...

Page 1 Page 2 119 IT主導型改革と21世紀の日本経済 一構造改革の

by user

on
Category: Documents
11

views

Report

Comments

Transcript

Page 1 Page 2 119 IT主導型改革と21世紀の日本経済 一構造改革の
\n
Title
Author(s)
Citation
<論説>IT 主導型改革と 21 世紀の日本経済 : 構造改革の
方向転換と展望
久保, 新一; Kubo, S.
商経論叢, 36(3): 119-138
Date
2001-01-30
Type
Departmental Bulletin Paper
Rights
publisher
KANAGAWA University Repository
119
〈論
説〉
IT主
導 型 改 革 と21世 紀 の 日本 経 済
構 造改革 の方向転換 と展 望
久
保
新
一
は じ め に
構 造 不況 論 に 基づ く構 造 改 革論 は,自 民 党 単独 政 権(「55年
体 制 」)崩 壊 後
に出現 した細 川 連 、k政権 の ドで 出 され た 「平 岩 レポ ー ト」(規 制緩 和 論)を 端
緒 と して 登場 した。 構 造 不 況 論(1)によれ ば 「90年 代不 況 」 は,冷 戦 体 制 解 体 と
バ ブ ルの破 綻 を契機 に ,冷 戦体 制 ドで 創 出 され 発 展 して きた 「
戦 後 重化 学 工 業
化段 階」 と,そ の実 現 過 程 で 形成 され た 日本的経 営 を軸 とす る戦 後H本
的 シス
テ ムの 行 き詰 ま りとい う構 造 的 要 因 に よっ て生 じた もので あ り,こ の構 造 の 市
場 原 理 監導 の 英 米型 資 本i義
が って,改
へ の 改 革 な し に は脱 却 しえ な い,と
した 。 した
革の 中心 テー マ は,規 制緩 和 に よる官 主
三
導 型 日本 的 システ ム の改 革
で あ り,そ れ は1996年
橋 本 「6大 改 革」 に よっ て 具体 化 され,97年
段 階 と して 財 政 構 造 改 革 を実 施 し,消 費 税 率 の 引 きLげ
行 った、,しか し,改 革の結 果,個
その 第 ・
と公 共投 資 の 削 減 を
人消 費の 急 激 な落 ち込 み と公 共投 資抑 制 に よ
る政府 消 費 の 後退 に,東 ア ジア通 貨危 機 を引 き金 と した 大型 金融機 関 の倒 産 が
重 な り,第4四1f期
か ら98年
を通 じた5期 連 続 マ イナ ス成 長 とい う破 局 的 危
機 に陥 っだ2。 この 危機 を乗 りきる た め に,政 府 は改 革 を中 断 し緊急 不 況対 策
に 切 り替 え,ゼ ロ金 利 の導 入 と120兆
円 とい う巨額 な公 的 資 金の投 入 を行 い 危
機 に対 応 した。 同時 に,構 造 改 革 の 内 容 はITを
編 に転 換 した。1999年2月
答 申3}と,3月
軸 とす る産 業 の リス トラ ・再
経 済 戦 略 会 議 の報 告[1本
経済再 生へ の戦略」の
の官民 共 同の 産業競 争 力会 議 に よる新 産業 の育 成政 策 の導 入
120商
は,そ
経 論 叢i第36巻
第3号
の 転 換 の 画 期 を な す もの で あ り,2000年11月
れ に 続 く 「IT基 本 法 」 を も っ て,IT(情
の 「IT基 本 戦 略 」 と そ
報 技 術)主
導型 経 済へ の転 換 を改 革
の 軸 に す え た(4iもの とみ て 間 違 い な い で あ ろ う。
IT主
導 型 へ の 転 換 と は い え,規
制 緩 和 と グ ロ ー バ ル(ア
ダ ー ド導 入 を 放 棄 し た わ け で は な い 。 しか し,90年
て も,結
メ リ カ ン)ス
タ ン
代 政 治 に し て も経 済 に し
局 は既 存 の 日本 的 シ ス テ ム を温 存 す る 形 で しか 「改 革」 し え な か っ た
こ と に よ り,逆
に 事 態 の 悪 化 を 招 い だ5轍
理 解 しな い ま ま,不
い る,に
を 踏 ん で,今
回 もITの
況 か ら の 脱 出 の 「切 り札 」 と してITを
す ぎ な い 。 本 稿 で は,IT革
と 問 題 点 を 明 らか に したLで,21世
命 とIT紅
特 性 を充 分
導 入 し よ う と して
導 型 経 済 と は 何 か,ITの
特徴
紀 初 頭 の 日本 経 済 の 課 題 と展 望 を 仮 説 と
して 提 示 す る こ と を 試 み る 。
IITに
よ る再 編 と そ の 基 軸
1.IT革
IT革
命 と イン タ ーネ ッ ト
命 の 牽 引 車 は,1990年
ン ター ネ ッ トで あ る。IT革
るMEの
民 需 開 放 とPCの
的 生 産 過 程)の
企 業 内LANと
が90年
代 後..急 速 に 発 展 ・普 及 し商 用 利 用 が 進 ん だ イ
命 は,1970年
登 場,8⑪
代 初 頭 冷 戦 体 制 解 体 第 …一階 梯 に お け
年 代 のME化
自動 化 ・ロ ボ ッ ト化 と,MF(大
に よ る 製 造 業 の 現 場(直
型 汎 用 コ ン ピ ュ ー タ)に
接
よる
い う 閉 鎖 的 な ネ ッ トワ ー ク化 の 段 階61を 前 提 と し て い る。 そ れ
代 冷 戦 体 制 解 体 に よ る イ ン タ ー ネ ッ トの 民 営 化 と 商 用 利 用 の 開 始e
CERNの
バ ー ナ ー ス ・リー に よ るWWWと
ブ ラ ウ ザ0・
モ ザ イ ク の 開 発,PC等
マ ー ク ・ア ン ド リー セ ン等 に よ る
情 報 ・通 信 機 器 の 価 格 破 壊,96年
信 法 に よ る 通 信 条 件 改 善 と コ ス トの 低F,等
備 ηに よ っ て,90年
米新通
に よ る情 報 イ ン フ ラ と法 制 度 の 整
代 後 半 ア メ リ カ を起 点 と して,わ
ず か 数 年 の うち に世 界 的
に 普 及 し,全 社 会 と産 業 を イ ン ター ネ ッ トに 包 摂 して い く過 程 と して 展 開 す る。
イ ン タ ー ネ ッ トは,取
に,営
引 コ ス トを 引 き下 げ 市 場 原 理 を 働 き や す くす る た め
利 用 の 手 段 と み な さ れ が ち で あ るが,そ
な く,研
の本 質は 利潤 追 及 にあ るの で は
究 者 や 市 民 に よ る情 報 の 共 有 と理 想 の 追 求 と い う ネ ッ トワ ー ク ・コ
IT主
導 型 改 革 と21世 紀 の 日 本 経 済121
ミュ ニ テ ィの 論 理 呂)にあ る 。
イ ン ター ネ ッ トの 出 自 は,1960年
代 半 ばNSFの
代 末 の 軍 用ARPAネ
研 究 者 用 ネ ッ トへ の 転 換 を経 て,開
ッ トに 始 ま り ,80年
発 者 の 自発性 と知 的 好 奇 心
に 基 づ くア カ デ ミズ ム の 文 化 と ボ ラ ン テ ィ ア やNPOの
論 理 に 支 え ら れ た ,非
営 利 の 個 人 と ネ ッ トワ ー ク ・コ ミュ ニ テ ィー に よ る コ ミュ ニ ケ ー シ ョ ン 手段 と
して維 持 さ れ 発 展 して き た細。 しか も情 報 は 価 格 メ カ ニ ズ ム に な じ ま な い 性 格
を 原 理 と して持 ち合 わ せ て い る 。 情 報 を排 他 的 に所有 し よ う とす る と ,情
共 有 した り,他
報 を
の 情 報 と結 合 す る こ と に よ っ て 価 値 を 高 め る機 会 を 奪 っ て し ま
うか ら で あ る。 した が っ て,イ
ン ター ネ ッ トが もた ら した 本 質 的 な 変 化 は,個
人 が 他 の 個 人 に 対 して あ る い は ネ ッ トワ ー ク ・コ ミュ ニ テ ィに 対 して,時
空を
越 え て コ ミュ ニ ケ.___ショ ンが 可 能 に な っ た 点 に あ る鱒の で あ っ て,「 ビ ジ ネ ス
の 手 段 と して 使 わ れ 」 そ の お こ ぼ れ と して
「人 々 の 日常 的 コ ミ ュ ニ ケ イ シ ョ ン
の 手段 と して も利 用 」 さ れ る〔
川,点 に あ る も の で は な い 。
した が っ て,1980年
した
代 に,大
企 業 が 巨 額 の 初 期 投 資 と運 営 費 を か け て 構 築
「専 用 線 を 利 用 した ネ ッ トワ ー ク に よ る 個 別 企 業 の 情 報 化 」 段 階 の 連 続 し
た 延 長 線Lに,イ
