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趙氏資料 [PDFファイル/36KB]

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趙氏資料 [PDFファイル/36KB]
韓国長城郡の自治体改革成功/地域革新について
人材育成・ひとづくりをコアとする自治体改革の代表的成功事例について、解説を以
下に記載いたします(文責:趙佑鎮)。
[小さな奇蹟]
人口 5 万人の小さな名も知られていなかった郡(村に該当)が自治体改革の成功事
例として大きな注目を集めています。それは、韓国全羅南道北端に位置する長城(チ
ャンソン)郡です。韓国の大統領やマスコミは、長城郡のことを小さな奇跡、あるいは公
務員改革と行政革新のモデルとして注目し、激賛しています。
長城郡の初代民選郡守(村長)の金 興植(キム・フンシク)氏は、新しいリーダーシッ
プを発揮しながら「株式会社長城郡」を唱え、企業の経営マインドを行政に組み合わ
せることで自治体革新を推進しました。施策の例としては、中央政府に先駆けた自治
体初のホームページ開設と電子決済システムの導入、郡のキャラクター事業、有機農
業、観光事業の活性化、農産物の輸出市場開拓などで、韓国全国でもその成果が知
られています。
長城郡地域経済振興の成果のわかりやすい例としては、企業誘致があります。2004
年の一年間に、三星(サムスン)電子、LG 電子や中小下請け企業工場を含めて 29 も
の工場を誘致した実績があります。長城郡は韓国家電メーカーの新しいメッカとして浮
上しているのです。また、このような成果を土台にして、長城郡は政府、研究所、市民
団体などから高い評価を受け、11 年間に 169 の賞を獲得し、地域イメージを大幅に向
上させ、受賞賞金だけでも 105 億ウォン(約 11 億円)となっています。
[CEO 型首長と教育]
CEO 型郡守とでもいうべき金 郡守は、成功の鍵として、何より「教育・人づくり」を強
調しています。
金 郡守が株式会社長城郡を成就するために一番先に注目した土台は、「教育に
対する確固たる信念」でした。金 興植氏は、「世の中を変えさせるのは人だが、 人を
変えさせることができるのは教育だ」をモットーに、郡守に赴任するやいなや、公務員
と住民の意識を変革するために、教育と研修を重視する政策を拡げ始めました。郡の
役人と議会の反対を押し切って、教育に対する「投資」を敢然と実行したのです。
教育重視の金郡守の政策の中で誕生した長城の名物が「長城アカデミー」です。長
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城郡はここ 10 年の間、社団法人韓国人間開発研究院の助けを借りて、毎週金曜日
午後に長城アカデミーを開設することで「学習する地方自治体」としての体制を確固た
るものにしました。長城アカデミーは、政治・経済・経営・行政・外交・社会・文化・宗教
など幅広い分野の韓国トップクラスの講師を招き、首長自身を含めた公務員と住民に
対する教育を実施しています。この 10 年間に長城に招かれた一流の講師だけでも大
学教授、大臣、外交官、専門経営者、芸術家、マスコミ人など 500 人を越えています。
長城アカデミーは、産業社会から知識情報化社会へと変移する 21 世紀において、
教育がその構成員たちを変化させることに大きな役目を果たしていることを我々に教
えてくれています。人こそが競争力である知識情報化社会においては、次世代への貴
重な遺産はモノではなく知識と情報であるという事実を痛感させられます。官民が一体
となって学習する長城アカデミーと、キメ細かい職員の専門研修を通じて、長城郡の
公務員はエリートビジネスマンの知識と能力を備えることができ、住民は視野の広い見
識を得ることとなりました。
また長城アカデミーのすべての講演は首長、公務員と住民が一緒になって学習する
ため、互いに共感を形成することができるという長所を持っています。公開の場所で第
三者の専門家講師を通じて聴いた内容に対して、官民相互の立場を考慮しながら意
見を出し討論をするので、地域のエネルギーを結集させるしかけづくりにもなるので
す。
「考えが変われば行動が変わり、行動が変われば習慣が変わり, 習慣が変われば運
命が変わる」と金 郡守は述べておられます。長城郡民一人一人のこのような変化が集
まって、長城郡全体の運命を変える小さな奇蹟を起したといえるでしょう。長城郡の公
務員と郡民たちの意識はすでに個別的で自主的な学習組職を構築して、今や知識労
働者に生まれかわるほどに成長しています。
さらに並行して、長城郡では、「全ての」公務員を海外研修に派遣しており、民間企業
研修所の研修委託プログラムにも積極的に参加させ、大手一流企業のビジネスマン
並みの経営革新技法を身につけさせるようにしています。実際、長城郡の公務員一人
当たりの教育投資費用は、大手財閥企業以上の金額であります。
[足で稼ぐ行政サービス]
このような、教育を通じた意識変化の結果、公務員の行政サービスは献身的でクォリテ
ィの高いものとなりました。また、教育の効果は参加型行政にも反映されております。
