、大切にしていこうとする態度を身につけさせたい。 また、現在の自分たちの生活や国家・社会の発展の基盤がどこにあるのかを考えたり、我が国の歴史や 先人たちのはたらきを、現在及び将来の自分たちの生活の発展に生かしていこうとする態度を身につけ させたい。 本時では、歌川広重の浮世絵の技法が、世界的にみても、大変価値のある文化として受け入れられて いたことや、それまで襖絵や彫刻、建物など一点ものの文化だったが、多色刷りを用いることにより 安く大量に生産でき、大衆の文化として町民の間に広がった。浮世絵により、お金や権力を持った人 だけの文化から、誰でも手が出せる庶民中心の文化に変わったことをおさえていきたい。 (2)小単元構想図 中心概念 江戸の町人文化と新しい学問 江戸時代も後半になると大きな戦乱も収まり、社会が安定してきた。町人も生活に ゆとりができて、皆が楽しめる文化を創るようになった。また、国学や蘭学や洋学 などの新しい学問も起こった。 具体的概念 歌舞伎や浮世絵など、 国学や蘭学などの新しい 町人の文化が栄えた。 学問が起こった。 ・近松の肖像画 ・江戸の芝居小屋 ・東海道五十三次 伊能 ・伊能の肖像画 ・伊能図 ・大はしあたけの夕立 杉田 ・杉田の肖像画 ・蘭学事始 ・ゴッホの肖像画 本居 ・本居の肖像画 ・古事記伝 ・玉くしげ ・ひまわり ・雨中の橋 ・タンギー爺さん ・モネの絵 5.児童の実態 (省略) 本居宣長は、我が国の古典を研究し、国学を大 活用教材 近松 きく発展させた。 杉田玄白がオランダ語の医学書を翻訳して「解 体新書」を著した。 伊能忠敬は、西洋の測量術を学び、全国を測量し て精密な地図を作った。 近松門左衛門らが書いた歌舞伎の作品が数多く 演じられ、人々の楽しみになっていった。 歌川広重などによって描かれた浮世絵が多くの人 に親しまれた。 社会的概念 ・広重の肖像画 6.研究主題との関連 (省略) 7.指導計画(8時間) 時 学習のねらい 主な学習活動と内容 つ か む( 2 時 間 ) ※○の数字は時数を表します 江戸の文化や新し ①現在の歌舞伎の映像と江戸時代の芝居小 い学問が発達した 屋の絵を見て、気づいたことや疑問に思っ ことを知り、どの たことを話し合う。 ような人物がかか わったのかを調べ -演じている内容は今のものとあまり変わ らない。 るための課題をも つ。 ○留意点 ●資料 ☆評価 ●歌舞伎の映像と江戸時代 の芝居小屋の絵 ○現在まで受け継がれるほ ど芸 術的価値 が高いこと を伝える。 -武士、町人、女性など、様々な身分の人が 楽しんでいる。 ☆身分制度の中、様々な身分 の人 が同じよ うに楽しめ るこ とのでき る世の中に なっ たことが 分かってい る。 ( 本 時 2 / 2 ) ②(本時)江戸時代が町人によりどんな時代 ●ワークシート に変化したか(前時の)確認する。 ○広重の絵から浮世絵の技法が文化の質を 変えていったことを確認する。 ○ゴッホの油絵と比較し、世界中の画家が広 絵画のコピー ○世界の人の中にも江戸文 化の 影響を受 けていた人 がいたことを伝える。 重の絵を称賛し、浮世絵という技法が世界 ☆江戸の文化や学問に関心 中に広まったことを知る。 ○江戸時代には様々な文化や学問が生まれ たことを知る。 をもち、学習問題を考えて いる。 ☆江戸時代の文化や学問で 活躍 した人物 のはたらき に関心をもっている。 江戸時代の文学や学問で活躍した人々の様子や果たした役割について調べよう。 文化や学問におい ③④⑤ て活躍した人物の 町人文化や学問にかかわった人々のはたら 忠敬、杉田玄白、本居宣長 働きについて調 きを調べる。 のいずれかを選択して、人 べ、人物新聞にま ○近松門左衛門の主な作品の特徴や、作品に 物について追究する。 とめる。 ○各自、近松門左衛門、伊能 込められた思いなどについて調べ、人物新 聞にまとめる。 ・町人たちが主人公。 ○調べる内容 ・年号 ・義理人情が描かれている。 ・業績 ・作品が大変人気があった。 ・エピソード ○伊能忠敬の測量の様子や測量にかかわる し 苦労について、資料を用いて調べ、人物新 ら 聞にまとめる。 ●それぞれの人物について の資料 近松 ・近松の肖像画 ・江戸の芝居 べ ・50 歳から天文学や測量技術を学んだ。 る ・17 年の歳月をかけて全国の測量を行った。 伊能 ・伊能の肖像画 ・伊能図 ・幕府の機密文書になるほど正確な地図だっ 杉田 ・杉田の肖像画 ・蘭学事始 本居 ・本居の肖像画 ・古事記伝 た。 4 時 小屋 ・玉くしげ ○杉田玄白の新しい学問の研究の様子や思 間 い、願いについて調べ、人物新聞にまとめる。 ・オランダ語を通じて西洋の学問、技術、西 ☆江戸時代の文化や学問で 洋事情などを研究し蘭学をおこした。 活躍した人物のはたらきを ・オランダの解剖図を苦心の末翻訳し、解体 資料をもとに調べ、新聞にま 新書として出版した。 