ン タ ー ネ ッ トと い う オ ー プ ン ネ ッ トワ ー ク に よ る 企 業 情 報 化
段 階 が 展 開 す る(12),とい う こ と に は な ら な い 。 両 者 の 問 に はx私
の 営 利 追 求 目的 の 情 報 ネ ッ トワー ク化 段 階 か ら ,イ
企 業(資
本)
ン ター ネ ッ トとい う非 営 利
の ネ ッ トワ ー ク ・コ ミュ ニ テ ィの コ ミュ ニ ケ ー シ ョ ン 手段(公
共 財)に
依拠 し
た 情 報 ネ ッ ト ワー ク 化 段 階 へ の 転 換 と い う 質 的 な 転 換 が あ る。 こ れ に 対 応 し
て,実
体 面 で はR&D(情
報)主
導 の 知 識 集 約 型 産 業 構 造 へ の転 換 が進 ん で い
る の で あ る 。 イ ン タ ー ネ ッ トは,し
た が っ て,国,企
業,個
人 の 誰 に 対 して も
平 等qヨで 国境 も超 え て い る。 こ の よ う な 特 徴 を 持 つ イ ン タ ー ネ ッ トが,全
的 に 普 及 し商 用 に も利 用 さ れ 始 め た こ との 意 義 はi狭
社 会
義 の 電 子 商取 引 を超 えて
大 きい。
問 題 は,こ
う した 本 質 を持 つ イ ン タ ー ネ ッ トが,そ
され な い ま ま に 商 用 利 用 さ れ,日
方 を
の 本 質 と特 性 を 充 分 理 解
本 で は 構 造 改 革 の 主 役 と して 経 済 社 会 の あ り
・
変 し よ う と して い る点 に あ る。 イ ン ター ネ ッ トの 商 用 利 用 の 開 始 に よ っ
122商
て,市
糸峯L論 葺髪i第36巻
場 化 も ま た,1980年
第3F
代 末 に お け る 社 会t義
体 制 の 崩 壊 に伴 うア メ リ カ
の 覇 権 主義 に 基 づ く 世 界 的 な 市 場 経 済 化 の 広 が りの 段 階14吐 は 異 な り,90年
代 後 半 新 ら し く ネ ッ ト市 場 が 加 わ る こ とに よ っ て 再 編 され る。 ネ ッ ト市 場 は,
価 格 メ カ ニ ズ ム と い う 市場 原 理 が 一
一元 的 に 支 配 す る場 で は な く,非
営利のネ ッ
トワ ー ク ・コ ミュ ニ テ ィ と情 報 の 原 理 が 基 本 的 に 支 配 す る場15で あ る,と
い う
従 来 の 市 場 と は 違 う特 性 を持 っ た 市 場 で あ る 。 グ ロ ー バ リゼ ー シ ョ ン も,個
の ネ ッ トワ ー ク に よ る結 合,ネ
人
ッ トワ ー ク化 に よ る 市 場 の 全 世 界 的 統 合 ・再 編
と ウ ェ ブ ・サ イ トに 立 地 す る 超 国 籍 企 業 の 出 現 に よ っ て,新
しい段 階 を迎 え る
こ とに な る曜%
2.産
業 に与 える影響
経 済 活 動 の イ ン ター ネ ッ トに よ る 包 摂 は,私
的営 利 活 動 が非 営 利 の 公 共財 を
通 じて 行 わ れ る よ う に な っ た こ と を 意 味 して い る17bイ
が,企
業 の 経 済 活 動 を 具 体 的 に ど う 変 え た の か0そ
ン ター ネ ッ トへ の 包 摂
して そ の 変 化 を ど う理 解 す
れ ば よい か 。 次 に イ ン ター ネ ッ トへ の 包 摂 が 産 業 に 与 え る 影 響 と変 化 を 検 討 す
る。
G>コ
ス トの 削 減
イ ン ター ネ ッ トへ の 包 摂 は,第
一に情 報 取 引 コ ス トを大 幅 に低 ドさせ る 。 こ
れ は 単 に 営 利 企 業 に と っ て の み な らず 個 人(消
しか も,情
費 者)に
報 取 得 の た め の 時 間 が 著 し く短 縮 され,範
とって も同様 で あ る・
囲 も 一一挙 に 世 界 に 広 が
る。 欲 しい 時 に 世 界 中 か ら リア ル タ イ ム で 好 き な情 報 を 手 に 入 れ る こ とが 可 能
に な っ た の で あ る 。 企 業 は 競 争 相 手 の 製 品,品
顧 客 情 報,売
れ 行 き,売
れ 筋 ま で,ま
たf材
質,価
格,経
営 状 態 の情 報 か ら
料 ・部 品 等 購 買 情 報 に つ い て も従
来 の 系 列 下 の 限 定 され た 下 請 け 企 業 情 報 の み な らず,国
内外 の全 部 材 メー カー
を 比 較 検 討 で き る よ う に な る。 関 連 す る 産 業 情 報 を 集 め て 取 引 を仲 介 す る 専門
取 次 ぎ業 者 も設 立 さ れ て い る。 今 で は,オ
い 企 業 は,流
ー プ ン ネ ッ トワ ー ク に連 結 して い な
通 の 環 か ら切 り離 され る 。 企 業 は,死
に た くな け れ ば ネ ッ トワ ー
ク 化 す る こ と を強 制 さ れ て い る の で あ る 。 企 業 間 の コ ス ト競 争 は こ れ ま で の 系
IT蓋
列 内 や 一個 内 同 業 者 との 競 争 と比 べ て,国
り,は
導 型 改 革 と21世 紀 の 日本 経 済123
境 を超 え た 為 替 相 場 の 違 い が 加 わ
る か に 厳 しい もの に な る 。 工 業 製 品 製 造 の 標 準 化 と世 界 的 な 過 剰 生 産 能
力 の 蓄 積 の 問 題 と合 わせ て,価
格 の 支 配 権 が 消 費 者 と購 買 者 に 移 り,生
産者 ・
供 給 者 の 収 益 率 を悪 化 させ る 。 今 や 丁 高 賃 金 国 で 成 り 、Zつ製 造 業 は ,独
を持 つ 製 品 と研 究 開 発 部 門 だ け で あ り1通
自技 術
常 の 製 品 や 部 材 生 産 も低 賃 金 国 へ の
生 産 拠 点 の 移 転 を せ ま ら れ て い る。 こ の 過 程 は 同 時 に 世 界 的 な 生 活 水 準 の 平 準
化 過 程 で もあ る個。
第 二に,流
通 コ ス トも大 幅 に 削 減 さ れ る 。 製 造 業 企 業 の 受 発 注 は1980年
に ほ ぼ オ ン ラ イ ン化 され て い る が,そ
代
れ は 自社 内 か 系 列 内 に 止 ま る 閉 鎖 的 な も
の で あ っ た 。 そ れ が オ ー プ ン ネ ッ トワ ー ク化 さ れ た こ と に よ っ て 一挙 に世 界 大
に 広 が り,仲
介 業 者 の 排 除 を 可 能 に し流 通 コ ス トを 引 き ドげ る 。 イ ン タ ー ネ ッ
トの 普 及 に伴 う,情
低 ドす る し,物
報 機 器 や 通 信 コ ス トの 引 き ドげ に よ っ て も受 発 注 コ ス トは
流 コ ス トも物 流 の 増 加 と配 送 シ ス テ ム の 効 率 化a拡
充 ・多 様 化
に よ り低 ドす る 。
イ ン ター ネ ッ トの 商 用 利 用 に よ る情 報 取 得 と流 通 コ ス トの 削 減 の 影 響 は ,従
来 独 自の ネ ッ トワ ー ク網 を持 つ こ とが 出 来 ず,そ
た 中小 企 業 と個 人 の 場 合 特 に 大 き く,こ
で 競 争 で き る 体 制 が 整 っ だ19}。な お,今
配 送 と代 金 の 決 済 に あ る が,こ
の メ リ ッ トか ら 阻 害 され て い
れ に よ っ て 大 企 業 と対 等 の 条 件 と立 場
の と こ ろ ネ ッ ト取 引 の 難 点 は }製
の 問 題 の 解 決 の 目途 が 立 て ば,2000年
品の
代情 報
家 電 の 普 及 と共 に ネ ッ ト取 引 は急 拡 大 す る と思 わ れ る 。
1990年
代 後 半 に お け る ア メ リ カ のIT株
中心 の 高 株 価 に 対 し,バ
プ ル とい う
批 判 が あ る 。 事 実 だ が そ れ だ け で は な い 。 知 的 資 産 以 外 に 有 形 固 定 資 産 を持 た
な い ソ フ トウ ェ ア 産 業 やR&D型
産 業 を,成
功 報 酬 を唯
チ ャ ー キ ャ ピ タ ルや ス トッ ク ・オ プ シ ョ ン等 に よ り,創
一の 担 保 と し て ベ ン
業 ・発 展 させ る た め の
新 しい 「原 蓄 」 形 態 と して の 面 を 併 せ 持 っ て い る点 を 見 逃 す 訳 に は い か な い 。
NASDAQ主
命)と
導 の 株 価r昇
が,イ
ン タ ー ネ ッ ト と そ の 商 用 利 用 の 拡 大(IT革
並 行 して 進 ん で きた の は 偶 然 で は な い 。1990年
中 の 資 金 が 集 ま っ た の は,IT産
