...

2005年8月号 - 信金中金 地域・中小企業研究所

by user

on
Category: Documents
28

views

Report

Comments

Transcript

2005年8月号 - 信金中金 地域・中小企業研究所
ISSN1346-9479
Shinkin Central Bank Monthly Review
第 4 巻 第 8 号( 通 巻 3 8 9 号 )
● 信 用金 庫は再 編にどう取り組むべきなのか?
● 地 域貢 献としてのN PO・コミュニティビジネス支 援
−創 業 支 援における新たな対 象として−
● 2 0 04 年 度の中 小 企 業の業 況と経 営 課 題
−財 務 体 質は改 善が続いたが、規 模 別・地 域 別 格 差は一 段と拡 大−
● 信 用金 庫の社 会 的 責 任(C SR)
とその情 報 開 示
● 中 国 華 東 地 域の投 資 環 境
−上 海 市 嘉 定 区の現 況−
● 第 12 0 回 全 国中 小 企 業 景 気 動 向 調 査
4∼6月期業況は2四半期ぶりの小幅改善
特 別 調 査−後 継 者 問 題について
● 統計
2005. 8
「信金中金月報掲載論文」募集のお知らせ
○対象分野は、当研究所の研究分野でもある「地域金融」「中小企業金融」「協同組織金融」に関
連する分野とし、これら分野の研究の奨励を通じて、研究者の育成を図り、もって我が国にお
ける当該分野の学術研究振興に寄与することを目的としています。
○かかる目的を効果的に実現するため、本論文募集は、①懸賞論文と異なり、募集期限を設けな
い随時募集として息の長い取り組みを目指していること、②要改善点を指摘し、加筆修正後の
再応募を認める場合があること、を特徴としています。
○信金中金月報への応募論文の掲載可否は、編集委員会が委嘱する審査員の審査結果に基づき、
編集委員会が決定するという、いわゆるレフェリー制を採用しており、本月報に掲載された論
文は当研究所ホームページにも掲載することで、広く一般に公表する機会を設けております。
詳しくは、当研究所ホームページ(http://www.scbri.jp/)に掲載されている募集要項等をご参
照ください。
編集委員会 (敬称略、順不同)
委 員 長
堀内昭義
中央大学総合政策学部教授
副委員長
藤野次雄
横浜市立大学国際総合科学部長(兼国際総合科学科長)
委 員
筒井義郎
大阪大学社会経済研究所教授
委 員
濱田康行
北海道大学経済学部教授
委 員
吉野直行
慶應義塾大学経済学部教授
問い合わせ先
信金中央金庫総合研究所「信金中金月報掲載論文」募集事務局(担当:松崎、照沼)
Tel : 03(3563)7541 / Fax : 03(3563)7551
Shinkin
Central
B a n k
Monthly
Review
特別寄稿論文
2005年 8月号 目次
信用金庫は再編にどう取り組むべきなのか?
研 究
名古屋大学 大学院経済学研究科教授
地域貢献としてのNPO・コミュニティビジネス支援
2
家森信善
澤山 弘
21
峯岸直輝
40
廣住 亮
60
丹羽弘之
76
総合研究所
99
−創業支援における新たな対象として−
調 査
2004年度の中小企業の業況と経営課題
−財務体質は改善が続いたが、規模別・地域別格差は一段と拡大−
信用金庫の社会的責任(CSR)とその情報開示
中国華東地域の投資環境
−上海市嘉定区の現況−
第120回全国中小企業景気動向調査
4∼6月期業況は2四半期ぶりの小幅改善
特別調査−後継者問題について
信金中金だより
信金中央金庫総合研究所活動状況(6月)
111
統 計
信用金庫統計、金融機関業態別統計
113
2005
8
個人名による掲載文のうち意見にわたる部分は執筆者個人の見解です。
投資・施策実施等についてはご自身の判断によってください。
特別寄稿論文
信用金庫は再編にどう取り組むべきなのか?
名古屋大学 大学院経済学研究科教授
家森 信善
【プロフィール】
1988年、神戸大学大学院経済学研究科博士前期課程修了。姫路獨協大
学助教授、名古屋大学助教授などを経て、2004年より、名古屋大学大
学院経済学研究科教授。経済学博士。この間、コロンビア大学、サン
フランシスコ連邦準備銀行などの客員研究員をつとめる。
『地域金融シ
ステムの危機と中小企業金融』千倉書房(2004年)で、商工総合研究
所・中小企業研究奨励賞本賞を受賞。Journal of Banking and Financeや
Journal of Financial Researchなどの海外学術雑誌にも多数の論文を発表。
(キーワード)ガバナンス、規模の経済、協同組織金融機関、再編・合併、ソフト情報、リ
レーションシップバンキング
(要 旨)
金融再編の大きな流れの中で、信用金庫の再編が急速に進んでいる。本稿では、まず、金融
機関の再編に関する先行研究を利用して、金融再編の理由や動機を整理した。その際、信用金
庫の組織特性などから、銀行の再編とは異なる問題があるので、協同組織金融機関の再編に関
する先行研究についても詳しく紹介した。その後、信用金庫再編の主たる動機である規模の経
済性について、簡単な統計分析によって議論した。信用金庫の費用構造において規模の経済性
は弱いながらも存在していると考えられるので、その意味で最近の合併の増加は理解できる。
しかし、本稿では、大規模化のデメリットも強調している。先行研究は、リレーションシッ
プバンキングにふさわしいのは小規模で階層性の少ない組織であると指摘しており、会員相互
の信頼に基づく顔の見える関係を重視したリレーションシップ貸出という信用金庫の強みが、
大規模化によって失われるおそれがあるからである。合併による無理な拡大は、信用金庫にと
って大きなマイナスを伴うことに十分な注意が必要であろう。
2
信金中金月報 2005.8
っており、30%の減少となっている。これら2
1.はじめに
業態の減少率ほどではないが、信用金庫の数
ヨーロッパでは1990年代に入る前から金融
も15%減っている。他方、対照的に、地方銀
コングロマリット化が進んでいた(Berghe
行の数には全く変化がなかった。
[1995])が、アメリカでも規制緩和の進展
2000年3月から2005年1月までの約5年の間に
(1994年の州際銀行業務効率化法による州際規
も、金融機関数は減少し続けている。都市銀
制の撤廃、1999年のグラム=リーチ=ブライ
行はさらに2行減り、かつてのほぼ半分になっ
リー法による銀証分離の撤廃など)で、新生
た。第二地方銀行も6行減って50行を切るよう
バンカメのような全米規模の大銀行やシティ
になった。しかし、2000年以降の顕著な特徴
グループのような銀行、証券、保険を傘下に
は、信用金庫・信用組合の大幅な減少である。
持つ巨大金融コングロマリットが誕生するよ
信用金庫はわずか5年の間に85金庫も数を減ら
うになった。わが国でも、2002年までに大手
している。
都市銀行は4つの金融グループ(メガバンク)
こうした金融機関の再編には、金融技術や
に集約されたが、さらに2005年度には三菱東
通信技術の発達といった環境の変化や、規制
京フィナンシャルグループとUFJグループの経
緩和などによる競争の激化への積極的な対応
営統合が予定されており、金融再編は非常な
という側面がある。したがって、経営再編に
スピードで進展している。
よって金融機関の経営が強化・効率化される
主要銀行に比べて再編が遅れているといわ
ことで、金融機関の顧客にとっても大きなメ
れる信用金庫界でも、近年、経営統合が活発
リットが生じるものと期待できる。たとえば、
化している。図表1は、わが国の民間金融機関
筆者の地元の東海地域の事例であるが、一宮
数の推移を示している。1980年と1990年の10
信用金庫、愛北信用金庫および津島信用金庫
年間を比較すると、信用組合はかなり減って
の合併計画の発表に対して、東海財務局長
いるが、その他の業態ではほぼ横ばいであっ
(2002年10月)は、「こうした取組みは、経営
た。1990年から2000年の10年間では、減少率
基盤の一層の強化や経営の効率化並びに中小
が最も大きかったのは都市銀行で、13から9に
企業者等に対する安定的な資金供給の確保に
減少(31%減少)している。信用組合も123減
つながり、顧客等からの信認を得て、金融シ
ステムの安定に資するものであり、
図表1 業態別の民間金融機関数の推移
都市銀行
地方銀行
第二地方銀行
信用金庫
信用組合
1980年3月
13
63
71
462
483
1990年3月
13
64
68
454
414
2000年3月
9
64
54
386
291
2005年1月
7
64
48
301
179
当局としても、これを高く評価し歓
迎するものである。」と発表してい
る。さらに、金融庁は、2002年12月に
「金融機関等の組織再編成の促進に関
(備考)井上[2003]およびニッキンホームページ資料より作成
する特別措置法」を成立させるなど、
特別寄稿論文
3
再編を積極的に進める立場を明確にしている。
になるかもしれないからである。第5節では、
しかしながら、金融機関、とくに信用金庫
本稿の議論をまとめ、今後の研究課題につい
の再編には、重大な副作用があることも忘れ
て述べる。
てはならない。そこで本稿では、金融の統合
が大きな流れとなっている中で、信用金庫が
再編にどのように取り組んでいったらよいの
かを考える。
具体的には、本稿の構成は次のとおりであ
2.銀行の再編
(1)銀行再編の目的
日本よりも金融機関の再編が先行している
欧米では、金融機関の合併の影響や背景につ
る。まず、金融機関の再編に関する先行研究
いての研究が盛んである。そこで、本節では、
を整理するが、信用金庫は一般の銀行とはガ
株式会社である銀行を念頭に置きながら、欧
バナンス構造が異なるので、協同組織金融機
米の研究に基づいて、最近の金融機関の再編
関の再編についての先行研究と銀行に関する
の目的とその背景を整理することにしよう。
先行研究とを分けて整理することが有益であ
金融機関が経営統合を選択する動機につい
ると考えられる。そこで、本稿では、第2節で
て、Berger et al.[1999]が過去の研究を広範
銀行についての先行研究を、第3節で協同組織
にサーベイしている。それによると、経営統
金融機関についての先行研究を紹介する。
合の主たる動機は、株式会社である銀行の場
第4節では、信用金庫の再編の主要な動機と
合、株主価値の最大化をはかることである(注)1。
考えられる規模の経済性について検討してい
しかし、現実には、経営者や政府などもステ
る。ここでは先行研究を紹介するとともに、簡
ークホルダーとして経営統合に影響力を持っ
単な統計分析を行って、信用金庫の費用構造
ており、株主価値以外の動機からの経営統合
に規模の経済性が存在することを確認してい
も起こりうる。特に銀行の場合、他の業界に
る。しかし、本節の主眼はむしろ、信用金庫
比べて株主のコントロール権は弱い。それは、
の再編には規模の不経済が働く可能性がある
銀行には厳しい規制が課せられており、たと
ことを指摘している点にある。Berger and Udell
えば、銀行を合併できるのは銀行のみであり、
[2002]などの先行研究はリレーションシッ
銀行合併には当局の許可が必要となるからで
プ・バンキングにふさわしい組織は、小規模
ある。さらに、アメリカでは、多くの銀行が
で階層性の少ない組織であると指摘している
小規模で株式が公開されておらず、TOB(株
が、合併による大規模化・組織の複雑化は、そ
式の公開買い付け)による脅威も少ないなど
うしたリレバン機能を発揮する上でマイナス
の事情がある。
(注)1.Berger et al.[1999]は、アメリカのクレジットユニオンについての統合状況も分析して、興味深いことに次のように結論
している。「(スリフト業界では統廃合が進み集中度が上昇しているが、)クレジットユニオン業界ではいまだに集中度が非常
に低い。おそらく、非営利性と、組合員が『連帯意識(common bond)』(例えば、同じ会社に勤めていること)を持ってい
ることがその理由であろう。
」
4
信金中金月報 2005.8
経営統合による株主価値の増大は、どのよ
大きくしたいと考える。第2に、経営者は企業
うなメカニズムで発生するのであろうか。
の破綻リスクを(株主が望むよりも)低くし
Berger et al.[1999]は、次の3点を挙げる。第
たいと考える。これは経営者の人的資本が、企
1に、価格設定力に代表されるような市場支配
業に特有のものとなっているために、企業倒
力(market power)の向上である。したがっ
産のコストが株主に比べて大きいからである。
て、この動機から行われる合併は、同一市場
この場合は、企業価値を高めるよりは企業の
内での統合(つまり、競争相手との合併)と
安定性を重視して統合が選択される。たとえ
いうことになる。第2に、効率性の改善である。
ば、TBTFで保護されるなら、経営者は、仮に
典型的に想定できるのが、大きくて効率的な
収益性が低下するとしても規模の拡大を選択
金融機関が、小さくて非効率な金融機関を吸
する動機を持つことになる。
収合併することである。効率的な金融機関の
政府も、企業価値の最大化とは異なった理由
持つ優れた経営ノウハウを活用することや規
から、金融機関の統合に影響を与える。たとえ
模の経済性の実現によって、非効率金融機関
ば、預金保険などのセーフティネットへの負担
の効率性が向上すると期待できる。また、規
や金融システムの安定性を考えて、ある種の
模の拡大によって小さな費用でリスク分散を
M&A(商業会社と銀行の合併)については禁
行うことができるようになる点も経営効率の
止している。また、独占禁止政策や(アメリカ
向上につながるであろう。第3に、政府の提供
では)地域再投資法という認可基準もある(注)2。
するセーフティネットによる保護の実質価値の
他方で、特に金融危機時に政府は、健全な金融
増大である。たとえば、Too-Big-To-Fail(TBTF)
機関に破綻金融機関を統合するように要請した
政策が実施されているとすれば、一定規模以
り、必要な資金支援を直接に行うことがある。
上になることで、無料で政府のTBTF保護を受
以上の議論を図示したのが、図表2であるが、
けることができ、それを反映して資
図表2 銀行再編の動機と目的
金コストなどが小さくなりうる。
市場支配力
他方、株主価値最大化以外の動機
としては、次のようなものが考えら
株
主
利潤
れる。まず、経営者の統合動機から
考えよう。経営者の動機の第1は、帝
国構築(empire buildings)意欲であ
経
営
者
私的利益
る。経営者の報酬や社会的な名声が
企業の規模に比例する傾向があるこ
効率性・規模の経済
銀
行
の
合
併
・
再
編
Too-Big-To-Fail
帝国構築
危険回避
政
府
信用秩序
金融システムの安定
とから、経営者は自らの企業をより
(注)
2.地域再投資法(CRA)は、金融機関の地元への貢献を義務づける法律である。詳しくは、家森[2004]や村本[2005]を参照
特別寄稿論文
5
株式会社の銀行であっても、複雑な要素が再
金融機関がB国に進出する場合、新たにB国に
編に影響していることがわかる。
支店網を整備していくよりも、B国の既存の金
融機関を買収した方が、より迅速に市場に参
(2)銀行の経営統合が増えた環境の変化
以上の動機は、1990年代になって急に生じ
入できる。
第5は、規制緩和である。従来禁止されてい
たわけではない。すると、近年の経営統合の
たようなM&Aが新たに許されるようになった。
増加にはどのような背景があるのだろうか。
たとえば、アメリカでは州を超えた銀行合併
Berger et al.[1999]の議論を参考にして、次
は禁止されていたが、1994年の州際銀行業務
の5つの要因を指摘することができる。
効率化法で解禁されると、州を超えた経営統
第1に、技術進歩である。新しい金融技術の
合が盛んになった。わが国の例でいえば、1968
導入が規模の経済性を高めている。このため、
年制定の合併転換法によって可能となった異
大規模化が有利となる。この議論が正しいか
種合併・転換が、法律制定後、数多く行われた。
どうかを検証するには、規模の経済性を計測
する必要があり、アメリカでは生産関数や費
用関数の推計が盛んに行われている(注)3。
3.協同組織金融機関の再編
(1)協同組織金融機関の再編理由
第2に、これはアメリカでの1990年代の話で
前節で見たように、株式会社である銀行の
はあるが、金融環境の改善である。金融機関
合併の第一の目的が株主利益の追求であるこ
の利益が増加し、株価が高くなり、他方で、金
とは共通の見解となっている。もちろん、現
利が低いために、M&Aの資金調達が容易にな
実には、株主の利害と経営者の利害が一致し
った。
ないエージェンシー問題のために、株主の利
第3に、過剰能力の蓄積である。過剰能力が
益を犠牲にして経営者の利益が優先されて実
市場にあると、一部の供給者は退出を余儀な
現した再編もあるし、逆に、そうした経営者
くされる。その典型的な形態が、企業破綻で
の利害から株主にとって望ましい再編がブロ
ある。しかし、企業破綻ではフランチャイズ
ックされていることもあると考えられる。
価値も失われてしまい、企業所有者にとって
しかし、株式会社である銀行とは異なった
は望ましくない。そこで、M&Aに応じること
ガバナンス形態が信用金庫ではとられている
で過剰能力を削減することが、破綻が予想さ
ことから、銀行にとっては重要な理由も信用
れるような金融機関の株主にとっては、望ま
金庫においてはそれほど重要ではないことも
しいことになる。
考えられる。
第4に、経済のグローバル化である。A国の
第1に、信用金庫などの協同組織金融機関で
(注)
3.日本の銀行に関する最近の研究としては、Hori[2004]やDryake and Hall[2003]がある。たとえば、後者では、地方銀行
クラスでは規模の経済性が存在するが、都市銀行クラスになると規模の経済性は消滅しているとしている。
6
信金中金月報 2005.8
は、そもそも利益を追求しているわけではな
つこのような手間をかけて再編を実施する主
く、会員の相互扶助が本来の目的である。し
体にはそれに見合った報酬がもたらされない。
たがって、信用金庫の借り手は基本的に金庫
(株式会社なら、当該会社の業績が回復すれば
の会員であるから、
(少なくとも原理的には、
)
その果実を持ち分に応じて受け取ることがで
信用金庫が市場支配力を増して借り手から高
きるので、大株主にはそうした再編を働きか
い金利を取るということが、信用金庫合併の
けるインセンティブがある)
。このために、信
動機であるとは考えにくい(注)4。第2に、北海
用金庫において、敵対的な買収を伴う再編は
道拓殖銀行や日本長期信用銀行といった超大
ほとんど起こることがないといえる。
型の金融機関が破綻したことから、信用金庫
他方で、協同組織金融機関の経営者が合併
が合併によって多少大きくなってもそれによ
を希望した場合、その合併は(現実のガバナ
ってToo-Big-To-Failの対象になるとは考えにく
ンス構造から)比較的容易に実現すると考え
い。したがって、信用金庫の合併においては、
られる。ほとんどの協同組織金融機関の場合、
効率性・規模の経済のみが重要な所有者側の
総会ではなく総代会制度が採用されている。た
動機として残ることになる。
とえば、会員数26.5万人の京都中央信用金庫の
一方、信用金庫の合併においては経営者の
総代数は182人(2004年3月期)であり、この
役割が銀行以上に重要であると考えられる。株
総代に十分な説明をして理解を得られれば、合
式会社では発行株式の3分の2以上の賛成を得
併が認められることになる(注)6。総代の選出の
れば合併が認められるわけで、市場で株式を
透明性を高め、総代会の権限を強化する努力
買い増すといった行為によって多数派を形成
がリレバン・プログラムで進められているが、
することが可能になる。しかし、協同組織金
総代会で経営者の提案が拒絶されることはな
融機関では一人一票制となっており、その投
いのが実態であると考えてよい(家森[2004]
)
。
票権は他人に売却することができないので、文
つまり、協同組織金融機関においては経営者
字どおり多数の会員の賛成を得る必要がある。
のイニシアティブが強く発揮されるので、経
たとえば、全国の306の信用金庫の会員数はお
営者が乗り気の「友好的」な再編は実現しや
およそ910万人であるので、1金庫の平均会員
すい。
数は3万人で、原理的には、合併などの重要議
このように、協同組織金融機関の再編には、
決には(会員がすべて総会に参加したとして)
株式会社とは異なった要因が作用しているこ
2万人の賛成が必要となる(注)5。これだけ多数
とは確かであり、信用金庫の再編を考える場
の人を説得するのは非常に手間がかかり、か
合、海外の協同組織金融機関の再編を扱った
(注)
4.Yamori, Hariyama, and Kondo(forthcoming)では、地域銀行の持ち株会社型の統合を対象にして、地域での市場シェアが高
まる場合には、利益効率性が高まることを見出した。
5.合併や事業の全部譲渡などの重要事項について、信用金庫法(48条)は、
「総会員の半数以上が出席し、その議決権の3分の
2以上の多数による議決を必要とする」と定めている。
6.厳密には、合併などの重要事項については、総代会の決定を会員総会で覆すことができる。
特別寄稿論文
7
文献についても十分に吟味しておく必要があ
に、合併前後での効率性の改善を、合併前の
るが、わが国では銀行再編の研究に比べて紹
特性(財務指標など)で回帰する。
介される機会が少ないように思われる。そこ
彼らの研究の主な結論は次のとおりである。
で、本節では、協同組織金融機関の再編に関
①買い手の方がターゲットよりも、合併前に
する先行研究を紹介していくことにしよう。
おいて効率的である。②買い手の効率性は、合
併によっても落ち込まない。③ターゲットの
(2)協同組織金融機関の再編の効果
効率性は改善する。④ターゲットの効率性の
Fried et al.[1999]は、協同組織金融機関
改善は、合併1年目から観察される。⑤ターゲ
(具体的には、クレジットユニオン)の合併の
ットの効率性の改善は、買い手から優れた経
影響を扱った最初の研究である。クレジット
営スキルや新しい商品が提供されることを反
ユニオンには、非営利性(not-for-profit)、会
映している。
員による所有、会員資格(common bond)とい
上述の結論はサンプルの平均値に基づくも
った特徴があるために、利潤極大化を目的に
のであるが、改善の大きさにはばらつきがあ
する銀行とは異なり、所有者である会員に対
る。合併によって効率性に改善の見られたク
する金融サービスの最大限の提供がクレジッ
レジットユニオンは、買い手側で約50%、タ
トユニオンの目的になっていると、Fried et al.
ーゲット側で約80%に達している。ターゲッ
[1999]はとらえている。
ト側では、合併前に不良債権比率が高いほど、
彼らは、1989年から1994年に合併に関与し
効率性の改善が見受けられる。これは、買い
たクレジットユニオン1,654社を対象にして、
手側の経営関与によって、不良債権の管理や
合併前後のパフォーマンスを比較するという
回収ノウハウが改善するためであると、Fried
方法で分析している。具体的には、会員への
et al.[1999]は説明している。
金融サービスの指標としては、預金量と預金
Fried et al.[1999]がアメリカのクレジット
金利(高金利が望ましい)
、貸出量と貸出金利
ユニオンの合併に伴う効率性の変化を分析した
(低金利が望ましい)、取引高(transaction
のに対して、Ralston et al.[2001]は、オースト
volume)
、サービスの多様性(クレジットカー
ラリアのクレジットユニオンの効率性に対する
ド、保険など)
、の6つを考えている。そして、
合併の影響を分析した。すなわち、Ralston et al.
DEA(という統計的手法)によって各クレジ
[2001]は、1993-1995年に合併を行ったクレジッ
ットユニオンの効率性スコアーを計算して、こ
トユニオンの合併1年前から合併3年後までの
れを、合併側(買い手)
、被合併側(ターゲッ
費用効率性を(DEAによって)計測している。
ト)
、合併と関連しない全体で比較する(注)7。次
オーストラリアでも、買い手のクレジット
(注)7.クレジットユニオンの場合、合併側(acquiring)が資金を支払うわけではないので、「買い手」というのは厳密には適切で
はないであろう。ここでは、便宜的な用語として「買い手」を使う。
8
信金中金月報 2005.8
ユニオンの規模は、ターゲットはもちろん、業
ニオンのそれは全般的に高かった(SE=0.889、
界平均と比べても相当大きい。貸出/資産比
TE=0.734)点である。第2に、1994/1995年
率も買い手のクレジットユニオンのほうが、タ
の合併には、前年度に合併を行ったクレジッ
ーゲットや業界平均よりも高い。ターゲット
トユニオンが5社あり、こうしたところでは、
のROAはマイナスであり、経営困難から合併
以前の合併が十分消化できなかったこともあ
に至るものが少なくないことを示している。一
ろう。第3に、マクロ経済環境の影響である。
般準備/資産比率(=擬似的な自己資本比率)
オーストラリアでは、1995/1996年に景気が
は、買い手が4.0%、ターゲットが7.3%、全体
落ち込んでいるが、景気の悪い時期の効率性
が5.6%となっている。つまり、ターゲットに
が悪く出ている(つまり、1993/1994年のサ
なるクレジットユニオンは、規模が小さく、過
ンプルでは合併2年後、1994/1995年のサンプ
去の蓄積はあるものの、近年、収益力が大幅
ルでは合併1年後)ために、両年度の合併後3
に悪化しているということになる。
年間の平均的な効率性の改善に違いが生じて
さて、Ralston et al.[2001]のDEAに基づく
いる可能性がある。
効率性の計測結果によれば、1993/1994年の
以上のように、アメリカとオーストラリア
合併に関しては、買い手のクレジットユニオ
での研究では、たとえばターゲットと買い手の
ンの規模効率性(SE)は0.714、技術的効率性
どちらが事前に効率的であったかや、合併後の
(TE)は0.629であり、ターゲット側のクレジ
効率性の改善などについて一致した結果が得ら
ットユニオンのSEは0.754、TEは0.657であり、
れておらず、定説はないという状態である。
いずれの指標でも、ターゲットの方が効率的
なお、わが国に関しては、井上[2003]が
となっている。同様の傾向は、1994/1995年
1989年度から1998年度に起こった33の信用
の合併についても見られる。
金庫の合併について、経費率などの推移を
合併前後でのSEやTEの変化を見ると、
(業界全体と)比較している。それによると、
1993/1994年の17の合併については、13事例
①合併信用金庫は合併前に経費効率性が悪い、
でSEは向上しており、TEは15事例で向上して
②合併後6年ほどで、ようやく全体と同じ程度
いる。しかし、1994/1995年の14の合併につ
に経費効率性が改善する、③経費改善の主な
いては、SE、TEとも12の事例で悪化している。
源泉は人件費の節約である、④店舗に関して
こうした年度による違いが生じる理由として、
は目立った合併効果は見られなかった、とい
彼らが第1に指摘しているのは、1993/1994年
う結果を得ている。ただし、先行研究とは異
に合併に関与したクレジットユニオンの平均
なり、単純な経費率を使った分析であり、規
的な効率性が悪かった(SE=0.750、TE=0.666)
模の効果などをコントロールできていないた
ために、改善の余地が大きかったのに対して、
めに、さらなる検証が必要であることは間違
1994/1995年に合併に関与したクレジットユ
いがない。
特別寄稿論文
9
(3)協同組織金融機関の合併選択の要因分析
経営者の動機が銀行の合併選択に影響を与
えていることを示す研究が多数ある(Palia
(3)
規制当局主導仮説(破綻しそうなところの
合併を促す)といった3つの仮説が検証されて
いる。
[1993]
、Hadlock et al.[1999]など)
。協同組
彼の分析結果によると、まず、規模が小さ
織金融機関は、一人一票制をとること、持ち
いほど、また低成長であるほど、合併を選択
分を売却することができず、TOBが機能しな
している。彼は、これを経営者主導仮説の証
いことなどから、経営者の力は株式会社より
拠と考えている。なぜなら、経営者は規模や
も強いと考えられているだけに、協同組織金
成長が大きいことを望む(処遇や所得がそう
融機関の合併選択行動を分析する場合、経営
した変数と比例)からである。他方、自然淘
者の動機を考えることは重要である。
汰仮説は、利益の係数が有意ではないことか
Thompson[1997]は、イギリスの代表的な
ら否定されている。一方、損失を計上したか
協同組織金融機関である建築組合(Building
否かというダミー変数の係数は、有意にプラ
Society)の合併(1981年から1993年)の要因
スとなっており、彼はこれが規制当局主導仮
分析を行っている。彼は、協同組織のガバナ
説を支持していると解釈している。
ンスが(株式会社に比べて)弱いという一般
合併選択自体を直接に扱ったのが、
Worthington
論を示した後で、興味深いことに、必ずしも
[2004]である。この研究では、オーストラリ
そうではない理由もあることを説明している。
アの協同組織金融機関(クレジットユニオン)
(1)
株式会社である銀行の経営者も様々な塹壕
の合併選択の要因分析を行っている。彼は、協
(entrenchment)を構築することが可能であ
同組織と株式会社である商業銀行との間では
る。
(2)
協同組織機関は株式会社と違って、株
合併に関する動機が異なると主張する。まず、
式の発行によって規模を大きくすることはで
第1に、所有構造の相違である。協同組織の場
きず、利益の内部蓄積によって資本の増強を
合には所有が分散化しており、株式会社にお
はかるしか方法がない。経営者が大規模化や
けるようなTOBは起こりえない。したがって、
高成長を望む限り、経営者は利益の最大化を
協同組織の合併は(破綻処理にかかわるもの
目指すはずである。
(3)
経営の不健全な協同組
を除けば)すべて「友好的な」合併しかない
織金融機関に対しては、預金者が預金引き出
と指摘している(注)8。また、一人一票制の制度
しの形で牽制する。
から利潤最大化ではなく、会員へのサービス
彼の研究では、協同組織金融機関である建
の最大化を目的にしている。しかしながら、同
築組合の合併においては、(1)自然淘汰仮説
時に、金融環境の変化のもとで、規制当局や
(ダメなところが吸収される)
、
(2)
経営者主導
経営陣は利潤追求の姿勢を強めていることも
仮説(経営者の目的に沿って合併が行われる)
、
指摘している。たとえば、自己資本比率規制
(注)
8.オーストラリアではクレジットユニオンの清算も稀であり、多くは合併の形で処理されているという。
10
信金中金月報 2005.8
はクレジットユニオンに資本の増強を求める
明変数間の多重共線性を考慮して、説明変数
ことになるが、資本の増強は利潤の留保によ
を減らしたモデルでは、前述の有意な変数に
ってのみ可能であり、このためには利潤を増
加えて、買い手になる要因として、純利子収
やすことを経営目的としなければならなくな
入/総貸出がプラスの符号で有意になり、ま
る。また、協同組織には共通の連帯(common
た、ターゲットになる要因として、高流動性
bond)が存在しており、一方で成長の制約に
資産/総資産がマイナスの符号で有意となっ
なるが、他方で会員の忠誠心を高めることに
た。つまり、収益力が高いほど買い手となり、
もなっている。つまり、通常の銀行と比べて、
流動性が乏しいほどターゲットになるという
協同組織の合併の目的は複雑である。
ことである。
そこで、Worthingtonは、合併(買い手)
、被
4.信用金庫再編と規模の経済性・不
経済性
合併(ターゲット)
、非合併(合併に関与しな
かったもの)の3つの状況を被説明変数とする
(1)着実に進む平均規模の拡大
multinominal logit modelを使って、合併の要
因分析を行っている。主な要因として説明変
図表3にあるように、1991年から2003年に信
数に加えられたのは、自己資本比率、資産の
用金庫の平均規模(預金積金の金額)は1,934
質(不良債権比率)
、経営能力(DEA法により
億円から3,448億円に1.78倍に拡大している。と
推計された効率性指標で代理)
、収益性(純金
くに、2001年から2003年の2年間で、平均規模
利収入/総貸出、総支出/総収入)、流動性
は500億円近く拡大している。
図表4には、業界内の一定の規模順位での預
(高流動性資産/総資産)、規模(総資産の対
数値)
、連帯性(職域か地域かなど)
、である。
金積金の金額の推移を示してみた。たとえば、
その結果、経営能力が高い(効率性が高い)、
上位10%という線は、各年度の信用金庫の上
あるいは、規模が大きい場合に、買い手にな
位10%に相当する信用金庫の預金積金の額を
る確率が高まることを見いだしている。また、
示している。たとえば、1991年には440金庫あ
規模が小さい場合に、ターゲットになる確率
ったので、44位の信用金庫の預金積金の額で
が大きいことも明らかになった(注)9。また、説
ある。すべての層で規模が拡大していること
図表3 信用金庫の平均規模
年度
信用金庫数
平均値(億円)
メディアン(億円)
1991
440
1,934
1,082
1993
428
2,113
1,197
1995
415
2,317
1,309
1997
401
2,455
1,373
1999
386
2,643
1,493
2001
343
2,974
1,690
2003
306
3,448
1,914
(備考)金融図書コンサルタント社『全国信用金庫財務諸表』(各年度版)に基づき、著者計算
(注)9.Worthingtonの研究では、そのほかに、合併組合と被合併組合が同じボンドか(つまり、職域か地域か)というダミー変数
が有意である。しかし、合併選択の動機として、(具体的な組み合わせがあって初めて判断できるという意味で)事後的な変
数を採用することは必ずしも説得的ではないと考えられる。
特別寄稿論文
11
が読み取れるが、顕著なのは上位層での平均
られるとの結果を報告している(注)11。さらに、
規模の拡大である。1991年と2003年を比較す
規模の経済性は預金規模4,000億円程度(図表
ると、最も規模拡大率が大きかったのは、
4でいえば、預金規模上位20%層あたり)でほ
(10%ごとに区切っていったとき)、上位20%
ぼなくなることも報告している。
層であった(1.97倍)(ただし、図の見やすさ
ここでは、2004年3月期の最新のデータを使
を考えて、図中には描いていない)
。このよう
って、経費率に規模の経済性が見られるかを
に、小さなところが集まって中規模の信用金
検証してみよう。図表5は、2003年度の信用金
庫を作るというよりも、中規模以上の信用金
庫(306)の預金経費率(=経費/期末預金積
庫が合併して大規模信用金庫を作るという事
金)と規模(期末の預金積金〈単位 百万円〉
例が多かったようである。
の自然対数値)との関係を示してみたものであ
る。図表5に、単回帰を当てはめてみると、次
(2)信用金庫の規模の経済性
のような結果になる。
(図の直線がそれである)
。
もし信用金庫の費用構造に規模の経済性が
Y = 3.051 − 0.125X、
あれば、その面で、合併や統合はメリットと
(20.241)
(-10.179)
2
adj−R =0.252
なるはずである。規模の経済性とは、規模が
ここで、Yは預金経費率、Xは預金の自然対
大きくなるほど単位あたりのコストが小さく
数値であり、括弧内の数値はt値である。Xの
なる状況を指す。したがって、大規模機関ほ
係数は有意にマイナスであり、規模が大きい
ど、たとえば100万円の貸出をより低いコスト
ほど経費率が下がる傾向が読み取れる。つま
で実施することができるので、小規模機関に
対して競争上有利となるわけである。
図表4 相対的規模順位でみた預金積金額の推移
(億円)
8,000
信用金庫の規模の経済性についての最近の
研究には、播磨谷[2004]がある(注)10。同論文
では、1999年度から2001年度の信用金庫のデ
6,000
ータを使って、信用金庫の規模の経済性を計
5,000
測しているが、平均規模の信用金庫では規模
4,000
の経済性があるとしている。したがって、規
3,000
模が大きくなることが有利であることを示唆
上位 10%
7,000
下位 10%
中位値
下位 30%
上位 30%
2,000
している。また、井上[2003]も2002年3月期
1,000
の信用金庫のデータを使って、業務粗利益を
0
生産物と考えた場合には、規模の経済性が見
1991 92
93
94
95
96
97
98
99 2000 01
02
03
(年)
(注)
10.Fukuyama[1996]は、1992年度の信用金庫のデータを使って、規模の大きな信用金庫ほど効率性が高いという結果を報告して
いる。
11.ただし、業務収益を生産物と考えると規模の経済性は認められない。
12
信金中金月報 2005.8
図表5 預金経費率と規模の関係(2003年度)
図表6 経常収益率と規模の関係(2003年度)
(%)
(%)
2.5
140
120
2.0
経 100
常
収 80
益 60
率
40
預
金
経 1.5
費
率
1.0
20
0.5
9.8
10.8
11.8
12.8
13.8
14.8
0
9.8
預金(対数値)
り、規模の大きな信用金庫ほど経費面での優
位性が大きいことを意味している。
13.8
11.8
預金(対数値)
これと預金規模との相関をグラフ化したの
が、図表6である。これをみると、経費率ほど
ただし、規模項の係数-0.1251がどの程度の
の明確な関係は見られないが、それでも規模
意味を持つかで、現実的な重要性は大きく変
が大きいほど経常収益率は高い傾向が読み取
わってくる。そこで次のような試算をしてみ
れる。先と同じように単回帰分析を行ったと
た。すなわち、預金規模150位と151位という
ころ、次のような結果が得られた。
ほぼ中位の信用金庫が合併した場合を考えた。
Y = 6.313 + 3.212X、
この時、預金規模は12.144(150位信用金庫)
(0.420)(2.621)
2
adj−R =0.019
から12.843に0.699増加するだけであるので、経
ここで、Yは経常収益率、Xは預金の自然対
費率の引き下げ効果は1.53%から1.44%への
数値であり、括弧内の数値はt値である。決定
0.09パーセントポイントにすぎず、誤算の範囲
係数が低いので明確な結論とすべきではない
ともいえる。
が、確かにXの係数はプラスとなっている。経
次に、利益面での規模の経済性を見てみよ
済的な重要性を考えるために、先と同じよう
う。利益の指標として純利益を利用すること
