原生地と産地形成

スグリ・フサスグリ
１．原生地と産地形成
１）原生地と伝播
ス グ リ 属 は 主 に 北 半 球 の 寒 帯 及 び 温 帯 に 分 布 す る が 、南 ア メ リ カ の ア
ンデス山脈、ニュージーランドやタスマニア島にも分布している。
ス グ リ 属 の 中 で 、果 樹 と し て 利 用 さ れ て い る も の に 、ス グ リ と フ サ ス
グリがある。
スグリ
ス グ リ の 文 献 へ の 記 載 は 1540 年 代 に な っ て か ら で あ り 、 ス グ リ の 栽
培 は 16 世 紀 に イ ギ リ ス を 含 む 北 ヨ ー ロ ッ パ で 庭 園 用 植 物 と し て 開 始 さ
れたとされる。
ス グ リ の 果 実 は 、ガ チ ョ ウ や 魚 料 理 に 味 付 け す る ソ ー ス の 素 材 と し て
利用されていたようであり、スグリの英名であるグーズベリー
（ Gooseberry） は 、 ガ チ ョ ウ （ Goose） 料 理 に 用 い ら れ る 果 実 （ Berry）
に由来する。
米 国 で は 大 陸 発 見 以 前 に 、先 住 民 に よ り 野 生 の 果 実 が 利 用 さ れ て い た
と さ れ る 。大 陸 発 見 後 、イ ギ リ ス か ら 多 く の 品 種 が 米 国 に 導 入 さ れ た が 、
ヨーロッパで育成された品種は米国の気候に合わず大部分は失敗に終
わ っ た 。 そ の 後 、 19 世 紀 に 米 国 原 生 種 を 用 い た 品 種 改 良 が 開 始 さ れ た 。
こ れ ら の 野 生 系 統 の 実 生 よ り 選 抜 さ れ た の が‘ ホ ー ト ン ’で あ り 、こ の
実生から‘ダウニング’が育成された。
フサスグリ
フ サ ス グ リ の 英 名 カ ー ラ ン ト （ Currant） は 、 ギ リ シ ア の 古 代 都 市 コ
リ ン ス （ Corinth） に 起 源 が あ る と さ れ 、 も と も と 、 小 さ な ブ ド ウ の 乾
果 に 対 し て 用 い ら れ て い た 言 葉 で あ る 。イ ギ リ ス で は 、16 世 紀 に こ の 植
物 を Corans と 呼 ぶ よ う に な っ た 。
フ サ ス グ リ は 古 く オ ラ ン ダ や デ ン マ ー ク 等 で 、庭 園 用 植 物 と し て 栽 培
さ れ て い た と さ れ る 。文 献 へ の 最 初 の 登 場 は 、1550 年 代 に イ ギ リ ス で 庭
園 植 物 と し て の 記 載 で あ り 、し か も 、カ ー ラ ン ト で は な く 、グ ー ズ ベ リ
ー の 名 で の 登 場 で あ っ た 。 1660 年 代 に な っ て 、‘ ホ ワ イ ト ・ ダ ッ チ ’ と
‘ レ ッ ド・ダ ッ チ ’の 品 種 名 が 登 場 す る 。1770 年 代 の 文 献 に は 、可 食 の
フ サ ス グ リ と し て 、 前 述 の 品 種 に 加 え 、‘ Common Small Red Current’
‘ Long-bunched Red Currant’‘ Large Red Dutch Currant’ の 4 品 種 が
あ げ ら れ て い る 。1820 年 代 の 文 献 で は 、ホ ワ イ ト・カ ー ラ ン ト や レ ッ ド・
カ ー ラ ン ト は ワ イ ン 等 の 飲 料 や 医 薬 的 な 目 的 で 栽 培 さ れ 、35 品 種・系 統
名があげられている。
世 界 に お け る ス グ リ と フ サ ス グ リ の 生 産 量 は 、そ の 大 半 が ヨ ー ロ ッ パ
で 占 め ら れ て お り 、殆 ど の 国 で フ サ ス グ リ の 生 産 量 が ス グ リ の 生 産 量 を
大きく上回っている。
２）わが国における栽培概況
ス グ リ 属 野 生 種 は わ が 国 に も 自 生 し て い る が 、栽 培 品 種 と し て 改 良 さ
れ て 利 用 さ れ て い る も の は な い 。明 治 5～ 6 年 頃 に 北 海 道 開 拓 使 に よ り 、
ス グ リ 8 品 種 と フ サ ス グ リ 10 品 種 が 導 入 さ れ た と さ れ る 。
ス グ リ は 昭 和 27 年 に 米 国 よ り ‘ ダ ウ ニ ン グ ’‘ グ レ ン ダ ー ル ’‘ オ レ
ゴ ン ・ チ ャ ン ピ オ ン ’ 等 、 昭 和 38 年 に ‘ ピ ッ ク ス ウ ェ ル ’‘ オ レ ゴ ン ’
等 が 導 入 さ れ て い る 。フ サ ス グ リ で は 、昭 和 29 年 に‘ レ ッ ド ク ロ ス ’
‘レ
ッ ド ・ レ ー ク ’‘ ロ ー ズ ・ オ ブ ・ ホ ー ラ ン ド ’等 、昭 和 38 年 に‘ パ ー フ
ェ ク シ ョ ン ’が 導 入 さ れ て い る 。そ の 後 も 導 入 は 続 け ら れ て お り 、特 に 、
平 成 2～ 7 年 に か け て 、米 国 よ り‘ フ ィ ル ダ ー ’‘ ベ ル サ イ ユ ’等 の フ サ
スグリが導入されている。
わ が 国 で の 栽 培 に つ い て は 、大 正 時 代 に は 導 入 品 種 の ス グ リ‘ ホ ワ イ
ト ス ミ ス ’（ ド イ ツ 大 玉 ）の 生 産 量 が 1,600t あ っ た と さ れ る 。昭 和 時 代
に 入 り 、う ど ん こ 病 の 激 発 等 に よ り 、そ の 生 産 量 は 徐 々 に 減 少 し て き て
お り 、 昭 和 45 年 の ス グ リ の 栽 培 面 積 （ 生 産 量 ） は 32ha（ 141t）、 平 成
15 年 に は 2.6ha（ 9.9t）、フ サ ス グ リ の そ れ が 4ha（ 4.6t）で あ る 。ス グ
リ の 栽 培 県 は 、北 海 道 1.3ha、岩 手 県 0.9ha、福 島 県 0.3ha、青 森 県 0.1ha
で あ り 、フ サ ス グ リ の 栽 培 県 は 、青 森 県 2.4ha、長 野 県 1ha、千 葉 県 0.6ha
である。