代 後 半 ア メ リカ に 世 界
業 と い う投 資 対 象 が あ っ た か ら で も あ る。IT
124商
経 論 叢 第36巻
第3号
の 初 期 的 成 熟 と シ ス テ ム の 一 応 の 完 成(21))は,成功 し な か っ た 企 業 を淘 汰 しブ ー
ム に 終 止 符 を 打 ち,2000年4月
し,そ
の 後 に はIT産
以 降
「ITバ ブ ル 」 は 崩 壊 を 始 め た(2')。し か
業 とい う実 体 が 残 り,そ
れ を 軸 に 経 済 が 循 環 し始 め る こ
とに な る。
コ ス ト削 減 の 第 三 の 要 因 は,ネ
業(生
産 者)か
ら個 人(消
ッ ト経 済 へ の 転 換 に よ っ て 価 格 の 支 配 権 が 企
費 者)に
移 っ た 点 で あ る。 閉 鎖 体 系 の 時 代 に は,商
品 情 報 は 供 給 者 が 一 方 的 に 独 占 し て お り,消
あ っ た 。 し か し,オ
し,個
人(消
費 者)は
費 者 との 問 に は情 報 の 非 対 称 が
ー プ ン ネ ッ トワ ー ク化 さ れ る と,情
報 共有の論理 が作用
競 合 メ ー カ ー 等 の 情 報 入 手 が 可能 に な り比 較 対 照 が 容 易
に な る 。 ま た,情
報 を 公 開 し な い 企 業 は ネ ッ ト経 済 か ら は じ き 出 さ れ て し ま
う。 こ う して,価
格 の 支配 権 は 一
一部 は 供 給 者 か ら消 費 者 の 手 に 移 るIL2)0この 転
換 が 企 業 の コ ス ト競 争 を よ り 一
層 激 化 させ,コ
し,ま
た 同 時 に 大 企 業 の 得 意 分 野 へ の 特 化(コ
業,個
人 企 業 の 相 対 的 優 位 性,参
報 ・流 通 コ ス トベ ー ス と,世
ス トの 削 減 を せ ま る こ と に な る
ア ・コ ン ピ タ ン ス)と
中小企
入 ロ
∫能 性 を 高 め る 原 因 と も な る 。 新 し い 情
界 ベ ー ス の 製 造 コ ス トに 加 え て 消 費 者 セ導 型 価 格
決 定 メ カ ニ ズ ム の ヒで の 新 流 通 ・価 格 体 系 へ の 転 換 が 起 こ ろ う と して い る腕
も ち ろ んITは
発 展 途Lに
る。 と は い え,既
(2)R&D型
あ り,ま
だ様 々 な障 害 が あ りシス テ ム は 未完 成 で あ
に 原 理 的 に 新 しい 段 階 に 入 っ た と い っ て よ い で あ ろ う。
へ の転 換
イ ン ター ネ ッ トに よ る電 子 商 取 引 の 開 始 は,情
報 の 非 対 称 性 を 崩 し,価
格決
定 の 主 導 権 を 部 分 的 に消 費 者 の 手 に 移 し た 。 ネ ッ ト経 済 へ の 転 換 が もた ら した
変 化 は,戦
後 の 管 理 さ れ た イ ン フ レ 的 強 蓄 積Fで
累 積 し,1980年
代 のME
化 ・装 置 産 業 化 に よ っ て 決 定 的 と な っ た 工 業 製 品 の 標 準 化 と過 剰 生 産 能 力 化 と
あ い ま っ て,通
国 で は,企
常 の モ ノ作 り に よ る 収 益 の 確 保 を 困 難 に し,高
賃 金 化 した 先 進
業 は ア イデ ア や 新 技 術 の 開 発 に よ っ て 創 業 者 利 得 を得 る,と
で しか 利 益 を確 保 で きな くな っ て い る 。 しか し,問
題 の 根 源 は,研
い う形
究 ・開 発 と
い う本 来 「経 済 外 」 的 な 要 因 を 営 利 企 業 が 抱 え 込 ん で し ま っ た 点 に あ る。 研
究 ・開 発 投 資 は 他 の 投 資 と違 い,必
ず 一一定 の 産 出 に つ な が る 保 障 が な い 極 め て
ITk糠
リ ス クの 高 い 投 資 で あ る。 そ の 点 で,営
る。 した が っ て,そ
れ は,従
型 改 革 と21断 紀 の 日 本 経 済125
利 企 業 に は 適 合 しな い面 を持 っ て い
来 大 学 や 公 的 研 究 機 関 とい う非 営 利 の 研 究 機 関 に
ゆ だ ね られ て きた の で あ る 。 戦 後 冷 戦 体 制 下 で 成 立 した 巨 額 の 研 究 開 発 投 資 を
要 す る 巨 大 科 学 ・技 術 の 研 究 は,特
に 軍 需 を 中 心 に な ん らか の 形 で の 国 家 資 金
の援 助 無 しには 成 り疏ち え なか っ た暁
国 家財 政 の破 綻 に よ り
,そ
に か か え ら れ て い た 研 究 ・開 発 が 民 需 へ 転 換 した70年
型 企 業 と産 業 は,研
り ドげ をせ ま られ,生
れ まで 軍 需
代 以 降 は ,研
究 ・開 発 投 資 リ ス ク を カバ ー す る た め に ,製
究 ・開 発
造 コ ス トの 切
産 の 海 外 移 転 や 部 品 ・材 料 等 の 調 達 の ア ウ トソー シ ン グ
化 を 推 進 して きた 。
研 究 ・開 発 型 産 業 や ソ フ トウ ェ ア 産 業 の 場 合,収
わ れ て い る が,そ
穫 逓 増 の 法 則 が 働 く(2a1と
い
れ は研 究 ・開 発 が 成 功 した 場 合 で あ っ て ,そ
し淘 汰 され る 企 業 が 多 い 。 ま た,成
功 した とい っ て も ,技
の背 後 に は失 敗
術 進 歩0)ス
ピー ドは
速 く長 持 ち す る 保 証 は な い 。 ソ フ トウ ェ ア の 場 合 もハ ー ドの 発 展 に よ っ て 不 断
に バ ー ジ ョ ン ・ア ップ をせ ま ら れ る しfイ
の 脅 威 に も さ ら さ れ 続 け,優
MEに
ン タ ー ネ ッ トを 通 じて の 無 償 ソ フ ト
位 は 長 続 き しな い 。
代 表 され る ハ イ テ ク 産 業 は,急
激 な 技 術 発 展 に よ り開 発 した 新 技 術 と
新 製 品 も短 期 間 で 陳 腐 化 し競 争 力 を失 っ て し ま う た め,不
続 を強 制 さ れ る 。 そ の 結 果,企
業 は 自 らは 研 究 ・開 発 と 試 作 に特 化 し,固
本 投 資 リ ス ク を 回 避 す る た め,生
分 野 に特 化(コ
した が っ て,こ
る 生 産 の 』三要 氣
産 は 外 部 に 委 託 す る。 あ る い は,自
ア ・コ ン ピ タ ンス)し
トワ ー ク化 はYま
断 の 研 究 ・開 発 の 継
定資
らの 得 意
不 得 意 分 野 は 外 部 化 す る。 オ ー プ ン ネ ッ
た ネ ッ トワ ー ク を通 じて の 必 要 に 応 じた 連 携 を 可 能 に す る 。
れ まで 大 量生 産 を 支 え て き た 「規 模 の 経 済 」 と ,そ
資 本(設
備),労
働,土
の基 盤 で あ
地 の所 有 は今 や 新 製 品へ の転 換 を妨
げ る マ イ ナ スの 要 素 に 転 化 した と も い わ れ,こ
れ に代 わ っ て 知 的 資 産 が 最 大 の
要 素 と な っ て い る㈱。 か つ て の 資 本 集 約 型 産 業 に 代 わ っ て,知
識集約型産業 が
全 体 の 発 展 を リー ドす る 基 軸 産 業 と な る(271。
1990年
代 後 半,ネ
ッ ト経 済 へ の 転 換 に 合 わ せ て,M&Aに
間 の 国 際 的 集 中 ・合 併 が 行 わ れ て い る 。 そ の 目的 は,市
よる 多 国 籍 企 業
場 の独 占的 支 配 に よる
126商
経 論 叢 第36巻
第3号
独 占利 潤 の 確 保 に あ る,と
い う よ り も,買
設 備 ・雇 用 の リス トラ に あ る,と
に 繋 が る と して も,合
収 ・合 併 に よ る 新 技 術 の 確 保 と,旧
い え る 。 そ れ が,結
併 やM&Aの
果 と して 独 占 利 潤 の確 保
直 接 的 な動 機 は,R&Dと
ネ ッ ト型 経 済 へ
転 換 す る た め の リ ス トラ と理 解 し た 方 が 良 い で あ ろ う。
(3)シ
ステ ム転換
前 述 し た よ う に,1990年
代 初 頭 の 規 制 緩 和 論 に よ る 構 造 改 革 の 基 調 は,官
主 導 型 日本 的 シ ス テ ム の 民 主 導 英 米 型 シ ス テ ム へ の 転 換 で あ っ た が,90年
代
末 そ れ がIT主
き
い 。IT並
導 型 へ 変 っ た 。 こ の 転 換 の 意 味 は 余 り語 られ て い な い が.大
導 型 へ の 転 換 に よ っ て,最