に150位と151位の信用金庫が合併した場合の
が多いが、信用金庫の場合、そもそも利益を
経常収益率の変化を試算してみると、45.3%か
上げることが経営目的ではないという根本的
ら47.6%への上昇に過ぎない。この経常収益率
な理由と、最近のように不良債権の処理が巨
の標準偏差が21.5もあることから考えると、こ
額になっているために純利益の変動が大きい
の上昇は誤差の範囲内と評価できる程度のも
という技術的な理由から、ここでは、経常収
のである。
益(サービス提供の総量と考えられる)を会
以上より、ある程度の規模の経済性が信用
員勘定(資本部分に相当)で割った経常収益
金庫に存在していることは間違いがないが、そ
率を事業の成績の代理変数としてみることに
の規模の経済性の大きさはそれほど大きなも
した。
のではないといえそうである。
特別寄稿論文
13
(3)大規模化によって失うもの
以上の分析は弱いながらも規模の経済性が
の情報に加えて、オーナーの財政状況や履歴
を考慮に入れて信用度を判定する手法である。
存在していることを示唆しているので、大規
ただし、アメリカでは25万ドルまでの貸出に
模な信用金庫の方が有利だと考えられること
使われているだけである。
になる。しかしながら、そうした単純な数値
リレーションシップ貸出は、ソフト情報(オ
計算を超えた、規模の拡大によるデメリット
ーナーの性格や信頼度など)に基づくもので
が存在する点をここでは強調しておきたい。
ある。ソフト情報とは、会計指標などのハー
ここでは、リレーションシップバンキング
ド情報と対をなす概念で、長い時間をかけて、
にふさわしい組織形態は、小規模で階層性の
企業、オーナー、あるいは地域社会との関係
少ない組織であると指摘しているBerger and
を通じて集められるもので、定量化したり、情
Udell[2002]の議論を紹介しよう。もし彼ら
報生産者以外の人が立証したり、情報生産者
の議論が正しければ、信用金庫の大規模化は、
以外に正確に伝達することが難しい情報であ
信用金庫の売り物であるリレバン機能を阻害
る。つまり、リレーションシップ貸出は、貸
することになりかねない。
付担当者によるソフト情報の獲得プロセスに
Berger and Udell[2002]は、中小企業貸出
依存した貸出手法であり、
(ソフト情報を最も
には大きく分けて取引ベース貸出(transaction-
多く持つ)貸出担当者により大きな権限を与
based lending)とリレーションシップ貸出と
える必要がある。
があるという。取引ベース貸出は、ハード情
しかし、この権限の委譲は銀行内部でのエ
報に基づくもので、さらに3つの手法に分類さ
ージェンシー問題を深刻化する。なぜなら、貸
れる。第1が、財務諸表に基づく貸出である。
出担当者は新規ローンを行うインセンティブ
これは、情報開示の進んだ企業で、厳格な会
を持っているので、ソフト情報を過剰に生産
計監査を受けている企業に対する取引手法であ
して、過剰貸出になりがちであるし、
(ソフト
る。第2が資産ベース貸出(asset-based lending)
情報の利用を継続することにメリットを感じ
である。これは、担保の質に基づいた融資であ
るために)借り手の状況悪化を隠そうとする
る。日本では、担保といえば不動産が多いが、
可能性(いわゆる追い貸し)もある。したが
Berger and Udell[2002]によると、アメリカ
って、不適切なリレーションシップ貸出が行
では受取手形や在庫品が担保とされることが
われないようにするには貸出担当者を監視す
多い。したがって、資産ベース貸出は優良な
る必要があるが、ソフト情報を管理階層間で
受取手形などの担保を持つ企業との取引手法
共有することは難しいので、管理階層をなる
である。第3が、クレジットスコアリングであ
べく減らすことが重要である。極端な場合、
る。これは、消費者ローンの手法を中小企業
CEOが貸出担当者でもあるような小さな組織
貸出に応用したもので、企業の財務諸表から
では、この種のエージェンシー問題は発生し
14
信金中金月報 2005.8
ない。
さらに、大組織の場合、貸出担当者と意思
ップ貸出を行う有利な組織構造であるといえ
よう。
決定者の間で情報をやりとりする必要がある
同様の考えは、Stein[2002]でも示されて
が、定量化できない主観的なソフト情報を、上
いる。彼も、ソフト情報とハード情報にはそ
層部に伝えることは定義的に難しい。大規模
れぞれふさわしい組織形態があるとして、ハ
銀行の場合は、管理を行うために何層もの経
ード情報の取扱いは大規模機関が向いており、
営組織が必要になるが、リレーションシップ
ソフト情報を扱うのには、なるべく階層性が
貸出のソフト情報の伝達は困難になる。する
少なく、経営者が貸付担当者を管理しやすい
と、ソフト情報に基づく貸出担当者の融資実
小さな組織が向いていると指摘している。
行の推薦は、そうした情報を持たない意思決
こうしたソフト情報の取り扱いにおける小
定者によって拒絶される可能性が高い。窓口
規模機関のメリットを実証したのが、Scott
担当者は苦労して生産した情報が利用されな
[2004]である。彼は、ソフト情報を小規模金
くなるので、ソフト情報を生産するインセン
融機関がより良く生産しているかを、アメリ
ティブを持たなくなる。こうして大銀行では
カの中小企業に対するアンケート調査を利用
ソフト情報の生産そのものが行われなくなり、
して分析している。具体的には、まず、中小
ハード情報に基づいた融資が行われることに
企業に金融機関の評価ポイントを5段階評価で
なる。
尋ねている。
「あなた自身やあなたのビジネス
また、小規模銀行では経営者と株主の間の
について知っていること」には、64%の企業
関係も緊密である。しかし、大規模銀行では
が5段階中の最高点(5)を与えている。以下、
一般の株主に貸出ポートフォリオの質を説明
各項目で5を付けた企業の比率は、「あなたの
する必要があるが、リレーションシップ貸出
産業を知っていること」が30%、
「地元市場や
で構成されるポートフォリオの質に関する情
地元社会を知っていること」が32%、
「貸付担
報を伝えることは難しい。また、大銀行は地
当者との親密な関係」が17%となっている。
理的にも幅広い市場を相手にすることになる
Scott[2004]はこうしたアンケート回答の
が、その地域独特のソフト情報を(地域外に
結果を統計的に処理(主成分分析)して、ソ
ある)本部に吸い上げることは難しいという
フト情報の評価の強さの尺度を作った上で、実
側面もある。
証研究を行っている。その結果によると、小
これらの点から、Berger and Udell[2002]
規模金融機関と取引している企業ではソフト
は、リレーションシップ貸出は小規模機関の
情報の評価が高い。また、貸出担当者の交代
方が有利に行えると結論している。信用金庫
が少ないほど、ソフト情報の評価が高い。金
の場合、地域密着しており、株主がいない点
融機関と企業の取引年数そのものは有意な説
から、地域銀行と比較してもリレーションシ
明力を持っていない。要するに、Scott[2004]
特別寄稿論文
15
の結果では、小規模金融機関がソフト情報の
を得て、2004年3月に、東海地方の企業8,472社
生産において有利な点を持っていること、ま
に対してアンケート調査を行い、684社から回
た、そのソフト情報の生産においては、貸出
答を得た。全部で55の質問を行ったが、その
担当者の存在が重要になることを示している。
内、
「現在の取引金融機関について評価できる
金融機関と企業の取引期間の長さがあまり影
点」を尋ねた結果を、現在のメインバンクの
響していないことは、組織としての情報では
業態別に整理したのが、図表7である。図表7
なく担当者のレベルでの情報が重要であるこ
の左側は、もっとも評価する項目の選択比率
とを示している。
を整理したものであり、右側はもっとも評価
Scott[2004]の議論から、担当者の長期継
する項目に3点、次に評価する項目に2点、3番
続性がリレーションシップを形成する上で重
目に評価する項目に1点の加重点数を付けた上
要であることがわかる。しかし、一般に大規
で、各項目の合計点数を出して、各業態ごと
模機関では転勤が頻繁で、一つの企業を長く
にその相対的な重要性を計算したものである。
担当しないのが普通である。この点でも、転
まず、もっとも評価している項目に関する
勤の少ない小規模金融機関に優位性が存在す
回答を見ると、都市銀行をメインバンクにし
ることになる。
ている企業では「貴社に対する知識」をあげ
日本に関しては、筆者のアンケート調査結
る比率が26.8%であるのに対して、信用金庫を
果を紹介しよう(多和田・家森[2005]およ
メインバンクにしている企業では39.5%と高く
び家森[2005])。筆者らは、東海資本市場研
なっている。このようにソフト情報を信用金
究会(事務局 野村證券名古屋支店)の協力
庫の顧客が求めていることが伺える。しかも、
図表7 メインバンクの業態別に見た金融機関の評価点
(単位:%)
貴社に対する知識
もっとも評価する項目
地銀・ 都市銀行
信用金庫
第二地銀
26.8
43.0
39.5
事業に関するアドバイス
の提供
ファイナンスの供与
6.5
5.3
4.7
14.3
7.2
11.6
融資スタッフの継続性
5.9
6.8
7.0
貴社の属する産業分野の
知識
意思決定のスピード
2.2
2.4
2.3
11.4
17.4
16.3
広範なサービスの提供
18.1
6.8
8.1
4.3
3.9
3.5
貴社の活動する地域市場
に関する知識
(備考)「もっとも評価する項目」に関しては、無回答も含めた比率で示している。
16
信金中金月報 2005.8
評価項目の加重点数
地銀・ 都市銀行
信用金庫
第二地銀
24.3
31.6
31.0
9.5
7.6
4.3
12.9
6.6
8.2
7.6
10.4
14.6
4.9
4.3
4.9
14.0
20.8
18.3
19.4
10.8
8.4
7.3
7.7
10.3
「意思決定のスピード」が信用金庫において高
く評価されている点も重要である。
いし、多くの会員が無関心となりやすい。第2
は、会員資格が限定されていることである。た
次に、加重点数を見ると、信用金庫の強み
とえば、農業者のクレジットユニオンと建築
として「融資スタッフの継続性」や「貴社の
労働者のクレジットユニオンが合併すること
活動する地域市場に関する知識」といった項
は会員資格の上で難しい(注)14。こうした協同組
目も重要であることがわかる。逆に、都市銀
織機関ゆえの困難さを回避しつつ、規模の経
行の顧客のように「広範なサービスの提供」は
済などのメリット受けるために、州や連邦レ
信用金庫の顧客では重視されていない。つま
ベルでの中央機関が創設されたと、Frame and
り、信用金庫の顧客が信用金庫に望むソフト
Coelli[2001]は解釈している。
情報の利用は、大規模な都市銀行では提供で
そして、彼らは、連邦レベルの機関(U.S.Central
きない機能であり、大規模化によって信用金
Credit Union)への預け金比率が高いほど、ク
庫の強みが失われるおそれがあることを意味
レジットユニオンの効率性が(統計的に有意
するのである(注)12。
に)高いことを明らかにしている。したがっ
て、彼らの研究は、協同組織金融機関の効率
(4)協同組織金融機関の合併以外の選択肢
以上の議論をまとめると、合併などの大規
模化にはメリットもあるが、デメリットも存
性を改善するために、合併の代替策として中
央組織の活用がありうることを示唆している
と考えられる。
在するということである(注)13。合併以外の方法
わが国でも信金中央金庫などの中央機関が
によっても、効率性の改善が可能であるなら
各協同組織金融機関ごとに存在しており、そ
ば、その方向を探ることも一つの方法であろ
の活用をうまく図れば、合併をしないで経営
う。選択肢の一つは、中央機関を利用するこ
効率性を改善するという選択肢も成り立つと
とである。
考えられる。
Frame and Coelli[2001]は、協同組織金融
機関が合併・統合によって効率化を目指すこ
とには、銀行に比べて2つの困難さがあること
5.むすび
近年、信用金庫の再編が急速に進んでいる。
を指摘している。第1は、協同組織の原則であ
本稿では、金融機関の再編一般に関する先行
る一人一票制である。これは投票権が完全に
研究をまず紹介した。その際、信用金庫の組
分散している状況であり、多数派工作が難し
織特性などから、銀行の再編とは異なる問題
(注)12.また、Amess and Howcroft[2001]は、イギリスのクレジットユニオンのコーポレートガバナンスについての分析から、
大規模化に否定的である。それは、小規模で会員資格が限定されていることで、クレジットユニオンは、金融活動に付随す
る暗黙の契約問題、モラルハザード問題、逆選択問題に効率的に対応できており、小規模の協同組織であるクレジットユニ
オンはガバナンス構造上の優位点を持つと考えられるからである。
13.Bassett and Brady[2001]は、1985年から2000年の期間のアメリカについて、大銀行と小銀行の預金の成長率や収益性を
比較して、小銀行の優位性を見出している。彼らは、小銀行が金利の高い貸出を実行していることにその理由を求めている。
この点でも、小銀行のリレバン重視というのは有力な生き残り策だということになる。
14.ただし、Frame and Coelli[2001]によると、1998年の法改正で一定の条件の下で、複数の会員資格が認められることになった。
特別寄稿論文
17
があるので、協同組織金融機関の再編に関す
Rosengren[1998]は、金融機関の再編によっ
る文献についても詳しく紹介した。その後、再
て小企業融資が減るとは限らないことをアメ
編の動機の一つである規模の経済性について
リカのケースについて明らかにした。一般に、
先行研究の展望および簡単な統計分析によっ
銀行の規模が大きくなると、中小企業貸出の
て議論した。信用金庫の費用構造において規
伸び率は小さくなるが、Peek and Rosengren
模の経済性は存在していると考えられるので、
[1998]は、合併後の中小企業貸出の動向にと
その意味で最近の合併の増加は理解できる。
って合併前の買い手側の中小企業貸出比率が
しかし、本稿では、大規模化のデメリット
重要であることを見出した。つまり、もし合
も存在することを指摘した。端的にいえば、会
併前に中小企業貸出比率の高い銀行が、低い
員相互の信頼に基づく顔の見える関係を重視
銀行と合併した場合には、合併銀行は、一旦
したリレーションシップ貸出という信用金庫
下がってしまった中小企業貸出比率を高めよ
の強みが、大規模化によって失われるおそれ
うとするというのである。彼らの研究は、合
があるということである。事業規模の成長を
併の主導権を持っている銀行の中小企業貸出
はかることは自然なことであるが、合併によ
比率が、合併後の銀行の中小企業貸出比率に
る無理な拡大は、組織にとって大きなマイナ
大きく影響することを示唆している。つまり、
スを伴うことに十分な注意が必要であろう。
合併において、主導する側が中小企業貸出に
最後に、今後の研究課題について述べてお
積極的に取り組んでいる場合には、中小企業
きたい。第1に、現実の信用金庫合併の評価で
貸出に対してマイナスの影響はないというわ
ある。これについては、本稿で紹介したよう
けである。この例が日本でも成り立つなら、信
に井上[2003]が試みているし、家森・播磨
用金庫同士の合併なら中小企業貸出に問題は
谷[2004]においても一部行っているが、ま
少ないが、信用金庫が大銀行に吸収される場
だ十分な結果が得られているとはいえず、今
合には問題が生じるということになろう。し
後の課題として残されている。とくに、本稿
かし、こうした研究は日本ではまだほとんど行
でも述べたように、信用金庫のガバナンス上
われておらず、今後の重要な研究課題である。
の特性から、合併選択における経営者の役割
を明示的にとらえた分析が必要であろう。
第2に、再編・合併の地域社会に与える影響
〈謝辞〉
である。本稿では、当事者である信用金庫の
本論文は、2003年度に日本経済研究奨励財
問題に限定して合併・再編を論じたが、信用
団から研究助成を受けた研究、および、独立
金庫の地域における重要性を考えれば、当該
行政法人・経済産業研究所の地域金融研究会(主
合併が地域にどのような影響をもたらすかも
査 筒井義郎・大阪大学教授)で進めている研
議論する必要がある。たとえば、Peek and
究の成果の一部である。記して感謝したい。
18
信金中金月報 2005.8
〈参考文献〉
Amess, K., and B. Howcroft “Corporate Governance Structures and the Comparative Advantage of Credit Unions,” Corporate
Governance 9, 59-65, 2001
Avery, R. B., and K. A. Samolyk “Bank Consolidation and Small Business Lending : The Role of Community Banks,” Journal of Financial
Services Research 25, 291-325, 2004
Bassett, W. F., and T. F. Brady “The Economic Performance of Small Banks, 1985-2000,” Federal Reserve Bulletin, November, 719-728,
2001
Berger, A. N., R. S. Demsetz, and P. E. Strahan “The Consolidation of the Financial Services Industry : Cases, Consequences, and Implications
for the Future,” Journal of Banking and Finance 23, 135-194, 1999
Berger, A. N., A. Saunders, J. M. Scalise, and G. F. Udell “The Effects of Bank Mergers and Acquisitions on Small Business Lending,”
Journal of Financial Economics 50, 187-229, 1998
Berger, A. N., and G. F. Udell “Small Business Credit Availability and Relationship Lending : The Importance of Bank Organizational
Structure,” Economic Journal 112 32-53, 2002
Berghe L. V. (ed.) Financial Conglomerates : New Rule for New Players? Kluwer Academic Publishers, 1995(家森信善監訳『金融
コングロマリット:新しいプレーヤーに新しいルールは必要か?』文研叢書24号、生命保険文化研究所(1998))
Davis, K. “Credit Union Governance and Survival of the Cooperative Form,” Journal of Financial Services Research 19, 197-210, 2001
Drake, L., and M. J. B. Hall “Efficiency in Japanese Banking : An Empirical Analysis,” Journal of Banking and Finance 27, 891-917, 2003
Frame, W. S. and T. J. Coellli “U.S. Financial Services Consolidation : The Case of Corporate Credit Unions,” Review of Industrial Organization
18, 229-242, 2001
Fried, H. O., C. A. K. Lovell, and S. Yaisawarng “The Impact of Mergers on Credit Union Service Provision,” Journal of Banking and
Finance 23, 367-386, 1999
Fukuyama, H. “Returns to Scale and Efficiency of Credit Associations in Japan : A Non-parametric Frontier Approach,” Japan and the
World Economy 8, 259-277, 1996
Hadlock, C., J. Houston, and M. Ryngaert “The Role of Managerial Incentives in Bank Acquisitions,” Journal of Banking and Finance
23, 221-249, 1999
Hori, K. “An Empirical Investigation of Cost Efficiency in Japanese Banking,”『金融経済研究』第21号(2004年12月)
Palia, D. “The Managerial Regulatory, and Financial Determinants of Bank Merger Premiums,” Journal of Industrial Economics 16, 91102, 1993
Peek, J., and E. S. Rosengren “Bank Consolidation and Small Business Lending : It’s not just Bank Size that Matters,” Journal of Banking
and Finance 22, 799-819, 1998
Ralston, D., A. Wright, and K. Garden “Can Mergers Ensure the Survival of Credit Unions in the Third Millennium?” Journal of Banking
and Finance 25, 2277-2304, 2001
Scott, J. A. “Small Business and the Value of Community Financial Institutions,” Journal of Financial Services Research 25, 207-230, 2004
Stein, J. C. “Information Production and Capital Allocation: Decentralized versus Hierarchical Firms,” Journal of Finance 57, 1891-1921,
2002
Thompson, S. “Takeover Activity among Financial Mutuals: An Analysis of Target Characteristics,” Journal of Banking and Finance 21,
37-53, 1997
Worthington, A. C. “Measuring Technical Efficiency in Australian Credit Union,” The Manchester School 67 (2) 231-248, 1999
Worthington, A. C., “Determinants of Merger and Acquisition Activity in Australian Cooperative Deposit-taking Institutions,” Journal
of Business Research 57, 47-57, 2004
Yamori, N., K. Harimaya, and K. Kondo (forthcoming) “Are Banks Affiliated with Bank Holding Companies More Efficient than Independent
Banks? The Recent Experience regarding Japanese Regional BHCs” Asia Pacific Financial Markets.
井上有弘「信用金庫の規模の経済性と合併効果―生産関数の推計と合併事例による分析―」
『信金中金月報』増刊号(2003
年2月)
多和田眞・家森信善編『躍進する東海地域の金融構造と産業クラスター』中央経済社(2005年3月)
筒井義郎「信用金庫の経営効率性」
『信金中金月報』
(2004年8月号)
特別寄稿論文
19
播磨谷浩三「信用金庫の効率性の計測」
『金融経済研究』第21号(2004年12月)
村本孜『リレーションシップ・バンキングと金融システム』東洋経済新報社(2005年2月)
家森信善『地域金融システムの危機と中小企業金融―信用保証制度の役割と信用金庫のガバナンス―』千倉書房(2004
年3月)
家森信善「信用金庫の再編と顧客の望む信用金庫の機能」
『信用金庫』(2005年3月)
家森信善・播磨谷浩三「信用金庫のガバナンスと合併の選択」北海道大学濱田康行教授研究室など主催「シンポジウム
協同組織金融機関の現代的意義とガバナンス」
(2004年11月26日から27日 於 札幌市)報告論文
20
信金中金月報 2005.8
研 究
地域貢献としてのNPO・コミュニティビジネス支援
−創業支援における新たな対象として−
信金中央金庫 総合研究所主席研究員
澤山 弘
(キーワード)地域貢献、社会貢献、NPO、コミュニティビジネス、創業支援
(視 点)
NPO・コミュニティビジネスは、地域の新たな成長産業として近年脚光を浴びてきており、
地域金融機関がこれらを支援していくことは、新規貸出先の開拓につながると同時に、地域貢
献を通じたプレゼンスの向上にも役立つように思われる。
そこで本稿では、地域貢献策としてNPO・コミュニティビジネス支援を進めるとした場合の
意義を考えるとともに、NPO・コミュニティビジネスに対する助成を中心とした支援の事例
や、地域金融機関が自らNPOを立ち上げた事例を紹介し、さらに、それを創業支援における新
たな対象として取り込んでいく際の行政や起業支援NPOとの協働の事例も紹介したい。
(要 旨)
●
NPO・コミュニティビジネスは、介護や子育て、まちづくりといった地域が直面する様々な
問題の解決を目指すもので、商店街の振興や、地域産業の活性化に役立っている例も多い。
したがって、彼らを積極的にバックアップしていくことは、地域が求める地域貢献のひとつ
と考えられ、地域金融機関の社会的評価を高め、「イメージアップ戦略」にも資すると思わ
れる。全国信用金庫協会も、04年5月、地域循環型の市民事業を支援することは信用金庫の
社会的使命そのものであるとする「コミュニティビジネス支援研究会報告」を発表している。
●
労金業界では、
「NPO紹介リスト」による寄付金の無料振替や、
「社会貢献定期預金」を募集
し利子の一部に自らの拠出金を加えて資金援助するNPO助成制度や、ボランティア参加を募
る「ボランティアセミナー」の開催などを実施している。信金業界でも、奈良中央信金によ
る同様の助成制度や、永和信金の「ボランティア派遣制度」などの事例がある。さらに、但
陽信金や新庄信金では、福祉や、環境保全、まちづくりのNPOを自ら立ち上げている。
●
これまでも、地域金融機関が創業支援に取り組んできた事例は多いが、今後は、その支援対
象にNPO・コミュニティビジネスも取り込んでいくことが考えられよう。これらの担い手は
専業主婦や定年退職者などであり、創業経験に乏しい者も少なくないが、創業支援を進める
場合、中小企業支援センターや、起業支援NPOと協働していくことが有益だろう。
研 究
21
シップバンキングの機能強化計画」は、重点
1.地域プレゼンス高めるNPO・コミ
ュニティビジネス支援
項目のひとつとして、地域貢献を掲げた。こ
地域金融機関がNPO・コミュニティビジネ
ージャーにおいて、従来にも増して様々な形
スの支援に取り組むとした場合、その意義は、
で地域貢献策を提示しようと努めてきている。
大きく言えば、ふたつの視点からとらえること
地域貢献をいかに進めていくかが、金融機関
ができると、本稿では考えている。第1は、コ
経営上、ひとつの大きな課題となってきたと
ミュニティビジネスは地域の新たな成長産業
いえよう。
のため、多くの地域金融機関が、ディスクロ
の一翼を担うものなので、地域金融機関にとっ
ただし、地域金融機関の側では、これまで
て新規貸出先の開拓を通じた貸出基盤の拡大
地域貢献といえば、
「お祭りなどへの参加」や
につながるという視点であり、第2は、それが
各種「ボランティア活動」などの社会貢献を
地域貢献を進める地域金融機関として地域に
指すことが多かった。実際、その内容も、献
おけるプレゼンスを高めることに役立ち、競合
血運動や募金活動、交通安全運動への協力や、
先との差別化を可能にするという視点である。
植樹、清掃活動、少年野球大会やゲートボー
ここでは、後者の視点、すなわち、NPO・コミ
ル大会の開催など、多岐にわたってきている。
ュニティビジネスを支援していくことは、地域
しかし、実際に地域の企業が地域貢献とし
金融機関に求められている地域貢献と密接につ
て期待していることと、地域金融機関のほう
ながるものであり、金融機関同士の激しい競争
で地域貢献だと考えていることとの間には、
の中で、自らのブランドイメージを引き上げ、差
ややギャップがあるようだ。
別化していくことを可能にすると思われるとい
う点から、まず、その意義を考察する(注)1。つい
で、地域金融機関におけるNPO・コミュニティ
ビジネスに対する助成を中心とした支援や、自ら
NPOを立ち上げた事例を紹介し、さらに、それ
を創業支援における新たな対象として取り込ん
図表1に見られるとおり、地域の企業が実際
図表1 地域金融機関に望む地域貢献活動
(複数回答、%)
地域産業等の活性化支援
商店街振興等への支援
地域中核企業の再生支援
地域プロジェクトへの参加
地域経済の分析
行政に対する地域活性化提言
でいくとしたら、どのように進めたらよいのかと
いった点について、事例をもとに述べてみたい。
NPOへの理解
会議室等の利用・開放
お祭りなどへの参加
その他ボランティア活動
(1)地域が求める地域貢献とは地域の活性化
03年3月に金融庁が発表した「リレーション
0 10 20 30 40 50 60 70
(備考)信金中央金庫「第113回全国中小企業景況調査 特別
調査―地域金融機関との関係について」
(『信金中金月報』
2003年11月号)より作成
(注)
1.本稿で述べるような考え方が、あくまでも筆者個人の考えであることは言うまでもない。地域金融機関における地域貢献の
あり方については、さまざまな視点から提言が行われており、この点については、今後改めてリレーションシップバンキング
の全般的な枠組みの中で考察を進める予定である。
22
信金中金月報 2005.8
に地域金融機関に望んでいるのは、
「地域産業
農業者の支援を通じて地域産業の活性化を図
等の活性化支援」や「商店街振興等への支援」
っている例もある。このように、NPO・コミ
など、経済的な意味での地域貢献なのである。
ュニティビジネスは、地域の様々な課題を、自
こうした経済的な意味における地域貢献に
分たちの手で少しずつでも解決に導き、地域
ついては、
「本業で果たしている」というのが
を元気にしていこうとして成長してきている
大方の反応かもしれない。しかし、地域の企
ので、彼らのそうした活動を支援していくこ
業が求めているものが、地域の活性化や地域
とは、今後地域金融機関が果たしていくべき
振興、言い換えれば、地域が直面する様々な
地域貢献活動において重要なもののひとつに
課題の解決につながっていくような活動に対
なっていくと考えられよう。これこそ、地域
する支援であるとすれば、たんに、借入の申
密着を旨とする地域金融機関の使命に合致す
し込みに応じて貸出すとか、資金需要を聞い
ると思われるのである。
て回るといった受身的な対応だけでは、地域
貢献しているとはいえないことになろう。
全国信用金庫協会は、04年5月、「コミュニ
ティビジネス支援研究会報告」を発表した。同
地域の企業が求めている支援への期待に応
報告では、信用金庫が「地域循環型の市民事
えていくためには、そうした漠然と資金需要
業を支援することは、中小企業向け金融サー
を待つという姿勢から一歩踏み出す必要があ
(注)4
ビスと同様に社会的使命そのものである」
る。地域そのものを元気にしていくために、一
としており、
「資金的支援」と「非資金的支援
緒になって汗をかき知恵を出すことを通じて、
(経営支援等)
」の両面から、
「市民事業」を支
地域の産業や商店街の活性化などの課題解決
援していくことを提言している。本稿も、こ
そのものを支援していくことが求められてい
の提言に深く賛同するものである。
るのである。
NPOの活動分野として最も多いのは高齢者
(2)積極的な地域貢献による社会的評価の高
介護や子育てであるが、まちづくりも4割近く
まり
のNPOが活動分野として掲げている(注)2。また、
しかも、NPO・コミュニティビジネスを支
商店街の中に開設された高齢者向けデイサー
援していくことは、地域金融機関にとっても
ビスセンターや託児所が、商店街への集客力
大きな便益をもたらすと考えられる。
を高め、中心市街地の活性化をもたらした例
メガバンクなどとの競争においては、いか
も多い。さらに、後述する「バイオマスもが
にして地域金融機関側のヴィジビリティやプ
(注)3
(新庄市)のように、地元の有機
みの会」
レゼンス(存在感)を高めていくかが鍵を握
(注)
2.詳しくは、拙稿「拡大著しいNPO法人の現況 ―地域の問題解決図る新しい担い手層の成長―」
(澤山[2005a]
)参照
3.本稿2.(2)ロ参照
4.「市民事業を支える地域金融の可能性を開く ∼紡ぐ事業の芽吹くうるおいのある地域創造に向けて∼」
(全国信用金庫協会
[2004]
)P. 1参照。なお、ここで言う「市民事業」は、同研究会自体、
「コミュニティビジネス支援」と銘打っていることから
推察されるように、本稿で言う「NPO・コミュニティビジネス」とほぼ同義であると考えられよう。
研 究
23
ると思われるが、その際、地域活性化への積
近年、株式投資などにあたって、企業の環
極的な貢献は有力なセールスポイントになる
境保全への取組状況などをひとつの判断基準
と思われるからである(注)5。
として、投資先を選別していくSRI(=Social
今 後 、 次 第 に CSR(=Corporate Social
Responsibility Investment、社会的責任投資)
Responsibility、企業の社会的責任)の重みは
の考え方が広がってきている。預金の運用に
強まっていく。これからの地域社会において、
おいても、自分の預けるお金の使い道をより
少子高齢化や環境問題に関わっていこうとす
社会に役に立つものにしたいと考え、自分た
るNPO・コミュニティビジネスの重要性は、
(注)6
が登場してきて
ちで貸付ける「市民金融」
いっそう増していくはずである。そうしたな
いる。今後、地域の一般預金者も、自らの預
か、自ら地域の福祉や環境に関心を持つ地域
金が地域のためにどのように使われ、活かさ
金融機関として、彼らを積極的にバックアッ
れていくのかといったことへの関心を強め、そ
プしていくことは、自己の先進性の証明につ
れを金融機関選別の際のひとつの基準にして
ながり、社会的評価を高め、存在価値を示す
いくといったことが考えられる(注)7。この点か
「イメージアップ戦略」に資すると考えられよ
らも、こうした流れに積極的に応えていくこ
う。一種のブランドが構築され地域での評判
とは、真に地域に貢献する金融機関としての
が高まる結果、競合する他の金融機関との差
評判を広め、地域の信頼を勝ち得て、預金者
別化も可能になり、経営基盤の強化にも役立
に選ばれる金融機関にしていくことを可能に
つと思われる。
するように思われる。
時代は明らかに転換しつつあるようだ。そ
うした新たな潮流を積極的に支援し、さらに
は自ら身を投じていくことこそ、地域金融機
関に今日最も求められているもののひとつで
2.NPO・コミュニティビジネス支援
の先進事例
(1)NPO・コミュニティビジネス支援を地域
あり、これこそが、たんにメガバンクなどの
貢献の中に位置づけ
侵攻に対抗していくための手段となるばかり
地域貢献としてNPO・コミュニティビジネ
でなく、地域の再生を真に担っていくという
スを支援していく意義について、本稿では以
点で、社会的存在価値を高めていく道につな
上のように考えてみたが、それでは、NPO・
がるのではないだろうか。
コミュニティビジネスへの支援を行うとした
(注)5.この点で、最も積極的にNPOローン等に取り組み、成果を挙げているのは労働金庫業界であろう。すでに、NPOの人たち
の間では、
「福祉金融機関」を標榜する労働金庫の存在は、それなりに認識されてきているようだ。
6.「市民金融」は、1989年に片岡勝氏と永代信用組合(当時)が提携して設立した「市民バンク」(東京都)を嚆矢とするが、
自分たちで資金を集めて自分たちで貸し出すという試みとしては、「未来バンク事業組合」(東京都、94年)と、「女性・市民
信用組合設立準備会」
(神奈川県、98年)が先駆けとなった。2000年代に入ってからは、
「北海道NPOバンク」
(北海道、02年)
、
「NPO夢バンク」
(長野県、03年)
、
「東京コミュニティパワーバンク」
(東京都、03年)
、
「ap bank(アーチストパワーバンク)
」
(東京都、04年)など、新たな設立が相次ぐようになってきている。
7.まだ萌芽段階とはいえ、こうした動きは、NPOによる「『口座を変えれば世界が変わる』キャンペーン」といった形で始ま
っている。http://www.aseed.org/ecocho/campaign/forum.html参照
24
信金中金月報 2005.8
ら、具体的にはどのように始めたらよいのだ
紹介していくこととする。
ろうか。本章では、各種の助成制度を創設し
たり、自らNPOを立ち上げたりするなど、す
でにこれらへの取組みを進めている地域金融
機関の事例を紹介してみたい。
イ.労金業界の取組み
さて、わが国でNPO支援を最も先進的に進
めてきているのは、NPOローンを2000年4月に
なお、以下では「NPO支援」の事例を中心
全金融機関に先駆けて開始した労金業界であ
に取り上げていくが、ここで、NPOとコミュ
ると考えられるので、まず同業界の様々な取
ニティビジネスの違いについて簡単に整理し
組みから紹介してみよう(注)9。
