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各国の輸出戦略に関する追加資料 2 2010年10月

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各国の輸出戦略に関する追加資料 2 2010年10月
平成 21 年度農林水産物等輸出促進支援事業のうち農林水産物等輸出課題解決対策
「日本産農林水産物・食品の総合的輸出拡大戦略」追加資料 2
プロマージャパン 2010 年 10 月 21 日
以下は、平成 21 年度農林水産物等輸出促進支援事業のうち農林水産物等輸出課題解決対策の
うち「日本産農林水産物・食品の総合的輸出拡大戦略」事業に関する追加資料その二としてプロ
マージャパンが準備した資料で、文献調査に基づき、1.韓国農水産物振興公社(aT)、2.フラ
ンス食品委員会(SOPEXA)の 2 点についてとりまとめている。
1.韓国農水産物流通公社(aT)
韓国の農産物輸出額は FAO 統計によれば 2007 年実績で 26 億ドル(約 2328 億円)、世界 45
位と、日本をやや上回る程度である。農林水産物の輸出では、主にタバコ、魚介類、生鮮野菜・
果実、アルコール飲料、菓子類等が中心品目である。日本が最大の相手国で約 3 割を占め、こ
れに米国、中国等が続く。
韓国の農林水産物の輸出促進を担うのは韓国農水産物流通公社(aT– Agro-Fisheries Trade
Corporation)である。aT は韓国農林部の外郭団体で、農水産物輸出促進のほか、食品価格安
定のための国家貿易機構、農水産物の関税割当枠管理、および、農林水産物流通と食品産業の支
援機関としての機能も持つ。
aT の前身は 1967 年に設立された農水産業開発公社(AFDC – Agriculture & Fishery
Development Corporation)で、同公社は 1978 年に価格安定プログラムを担う国家貿易機関と
なった。さらに 1984 年以降は韓国産の農水産物のマーケティングの役割も担うようになり、
1987 年 に農水産業マーケティング公社( AFMC - Agricultural and Fishery Marketing
Corporation)と改称された。その後、輸出プロモーションプログラムの充実や農産品流通エキ
シビジョンセンターの設立等を行い、2005 年に現在の名称である農水産物流通公社(aT)に改
められている。
aT の 2014 年に向けた展望「ビジョン 2014」によれば、aT の使命は国内外における韓国産
農産物の競争力の確保と、農家及び漁家の所得の向上、国内経済のバランスのとれた発展であり、
aT の長期的なビジョンは、輸出と流通分野において世界レベルの公社になることである。その
ための戦略的目標の一つとして、農水産物輸出を 2014 年までに 100 億ドルに増加させることを
掲げている。
さらに韓国政府の「農政ビジョン 2020」では、2020 年までに農水産物の輸出を 6 倍に増やし、
世界 10 位圏内の農産物輸出国になるとの計画が示されており、それを担う機関として aT の重
要性は増している。計画の実現可能性や aT 運営の効率性等に国会等で疑問が挙げられているも
のの、韓国政府としてはより一層輸出に力を入れる方針に変わりはないものとみられる。
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平成 21 年度農林水産物等輸出促進支援事業のうち農林水産物等輸出課題解決対策
「日本産農林水産物・食品の総合的輸出拡大戦略」追加資料 2
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農林水産物輸出支援に関わる aT の組織
aT の本部組織は 3 部門から成り、農水産物輸出支援を担う貿易プロモーション部門の他に、
全体の企画や総務・人事、基金の運営、危機管理等を担う企画・マネージメント部門と、食料の
需給調整や普及・教育、関税割当等を担うマーケティングサポート部門がある。加えて、国内に
11 の地方事務所と、国外に 9 の海外事務所を持つ。
貿易プロモーション部門の下には、輸出戦略課、農水産物マーケティング課、食品マーケティ
ング課、食品産業課の 4 課があり、輸出促進関連には委託契約者を含めて合計で 100 名強のス
タッフを充て、活動の充実を図っている。次頁に aT の組織図を挙げ、貿易プロモーション部門
のそれぞれの役割分担を 4 ページの表に挙げる。
海外事務所は次頁図に示すように、現在は日本(東京・大阪)、中国、米国等の海外 6 カ国の
主要 9 都市に置かれているが、2015 年までに 16 か国、30 事務所に拡充することが計画されて
いる。海外事務所の事業内容には、農水産貿易に関連する情報の収集、PR 活動、販売プロモー