で 連 結 さ れ た グ ロ ー バ ル なIT主
早 日本 塑,米
国 型 と は 違 う ネ ッ トワ ー ク
導 型 経 済 に 変 っ た と も い え る。1990年
の 産 業 構 造 の 在 来 金 属 ・機 械 基 軸 型 か らIT産
業 基 軸 型 へ の 転 換 が 論 じ られ て
い る'.2H7が,前者 と後 者 との 間 に は 断 絶 が あ る 。 後 者 の 場 合f産
な 国 民 経 済 の 物 質 的 基 盤 か らの 開 放,さ
の 展 開 と 主 体 の 転 換 が あ り,こ
れ が,当
代 日本
業 構 造 の 閉鎖 的
ら に は コ ミュ ニ テ ィの 上 で の ビ ジ ネ ス
う した よ り根 源 的 な 問 題 が 無 視 され て い る 。 そ
面 す る 不 況 対 策 と して 行 わ れ よ う と,ナ
シ ョナ リ ス トの 宰 相 に よ っ て
導 入 さ れ よ う と,変
りは な い 。 イ ン ター ネ ッ トと い う オ ー プ ン ネ ッ トワ ー ク へ
の 連 結 に よ っ て,企
業 も国 家 も あ らゆ る シ ス テ ム が オ ー プ ン シ ス テ ムへ の 転 換
をせ ま られ て い る の で あ る 。 例 え}そ
と,ネ
れ が ア メ リ カ ン ・ス タ ン ダ ー ドで あ ろ う
ッ トワ ー クで 繋 が っ た 以 上,統_._.7に
し な け れ ば機 能 し な い か らで あ
る。
問 題 は,ネ
ッ ト型 へ の 転 換 に よ っ て 世 界 が 画 一
イヒさ れ,個
別 の文 化 が 淘汰 さ
れ 個 性 は 無 くな る か!2s)と
い う点 に あ る。 イ ン タ ー ネ ッ トや グ ロ ー バ リ ゼ ー シ ョ
ンに 対 す る 大 方 の 評 価 は,巨
大 資 本 の 力 に よ る 画 一・
化 ・均 質 化 とい う 一面 だ け
を 見 て い る よ う に 思 わ れ る 。 しか し,前
人 の,と
り,情
述 した よ う に イ ン タ ー ネ ッ トは 元 来 個
りわ け 研 究 用 の コ ミュ ニ ケ ー シ ョ ン手 段 と し て 構 築 さ れ た も の で あ
報 の 共 有 を 原 理 と して い る 。 した が っ て,逆
に ネ ッ トワ ー ク化 は 文 化 と
個 性 の ル ネ ッサ ンス に つ な が る もの と 考 え る。 オ ー プ ン ネ ッ トワ ー ク化 に よ っ
て,従
来 国 民 国 家 や 企 業 の 力 に よ っ て 押 しつ ぶ さ れ て い た 地 方 文 化 や 個 人 の 多
IT主
様 な 能 力,共
導 型 改 革 と21世 紀 の 日 本 経 済127
同 体 の 力 を復 権 させ 解 放 す る 面 を持 つ か らで あ る 。 イ ン ター ネ ッ
トは 国 際 投 機 資 金 の 巨 利 追 求 の 舞 台 に な る と同 時 に ,各
るNPOや
国 ・地 域 で 活 動 して い
市 民 運 動 が 連 帯 して 活 動 す る 場 で も あ る 。 後 者 に よ る ネ ッ トワ ー
ク ・コ ミュ ニ テ ィの 運 動 は ま た,グ
ロ ー バ リゼ ー シ ョ ンか ら取 り残 され た 地 域
経 済 にお け る 地 域 通 貨 等 を用 い た コ ミュ ニ テ ィの 復 権 に も繋 が っ て い る〔301
。
(4)ン1「
く安'定イヒ
ネ ッ ト経 済 社 会 は,ア
イデ ア と技 術 とい う知 的 資 産 に 主 導 さ れ 支 え られ る も
の で あ り,同
時 に ア イ デ ア や 技 術 の 移 転 は イ ン ター ネ ッ トを通 じて 簡 単 に 行 わ
れ る た め,創
業者 利 得 とい う形 で の 企 業 収 益 の 取 得 期 間 は 短 か くな る 。 ま た,
イ ン ター ネ ッ トは 国 家 等 に よ る 規 制 を排 除 す る た め ,市
定 性 が ス ト レー トに 発 現 され や す い 。1997年7月
夏 の ロ シア経 済 危機
場 の 持 つ 暴 力 性 と不 安
の 東 ア ジ ア 通 貨 危 機98年
そ れ に 連 動 して 起 こ っ た ア メ リ カ のLTCM倒
産 や ,急
激 な 変 化 に 対 す る企 業 の 対 応 に よ る 雇 用 の 流 動 化 に 示 され る よ う に ,世
界 市場
の 不 安 定 化 は ネ ッ トワ ー ク化 に よ っ て か つ て な く強 ま っ て い る(31)
。情 報 ネ ッ ト
ワ ー ク化 に よ る 経 済 社 会 の 再 編 は,こ
を,そ
う した 世 界 市 場 の 不 安 定 化 と い う リス ク
の 裏 面 と して 伴 っ て い る の で あ る。
この 不 安 定 化 に ど う対 処 す べ きか を検 討 す る前 提 と して ,情
報 ネ ッ トワ ー ク
化 が 国 家 と個 人 に 対 して 与 え る 影 響 を 見 て お き た い 。
皿
社 会 の再 編
1.ネ
ッ ト経 済 と国 家
オー プ ンネ ッ トワー ク化 に よっ て超 国籍 企 業 に再 編 され た 企業 と,個 人 と市
場 の地 球 規 模 で の統 合 に よっ て,国 民 国家 は 後 退 を余 儀 な くされ る。 ネ ッ ト経
済 とネ ッ トワー クで統 合 され た個 人 に よっ て構 成 され る21世 紀 型 社 会 で は ,
戦 後 の 日本 で支 配 的 で あ った 官 主導 調 整型 国家 は,一 般 的 に は発 生 した問 題 に
対 処 す る事 後 監 察型 に転換 せ ざる を え ない。 政 策 決 定過 程 も官 の決 定 に民 間が
従 う 「縦 型 」 か ら,官
と民 が共 同で 行 う 「横 型」 に,全 体 と して社 会 の 変化 へ
の順 応 性 の 高 い民 間企 業 と個 人 主導型 へ の 転換 が せ ま られ よ う(32)
。2000年
沖縄
128商
経 論 叢 第36巻
第3号
で 先 進 国 サ ミ ッ トが 開 か れ た が,近
年 サ ミ ッ トの 影 響 力 は 低 ドす る 一方 で あ
る。 東 西 冷 戦 終 結 の 影 響 も大 き い が,国
連 やIMF,世
銀 等 の 国 家 を構 成 員 と
す る 国 際 機 関 も同 様 で あ る 。 こ れ は 国 家 主 権 に 基 づ く在 来 型 国 際 政 治 が 有 効 性
を 失 っ て き て い る{331Tとの 反 映 で あ る と も い え る 。 も と も と,人
た な い 小 国 と10億
を超 す 大 国 が 等 し く1票
口 百 万 に も満
を 行 使 す る と い う 国 連 の 構 成 自体
に 無 理 が あ る。
ME,IT等
の 新 技 術 や ソ フ トウ ェ ア の ル ー ル 作 りは,ア
メ リ カで 開 か れ る 専
門 家 と政 府 首 脳 が 一堂 に 会 す る 私 的 フ ォ ー ラ ム の 場 で 行 わ れ,そ
と 世 界 の 共 通 ル ー ル に な り,各
れが ア メ リ カ
国 の 関 連 法 令 もそ れ に した が っ て 策 定 さ れ
るf311,よ う に 変 っ て い る 。 生 命 科 学 の 場 合 も 同 様 で,専II『 家 の 知 識 と助 言 な し
に は 政 策 一 つ 作 れ な くな っ て い る 。 今 や,社
学 を 中 心 とす る20世
会 の トップ ・リー ダ ー は,量
子力
紀 物 理 科 学 を 基 本的 教 養 と して 身 につ け る こ とを 要請 さ
れ て い る 。 こ れ は社 会 科 学 の 場 合 も 同 様 で,新
しい 教 養 と常 識 を ベ ー ス に学 問
体 系 を 再 構戒 す る 必 要 に せ ま られ て い る3㌔
1970年
代 末 に 現 れ た サ ッチ ャ ー リ ズ ム,レ
ー ガ ノ ミ ッ ク ス 以 来,新
自由 主
義 ・新 保 守 主 義 に よ る規 制 緩 和 と小 さ な 政 府 へ の 転 換 が 時 代 の 新 思 潮 に な っ て
い る。 我 が 国 で1990年
しか し,1980年
代 前 半 に提 起 さ れ た構 造 改 革論 の 基 調 も 同 様 で あ る。
代 以 降 現 実 に 行 わ れ て きた 新 しい 政 府 の 役 割 は,か
由 競 争 時 代 の 夜 警 国 家 的 な 「小 さ な 政 府 」 とは 様 相 を 異 に し}非
機 敏 な 対 応 と,技
術ri新
つ ての 自
常 時 にお け る