ておいたほうがよいかもしれない(注)8。
NPO法人とは、99年末から新たに設立が認
①「紹介NPOリスト」による寄付金自動振替
められるようになった法人格であり、株式会
労金業界では、早くから、NPOやボランテ
社や、有限会社、社会福祉法人、財団法人な
ィア団体等について、為替手数料や残高証明
どと並ぶもののひとつである。NPOとは、
「事
書発行手数料などの各種手数料を免除したり、
業体、組織の形態」についての概念なのであ
NPOへの寄付金を無料で自動振替したりする
る。これに対して、コミュニティビジネスと
などの支援を進めてきた。
「紹介リスト」によ
は、地域の課題の解決を図っていこうとして
る寄付システムは、各地のNPOサポートセン
近年成長してきている様々な「事業の内容」に
ターなどが推薦した「紹介NPOリスト」から、
ついて定義付けようとするものであり、実際
顧客がサポーターになりたい団体を選んで寄
には、コミュニティビジネスという「事業」
付を申し込むと、各労働金庫が、指定された
は、営利企業も含め様々な「事業体」によっ
日(毎月、ボーナス時、年一回など自由)に
て進められている。
自動振替を行うものである。労働金庫は、NPO
しかし、コミュニティビジネスという新た
の紹介を通じてその広報活動を助けるととも
な事業において、NPO法人がその推進主体と
に、会費や寄付を集めやすいシステムを作り、
して注目を浴びることが多いためか、一般に、
会費の徴収代行を通じて、NPOと寄付者をつ
両者は類似した、あるいは一体のものとして
なぐ役割を果たしている。
とらえられていることが多い。実際、地域金
融機関の支援事例を見ても、ほとんどの場合、
②中央労金の「中央ろうきん助成プログラム」
「NPO支援」という形を採っている。そこで、
中央労金は、「ろうきんNPOサポーターズ」
本稿でも、
「NPO支援」と「NPO・コミュニテ
という定期預金を提供している。これは、NPO
ィビジネス支援」を、ほぼ同義なものとして
活動の支援・促進を通じた社会貢献を目的と
(注)
8.詳しくは、拙稿『NPO・コミュニティビジネスと地域金融』(澤山[2005b]
)参照
9.本節は、多賀[2004]に多くを負っている。
研 究
25
する定期預金であり、1年定期の満期日には、
ィア参加者を募る試みを行っている。これは、
税引き後の利息の30%がNPO法人「市民社会
高齢者を中心とした「労金友の会(いきいき
創造ファンド」が運営する「ろうきんNPOサ
倶楽部)
」や現役の会員労組の組合員などを対
ポーターズ基金」に振り替えられる。これに、
象に、毎年夏、近畿圏全域の府県ごとに「ボ
「中央ろうきん社会貢献基金」からの拠出金を
ランティアセミナー」などを紹介するもので
加え、毎年1回、NPOに対して助成を行う仕組
ある。セミナーでは、各団体にそれぞれのNPO
みになっている。2005年の助成プログラムは、
やボランティア活動を説明するプレゼンテー
助成総額がおおむね1,300万円で、うち160万円
ションをしてもらい、実際にNPO現場でのボ
弱が03年度の上記「社会貢献預金」、および
ランティア活動への参加を促す。同労金では、
(注)10
か
「ろうきんサンクスポイント貯めCiao!」
らの寄付金となっている。
NPO活動の助成には、「スタート助成」と
各府県のNPO中間支援組織に実務上のサポー
トを有償で事業委託している。活動参加者に
は一日当たり1,000円(上限2万円)の補助金を
「チャレンジ助成」の2種類がある。前者は、1
支給すると同時に、受け入れたNPO団体にも、
団体上限30万円で、活動開始のための資金を
一人当たり1万円を補助している。金融機関が、
助成する。活動が定着するまで、最長3年間継
助成という形でNPO支援を実際に行っている
続して助成を受けることができる。後者は、活
好例といえよう。
動実績が1年以上ある団体が新たに有償の事業
近畿労金としては、顧客層に対して、金融
に取り組む際の事業展開資金の助成であり、上
サービスだけでなく、社会参加や生きがい作
限は100万円となっている。03年についてみる
りの機会を提案するとともに、各府県のNPO
と、「スタート助成」が新規14件、継続10件、
中間支援組織や個々のNPOとのネットワーク
「チャレンジ助成」4件が、実績として示され
作りにも役立っていると評価している(注)11。
ている。
なお、
「社会貢献定期預金」は東北労金や近
畿労金などでも取り扱っているほか、NPO助
成制度は、全10労金が設置している。
ロ.信金業界の取組み
社会貢献を経営理念の重要な柱のひとつと
してきた信金業界においても、かねてからボ
ランティア団体やNPOを支援してきた事例は
③近畿労金の「NPOパートナーシップ制度」
近畿労金では、「NPOパートナーシップ制
少なくない。そこで、次に信金業界における
事例を紹介してみよう。
度」として、2000年度からNPOへのボランテ
(注)10.これは、定期性預金、自動受け払いなど、さまざまな取引ごとにポイントが貯まっていき、景品をもらえるサービスであ
るが、
「社会貢献コース」を選ぶと、上記助成財源に活用されることになっている。中央労金[2004]
、および営業推進部NPO
推進次長山口郁子氏への取材による。
11.近畿労金[2004]、および地域共生推進センター長法橋聡氏への取材による。なお補助金額は平成17年度のもの。
26
信金中金月報 2005.8
①奈良中央信金の「ならちゅうしん基金」
奈良中央信金の社会貢献活動の歴史は古い。
すでに、92年から本店でチャリティコンサー
年度の寄付は、全国初の障害者のアートセン
ター「HANA」の建設を始めた上記「たんぽ
ぽの家」など、数団体に対して行った。
トを開き、当日の入場者や職員から募金を集
さらに、
「奈良NPOセンター」と協働して03
め、障害者支援施設である
(財)
「たんぽぽの家」
年4月には、「なら・未来創造基金」を創設し
に寄付したりしてきている。
た。これは、
「奈良を元気に活性化するプロジ
NPOローンの開始も、2000年5月と信金業界
ェクトや研究を行っているNPO等を助成する」
初めてとなったが、これは、「たんぽぽの家」
ことを目的としたもので、図表2に見られると
の役員が、
「奈良NPOセンター」の役員を兼ね
おり、04年度には、
「明治∼昭和初期の古民家
ており、これからはNPO支援が資金面からも
を大切にする会」、「休日遊び隊実施推進協議
大切になるとの同氏からの提案を受けて、開
会」といった、まちづくりや子育てを進める
設したものであるという(注)12。
計6団体に活動資金を提供した。同基金は、05
同信金では、01年4月、個々の職員の自発的
年5月、後述する全国信用金庫協会の第8回「社
な意思によって寄付を積み立てる「ならちゅ
会貢献賞」
(図表5参照)において、
「地域再生
うしん基金」を創設した。これは、役職員の
しんきん運動・優秀賞」を受賞している。
給与から自動天引きされる寄付額と同額を同
このほか、NPO法人やボランティア団体の
信金本体からも寄付に加える「マッチングギ
会計担当スタッフを対象とした「NPO会計セ
フト形式」で積み立てているものであり、04
ミナー」を、平成15年度から4回シリーズで実
図表2 第2回「なら・未来創造基金」助成団体一覧
代表者
団体名
役職
氏名
霜月祭実行委員会
委員長
東川 裕
いこま棚田クラブ
代表幹事 出口 育宏
助成
金額
(千円)
テーマ
御所まち霜月祭 ∼故郷への誇りとおもてなし
200
の心∼住民主導のまちづくりを目指して
生駒市西畑町(暗峠東側308号沿い)の棚田再
350
生プロジェクト
ならグリーンネットワーク
代表
土井 ギゼラ
ドイツの環境NPO“BUND”に学ぶ∼こども
320
が参画する環境プロジェクト“こども地球環境
デイ”を定着させる
休日あそび隊実施推進協議会
会長
吉川 貴子
明治・大正・昭和初期の古
会長
栗野 圭司
榛原町内の古民家と地域経済の創出に係わる調
代表
北島 真理
「チャイルドケア コーディネータ」育成プロ
あそび隊の活動を、
「子どものための活動」から
200
∼「地域の人の組織をつなぐ活動」にするために
民家を大切にする会
M’
sネット
200
査と研究
230
グラム開発研究
(備考)奈良中央信金ホームページ(http://www.narachuo-shinkinbank.co.jp/)より転載
(注)
12.http://www.narachuo-shinkinbank.co.jp/、奈良中央信金[2004]
、および総合企画部副部長水上和要氏への取材による。
研 究
27
施している。
同信金では、こうしたNPO・コミュニティ
ビジネス支援を目的とした寄付活動の積み重
ねが、職員のこの分野に対する関心を高める
ことに役立っているという。
派遣要請があると、人事部がその内容に応じ
て調整し、職員を派遣する仕組みになってい
るのである(注)13。
実際、鶴橋支店では、高齢者介護や介添え
を行っているボランティア団体「あすなろ会」
を継続的に支援しており、97年以降、春の大
②永和信金の「ボランティア派遣制度」
阪城公園花見、夏の大阪港ヨット周遊、秋の
近年、個々の社員に対して「ボランティア
運動会、冬の餅つき大会と、さまざまなイベ
休暇制度」を設ける事業会社は少しずつであ
ントごとに高齢者支援を行ってきたほか、デ
るが増えてきた。しかし、永和信金(大阪市)
イサービスの食事の介添えにも積極的に参加
が01年4月から始めている「ボランティア派遣
してきた。
制度」は、個々の職員のみならず、営業店自
なお、これは、山王支店の「地域美化活動」
身にもボランティア活動を奨励するもので、き
とともに、
「勤労者マルチライフ推進会議」
(厚
わめて先進的であるといえるだろう。同信金
生労働省主催)が事務局となった「第2回ワン
は、営業時間中のボランティア活動を認めて
モアライフ勤労者ボランティア賞」において
おり、それぞれの営業店ベースの職員だけで
「ナイスアシスト賞」を受賞するなど、全国的
は不足する場合には、他店にも応援を求める
にも高い評価を得ている(図表3)。03年度に
ことができる。全役職員はあらかじめ人事部
は、図表4に見られるとおり、この「ボランテ
に自分にできる活動項目を登録しているので、
ィア派遣制度」を計153人が活用している。こ
図表3 「ナイスアシスト賞」受賞で贈られた
図表4 永和信金における平成15年度「ボラン
ティア派遣制度」の活用状況
要請活動内容
在宅要介護支援
3
重度身障者支援
2
高齢者のリクレーション等支援
14
高齢者施設内支援
12
盲導犬育成チャリティー
(備考)永和信金ホームページ(http://www.eiwa-shinkin.co.jp/)
より転載
信金中金月報 2005.8
2
地域美化活動支援
99
献血活動支援
13
社会福祉支援バザー等支援
6
その他
2
合計人数
(備考)図表3に同じ
(注)
13.永和信金[2004]、永和総合研究所、および清水一男常務理事への取材による。
28
派遣活動者数
153
の派遣制度は、前章で述べたような地域金融
と思っているボランティア活動を、各自に自
機関のプレゼンスの向上に役立つとともに、こ
由に認めていくことが大切だろう。それぞれ
うしたNPO支援やボランティア活動に取り組
のボランティア活動への関心の中身は様々な
むことによって、NPOへの関心を深め、実際
はずだからである。
にNPOの人たちとのつながりを作ることがで
例えば、すでに老親を抱え、家族の問題と
き、個々の職員自身の意識改革にもつながっ
して高齢者介護に関心がある人もいれば、子
ている点で、非常に有益だという。
供好きなので、ベビーシッターならいつでも
実際、永和信金の本店所在地は、
「大阪の秋
引き受けたいという人もいるだろうし、同じ
葉原」とも呼ばれる日本橋地域にあるが、電
公園の美化でも、ごみ拾いばかりではいやだ
気機器の販売業を中心とした商店街の衰退が
が、草花を植えたりするガーデニングならぜ
近年目立ってきた。この窮状を脱しようと04
ひ参加したいという人もいるだろう。
年からまちづくりの取組みが始まっているが、
さらに、それぞれの特技、能力を生かした
同信金の職員も自発的に地域の中に飛び込み、
ボランティアということになれば、本来の業
「商店街マップ」の作成などに参加するなど、
務に近い分野、例えば、パソコン処理、会計、
まちづくりに貢献しているという。
労務、事業計画作りなど、いくらでも、その
人ならではの活躍分野があるはずである。
ハ.NPO支援を通じ職員自身の意識変革を
多くの地域金融機関の間では、ただでさえ
このように、これからのNPO支援において
競合する金融機関と激しい競争を繰り広げて
は、職員自らがボランティア活動などへの参加
いる中で、職員にボランティア活動を認める
を通じて、地域の中に飛び込んでいくことも望
余裕など考えられないという反応は強そうだ。
ましいこととされてくるのではないだろうか。
しかし、少なくとも就業時間後や週末にそう
地域の中には、志や、熱い想いを持って、NPO
した活動に参加している職員を、積極的に評
やコミュニティビジネスを進めている人たち
価していくだけでも良い影響が現れてこよう。
がいる。そうした人たちに目を向け、各自の
次章で述べるNPO・コミュニティビジネスに
できる範囲で、支援していく姿勢を培ってい
対する創業支援においても、想いを共有し、共
くことが大切なように思われる。通り一遍の
感しているかどうかで、対応に大きな違いが
「宣伝になるから」といっただけの「地域貢献」
生じてくると思われるからである。
(もちろん、
ではなく、まさに地域とともに生きる金融機
それは融資基準を緩めるといった対応ではな
関として、志に応え、協働のパートナーとし
く、コミュニティビジネス創業者が少しでも
て活動していくことが、地域密着を掲げる地
資金を借入れしやすくなるように、親身にな
域金融機関に求められてくるといえよう。
って相談に応じ、できる限り様々なアドバイ
その際、個々人が自分としてやってみたい
スをしようとするといった姿勢の変化に現れ
研 究
29
てくる類のものである。
)
を紹介したい。
社会貢献活動の積極的評価については、全
国信用金庫協会が97年から始め、05年で8回目
イ.但陽信金の「但陽ボランティアセンター」
となる表彰制度が、先進的なものといえよう
地域金融機関自らNPO法人を立ち上げ、地
(図表5)
。これは、毎年、全国の信用金庫に募
域ボランティア活動を進めているのが、但陽
り特に高い貢献が認められたものを表彰する
信金(兵庫県加古川市)である。同信金では、
ものだが、個々の信用金庫のみならず、個別
阪神淡路大震災時には、職員がローテーショ
の職員の活動についても「個人賞」を設けて
ンを組み、数か月にもわたって支援物資の仕
表彰している。
分け作業を手伝った。その後も、県営仮設住
宅への引越しの手伝い、すき間風防止作業、高
(2)自らNPOを立ち上げ
さらに、以上のような個々のNPOやコミュ
ニティビジネスを地域金融機関が支援してい
齢者へのケア訪問、ふれあいセンターでの茶
話会参加など、様々な被災者支援活動を続け
てきた。
くという地域貢献に加えて、これからは、地
こうした活動を踏まえて、NPO法人「但陽
域金融機関自身による主体的な地域貢献も求
ボランティアセンター」を立ち上げ、2000年1
められてくるように思われる。そこで以下で
月、認証を受けたものである。主な活動は、一
は、すでに自らNPOを立ち上げ、積極的に地
人暮らしのお年寄りや障害者が困ったときに
域貢献に取り組んでいる2つの信用金庫の事例
は、ボタンひとつでケアセンターとつながる
図表5 信用金庫社会貢献賞の種類
会長賞 活動の社会的意義、地域との一体感、地域社会に与えた影響などを総合的に判断し、最も優れた活動に対し
与えるものとする。
Face to Face賞
地域金融機関にふさわしい、地域社会に溶け込んだ、地域の方々との一体感を深めることに寄与した活動に
対して与えるものとする。
奨励賞
活動内容、必要性、方法のユニークさ…などから、今後の社会貢献活動として広く取組みが期待される活動
に対して与えるものとする。
特別賞
環境問題への取組み、災害復旧支援など短期間ではあっても地域社会に大きく貢献した活動等に対して与え
るものとする。
個人賞
個人あるいはグループの取組みで、信用金庫職員としての他の範となる活動に対して与えるものとする(第6
回表彰より特別賞から分離し新設する)。
地域再生しんきん運動・優秀賞
地域社会と中小企業の再生・活性化をめざす活動のうち、各々の地域社会の実情と信用金庫の特性を生かし
たユニークで、他の範となる活動に対して与えるものとする。
(備考)全国信用金庫協会ホームページ(http://www.shinkin.org/)より転載
30
信金中金月報 2005.8
緊急通報サービス「ベルボックス」(図表6)
ている好例だろう。同信金の社会貢献活動は、
と、車椅子のまま送迎できるチェアキャブ4台
「チェレンコ祭り」への参加、高校生イラスト
による移送サービスであり、同信金内にある
展の開催、毎月の商店街一斉清掃活動、メセナ
センターでは、平均して毎日6人の職員が従事
としてのコンサート開催など、実に多岐にわた
している(注)14。
っているが、同信金ディスクロ誌において社会
地域金融機関職員自身も、地域住民のひと
貢献活動の筆頭に掲げられているのは、NPO
りであることに変わりはない。そうした意味
法人「バイオマスもがみの会」の活動である。
で、これからは地域の課題を自らの問題とし
これは、02年8月に地元の有機農業者が中心
てとらえ、地域の一員として多少なりともNPO
になって誘致した「早稲田大学新庄バイオマ
等に参加していくことが求められてくるよう
スセンター」(現在は、「玉川大学新庄バイオ
になろう。但陽信金の取組みはその先進的事
マスセンター」
)を支援し、最上地域における
例といえよう。
バイオマス活動の普及を通じて地域における
発展に寄与することを目的としたものだ。新
ロ.新庄信金の「バイオマスもがみの会」と
「新庄TCM」
庄信金は、井上理事長自らが「もがみの会」理
事長に就任しており、設立当初から、地元農
新庄信金(山形県新庄市)も、地域金融機関
業者を主体とした会員募集や、バイオマスに
自身が自ら地域の問題に取り組み、その課題解
関する勉強会講師の招聘、研究活動の広報を
決に資するという視点に立って地域貢献を進め
行うなど、一貫して支援を続けている(注)15。
図表6 但陽信金のボランティア活動
独りでも安心、ボタン1つで心がつながる
ひとりぐらしのお年寄りや、体が不自由な方のよりどころ、困ったとき、さびしいとき、
24時間ボタンひとつでケアセンターとつながります。
ケアセンターからも定期的にお電話します。
(備考)但陽信金ホームページ(http://www.tanyo-shinkin.co.jp/)より、一部レイアウトを変更して転載
(注)
14.http://www.tanyo-shinkin.co.jp/、日本経済新聞(夕刊)2003年11月17日、http://www.kasys.co.jp/seeds/npolist.htm、およ
び但陽信金桑田純一郎理事長への取材による。
15.http://www.shinjosk.com/、http://www.eco-mogami.com/katudou/katu.html、および新庄信金井上洋一郎理事長への取材
による。
なお、バイオマス(biomass)とは、元来、生物学の用語であり「生物量」
、
「現存量」と訳される。太陽エネルギーが植物
の光合成によって生体内に固定、蓄積されたものを言う。具体的には、動植物の体や糞尿等を意味する。バイオマスには炭
素や水素が含まれるため、燃やせばエネルギー源となる。木炭や薪などはこのバイオマスの一種。おがくず等の廃棄物をペ
レット燃料化するものや糞尿等を発酵させてメタンガスを取り出すもの等があり、代替エネルギーとして注目を浴びている。
(http://www.eco-mogami.com/biomass/bio.htmlより抜粋)
研 究
31
また、2000年4月に設立された新庄TCM㈱に
うに、地域金融機関自らが行政などとも協働し
も、設立当初から深く関わっている。同社は、
つつ、NPOを作っていくところまで進んでい
新庄のまちを「働く、生活する、楽しむため
くことも考えられてよいのではないだろうか。
の快適な生活空間にする」ことを役割とする
少なくとも、TMOのような取組みに主体的
タウンマネジメント組織(TMO)であり、空
に参加していくことが期待されているといえ
き店舗の有効活用など中心市街地の整備促進、
そうだ。地域金融機関としては、NPOのよう
「新庄ならでは」のイベント開催などを通じた
な新たに登場してきたまちづくりグループと
PR、歴史・風土・文化を生かした交流人口の
触れ合い、様々な人々のつなぎ役として力を
増加施策、新たなビジネスの創出といった各
尽くしていくことが望まれているのである。実
種の活性化事業を行っている。新庄信金の井
際、地域を活性化させようという意気込みを
上理事長は、同社の副社長を兼任しており、
持った元気のいい起業家たちは地域の「草の
「タウンマネージャー」(社長)や顧問を招聘
根リーダー」であり、彼らとのネットワーク
してきたほか、同信金は、事業計画の作成を
を形成していくことは、まちの「元気情報」が
サポートし、金庫取引先に説明してまわるな
収集できる点で、地域金融機関にとってもき
ど、さまざまに支援してきている(注)16。
わめて有益であるように思われる。
ハ.まちづくりなどでの協働の橋渡し役に
3.NPO・コミュニティビジネスに対
する創業支援を進める場合の方策
中心市街地活性化法の施行により、TMOの
設立が全国的に相次いでいる。地域金融機関
以上、地域貢献の一環として取り組まれて
が出資に応じているケースも少なくないが、ま
きているNPO・コミュニティビジネス支援に
だまだ名目的な参加にとどまっていることが
ついて、各種の助成制度を設立したり、自ら
多いようだ。今後は、新庄信金におけるよう
NPOを立ち上げたりしたケースなどの事例を
な主体的参加こそが望まれているといえるの
述べてきた。
ではないだろうか。
ところで、NPO・コミュニティビジネスは、
地域金融機関がまちづくりに果たせる役割
介護・子育て、まちづくり、環境保全など、地
は大きいと思われる。なぜなら、本来、幅広い
域に渦巻く様々な課題の解決を図ろうとする
顧客層を抱える地域金融機関は広い人的ネッ
新たな地域の成長産業であるといえる。これ
トワークを持っており、福祉、教育、行政、商
らコミュニティサービス業は、一般に、製造
工会、商店街といった各分野の有志や専門家を
業のように高価な機械設備の購入を必要とす
つなげる協働の橋渡し役になるには最適なはず
るわけではなく、多額な資金需要を要すると
だからである。今後は、新庄TCM㈱の例のよ
は必ずしもいえないが、昨今、預貸率の低下
(注)
16.http://www9.ocn.ne.jp/~s-tcm/参照
32
信金中金月報 2005.8
に悩まされている多くの地域金融機関にとっ
TOSプラザの先進性は、
「創業支援制度」と
ては、新規貸出の対象のひとつとして期待で
「創業サポートローン」の2段構えになってい
きると思われる。
る点にあるように思われる。一般に、創業支
ただし、問題は、その担い手の多くが専業
援ローンを扱っている金融機関でも、相談を
主婦や定年退職者などであり、事業経験に乏
受け付けるのは、資金需要の中身がはっきり
しいことが多い点だろう(注)17。したがって、実
してきた段階であることが多い。しかし、TOS
際に貸出を実行していく場合には、様々な形
プラザでは、「創業支援制度」に基づき、事
での創業支援をしていくことが必要になる。
業計画の作成段階から、立地分析や、商圏分
創業支援自体については、これまでも、地
析、競合店分析などの市場調査を実施して、
域金融機関の間で、多様な取組みが進められ
「創業支援レポート」を作成したり、資金計
ている。そこで、本章では、初めに、全国信
画や収支予測などの助言をきめ細かく行って
用金庫協会の機関誌である月刊『信用金庫』で
いく。その上で、事業が妥当であると認めら
も取り上げられた創業支援事例の中から2つの
れれば、「創業サポートローン」が提供され
事例を紹介し、ついで、創業支援の中にNPO・
ることになる。さらに、融資実行後も、TOS
コミュニティビジネス支援を取り入れていく
プラザが、営業店とも密接に連絡しながら3
場合、どのように進めたらよいのか、さらに、
年間はフォローしていくというきめ細かさで
大変に手間のかかる創業支援に要するコスト
ある(注)18。
を軽減していくにはどうしたらよいのかにつ
いて、ひとつの提案をしてみたい。
また、同信金では、創業希望者を対象にし
て「とうしん創業塾」をすでに年2回ペースで
実施している。これは2日かけたセミナーで、
(1)拡がる創業支援の取組み
イ.東濃信金の「TOSプラザ」
東濃信金(岐阜県多治見市)では、02年3月
セミナー終了後も、塾生(第1期は30名)に対
し、将来の創業に向け、支援していく体制に
なっている。
に、創業支援窓口として「とうしん くらし
と経営のサポートプラザ(TOSプラザ)
」を開
ロ.多摩中央信金の「ブルームセンター」
設しており、04年度までに、すでに3店を出店
一方、多摩中央信金(東京都)は、03年9
している。中小企業診断士の資格を持つ職員
月、
「たましんインキュベーション施設『ブル
を中心にスタッフを配置し、正月の3が日など
ームセンター』」(Bloom=開花の意)を開設
を除き、土日も営業している。
した(注)19。インキュベーションとは、(企業の
(注)
17.詳しくは澤山[2005a]参照
18.東濃信金[2004]
、および営業推進第一部業務企画課長市川春一氏への取材による。過大な借り入れはかえって事業リスク
を高めるので、貸出額は原則的に3∼5年で回収可能な金額にとどめているという。
19.多摩中央信金[2003]、および http://www.tamachuo.co.jp/bloom_c.html参照
研 究
33
卵を)孵化させ、ひとり立ちしていくまで育
補助している。
「ブルームセンター」入居者も
てていくという意味で、資金的にゆとりのな
当然この補助を受けることができる。
い創業者に廉価でオフィスを提供するととも
インキュベーション施設自体は、近隣にも、
に、経理、マーケティングなど各種の専門家
例えば東京都中小企業振興公社の「ベンチャ
が経営ノウハウをアドバイスしていくもので
ー・HACHIOJI」があるが、「ブルームセンタ
ある。
ー」の場合は、入居審査の段階で、希望があ
これは、東京都八王子市との密接な連携に
れば融資の審査も行い、無担保の創業支援特
よるものである。同市は、01年10月、八王子
別融資「ブルーム」の融資枠も設定している
商工会議所と協働して「『首都圏情報産業特
ことが、特徴として挙げられる。
区・八王子』構想推進協議会」(愛称:「サイ
同センターには、専任の「ブルーム・マネ
バーシルクロード八王子」)を設立した(注)20。
ージャー」が常駐しており、同信金の広範な
同協議会は、多摩中央信金が市に無償提供し
ネットワークを活用しながら、創業時のさま
た京王八王子支店4階のオフィスに、03年7月
ざまな相談に応じている。また、同ビル4階の
「『首都圏情報産業特区・八王子』構想推進拠
上記「首都圏情報産業特区・八王子」構想推
点」をオープンした。これは、産産(民間企
進拠点の各種支援を受けることができるのは
業間)連携や産学連携を通じて新たなビジネ
言うまでもない。
スチャンスの創造を目指す「産業振興拠点」で
あり、商談コーナーや、無料会議室などのほ
ハ.コミュニティビジネスを創業支援の新た
か、八王子商工会議所の中小企業相談機能を
な対象に
(注)21
による相
受け持ち、「ビジネスお助け隊」
以上の事例に見られるように、創業支援自
談・支援の場にもなっている。
体は、これまでも様々な形で実施されてきて
多摩中央信金の「ブルームセンター」は、同
いるが、一般的には、IT関連などのハイテク
じ支店ビルの7階に設置されている。それぞれ
ベンチャーや「モノづくり」が志向されるこ
2
2
のオフィスのブース面積は5.9m ∼13.3m で、
2
計12室あり、賃料は月4,500円/m (ほかに電
気使用料500円/m2)となっている。
とが多いようだ。
しかし、これからは、就業経験もあり学歴
も高い専業主婦層や、十分な専門能力を有し
八王子市は、八王子駅周辺のモデル地区内
た定年退職者、さらには、SOHOという形で
で民間の賃貸オフィスを借りてこれから起業
地域に目を向け始めた若手起業者たちの創業
しようとする創業者や創業後3年未満の事業者
が増えてくる。今後、重要になるのは、こう
に対し、家賃の2分の1(上限50,000円/月)を
した志を持って社会性のある事業に取り組む
(注)
20.http://www.city.hachioji.tokyo.jp/sangyo/seisaku.htm、http://www.cyber-silkroad.jp/参照
21.「ビジネスお助け隊」とは、製品開発などの実務経験を有する企業OBや、公認会計士、中小企業診断士などが、創業者の
さまざまな相談に応じるものである。
34
信金中金月報 2005.8
新たな担い手が登場してきていることに注目
いずれにせよ、地域金融機関としては、た
していくことではないだろうか(注)22。これまで
んに顧客側からの資金需要を待つのでなく、異
の既存産業やハイテクベンチャーに対する支
業種交流会などを通じて、積極的にこうした
援に加え、例えば、創業支援部署の中に「コ
事例を紹介し、新事業展開や転業を提案して
ミュニティビジネス担当」を配置するなどし
いくことが有益なように思われる。
て、コミュニティビジネスを新たに創業支援
の重要対象として位置づけていくようなこと
が考えられよう。
開業率が廃業率を下回るようになって久し
(2)有効な行政や起業支援NPOと連携した創
業支援
問題は、こうしたコミュニティビジネスの
いが、コミュニティビジネスへの創業支援は、
新たな担い手は、一般の自営業経験者や「第
開業率を高めていく上でも重要な役割を果た
二創業」者に比べ、専業主婦層などを主体と
すと思われる。
しているため、初めて事業経営に取り組むこ
また、既存の地場事業者や商店主などが転
とが多いことだろう。定年退職者にしても、営
業(第二創業)を図っていく際にも、コミュ
業や経理など個々の専門能力は有していると
ニティビジネスは、有力な事業転換、業態転
しても、自分でリスクをとって経営全般の責
換のきっかけになりえるという視点も有効だ
任を取っていくことは初めてである場合が多
ろう。
いと思われる。
例えば、商店街に立地した薬局が、専門知
また、彼らには、地域の課題やニーズを感
識を生かして介護のためのデイサービスセン
じ取り、それらを解決していきたいという強
ターなどを開設した例は多いし(注)23、飲食店な
い想いがあり、事業意欲は高い反面、自分た
どでも、商店街と協力して高齢者のための会
ちの理念の浸透や、「社会を変えていくこと」
食サービスを始めた例もある。また、公共工
への情熱が先になってしまい、事業の採算性
事の削減が続く中で、地場の建設業者が自ら
を軽視しがちなケースも見受けられがちだ。想
痴呆性高齢者のためのグループホームを建設
いだけが先行してしまい、事業の見通しを数
し、さらに指定介護事業者の資格を取得して
字で示すことができず、事業計画書を作るこ
経営に乗り出した例もある。こうした場合、経
とをわずらわしいと思ってしまう。
営者の世代交代を契機として、新事業に乗り
出すケースも多いようだ(注)24。
このように、一般の事業者とは異なる特性
を持つことも多いため、貸す側から見れば不
(注)
22.既存の金融機関が、こうした新たな担い手たちを見向きもしないできたというのは事実だろう。この点について、
「市民バ
ンク」を89年に立ち上げた片岡勝氏は、それまで「私は地域社会で生活する主婦などは全然目に入っていなかったし、まし
てやその人々が事業の担い手になるなどとは思ってもみなかった。既存の金融機関の担当者は、今もそう思っているだろう。
だから、女性が事業資金を借りにきても、すぐに追い返してしまう。今ある既存の経済社会にばかりに目がいって、次のも
の、新しいものが見えていない、見ようとしない」と、述べている。片岡[2002]P. 26参照
23.例えば、松尾[2004]pp. 67-68参照
24.詳しくは、鉢嶺[2005]参照
研 究
35
安に感じるのも無理はない。このため、地域
実してきているので、連携を進めていくこと
金融機関側としても、これまでほとんど接触
が考えられよう(注)26。
がなかったこともあり、彼らが借入の依頼に
中小企業支援センターとは、1963年施行の
来ても、
「事業実績がない」を謝絶の常套句と
「中小企業指導法」を抜本改正し、2000年5月
して、門前払いにしてきたのも仕方がない面
に新たに施行された「中小企業支援法」に基
がある。
づくものである。同法に基づく「中小企業支
したがって、事業経営の経験に乏しく借入
援センター事業」では、中小企業の事業展開
れに不慣れなコミュニティビジネスの起業者
上必要となる資金、技術、人材など、すべて
は、一般の事業者にも増して、よりきめ細か
の経営資源を中小企業内で初めから保有する
な創業支援を必要としている。すなわち、事
のは不可能であるし非効率でもあるとの認識
業計画作りから始まり、彼らの事業を軌道に
に立って、中小企業支援センターを介した民
乗せていくために必要な、経理、労務、マー
間専門家の派遣、ネットワークの活用、窓口
ケティングといったさまざまな経営ノウハウ
相談におけるワンストップサービスの徹底な
を教え、不足している部分を補強していく支
どを図ることとした。
援を行うことが求められているといえよう。
同センターには、3つの類型がある。第1は、
中小企業総合事業団に設置された「中小企業・
イ.「中小企業支援センター」等の活用
ベンチャー総合支援センター」
(経済産業局が
ただし、これを、すべて地域金融機関だけ
ある全国8か所)であり、ベンチャー企業の上
が無償で提供することが求められているわけ
場準備、特許権取得など、高度な経営課題の
ではない。そもそも、起業塾や経営相談など
支援が中心になっている。第2は、「中小企業
には相応の受講料を求めてよいだろう。何も
支援法」7条に基づく指定法人として、都道府
かも無料で教えてもらうのが当たり前と考え
県および政令指定都市計59か所に設置された
ている人が現実の事業経営で成功していくの
「都道府県等中小企業センター」である。(実
は容易ではないと思われる。実際、
「市民バン
際には、既存の「中小企業振興公社」などが、
ク」と提携している「WWBジャパン」では、
都道府県等から指定を受けている。)そして、
有料で起業セミナーを継続開催している(注)25。
第3が、全国各地の商工会議所や商工会などに
また、
「中小企業支援センター」など、公的
設置された「地域中小企業支援センター」で
機関の起業支援サービスも、起業のプロセス
あり、広域市町村圏にひとつ程度という基準
に応じて各種の専門家が相談に応じるなど、充
で、全国259か所に設置されている。中小企業
(注)
25.1990年設立のWWBジャパン(Women’
s World Banking〈女性のための世界銀行〉日本支部)は、長年にわたって、女性の
起業支援を目的として、有料で 「市民事業ビジネススクール」を全国各地で行ってきており、すでに5,000人の卒業生を送り
だしている。また、事業相談、会計相談などの起業家支援サービスを、時間当たり相談料を徴して行っている。http://www.palt.co.jp/wwb/index.cfm?Page=1参照
26.詳細は、平井[2004]参照
36
信金中金月報 2005.8
にとっては最も身近にあり、事業計画作りや
て、県の制度資金など様々な公的支援策等の
資金調達の方法などを、気軽に経営相談員に
情報提供も行っている(注)29。
相談できる支援拠点となっている。
とはいえ、まだまだPRが不足しているよう
ロ.NPOと連携した東海労金の
「NPO創業講座」
で、2000年度の発足以来、窓口相談の利用件
また、起業支援を活動分野としているNPO
数、専門家派遣件数とも順調に伸びてきては
と、起業セミナーを共同開催していくなど、協
いるものの、依然として利用者数は決して多
働・連携していくことも有益なように思われ
いとはいえないのが実態である(図表7)。
る。
しかし、中小企業診断士、会計士、税理士
金融専門紙『ニッキン』でも紹介された(注)30
などの専門家の派遣制度(注)27は、事業者側は3
が、東海労金では、創業を目指す個人や創業
分の1の費用負担で利用できるので、起業者に
2年以内の団体を対象にして、04年7-8月、
とっては大変メリットが大きい。地域金融機
関としては、起業者に対しその活用
をアドバイスしてみたらよいと思わ
れる。また、創業セミナーや、財務、
税務など各種講習会を共催すること
も考えられよう。実際、地域金融機
関と中小企業支援センターとの提携
は増えている。多摩中央信金の「ブ
ルームセンター」がひとつの典型で
あるが、例えば、しずおか信金でも、
県中小企業支援センターを兼ねる財
「NPO創業講座」を開設した。4週連続の講座
図表7 中小企業支援センターの利用実績の推移
1.窓口相談 区分
総合センター
月平均
1センター月平均
都道府県等センター
月平均
1センター月平均
地域センター
月平均
1センター月平均
年度から職員を継続的に出向させ、公
総合センター
月平均
1センター月平均
都道府県等センター
月平均
1センター月平均
地域センター
月平均
1センター月平均
設「ビジネスサポートセンター」は、
同機構のほか、国民生活金融公庫や
(注)
28
などとも提携し
「SOHOしずおか」
01年度
02年度
4,416
368
46
48,516
4,043
71
45,973
3,831
14
5,851
488
61
85,174
7,098
125
50,629
4,219
16
10,143
845
106
118,408
9,867
173
61,258
5,105
19
2.専門家派遣
区分
てきた。同信金の創業等各種支援施
2000年度
03年度
(4-12月)
団法人「静岡産業創造機構」に2000
的支援制度のノウハウなどを学ばせ
(単位:件)
9,122
1,014
127
103,455
11,495
202
51,442
5,716
21
(単位:件)
2000年度
01年度
02年度
03年度
(4-12月)
515
43
5
10,206
851
15
6,106
509
1.9
2,500
208
26
17,665
1,472
26
4,345
362
1.4
3,403
284
35
20,094
1,675
29
4,643
387
1.5
3,092
344
43
16,239
1,804
32
3,178
353
1.3
(備考)平井[2004]より転載
(注)27.専門家派遣制度は、2004年度から、都道府県等の中小企業センターに集中されることになったので、地域センターから取
り次いでもらうことになった。
28.静岡県中部地区SOHO推進協議会(静岡市や(財)
「しずおか産業創造機構」など7団体で構成)が運営しているインキュベ
ーション施設
29.しずおか信金[2004]pp. 20-23参照
30.