とめることができている。 ○本居宣長の古事記の研究の様子や思い、願 いについて調べ、人物新聞にまとめる。 ・松坂の一夜のエピソード。 ・35 年も研究も研究を続けた。 ○小グループに分かれて交 ・医者でもあった。 流する。 ○相手の発表に対して、手紙 ⑥人物新聞を用いて交流し合い、友達が調べ た人物について知り、その人物に手紙を書 く。 を書いて渡す。 ☆江戸時代の文化や学問で 活躍 した人物 のはたらき ま と め る( 2 時 間 ) が分かっている。 江戸時代の文化や 学問で活躍した ⑦友達からもらった手紙に対して、それぞれ ☆この時代に生きた人物の の人物の立場に立って、返事を書く。 活躍により、新しい文化や 人々のはたらきに 学問 が盛んに なったこと ついて考え、手紙 が分 かる内容 の手紙を書 に書く。 ⑧往復書簡の活動を通し、調べた人物と今日 くことができている。 のつながりについて自分の考えを簡潔な ☆文化、学問の発展のために 文章にまとめる。 人々 が果たし た役割を考 え、表現できている。 8.本時の学習(2/8) (1)目標 ・浮世絵などの江戸文化や新しい学問が発達したことを知り、どのような人物がかかわったのか調 べるための学習問題をつくる。 (2)展開 時 学習活動 (―…児童の反応) ○支援 ●資料 ☆評価 ① 前時の学習から、町人の手により、江戸時代 がどんな時代に変わってきたかを発表する。 ・戦乱の世が治まり、社会が安定してきたおかげ で町人文化が栄えたことを確認する。 5 ○歌舞伎の文化により、様々な身分の人が親し むことができたことを確認。 ●歌舞伎小屋の写真 ②「文化」の面から江戸時代を捉える。 □ゴッホの「ひまわり」を見せる。 「この絵を見たことがある人」-ひまわり 「作者は誰でしょう」 -ゴッホ ○ゴッホが世界的に有名な画家であることを 確認する。 「ゴッホはどこの国の画家でしょう」-オランダ ●地図帳、地球儀 「オランダはどこだろう」 ○江戸時代ではオランダから日本まではかな -地図帳、地球儀でオランダの位置を確認 「他にもこんな絵を描いています」 り遠い距離であることをおさえる。 ○油絵であることを確認する。 ・アルルのはね橋、雨中の橋を掲示 15 □「東海道五十三次」の絵を見て話し合う。 「このような絵は何といいますか」-浮世絵 「作者は誰でしょう」 -歌川広重 「版画のよい点は何でしょう」 ○浮世絵は、 「版画(多色刷り)」であることを説 明する。 ●歌川広重の写真を提示する。 -「同じものが大量生産できる。 」 ○これまでの文化は襖絵や彫刻、建物など一点 -「今までより安く購入できる。 」 ものの文化だったが、浮世絵は安く大量に生 「どのくらいの値段でしょう。 」 -今のお金で 100 円~500 円 産できるので、お土産やブロマイドの代わり として使われ、町民の間に広がった。浮世絵 「浮世絵により、お金や権力を持った人だけの文 により、お金や権力を持った人だけの文化か 化から、誰でも手が出せる庶民中心の文化に変 ら、誰でも手が出せる庶民中心の文化に変わ わったんだね」 ったことをおさえる。 「広重は他にもこんな絵を描いています」 ・富士三十六景、大はしあたけの夕立を提示 ○雨中の橋と大はしあたけの夕立が似ている ことを気づかせる。 25 □広重の「大はしあたけの夕立」とゴッホの「雨中 の橋」を掲示する。 「何故似ているのでしょう」 ●プリントを配布。 ―広重がゴッホの真似をしたんだよ ―一緒に描いたんだよ ○児童から出される意見は全て許容し、色々な 予想が立てられるようにする。 ―オランダとはつながりがあったからゴッホが 来日して描いたんだよ 「実はゴッホが広重の絵を模写したのです」 ・広重とゴッホの生没年を板書して比較する。 ○生没年や絵からゴッホが広重の絵を模写し ていたことを確認する。 ・ゴッホの「タンギー爺さん」を掲示する。 「油絵の背景に浮世絵の技法を取り込んだ作品 もあります。世界的ゴッホは広重を尊敬してい たのですね。 」 「江戸時代の町民文化である浮世絵が、世界中の 画家たちに影響を与えていたのですね。」 ・モネの絵を提示 ○浮世絵など日本独自の技法のことを当時の ヨーロッパでは(ジャポニズム)と呼んでお り、モネやドガなども感銘し真似をしてい世 界中の画家たちに影響を与えていたことも おさえる。 35 江戸時代は、たくさんの文化や学問が生まれたこ とを知る。 ○歌舞伎-近松門左衛門 測量 -伊能忠敬 国学 -本居宣長 蘭学 -杉田玄白 学習問題を考える。 江戸時代の文学や学問で活躍した人々の様子や果たした役割について調べよう。 ☆浮世絵などの江戸文化や新しい学問が発達 したことを知り、どのような人物がかかわった のか調べるための学習問題をたてられる。 45 次時の予定を知る。 ○興味をもった人物について調べていくこと を伝える。