を 誘 導 し軌 道 に 乗 せ る 政 策 や イ ン フ ラ作 りを 民 間 の 力
を 活 用 しつ つ 精 力 的 に 行 う戦 略 性 を併 せ 持 っ た もの で あ り,進
化 した 「小 さな
政 府(ss)とで もい うべ き も の で あ る。
1980年
代 半 ば 以 降,ア
メ リ カ に お け る 冷 戦 の 実 質 的 終 焉 に 伴 うR&Dの
開 放,法
人 税 減 税 に よ る ソ フ トウ ェ ア 産 業 の 育 成 に 始 ま り,知
立,93年
の ゴ ア情 報 ス ー パ ー ハ イ ウ ェ イ構 想,96年
ス の 原 則 提 起,98年
民需
的所 有 権 の 確
新 通 信 法,97年eコ
マー
イ ン ター ネ ッ ト非 課 税 法 の 策 定 と続 く… 連 の 政 策 と情 報
イ ン フ ラ の 建 設 に 果 た した 政 府 の 活 動 は,IT革
命 を軌 道 に乗せ るた め の 重 要
な役 割 を 果 た しだ3η。 そ の 意 味 で は 新 産 業 を創 出 した 「原 蓄 」 国 家 と して 機 能
ITl噂
した,と
ITセ
産 業の
は,90年
たIT主
型 改 革 と21世 紀 の 日本 経 済129
い っ た 方が 適 切 か も しれ な い 。
導 型 経 済 へ の 転 換 を決 定 的 に したIT革
「空 洞 化 」 に よ っ て,新
命 に 関 し て い え ば ,1980年
代
産 業 主 軸 へ の転 換 をせ ま られ て い た ア メ リカ
代 ゴ ア の 情 報 ハ イ ウエ イ構 想 の 下 に 見 事 に ド ッ トコ ム 企 業 を 軸 と し
導 型 経 済へ の 転換 に一
一
一応 成 功 し た 。
一方,外
資 依 存 の 社 会 主義 的 市 場
経 済 へ の 転 換 を 行 っ た も の の,在
来 産 業 基 盤 の 形 成 で 遅 れ て い た 中 国 は ,リ
ナ ッ ク ス 型 企 業 の 導 入 幽に よ っ て
・
気 にIT主
る 。 そ の 間 でsl980年
した 日 本 は,バ
代ME化
の 遺 産 の 償 却 に 制 約 さ れ ,明
設 備 基 盤 の ヒに 新 設 備 を接 木 す る,し
で き な い 形 で しかIT主
2.個
した 「新 鋭 」 重化 学r業
に よ って 世 界 を席 捲
ブ ル まみ れ の 旧 型 情 報 化 に よ る 在 来型 ネ ッ トワ ー ク と通 信 イ ン
フ ラ を 大 量 に抱 え こ み,負
ま ま,旧
導 型 へ の 転 換 を 図 ろ う と して い
確 な ビ ジ ョンを欠 い た
た が っ て,新
設 備 の 威 力 を発 揮
導 型 経 済 へ の 転 換 が 出 来 な い で い る(341。
人
1970年 代 初 頭 以 降 のME・
情 報 化 の 過 程 を見 る と ,軍 需 産 業 や 企 業 の リス
トラに よ って組 織 か ら排 除 され た り離 脱 した技 術 者 や 大学 中退 組 の 個 入が ,ベ
ンチ ャー ビ ジ ネス を起 こす とい う形 で ,事 業 を起 こ して い る。 そ の 点 で,長
い
年 月 をか け て集 中 ・合併 を繰 り返 し大 規模 化 して きた既 存 の 大企 業 とは成 堂の
仕 方が違 う㈲。 また,ハ
イテ ク産 業 と して 知 られ て い る新 興 企 業の場 合 ,そ の
評価 も トップの 力 が か な りの 比 重 を しめ て い る。 勤 務 形態 とい う点 で も イ ン
ター ネ ッ トや携帯 電 話 の登 場 に よ り遠 隔地 勤務 や在 宅 勤 務 も 可能 に な りつつ あ
る。 家庭 に お いて も,家 族 が そ れぞ れ情 報端 末 を持 ち ,そ れ を通 じて外 部 と繋
が る こ とに よっ て個 人の 自 立性 が 増 し,個 人 と小 単位 中 心 の社 会 に変 っ て い
る。 そ の反 面,個 人 の能 力 は常 に時価 評価 で行 われ,過
去の 業績 は 問 わ れず ,
自己 責任 が 問 われ る こ とに な る。
労 働 運動 の後 退 は,i二 業化段 階 か ら情 報 化段 階へ の産 業構 造 の転 換 を背 景 に
した もの で,こ
NPOを
れ まで労 働 組 合 が 担 って きた,労 働 時 間 や労 働 条 件 の 改 善 は
中心 とす る社 会運 動 を通 じて 全 社 会 的 に行 う形 に変 わ らざ る を え な い
130商
経 論 叢 第36巻
第3号
で あ ろ う。 就 業 形 態 の 多 様 化 を考 慮 す れ ば,既
成 の労 働組 合 に まかせ る よ り も
そ の 方 が よ り良 い と思 わ れ る(911。
所 得 も 個 人 の 能 力 と働 き に 応 じ て 差 が で る が,所
NPOや
ボ ラ ン テ ィ ア 活 動 を 通 じ て も,行
得 の 再 分 配 は,寄
わ れ るi4Ziう に な ろ う。 既 に 社 会 的
に 排 除 さ れ た 人 々 の 間 で 生 ま れ た ニ ュ ー エ コ ノ ミ ク ス 運 動 ㈹や,地
LETS等
付 と
域 通 貨
に よ っ て 国 民 通 貨 が 無 く と も相 互 の 労 働 の提 供 に よ っ て 生 活 を 保 障 し
て い く,新
しい 共 同 体 の 形 成 もネ ッ ト社 会 へ の 移 行 に よ る社 会 の 編 成 原 理 の 転
換 を 示 す 一 例 と思 わ れ る。
オ ー プ ン ネ ッ トワ ー ク化 に よ り ・人 一・人 の 個 人 が 直 接 世 界 につ な が り,自
主 張 を 行 い 誰 と で も交 流 可 能 に な っ た 点 は 特 筆 す べ き こ とで あ る 。NPOの
動 は 今 や イ ン ター ネ ッ トを 介 し て 国 境 を超 え て 広 が りs新
害や 主
脹
活
しい 国 際 連 帯 と 市 民
運 動 の 広 が りを 生 み 出 して い る。 一・方 で 反 グ ロ ー バ リ ズ ム を旗 印 に,国
を強 調 す る 人 達 が い る 反 面 で,利
己
家 主権
を共 に す る 市 民 が 相 互 に 国 境 を超 え
て 連 帯 し行 動 して 問 題 の 解 決 に 当 た る 新 しい 運 動 の 輪 が イ ン ター ネ ッ トの 登 場
に よ っ て 広 が っ て い る1441。
グ ロ ー バ リ ズ ム を進 め て い る の は,決
して単 に多 国
籍 企 業 や 米 財 務 省 ・ウ ォー ル街 複 合 体 だ け で は な い の で あ る。 草 の 根 の 地 球 市
民 に よ る 「グ ロ ー バ リ ズ ム」 も あ る こ と を 忘 れ て は な ら な い 。
皿
課 題 と展 望
1990年
代 後 半 に,イ
ン ター ネ ッ トへ の 包 摂 とい う形 で 進 ん だIT革
術 的 に は な お 発 展 途 上 に あ り,成
定 す るICの
(1/10億m)と
集 積 度 も,現
熟 段 階 と い う に は 遠 い 。PCの
段 階 の ミ ク ロ ン(1/1000mm)レ
命 も,技
処 理 能 力 を規
ベ ル か ら,ナ
ノ
い う分 子 レ ベ ル に さ ら に 飛 躍 す る 可 能 性 は 高 い(451し,通 信 能
力 は 光 フ ァ イバ ー 網 と ブ ロ ー ドバ ン ド化 に よ っ て 超 高 速 化 す る。 情 報 端 末 も現
状 のPCか
ら携 帯 電 話,情
報 家 電,特
に双 方 向 化 し たTV中
り も通 信 コ ス トが 低 額 で 固 定 化 さ れ れ ば,通
急 速 に 高 ま る こ と は 間違 い な い 。
心 に 変 わ る。 何 よ
信 量 も ウ ェ ブ サ イ トの 商 用 利 用 も
正Tセ 導 型 改 革 と21世 紀 の1{本 経 済131
1.新
セ ー フテ ィネ ッ ト
ネ ッ ト経 済 と知 識 集約 型社 会が そ の裏 面 と して 不安 定性 を持 ち,個 人 も国 家
もそれ と向 き合 って 生 きて いか ざ るを え ない とす れ ば ,そ れ にふ さわ しい新 し
い セ ー フテ ィネ ッ トの 設 置が 必 要 で あ る。2000年
の 日本 で 頻 発 した
,正 常 な
人 間 関係 を築 け な い ま まバ ー チ ャル な世 界 と現 実 の 世界 を混 同 し,殺 人 に走 っ
た17歳
の連 続 犯罪 事件 は,ネ
ッ ト社 会 の 負 の 面 を示 す …例 と もい え る
。情報
化 は,一 面 で個 人中心 の社 会 を創 り出す と同時 に 4他 方 で は 自動 化 と併 せ て過
度 の 人1二化 に よ って,自 然 と して の人 間 の力 を弱 め 衰弱 化 させ る傾 向 を もつ 。