『ニッキン』2004年8月6日付
研 究
37
だが、第2週目には、NPOの現場を知るバスツ
創業支援は大変な手間のかかる業務であり、
アーが取り入れてある。これは、愛知県の中
様々なコスト負担を考えれば、それだけでは
間支援組織(注)31「市民フォーラム21・NPOセン
なかなかペイしないのは確かだろう。これが、
ター」と協働したもので、実際に名古屋市内6
創業支援業務に本格的に取り組む上でのひと
か所のNPOを訪問し、活動の実態を視察する
つの障害になっていると思われるが、今述べ
ものである。そのほか、各回の講師も、NPO・
たように、行政の関連機関や起業支援NPOな
コミュニティビジネスの実務家が担当してい
どとの協働を広げ、コストをシェアしていく
る(注)32。
ことによって、多少なりとも負担を軽減して
こうした協働は、地域金融機関にとっても、
いくことは可能なように思われる。
起業者のニーズの所在を知ることができ、
NPO・コミュニティビジネスに対する支援や
以上、①なぜNPO・コミュニティビジネス
融資のノウハウを習得し、融資後のモニタリ
支援に取り組むことが有意義であるといえる
ング体制を作っていくうえでも役立つので有
のかという点について、本稿なりの考え方を
益なように思われる。
述べ、②地域貢献としてNPO・コミュニティ
また、起業支援NPOに、地域のNPO情報の
ビジネス支援を行っていたり、自らNPOを立
収集・調査を事業委託していくことも考えら
ち上げたりしている地域金融機関の事例を紹
れよう。特に、創業融資に際して、融資後も
介しながら、③NPO・コミュニティビジネス
起業支援NPO 等に関係している税理士など外
をも対象とした創業支援を始めるとしたら、ど
部専門家による定期監査を条件とするなど、モ
のように進めたらよいのかを論じてきた。そ
ニター体制を作ることも有益だろう。
の際、行政や起業支援NPOとの協働が、コス
これは、起業支援NPOに安定した収入源を
与えることになるので、NPO育成という社会
貢献にも資することになる。双方に大きなメ
リットをもたらすわけである。
トのシェアを通じた軽減を可能にするのでは
ないかということを述べた。
今日、地域には様々な問題が山積している。
それらを一つ一つ解決していくことが、地域
さらに、起業支援NPO自体を、地域金融機
活性化につながっていくことになろう。その
関OBの自主的参加を募って立ち上げていくこ
問題解決の新たな担い手として、NPO・コミ
とも考えてみてよいのではないか。この場合、
ュニティビジネスが登場してきている。彼ら
当然ながら、地域金融機関が、このNPO法人
の志は高く、事業意欲も強いが、事業経験に
に対して、創業支援業務の一部を委託してい
乏しい者が多いとすれば、今、最も求められ
くことになる。
ているのは、彼らをも対象に組み込んだ創業
(注)
31.様々な分野で活動している個々のNPOを支援することを主な活動分野としているNPOをいう。
32.多賀[2004]P. 49参照
38
信金中金月報 2005.8
支援の充実ではないだろうか。これを、行政
られる真の地域貢献であり、その戦略的展開
や、起業支援NPOなどと協働しながら地域金
が期待されているように思われる。
融機関が担っていくことこそ、これから求め
〈参考文献〉
永和信用金庫『永和信用金庫ディスクロージャー2004』(2004)
片岡勝『儲けはあとからついてくる―片岡勝のコミュニティビジネス入門』日本経済新聞社(2002)
近畿労働金庫『Rokin Report Disclosure 2004』(2004)
澤山弘「拡大著しいNPO法人の現況―地域の問題解決図る新しい担い手層の成長―」
『信金中金月報』2005年5月号(2005a)
澤山弘「NPO・コミュニティビジネスと地域金融」『地域金融と企業の再生』
(共著、中央経済社)第9章(2005b)
しずおか信用金庫「当金庫ビジネスサポートセンターにおける創業および新事業展開等の支援業務について」
『信用金庫』
2004年9月号(2004)
全国信用金庫協会「市民事業を支える地域金融の可能性を開く∼紡ぐ事業の芽吹くうるおいのある地域創造に向けて∼」
『コミュニティビジネス支援研究会報告』
(2004)
多賀俊二「NPO施策と労働金庫」『RESEARCH』第15号(2004)
多摩中央信用金庫「地域貢献活動としての『企業再生』
『創業支援』
」『信用金庫』2003年9月号(2003)
中央労働金庫『中央ろうきんの社会貢献活動』
(2004)
東濃信用金庫「創業支援を中心とした地域貢献∼中小企業診断士の活用∼」
『信用金庫』2004年7月号(2004)
奈良中央信用金庫『NARACHUO SHINKIN BANK REPORT 2004 奈良中央信用金庫の現況 2004年』
(2004)
鉢嶺実「脚光を浴びる『第二創業』
」『信金中金月報』2005年3月号(2005)
平井昌夫「一層の活用が期待される中小企業センター」
『信金中金月報』2004年7月号(2004)
松尾良太「環境変化への適応が求められる中小小売業」
『信金中金月報』2004年12月号(2004)
研 究
39
調 査
2004年度の中小企業の業況と経営課題
−財務体質は改善が続いたが、規模別・地域別格差は一段と拡大−
信金中央金庫 総合研究所研究員
峯岸 直輝
(キーワード)中小企業、規模別格差、地域別格差、仕入価格、労働分配率、労働生産性、
損益分岐点比率
(要 旨)
1.中小企業の景況感と経営課題
日本経済は02年1月を底に04年度も回復傾向を維持した。ただ、中小企業の業況判断D.I.は依
然として水面下にあり、足元はやや悪化している。地域別には、ほとんどの地域でうす曇りだ
が、北海道と東北では回復力が弱い(曇り)。経営上の問題点としては、原材料の高騰が懸念
される一方、人手不足を挙げる企業も出てきた。
2.中小製造業の生産活動と仕入価格高騰の影響
製造業の生産活動は、底堅いものの、大企業との格差は拡大している。足元では、軽い在庫
調整局面にあるが、今回の回復局面において中小製造業の棚卸資産回転率は大きく向上してい
る。反面、仕入価格の高騰が中小製造業の収益を圧迫している。景気拡大局面では、大企業製
造業は、販売拡大、需給改善による価格交渉力の強まりで売上高原価率が低下する一方、中小
製造業は、素材価格の上昇などを価格転嫁しにくく、マージン率が縮小に転じるケースが多い。
3.中小企業の収益性と経営の安全性
04年度は中小企業の経常利益も拡大したが、大企業との収益力格差は縮まっていない。損益
分岐点比率の低下で中小企業の経営の安全度・余裕度は90年代初めの水準まで改善したが、大
企業に比べると見劣りする。
4.中小企業の労働生産性と設備投資・資金調達・投資採算
04年度は人件費の圧縮などリストラ効果に代わって、売上高の拡大が中小企業の利益を押し
上げた。中小企業は1人当たり人件費の圧縮によって労働分配率を引き下げてきたが、こうした
対応は限界に近づきつつあり、生産性の向上により、労働分配率を引き下げる必要がある。中小
製造業は、キャッシュフローに比べれば、設備投資の水準は低く、借金の返済が峠を越し、先行き
の収益に対する期待が高まれば、生産性の向上に結びつく設備投資が活発化する可能性がある。
5.地域別の中小企業の損益状況
中小企業の事業別売上構成比は地方ほど建設・小売が大きく、大都市圏では卸売やサービス
のウエイトが高い。東海や九州の中小企業は固定費率が低く、経営が安定的である。南関東・
近畿・東海は1人当たり人件費が高いが、これは生産性の高さに起因しており、労働分配率の
水準は相対的に低い。都市の集積効果によって1人当たり売上高が大きいことが大都市圏の生
産性を高めることに貢献している可能性がある。
40
信金中金月報 2005.8
年度に続いて0.8%の成長率を保つなど、日本
1.中小企業の景況感と経営課題
経済は底堅く推移している。
(1)中小企業の業種別の景況感
特に、大企業では、日銀短観の業況判断D.I.
日本経済は02年1月を底とした景気回復局面
が04年9月にバブル崩壊後最も高い19%ポイン
が04年度も持続した。04年度の実質GDP成長
トに達するなど(注)1、足元では若干低下してい
率は1.9%と、2.0%だった03年度と同水準の成
るものの、景況感の好転が一段と鮮明化した
長率を維持しており、景気が踊り場にあると
(図表1)
。鉄鋼、一般機械、自動車、放送やイ
言われながらも3年連続でプラス成長を成し遂
ンターネットなどを含むその他情報通信、鉱
げた。デフレ経済下で景気実感に近い動向を
業が04年度中に40%ポイントを超えるなど、大
示すと言われる名目ベースでも、04年度は03
企業では国内外における原材料需給の引締ま
図表1 企業の景況感の推移
(日銀短観の業況判断D.I.)
り、設備投資の積極化やIT化の影響を受けて
いる業種が好調である。
(%)
60
一方、中小企業も大企業には及ばないもの
40
の底堅く推移した。日銀短観では04年12月に
中堅企業
20
大企業
中小企業の業況判断D.I.が△7%ポイントを付
0
けて、バブル崩壊後最高値を更新している。た
-20
だ、92年度から続いているマイナス状態から
-40
中小企業
-60
90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 00 01 02 03 04 05
脱することができず、業況が「悪い」と感じ
ている企業の方が「良い」と感じている企業
(年)
(備考)1.全産業。05年9月は予測
( 2.日本銀行『全国企業短期経済観測調査』より作成
よりも多い状況に変化はない。図表2は、04年
図表2 中小企業の業種別景況感の推移(ローソク足表示)
(%)
50
40
30
20
10
0
-10
-20
-30
-40
-50
化学・鉄鋼など、多くの業種で04年度中に
景況感はピークを打っている。非鉄金属・
食料品・電機などでは04年3月よりも05年3
月が悪化した。
ピーク
05年3月
04年3月
04年3月
05年3月
ボトム
全製繊木紙化石窯鋼非食金一電輸精そ非建不卸小運情電事個飲リ鉱
産造維材・学油業鉄鉄料属般気送密の製設動売売輸報気業人食ー業
業業
・パ
・・
金品製機機用機他造
産
通・所サ店ス
木ル
石土
属
品械械機械製業
信ガサー・
製プ
炭石
械
造
スービ宿
品
ビス泊
ス
(備考)1.期間;04年3月調査∼05年3月調査
2.日本銀行『全国企業短期経済観測調査』より作成
(注)
1.日銀短観(日本銀行『全国企業短期経済観測調査』
)は、04年3月調査より調査の枠組みを大幅に変更している。
調 査
41
3月∼05年3月における中小企業の業況判断D.I.
(2)中小企業の地域別の景況感
を業種別にローソク足表示(注)2で描いたもので
中小企業金融公庫(以下、中小公庫)
『中小
ある。中小企業でも輸出や設備投資の拡大を
企業動向調査』で地域別に中小企業の景況天
反映して、化学、鉄鋼、一般機械、自動車な
気図をみると(売上・純益率・資金繰りD.I.の
どの業況が好調であり、足元でもプラスを維
平均値)
、04年度はおおむねどの地域も「うす
持している。ただ、ほとんどの業種で一旦ピ
曇り」で推移し、関東・東海・近畿・九州地
ークを打っており、非鉄金属、食料品、電気
方では04年度中にバブル崩壊後13年間で最も
機械、精密機械などでは他の業種に先行して
良好な水準にまで回復した(図表3)。
04年度初めの状態よりも業況が悪化している。
しかし、四国地方は04年7∼9月から3四半期
また、非製造業は不動産、情報通信、事業所
連続で「曇り」であり、北海道は00年1∼3月
サービス以外はゼロを下回る水準で推移して
から、東北地方は92年1∼3月から「曇り」よ
おり、とりわけ飲食店・宿泊、建設、鉱業、小
り良い天気を経験したことがなく、景気回復
売など、大型資本の台頭や公共事業の削減と
局面でも業況改善の力強さを欠いている地域
いった構造変化の影響を受けている業種では、
も少なくない。今回の回復局面では近畿・東
景気回復局面でも業況が「悪い」とする企業
海・関東地方といった大都市圏で中小企業の
が多い。輸出や設備投資主導の今回復局面で
景況感が良好である一方で、北海道や東北地
は、構造調整圧力を被っている中小企業にま
方で回復が緩慢であり、地域別でも格差が拡
では景気波及効果がおよびにくく、大企業と
大する傾向がみられた。05年度は一様にどの
の格差は拡大する方向にある。
地域の中小企業も業況の改善を予測する向き
図表3 地域別の中小企業の景況天気図
(%)
(%)
20
20
近畿
東海
10
晴れ
関東
0
10
晴れ
0
薄曇り
-10
薄曇り
九州
-10
四国
-20
-30
-40
00
北海道
北陸
東北
曇り
-20
中国
曇り
-30
東日本
01
02
03
04
05
雨
-40
00
西日本
01
02
03
04
05 (年)
雨
(備考)1.図表は売上・純益率・資金繰りD.I.の平均値の推移を示している。
( 2.05年4-6月、7-9月は予測。新潟は関東、長野は東海に分類されている。
( 3.中小企業金融公庫『中小企業動向調査』より作成
(注)
2.ローソク足表示は、①陽線(白い長方形)の上底は05年3月の水準、下底は04年3月の水準、②陰線(黒い長方形)の上底は
04年3月の水準、下底は05年3月の水準、③長方形の上に出ている直線の上端は期間内の最高値、④長方形の下に出ている直線
の下端は期間内の最低値を示す。
42
信金中金月報 2005.8
が多いが、北海道や東北地方にまで回復の波
まで上昇している(図表4)。また、求人難は
及効果が十分に浸透するかどうかが、地域間
02年1∼3月の1.2%から05年1∼3月には5.2%に
景況格差の動向を左右することになる。
達した。長期的な取引関係の維持のために赤
字覚悟で原材料を仕入れて製商品を製造・販
(3)中小企業の経営上の問題点
売せざるを得なかったり、求人難で機会利益
景気は回復局面にあるが、中小企業には新
の喪失、納入の遅延、労働力確保のための人
たな問題も生じている。景気が低迷している
件費負担増加などが生じたりして、経営の圧
局面では、受注の停滞や納入先からの値下げ
迫や取引関係の見直しを招きかねないおそれ
要請といった売上額の減少が喫緊の課題とな
もある。
る。売上額が縮小すれば、固定費を賄えず、従
当研究所では、99年以降、毎年1回定例的に
業員に給料も払えなくなる可能性が生じるた
中小企業の景気動向および当該年における中
め深刻な問題である。一方、景気が回復して
小企業のトピック的なテーマを取り上げたレ
いる現局面でも、①原材料の高騰で付加価値
ポートを発刊している(注)3。本年は、中小企業
(産出額−中間投入)の創出や利益の捻出が困
が景気回復下で直面している規模別格差の拡
難になる、②求人難による有能な労働力の不
大、並びに原材料の高騰・求人難といった経
足・流出で取引先からの注文に迅速に対応で
営課題を主に収益性・生産性の側面から検討
きなくなる、といった懸念が強まってきた。原
するとともに、大都市圏‐地方間の中小企業
材料高を問題視している中小企業は、3年前に
景況格差を地域別の中小企業の損益構造面か
は1.6%だったのが、05年1∼3月には16.4%に
ら分析してみた。
図表4 中小企業の経営上の問題点
(%)
100
90
その他
80
原材料高
70
60
求人難
50
製品安、
取引先からの
値下げ要請
40
人件費・
支払利息等
経費の増加
30
20
売上・受注の
停滞、減少
10
0
85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 00 01 02 03 04 05(年)
(備考)中小公庫『中小企業動向調査』より作成
(注)
3.過去の中小企業に関するレポートは当研究所のホームページ(http://www.scbri.jp/naigaikeizai.htm)より参照可能
調 査
43
となった99年初頭の水準すら下回っており、大
2.中小製造業の生産活動と仕入価格
高騰の影響
(1)中小製造業の生産活動
企業がIT景気のピーク(山)の水準を上回っ
ているのとは対照的である(図表5)
。これは、
中小製造業の加工型業種の割合(付加価値額
日本経済は財貨の輸出や設備投資が景気を
ベース)が3割程度であるのに対して、大企業
押し上げており、主に製造部門がけん引役を
は6割近くに達するといった構造的な要因に起
担ってきた。04年度の実質GDP成長率(前年
因する(図表6)。一般機械のウエイトは中小
比1.9%増)を需要項目別の寄与度でみると、
企業でも1割超(12.6%、大企業は12.8%)を
財貨・サービスの輸出が1.4%、民間企業設備
4
占めているが、電機3業種(注)(12.4%、同26.5%)
が0.8%に上る。04年度の鉱工業生産指数は前
や輸送機械(4.8%、同15.9%)は相対的に低
年比4.1%増だったが、業種別寄与度は設備投
く、食料品やすう勢的に縮小傾向にある繊維
資や輸出の好調を反映して一般機械が2.0%、
などの軽工業のウエイトが高い。04年度の中
電子部品・デバイスが1.6%、輸送機械が1.0%
小製造業生産は前年比2.3%増(大企業は5.0%
に達するなど、加工型製造業の押上げが大き
増)であり、業種別の寄与度は輸送機械が0.7%
(同1.5%)、一般機械は1.3%(同1.9%)、電子
かった。
ただ、中小製造業の生産活動は底堅く推移
部品・デバイスは0.3%(同0.8%)と格差が大
しているものの、設備投資や輸出の好調が十
きい(図表7)。軽工業のすう勢的な縮小と好
分に波及していない。中小企業の製造業生産
調業種のウエイトの低さが、中小製造業の回
は、足元においても前回のIT景気の起点(底)
図表6 製造業生産指数のウエイト(規模別)
(%)
図表5 製造業生産の推移(季節調整値)
100
(99.1Q=100)
その他
90
114
プラスチック
大企業
112
石油製品
80
金属製品
110
108
70
106
60
102
100
窯業土石
40
非鉄金属
30
96
90
99
50
輸送機械
電子部品
鉄鋼
情報通信
20
中小企業
電気機械
10
00
01
02
03
04
05
(年)
(備考)1.中小企業は資本金3億円以下または従業者300人以
( 下の企業、大企業は中小企業以外とした。
2.中小企業庁『規模別製造工業生産指数』などより
( 作成
0
信金中金月報 2005.8
一般機械
中小企業
大企業
(備考)1.ウエイトは付加価値額ベース
2.中小企業庁『規模別製造工業生産指数』などより
( 作成
(注)
4.電機3業種は、電気機械、情報通信、電子部品・デバイスとした。
44
精密機械
化学
98
92
繊維
パルプ紙
104
94
食料品
復力の弱さにつながっている。
増にまで圧縮している。ただ、一部の業種で
足元では、中小製造業の出荷が前年水準を
在庫が積み上がっているものの、今回復局面
割り込み、在庫が徐々に積み上がるなど(図
に入ってから中小製造業全体では在庫圧縮が
表8)、軽い在庫調整局面にある。特に、電子
進展し、在庫管理の効率性を示す中小製造業
部品・デバイスは、04年10∼12月の在庫が前
の棚卸資産回転率(売上高÷棚卸資産)が上
年の水準を30.9%上回っていたが、05年1∼3月
昇してきた(図表9)。中小製造業の棚卸資産
に生産を同7.1%削減することで在庫を同11.6%
回転率は02年以降の回復局面入り前には10回
図表7 製造業生産の前年比と業種別寄与度(規模別)
(%)
(%)
10
10
中小企業
8
8
6
6
4
4
2
2
0
0
-2
-2
-4
-4
その他
輸送機械
-6
鉄鋼・化学
02
03
04
電機3業種
一般機械
鉄鋼・化学
-10
製造業
-12
輸送機械
-8
一般機械
-10
その他
-6
電機3業種
-8
大企業
製造業
-12
05(年)
02
03
04
05(年)
(備考)1.電機3業種は①電気機械、②情報通信機械、③電子部品・デバイス
2.中小企業庁『規模別製造工業生産指数』などより作成
図表8 中小製造業の在庫循環図
図表9 製造業の棚卸資産回転率
(回)
(%)
2
12.5
05.1Q
中小企業
12.0
0
04.1Q
01.1Q
10.5
10.0
02.1Q
9.5
00.1Q
大企業
9.0
03.1Q
-8
8.5
99.1Q
-10
-12
棚卸資産回転率
=売上高÷棚卸資産
11.0
-2
在
庫
︵
前 -4
年
比
︶ -6
11.5
8.0
-10
-8
-6
-4
-2
0
出荷(前年比)
2
4
6
(%)
7.5
98
99
00
01
02
03
04
05
(年)
(備考)1.在庫は期中平均。99年1-3月∼05年1-3月
2.棚卸資産回転率=売上高(直近4期合計)÷棚卸資産(直近4期平均)。『法人企業統計季報』を用いる際、中小企業は資
( 本金1,000万円∼1億円、大企業は1億円以上とした。
3.中小企業庁『規模別製造工業生産指数』、財務省『法人企業統計季報』より作成
調 査
45
台前半で推移していたのが、足元では若干低
また、02年以降の景気回復局面において、販
下しているものの12回を上回る水準に改善し
売価格D.I.の上昇幅は、仕入価格D.I.の上昇幅
ている。景気回復に伴って売上が増加しても
の79%にとどまり、バブル景気や90年代半ば
在庫積増しに対する姿勢は慎重になっており、
の回復局面の84∼89%を下回る(図表10右)。
在庫管理技術の導入や不良在庫の処分が進展
販売価格に仕入価格の上昇分をある程度転嫁
したことも回転率の上昇に寄与したと考えら
できている企業の割合は過去の回復局面と比
れる。在庫は低水準で推移しているため、中
べて高い方ではない。
小企業が大幅な生産調整を余儀なくされる可
能性は小さいと予想される。
中小企業性製品の国内企業物価(工業製品)
は04年度に前年比1.6%上昇しており、大企業
性製品の同1.7%の上昇と大差はない(図表11)
。
(2)中小企業の仕入価格高騰の影響
これだけをみると、中小企業も大企業並みに
中小製造業の生産活動は底堅く推移してい
価格転嫁できているように見受けられるが、大
るが、仕入価格の高騰が収益の圧迫要因とな
企業性製品の場合、技術革新や品質向上によ
っている。中小公庫『中小企業景況調査』に
り電気機械などの加工型製品の価格が大きく
よると、仕入価格D.I.は04年11月に27.7とこの
低下しており、素材型製品の価格は中小企業
14年間で最も高い水準に達した(図表10左)。
性製品に比べて大幅に上昇している(寄与度
バブル景気以降の回復局面では、今回が最も
は3.4%)。
仕入価格D.I.の上昇幅が大きく、中小製造業へ
の原材料高のインパクトが強いことがわかる。
大企業が原材料の上昇分を販売価格に転嫁
すると、価格交渉力が弱い中小企業がそのし
図表10 中小企業の仕入価格・販売価格D.I.と景気回復期における価格
転嫁の状況
30
20
〈平均値〉
・仕入価格;2.3
・販売価格;△13.4
35
①販売価格D.I.上昇幅(谷→山)
1.0
②仕入価格D.I.上昇幅(谷→山)
仕入価格
30
価格転嫁率(①÷②、右目盛)
0.9
25
10
20
0.8
0
15
-10
-20
0.7
10
0.6
販売価格
5
0
-30
0.5
95 96 97 98 99 00 01 02 03 04 05(年) 第11循環 第12循環 第13循環 第14循環
(備考)1.前月比「上昇」−「低下」。第11循環の回復期は86年11月∼91年2月、第12循環は93年
( 10月∼97年5月、第13循環は99年1月∼00年11月、第14循環は02年1月∼直近(05年3月)
( とした。
2.中小公庫『中小企業景況調査』より作成
46
信金中金月報 2005.8
わ寄せを受けるおそれがある。そこで、製造
上総利益=売上高−売上原価)確保のために
業の売上高原価率が資本金規模間でどのよう
労務費・原材料の上昇分を販売価格に転嫁し、
な相関関係になっているのかをみることにす
それを仕入れている中小製造業の売上原価が
る。今回復局面では、中小製造業の売上高原
上昇してマージン率が低下すれば、資本金規
価率が02年度の76.4%から04年度には78.1%に
模間の売上高原価率には負の相関が生じるこ
上昇した一方、大企業製造業はほとんど変動
とになる。過去の例では、おおむね景気回復
がなく(79.4→79.5%)、価格転嫁が進んでい
局面入り後に相関係数がマイナスに転じる傾
る(図表12)
。景気回復による価格交渉力の強
向がうかがえ(図表13)
、大企業の利益確保は
まりを背景に、大企業製造業がマージン(売
中小企業の犠牲の上に成り立っている可能性
図表11 国内工業製品物価の推移(前年比)と業種別寄与度(04年度)
(%)
(%)
4
3
2
工業製品
3
中小企業性製品
その他素材
1
2
0
1
-1
0
-2
-1
石油石炭
鉄鋼
電気機械
大企業性製品
-4
01
輸送機械
-2
-3
その他
-3
02
03
04
05(年)
中小企業性製品
大企業性製品
(備考)1.その他素材は化学、非鉄、金属製品、窯業土石、プラスチック、木材、パルプ紙
2.中小企業庁『規模別国内企業物価指数』などより作成
図表12 製造業の売上高原価率
図表13 製造業の規模別売上高原価率の相関
係数
(%)
1.0
83
82
0.8
大企業
0.6
81
0.4
80
0.2
0.0
79
78
景気回復局面入り後の中小企業と大企業
の売上高原価率の相関係数をみるとマイ
ナスに転じる傾向がみられる。
中小企業
-0.2
-0.4
77
-0.6
76
-0.8
75
80 82 84 86 88 90 92 94 96 98 00 02 04
-1.0
80 82 84 86 88 90 92 94 96 98 00 02 04
(年)
(備考)1.シャドーは景気後退局面
2.売上原価(直近4期合計)÷売上高(直近4期合計)
3.図表13は直近2年間の相関係数
4.財務省『法人企業統計季報』より作成
(年)
(備考)図表12に同じ
調 査
47
がある。
高原価率が1.2%ポイントの押上げに寄与して
図表14は、今回復局面で売上高経常利益率
いる。中小製造業と中小非製造業は各々1.0%
の変動幅に各科目がどれだけの影響を及ぼし
ポイント、0.8%ポイント売上高経常利益率が
たのかを示している。中小企業全体では、売
改善しているが、製造業では間接部門の経費
上高原価率と売上高販管費率の低下が売上高
削減によって原材料の高騰の影響を減殺した
経常利益率の改善をもたらしたが、中小製造
一方で、非製造業では現業部門の効率化など
業は売上高販管費率が2.6%ポイントの押し上
で利益を捻出しており、その要因は大きく異
げに貢献した一方で、売上高原価率が1.7%ポ
なっている。
イント押し下げた。逆に中小非製造業では売
3.中小企業の収益性と経営の安全性
上高販管費率が0.4%ポイント押し下げ、売上
第3章、並びに第4章では、財務省『法人企
図表14 売上高経常利益率の変動幅の科目別
寄与度(02→04年度)
業統計季報』を用いて、中小企業の収益性、経
(%ポイント)
営の安全性、労働生産性、設備投資の動向等
3.0
2.5
について、大企業との比較を踏まえたうえで、
2.0
1.5
より詳細な分析を行ってみたい。
1.0
0.5
0.0
営業外費用
営業外収益
販管費
売上原価
経常利益率
-0.5
-1.0
中小製造業で売上
原価の負担増が利
益率を抑制
-1.5
-2.0
中
小
企
業
︵
製
造
業
︶
︵
非
製
造
業
︶
大
企
業
︵
製
造
業
︶
(1)資本金階層別の利益率格差
04年度は大企業・中小企業ともに製造業・
非製造業双方で増益が続いた。全産業全規模
︵
非
製
造
業
︶
の経常利益は前年比24.6%増であり、中小企業
は同25.6%増、大企業は同24.2%増と好調であ
(備考)1.各売上高費用率の増減で算出
2.財務省『法人企業統計季報』より作成
る(図表15)。中小企業は、03年度に同1.9%
図表15 経常利益の前年比と寄与度(規模別、製造・非製造別)
(%)
50
大企業(非製造)
大企業(製造)
中小企業(非製造)
中小企業(製造)
経常利益(全産業)
40
30
20
10
0
-10
-20
-30
-40
95
96
97
98
99
(備考)財務省『法人企業統計季報』より作成
48
信金中金月報 2005.8
00
01
02
03
04
05
(年)
の微増にとどまった製造業が04年度は同43.1%
れる要因(パラレルシフト要因)
、縦軸は、景
増へ急回復した影響が大きい。一方、大企業
気変動によって低資本金階層と高資本金階層
は製造業が引き続き堅調だったことに加えて、
との間で利益率格差が拡大・縮小する要因(ス
非製造業が同9.0%増から同23.3%増へ拡大し
ティープネス要因)を示している。バブル景
たことが寄与している。
気に当たる87∼89年度は、パラレルシフト要
04年度の経常利益の前年比伸び率は大企業
因が強く、景気の拡大に伴ってすべての資本
よりも中小企業の方が高かったが、利益率格
金階層で利益率が上方へ移動しながら、規模
差は今回復局面の初期に拡大したまま04年度
別格差は縮小方向に変動した。例えば、89年
でもそれほど縮まってはいない。景気回復局
度は資本金1,000万∼5,000万円(小規模)の利
面入り前の01年度には中小企業の売上高経常
益率は3.5%であり、10億円以上(大規模)は
利益率は2.2%で大企業との格差が0.4%ポイン
3.9%とその差が0.4%ポイントに縮小している。
トにすぎなかったが、04年度には中小の利益
一方、今回復局面では、全体的に利益率は上
率が3.0%に上昇したものの、大企業の方が
昇しているものの、04年度は小規模が3.1%に
1.2%ポイント上回る水準にある。図表16は、
とどまったのとは対照的に、大規模が4.8%に
80年度以降の資本金階層別売上高経常利益率
達しており、スティープネス要因が強く働い
を変動要因別に分解したものである(注)5。横軸
て格差が1.7%ポイントにまで拡大している。
は、景気回復(後退)によって全資本金階層
02年度以降の期間は、この25年間で資本金規模
で利益率が上方(下方)に押し上げ(下げ)ら
の大小の違いが利益率の変動に最も大きく影
図表16 売上高経常利益率の資本金階層別格差の変動要因
景気後退で下方シフト
規模別格差拡大
2.5
ス
テ
ィ
ー
プ
ネ
ス
要
因
2.0
1.5
1.0
0.5
利益率低下
0.0
95
98
96
94
82
85 91
04年度
利益率上昇
00
90
80
-1.5
87
景気後退で下方シフト
規模別格差縮小
-0.5
〈スティープネス要因〉
資本金階層別の格差が変化
する動き
(売上高経常利益率)
88
格差縮小
格
差
縮
小
-2.0
-1.0
パラレルシフト要因
83
81
-1.5
(資本金規模)
97
-1.0
-2.0
03
99
86
01
93
景気回復で上方シフト
規模別格差拡大
02
84
92
-0.5
-2.5
格
差
拡
大
〈パラレルシフト要因〉
景気回復(後退)に伴って、
全資本金階層で上方(下方)
へ平行移動する動き
(売上高経常利益率)
89
格差拡大
景気回復で上方シフト
規模別格差縮小
0.0
0.5
1.0
1.5
2.0
(資本金規模)
2.5
(備考)1.資本金階層は1,000万∼5,000万円、5,000万∼1億円、1億∼10億円、10億円以上
( 2.算出期間は80∼04年度。算出方法は脚注5参照
( 3.財務省『法人企業統計季報』より作成
(注)
5.資本金階層は①1,000万∼5,000万円、②5,000万∼1億円、③1億∼10億円、④10億円以上。各資本金階層間で売上高経常利益
率の相関係数行列を求め(80∼04年度)、その固有ベクトル(パラレルシフト要因は①0.49467、②0.48282、③0.51833、④
0.50351、スティープネス要因は①-0.72155、②-0.12030、③0.15588、④0.66377)をウエイトとした各資本金階層の売上高経常
利益率(標準化後)の加重合計値(標準化後)を散布図で表した。
調 査
49
響を及ぼした局面であったことが読み取れる。
ったのが、04年度には14.4%に達した(図表18)
。
この景気回復局面で中小企業は売上高に4%強
(2)中小企業の経営の安全度
のゆとりが生じたことになる。ただ、大企業
好調な売上を反映して、中小企業の経営も
の安全余裕度は04年度に23.3%に達しており、
安定度を増してきている。売上高が何%減少
バブル期の水準をも上回っている。規模別格
したら利益がゼロになるのかを示す中小企業
差は8.9%ポイントにまで拡大しており、大企
の安全余裕度(図表17)は、02年度に10.1%だ
業に比べると中小企業の経営安全度は見劣り
する。
図表17 安全余裕度の概念図
(売上高、費用)
業種別に中小企業の経営安全度をみると、不
利
益
動産、娯楽、卸売、鉄鋼、公益(注)6などで損益
分岐点比率(実際の売上高に対する利益がゼ
変
動
費
ロとなる売上高の比率)が低く、安全度が高
くなっている(図表19)
。リース用機械の減価
固
定
費
償却負担が重い(注)7物品賃貸、人的資本への依
(売上高)
存度が高く人件費負担が重い医療・福祉、広
45°
損益分岐点売上高
実際の売上高
告・その他事業所サービス、運輸といった業
安全余裕度=
(実際の売上高−損益分岐点売上高)
÷実際の売上高
種で固定費率が高く、経営の安全度が低水準
にある。一方、建設などは変動費の負担が重
図表18 安全余裕度の推移(経常利益ベース) 図表19 中小企業の業種別の固定費率と損益
(%)
分岐点比率(04年度)
24
(%)
100
22
変動費率
95
18
窯業・土石
建設
16
食料品
損 90
益
分
岐 85
点
比
率 80
14
12
10
8
60%
50%
2
精密機械
鉄鋼
①−②
0
82
84
86
88
90
92
94
96
98
00
パルプ・紙
02
04 (年)
70
広告・他事業サービス
物品賃貸
医療、福祉
運輸
繊維
木材・木製品
教育
印刷 その他サービス
石油・石炭
輸送機械
非鉄金属 化学 宿泊
電機
生活関連サービス
衣服 鉱業
情報通信
卸売
75
4
飲食店
農林水産業
小売
中小企業②
6
80
70%
80%
90%
大企業①
20
娯楽
5
10
15
金属製品
一般機械
公益
不動産
20
25
30
35
40
45
固定費率
50
(%)