ションなどが含まれ、具体的には主な国際展示会への出展、パッケージデザインの向上支援、韓
国の伝統的食品の展示会の開催、食関係雑誌等での広告などを担当している。
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平成 21 年度農林水産物等輸出促進支援事業のうち農林水産物等輸出課題解決対策
「日本産農林水産物・食品の総合的輸出拡大戦略」追加資料 2
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国内事務所(11)
海外事務所(9)
東京、大阪、北京、上海、香港、シンガポ
ール、ロッテルダム、ニューヨーク、ロサ
ンゼルス
図 1
aT の組織図
出所)aT ウェブサイト
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平成 21 年度農林水産物等輸出促進支援事業のうち農林水産物等輸出課題解決対策
「日本産農林水産物・食品の総合的輸出拡大戦略」追加資料 2
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表 1
aT の貿易プロモーション部門
部
課
業務内容
スタッフ
輸出戦略課
輸出企画室
企画・予算総括・展望
31 名
輸出管理室
GAP、輸出ブランド「フィモリ」運営
物流管理・輸出保険
マーケティング戦
マーケティング戦略総括
略室
海外 aT 支社運営、販促活動
中国の代理店サポート等
市場開拓室
輸出広報・展示会企画の総括
バイヤー招へい
在外公館との協力
農水産物マ
果樹花き輸出室
果樹花きの国内外でのマーケティング
ーケティン
野菜輸出室
野菜の輸出支援・キノコの輸出支援
グ課
21 名
新商品開発支援
水産物等輸出室
水産物の国内・海外でのマーケティング支援
畜産物と林産物の海外支援
食品マーケ
伝統食品輸出室
ティング課
高麗人参、キムチ、伝統酒、ゆず茶、醤類
30 名
の輸出支援、商品化支援
加工食品輸出室
食品企業の輸出協議会の運営とサポート、
加工食品のマーケティング、ベンダーの相談
コメ及び韓国料理食材の輸出
食品輸出情報室
Agro Trade 運営、KATI 運営、調査企画、顧客
管理、水産物についてのモニタリング、FTA
についての情報収集、貿易月報
食品産業課
食品産業育成室
有機認証、外食企業コンサルティング
食品加工企業へのコンサルティング・コーチング
資金調達支援
韓国料理グローバル化
韓国料理協議会の構築
室
韓国料理食材の促進
韓国料理のグローバル化、上海 EXPO
専門人材育成
食品消費促進室
優秀な伝統食品や伝統酒に対する表彰、育
成、広報、認証農産物の支援
天日塩やキムチ産業等の育成
出所)aT ウェブサイト
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29 名
平成 21 年度農林水産物等輸出促進支援事業のうち農林水産物等輸出課題解決対策
「日本産農林水産物・食品の総合的輸出拡大戦略」追加資料 2
プロマージャパン 2010 年 10 月 21 日
主な農産物の輸出促進事業と予算
農林水産物輸出支援事業経費には、aT の 2009 年度予算額で 837 億ウォン(約 60 億円(日本
の農林水産物等輸出促進予算は約 32 億円:報告書本項 62 ページ参照))、2010 年度予算額で 917
億ウォンが充てられている(国内外の aT センターの運営経費は別途)
。aT の農産物輸出促進事
業には、主に以下のような事業が含まれる。
輸出の主要組織の育成
生産から輸出まで一貫する形で輸出を主導できる輸出組織の育成を図っている。長期的には一
品目一輸出組織へ統合し、ゼスプリやサンキストのような先進国型の力のある組織を育成するこ
とを目標としている。
2009 年現在で農産物・食品の輸出組織 13 ヵ所が選定されており、2010 年にはさらに林産物
等も含めて 21 組織に拡充する方針。これらの認定された組織に対して物流経費の一部補助(物
流費の 20%が上限)や、輸出インフラの強化事業費の支給等を行っている。
さらに、同一品目の中での過当競争を防ぎ、協力してマーケティングを行えるようにするため
に、関係する輸出業者が加盟する連合組織の育成も行っている。
2010 年の農林水産事業実施規定によれば、
「農畜産物の販売促進事業(輸出業者の物流費と輸
出インフラの強化)
」に対して、補助予算額 2008 年 327 億ウォン、2009 年 413 億ウォン、2010
年 415 億ウォンが挙げられており、この事業が aT の輸出促進事業の中核となっていると考えら
れる。
輸出用の共同ブランド(フィモリ(Whimori))の管理運営
高品質農産物の輸出支援のために aT が 2004 年に立ち上げた韓国の農産物ブランドで、パプ
リカ、梨、菊、バラ、エリンギ、キムチの 6 品目が対象で、認証された生産者及び企業のみが