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金 郡守は分期ごとに全公務員と郡民たちに政策を説明して対話の時間を持っており、
郡民と公務員の創意あるアイデアを掘り出して郡政に反映する行政を具現しようとして
いるところです。いわゆる参加型行政を推進している中、1996 年に 296 件に過ぎなか
った提案件数が 2000 年からは 1000 件を越すようになりました。
数々の革新の成果が評価された結果、政府や民間市民団体などから優秀自治体とし
て表彰され、この 10 年間に受賞した賞金だけで 105 億ウォン(約 11 億円)に至ってい
ます。長城郡をベンチマーキングして公務員の意識を切り替えるための教育プログラ
ムを実施している自治体も 80 を越えています。また、人材の宝庫といわれている韓国
最高のグローバル企業であるサムスンの人力開発院院長も、人づくりの秘訣を参考に
するため長城を訪れています。
次に、長城郡の行政サービスの具体的なイメージを持っていただくために、工場誘致
の具体的事例を紹介します。
日本同様に韓国も規制王国といわれています。平均的には、工場設立の許可を受け
るために必要な書類が 68 件もあり、実際に工場をつくろうとすれば少なくとも半年が必
要といわれています。
韓国企業が中国や東南アジアに工場を建設する理由のひとつに、企業の行政に対す
る不満もあるといわれます。そのような中、長城郡の公務員たちの献身的で走り回るサ
ービス精神とワンストップ行政サービスは、企業のハートをとらえることに成功しました。
工場を設立しようとする企業は、土地使用許可を受ける時から「感動」することになりま
す。他の地域では短くても2週かかるところ、長城郡は「1日」で処理してくれます。
通常の自治体では、土地使用要請があれば要請書を審議委員たちに発送して日付
を決めて会議を召集します。郵便でこれを連絡調整すると、1 週間がかかり、会議を召
集して結論が出ない場合もありますが、これらすべてが順調に進行したとしても、少な
くとも2週間が必要となるのです。
しかし長城郡は違っています。投資誘致係長が事前に電話で主旨を説明した後、書
類を直接かかえて 11 人の審査委員たちをいちいち訪ねて決裁を受けます。早朝から
夜おそくまで足で走り回るのです。そして、サービスの感動はその後もつながります。
長城郡では、誘致企業が望むニーズに対して、国の法律規制によってできないこと以
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外の全てのことはかなえようとする姿勢と行動をみせているのです。例えば、工場敷地
からの進入道路の早期開設、地域住民との融合のしかけづくりなどがそうであり、韓国
では普通、工場をつくるのに最速でも6カ月であったのが、長城郡では早ければ3カ月
で完了するようになっています。韓国では言葉だけであった「ワンストップ行政サービ
ス」が長城郡では実際に行われているのです。郡役所の全ての公務員は企業を真に
支援する準備をしています。
[地域革新/行政革新のヒント]
金 郡守は、こうした自治体の経営革新のヒントを実は日本から得たと述べています。
例えば、出雲市前市長の「行政は最大のサービス産業である」という言葉や「松下幸
之助の人づくりの教え」から多くを得たと述懐しています。
このことは、地域振興と自治体革新の答えはすでに我々日本人自身の内にあるので
あって、我々日本人は、その答え−例えば人づくり−について強い意志をもって継続、
実行するのみだということにつながるものと考えられます。
地域振興の成功には、「経営マインド/マーケティング」を行政に融合させることと、首
長各々の特有の「リーダーシップ」、官民が一体となった「意識改革」、およびCEO型
首長の存在が必要だ、ということを長城郡の例から学び取れるものと思います。
最後に、金郡守と長城郡に関するエピソードをご紹介します。
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「地域を変えられるのはヒトである。ヒトを変えられるのは教育しかない。
この信念で 11 年間を愚直にやってきた」
★ 始めた当初は、地域住民と公務員への教育研修の予算増加に対して議会や
地域マスコミは、
「田舎のヒトが高尚な講義を聞いてもしようがない。そのお金
があるなら少しでも公共施設の投資を増やせ」と批判していたが、金 郡守はぶ
れず、
「橋ひとつかけなくてもよいから、教育に集中しろ」といった。→ 地域
マスコミ、議会とも真っ向に対立し、教育への信念を貫き通したのである。
「官民の意識改革を目指した「学習する組織」をつくりあげるために真っ先
に必要なのは、トップが率先して謙虚に学ぶ姿勢をみせること」
★ 金 郡守は、よほど特別な出張でない限り、毎週開催される長城アカデミー
の講義に全て参加し、講義の後の講師との夕食の時間も情報収集と学びの対話
を行った。→職員も学習せざるをえない。
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