(備考)1.公益は電気・ガス熱供給水道、電機は電気機械・情報通信機械とした。図表18は各科目を直近4期合計してから算出
2.固定費=人件費+減価償却費+営業外費用(純)、変動費=売上高−(経常利益+固定費)とした。
3.財務省『法人企業統計季報』より作成
(注)
6.公益は電気、ガス・熱供給・水道とした。
7.物品賃貸業の売上高に対する減価償却費の比率は33.2%(04年度)であり、この数値は非製造業の1.8%、製造業の2.2%(全
産業は1.9%)を大幅に上回る。
50
信金中金月報 2005.8
いことが損益分岐点比率を押し上げている。飲
度は改善されるものと考えられる。
食店は、損益分岐点比率が95.6%で最も高い
4.中小企業の労働生産性と設備投資・
資金調達・投資採算
が、人件費の抑制などで固定費率を1.7%ポイ
ント削減できれば、変動費率が現状の水準の
ままでも損益分岐点比率は90%を下回る水準
(1)中小企業の労働生産性と雇用環境
04年度は売上高の拡大が増益に寄与したが、
に改善する。仕入・調達コストの圧縮や在庫
管理の効率化といった変動費の抑制に加えて、
人件費は利益の伸び率を抑制する方向に働い
人的資本と機械設備を効率的に組み合わせて
た。中小企業は02年の景気回復局面入り後も
固定費を見直すことで、中小企業の経営安全
人件費の圧縮に努めてきたが、売上の増加を
背景にようやく削減圧力が一服して
図表20 中小企業の経常利益の前年比と寄与度
(%)
きた様子がうかがえる(図表20)
。付
売上高−変動費
人件費
減価償却費
営業外利益
経常利益
150
100
加価値に占める人件費の割合である
労働分配率は、中小企業で一時期
50
80%近くに達していたのが、04年度
0
には74.1%にまで低下しており、人
-50
件費負担の軽減がリストラ圧力を緩
-100
和している(図表21)。ただ、大企
業は04年度に53.7%とバブル景気前
-150
95
96
97
98
99
00
01
02
03
04
05
(年)
(備考)財務省『法人企業統計季報』より作成
ている。中小企業はまだ4%ポイント
図表21 労働分配率(人件費÷粗付加価値)
(%)
程度バブル景気前の水準を上回って
中小企業
80
の水準である54.1%をすでに下回っ
おり、付加価値と1人当たり人件費を
75
中小企業バブル
前水準
現状のままと仮定すると、バブル景
約4%ポイント乖離
70
気前の水準に労働分配率を低下させ
大企業
65
るためには、人員を5.7%(135.8万
60
大企業バブル
前水準
人)削減して労働生産性を6.1%引き
55
50
80
上げる(521.0→552.7万円)必要があ
82
84
86
88
90
92
94
96
98
00
02
04
(年)
(備考)1.粗付加価値=経常利益+支払利息等+人件費+減価償却費(直近
( 4期合計)
( 2.バブル前は83年1-3月∼86年10-12月(第10循環)とした。
( 3.財務省『法人企業統計季報』より作成
る(注)8。
それでは、中小企業と大企業で労
働分配率の推移にどのような違いが
(注)
8.通常、労働力が削減されれば付加価値も減少するが、残留した人員で現行水準の付加価値を維持できるものと仮定して算出
した。
調 査
51
図表22 労働分配率の要因分解(1人当たり人件費÷労働生産性)
(万円)
450
(万円)
中小企業
700
96.1Q
440
98.1Q
430
00.1Q
02.1Q
04.1Q
390
380
労働分配率
一
人 660
当
た 640
り
人
件 620
費
55%
96.1Q
04.1Q
00.1Q
05.1Q
94.1Q
92.1Q
50%
90.1Q
90.1Q
370
500 520 540 560 580 600 620 640
労働生産性
労働分配率
600
60%
05.1Q
60%
02.1Q
680
92.1Q
一
人 420
当
た 410
80%
り
人
件 400
費
98.1Q
70%
94.1Q
大企業
580
1,050
1,100
(万円)
1,150
1,200
(万円)
労働生産性
(備考)1.労働生産性=粗付加価値(直近4期合計)÷人員数(直近4期平均)
2.財務省『法人企業統計季報』より作成
あったのかをみることにしよう。図表22は、
労働分配率を1人当たり人件費と労働生産性に
分解したグラフである。90∼91年には、中小
図表23 非農林業就業者数の前年比と従業者
規模別の寄与度
(%)
3.0
2.5
企業はおおむね労働生産性の上昇に見合った1
2.0
人当たり人件費を支払っており、労働分配率
1.5
従業者
500人以上
30∼499人
1∼29人
その他
合計
1.0
は65%程度で推移していた。ただ、92∼97年
0.5
は生産性の低下にもかかわらず1人当たり人件
0.0
費の抑制が進展せず、労働分配率は上昇基調
にあった。98年頃から中小企業は1人当たり人
件費の削減を推し進めてきたが、生産性が大
企業のようには改善しなかったため、労働分
-0.5
-1.0
-1.5
90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 00 01 02 03 04
(年度)
(備考)1.その他は自営業主、家族従業者、官公、不詳の合計
( 人数
2.総務省『労働力調査』より作成
配率の低下テンポは緩やかになっている。中
答した企業が過剰とした企業よりも多く、求人
小企業と大企業間における生産性の改善度合
難に直面している企業が増えている(図表24)
。
いの違いが、労働分配率の低下速度の相違に
ただ、景気の回復で有能な労働者の確保が
結びついている。
困難になり、原材料の高騰などによって付加
従業者数1∼29人の零細企業では、足元でも
価値の大幅増加が期待しにくい中での雇用増
人員が減少しており、人件費削減の動きが続
は、生産性の上昇を上回る人件費負担の増加
いているが、04年度には500人以上の大企業だ
がもたらされて労働分配率の低下が妨げられ
けではなく、30∼499人の中堅企業にまで雇用
るおそれもある。中小企業の今後の課題は、い
拡大のすそ野が徐々に広がってきた(図表23)
。
かにして限られた人的資本の中で生産性を向
日銀短観の雇用人員D.I.によると、05年3月調
上させられるかどうかにあるが、そのために
査の段階で、中小企業は雇用不足であると回
は既存設備の有効活用に加えて、設備投資の
52
信金中金月報 2005.8
拡充も欠かせないと考えられる。
図表24 雇用人員D.I.(過剰−不足)
(%)
(2)中小企業の設備投資と資金調達・投資採算
30
20
04年度の設備投資は、全産業全規模で前年
過剰
10
比8.1%増と好調だった(注)9。中小企業は年度前
0
半の同31.9%増から、後半には同4.2%減へと
-10
マイナスに転換したものの、通年では同11.0%
-20
増と2ケタの伸びを維持した(図表25)。業種
-30
別では、非製造業が同15.4%増とけん引役を果
大企業
中堅企業
中小企業
不足
-40
たしたが、年度前半の同41.6%増から後半には
-50
90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 00 01 02 03 04 05
同3.6%減へと失速した。中小製造業は03年度
(備考)1.05年9月は予測
2.日本銀行『全国企業短期経済観測調査』より作成
に同30.4%増と大幅に拡大した反動
で04年度には同0.4%の微減となった。
図表25 設備投資の前年比と寄与度
(%)
20
中小企業が年度後半に減速した一方
15
で、大企業は前半の同5.5%増から後
10
半には同8.5%増へと加速しており、
中小企業の落込み分を大企業が減殺
(年)
非製造業(大)
製造業(大)
非製造業(中小)
製造業(中小)
全体
5
0
-5
する格好となった。
-10
中小製造業は03年度に設備投資を
-15
大幅に増やしたが、その多くは生産
-20
90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 00 01 02 03 04 05
能力の増強に向けられた公算が高い。
中小公庫『中小製造業設備投資動向
調査』によると、設備投資の目的別
構成比は、能力拡充が02年度の23.8%
(年)
(備考)ソフトウェアを除く。財務省『法人企業統計季報』より作成
図表26 中小製造業の設備投資の目的別構成比
(%)
35
能力拡充
更新、維持・補修
30.8
30
29.4
から03年度には31.1%へと大幅に上
25
昇しており、04年度も設備投資の3割
超が能力増強投資で占められている
(図表26)
。03∼04年度は能力増強投
資を中心に前向きな投資が増えたが、
05年度計画では新製品や新規事業へ
省力化・合理化
20
15
16.8
新製品の生産・
新規事業進出・研究開発
15.2
10
85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 00 01 02 03 04 05p
(年度)
(備考)05年度は計画。中小公庫『中小製造業設備投資動向調査』より作成
の進出に対する設備投資の比率が
(注)
9.ソフトウェアを除く設備投資
調 査
53
19.2%へ上昇するなど、新分野へ攻勢をかける
している(図表29)
。ただ、最悪期を脱したも
ための投資も散見される。
のの、大企業の5.4年に比べると倍以上の債務
ただ、企業の手元にある資金の純増分であ
負担を依然として抱えていることになる。
るキャッシュフローとの対比でみると、設備投
一方、景気の回復で、営業向けに稼働して
資の水準はまだ低い。中小企業の場合、04年度
いる資産に対する利益率を示す営業資産収益
は設備投資の対キャッシュフロー比率が0.59倍
率は04年度にバブル崩壊後最高水準になる
にとどまっており、景気回復に伴ってキャッシ
11.1%に達し、これから負債利子率を差し引い
ュフローに厚みが増しているほどには、投資意
た投資採算は9.1%に回復している(図表30)
。
欲の高まりは鮮明化していない(図表27)
。景
設備投資によって利益のかさ上げを狙う企業
気が回復してキャッシュフローが増大している
が増える土壌は整いつつある。今後、借入金
といっても、中小企業は長短借入金を04年度
の返済圧力が緩和し、景気回復基調が持続し
に18.8兆円も削減しており(注)10、自己金融(注)11
て先行きの収益に対する見通しが一段と改善
(17.5兆円)を上回る額を債務の返済に充てて
すれば、生産性の向上につながるような設備
いる(図表28)
。債務の返済圧力が設備投資を
への投資が活発化するものと考えられる。
抑制している。
そこで、長短借入金に社債を加えた債務が
(3)中小企業の資金繰りと中小企業向け債権
何年分のキャッシュフローに相当するのかを
のポートフォリオ
示す債務返済年数をみると、93年度には18.5年
04年度の中小企業の倒産件数は前年比14.6%
に達していたのが、04年度は12.0年にまで低下
減の13,129件、負債金額は同29.6%減の6.3兆円
図表27 設備投資の対キャッシュフロー比率
図表28 中小企業の資金調達と資金需要の推移
(倍)
(兆円)
55
50
45
40
35
30
25
20
15
10
5
0
-5
-10
-15
-20
1.4
1.3
1.2
大企業
1.1
1.0
0.9
0.8
0.7
中小企業
0.6
0.5
80 82 84 86 88 90 92 94 96 98 00 02 04
(年)
資
金
調
達
減価償却費
内部留保+増資
社債
長期借入金
短期借入金
資金調達
資金需要
資金需要=設備投資+在庫投資
+企業間信用差額増+その他流動資産増
+繰延資産増
80 82 84 86 88 90 92 94 96 98 00 02 04
(備考)1.キャッシュフロー=経常利益×0.5+減価償却費(直近4期合計)とした。
( 2.資金調達=資金需要+金融資産増
( 3.財務省『法人企業統計季報』より作成
(注)
10.そのうち不動産業が10.1兆円を占める。
11.自己金融=資本金(増)+資本剰余金(増)
+利益剰余金(増)
+その他の資本(増)
−自己株式(増)
+減価償却費
54
信金中金月報 2005.8
(年度)
図表29 債務返済年数
図表30 営業資産収益率と中小企業
の投資採算
(%)
営業資産収益率
22
=営業利益÷(有形固定資産+棚卸資産)
中小企業
20
17
18
中小企業
16
15
大企業
14
13
12
大企業
10
11
8
9
6
4
7
中小企業の投資採算
2
=営業資産収益率−負債利子率
5
0
80 82 84 86 88 90 92 94 96 98 00 02 04
80 82 84 86 88 90 92 94 96 98 00 02 04
(年)
(年)
(年)
19
(備考)1.債務返済年数=
(長短借入金(直近4期平均)+社債(直近4期平均))÷キャッシュフロー
( (直近4期合計)
( 2.営業資産収益率=営業利益(直近4期合計)÷(有形固定資産+棚卸資産)
(直近4期平均)
( 3.財務省『法人企業統計季報』より作成
図表31 経常収支比率(経常収入÷経常支出)
(%) ・経常収入=売上高−売上債権増−その他流動資産増+営業外収益
109
図表32 流動比率(流動資産÷流動負債)の推移
(%)
・経常支出=売上原価+販管費−減価償却費+棚卸資産増−買入債務増
−その他流動負債増+営業外費用、とした。
150
145
108
中小企業
(製造業)
140
107
106
135
大企業
大企業
(製造業)
130
大企業バブル
前水準
125
105
中小企業
(全産業)
120
104
115
103
102
101
中小企業
(非製造業)
110
105
中小企業
バブル前水準
中小企業
大企業
(非製造業)
95
100
80 82 84 86 88 90 92 94 96 98 00 02 04
(備考)1.直近4期合計の比率
( 2.財務省『法人企業統計季報』より作成
大企業
(全産業)
100
(年)
90
80 82 84 86 88 90 92 94 96 98 00 02 04(年)
(備考)1.直近4期平均
( 2.財務省『法人企業統計季報』より作成
にとどまった(注)12。中小企業の倒産は景気の回
企業でも106.6%に達しており、大企業には及
復とともに減少基調で推移しており、販売不
ばないものの資金繰り面はバブル期を上回る
振・売掛金回収難・信用性の低下などによって
ほど大幅に改善している(図表31)。
資金繰りに窮するケースは少なくなっている。
また、1年以内に返済義務がある負債に対す
例えば、経常的な資金の流入を示す経常収
る1年以内に現金化が予想される資産の比率で
入を、経常的な資金の流出を示す経常支出で
ある流動比率は、04年度に中小企業で118.7%
割ることで算出する経常収支比率(注)13は、中小
に上昇しており(図表32)
、中小企業の短期的
(注)
12.東京商工リサーチ調べ
13.経常収入=売上高−売上債権増−その他流動資産増+営業外収益、経常支出=売上原価+販管費−減価償却費+棚卸資産
増−買入債務増−その他流動負債増+営業外費用、とした(直近4期合計)
。
調 査
55
な倒産リスクは低下傾向にある(注)14。おおむね
とは反対の方向に流動比率が推移する不動産
製造業で流動比率が高く、非製造業で低いが、
業の債権を組み合わせることで、計算上は貸
近年、製造業と非製造業との格差が拡大する
倒れリスクが景気の変動によって大きく偏ら
傾向がみられる。もちろん、業種ごとの特性
ないポートフォリオにすることができる。中
によって流動比率の水準が異なるのは当然で
小企業の足元の資金繰りは改善しており、倒
あり、流動比率が高いということは、低利で
産リスクは軽減しているものの、景気の変動
運用している資金が多いという理由から投資
によるリスクをできるだけ軽減して、保有債
機会を逸しているともいえるが、債権者側か
権全体としての安全性を保つためには、流動比
らの視点では、どんな業種であろうと債務者
率など財務比率の業種間の相関関係を考慮し
に現金化しやすい資産を多く保有してもらっ
た債権ポートフォリオの構築が必要になろう。
た方が貸倒れリスクの側面において安心度が
5.地域別の中小企業の損益状況
高い。
最後に、地域別の中小企業の損益状況を、中
信用金庫などが保有する中小企業向け債権
ポートフォリオの貸倒れリスクを低下させる
小企業庁『中小企業実態基本調査』
(04年速報)
ためには、貸出先全体として、銀行家比率と
からみることにしよう。事業別の売上高構成
も呼ばれて融資の際に重視される流動比率が
比を地域別にみると、建設は近畿地方で10.8%、
高く、かつ、その変動が小さいポー
トフォリオを組むことが有効と考え
図表33 流動比率の平均値を一定に保つための中小企業
向け債権のポートフォリオ
られる。そこで、財務省『法人企業
20
(%)
統計季報』を使って、対象企業全体
保有している債権の流動
比率の平均値が、ある一
定水準で推移するための
中小企業向け債権残高の
業種別構成比
18
16
の流動比率がある一定水準近辺で推
14
移するポートフォリオ(中小企業向
12
け債権残高の業種別構成比)を試算
流動比率の平均値
110%
120%
130%
140%
10
8
してみると、化学・金属製品・一般
6
機械・電機・輸送機械・不動産向け
4
2
債権のウエイトが高いポートフォリ
オが望ましいという結果が出た(図
表33)。つまり、輸出や設備投資が
好調でキャッシュフローが比較的潤
沢である製造業と、このような業種
0
食
料
品
化
学
窯
業
・
土
石
金
属
製
品
一
般
機
械
電
気
機
械
輸
送
機
械
そ
の
他
製
造
農
林
水
産
業
鉱
業
公
益
運
輸
卸
売
不
動
産
宿
泊
娯
楽
そ
の
他
非
製
造
(備考)1.期間;95∼04年度。各平均水準とも変動係数は0.01未満
( 2.二次計画法でポートフォリオの平均値に制約を課しながら分散を
( 最小化することで算出した。
( 3.財務省『法人企業統計季報』より作成
(注)14.売残り在庫などの不良資産がある場合があるので、見かけ上流動比率が高くても、棚卸資産回転率などで在庫の効率性を
勘案するなどの留意が必要である。
56
信金中金月報 2005.8
図表34 中小企業の事業別売上高構成比(04年)
(%)
100
90
16.3
17.6
13.4
19.5
20.2
13.3
80
70
27.3
17.8
26.3
15.6
0
16.3
23.8
31.5
27.2
14.2
15.6
17.6
24.8
その他
26.2
サービスなど
21.1
20.1
19.6
21.2
20.0
製造・加工
小売・飲食
20.8
15.8
運輸
16.9
27.7
17.9
15.4
14.3
27.6
28.7
28.8
21.9
30
10
15.5
卸売
50
20
13.4
30.6
60
40
26.5
16.2
11.1
13.3
13.2
13.4
12.1
14.1
全国 北海道 東北 北関東 南関東 東海
19.6
15.5
19.0
18.1
17.7
四国
九州
建設
12.2
18.9
北陸
10.8
13.2
近畿
中国
(備考)1.「サービスなど」はサービス事業、宿泊事業、情報通信事業、不動産事業。法人企業と
( 個人の合計
( 2.新潟は東北、山梨・長野は北関東に分類した。
( 3.中小企業庁『中小企業実態基本調査』より作成
南関東地方で12.1%にとどまる一方、北海道は
21.2%、東北地方は20.0%と大都市圏の2倍近
くの水準に達する(図表34)。小売(含む飲
図表35 地域別の中小企業の損益分岐点比率と
変動費率(経常利益ベース、04年)
(%)
96
食)も近畿地方は12.2%、南関東地方は13.2%
95
だが、北海道は21.1%、北関東地方は20.8%と
94
高い。南関東・東海・近畿地方といった大都
市圏で建設・小売の売上高構成比が2割台なの
に対して、地方圏では3∼4割台にのぼってお
り、地方の中小企業は所得の源泉として公共
売上高経常利益率が低い
(固定費率が高い)
北海道(1.6)
北陸(1.5)
南関東(1.9)
損
四国(2.3)
益 93
売上高経常
分
全国(2.3)
岐
利益率が高い
点 92 (固定費率が高い)
比
率
北関東(2.6)
91
90
売上高経常
利益率が低い
(固定費率が低い)
近畿(2.6)
九州(2.9)
事業などを担う建設と自地域の商取引を支え
東海(3.2)
89
売上高経常利益率が高い
(固定費率が低い)
る小売に依存している傾向が強いことがわか
る。また、製造(含む加工)は東海・北陸・
中国(1.7)
東北(2.0)
88
66
67
68
69
70
71
72
73
74
近畿地方でウエイトが高く、特に東海・近畿
地方では工場の集積から派生した卸売・運輸
75
(%)
変動費率
(備考)1.カッコ内の数値は売上高経常利益率。法人企業
( 2.中小企業庁『中小企業実態基本調査』より作成
といった物流のウエイトも南関東地方には及
れたが、中小企業の収益性や安全性も地域ご
ばないものの比較的高水準である。北陸・四
とに違いが生じている。収益性が高い地域は、
国地方は、建設・製造といった第2次産業のウ
売上高経常利益率が3.2%に達する東海地方で
エイトが高い一方、サービスは関東地方でシ
あり、最も低いのは北陸地方の1.5%である(図
ェアが大きく、地域によってサービス経済化
表35)
。北陸地方は東海地方と同様に製造業の
の進捗度合いに開きがある様子がうかがえる。
ウエイトが高いものの、生産品目の違いや建
地域間で中小企業の産業構造に相違がみら
設依存度の高さによって損益分岐点比率は高
調 査
57
水準にある。自動車などの工場集積地を形成
関東・近畿・東海地方といった大都市圏では
する東海・九州地方などで固定費率の低さを
高生産性で労働分配率は低く、東北地方や北
反映して損益分岐点比率は低く、収益の安全
海道といった地方圏では低生産性で人件費負
性が高い。中国と四国地方は損益分岐点比率
担が重い傾向がみられる。では、どうして地
がともに93%台だが、四国地方は変動費率(固
域間で中小企業の労働生産性に違いが生じる
定費率)が低い(高い)一方で、中国地方は
のかを1人当たり売上高と付加価値率に分解し
高く(低く)
、損益分岐点比率の中身は中国と
てみることにする。
四国で大きく異なっている(注)15。
1人当たり売上高が小さいのは、地域別景況
また、各地域の1人当たり人件費をみると、
感の回復が緩慢(前掲図表3)な北海道・東
おおむね労働生産性に見合った人件費が支払
北・四国地方である(図表37)
。通常、付加価
われている。例えば、南関東地方は労働生産
値率と1人当たり売上高との間には、「高付加
性が501万円と高水準であるのに対応して1人
価値製品・サービスを提供するには、人手や
当たり人件費も407万円と高い(図表36)。一
時間がかかるので1人当たり売上高が低くなる」
方、東北地方は生産性が353万円、1人当たり
という、トレードオフの関係が生じる。しか
人件費は299万円にとどまる。おおむね生産性
し、北海道・四国地方は付加価値率が高水準で
に相応する1人当たり人件費が支払われている
あるのに対し、東北地方は極めて低く、生産性
ので、労働分配率は大体どの地域も全国水準
は360万円を下回る水準にとどまっている(注)16。
である82.0%から大きく乖離していないが、南
中国・九州・東北地方のように地方圏で卸売
図表36 地域別の中小企業の労働分配率の
要因分解
(万円)
人件費多い
(労働分配率高い)
410
390
労働分配率
=1人当たり人件費
÷労働生産性
南関東
(81.3)
近畿(80.7)
東海(81.8)
1 370
全国(82.0)
生産性が高い
生産性が低い
人
(労働分配率低い)
(労働分配率高い)
当
北陸(82.2)
た
四国(83.1)
り 350
労働分配率
北関東(82.7)
人
全国(82.0%)
件
中国(82.4)
費 330
北海道(83.6)
310
九州(82.9)
東北(84.7)
図表37 地域別の中小企業の労働生産性の
要因分解
(万円)
440
2,400
460
480
420
2,300
労働生産性
=1人当たり売上高
×付加価値率
500
近畿
南関東
中国
400
1 2,200
380
人
当 2,100
た
360
り 2,000
売
上
高 1,900 労働生産性
東海
全国
北陸
九州
北関東
1,800
人件費少ない
(労働分配率低い)
290
340 360 380 400 420 440 460 480 500
労働生産性
業のウエイトが高い地域は1人当たり売上高の
(万円)
(備考)1.付加価値は純付加価値(粗付加価値−減価償却費)。
( カッコ内の数値は労働分配率。04年。法人企業
( 2.中小企業庁『中小企業実態基本調査』より作成
1,700
東北
1,600
17.5 18.0 18.5 19.0 19.5 20.0 20.5 21.0 21.5 22.0 22.5 23.0 23.5 24.0
付加価値率
(%)
(備考)1.04年。法人企業
( 2.中小企業庁『中小企業実態基本調査』より作成
(注)
15.損益分岐点比率が同水準の黒字企業の場合、固定費率が高い企業の方が売上高利益率は高くなる。
16.兼業やパートタイム労働者などが多いために、1人当たり売上高が小さい可能性がある。
58
信金中金月報 2005.8
四国
北海道
水準に比べて付加価値率が低いケースが多く、
南関東・近畿・東海地方は付加価値率が全
流通経路の短縮化が進展していることを考慮
国水準の21%前後ながら1人当たり売上高は
すると、卸売業から高付加価値業種へのシフ
2,200万円を上回る。大都市圏の中小企業は都
トによって生産性を改善させる必要があろう。
市の集積効果で1人当たり売上高が高水準にな
一方、四国地方は人手を多く要するような財
るうえ、南関東地方のように付加価値率の高
やサービスを提供するケースが多いものと考
い財・サービスを提供している地域は一段と
えられ、固定費率が高く、1人当たり売上高が
労働生産性が高い。
低い反面、付加価値率は高いので中国地方を
地元の中小企業が他の地域では真似できな
上回る労働生産性を保っている。北海道は九
い付加価値の高いモノやサービスをITの活用
州地方と生産性が380万円程度で同水準だが、
などで効率的に提供することができれば、需
サービスのウエイトが高い北海道の方が付加
要の拡大・価格交渉力の強化→生産性の向上
価値率は高く、1人当たり売上高の低さを補完
→所得水準の上昇という循環が生じ、地域経
している。
済が活性化するものと考えられる。
〈参考文献〉
財務省財務総合政策研究所『四半期別法人企業統計調査』財務省(2005)
中小企業金融公庫総合研究所『中小企業動向調査』中小企業金融公庫(2005)
中小企業金融公庫総合研究所『中小製造業設備投資動向調査』中小企業金融公庫(2005)
中小企業庁調査室『中小企業実態基本調査(速報)』中小企業庁(2005)
(参考)中小企業の定義
中小企業基本法(99年12月施行)による定義
資本金
3億円以下
製造業など
従業員数 300人以下
卸売業
小売業
サービス業
資本金
1億円以上
従業員数
100人以下
資本金
5,000万円以下
従業員数
50人以下
資本金
5,000万円以下
従業員数
100人以下
(備考)1.どちらか一つを満たせば中小企業
2.中小企業庁資料より作成
〈日本銀行『全国企業短期経済観測調査』の規模区分〉
中小企業
資本金2,000万円以上1億円未満
中堅企業
資本金1億円以上10億円未満
大企業
資本金10億円以上
〈財務省『四半期別法人企業統計調査』〉
中小企業
資本金1,000万円以上1億円未満
大企業
資本金1億円以上
〈中小企業庁『中小企業実態基本調査』の企業規模〉
・中小企業基本法における中小企業の定義と同じ
調 査
59
調 査
信用金庫の社会的責任(CSR)
とその情報開示
信金中央金庫 総合研究所主任研究員
廣住 亮
(キーワード)企業の社会的責任(CSR)
、マルチステークホルダー、企業の事業継続性(サ
ステナビリティ)
、トリプル・ボトムライン
(視 点)
「企業の社会的責任(CSR)
」が、企業の経営課題として脚光を浴びている。CSRの議論自体
は新しいものではないが、ここへ来て観念論から踏み出し、実務的な対応を求められるように
なってきた。この背景には、企業の事業継続性(サステナビリティ)は財務諸表のみではな
く、顧客、従業員や地域社会などの存立基盤によって形成されるものであり、こうした多面的
な配慮が、企業の将来的な発展には必須の条件であるという認識ができつつある。
一方、信用金庫は「中小企業の健全な発展」や「地域社会繁栄への奉仕」などを行動指針に
事業を行っている。こうした信用金庫がCSRの視点を持ち、適正な情報開示を行っていくこと
は、長期的には信用金庫のブランドイメージなどの無形資産の向上を通じて、経営基盤の強化
を果たせるものと思われる。
このため、本稿では、CSRに関する状況を概観し、今後、信用金庫の活動にCSRの視点をど
う位置づけるべきかを考えるための若干の視座と考察を得ることを目指している。
(要 旨)
●
企業の社会的責任(CSR)は、過去幾度となく議論されてきており、決して新しいものでは
ない。しかし、昨今の企業不祥事に端を発し、最近急速に普及しつつある概念でもある。
●
CSR普及の流れは、社会的責任投資(SRI)等を通じても後押しされており、企業の事業継
続性の面から、様々な利害を持つステークホルダーへの配慮が不可欠となっている。
●
邦銀ではいまだCSRへの対応では大きな動きとはなっていないものの、国際的動向からみて
も、早晩CSRの価値観を取りいれた金融商品の導入やディスクロージャー誌上で環境・社会
問題への対応状況を開示する動きも加速していくものと思われる。
●
信用金庫は、元来、地域との共存共栄を旨として地域経済の安定的成長や活性化に貢献して
きた。地域の発展と信用金庫の事業継続性を確保するためにも、CSRの議論の盛り上がりは、
地域へのアプローチ方法を再検証する好機でもある。
60
信金中金月報 2005.8
会貢献活動や情報開示方法を再考する好機と
はじめに
すべきかもしれない。
近年、企業の社会的責任(Corporate Social
本稿では、CSRの経緯、目的を概観し、金
Responsibility:以下「CSR」という。
)に関す
融機関におけるCSRの考え方の論点整理とし
る議論が海外を中心に活発になっている。日本
て、先進事例である海外金融機関の事例を眺
でも多くの企業がCSR活動を開始しており(注)1、
め、協同組織金融機関であり地域金融機関で
研究機関もCSRへの対応や運営についての議
ある信用金庫におけるCSRの考え方について
論を加え、現在の企業経営に関するメイント
若干の考察を加えたい。
ピックの一つとなっている。
しかし、そもそもCSRとは何か、という疑
問には多くの議論が有効な回答を提示できて
1.企業の社会的責任
(CSR)
とCSR報告
(1)CSRとは
いないようにも見える。これはCSRの議論が比
CSRという用語自体は、近年欧米で使用さ
較的新しいこと、また、企業規模、業種、活動
れ始めたもので、日本では主に「企業の社会的
範囲(国際、国内、地域特化)などにより、一
責任」と訳される。日本企業はこれまでも社会
義的に「社会的責任」の範囲が決まらないとい
に対して、納税、財・サービスの提供、雇用創出、
うCSR自体の特性などが理由として考えられる。
社会活動への賛助などを通じ、生活の質的向上
こうした中、企業による社会貢献の重要性
へ多大な貢献を果たしてきた。しかし、現在の
が高まっているのも事実で、
「地域社会への貢
CSRは、これまでの社会貢献とはさらに一線を
献」を使命とする信用金庫においても、地域
画すものとして発想を切り替える必要がある。
との共生やイメージ強化のため、効果的な社
図表1のとおり、CSRでは、企業活動が社会
図表1 主な組織によるCSRの定義
組織・機関
欧州委員会
(CSRホワイトペーパー)
経済産業省
(企業の社会的責任(CSR)
に関する懇談会)
経済同友会
(第15回企業白書)
CSRの定義
CSRとは、企業がその活動により影響を受ける全てのステークホルダーに対して負う説明責任
である。企業は公正かつ責任を持って行動し、従業員とその家族、地域社会および社会全体の生
活の質的向上に資するための経済的発展に対して継続的に関与する。
CSRとは、今日経済・社会の重要な構成要素となった企業が、自ら確立した経営理念に基づいて、
企業を取り巻くステークホルダーとの間の積極的な交流を通じて事業の実施に努め、またその成
果の拡大を図ることにより、企業の持続的発展をより確かなものとするとともに、社会の健全な
発展に寄与することを規定する概念であるが、同時に、単なる理念にとどまらず、これを実現す
るための組織作りを含めた活動の実践、ステークホルダーとのコミュニケーション等の企業行動
を意味するものである。
情報化の進展、人々の価値観の多様化、市民社会の成熟といった環境変化の中で、市場のイニシ
アティブが供給サイドから需要サイドにシフトするとともに、企業を「評価する」視線も多様化している。
これに呼応して、企業側も社会の変化に対して能動的に企業の発展に結び付けていこうとする
動きが高まってきた。今日急速な広がりを見せているCSRは、企業と社会の相乗発展のメカニズ
ムを築くことによって、企業の持続的な価値創造とより良い社会の実現をめざす取り組みである。
その中心的キーワードは、「持続可能性」であり、経済・環境・社会のトリプル・ボトムラインに
おいて、企業は結果を求められる時代になっている。
(注)1.環境省の平成15年度「環境にやさしい企業行動調査」では、「CSRを意識した経営を行っているか」という質問に対して、
「行っている」
「今後行う予定」と回答した企業は、上場企業で計81.8%にのぼり(非上場企業を合わせた全企業計では75.8%)
、
また、CSR専担部署もしくは担当者を配置している企業数も上場企業の42.4%(同41.8%)となっている。
調 査
61
や環境に与える影響を多面的に評価し、各要
国籍企業を中心とした企業セクターに求める
素での企業活動によるダメージを極小化し、社
役割は大きくなり、政府やNGO等市民運動と
会厚生を改善させていくことを主眼とする。し
の連携も求められるようになってきている。
