Comments
Description
Transcript
畑地かんがいを活用した営農へ!
※このPR版は、道営畑地かんがい推進モデルほ場設置事業 高倉地区 畑地かんが いの手引書をもとに、PR版として編集したものです。詳しい内容は、手引書をご覧くださ い。 音更町内の調査では、 5~7月の雨が少なかった年に、 かん水効果が確認されました。 かん水区は18~33%の収量増加! 本数は、3,000~5,000本(10~20%)増加! 規格内本数(本/10a) 収量(kg/10a) 0 1,000 2,000 3,000 0 4,000 3,467 (18%増) 3,602 (33%増) 理論かん水区 自主かん水区 2,699 無かん水区 L M 33%増 10,000 20,000 30,000 31,275 理論かん水区 29,363 自主かん水区 26,236 無かん水区 S 土壌の乾燥が進んだ5月下旬から6月上旬を主体に、にんじん へのかん水が実施されました。 かん水区は18~33%の収量の増加を確認しました。本数も、無 かん水区に比べ、3,000~5,000本(10~20%)増えています。 播種直後にかん水、発芽率10%向上! 80% 76% 70% 播種直後のかん水で発芽率が10%向上しました。初期生育も 良好で、かん水区では44%の増収効果を確認しました。 66% 発芽率 60% 50% 40% 30% 20% 10% 0% 自主かん水区 無かん水区 自主かん水区の生育状況(7/23) 無かん水区の生育状況(7/23) かん水区は異常根(裂根・岐根)が減少! 自主かん水区(M規格主体) 無かん水区(S規格主体) かん水区では適切な土壌水分で経過しました。一方、無かん水区は、ずっと乾燥状態が続いたあと、収穫前 に集中的に降雨があり、急激に土壌の水分状態が変化したことで、裂根・岐根が多くなったと考えられます。 p.2 かん水区は11~22%の収量増加! 製品収量(kg/10a) 0 200 400 600 土壌の乾燥が進んだ5月下旬から6月 524 (11%増) 574 (22%増) 理論かん水区 自主かん水区 されました。 かん水区は11~22%の収量の増加を 確認しました。かん水により、出穂期まで 適切に土壌水分が管理されたことで、増 収効果につながったと考えられます。 471 無かん水区 上旬を主体に、小麦へのかん水が実施 22%増 かん水区では、GI値、根中糖分が向上! 20.0% GI値 10,000 11,199 18.4% 8,000 25% 15% 6,000 10% 4,000 2,000 5% 0 0% 自主かん水区 GI値 自主かん水区と無かん水区で、GI値(草丈×茎数 20% 根中糖度 12,988 12,000 ×茎径)と根中糖分を比較しました。自主かん水区 がGI値、根中糖分とも無かん水区を上回り、良好な 結果となりました。収穫後も、土壌が乾燥する期間に、 かん水によって適切な水分にコントロールされた結 果だと考えられ、翌年の収穫量が期待されます。 無かん水区 根中糖度(Brix %) モデルほ場では、点滴(ドリップ)タイプの多孔管を設置して、アスパラにかん水しました。 収穫期だけではなく、収穫後に土壌が乾燥する場合には、かん水によって適切な土壌水分を保ち、 生育量を確保して、翌年の収穫に備えます。 収穫期に、雨がしば らく降らないとき、か ん水した後のアスパラ は、やわらかく、みず みずしく感じます。 p.3 15日程度 40日程度 75日程度 収穫 除草剤 収穫期 培土 播種 作業体系 根肥大・ 充実期 茎葉伸長期 幼苗期 発芽期 播種期 生育期節 土壌の乾燥時には、発芽促進・初 期生育の促進に効果的です! 2葉期から6葉期の水分管理は、 生育促進・裂根防止に効果! 肥大期・充実期の多量かん水は、 品質を低下させます! 100~110日程度 防除 急激な水分変化にならないよ うに、適度な水分に保つこと が裂根防止につながります。 かん水期 かん水期 肥大期・充実期の多量 重点期 注意期 危険期 かん水は、品質を低下 させます。 かん水pF値 pF2.4 pF2.5 pF2.2~2.4 4月 5月 6月 【pF値の測定深度:15cm】 7月 8月 9月 10月 出芽期 播種 重点期 注意期 危険期 pF2.8 pF2.5 4月 除草剤・防除 乳熟期以降は、熟期の遅延 や倒伏の危険性があるので、 かん水は控えます。 かん水期 かん水pF値 播種期 収穫 除草剤・防除 かん水期 収穫期 成熟期 分肥 作業体系 乳熟期 開花期 生育期節 養分吸収を促進して、有効分げ つを増やし、穂数確保! 出穂期まで、土壌を乾燥させすぎ ないように! 出穂期以降も強い干ばつ時には かん水で水分管理! 乳熟期以降はかん水を控える! 