取り扱うことができる。規定にしたがって栽培、収穫、品位、選別、包装、安定性など、厳格な
品質管理を行う。新しく認定されたバラでは、光や温度によって色が変わる新品種「マジックロ
ーズ」が対象となっており、日本への輸出が好調であるとみられる。
2009 年実績では、フィモリ事業に輸出業者 11 社が参加し、計 2,400 万ドルの輸出実績があ
った。事業者に与えられる補助額は 2009 年 1,519 百万ウォン、2010 年 1,728 百万ウォン1。報
道によれば、参加している輸出業者には、上記の主要組織育成事業にさらにプラスして物流費の
10%が補助されるほか、フィモリ事業参加のインセンティブとして品質管理指導料、育苗支援、
2010 年 10 月 19 日付 Yahoo Korea 記事「農水産物流通公社、どんぶり勘定式インセンティブ支給」
2010 年 10 月 18 日付財経日報記事「ファンヨンチョル"農水産物流通公社の輸出支援のインセンティブの
重複支給"」
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平成 21 年度農林水産物等輸出促進支援事業のうち農林水産物等輸出課題解決対策
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栽培技術開発、生物農薬の購入費補助等の個別の支援金が支給される2。例えば、きのこの生産
者団体によれば、エリンギのフィモリブランド輸出認定業者のモスィエムでは、主要組織育成事
業やフィモリ事業等の関連補助金を合わせると、補助金総額は輸出単価の 40%のレベルに達す
る3。
専門人材の育成
輸出に積極的な指導的立場の農家を対象に、先進農業機関の現場教育、海外専門家招請コンサ
ルティング、輸出業者、専門教育の実施を行う。
他に、食品輸出を担える食品業界の専門人材を 1 万 2 千人養成、また全世界の韓国料理レス
トランのうち 200 ヵ所を優良業者として認定、集中的に支援を行い、300 人の韓国料理の専門
的人材を育成する4との計画を持つ。
輸出の安全性管理
安全な農産物の供給を確保するために、GAP 認証システムの運営と認証機関の指定、農家へ
の普及を行う。
品目別輸出協議会の育成
輸出業業者間の自律的な協力機構を立ち上げ、輸出品の安全品質管理、共同マーケティング、
輸出秩序の確立を図るために、品目別の輸出協議会の育成を図っている。2009 年現在 12 団体
あり、2010 年には 15 団体に拡大する計画。これら団体において、出荷時期や単価、品質等に
関する自主規制の導入をすすめている。
有望品目の発掘
海外マーケット、テストや試験輸出を通じて新規の輸出有望品目を発掘するために、商品開発
費、輸出試験、海外プロモーション費用の支援などを行う。
海外輸出ネットワーク構築
主要な市場において、現地の大手流通業者に対して、韓国産品の常設コーナーの拡充や、供給
ルートの確立、広報プロモーション推進を通じた、グローバルな輸出ネットワーク構築により、
輸出基盤確立をはかる。
海外事業所による商社/代理店業務の拡大
2009 年 6 月 26 日付農業新聞記事「'フィモリ'エリンギアメリカで'ダンピング販売』の悩み」
同上
4 韓国経済新聞 2010 年 10 月 13 日付記事「農水産物流通公社‥グローバル農水産ビジネスの成長目標は
韓国版カーギルへの飛躍」
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平成 21 年度農林水産物等輸出促進支援事業のうち農林水産物等輸出課題解決対策
「日本産農林水産物・食品の総合的輸出拡大戦略」追加資料 2
プロマージャパン 2010 年 10 月 21 日
中小輸出企業に対して、海外事業所における支援を積極的に行い、現地拠点として利用可能と
する。また、主要な食品企業に対しても、海外での現地 TV 広告等のマーケティングをサポート
している。
国際博覧会への参加支援
主要な国際的な展示会に参加して、輸出業者と現地バイヤーとの商談機会を提供する。
バイヤー招請
『Buy Korean Food』などのイベントを開催し、海外の優秀なバイヤーを招待して、輸出業
者とバイヤーとの輸出商談機会を提供する。
輸出情報の提供
農水産物の輸出に関連する情報をインターネット上のサイトの農水産物貿易情報(KATI.net)
で提供しており、農水産物のインターネットの貿易取引斡旋システム(Agro Trade)を使って、
輸出商品の海外広報及び海外取引先の発掘をサポートする。
韓国料理グローバル化支援
主要都市における韓国料理協議会の設立や、海外の大学や料理学校における韓国料理講座の開
設、海外の韓国料理店のコンサルティング支援や、認証制度の運営等を行っている。
農水産物の輸出業者支援のための融資
aT が管轄する農産物価格安定基金から、以下のような輸出業者のための資金貸付を実施して
いる。