たがって、CSRの活動に模範解答はなく、業
加えて、近年相次いだ企業不祥事は、過度
種や地域によって活動は変化する。このため、
な短期利益主義、ガバナンスの機能不全によ
規制や規格にはそぐわない面が大きいと言え、
る経営者・従業員のモラル低下などが、企業
あくまで各企業の自主的な取組みが推奨され
の事業継続性(サステナビリティ)に深刻な影響
ている。
を及ぼすことを証明した。また、その後の社会的
責任投資(Social Responsibility Investment:
(2)CSRの経緯
以下「SRI」という。
)の拡大により、投資家、
企業の社会的責任を論じることは新しいこ
消費者、地域社会などの利害関係者(ステー
とではない。例えば米国では1920年代からキ
クホルダー)への配慮が重視され、ファイナ
リスト教の教義に反する事業(アルコール、タ
ンスの面でも経営における重要な要素となっ
バコ、ギャンブル等)を営む企業への投資を
てきている。
ボイコットするよう働きかけてきた運動があ
こうした経緯を経て今日のCSRの盛り上が
り、以降、企業倫理やガバナンス、受託者責任
りがあり、今後、国際的な議論の行方次第で
等のテーマに派生し、研究が続けられてきた。
はブームに終わらず、国際規格や企業法制な
日本では、高度経済成長下の1960∼70年代
に公害による健康被害などが生じた。これを
機に経済成長のコストとして企業活動の外部
どにも大きな影響を与えるかもしれない。
また、ほかにも図表2のような多くの要因が
CSRの拡大を後押ししていると考えられる。
不経済が認識され、市民運動などが環境や人
こうした経営環境の変化は、企業倫理の意
権への配慮を求めてきた。これに対し、従来
味や経営者のビジョンを改めて問うほか、ス
は行政による規制強化での対応が行われてき
テークホルダーへの対応を軽視すると、
「信頼」
たが、ここへきて、消費者に与える企業イメ
の喪失を通じて、事業の継続性(サステナビ
ージの重要性が注目され、企業の自主的な取
リティ)が大きく毀損される事態になること
組みも大きくなりつつある。
は過去の事例からも明らかであろう。
また、1970年代から地球規模の環境破壊が
国際的な関心事となり、1990年代には温室効
(3)CSRと情報開示
果ガスによる地球温暖化の問題なども加わっ
CSR活動では、情報開示が重要である。な
て、環境破壊が企業の事業継続性(サステナ
ぜなら、CSRの目的はステークホルダーの信
ビリティ)に対する制約要因として浮上した。
頼を獲得し、企業の安定的成長を目指すこと
このため、国連を中心とした国際会議でも、多
にあり、ステークホルダーに認知されないと
62
信金中金月報 2005.8
図表2 日本においてCSRが要求される背景
ステークホルダー
金融資本市場との関係
顧客、消費者との関係
従業員、被雇用者との関係
行政との関係
CSRが要求される背景
・経済のグローバル化、資本の国際間移動加速
⇒外国人投資家のプレゼンス上昇(SRI(社会的責任投資)概念の普及)
・情報技術(IT)の進化⇒情報伝達速度、範囲の飛躍的拡大
・株式持合構造の崩壊、市場型間接金融の増加等
⇒IR活動等を通じた市場とのコミュニケーションの重要性拡大
・消費者意識の多様化、成熟化⇒財・サービスの商品性、価値が価格・性能のみでは測れなく
なった。(Ex.リサイクル製品、ハイブリッド車など)
・企業イメージの重要性増加⇒不祥事等による風評リスク増大
・経済成長率低下⇒低成長市場における成長戦略としての差別化戦略
・終身雇用慣行の衰退とパート、派遣等雇用形態の多様化
⇒従業員の帰属意識低下、少数の優秀な人材を各企業が奪い合う。
・財政難等による行政能力の低下
⇒企業競争力向上策、民間活力導入(PFI等)へ政策シフト
・行政による規制の不経済性の露呈
⇒裁量行政から自己規律重視への転換、規制緩和・ルール行政への転換
活動の効果は半減するからである(図表3)。
ステナビリティ)報告書」や「社会的責任報
顧客や取引先は、企業自体と製品・サービス
告書」などとも呼ばれ、日本でも海外事業比
の質を信用して初めて取引や購入に至る。こ
率の高い製造業を中心に近年、発行されるケ
うした信頼関係を維持するため、顧客や取引
ースが目立ってきている(注)2。
先が自分の選択を正当化する根拠として、情
報開示が必要となるのである。
このCSR報告書に関しては、消費者におけ
(4)CSRの情報開示に関する論点
イ.マルチステークホルダーとトリプル・ボ
る環境や社会問題への関心が高い欧州諸国で
トムライン
は、財務報告とは別に発行することが一般的
ステークホルダーとは、
「株主」と「経営者」
である(例えば英国ではCSR報告書発行の義
以外に、企業活動によって経済的影響を受け
務化も検討されている)
。
る関係者(従業員、債権者、取引先など)を
こうした、CSR報告書は「持続可能性(サ
図表3 CSR活動と情報開示の関係
十分して
いる
CSRの議論では、これを拡大し「マルチス
テークホルダー」として「顧客」
、
「地域社会」
、
実施していない
CSR活動状況
加えた集団を指す。
CSR活動構築
CSR活動開始
「行政」など企業と直接の経済関係にはなくて
も、その活動に何らかの影響を受ける集団を
利害関係者としている。
CSRに関する情報開示
CSR報告書作成
したがって、マルチステークホルダーの利
十分して
いる
現状維持
・開示していない
・不十分
害は経済面のみではなく、環境、権利や心理
的影響、健康衛生など広範に及ぶ。このため、
(注)2.第8回環境コミュニケーション大賞(地球・人間環境フォーラム主催、環境省など後援)では、平成16年度の持続可能性報
告書大賞(環境大臣賞)としてイトーヨーカ堂を選んだほか、アサヒビール、サントリー、ソニー、日産自動車、富士ゼロッ
クス、リコーが優秀賞を受賞している。
調 査
63
CSRでは「トリプル・ボトムライン」の考え
図表4 トリプル・ボトムライン
方をとり、この利害を「経済」
、
「社会」
、
「環境」
経済
・株主利益
・債務の返済
・健全性維持
・持続的成長
など
の三面でとらえ、影響を評価する(図表4)。
このトリプル・ボトムラインの考え方に立
つと、経済的利益がスムーズに配分されてい
ても、社会厚生や環境保護の面で不備が目立
社会
・雇用維持、拡大
・従業員満足
・地域貢献
・障害者、女性等
の処遇 など
てば、ステークホルダーへの悪影響として、む
しろ評価は下げられる。
環境
・温暖化対策
・省エネ
・リサイクル
など
ロ.CSR会計
CSRは、社会貢献や環境保護など定性的目
等の収入がステークホルダーにどう分配され
標を掲げるため、情報開示もこうした活動の
たのかを示すもので、人件費(役職員)
、配当・
単なる記録となりがちである。この問題に定
利息(株主(出資者)、債権者)、税金(行政)、
量面から評価を加え企業間の比較可能性を高
寄付(地域社会)などが項目として挙げられる
める目的で考案されたのがCSR会計である。
(図表5)
。社外への資金流出を原価や人件費な
CSR会計では、CSRを企業イメージ向上のた
ども含めてステークホルダーへの分配として
めのコストではなく、企業の事業継続性(サ
とらえ、その割合により各ステークホルダー
ステナビリティ)基盤への投資として、目的
への説明責任を果たそうとする試みである。
(対象)と費用を明確化して考える。
また、付表としてCSR活動分野別の資金配
詳述(注)3は避けるが、CSR報告書の発行企業
分表を付すことも提案されており、同表では
で普及しつつあるのが「ステークホルダー別
ガバナンス、環境、労働・人権、コミュニケ
分配」である。これは事業収益、営業外収益
ーション、供給者責任等の分野への投資額も
図表5 ステークホルダー別分配項目例(金融機関事例)
分配原資
区 分
事業収入
事業外の収入
その他費用
社内
費用
資金調達費
行政府
地域社会
内部留保(=分配原資−費用)
ステークホルダー
顧客・取引先等
その他
他行、その他業者等
役員
従業員
出資者(株主)
預金者(債権者)
国
地方自治体
地域団体、NGO等
対応する損益計算書上の項目
経常収益
特別利益
経常費用(除人件費)
役員報酬・賞与
給与・賞与、福利厚生費等
配当金
預金利息等
法人税、その他国税
地方税等
寄付、メセナ、地域振興活動費等
(備考)麗澤大学企業倫理研究センター『CSR会計ガイドライン』を参考に作成
(注)
3.内容は麗澤大学「企業倫理研究センター」ウェブサイト(http://r-bec.reitaku-u.ac.jp)に詳しい。
64
信金中金月報 2005.8
(1)GRIガイドライン
記すよう作成されている。
こうした会計上の分配をステークホルダー
GRI(Global Reporting Initiative)は、1997年
の利益として参照することは、各企業のCSR
にCSR報告書の普及、質的向上を目指し、国
活動の規模やバランスを社内外に印象づける
連環境計画(UNEP)などの支援のもと設立さ
効果がある。しかし、本業の費用、余剰から
れた国際NGOである。GRIでは2000年、2002
分配される「配当」や「税」
、篤志である「寄
年と二次にわたり「サステナビリティ・レポ
付」などを同列で比較するため、業績悪化時
ーティング・ガイドライン」を発行しており、
には、「配当」「寄付」などの割合は小さくな
欧米各国や日本におけるCSR報告作成におけ
る。このため、情報の受け手にネガティブな
る標準的な枠組みとなりつつある。
イメージを持たれる場合があることにも注意
このGRIガイドラインでも、「経済・社会・
環境」のトリプル・ボトムラインを基礎とし
を要する。
ており、それぞれの分野におけるパフォーマ
2.金融機関によるCSRの情報開示
CSRの成果は、通常財務諸表には表れない。
ンス指標を重要度に応じて「必須指標」、「任
意指標」として具体的に提案している(図表6)
。
このため、ステークホルダーの認識を深める
また、GRIでは、上記一般項目のほか追加で
にはCSR活動状況の開示が重要となる。本節
開示されるべき個別業種向け特定項目を別途
では、国内外の金融機関におけるCSRに関す
発表しており(注)5、金融業に関しても図表7の
る情報開示の事例を参照し、金融機関におけ
ような報告体系が提示されている。
るCSR活動について考えたい。
図表6 GRIガイドライン(注)4における報告体系
分
野
経済
直接的な経済的影響
環境
環境
労働慣行および公正な労働条件
社会
人権
社会
製品責任
側 面
顧客、供給業者、従業員、出資者、公共部門
原材料、エネルギー、水、生物多様性、放出物・排出物および廃棄物、供給業者、
製品とサービス、法の遵守、輸送、その他全般
雇用、労使関係、安全衛生、教育訓練、多様性と機会
戦略とマネジメント、差別対策、組合結成と団体交渉の自由、児童労働、強制・
義務労働、懲罰慣行、保安慣行、先住民の権利
地域社会、贈収賄と汚職、政治献金、競争と価格設定
顧客の安全衛生、製品とサービス、広告、プライバシーの尊重
(備考)1.下線は、より重要な開示項目である「必須指標」が含まれる項目を指す。
( 2.『GRIガイドライン2002』
(日本語版)より信金中金総合研究所作成
(注)4.GRIガイドラインの項目は、3分野の必須・任意項目計で150近くに上り、詳細な報告を求めている。しかし、GRIでは、一
定の報告要素をカバーし、かつガイドラインとの項目別対照表を掲載すること等の条件を満たすことで「GRIガイドライン準
拠」の文言を報告書上で用いることを認めている。詳細はGRIガイドライン2002年版(日本語版)を参照のこと。
(http://www.
globalreporting.org/guidelines/2002/2002Japanese.pdf)
5.
“Financial Services Sector Supplement”:本文中では「社会」項目のみ概説しているが、
「環境」に関しても追加指標が提示
されている。
(http://www.globalreporting.org/guidelines/sectors/spi2001.asp)
調 査
65
図表7 金融業向け追加項目(社会的指標のみ)
項
目
経営機構
経営に関する指標
・CSRの実施方針
・CSRに対応する組織構築
・CSRの監査
・センシティブ事項※への対応
・ステークホルダーとの対話
・CSRに関する内部統制方針
内部統制指標
供給業者
・主な供給業者の選定基準
社会
リテール業務
投資銀行業務
資産管理
・運用業務
・リテール(貸出)業務に関する社会
的基準にもとづく方針
・投資に関する社会的基準にもとづく
方針
・資産管理・運用業務関する社会的基
準にもとづく方針
・社会的基準に基づく引受方針
保険業務
実務に関する指標
・法令遵守状況
・採用・退職および従業員数増減
・従業員満足
・役員報酬
・長期的成長のためのボーナス支給
・給与の男女格差
・従業員構成(性別、人種、障害者比率)
・供給業者の満足度
・社会活動への寄付、人的貢献
・分配原資としての経済付加価値生産額
・業種別・規模別貸出金
・社会利益の高い事業向け融資および優遇状況
・顧客状況(国、地域)
・社会利益へ貢献する取引
・社会利益に貢献するサービス
・預かり資産にもとづく議決権行使におけるCSR基準の
採用
・顧客属性
・苦情対応(件数、内容)
・社会利益へ貢献する契約
(備考)1.※センシティブ事項:ガイドラインでは、マネーロンダリング防止、テロ資金の発見、贈収賄・汚職の防止などを挙げている。
( 2.GRI “Financial Services Sector Supplement : Social Performance” より作成
(2)欧米金融機関のCSRと社会的責任投資
(SRI)
各国のCSR先進企業の株価を指標化したSRI
インデックスでは、
「金融業」のウェイトが最
こうした中、欧米の大手各行はSRIファンド
等によるCSRを基準とした投資行動と既存の
株主等の純粋な利益追求の要求の間で対応を
(注)6
。
模索しているのが実態のようである
も大きくなっている。これは、銀行などの時
こうした中、環境対策については歴史も長
価総額が大きいためで、必ずしも金融業がCSR
く「赤道原則(注)7」など民間銀行と政府、国際
を先導しているという意味ではない。しかし、
機関などとの協調も進みつつある。
金融業という経済の基幹業種がCSRの普及に
一方、社会面では、欧米金融機関でも環境
おいて重要な位置におり、銀行自身のCSRの
対策の充実度合と比較していまだ対応途上と
ほか、投資先のCSR基準でのスクリーニング
いえる。現に欧州ではトリオドス銀行(蘭)や
や社会厚生を加味した審査基準など他業種へ
倫理銀行(伊)のように環境・社会問題に特
の波及効果も期待されている。
化した市民銀行が登場してきている。こうし
(注)6.例えば、途上国での鉱山開発に対する協調融資は、CSRの基準では「先住民の居住権侵害」や「森林伐採による環境破壊」
等に抵触し好ましからざる案件ということになる。反面、同案件を見送ることは逸失利益を伴うため、利益の最大化という株
式会社の行動原理に反し、CSRと利潤追求とは矛盾する。同様の問題はSRIファンドも抱えている。SRIはCSRを基準に投資対
象をスクリーニングするため、結果として、分散投資によりリスクを極小化する機会を逃している。このため、ファンドの基
本である受託者責任に問題があるとの意見もある。
7.赤道原則:途上国開発に対するプロジェクトファイナンスに関する環境配慮基準としてIFC(国際金融公社)と世界銀行を
中心に2002年に策定された申し合わせで、世界の大手民間銀行31行が調印している。日本からは、みずほコーポレート銀行の
みが参加している(2005年5月現在)
。
66
信金中金月報 2005.8
○SRIインデックス
欧米各企業に対してCSR導入を促している大きな要因に、SRIファンドの存在感が急速に拡大していることがあげ
られる。こうしたファンドが投資対象のスクリーニングやパフォーマンスのベンチマークとして用いているのがSRI
インデックスである。
世界的に影響力の高いインデックスには以下のものがある。
・ダウジョーンズ・サステナビリティ・インデックス(DJSI)
・FTSE4Good
・エティベル・サステナビリティ・インデックス
いずれのインデックスも、調査機関などと連携し、各国の主要企業へのアンケート送付やCSR報告書などをもとに
インデックス構成企業を選定している。
最近では、SRIインデックスが、一般のベンチマークに対してアウトパフォームできるのかという点について研究
が行われているが、設定来の期間が短いことや業種・地域構成などCSR以外のファクターを考慮しなければならない
ため、結果的にはベンチマークとの連動性は高く※、有利という結論も出しづらいとの意見が一般的である。
こうしたSRIインデックスには以下の金融機関が主に採用されている。
上記3インデックスすべてに採用されている銀行
ABN Amro(蘭)、Banca Monte dei Paschi di Siena(伊)、Barclays(英)、HVB(独)、Dexia(ルクセンブ
ルク)、Swedbank(スウェーデン)、八十二銀(日)、HBOS(英)、Lloyds TSB(英)、National Australia(豪)、
UBS(スイス)、Unicredito(伊)、Westpac(豪)
※DJSIは、1993年以降2005年3月までの米ドル建てパフォーマンスをベンチマーク(MSCI World)と比較し、若干のアウトパフォ
ームであると公表している。(相関係数:0.9767、トラッキングエラー:3.50%)
た「ソーシャルファイナンス」が登場した背
ならず企業倫理に敏感な一般消費者の支持を
景には、SRIインデックスに採用されるような
集め、業容を拡大している。当初、経営に「倫
商業銀行の先進的な活動でも、いまだ社会ニ
理」の戦略軸を取り入れることに対しては合
ーズとの大きな乖離があることが挙げられる。
理性の観点からの批判もあったが、顧客の支
このことは、欧州金融機関でも今後さらなる
持とCSRへの関心の高まりから、現在では
社会的な取組みの強化を求められるであろう
“Exceptional(傑出した)”なCSR実践企業と
ことを示唆している。
して広く認知されている。
また、同行はこうした倫理政策の実行状況
(3)The Coopbankの取組み
を還元するため、財務報告とは別に「サステ
英CWS(Cooperative Wholesale Society:生
ナビリティレポート」により情報を開示して
協)の銀行子会社であるThe Cooperative Bank
いる。同レポートでは、Coopbankのステーク
(以下“Coopbank”という。
)は、CSRの先駆
ホルダーを出資者、顧客、従業員、供給者、社
けとも言える「倫理政策」(図表8)を1992年
会、協同組合運動の6グループに分類し、それ
に策定、経営に反映させることで消費者の倫
ぞれがCoopbankとの間に有する利害を経営目
理的価値観に訴え業容を拡大している。
標とその達成度によって概観できる形式とな
Coopbankは、もともと生協組合員への付加
っている(図表9)。
サービスとして発足したが、今日ではこうし
これらの各項目に対して、同行は毎年目標
た倫理政策による経営方針が、生協会員のみ
を掲げ、顧客満足度調査など各種の詳細な調
調 査
67
図表8 Coopbankの倫理政策(2001年)
分
野
人権
武器売買
企業責任
遺伝子操作
社会的事業
環境
動物保護
内 容
世界人権宣言を尊重し、以下の者への投資は行わない;
・その影響が及ぶ範囲において、基本的人権を尊重していないすべての政府および企業
・圧政に関与し、その維持に貢献するすべての企業
以下の企業への投資は行わない;
・圧政に寄与する軍備の製造、販売に関与する企業
・拷問やその他基本的人権を蹂躙するための装置を製造する企業
ILO(国際労働機関)基本条約を支持し、以下の点を尊重する企業を支援する;
・公正取引
・自社および途上国でのサプライチェーン内における労働者の権利尊重
また、以下の活動に関与する企業を支援しない;
・途上国における無責任な営業活動
・タバコ製造業者
・通貨投機
以下の点が明らかとなった遺伝子操作に関与する企業を支援しない;
・遺伝子組換え植物等の環境への無制限な放出
・「ターミネーターテクノロジー(種子が発芽しない植物)」の拡大による、途上国農業へのダメージ
・伝統的(農作物利用)知識に使用制限を加える特許取得
協同組合、信用組合、地域金融イニシアティブ等慈善事業や社会的事業に関与する組織を支援する。
以下の問題に寄与する事業を中核とする企業への投資は行わない;
・化石燃料の加工、製造を通じた地球温暖化への寄与
・環境に残留し、長期間健康に懸念を与える化学製品の製造
・森林や水産資源の持続不可能な乱獲
また、以下の分野に関与する企業を支援する;
・リサイクル、持続可能な廃棄物管理
・再生可能エネルギーおよびエネルギー効率向上
・農林業における持続可能な生産活動
・環境保護
以下の事業に関与する企業への投資は行わない;
・化粧品、日用品のための動物実験
・養鶏場での鶏卵生産など、集中的農業生産
・動物同士を争わせ、互いに殺させるスポーツ
・毛皮取引
図表9 Coopbankのサステナビリティレポート(注)8における評価項目
トリプル・ボトムライン
経済的価値配分
指 標
財務指標
個人顧客
法人顧客
従業員
供給業者
協同組合運動
倫理金融
社会的責任
環境責任
人権
動物保護
金融
供給者
従業員の多様性
健康、安全、福祉
地域貢献
エネルギー
水資源
化学薬品
移動手段
金融
削減、再利用、修理、リサイクル
紙資源
生物的多様性
個別項目
資産負債、利益、その他各財務指標
地域密着状況、顧客満足度、苦情件数等
地域密着状況、サービスへの満足度、倫理政策への満足度
給与、入退職者数、人材活用、職場環境、意思疎通等
支払状況、取引関係への満足度、公正取引、長期取引
協同組合間協力
CSR基準による審査、社会的責任にもとづく投資、マネーロンダリング・
金融犯罪への対策
圧政(国)への対応、労働基準、武器取引等
動物実験、集中耕作、動物虐待、毛皮取引
倫理政策を反映した金融商品
CSR基準での選別、取組み姿勢評価
性別、人種、障害者、年齢
重大なリスク、事故、欠勤、福利厚生
地域への影響、金融支援、顧客の経営参加、従業員の経営参加
温室効果ガス、その他廃棄物
水消費量
有毒薬品、フロンガス、プラスチック使用量
業務上の移動距離、温室効果ガス排出量等
環境対策を反映した金融商品
紙、家具、電化製品等
紙消費量
生物的多様性、土地
(備考)Cooperative Financial Services “Sustainability Report 2003” より信金中金総合研究所作成
(注)
8.詳細は、The Co-operativebankウェブサイト参照( http://www.co-operativebank.co.uk/)
68
信金中金月報 2005.8
査にもとづく達成状況をサステナビリティレ
であるとされている。これはGRIガイドライ
ポートに詳細に記している。
ンにおいても冒頭に記載することを求められ
このように、倫理政策を徹底することで、同
ているものである。以下は各行の経営者によ
行はCSRにおける先進行としての地位を確固
るコミットメントをいくつか抜粋したもので
たるものとし、結果として顧客や従業員など
ある。
の支持を勝ち取り、業績を向上させてきたの
である。
“社会的責任は、ステークホルダーにおける
企業への信頼と関与を生起させるものであり、
(4)海外各行の状況
Coopbankの例は、CSRへの対応としては、
我々が行うこと全てである。したがって、自
己満足のための行動ではなく、我々の事業運
開始時期、徹底度合、情報開示内容のいずれ
営方法の柱となる原則である。
”
(Barclays(英)
も突出した存在である。これは、Coopbankが
2004)
協同組織であるCWS(生協)の子会社であり、
株主利益よりCSRを優先できるためとの指摘
“我々は企業責任に関する行動を長期持続可
もあり、一挙一動が株式市場に反映される上
能性の中核としている。従業員や顧客の価値
場企業においては対応が異なる場合もあると
と支持は計測が困難なため、重要な要素にも
考えられる。
関わらずこれまで注意が払われてこなかった。
実際、CSRが浸透しつつある海外各行でも、
しかし、我々の成功には最も重要なものであ
CSRの営業面への効果やコスト、説明責任に
ると考えている。…我々は事業運営の変革の
関しては手探りの状態であり、現在のブーム
ため、ステークホルダーの関与を経営革新に
が過ぎた後にどう活動を継続していくかが焦
つなげなくてはならない。このように、経営
点となりつつある。こうした中、各SRIインデ
への有益なフィードバックを得ることが、我々
ックスに採用されている銀行は、比較的CSR
がステークホルダーの関与を意思決定プロセ
と情報開示への対応が進んでいると言え、環
スの中核に位置付ける理由である。
”
(Westpac
境対応(ISO14001取得や電力、資源消費量の
(豪)2004)
開示、削減目標の設定等)やガバナンス、社
会貢献(チャリティ、地域振興、貧困地域へ
“銀行は経済システムの中核に位置する。経
の金融供与)などの面において積極的取組み
済活動をファイナンスし、価値を分配するこ
が目立つ銀行群である。
とを通じて銀行は社会的責任の共有という新
また、CSR対応において、最も基本的かつ
たな概念にもとづく生産と消費の普及に対し
重要な項目が「経営者による持続可能な発展
ても大きな役割を果たす。…また、マーケット
に対するビジョンと目標へのコミットメント」
リーダーたろうとする企業はコミュニケーシ
調 査
69
ョンを通じた社会的責任に関するディスクロー
ズに特に注意を払うべきであると確信している。
への取組みは行われている。
一方、金融仲介を通じ企業に大きな影響力
情報交換は今日のビジネスにおいて最も重要な
を持つ銀行は、これまで不良債権処理に忙殺
要素であり継続的かつ透明な対話のみが長期
されていたこともあり、海外銀行の対応と比
にわたり成功し、価値を生む唯一の道である。
”
較すると、まだ端緒についたばかりと言える。
(Banca Monte dei Paschi di Siena(伊)2004)
具体的には、八十二銀行がISO14001取得、
低公害車購入時のオートローン優遇や公用車
こうした、経営トップによるコミットメン
へのエコカー導入などの環境保護への取組み
ト(関与)の表明こそがCSRへの取組みへの
により、海外の主要SRIインデックス採用銘柄
第一歩であり、CSRにおいてはトップダウン
となっている。このほかにも、いくつかの地
のアプローチが重要とされている。
方銀行がCSR担当部署の設置、CSR報告書を発
行などの動きを見せている。また、大手銀行
(5)邦銀のCSR対応
でもCSR担当部署の設置や一部でCSR報告書の
日本の金融機関では、気候変動や環境汚染
発行が始まっているが、投資家の圧力も今の
による支払保険金が収支に直結する損害保険
ところ低く、インセンティブが少ないことか
会社やSRIへの関心が高い証券会社などでCSR
ら、大きな動きとはなっていない(注)9。
※八十二銀行と滋賀銀行のCSRへの取組み(両行CSRレポートより(注)10)
1.八十二銀行
ISO14001取得に伴い、環境目標および達成度合を公表している。
①電気使用量2003年度9.4%削減(1998年度比)
②紙資源削減:コピー紙等12.3%削減(1998年度比)、帳票年間756千枚削減等
③役職員全家族で年間240トンのCO2排出量削減
④営業車両25台削減
⑤環境保全ローン、取引先におけるISO14001取得支援等
(同行2004年CSRレポートによる)
こうした具体的な取組みは、国際的にも一定の評価を受けており、ダウジョーンズ・サステナビリティ・インデッ
クスに2000年以降連続して採用されているほか、主要インデックスに採用されている。
2.滋賀銀行
同行は、地元に環境保護の象徴的存在である琵琶湖を抱えることもあり、「環境方針」を制定し、ISO14001取得(2000
年3月)、環境関連法規の順守、事業所での省資源(エコオフィス)、環境関連融資やエコファンドの取扱などを掲げ、
積極的に展開している。
両行とも日本の銀行CSRの先駆けとして高い評価を得ている。ただし、環境対応への詳細な取組みに比べトリプル・
ボトムラインの残り二極である「経済(ステークホルダーへの経済的価値分配)」、「社会(従業員その他ステークホ
ルダーの権利保護)」への対応、開示は少ない。このため上述したインセンティブの問題も含めて、今後、銀行CSR
が国際基準に達するための課題となりそうである。
(注)9.いわゆるメガバンクについては、ほぼ全行でCSR専担部署が設置されている。また、地銀では、上記2行を含め10行程度が
CSR専担部署を設置、もしくは設置予定としている。
10.詳細は両行CSRレポート参照(八十二銀(http://www.82bank.co.jp/company/disclosure/dsc2004.html)、滋賀銀(http://
www.shigagin.com/)
)
70
信金中金月報 2005.8
また、銀行における保守的な雇用慣行、商
われる。
慣行など欧米とは企業文化が大きく異なるこ
しかし、CSRでは、マルチステークホルダ
ともあり、既発行のレポートでも従業員満足
ーへの配慮は、短期ではコストとして認識さ
度等の具体的数値開示や目標設定など社会面
れるものの、長期では企業の事業継続性(サ
での記述は少なく、環境以外の点では、イメ
ステナビリティー)の向上を通じて企業価値
ージアップ用リーフレットの域を出ていない
の増大に寄与するため、ステークホルダーに
というのが実態といえる。
対する投資と考えるべきであるとされている。
しかし、地球規模での環境問題への取組み
昨今CSRに関する内外の議論の盛り上がり
や企業不祥事の続発などを背景に、企業活動
は、信用金庫にとっても地域社会との関わり
による外部不経済の補償として社会的責任を
を再度検証し、既存の理念や活動をより効果
問う声は日々大きくなってきている。
的な地域社会への貢献へと結び付けるに当た
したがって、
「金融機関自身のCSR」という
っての論点整理の好機であろうと思われる。
視点のみではなく「取引先へCSRを働きかけ
る行動」との両面を併せ持つ銀行CSRは、他
業種企業に比べて影響力も大きいと考えられ、
(1)CSR活動の目的
CSR活動の目的は、ステークホルダーとの
今後CSRを基準とした業務運営が各方面より
意思疎通を通じ、企業の事業継続性(サステ
求められていくものと思われる。
ナビリティ)を得ることであった。ここでは、
以下のとおり2つの目的に分けて考える。
3.信用金庫におけるCSR活動と効果
的報告
①受動的目的
信用金庫はその非営利性・地域性から、高
コーポレート・ガバナンス、コンプライア
い企業倫理、地域社会への強い帰属・責任意
ンス等のステークホルダーに対する経営の透
識を有し、地域社会との共存共栄を指向した
明性向上を目的とした活動である。
経営を行ってきている。
これは、多くの場合、法令や会計基準など
したがって、これまで見てきた一連のCSR
で要求されるものであり、法令順守と不法・
の動向は一過性のブームで、惑わされること
脱法行為の防止活動である。したがって経営
なく従来の方針を貫徹する方がよいとの意見
リスクの管理とも言え、体制不備やチェック・
もあろうかと思われる。ただし、こうした発
認識の欠如からリスクが顕在化した場合、ダ
想は多分にノブレスオブリージュ(道徳上の
メージは大きく、最悪の場合、企業体の消滅
義務)の感覚が反映されていると考えられ、社
にまで至ると考えられる。
会的責任を業容拡大や収益性向上への制約要
因(コスト)ととらえがちになりやすいと思
調 査
71
②能動的目的
イメージや活動基盤など、信用金庫の事業
における無形資産の増大を目的とする活動で
あり、サービスの質的向上、環境保護、地域
図表10 受動的目的と能動的目的のインセン
ティブ
《受動的目的》
ステークホルダー
(出資者、従業員、
顧客等)
文化・経済振興、また取引先の経営支援も雇
サービスの質的向上は当然の経営努力であ
る。また、その他でも法令等で規定されるも
信用金庫
ガバナンス、コンプライアンス等
(期待を裏切らない保証)
用維持の観点などから、こうした社会的責任
に当てはまると思われる。
関与
(出資、就労、利用)
《能動的目的》
ステークホルダー
(出資者、従業員、
顧客等)
さらなる関与
(満足度向上)
信用金庫
「良い企業」への投資
(インセンティブ拡大)
のは少なく、むしろ経営者の理念や価値観に
より活動内容は異なる。
倫理観などに訴え、さらなる関与へのインセ
ただし、こうした活動は即効性に欠け、地
ンティブを示し、信用金庫を「良い企業」へ
道さを要求されるため、常にコスト削減の圧
向上させることで、ステークホルダーへの価
力にさらされる。このため、行動規範等の策
値分配を増加させるための投資である(図表
定により、CSRに対するスタンスを対外的に
10)。
明示することで長期継続を図る必要がある。
ただし、この場合にも、働きかけが一方通
行で、
「期待」に配慮しない場合には独善に陥
このように社会的責任を二分して考えると、
る可能性が高くなる。このため、信用金庫と
信用金庫がCSR活動を考える上での指針が見
ステークホルダー間での相互コミュニケーシ
えてくる。信用金庫に対して顧客、出資者(会
ョンが不可欠である。
員)
、従業員等のステークホルダーが資金や労
働力の提供を通じ関与を続けるのは、分配(経
(2)CSR報告の意味と報告対象
済的利益のみでなく、心理的満足度の向上も
CSRの最大の目的はステークホルダーの継
含まれる)が将来にわたって継続される期待
続的関与を促すことにある。このため、いか
を持つからであり、期待が失われれば関与を
に信用金庫が積極的に地域・社会貢献活動を
止めるため、信用金庫といえども活動の継続
行ってもステークホルダーである地域社会や
は困難になる。
顧客に認知されなければ効果は少なく、ステ
この意味で、受動的目的での責任は、ステ
ークホルダーとの意思疎通を通じて、活動の
ークホルダーの将来にわたる権益(期待)に
認知を図ることも活動自体と同程度の重要性
対するセーフガードであり、信用金庫が最低
を持つ。こうしたCSRの認知活動には直接的