しか しyこ れ は 単に情 報 化 だ け に よ る もので は な く,少
社 会の 崩壊,特
ヂ高齢 化 や 家 族 ・地域
殊 的 には戦 後 日本社 会 の過 度工 業化 が もた ら した脆 弱 な社 会 基
盤46),に も よるの であ る。
とは い え,情 報 化 に よ ります ます 強 ま る人 工化 ・バ ーチ ャル化が ,自 然 と し
て の 人 間 を 阻害 す る傾 向 は 今 後 強 ま りこ そ す れ 弱 ま る こ とは な い 。 した が っ
て,1業
化社 会 とは違 う情 報 化社 会 にふ さわ しい新 しい セ ー フテ ィ ネ ッ トの構
築 が 必 要 に な る。特 に,幼 児期 か ら義 務 教 育 の過 程 で ,自 然 にふ れ あ う様 々 な
実 体験 を積 み 重ね る1;夫 と,そ の 方向へ の教 育 制 度 全体 の 転換 が必 要で あ る。
義 務 教 育 は抽 象 的知 識 を詰 め込 む体 系 か ら実 体験 中心 の 教 育体 系 に変 え る こ と
が望 ま しい し,実 社 会に 出 る前 に1年 間の 社 会奉 仕 を義務 付 け る こ と も重 要で
あ る。 共 同体 と して の機 能 を失 っ た地 域社 会 を 回復 させ る ため に ,他 者の ため
に ボ ラ ンテ ィア と して働 く,国 家 の 機 能 を個 人 と地 域 社 会 が 部 分 的 に 代 替 す
る,新
しい 制 度 に転 換 す る こ と も必 要 で あ る(A71。
そ の た め に10年
に1回
,サ
バ テ ィカル イヤ ー を設 け ,地 域 社 会 に奉 仕 す る制 度 の 導 入 も検 討 す べ きで あ
る。 地 方 自治体 の 職 員 は,市 民 の ボ ラ ンテ ィア活 動 を援 助 す る補佐 役 と して働
くこ とにす れ ば よい。 国 家 中心 の 社 会 か ら個 人 と地域 社 会 中心 の社 会へ ,社 会
制 度全 体 の 編成 替 えが 求 め られ て い る。
2.科
学 技 術革 命 の 展 開
イ ンター ネ ッ ト革命 に続 くの は 生 命 科 学 革 命 で あ る とい わ れ て い るが ,ME
132商
経 言論「叢 第36巻
か らITへ
第3号
と続 くデ ジ タル革 命 は,生 命 科 学 や 宇宙 科 学 の 世 界へ の 扉 を開 く鍵
で あ り,通 路 で もあ る。21世 紀 の 日本経 済 を語 る場 合,IT革
命 に続 く生 命 科
学 と新 エ ネ ルギ ー 開発 の 問題 を検 討 してお く必要 が あ る。
(D生
命科 学 革 命
生 命 科 学 の ア ポ ロ計 画 とい わ れ,3⑪ 億 ドル が 投 入 され た 「ヒ トゲ ノ ム 計
画 」 に よって 「生 命 の設 計 図」 とい わ れ る遺伝f情
が,米
報 を解 読 す る プ ロ ジェ ク ト
欧 日の 科 学 者 の手 で 進 め られ て い る。 予 定 よ りも早 く2000年
解 読 が お わ り,2002年
で 遺伝 子
に そ の 配列 パ ター ンが ほ ぼ解 明 され 終 わ る と,遺 伝 」
二
操 作 に よっ て古 くなっ た り傷 つ い た血管 や 皮 膚,臓 器 の取 り替 え も可能 に な る
とい われ,人
間の 寿命 は さ らに伸 び る こ と に な る⑱こ とは 充分 予想 され る。既
に成 人 した人 間 の細 胞 を使 っ た クロー ン人間 の実 験 が 成功 す る段 階 に まで 来 て
い る とす れ ば,技 術 と生 命倫 理 を共 存 させ る原 則作 り(「 知 的 所 有 権」 の 制 限
等)が 急 が れ な けれ ば な らない。
そ の 結 果,21世
の2倍
紀 半 ば に は 人nは
約100億
人 に増 加 し,必 要 な食 糧 は 現 在
を超 え る とい う。 農薬 や化 学肥 料 の 大 量使 用 に よ る土壌 汚 染や 地 下水 の
枯 渇,砂 漠 化 の進行 等 に よって,耕 作 ロ
∫能 な 土地 が減 少 しつ つ あ る現 状 を考 え
れ ば,「 生命 科 学」 の成 果 を応 用 した 遺伝 子組 替 え作 物 は食 糧 危 機 に対 す る有
力 な手段 に な る こ とは間 違 い ない 。 い う まで もな く,遺 伝 子 操 作 は 万能 で は な
く,人 体 や 自然 に危 険 な影 響 を 与え る可 能性 は否 定 で きな い翻。 しか し,悪 化
す る地 球 環境 問題 を考 えれ ば,化 学 肥 料 と農薬 漬 けの 農業 を この ま ま続 け る こ
と も許 され ない 。 とす れ ば,生 命 科 学 の成 果 を農業 に取 り入 れ,生
かす こ とは
さけて は通 れ ない 道 で あ る。 したが って,こ の 面 か ら も,生 命 科 学技 術 と 自然
現 象 との 調和 を図 る新 しい原 則 の確 立が急 が れ る。
人 間や 自然 自体 が 操 作 対 象 と な る21世 紀 に はa従 来 の1二業 化 段 階 とは違 う
新 しい 原 則 とルー ル作 りが必 要 に な る こ とを銘 記 しな けれ ば な らない。 また,
そ の ため の体 制 作 りは,急務 で あ る。
(2)新
エ ネ ルギ ー 革命
石 油 が 開 い た20世
紀 の大 量 生 産 ・大 量 消 費 ・大 量 廃 棄 の 文 明 は,現 在 深 刻
ITt導
型 改 革 と21世 紀 の 日 本 経 済133
な大 気汚 染 と産 業廃 棄物 に よる環 境破 壊 や石 油 資 源 の枯 渇 とい う問 題 に直面 し
転換 をせ ま られ て い る。 年 々悪 化 す る地 球 温 暖 化 に伴 う異 常気 象 と,途
卜国,
特 に 人 口大 国 中 国や イ ン ドの経 済発 展 に伴 う石油 消 費量 の増 加 を 考慮 す れ ば ,
化石 燃 料 に代 わ る新 エ ネル ギー 源 の 開発 は,ま た緊 急 な課 題 であ る。
石 油 に代 わ る新 エ ネル ギ ー源 と して最 も期 待 され て い るの は水 素 で あ る。 水
素 は水 さえ あれ ば採 取 可能 で あ る しr燃 焼 に よって も有害 な排 気 ガ スが 出 な い
ク リー ンなエ ネルギ ー源 で あ る。 既 に水 素 を燃 焼 させ て発 電 し動 力 源 とす る燃
料 電 池 の 開発 が 進 んで お り,2002∼3年
に は燃 料電 池 で走 る 自動 車 が 実 用 化 さ
れ る とい われ て い る。 また,発 熱 を利 用 して冷 暖房 を行 うコ ジェ ネ レー シ ョン
発電 も実 現 して い る。 現段 階 で は 丁水 素 の採 取 コス トが か か りす ぎ ,採 算 ベ ー
スに 乗 る と ころ まで い っ て い な い醐。 当面,風 力 や 太 陽 光 発 電 な ど ,自 然 エ ネ
ルギー の 利用 を増 や す ほか ない が,省 エ ネ を促 進 し浪 費 を抑 制 す る こ とに よっ
て も相 当cO,を
3.新
削減 す る こ とが 出来 る、
、そ の場 合,ITが
果す 役 割 は 大 きい 。
しい原 則 と制 度
イ ン ター ネ ッ トに よ って地 球 が …つ に結 ばれ,生 命 科学 の発 展 に よ り人間 や
動 植物 自体 を操 作 し作 りか え る こ とが 可 能 にな る と,人 日 問題 もこれ まで の線
ヒで は扱 い 得 な くな るで あ ろ う。 また,近 代 の 人 間中心 主義 の 見直 しも避 け ら
れ な い。1業 化 社 会 の末 期 に は,自 然 の 一部 と して の 人 間 と人間が 作 り出 した
外 的環境 世界 との対 立が 重要 な問題 に な ったが,人
間 や 自然 自体 が 操作 対 象 に
な る と状 況 は 一変 し,人 間 を含 む 自然 の生 態 系 を破 壊 しない よ うに 自然 との 共
生 ・調和 を 図 る こ とがL要
な 課題 とな る。 その場 合,水 問 題 が あ らゆ る生命 を
維 持 す るため の死 活 的 な問題 に な る よ うに思 わ れ る。 自然 の 生態 系(秩 序)を
破壊 しな い ため に は,人 間 中心 主 義 を止 め,食 糧 ・資 源 の 限 度 に合 わせ た地域
内 自給 原 則 の確 立を検 討 す べ きで あ る。 『地球 環 境 自書 ・200⑪』 が 指摘 す る,
食糧 ・環境 が許 容 しうる範 囲 内 に人 口 を抑 制 す る人 口政 策 の 導 入〔51)も
検 討課 題
とな ろ う。
134商
経 論 叢i第36巻