表 2 輸出業者のための資金融資
サポート対
象
資金
用途
貸付
(%)
期間
輸出のための原料および
農食品の
運営活性化
輸出業者
資金
水産物の
優秀水産物
国内産水産品原料の購
輸出業者
支援資金
入などの運営資金
海外進出の
海外進出の韓国料理店
韓国料理店
店舗新築、インテリア 厨
の開設資金
房機器など
外食店
金利
副資材の購入、貯蔵、加
3〜4
工などの運営資金
3〜4
1年
以内
1年
以内
4
3 年以
7
予算額
(10 億ウォン)
融 資 額 の
2008 年度 350
50 % 以 上 の
2009 年度 363
輸出
2010 年度 360
融資額の 50%
Na
以上の購入及
び輸出
2 年後
内
出所)aT, agrix ウェブサイト
事業義務
Na
‐
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2.フランス食品委員会(SOPEXA)
兆円
0.0
フランスは良く知られたように欧州を代表
2.0
4.0
6.0
8.0
10.0
米国
する農業国の一つで、右図に示すように世界
オランダ
で第 3 位の農産物輸出国で、農産物輸出額は
フランス
約 5 兆 3 千億円になる。主要な輸出品目はワ
ドイツ
イン、飲料、小麦、チーズ、加工調製品とな
ブラジル
っている。主要な相手国はドイツやベルギー
ベルギー
イタリア
等の EU 諸国が 7 割を占めるが、他に米国、
スペイン
スイス、日本等にも輸出されている。
カナダ
中国
フランスの農産物輸出促進を担うのが、フ
図 2 農産物輸出上位 10 か国(2007 年)
ランス農水省傘下の農水産物輸出促進のため
出所)FAOSTAT
の半官・半民の団体であるフランス食品振興会(Societe pour l'Expansion des Ventes des
Produits Agricoles et Alimentaires – Sopexa)及び、フランス経済・産業・雇用省傘下の民間
企業の輸出促進事業を行うユビフランス(UBIFRANCE)、貿易取引について信用供与を行うコ
ファス(coface)の 3 団体である。
Sopexa は海外の輸出促進の他に、フランス国内での食品振興も担当する。Sopexa は 29 か国
に 35 海外事務所を持ち、合計で約 280 名を雇用する。2009 年度の事業額は 7,530 万ユーロ(約
98 億円)で、うち業界団体からの委託による活動が 53.7%、地方政府 4.0%、民間業者 20.7%、
EU1.2%、中央政府・公的組織 20.4%である。報告書本項中のイタリア貿易振興会と同じく、
Sopexa は様々な団体や企業からの委託を受けて、様々なプロモーションやマーケティング活動
を彼らのために展開する役割を持っているとみられる。
活動の対象品目は主に、ワイン
やスピリッツ等のアルコール類
(42.6%)、果実・野菜類(16.8%)、
ビスケットやチョコレート等の加
工品(10%)、肉類(11.4%)、乳製
品(2.8%)等となっている。事業
の活動対象地域としては、フラン
スを含む EU 地域内が約 60%、ア
ジアが 20%、アメリカが 13%であ
る。
図 3
SOPEXA 事業対象地域(2009 年度)
出所)SOPEXA
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平成 21 年度農林水産物等輸出促進支援事業のうち農林水産物等輸出課題解決対策
「日本産農林水産物・食品の総合的輸出拡大戦略」追加資料 2
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海外事務所での活動には、主に 8 つの内容が含まれる。
-
-
マーケティングコンサルティング及び調査

全体的な市場の戦略策定・調査、戦略監査、特定のブランドや商品に関する市場調査

プロモーションキャンペーンに関する情報収集
プロモーション、マーケティング、流通業者とのネットワークの構築、共同ブランド運営

プロモーションやマーケティング活動に必要な企画立案、実施エージェントとの交渉、
流通、外食、ケータリング関係者への協力依頼等
-
マルチメディアの活用

-
広告・メディア戦略

-
ウェブサイトの運営、デザイン、メディア活用に関するコンサルティング等
広告コンセプトの立案、クリエイティブなメディア戦略の策定、実施
教育・訓練、ネットワーキング

消費者や関係者に対するフランス産のブランドや製品に関する認知度向上のための教
育や訓練等
-
PR 活動

-
国際展示会の運営

-
プレス、ジャーナリストとの関係構築と、PR 活動の実施
主要な展示会におけるフランスブースの設置と出展支援
危機管理、危機対応

製品や環境リスクの分析、把握、予測、管理等
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