限果たすべき責任といえる。一方、能動的目
報告と間接的報告が挙げられる。
的での責任は、各ステークホルダーの価値観、
72
信金中金月報 2005.8
①直接報告
よう要求している。これまでは「あうんの呼
信用金庫経営者が会員や顧客、従業員など
吸」で通じたであろうことも、規模拡大や社
各ステークホルダーと直接意見交換を行う。こ
会関係の希薄化などにより明示的に伝えない
の場で経営者は社会的責任に関するビジョン
と伝わり難くなっているという状況もある。し
を説明し、ステークホルダーからも要望など
たがって、今後、信用金庫が地域社会からの
を吸収することで相互認識を深めることがで
高い評価を維持するためには、そうしたステ
きる。ただし、ステークホルダー層がある程
ークホルダーの利害に関する情報を適切に伝
度大きくなると、すべての関係者と意見交換
える工夫が必要となろう。
の場を持つのは物理的に困難となる。
(3)信用金庫のCSRに関するその他の視点
②間接報告
イ.雇用
財務報告書同様、一定期間ごとにCSR報告
雇用はCSRの主題の一つであるが、今のと
書(持続可能性報告書、サステナビリティレ
ころ日本企業は開示に消極的である。これは
ポート)を発行する。直接の利害関係者以外
バブル崩壊以後、労働力の社内保蔵が企業の
にも広く社会的責任に対する信用金庫の取組
収益を圧迫し、人員の整理を収益改善に結び
みを周知し、潜在顧客や社会全体の認知・浸
つける図式が続いたため、全体として従業員側
透によるイメージアップを図る。ただし、直
の条件が悪化したことが一因と考えられる。
接的報告に比べフィードバックが少ないため、
しかし、少子化や労働力の質の格差の拡大
効果の積極的な検証(アンケート等による意見
は、中長期では労働市場のタイト化をもたら
吸収)を通じ、改善を図る努力が必要である。
すことが予想される。また、価値観の多様化
が「就社」に対する疑問を投げかけているこ
いずれの方法でも、CSR活動における情報
とを考えれば、企業が従業員にどのような価
開示の意味を十分に理解した上で行うことが
値を提示できるかが長期的には労働市場での
前提だが、
「CSRは当然の活動であり、ことさ
企業の競争力を決定し、優秀な人材を得るた
ら情報開示する必要はない」、「従業員の問題
めの鍵となる可能性が高い。
や法令違反など開示できない情報もある」と
いう指摘もある。
こうした中、金銭的処遇のみならず、公平
な待遇やいわゆる「やり甲斐」に属する部分
しかし、信用金庫が協同組織金融機関とし
の心理的価値を従業員に提供できるかなどCSR
て築いてきた地域・顧客との関係も時代とと
が改善、開示を求めている要素は多数あり、こ
もに変化は免れない。このため、ステークホ
うした面での価値認識が長期での競争力にも
ルダーは、信用金庫が変わらず地域社会に配
影響すると思われる。
慮し、関心を払っていることを明示的に示す
信用金庫でも、地域密着や地域振興という
調 査
73
独自の存在意義を従業員満足に積極的に結び
引を活発化させているが、一方で都市部工場
付ける視点、また、最大の地域貢献、地域経
跡地でのマンション建設などにおいて、土壌
済活性化策とも言われる雇用の維持や人材へ
汚染の発覚による損害賠償や契約破棄などの
の投資を社会的責任ととらえる視点も地域金
問題も生じている。融資先での環境問題の生
融機関としてのアイデンティティ強化には必
起は、資金回収を大きく毀損する可能性が高
要ではなかろうか。
く、信用金庫においても貸し手責任として「環
境デューディリジェンス(注)12」の必要性は高ま
ロ.レンダーライアビリティ(貸し手責任)
っていると言えよう。
レンダーライアビリティは狭義には法的側
こうしたことから、環境問題が信用金庫の
面(注)11や道義的側面などの視点があるが、ここ
融資をはじめとする取引に対してリターンと
では、CSRの文脈から、環境や地域社会に対
リスク両面において大きな要素となっていく
する貸し手の責任という視点から見ることと
可能性は高く、早急な取組みによるノウハウ
したい。
の蓄積などが求められている。
①環境対応
②地域経済の活性化
今後、金融機関でも環境対応が消費者の支
限定地域を営業エリアとし、中小企業を主
持を得るための重要な要素となる可能性は高
な取引先とする信用金庫にとって、地域経済
い。このため、SRIと同様の考え方により、環
の循環的変動や構造変化が業績に及ぼす影響
境対策に積極的な企業への融資を優遇すること
は不可避である。
が経済合理性により裏付けられる可能性が高い。
リレーションシップバンキングの文脈では、
また、CSRを強化する大企業が、取引を通
地域金融機関は長期的取引により取引先の景
じ中小企業に環境対策を要求する動きもあり、
気循環による業績変動を平準化し、地域経済
環境対応ローンやISO14001取得支援など地域
に対する安定化装置として機能すると説明さ
金融機関として環境対応に関する役割が求め
れている。したがって、地域の経済・産業構
られつつある。
造が不変であるという前提の下では、こうし
また、リスク管理の面でも環境の重要性は
た長期的取引関係にもとづく安定的取引を維
増しつつある。例えば、信用金庫でもノンリ
持することが信用金庫の貸し手としての責任で
コースローンやアパートローンなど不動産事
あり、地域社会の安定的成長への貢献となる。
業に対するキャッシュフローベースの融資取
しかし、地方経済の現状は、循環的変動よ
(注)
11.レンダーライアビリティについては、法的にも概念・定義等が確立していない。しかし、契約違反、信認・誠実義務違反、
詐欺・不実表示、開示義務違反、強迫、事業ヘの不当な介入、過失等の不法行為は貸し手責任として認められる。
12.融資先の経済活動による環境影響、汚染可能性を入念に調査し、適正に評価すること。例えば不動産売買の場合、土地の
汚染を知らずに購入すれば、買主は多大な損害を被る事になる。これを回避するためには、買主側が購入しようとする土地
の汚染状態を事前に調査し、適正な価値を評価する必要がある。
74
信金中金月報 2005.8
り構造変化の影響が大きく、変化に乗り遅れ
う評価・改善していくのか、企業文化や経営
た企業には淘汰の圧力がかかっている。この
ビジョンなど定性面での新たなガバナンスが
ような状況下では、構造変化に対応するよう
問われるようになっている。
取引先に促すことが処方となる場合もある。
一方、信用金庫の存在意義は、第一義には
また、地域全体の活性化という見地から起
「会員=地域住民」に対し金融サービスを提供
廃業の活発化が欠かせない。金融機関として
し、地域経済の活性化に貢献することであろ
は、より高い成長の見込める事業へ融資を行
う。ただ、なぜこうした金融サービスの供給
うことは合理的であり、構造変化の下では、資
者が非営利・協同組織である信用金庫なのか、
本配分の機動的変更が重要となろう。したが
なぜ銀行やその他金融機関ではいけないのか
って、今後、起業ファイナンスや事業承継な
という問いかけに対する根本的な回答は見出
ど起廃業をスムーズにし、活発化させるファ
しづらくなっている。
イナンス手法に取り組んでいくことが、地域
信用金庫は「中小企業の健全な発展」、「豊
の資金を地域活性化に活かすということにも
かな国民生活の実現」、「地域社会繁栄への奉
つながろう。
仕」というビジョンにもとづいて様々な独自
の活動を行い、各地域における存在感を高め
(4)まとめ―信用金庫独自のCSRに向けて―
てきた。こうしたビジョンにもとづく堅実で
CSRという比較的新しい評価軸では、社会
地道な活動こそ信用金庫の存在意義であり、上
において経済活動を営む企業体であれば、経
記の問いかけに対する信用金庫の答えだとす
済的側面のみならず、環境や社会などいずれ
れば、変化する経営環境に応じてこうした活
の側面も形態や営利・非営利の別を問わず考
動を再構築し、
「信用金庫のCSR」という新た
慮すべきものとされる。また、CSRに最適解
な評価軸を用意することが将来にわたってさ
はなく強制されるものでもない。したがって、
らに存在意義を高めていくためにも必要だと
各企業が自らの活動の将来価値を拡大するた
思われる。
め、CSRが突きつける経営環境との関係をど
〈参考文献〉
British Bankers Association “Guidance on Corporate Social Responsibility Management and Reporting for the Financial Services Sector”
Nov. 2002
Global Reporting Initiative『サステナビリティ・レポーティング・ガイドライン』
(2002)
環境省『平成15年度「環境にやさしい企業行動調査」調査結果』(2004年9月)
経済産業省『企業の社会的責任(CSR)に関する懇談会中間報告書』(2004年7月)
経済同友会『第15回企業白書:
「市場の進化」と社会責任経営企業の信頼構築と持続的な価値創造に向けて』
(2003年3月)
麗澤大学企業倫理研究センター『CSR会計ガイドライン』(2004年7月)
The Co-operative Bank “Sustainability Report 2003” ほか国内外各行CSR報告書
調 査
75
調 査
中国華東地域の投資環境
−上海市嘉定区の現況−
信金中央金庫 上海駐在員事務所 所長
丹羽 弘之
(要 旨)
上海市の西北部に位置する嘉定区は古くから上海の衛星都市として栄えている。1985年3月
に地元自動車メーカーの上海汽車グループとドイツ・フォルクスワーゲン社の合弁自動車会社
「上海大衆汽車有限公司」が設立されて以来、中国華東地域の自動車産業基地として順調に発
展してきた。2004年秋には区内の「上海国際汽車城」にてF1が開催され、世界中から注目を集
めている。本中金上海駐在員事務所では2004年12月から2005年4月にかけて嘉定区を調査した
ので、その現況を報告する。
1. 2004年の嘉定区の経済は工業生産の増加、内需拡大、好調な輸出などに支えられてGDPは前
年比21.0%増と上海市全体の増加率13.6%を上回る高い成長を遂げた。
2. 2004年の外資導入実績は主に製造業の投資が貢献し、投資額は契約ベースで前年比30.6%増
加の2,730百万米ドルとなった。新規投資のうち総投資額10百万米ドル以上の案件は、2003
年に35件、2004年は70件あり、近年は比較的大型の投資案件が増加している。
3. 嘉定区の中心部から上海張華浜国際コンテナ埠頭まで約25km、自動車で25分程度、浦東国
際空港まで約75km、75分程度である。また嘉定区内には華東地域最大の貨物運送駅である
南翔駅がある。
4. 2003年から顕在化した電力不足問題は、嘉定区内の外資系企業も夏季・冬季に休日シフトを
迫られる等の影響があったが、生産に大きな支障を来たすには至らなかった。2005年は6月
15日から9月23日が需要ピーク期間とされ、2004年同様の節電対策が取られている。なお、
上海市政府によれば2005年後半から新たに建設した発電所の稼働開始により発電能力が増加
し、2006年には基本的に需給バランスは保たれるとのことである。
5. 2004年の中国の自動車販売台数は507万台と前年比15.5%増加した。うち乗用車の販売は前
年比18.3%増の233万台と自動車全体に占める比率は46%に達している。
6. 嘉定区内にある上海国際自動車城は、自動車関連産業の集積地を目指し開発が進められてお
り、区域内には自動車部品生産区、産業園区等の工業団地があり、自動車部品メーカーを中
心に誘致している。区内北部では嘉定工業区北区が開発中であり、自動車関連企業の外、ハ
イテク、環境保護、電子産業を中心に誘致している。
7. 嘉定区は上海市内にあり交通アクセス等の投資環境に優れながらも、進出コストが比較的安
価であり、投資進出地として総合的なバランスの取れた地域である。また、中小企業の進出
を歓迎しており、これから進出を検討する企業、特に自動車関連企業にとり、進出候補地と
成り得る場所である。
76
信金中金月報 2005.8
上海市嘉定区の現況
4m程度である。
同区の中心にある嘉定鎮から上海市の中心
1.上海市嘉定区の概要
部(人民広場)まで約30km、虹橋国際空港、
(1)地理、人口
上海駅、張華浜国際コンテナ埠頭まで約25km、
嘉定区は上海市内の北西部に広がる行政区
浦東国際空港まで約75kmである。
2
画の一つで、北緯31度23分、東経121度15分に
総面積は459km で、横浜市の1.1倍の広さに
位置している。北側・西側は江蘇省太倉市、昆
あたる。2003年末の戸籍人口は51万人(流動
山市、東側は上海市宝山区、南側は青浦区、閔
人口を含めた定住人口は70万人程度)となっ
行区と境を接している。全体に平坦で海抜は
ている。面積で上海市全体の7.2%、人口で
図表1 嘉定区位置図
嘉定工業区(北区)
長江流域
上海張華浜国際コンテナ埠頭
嘉定区
嘉定工業区(南区)
外高橋港
上海国際汽車城
近郊鉄道(R3)
浦東新区
虹橋国際空港
市中心部
浦東国際空港
(出所)嘉定工業区ホームページ
調 査
77
図表2 上海市内各区の主要計数(2003年)
面積(km )
2
人口(万人)
人口密度(人)
GDP(億元)
前年度比(%)
中心区
徐匯区
54.76
88.60
16,181
75.74
14.35
長寧区
38.30
61.71
16,113
58.45
14.20
普陀区
54.83
84.53
15,417
58.30
12.77
閘北区
29.26
70.79
24,192
49.59
15.10
虹口区
23.48
79.22
33,741
57.10
13.70
楊浦区
60.73
108.17
17,812
66.95
17.60
黄浦区
12.41
61.87
49,854
87.10
12.10
盧湾区
8.05
32.84
40,793
45.70
17.10
静安区
7.62
32.07
42,084
58.95
12.67
569.57
176.69
3,102
1,507.44
17.50
嘉定区
458.80
51.18
1,115
271.60
22.90
宝山区
415.27
85.43
2,057
206.21
23.10
閔行区
371.68
75.12
2,021
290.40
26.20
金山区
586.05
52.71
899
116.93
26.50
松江区
604.70
50.68
838
252.50
15.30
青浦区
675.54
45.83
678
207.10
22.80
南匯区
687.66
69.91
1,017
190.90
18.00
奉賢区
687.39
50.87
740
141.72
23.40
崇明県
840.00
60.62
610
70.07
12.10
浦東新区
郊外区
(出所)『2004年上海年鑑』にもとづき作成
3.8%を占める。
弁自動車会社上海大衆汽車有限公司(以下「上
海VW」という。)の工場が同区西部の安亭鎮
(2)歴史
に設けられた。
南宋時代の嘉定10年(1218年)に設立され、
その時の年号が地名となった。その後周辺の
(3)行政・都市計画
鎮と合わせて行政区画上は嘉定県とされ、江
上海市内の19の行政区画の一つである。区
蘇省に属してきたが、1958年上海が中央政府
内は中心地である嘉定鎮、上海国際汽車城・
直轄市に昇級する際に同市に編入された。そ
F1会場のある安亭鎮、小籠包で有名な南翔鎮
の後1992年10月行政区画制度の改変により嘉
等の13の行政区画に細分されている。
定区となった。1986年、中国・ドイツ(フォ
同区の都市計画によると、区内中心部はニュ
ルクスワーゲン(以下「VW」という。
)
)の合
ータウン(嘉定新城)、南部は上海西北物流園
78
信金中金月報 2005.8
区を中心とした物流・商業・居住の総合地区、
産業1.3%、第2次産業68.4%、第3次産業30.3%
西部は上海国際汽車城、北部は嘉定工業区等
となっている。上海全体の同1.5%、50.1%、
の工業基地として整備される予定である。
48.4%と比較し第2次産業の比率が高いことが
特徴である。ただし、2003年には第3次産業の
(4)経済動向
投資額が第2次産業の投資額を超えており、今
2004年の嘉定区の経済は、自動車部品製造
後のニュータウンや物流園区の開発により第3
業を中心とした工業生産の順調な増加、内需
次産業の比率が徐々に高まることが見込まれ
の拡大、好調な輸出などに支えられ、区内GDP
る。
成長率は前年比21.0%増と上海市全体の増加率
(5)外資導入の動向
13.6%を上回る高い成長を遂げた。
嘉定区の産業構造を見ると、2003年は第1次
嘉定区では、1986年に上海VWが安亭鎮で生
図表3 嘉定区GDP成長率・産業別構成比の推移
(単位:%)
1990
1995
2000
2001
2002
2003
2004
上海市
3.5
14.1
10.8
10.2
10.9
11.8
13.6
嘉定区
N.A
37.2
12.2
13.7
15.1
22.9
21.0
第一次産業
13.5
4.1
2.1
1.9
1.7
1.3
N.A
第二次産業
63.1
68.2
67.2
67.3
66.5
68.4
N.A
第三次産業
23.4
27.7
30.7
30.8
31.8
30.3
N.A
GDP
成長率
(出所)『2004年上海統計年鑑』、『2004年上海市国民経済と社会発展統計公報』、『2004年上海市嘉
( 定区国民経済と社会発展統計公報』、『嘉定区政府統計月報』にもとづき作成
図表4 外資導入額の推移
(単位:件、百万米ドル、%)
2000
2001
2002
増減率
件 数
契約額
輸出額
2003
増減率
2004
増減率
増減率
上海市
1,814
2,458
35.5
3,012
22.5
4,321
43.5
4,334
0.3
嘉定区
145
322
122.1
291
△ 9.6
278
△ 4.5
293
5.4
対全市割合
8.0
13.1
上海市
6,390
7,373
15.4
10,578
43.5
11,064
4.6
11,690
5.7
嘉定区
577
745
29.1
1,407
88.9
2,095
48.9
2,730
30.3
対全市割合
9.0
10.1
上海市
25,354
27,628
9.0
32,055
16.0
48,482
51.2
73,520
51.6
嘉定区
1,248
1,501
20.2
1,711
14.0
2,428
41.9
3,600
48.3
4.9
5.4
対全市割合
9.7
6.4
13.3
5.3
6.8
18.9
5.0
23.3
4.9
(出所)『2004年上海統計年鑑』、『2004年上海市国民経済と社会発展統計公報』、『2004年上海市嘉定区国民経済と社会発展統計公
( 報』、『嘉定区政府統計月報』、嘉定区対外経済員会ホームページにもとづき作成
調 査
79
産を開始して以来、1992年に市級開発区であ
によるが最速で各々25分、40分程度である。今
る嘉定工業区が設置され、さらに2001年には
回訪問した日系企業の中には、嘉定区への進
安亭鎮に上海国際汽車城が設置される等、自
出理由として港までのアクセスの良さを挙げ
動車関連産業を中心に外資系企業が進出し、投
た先があった。
資契約額、輸出額は増加傾向にある。その結
果、2003年までの外資投資累計額(契約ベー
ロ.道路
ス)は約100億米ドル、投資件数は約2,400件と
嘉定区内には、上海・蘇州・南京をつなぐ
なっている。新規投資のうち総投資額10百万
大動脈である滬寧高速道路を始めとする5本の
米ドル以上の案件は、2002年に36件、2003年
高速道路、国道312号線等の4本の幹線道路が
に35件、2004年は70件あり、近年は比較的大
縦横に走っており、上海を行き交う陸運貨物
型の投資案件が増加している。
の3分の2が嘉定区を経由している。
2.嘉定区の投資環境
ハ.鉄道
ジェトロが2003年2月から4月にかけて実施
嘉定区内には華東地域最大の貨物運送駅で
した「中国進出日系企業の実態と地域別投資
ある南翔駅がある。また市内中心地から上海
環境満足度評価2003年」によると、都市・開
国際汽車城間の近郊鉄道(R3)も計画されて
発区別環境評価で嘉定区の総合評価は5段階評
おり、2009年には完成予定である。嘉定区内
価で3.3と75対象地域の中で8位となった。上海
には11駅が設けられる予定である。
市内の対象地域としては漕河 開発区と並び
一番高い評価を得ている。分野別評価ではイ
ニ.空港
ンフラ(ハード面3.5、ソフト面3.4)、生活環
浦東国際空港まで約75km、虹橋国際空港
境(3.4)、行政当局等の対応(3.3)等で高い
(浦東国際空港が稼働後は国内線専用)まで約
評価を得たことによるものである。
25km、所要時間は道路事情によるが最速で
また、今回の進出済み日系企業から業況等
各々75分、25分程度である。今回訪問した日
を聴取した際にも、行政側が自動車関連企業の
系企業の中には、嘉定区への進出理由として
進出に慣れており、手続きがスムーズに進ん
日本を朝出発し、工場の終業時刻(通常は17
だ点を進出メリットとしてあげた先があった。
時)前に工場に到着し操業状況を把握できる
ことを挙げた先があった。
(1)インフラの状況
イ.港湾
上海張華浜国際コンテナ埠頭まで約25km、
外高橋港まで約40kmで、所要時間は道路事情
80
信金中金月報 2005.8
ホ.電力
中国各地は2004年に続き2005年夏季も深刻
な電力不足に見舞われる見込みである。上海
を含む華東地域でも、夏季、冬季とも電力不
でもある優良日系企業があるため、その恩恵
足対策が採られており日系企業への影響が出
にあずかり優先的に電力供給を受けていると
ている。ただし、同じ華東地域内でも「上海
思われるケース等があった。
の電力不足、江蘇省の深刻な電力不足、浙江
省の危機的な電力不足」と称されているよう
に、江蘇省、浙江省に比較すれば上海市の状
況は相対的には良い。
ヘ.給排水
長江のすぐ南側に位置していることから、水
資源は豊富で給水能力は1日40万トンあり、水
2004年夏季、上海市政府は6月15日から9月
不足の問題はない。また、区内の各開発区に
17日までを夏季電力ピーク期間とし、その中
は下水管が埋設されており、進出企業は当該
でも気温や電力使用状況に応じ5つの段階に分
下水管を通じて汚水を排出することができる。
けて制限措置を定め実施した。嘉定区内の日
系企業では8月中の1週間連続の操業停止、休
(2)人材の状況
日振替(土日の休日を平日に振り替える。
)等
イ.人材教育
の要請を工業区管理委員会等から受け実施し
嘉定区内には上海大学嘉定分校、同済大学
た先が多いようである。冬季には、12月11日
汽車学院、上海科学技術管理幹部学院、上海
から3月11日が「冬季電力供給調整期間」とし
科学技術学院等の大学、高等技術専門学校、ま
て設定されて、日系企業も休日振替要請を受
た多くの中等技術専門学校があり、企業に各
けていたようである。上海市政府は、2005年
種人材を提供している。そのほか、上海自動
夏季も6月15日から9月23日までを電力ピーク
車検査センター、中国科学院上海珪酸塩研究
期間とし、2004年と同様の連続休暇取得や休
所、上海冶金研究所、中国科学院上海光学精
日振替を各企業に要請している。ただし、2005
密機械研究所等十数か所の国家級研究機関が
年後半から新たに建設した発電所の稼働開始
集まっている。
により発電能力が増加し、2006年には基本的
に需給はバランスするとのことである。
なお、同じ区内であっても、企業により取
ただし、今回の現地調査の中で、市内に比
較し日本語のできる人材が採用しづらい旨聴
取した先もあった。
扱いに差がある。今回の現地調査の中でも、週
2日の休日振替要請を受け実施している先があ
ロ.労働者の賃金
る一方、一切の電力制限措置を受けていない
・賃金水準(手取り)
先もあった。制限措置を受けていない理由と
工員クラス
800∼1,000元/月
しては、業種柄電力使用を中断できない旨供
エンジニアクラス
1,000∼2,000元/月
電局に説明し理解を得たケース、明確な理由
管理者クラス
2,000元∼/月
は不明であるものの近隣に当社の製品納入先
上海市の最低賃金は
690元(2005年7月∼)
調 査
81
・社会保障費料率(図表5)
中心区と嘉定区内の生活環境について述べる。
ただし、上海市政府の政策により、嘉定区
等の郊外区の戸籍を持つ労働者を雇用する場
合は、年金保険17%、失業保険2%、医療保険
イ.治安
市中心区では日本人を対象とした強盗事件、
5%の計24%(企業負担のみ)の納付に軽減さ
置引き等が発生しているが、基本的には嘉定
れている。
区の治安は問題ない。また、4月16日に行われ
江蘇省昆山市との境付近に所在する日系企
た反日デモの影響は表面的には沈静化してい
業では、相対的に給与の安い隣の昆山市在住
る。嘉定区内では反日デモの発生はなく、治
の工員を採用し人件費を抑えているケースも
安には特段の問題はない。ただし、近年の中
ある。中国の一般消費者から受けのいい上海
国の自動車市場の拡大に伴い、上海市内を走
ブランドの製品を安価に生産できる点に立地
る自動車の数が増えている。運転マナーが悪
上のメリットを感じているとのことである。
いドライバーが多いこともあり、交通事故に
は留意が必要である。
(3)生活環境
嘉定区へは市中心部から自動車により1時間
ロ.住居
以内で行くことができるため、市中心区(徐
上海に勤務する日本人は主に市中心区の西
匯区、長寧区、普陀区、閘北区、虹口区、楊
側に居住している。日本人専用住宅から現地
浦区、黄浦区、盧湾区、静安区)から通勤す
の人たちと混住しているアパートまで幅広い
る日本人駐在員が多い。市中心区に居住する
グレードの住居があり、月額家賃も単身者用
場合には、衣・食・住・教育・医療等の生活
アパートの3,500元から家族向け戸建の40,000
環境はほぼ問題ない水準に達している。ただ
元程度と幅広い。嘉定区内では、日本のテレ
し、通勤の利便性を勘案し嘉定区内に居住し
ビ放送が視聴可能なホテル(月額家賃7,000元
ている単身赴任の駐在員もいる。以下では市
程度)
、アパート(家具付で月額家賃4,000元程
度)等の物件が利用される。
図表5 社会保障費料率
(単位:%)
種類
企業負担
個人負担
22.5
8.0
失業保険
2.0
1.0
医療保険
12.0
2.0
段も日本よりは若干安めである。日本の食材
住宅積立金
7.0
7.0
も香港系百貨店の地下食品売り場や日本食材
労災保険※
0.5
−
専門スーパー等で入手可能である。ローソン
44.0
18.0
等のコンビニエンスストアも数多くある。嘉
合計
※各企業の労災事故の発生状況に応じ2.5%を上限とする変動
保険料率が加算される。
82
ハ.日本食材等
年金保険
信金中金月報 2005.8
市中心区には数多くの日本料理店があり、値
定区内にも日本料理店、大型ショッピングセ
ンターがあり、食に関する基本的な生活環境
ホンダ、北京現代と続いている。ただし、2004
は整っている。
年はガソリン価格の引上げ、自動車ローンの
審査厳格化、メーカーの相次ぐ値下げで消費
二.教育
者の様子見ムードが広がったことから、主に
市中心区西側に日本人学校(小中)がある
乗用車市場の売れ行きが鈍り、増加率は2002
が、現在2,000人を超える生徒が在籍し満員の
年、2003年を大きく下回り、急成長を遂げて
状況であるため、2006年4月、浦東新区に第2
きた自動車市場も生産過剰と在庫の増加によ
学校が開校予定である。また、高校も日本人
り調整局面を迎えた。
を受け入れるインターナショナルスクールや
2005年1∼5月の自動車販売台数は前期比4.5%
現地校がある。前記のいずれの学校にしても
増の227万台、うち乗用車の販売台数は1.07%
嘉定区からの通学は困難であるため、家族帯
増の97万台と増加率はさらに低下している。
同の場合には市中心区に住む必要がある。
(2)上海市の自動車産業
3.自動車産業集積地としての上海・
嘉定
(1)中国の自動車産業の現況
中国初の自動車合弁事業の発祥地である上
海は、日系自動車メーカーの進出で有名な天
津や広州と違い、欧米の大手自動車メーカー
中国では、ここ数年の急速な経済成長によ
VW、ジェネラルモータース(以下「GM」と
り、沿海部を中心として個人所得が増加し、本
いう。
)の進出により、中国華東地域の自動車
格的なモータリゼーションの時代が到来して
生産基地としての地位を築いてきた。その結
いる。2003年の中国の自動車販売台数は前年
果、自動車産業が上海市の基幹産業の一つと
比34.2%増加し439万台となった。中国は自動
して成長し、経済発展に大いに寄与している。
車の市場規模でドイツを抜いて米国、日本に
上海に所在する大手自動車メーカーの動向は
次ぐ世界第3位に浮上し、自動車大国に変貌し
以下のとおりである。
つつある。特に乗用車の販売が急増しており、
前年比75.3%増加の197万台と、乗用車市場の
拡大が顕著であった。
イ.上海汽車グループ
上海では国有企業である上海汽車工業(集
2004年の販売台数は前年比15.5%増の507万
団)総公司がVW、GMと合弁で上海VW、上
台に達し500万台を突破した。うち、乗用車の
海通用汽車(以下「上海GM」という。)を設
販売台数は18.3%増の233万台で自動車全体に
立し、上海汽車グループを形成している。上
占める比率は約46%に達している。乗用車の
海汽車工業(集団)総公司の前身は上海汽車
販売台数トップは上海VWで、一汽大衆汽車
装修理廠で、1958年から国産乗用車を生産し
(以下「一汽VW」という。)、上海GM、広州
ていた。1985年3月に独VWと合弁で上海VWを
調 査
83
設立し、自社単独での製造を中止し持株会社
化している。その後、部品の国産化や新技術
(集団)総公司の傘下に株式会社制企業である
上海汽車集団股フン有限公司を設立した。
導入を出し渋るVWを牽制するため、1998年
GMと合弁で上海GMを設立し2パートナー体
ロ.上海VW
制とした。その後上海汽車グループは、上海
上海汽車グループ傘下の中国第1位(2004年
VWや上海GMを核に他の国内自動車メーカー
の販売台数ベース)の乗用車メーカーである。
を傘下に納めるとともに、2003年に韓国のGM
サンタナを主力車種として、シェアトップの
大宇株式の10%を取得、2004年には韓国双龍
座を維持している。2003年には39.2万台を販売
自動車を買収する等海外にも事業を拡大して
し、売上高は567億元に達し、モトローラ(中
いる。
国)を抜き外資系企業売上高で第1位となった。
事業拡大の結果、2003年度は上海汽車グル
同年には12億元を投資しテストコースを建設、
ープ全体で85.7万台を販売している。2004年は
技術開発センターの人員を増強している。ま
上海GMの販売成績は好調だったものの、上海
た一部車種のオーストラリア、カザフスタン
VWの不振により販売台数は84.9万台とほぼ横
等への輸出も開始している。VWでは上海VW
ばいであった。トラック・バス等を含む自動
をメインに一汽VWをサブにして2008年までに
車全体の市場シェアは17%(乗用車シェアは
総額53億ユーロを追加投資するとしており、中
24.7%でトップ)で吉林省長春市に所在する第
国をアジア環太平洋地域におけるVWグループ
一汽車グループに次ぎ国内第2位である。
の戦略拠点として足固めを行っている。ただ
上海汽車グループは名実ともに世界の自動
し、当社の2004年の販売台数は、他社の新型
車メーカーの仲間入りをするため、トラック
車攻勢によって主力モデルが陳腐化している
からバス、乗用車までのフルラインアップで
にもかかわらず、それに代わる人気モデルを
生産し、さらに自動車金融、貿易、物流まで
開発・投入できていないため10%以上減の35.4
も手がける方針をとっている。そのため2000
万台となり、設立以来始めてのマイナス成長
年にはVOLVOと大型バス製造の合弁会社を設
となった。そのため、2004年末から一部車種
立、また2003年にはいすゞと大型トラックの
工場の勤務体制を従来の2直から1直に変え減
製造の合弁会社を設立した。また金融事業と
産体制を取っている。
しては2004年にGMと自動車ローン合弁会社を
設立、物流事業としては2003年に上海港に自
ハ.上海GM
動車専用埠頭を建設している。今後、研究・
上海汽車グループ傘下の中国第3位(2004年
開発のため多額の資金を必要とするため、2005
販売台数ベース)の乗用車メーカーである。
年中には香港等の株式市場に上場予定である。
1999年から高級車ビュイックの生産販売を開
その準備のため、2004年11月に上海汽車工業
始し、その後小型車も投入している。2003年
84
信金中金月報 2005.8
には20万台、2004年には25.2万台を販売し、販
事が完成する予定で、10年後にはアジア・太
売不振に陥っている上海VWとは対照的に成長
平洋地域での自動車産業の中心地となること
を続けている。また、地方の中小自動車メー
を目指している。
カーを買収し小型車の生産を開始している。
各エリアの概況は以下のとおりである。
GMは今後も高級車キャデラックの投入、ハイ
ブリッドバスや燃料電池車の開発等を通じ上
海汽車との連携関係の強化を図っている。
イ.核心エリア
2
敷地面積7.43km の核心エリアは、自動車の
展示・貿易区、研究開発区、テーマパーク、ゴ
(3)上海国際汽車城(上海国際自動車産業基地)
上海市政府は、2001年5月自動車産業を主幹
産業の1つとして育成するために、嘉定区安亭
ルフ場等から構成されている。自動車の貿易、
研究開発、情報サービス、展示、物流等の機
能を備えている。
鎮に上海国際汽車城(以下「汽車城」という。
)
の建設を決定した。世界的な自動車都市であ
ロ.製造エリア
2
る米国デトロイトを手本に、アジア地区最大
総面積21.2km の製造エリアは、上海VWの
のオートシティを目指すものである。汽車城
工場と15.5km の自動車部品生産区から構成さ
は、上海市政府の“第十次五か年”計画にお
れている。中国における完成車および部品の
ける重要な建設プロジェクトであり、西部の
生産基地として位置づけられる。また、現在
総合自動車産業基地として、東部のマイクロ・
の汽車城の北西部に新たに産業園区を設立し
エレクトロニクス産業基地、南部の石油化工
ている。部品生産区、産業園区については「4.