第3号
注
(D構
造 不 況 に 関 す る 諸 説 に つ い て は,拙
制 度 史 学 』 第150写,1996年,参
(2)1997年
稿
「構 造 不 況 を め ぐ る 論 点 と 課 題 」 『ヒ地
照。
以 降 の 危 機 と そ の 意 義 に つ い て は,拙
稿
「戦 後 日 本 資 本1{義
の 危 機 一冷
戦 後 世 界 の 再 編 と 戦 後 再 生 産 構 造 の 分 解 一 」 『 ヒ地 制 度 史 学 』 第167caj72000年4
月,参
(3)そ
照。
の 意 義 と 批 判 に つ い て は,山
編 暑X2025f#=日
〔4)IT戦
口定
本 の構 想 』 岩波 、
塑 占,2000年lo月,参
略 会 議 は,2000年11月27日,H本
に3壬
目 定 ・神 野 直 彦
照 。
独 自 のITIq家ll標
の 草案 を 発 表 し た 。 そ れ に よ れ ば
を示 す
「5年 以 内 に 批 界 最 先 端 のIT国
「基 本 戦 略 」
家 」 とす る た め
万 世 帯 が 高 速 イ ン タ ー ネ ッ ト網 に 常 時 接 続 で き る 環 境 の 整 備 を 行 う,と
と で あ る 。IT戦
耐
「2111t紀 へ の 戦 略 設 定 」,山
金 担勝
略 会議
「IT基 本 戦 略 」 平 成12年11月27日
の こ
。
「グ ロ ー バ リ ゼ ー シ ョ ン ー 経 済 的 問 題 の 位 相 一 」 山lI定
他 編,前
掲 書,所
収 参照。
(6>拙
稿
「1980年
代 に お け る 口 本 資 本 主 義 のME化
と情 報 化 の 展 開 一そ の 意 義 と 限
度 一 」 『±二地 制 度 史 学 』 第131-F.i',1991年4月,参
の
電r商
照 。
取 引 の 成 立 過 程 と そ の 政 策 に つ い て は,谷
策 』 創 生 社,2000年3月,が
詳 し い 。 そ の 他,米
ミ ー 』 東 洋 緬 斉 新 報 社,199朗
こ,r同II』
10月,一
(8)佐
口洋志
『米 国 の 電f商
商 務 省
『デ ジ タ ル ・エ コ ノ
同 社,lc}yc)年,r同2000』1司
社 ・2000{r
参照。
々木 祐
一,北
山 聡 著,国
領
二郎 監 修(以
後 国 領 監fl参 と 略 す)『Linuxは
し て ビ ジ ネ ス に な っ た か 一 コ ミ ュ ニ テ ィ ・ア ラ イ ア ン ス 戦 略 一 』Nor出
年8月,2ペ
ー ジ。 岡 部
・明
(9)イ
版,2000
イ
ミ ュ ニ テ ィ ー で す 。 語 り 合 い.売
治 的 社 会 的 な 力 を 行 使 す る 人 々 の 共 同 体 で す 」(181)。
ン タ ー ネ ッ トの 成 立 史 に つ い て は,ニ
ー ル ・ ラ ン ダ ー ル 嵜,村
タ ー ネ ッ ト ヒ ス ト リ ー 』 オ ラ イ リ ー一 ・ ジ ャ パ ン,1999年6月
書,参
い か に
『イ ン タ ー ネ ッ ト 市 民 革 命 』 御 茶 ノ 水,彗 房,1996,「
ン タ ー ネ ッ ト は 単 な る テ ク ノ ロ ジ ー で は な く,コ
買 し,政
取 引 政
井純 監 訳
『イ ン
。 国 領 監 修,前
掲
照 。
(ro)国
領 監 修,前
(11)佐
野正博
号,29ペ
掲 書,3ペ
ー ジ。
「『IT革 命 』 と は ど う い う 革 命 か 」 『経 済 』 新H本
ー ジ 。 佐 野 はIT革
命 を
「情 報 に 関 す る プ ロ セ ス の オ ー ト メ ー一シ ョ ン 化 」
で あ り 「工 業 社 会 と 基 本 的 に 変 ら な い 」(32ペ
し 佐 藤 洋 一一は
出 版 社,2000年11月
ー ジ)も
の と して 捉 え る 。 こ れ に 対
「情 報 ネ ッ ト ワ ー ク は 機 械 制 大 工 業 の 延 長 線 ヒに は な い
様 式 』」,「 デ ジ タ ル 神 経 系 統 と ネ ッ ト ワ ー ク の 生 産 力 」 『L地
号,2000年1月,16ペ
ー ジ,と
し て い る 。 こ の 点 に 関 し て は,南
『独 自 な 生 産
制 度 史 学 』 第166
克巳
「『ポ ス ト 冷
IT}三 導 型 改 革 と21世 紀 の 日 本 経 済135
戦 』10年
の 経 済 的 帰 結 一 情 報 革 命 と 金 融 革 命 と の 世 界 史 的 連 繋 に 着 目 し て 一 」 「冷
戦 研 究 会 」 報H.toレジ ュ メ,1999年5月15日,も
掲 論 文,3]ペ
参 照 さ れ た い、
。
働
佐 野,前
側
こ の 点 に 関 し て は,「 デ ジ タ ル ・デ バ イ ド」 の 問 題 が あ る こ と を 承 知 し て い る
し か しSま
ば,性
ー ジ,
だ 始 ま っ て5年,技
術 進 歩 も 早 く,ま
。
だ 発 展 途 ヒに あ る こ と を 考 え れ
急 す ぎ る批 判 と い え よ う。
(14)金f勝
『反 グ ロ ー バ リ ズ ム 』 岩 波 書 店 ,1999年9月,は,こ
リ ゼ ー シ ョ ン批 判 で あ る 。 な お,前
ン 」 と い っ て い る が,ネ
⑯
国 領 監 修,前
個
我 が 国 で は,金f・
掲 最 新 論 文 で は 「ネ ッ ト ・グ ロ ー バ リ ゼ ー シ ョ
ッ トワ ー ク の 本 質 を 理 解 し な い ま ま 使 っ て い る
掲 爵,15ペ
。
ー ジ。
前 掲 書 を は じめ と して ,グ
多 国 籍 企 業 の 世 界 支配 と して
通 し て い る の は,NPOや
の段 階 の グ ロー バ
画 的 に 捉 え,こ
ロ ー バ リゼ ー シ ョ ンを ア メ リカ と
れ を批 判 す る 見解 が 多 い 。 そ れ に 共
ネ ッ ト ワ ー ク ・コ ミ ュ ニ テ ィの 視 点 が 欠 落 し て い る 点 で
あ る 。 ネ オ ナ シ ョ ナ リ ズ ム の 台 頭 に 対 し,よ
う や く 石 田 英 敬 等 の 「脱
ト ・ナ シ ョ ナ リ ズ ム 』」 『世 界 』 岩 波 再 店f2000年8月
号,の}{張
『パ ラ サ イ
が現 れるように
な っ た 、,
(]7)柿 本 真 「
情 報 化 と 資 本 ・i三
義 原 理 の 変 容 」 伊 藤 誠 編 著 『現 代 資 本 セ義 の ダ イ ナ ミ ズ
ム 』 御 茶 ノ水 書 房,1999年f152ペ
ー ジ。
(】8}ヘ ル ム ー ト ・シ ュ ミ ッ ト 『グ ロ ー バ リ ゼ イ シ ョ ン の 時 代 』 集 英 社 ,2000年5
月.シ
ュ ミ ッ トは グ ロ ー バ リ ゼ ー シ ョ ン を 批 判 しつ つ も,f.#:産 移 転 に よ る 途L国
対 す る メ リ ッ ト も 認 め 評 価 し て い る(同
書44ペ
ー ジ)。 そ の 点 で,我
に
が 国の経 済 ナ
シ ョ ナ リ ス トの 批 判 と は 違 っ て い る 。
(19y米
120)同
国 商 務 省,前
掲 爵 『2000』,vペ
ー ジ。
ヒ書 に よ れ ば,「 デ ジ タ ル ・エ コ ノ ミー と デ ジ タ ル 社 会 が
い る の で は な く,既
に 存 在 す る も の と な っ た 」 同k書
,xiペ
『
勃 興 』 しは じめ て
ー ジ,と
評 価 して い
る。
(21)小 林 雅
㈱
・ 『ス ー パ ー ・ス タ ー が メ デ ィ ア か ら 消 え る 日 』PHP研
∫L20ペ
ー ジ 。 「ITビ ジ ネ ス 全 報 告 」 『週 間 ダ イ ヤ モ ン ド』2000年10月28日
号,54ペ
ー ジ。
中 占 車 等 の ネ ッ トオ ー ク シ ョ ン の 場 合 が 典 型 例 と し て あ げ ら れ る 。 田 中 直 毅 氏 は
「価 格 は 需 要 側 が 提 示 す る と こ ら か ら始 ま る 」 点 がEエ
コ ノ ミ ク ス の 特 徴 で あ る,
と 述 べ て い る(『 市 場 と 政 府 』 東 洋 経 済 新 報 社,20(10年9月,393ペ
幽
究 所 ,2000年11
米 商 務 省 の デ ー タ に よ れ ば,銀
件 当 り1.07$f電
0.01$に
行 の 取 引 コ ス トは,支
話 で はo.52$tATMな
低 下 す る(『 新 資 本r義
らo.27$,イ
ー ジ)。
店 で 人 間 が 応 対 し た 場 合1
ン タ ー ネ ッ タ利 用 の 場 合
が 来 た 』 日 本 経 済 新 聞 社 ,2000年3月,22ペ
ー
136商
経 論 叢 第36巻
ジ)。
第3号
田 中 氏 は前 掲 書 で
「限 界 的 な 取 引 費 用 が ゼ ロ に な る と い う 状 況 が イ ン タ ー