出穂期 幼穂形成期 起生期 上 中 下 上 中 下 上 中 下 上 中 下 上 中 下 上 中 下 上 中 下 5月 6月 【pF値の測定深度:15cm】 7月 8月 9月 10月 収穫期 防除 7月中旬以降は、10日間程度 の干ばつが続いても、かん水は 必要ありません。 かん水期 重点期 かん水pF値 登熟期 除草剤 中耕・除草 かん水期 根部肥大盛期 定植期 作業体系 茎葉展開盛期 生育期節 移植時の活着促進! 地上部の養分吸収と生育促進に よる乾物生産の拡大! 7月中旬以降はかん水を控える! 根部肥大期 活着期 上 中 下 上 中 下 上 中 下 上 中 下 上 中 下 上 中 下 上 中 下 注意期 危険期 pF2.7 【pF値の測定深度:15cm】 音更町には、いろいろな土壌が分布しています。保水性の良い土壌、悪い土壌、排水性の良い土壌、悪い土 壌があります。土壌条件によって、干ばつ時の乾き具合も違います。 特に、保水性が悪く、排水性も悪い土壌は、干ばつの被害も、湿害の被害も受けやすいので、暗渠排水の整 備、心土破砕の実施などの排水対策を実施したうえで、かん水することが望まれます。 p.4 畑地かんがいを導入すると農業経営の収支がどうなるか試算しました。 試算の条件は、JAおとふけ第8次中長期総合計画の営農類型『畑専Ⅰ』を基本にしました。 経営面積は40haで、畑作のみ ⇒ 畑専Ⅰ(にんじん導入)⇒ 畑かんⅠ(リールマシン導入)⇒ 畑か んⅡ(アスパラ導入)の順に検討しました。 畑作のみ 秋まき小麦 15.9ha 大豆 4.0ha 小豆 4.0ha バレイショ(生食用) 4.5ha バレイショ(加工用) 3.6ha テンサイ(移植) 8.0ha 経営面積 40ha に設定。 畑専Ⅰ (にんじん導入) 畑かんⅠ (リールマシン導入) 「畑作のみ」にニンジン委 託栽培を 4.1ha 導入した場 合。 JA おとふけの営農類型、 畑専Ⅰに該当。 増収率(調査実績平均値) ・秋まき小麦 17% ・テンサイ 7% ・ニンジン 31% ※3 年に 2 回増収効果あり として試算 秋まき小麦 14.3ha 大豆 3.6ha 小豆 3.6ha バレイショ(生食用) 4ha バレイショ(加工用) 3.2ha テンサイ(移植) 7.2ha ニンジン 4.1ha 45,000 40,000 35,000 14% 20% 20% 33,737 30,000 43,695 23% 41,133 38,764 16% 15% 25,000 20,000 10% 15,000 10,000 5,000 4,881 10,029 8,078 6,237 さらに、アスパラを導入すると、農業所 得は1千万円台に! 自家労働時間・雇用労働時間 0時間 1000時間 2000時間 3000時間 4000時間 5% 畑作 のみ 0 秋まき小麦 13.1ha 大豆 3.6ha 小豆 3.6ha バレイショ(生食用) 4ha バレイショ(加工用) 3.2ha テンサイ(移植) 7.2ha ニンジン 4.1ha アスパラ 1.2ha 畑作の増収率は畑かんⅠ と同様。 ア スパラ 収 量は 、かん 水 実施と想定して、モデルほ 場の実績値。 リールマシン導入、畑かん効果により 農業所得、所得率がUP! 25% 農業所得率(%) 農業粗収益・農業所得(千円) 50,000 畑かんⅡ (アスパラ導入) 2,759 485 0% 畑作 のみ 農業粗収益 畑專Ⅰ 畑かんⅠ リールマシン導入 農業所得 畑かんⅡ アスパラ導入 畑專Ⅰ 農業所得率 ニンジン委託栽培で、労働時間は減少。 畑かんⅠ リールマシン導入 畑かんⅡ アスパラ導入 2,654 2,798 363 364 3,494 643 アスパラの労力増加分は、雇用でカバー! 自家労働時間 雇用労働時間 経営シミュレーションの結果、まず、ニンジン(委託栽培)を導入(畑専Ⅰ)することで、農業所得が1,360千円 向上し、労働時間が230時間減少します。 次に、畑地かんがいを導入すると、増収によって農業所得が「畑専Ⅰ」より1,840千円向上しますが、労働時 間も140時間増加します。ニンジンの委託栽培の労力軽減分があるので、「畑作のみ」に比べ、まだ労働時間 は少ないです。 さらに、アスパラを導入すると、農業所得は「畑かんⅠ」に比べ1,950千円向上し、10,029千円となり、所得率 も23%まで向上しました。労働時間は、アスパラの収穫作業により、自家労力・雇用労力とも増加します。 労力配分がうまくいくと、所得の向上が期待できます。 p.5 区分 露地栽培・移動式 特徴 ・ 引き出し延長300m程度を自動でかん水できるの で、大規模畑作地域のかん水に適しています。 ・ トラクタでほ場内に先端の台車を引き出しセットす るだけでかん水できるので、作業の省力化が図れま す。 ・ 巻取り方式は、水流タービン方式とエンジン方式 があり、巻取り速度を調節することで少量かん水も可 能です。巻取りが終わると、自動でかん水が停止し ます。 名称 適用作物 〔レインガン〕 ・ 散水幅が50~60mと広く、大面積 のかん水に適しています。 畑作全般 根菜類 〔ブーム式スプリンクラ〕 ・ 水滴が細かいので、作物にやさし く、発芽促進などの生育初期のかん 水に適しています。 ・ 泥はねがほとんどないので、葉菜 類にも適します。 野菜作全般 畑作全般 ブーム式スプリンクラ 区分 露地栽培・固定式 自走式スプリンクラ(リールマシン) 名称 レインガン 多孔管(ドリップチューブ) 特徴 ・ アスパラなど野菜作で、限られた面積で固定的に適していま す。 作物の茎葉を濡らさな いで株元に点滴状にかん水するので、蒸発損失が少なく、効率よく節水かんがいがで きま す。一度圃場内に設置すると、バルブの開閉操作だけで 調節できるので、 きめ の細かい かん水が可能です。 ・ 散水タイプの多孔管(かん水チューブ)に比べ、時間当たりの水量は少ないため 、1 回の かん水対象面積は大きく設定できます。 ・ 設置、撤去に作業時間が要するので、春期・秋期に他の農作業の合間で 作業すると良 いでしょう。 ・ 土中に埋設し、根群に直接かん水することも可能です。 ・ 液肥混入器を使うと、液肥の施用も可能です。 ドリップチューブの配置、かん水状況 分岐用のパイプから 各畦のチューブに接続し かん水ます。 p.6 じわっと湿っていきます。 レインガン 適用作物 野菜作全般 ハウス栽培・頭上かん水 区分 名称 多孔管(噴霧サイド散水タイプ) 特徴 ・施設(ハウス)内のかん水方式は、高性能(散水均一性や耐久性が高い)で高価なものか ら、合成樹脂製の安価なものまで様々です。 ・サイド散水タイプの多孔管は、専用の吊り具をハウス支柱に取り 付け、簡単に設置でき ます。 ・定流量自動停止弁(メタリングバルブ)を使用することで 、設定流量で 自動で停止するの で、かん水作業の少量化に効果的です。こまめにかん水する場合にも便利です。 ・ 目詰まり防止、高圧による多孔管の破損(破裂)防止のために、フィルター、圧力調整弁 を組み合わせて使用すると良いでしょう。 適用作物 育苗 葉物野菜等 多孔管(噴霧サイド散水タイプ)の設置、かん水状況 ハウスの両サイドに 設置するので、 片付けの手間が省けます。 水滴が霧状に分散します。 ハウス内に霧状に広がり、 均一かん水が可能です。 特徴 ● 調整弁:給水栓では、水圧、水量の微調整は難しいので、給水栓を全開にして、圧力計をみな がらゲー トバルブで水圧を微調整します。 ● 定流量自動停止弁(メタリングバルブ):多孔管、スプリンクラー等でかん水する場合、設定した流量で自 動で停止するので、終了時に停止操作に来る必要がなく、省力化が図れます。 ● 圧力制御弁:多孔管に必要以上の圧力がかからな いように供給圧力(2 次圧)を調整しま す。 多孔管の 破損(破裂)防止につながります。 ● フィルター:パイプラインから流れてくるゴミを捕捉して、多孔管の目詰まりを防止します。フィルターの洗 浄が簡単です。 ● 液肥混入器:多孔管で液肥を施用するときに使用します。 かん水の効率化のための資材 調整弁 ●調整弁 給水栓から供給される 水圧を確認しながら ブーム式スプリンクラ バルブを調整します。 圧力制御弁 多孔管の適正水圧 になるように 2次圧を調整します。 ●圧力制御弁 フィルター ●フィルター 細かなゴミも除去できるので 多孔管の目詰まりが 防止できます。 定流量自動停止弁 ●定流量自動停止弁 (メタリングバルブ) 設定した流量で レインガン 自動停止します。 液肥混入器 多孔管で液肥を 施用するときに使います。 ●液肥混入器 p.7 このPR版は、平成19年度から平成25年度まで実施した、「道営畑地かんがい推進モデルほ場設置事業 高倉地 区」の各種調査等のデータと関係文献をもとにとりまとめ、畑地かんがい推進モデルほ場設置事業 高倉地区 推進 協議会で検討されたものです。 【畑地かんがい推進モデルほ場設置事業 高倉地区 推進協議会】 北海道開発局帯広開発建設部 音更町経済部 音更町農業協同組合企画振興部 十勝農業試験場 研究部 十勝総合振興局 十勝農業改良普及センター 十勝北部支所 十勝総合振興局 産業振興部(調整課・整備課・北部耕地出張所) 道営畑地かんがい推進モデルほ場設置事業 高倉地区 畑地かんがいPR版 畑地かんがいを活用した営農へ!~音更町・高倉地区の調査事例から~ 2014年3月 監修 : 地方独立行政法人 北海道立総合研究機構 農業研究本部 十勝農業試験場 研究部 北海道十勝総合振興局 十勝農業改良普及センター 十勝北部支所 発行 : 北海道十勝総合振興局 産業振興部 編集 :