ネ ッ トのilt界 に 登 場 し た 」(386ペ
鋤
ー ジ),と
こ の 点 に 関 す る 先 駆 的 な 研 究 に,南
=「
「ア メ リ カ 資 本i=.の
歴 史 的段 階 一 戦 後
冷 戦 」 体 制 の 性 格 規 定 一 」 『}=地 制 度 史 学 』 第47CIFJ,1970年41Lに
1-B(R&D型
(25}米
克巳
書 い て い る。
産 業)eの
商 務 省,前
掲f等
提 起 が あ る。
『2000』,151ペ
書,2000年10月,]19ペ
い る が,結
と,技
お け る
ー ジ、
、佐 和 隆 光
『市 場itの
ー ジ 。 佐 和 は ソ フ トの 世 界 の
論 の 急 ぎ す ぎ,と
思 わ れ る 。 ま だ,わ
術 が 発 展 途 一Lに あ る こ と,さ
「 ・人 勝 ち 」 論 を 展 開 し て
ず か の 歴 史 しか 持 た な い こ と
ら に は 最 近 のLINUXの
ン テ ル σ)「 変 調 」(llf,2000.ll.27)等
終 焉 』 岩 波 新
を み れ ば,ITの
急 成 長,PCの
覇 者 イ
本 質 理 解 を も う 少 し深
め る 必 要 が あ る よ う に 思 わ れ る。
(zs)II経,前
(27)神
幽
掲 書,31ペ
野 直彦
藤 出実
ー ジ。
「未 来 志 向 の 産 業 経 済 シ ス テ ム 」,lh口
「90年
代f1本
定 編 著S前
の 産 業 構 造 転 換 とIT産
掲 書,276ペ
ー ジ。
業 」 『経 済 』2000{1るIPP},96
ペ ー ジ。
⑳
間宮 陽 介
「グ ロ ー バ リ ゼ イ シ ョ ン と 公 共 空 問 の 創 設 」,111fl定,前
掲 書,123
ペ ー ジ。
(30)国
領,前
掲 書,ll2ペ
(31)国
際 投 機 の 当 事 者 が 語 る,ジ
経 済 新 聞 社,1999年,は
末 資 本 主 義 一 資 本i義
(32/11経,前
(33}国
掲 井,85ペ
ー ジ、
、 岡 部,前
ョ ー ジ ・ソ ロ ス
ー ジ。
「グ ロ ー バ ル 資 本i義
の 危 機 』lI本
既 に こ の 問 題 の 占 典 と な っ て い る 。 ナト村コ:S2F1代f「20世
は ど こ へ 行 く 一 」 『経 済 』2000年10月iiFf,20ペ
紀
ー ジ。
ー 訊 、
家 主 権 を 前 提 に す れ ば,他
NPOの
掲 書.2]5ペ
国 の 問 題 にllだ
し も 介 人 も 出 来 な い 。 し か し,
場 合 は 協 力 し て 問 題 の 解 決 に 当 っ て い る 。 山lI定,前
掲 書,18-19ペ
ー
ジ。
(:34)日 経,前
(35)立
花 隆 は
花 隆
(36)日
働
掲 書,83-4ペ
「現 代 人 の
ー ジ1、
『教 養 』 は バ イ オ の 知 識 を 抜 き に 成 り 疏 た な い 」 と い う 。 吃
『21世 紀 知 の 挑 戦 』 文 芸 春 秋 社,2000年7月,53ペ
経,前
掲 書,82ペ
ー ジ。
谷 口,前
掲 書,47ペ
ー ジU
(38)NHK特
領,前
集
「無 償ITの
掲 書,8ペ
衝 撃 」,2000年10月27日
ー ジ 参 照 。 同 書 に よ れ ば,99年
シ ェ ア で リ ナ ッ ク ス は24.6%(2位),38.1%の
存 在 に な っ て い る(96ペ
(39)「U米
ー ジ。
。Linux企
世 界(サ
業 に つ い て は,国
ー バ ー 用(]S)出
首 位 ウ ィ ン ド ウ ズNTに
荷
せ ま る
ー ジ)。
間 の デ ー タ 通 信 の 容 量 に は3300倍
の 開 き が あ る 」fl経,前
掲 書,207ペ
ー
IT主.導 型 改 革 と21世 紀 の 日 本 経 済137
ジ。
(40}米 商 務 省,前
掲 書,第4章
「企 業 動 向 か ら み た デ ジ タ ル ・エ コ ノ ミー 」199∼217
ペ ー ジ 。 日 経,同L書,16ペ
(41)篠HI徹
ー ジ。
は 「よ み が え れ 労 働 運 動 」,山 日,前
掲 書,258ペ
ー ジ で 「社 会 的 労 働 運
動 の 復 権 」 を}i張 して い る 。
吻
日経,前
佛}福L正
掲 書r92ペ
博
ー ジ。
「ニ ュ ー エ コ ノ ミ ッ ク ス 運 動 と 社 会 的 排 斥 問 題 」 『2000年 度L地
学 会 報 告 要 旨 』2000年10月,8ペ
圃
井 村rt代r氏
はi前
わ め て 低 迷 し,国
ー ジ。
掲 論文 で 「
独 占 の 世 界 的 再 編 ・強 化 に 対 し て,対
際 化 の 動 き も な い こ と は,20世
を 抱 え 込 む こ と に よ っ て 不 安 定 化 し,弱
抗 勢 力が き
紀 末 の 特 徴 で あ る 」(22ペ
と述 べ て い る 。 氏 は 独 占 の 強 化 と い っ て い る が,独
つ い て も,NPOや
制度史
占 の 力 はR&Dや
ー ジ)
ネ ッ トワ ー ク
化 し て い る と も い え るt,ま た,対
抗 勢力 に
ボ ラ ン テ ィア の 力 と そ の ネ ッ ト ワ ー ク に よ る 連 繋 の 力 を 見 落 と
し て い る 。 イ ン タ ー ネ ッ トに つ い て も,Linuxや
ハ ッ カ ー 文 化 の よ う な ネ ッ トワー
ク ・コ ミュ ニ テ ィの 運 動 と い う 対 抗 勢 力 の 存 在 を 無 視 し て い るC,日 本 の 対 抗 勢 力 の
特 徴 は,戦
後 冷 戦 ドで の 総 依 存 構 造 の ドで 展 開 さ れ た 反 米 ・反 権 力 運 動 の 残 像 を い
ま だ に 引 き ず っ て い る 点 に あ る 。 要 求 し批 判 す る だ け で 自 ら は 行 動 し な いC,NPO
や 市 民 運 動 の 世 界 で は 日 的 の 実 現 の た め に イ ン タ ー ネ ッ ト を 活 用 し連 帯 し て い る 。
筆 者 が 参 加 して い る 市 民 運 動 で も,地
方 参 政 権 の 問 題 に つ い て,こ
題 と し て 捉 え る 必 要 が あ る と い う 観 点 か ら,国
人
㈹
れ を 市民 権 の 問
際 連 帯 の 運 動 に 発 展 しつ つ あ る 。 一
・人 が 世 界 市民 と し て の ドいアを 求 め ら れ て い る よ う に 思 わ れ るu
ア メ リ カ の ク リ ン ト ン 大 統 領 は,2000年1月,2001年
に5億
ドル(500億
円)を
度 「国 家 ナ ノ 技 術 計 画 」
充 て る と 発 表 し た 。 月 尾 嘉 男 「ナ ノ 技 術 開 発 総 力 戦 で 」
『日 本 経 済 新 聞 』2000年10月2日
。
⑯
拙 稿,前
掲 論 文,「 加1ニモ ノ カ ル チ ャ ー 型 構 造 」(4ペ
㈲
「教 育 改 革 国 民 会 議 」(2000年3月
ー ジ)。
発 足 〉 が 同 様 の 答 申 を 出 し た が,同
家 に 奉 仕 す る 人 間 を 育 成 し よ う と し て い る と い う 点 で,本
幽
ll経,前
掲 書,178ぺ..」
@9)
日 経}前
掲 書:,182ぺ.・,
(5Φ
H経,前
掲 喬,198ペ
(51)
レ ス
月,231ペ
[付 記]本
タ ー
・R・
ブ
答 申 は国
稿 の 視 点 と は 異 な るC,
」
ー;%;,
ラ ウ
ン
『地
球 環 境
自
譜2000』
ダ
イ ヤ
モ
ン
ド 社
a1999年3
ー ジ 。
論 文 は,清
新 評 論,2000年3月,の
水 嘉 治 教 授 の 最 新 書 『激 動 す る 世 界 経 済 一21批 紀 の 重 要 課 題 一 』
問 題 提 起 に 刺 激 を 受 け て 書 か れ た も の で あ る 。 表 題 に21
138商
経 論 叢 第36巻
第3号
世 紀 の 日 本 経 済 と う た っ た が,日
な っ て し ま っ た 。 ま た,ITを
財 政 や 金 融,東
な り 般 論 的 な叙 述 に
軸 とす る 実 体 経 済 の 構 造 変 化 に 焦 点 を 当 て た た め,
ア ジ ア を 中 心 とす る 対 外 関 係 や 環 境 問 題 に つ い て は,ほ
る こ と が 出 来 な か っ た 。 な お,日
肚紀 に は 世kい
本 経 済 と い う よ り も,か
本 資 本i.eで
わ れ て い る よ うな 市場 原 理
た か っ た か ら で あ るti
は な く,日
と ん どふ れ
本 経 済 と し た の は,21
・
辺 倒 の 経 済 で は な くな る こ と を強 調 し
Fly UP