基地、北部の高品質鉄鋼基地と合わせて、上
工業区について」で詳細を説明する。
2
海の“東南西北”四大産業基地を構成するこ
ハ.競技エリア(F1サーキットレース場)
とになっている。
2
汽車城の総面積は68km である。前期におけ
2
投資額56億元、総面積5.3km の競技エリア
るインフラ建設投資は約100億元、核心エリア
は、F1サーキットレース場、商業・展覧区、
への投資や国際レース場の建設なども含めれ
文化・娯楽区、発展保留区という4つの部分に
ば最終的には投資総額がおよそ500億元に達す
分けられている。コース部分は「上」の形に
る見込みである。汽車城内には、自動車関連
見えるよう設計されている。
産業の集積地を目指し、核心エリア、製造エ
リア、競技エリア(F1サーキットレース場)、
教育エリア、安亭新鎮エリア(住宅団地)と
ニ.教育エリア
2
総面積1.7km の教育エリアでは、自動車に
いう5つの機能別エリアが設けられている。
関連した研究や人材育成を行う予定である。産
2001年9月に建設が開始され2007年には基礎工
学協同により自動車城内での専門人材の供給
調 査
85
図表6 汽車城計画図
産業園区
F1サーキットレース場
自動車部品生産区
旧市街区
上海VW工場
教育エリア
展示貿易区
研究開発区
安亭新鎮
(出所)上海国際汽車城安亭網ホームページ
を図るもので、自動車業界における技術者不
米合弁による大型病院を招致し良好な住環境
足の解消が期待されている。2004年9月からは
を提供する計画である。
建築工学などで有名な上海同済大学が自動車
学院を開設している。
(4)中小自動車部品メーカーによる嘉定区で
の販路拡大の可能性
ホ.安亭新鎮
嘉定区には数多くの自動車関連企業が所在
この上海国際汽車城で働く人々の居住区と
2
していることから、中小自動車部品メーカー
して、総面積5.4km ・計画人口8万人のニュー
にとって販路拡大のチャンスがあるかについ
タウン「安亭新鎮」の開発が行われている。中
て、以下のとおり関係者から聴取した。
86
信金中金月報 2005.8
イ.嘉定区政府対外経済委員会
上海VWの自動車部品調達は8割が現地調達、
部品を売込むことは難しい。理由としては、①
業歴の長い既往進出メーカーでは調達先が固
2割がドイツ、アメリカ、ポーランドからの調
定しており、余程の理由がないと調達先を変
達である。現地調達はほとんどが上海汽車グ
えることはないこと、②外資系企業であって
ループ内企業、地場企業からの調達である。例
も現地社員が調達を担当している場合が多く、
えば、ある大手日系自動車部品メーカーが上
彼らは地場企業からの調達を優先したいと考
海VWに部品供給できているのは、同社現地法
えていること等である。
人が上海汽車との合弁会社であるからである。
新しく進出してきた日系企業が売り込みをか
上記状況を勘案すると、中小自動車部品メ
けても、オファー依頼を貰うことも難しい。最
ーカーにとっては、販路拡大の可能性はある
近もホンダ系の金型企業が売り込んでいるが、
ものの、地場企業も含めた既往調達先との競
結果は捗々しくない。
争に打ち勝って受注していくには、①技術水
そこで、嘉定区政府では現地調達率を95%ま
で向上させて、区内に進出してきている自動車
準、②品質と価格のバランス、③納期や品質の
維持・管理等の面で抜きん出る必要があろう。
部品関係の外資系企業にビジネスチャンスを
提供し、これを誘致の材料としたいと考えてい
る。具体的には上海汽車と協議をして、現状
海外から輸入している部品のリストを作成し、
4.工業区について
以下に、今回訪問した3つの市級工業区を紹
介する。
当該リストを外銀等を通じて自動車部品関係
の外資系企業に配布することを計画している。
ロ.大手日系自動車部品メーカー(合弁)
(1)嘉定工業区
イ.設立年
:1992年
ロ.開発面積
2
2
:57.2km(南区:24.8km
、
2
北区:32.4km )
部品調達に関しては中国側出資会社からの
出向者が担当し、調達先を選定している。た
ハ.運営主体
団)有限公司
だし、一般論としては、新製品導入時に地場
企業で製造が難しい部品については、①技術
:上海嘉定工業区開発
(集
ニ.位置
:南区は嘉定区の中心部、
水準、②品質と価格のバランス、③納期管理
北区は北西部に位置す
等、色々な条件はあるものの、日系企業を含
る。
む新規調達先から調達をする可能性はある。
ホ.交通アクセス : 市 中 心 区 か ら 北 西 へ
32km(車で約60分)
ハ.中小日系自動車部品メーカー
新規進出企業が既往進出セットメーカーへ
ヘ.土地購入費用
2
:40∼43米ドル/m
ト.標準工場賃借料 :16元/m2
調 査
87
チ.コメント
・北区は2003年1月に設置された。南区から幹
・嘉定区の北西部に位置し南区と北区から構
成されている。
線道路に沿い7kmの場所にあり現在新開発
地としてインフラ施設の整備が進んでいる。
・上海市内の市級の9大工業園区の中で、工業
2
開発総面積は南区と比較し31%増の32.4km
総生産高ではシン庄工業区に次ぎ第2位であ
である。自動車関連、輸出加工、ハイテク、
る。
環境保護、電子産業を中心に都市区域と産
・南区は1992年10月に設置された。嘉定区の
2
中心に位置し開発総面積は24.8km である。
区内には中国科学院と嘉定工業区と合作で
業区域が一体となった環境にやさしい工業
区を建設しようとしている。
・北区は東西南北に走る2本の幹線道路により
設立し科学技術部の批准を受け設立された
以下の4つのエリアに分けられている。
ハイテクパークや上海光電子科技産業パー
①東北エリア:上海VWが追加投資するエン
ク、留学帰国者嘉定操業パーク等が設立さ
ジン工場や自動車関連企業のための工業
れている。現在までに世界十数か国・地域
地区とレンタル工場地区(約2km )
から200件を超える投資案件・17億米ドルを
超える外資が導入されている。
・南区では自動車関連、光電子部品・素材、電
子通信、電気機械のハイテク産業の投資誘
致に注力した結果、上記産業による投資が
同区への投資総額の60∼70%を占めている。
・日本の小糸製作所(1989年2月設立)をはじ
2
②東南エリア:復旦大学コンピューターソ
フト学部が開校予定の産業・教育・研究
地区と戸建住宅やホテル、病院も含めた商
業・文化施設の文化・生活地区
③西北エリア:輸出加工区(計画面積5∼
2
8km )
④南西エリア:高度技術を持つ電子通信、電
め、ドイツのZF、SABA等の自動車関連メー
気機械等を中心とした総合工業地区
カーが上海VWへの部品提供の目的で、早く
・北区では富士通(総投資額1.5億米ドル)
、小
から進出してきている。近年には日本・韓
糸(総投資額1億米ドル以上)、ノーリツ等
国の中小自動車関連企業も相次ぎ進出して
が投資予定である。
いる。自動車関連企業の投資総額と投資件
数は全体の20%以上を占めている。
・日本からの投資総額は4億米ドル、投資件数
は54件で、自動車用電子部品、金型、絶縁
・工業用地分譲販売する場合の前提条件は以
下のとおりである。
2
①分譲面積20ムー以上(1ムーは666m )
②投資密度40万米ドル/ムー以上
体等の製造企業が中心である。主な企業は
・電力問題について、元々上海には江蘇省や
富士通(家庭用エアコン)
、小糸製作所(自
浙江省よりも優先的に電力が配分されてい
動車用ライト)、三菱樹脂(包装材)、ノー
ることに加え、2004年6月には嘉定区内で新
リツ(電子部品)等である。
たな変電所が稼働するなど状況は改善して
88
信金中金月報 2005.8
いるが、2005年の夏も休日シフト等が実施
ウメトク、小糸製作所に加え、トヨタ向け
される予定である。ただし、24時間電力が
部品提供の愛知鍛造、中塗化工などがある。
必要な業種に対しては優先的取扱いをする
そのほか、GPアジア、BOSCHなどの多国
等柔軟に対応している。
籍企業や、上海汽車集団自動車工事研究院、
トヨタ自動車の技術開発センター、三電自
(2)上海国際汽車城部品生産区
動車のエアコン技術開発センター等のR&D
イ.設立年
:1998年
ロ.開発面積
2
2
:14km(第1期:8.3km 、
センターも進出している。
2
第2期:5.7km )
・現在は当区の既往工業用地には空き地がほ
とんどない状態である。そこで、F1サーキ
ハ.運営主体
:安亭鎮人民政府
ット場の南側に新たに製造区を設けた。整
ニ.位置
:嘉定区安亭鎮上海国際
地、インフラ整備は終了しており、すでに
汽車城内
企業が入居し始めている。
ホ.交通アクセス : 上 海 市 中 心 か ら 西 へ
25km(車で約60分)
ヘ.土地購入費用
2
:28米ドル/m
ト.標準工場賃借料 :16元/m2
・工業用地を分譲販売する場合の前提条件は
以下のとおりである。
2
①10ムー(6,660m )以上であること。
②投資密度が30万米ドル/ムーであること。
チ.コメント
・1998年に設立され、2001年に市レベルの工
業区となった。
・2003年6月時点の進出は183社で、投資額は
(3)上海国際汽車城産業園区
イ.設立年
:2004年
ロ.開発面積
:40km 2(第1期:10km 2
2009年完成予定)
契約ベースで内資164億人民元、外資8.8億米
ドルに達した。進出企業の種類は、自動車
ハ.運営主体
展有限公司
部品をはじめ、機械製造、電子・電機、金
属製品、精細化工、アパレルなど幅広い。
・2004年末時点で、当区に入居した外資系企
:上海国際汽車城産業発
ニ.位置
:嘉定区外岡鎮
ホ.交通アクセス : 上 海 市 中 心 か ら 西 へ
25km(車で約60分)
業が132社、そのうち6∼7割程度が自動車関
2
連メーカーであり、内資企業を含めると60%
へ.土地購入費用
:28米ドル/m
以上が上海VW向けの部品生産メーカーであ
ト.標準工場賃借料 :16元/m2(2005年末完
成予定)
る。当区においては、欧米系、特に米国、ド
イツ系の部品メーカーが主流である。当区
チ.コメント
へ進出した外資系自動車および部品メーカ
・上海国際汽車城内の工業用地に余裕がなく
ーの中で、日系メーカーは10社余りである。
なってきたため、汽車城北側の隣接地が新
調 査
89
たに開発されることとなり、2004年に市級
現地日系企業の紹介
工業区として設立された。
・自動車組立企業、部品製造企業、燃料電池、
省エネ車の開発企業を中心に誘致する。
2
1.訪問先概要
図表7のとおり。
2
・40km のうち、第1期分9.5km は虹橋経済技
術開発区の分区として国家級経済技術開発
区に昇格させる手続きを進行中である。申
2
2
2.ヒアリング結果
(1)A社(信用金庫取引先)
請用地9.5km のうち、7km が工業用地とな
イ.事業内容
る予定。
・カーオーディオ、デジタルカメラ部品の金
・国家級自動車部品輸出基地(全国で8か所設
型製造、プレス加工
けられる予定)として指定を受けるための
ロ.進出経緯
手続きも進行中である。
・工業用地を分譲販売する場合の前提条件は
・製品の販売先が中国でカーオーディオを生
以下のとおりである。
産することになり、業者選定リストに残る
①進出企業の業種は自動車関連産業、ハイ
ためには中国進出が必須であることから、中
テク産業、新素材産業等であること。
国進出を決めた。
②影響力の大きい、将来性が見込まれる、地
・当初は国営工場内の1棟を賃借することで決
元への貢献度が大きい企業であること。
めかけたが、販売先から同一敷地内では日
2
③10ムー(6,660m )以上であること。
本的経営は不可能とのアドバイスを受け、現
④投資密度が30万米ドル/ムーであること。
在地の紹介を受けた。現在地も別の国営工
場から隣地を賃借しているが、敷地を塀で
図表7 訪問先概要
業種
A社
B社
金型製造・プレス加工
工業用ミシン、
自動車部品製造
進出形態
設立年
資本金
独資
2001年
92万米ドル
独資
2002年
300万米ドル
嘉定工業区
嘉定区内
C社
金型製造・プレス加工
独資
2001年
105万米ドル
D社
金型製造・プレス加工
独資
2003年
400万米ドル
E社
電子製品コネクター製造
独資
2004年
300万米ドル
90
信金中金月報 2005.8
場所
橋頭鎮
上海国際汽車
城部品生産区
嘉定工業区
社員数
148名
(日本人5名)
50名
(日本人5名)
26名
(日本人0名)
25名
(日本人5名)
301名
(日本人4名)
工場利用形態
土地を賃借
工場を賃借
土地を購入
土地を購入
工場を賃借
区切り門も別に設けており、独立した工場
ニ.人材の状況
としての外観を備えている。
・当初は熟練工育成のため長期雇用が期待で
・設立手続きは上海市内の日系コンサルティ
ング会社に委託した。
きる地元出身者を採用していたが、現在で
は外地人が半数を占める。外地人の方が残
業を厭わずよく働く。
ハ.現地の状況
・工場の敷地面積は4,400m 2 、建物面積は
2
1,500m で、1か月あたりの土地賃貸料は
・工員の給与水準は基本給1,300元、残業手当
500元、福利費等1,000元で総コストは2,800
元程度である。
24,000元である。
・世界の工場である中国で「顧客満足度が品
ホ.現状の課題・問題点等
質向上のバロメーターに」、「技術の向上が
・現在地は5年以内に再開発されるため、土地
売上増に繋がっていく」をモットーに日本
を所有している国営工場ともども立退きが
企業のみならず欧米・台湾・韓国等の世界
必要と言われている。しかしながら、近隣
の企業を相手にした競争に勝ち抜いていく
地で新しい工場が建設されており、計画通
ため、新たな品質管理システムを構築しさ
りに再開発が進むか不明なこと、移転候補
らなる発展を目指している。
地も同様に再開発の対象となる可能性があ
・8時∼17時、16時30分∼1時30分の2直制で生
産している。
・原材料であるステンレスは日本から輸入し
ること等を勘案し正式に立退きを求められ
るまでは現在地にとどまる予定である。仮
に移転するとしても、中国の道路事情の下、
ているため、関税や輸送コストを入れた原
精密部品を輸送することを考えると販売先
材料費は日本より割高となる。また、労働
の近隣地に移転する必要がある。
集約型産業と異なり労務費の比率が低いこ
・電力問題に関しては1km離れた日系工場で
とも勘案すると生産コストは日本と変わら
は木・金への休日シフトがあるが、当地で
ない。そのため、台湾系企業等では対応で
は電力制限は一切ない。理由は当鎮の最大
きない高度な技術を必要とした付加価値の
の日系進出企業であり納税額も大きい製品
高い製品を受注している。
納入先の近隣地であるからと思われる。
・不良品率は2%台前半。日本並みの小数点1
・現状、日系精密金型企業は近隣地区で当社
ケタ台まで低下させることが課題である。
を入れ3社しかなく、競争相手は少ない。見
・2003年度に単年度黒字化した。2005年度に
積り依頼は沢山あるが、受けきれないのが
は累積損失も解消見込み。
実情である。技術力の向上、生産産体制の
整備に伴い売上げは伸びていくと考えてい
る。今後生産能力を増大するためには金型
調 査
91
の精度を維持するための技術者の養成が必
・結果的には自動車部品製造の観点から汽車
要である。現状は日本人しか対応できない
城のある嘉定区に進出してきてよかった。
ため、夜勤では高度な技術を要する製品の
・設立手続は日本人のコンサルタントに委託
生産は難しい。
した。ただし、任せきりにせず、必要に応
じ日本人責任者が自ら当局と交渉すること
(2)B社(信用金庫取引先)
イ.事業内容
も必要である。開発区開発公司担当者も関
係当局への同行等で支援をしてくれた。
・工業用刺繍ミシン、自動車部品(ステアリ
ングリンケージ)製造
ハ.現地の状況
2
・建物面積4,000m
ロ.進出経緯
・当社は台湾で家庭用ミシンを生産・輸出し
ており、海外進出経験があった。
・部品調達の現地化によるコストダウン、人
材育成による生産効率の向上・品質の安定
を課題として取り組んでいる。
・中国進出の主目的は、自動車部品の中国国
・自動車部品は、従来は日本で生産し中国向
内での製造・販売であるが、それだけでは
けに輸出していたが、2004年5月に当地に設
当面の採算が取れない。そこで、まず工業
備を設置し試作を開始、10月に納入先の監査
用ミシンの組立で売上げを確保し、並行し
を受けた。現時点では自動車産業の景気低
て自動車部品の販売先を開拓していくこと
迷のため本格生産に至っていない。部材は、
とした。
鋼鉄製のため国際価格と連動しており、目
・今のところ工業用ミシンの調達部品の6割は
海外調達である。組立に関するコストが安
下のところ中国で調達してもコストダウン
にならないため、日本から輸入予定である。
いため、生産を軌道に乗せ、部品の現地調
・生産体制について、勤務時間は8時から17時
達比率を高めることにより、2割程度のコス
まで。現状2直制は導入していない。残業は
トダウンを目指している。
申請書を準備し(残業代稼ぎを防止)必要
・上海が中国の経済、情報の中心地となるこ
とを見越し進出した。
・当初は上海郊外の別の工業区に進出する予
に応じさせている。工員は外地人が多いも
のの、残業代が少ないことを不満に退職す
るケースは現状ない。
定であり、場所も確保してあった。しかし
・当初は現行の駐在者以外にも技術者が出張
ながら、当地に当社製品のミシンの納入先
に来て技術指導を行った。現地職員の日本
が数年前から進出しており、そこに間借り
への派遣は実施していない。
すればスムーズな連携が期待できることか
ら当地に進出した。
92
信金中金月報 2005.8
・嘉定区政府が3か月に1回程度開催する日系
企業(約30社)を集めた会合に参加してい
る。また、地場中小企業が中心の自動車部
難しい。現地職員の昇給や昇進を適切に行
品協会(会員数100社)、自動車販売協会に
わないとトラブルの原因となる。
も参加し人脈の拡大に努めている。
ホ.現状の課題・問題点等
ニ.人材の状況
・現地法人は中国内の企業であることを前提
・管理職は、新聞広告、地場ヘッドハンティ
に日本企業の精神、品質管理をどうやって
ング会社(日系は紹介手数料が高い。
)を利
いくかが問題である。そのためには日本と
用し採用。専門学校卒の経験者を中途採用
は違う業務環境であることを理解すること
したが自分から率先して仕事ができる人材
も必要である。
は少ない。給与水準は基本給が2,000∼数千
・創業費、償却負担はあるが遅くとも2006年
元。日本語ができるだけでその他の能力・
度には単年度黒字化を目指している。その
経験による給与水準+300∼1,000元となる。
ためにはミシン組立部門は部品の現地調達
日本語のできる人材は売り手市場であり、高
比率の向上によるコストダウン、自動車部
賃金を提示しないとよい人材を採用するこ
品製造部門は生産販売の本格化と売り先の
とは難しい。
拡大が課題である。
・工員は人材紹介会社を通じ採用した。当初
・ミシンについては、部品がコストに占める
は地元出身者が多かったが、今では外地人
割合が高く、コストダウンが課題である。部
の方が多い。外地人の方がハングリー精神
品の国内調達にあたっては、自社で部品製
がある。地元と外地出身者を混ぜて採用す
造工場から直接調達できればもっと安価に
べきである。給与水準は正式採用後の基本
調達できるであろうが、中間業者を通すと
給が800元。精勤手当てはあるが能率給は現
高くなる。直接調達のルートを開拓する必
状導入していない。ミシン組立は部品点数
要がある。
が多く、組立後の調整には感覚的な面が必
要なため、育成には最低3か月かかる。
・ISOの取得も含め生産管理体制の整備をこれ
から進めていく。日本と異なり部品調達面
・優秀な人材は売り手市場であり、会社の位
で納期管理が難しい。生産効率を上げるた
置的条件(周囲に進出企業が多い)あるい
めには納期に応じて品質の安定した部品を
は雇用契約の期間等により、採用後も定着
調達する必要がある。
率が良くない。したがって、仕事の内容を
・電力問題については、夏季に続き冬季も休
できるだけ標準化して、熟練しなくても生
日シフト(土・日から水・木)の要請があ
産できるようにしなければならない。
る。当社では水・木にも最低限度の電力供
・正式雇用時、契約更改時に能力・人材の需
給を受け稼働している。
給関係を勘案した給与水準を決めることは
調 査
93
へ.その他
・住居は嘉定区内のホテルである。通常の客
室(1部屋、炊事設備無し)で月額7,000元。
日本のテレビ番組が視聴可能なこと、日本
料理店等があること、買い物に便利である
・進出地を決めるため中国各地や東南アジア
を回ったが、気候・気質・言葉の問題を勘
案し華東地域に進出することにした。
・浦東空港や港からのアクセスを勘案し嘉定
区に進出した。
こと等を勘案して候補物件(ホテル)を5、
・進出手続きは、地場法律事務所に依頼した。
6件見たうえで選定した。家具付マンション
担当弁護士の対応は良かったが、担当弁護
でも月額4,000元程度で賃借は可能である。
士が短期間で変わる、費用が高い等事務所
・嘉定区は上海市郊外にあり外資系企業の進
出が遅れていたので、中小企業でも進出を
としての対応には不満が残った。
・不動産登記、工場の建築許可、電気設備工
歓迎している。中小企業、特に自動車関連
事許可、通関手続等でトラブルに遭遇した。
企業であれば蘇州・無錫より進出しやすい
そのため会社設立から操業開始まで1年以上
のではないか。
かかった。
・駐在者は、できれば中国語ができる人材が
良い。通訳を介すると自分の意思が誤って
・工場の建築は台湾系業者に委託したが、出
来上がりが悪く苦労した。
伝わったり、従業員の考えが理解しにくく
判断を間違ったりするし、自分の行動も制
ハ.現地の状況
約される。
・土地14,625m 、建物3,100m 。土地使用権購
2
2
2
入価格は20米ドル台前半/m 程度
(3)C社(信用金庫取引先)
・日系企業というよりも、アジア企業として
イ.事業内容
現地に根ざした経営をしたい。日系企業と
・自動車用部品(エンジンファン等)
、冷蔵庫
しての優越感を持ったまま、コストダウン
用部品、マッサージチェア用部品の金型製
だけを追及した進出はうまくいかないと思
造、プレス加工
う。
・現状、進料加工方式による日本への自動車
ロ.進出経緯
部品の輸出が売上げの1割程度、外は中国国
・以前から文革時に帰国した中国在住日本人
内でのマッサージチェア用部品の日系企業
の対中国貿易業務を支援する等、中国とは
向け販売が6割強、残りが冷蔵庫用部品の地
縁があった。1990年頃広州市で飲食店を共
場企業向け販売である。中国国内での販売
同経営していたこともある。
代金回収の問題は現状ない。
・日本国内での系列関係を離れた企業経営を
するために中国に進出した。
94
信金中金月報 2005.8
・生産コストは日本と比較し6割程度安い。労
務費、設備投資費が安いことが要因である。
例えば、日本で750万∼1,000万円する研磨機
が当地では13万元(170万円相当)で購入で
きる。
汽車城に進出した。
・進出手続きは銀行系コンサルティング会社
に代行委託した。
ニ.人材の状況
ハ.現地の状況
・従業員26名中、工員は18名。給与水準は見
・土地面積6,600m 、建物面積1,650m 、土地使
習い工員700元、正式雇用後は1,000元程度、
2
2
2
用権は30米ドル弱/m で購入した。
総コストは1,800元程度である。親会社以上
・日本式サービスにより部品納入先である日
の人的規模にはしない方針で効率性を追求
系企業を満足させることをモットーとして
している。
いる。
・日本人の駐在者はコストアップ要因になる
ほか、現地社員が依存することになるので
配置しない。本社社長、技術担当課長が毎
月各1週間程度出張することで対応している。
・勤務時間は8時半から17時15分まで。現状2
直制は間もなく導入予定である。
・生産管理体制の整備はこれからの課題。ISO
の取得もこれから取り組む。
・社員の多能化を図っている。総務・財務担
・主要販売先は日系企業であるが中国系企業
当が通関業務、通関担当が総務、製造部は
への販売もある。遠くは常熟市、太倉市に
全工程、保全部も新規機械の取扱ができる
所在する販売先まで販売する。
ようにする等QCサークル活動も活発に行っ
ている。
・月末締め翌月末払いで代金回収しているが
現段階では回収の問題はない。
・上記も含めた社長の経営方針が現地社員に
浸透してきている。現地社員の公私のけじ
ニ.人材の状況
めもついてきている。
・管理職は中国系の人材紹介会社を使い採用
した。給与は他社並み(基本給で2,000∼4,000
(4)D社
イ.事業内容
・自動車用部品の金型製造、プレス加工
元程度)
。市内と比較し日本語のできる優秀
な人材を採用しづらい。
・工員は職業紹介所、鎮政府の紹介等を通じ
地元民を採用した。給与は1,000元程度。熟
ロ.進出経緯
練作業工というよりも作業機械のオペレー
・上海を中心とした華東地域に納入先がある
ターが必要である。
ため当地に進出した。
・上海市郊外の他の工業区も視察したが、担
当者が自動車関係の外資進出に慣れている
・社外の講習会への参加、社内勉強会により
人材の育成を図っている。今後日本への研
修派遣も検討している。
調 査
95
ホ.現状の問題
・工具、雑貨等の消耗品の調達のためには市
め進出した。
・進出候補地として、厦門、青島、深 、東
内まで行かなければならず不便である。
莞、珠海、中山、広州、杭州、蘇州、無錫
・電力問題は深刻であると理解しているが、当
を視察した。上海市内でも嘉定区以外の工
社は常に電力が必要であることを安亭鎮政
業区も視察した。その中で嘉定区に進出し
府を通じ供電局に説明し理解を得ることが
た理由は、海外へ輸出する場合の交通の便
できたため制限は受けていない。
がよく短納期にも対応できること、上海市
・販売先の計画変更の影響で売上高は当初計
内へのアクセスが良いこと、緑化が進み整
画よりも下方修正している。販売先の拡大
然とした街並みであること、工員の給与水
と売上げの柱を作ることが今後の課題であ
準が高くないこと、上海市内や杭州、蘇州、
る。
無錫に所在するセットメーカーから近いこ
と、当社が所在する工業区内ハイテクパー
へ.その他
クでは電力が優先的に供給されること、め
・住居は親会社駐在員事務所が所在する市内
っきが可能なこと等である。
北部の虹口地区にある。中国での駐在には
抵抗ない。駐在員の生活面での要件として
は好き嫌いなく、何でもよく食べることで
はないか。
・日本の常識が通用しないことを前提に親会
・会社設立手続き、工場の内装工事等は現地
コンサルティング会社に委託した。
・会社設立手続きから操業開始まで半年以内
に完了し、非常に順調に進めることができ
た。
社が干渉し過ぎないことが重要であること、
地元政府との関係作りが重要であることを
ハ.現地の状況
理解のうえ進出すべきと思う。
・工場建物はA、Bの2棟ある。面積はA棟
2
2
3,363m 、B棟4,454m 。現在はB棟のみ内装
(5)E社
を施し使用している。
(A棟内装は2005年度)
イ.事業内容
・ノートPC、MP3、携帯電話のコネクターの
生産・販売
・機械設備は精密加工のための特殊な成型機
等でありすべて日本から輸入している。
・現状では原材料は日本からの調達が多い。日
本での生産コストを100とすると現状の当社
ロ.進出経緯
のコストは80程度。今後部材の内製化を進
・従来からタイ、広東省(委託加工生産)等
め生産コストを50程度まで下げたい。
に進出していたが、既往工場の生産能力に
・生産品はグループ内の販売会社経由で世界
は余裕がないこと、将来の市場の確保のた
各地に販売している。中国国内販売分は、従
96
信金中金月報 2005.8
来香港に一旦輸出し再輸入して販売してい
はないことには留意をすべきである。以下に
たが、今後は外高橋物流園区経由にて販売
進出地としての優位点を取りまとめてみた。
する。
・営業活動は本社および販売会社が行う。代
金回収も販売会社経由であるため回収に伴
うリスクは負担していない。
・製品の品質管理・向上のためISO9001、14001
の認証取得を目指している。また、QC活動
も実施中。
1.良好な投資環境
80ページの「嘉定区の投資環境」で紹介し
たとおり、嘉定区は都市・開発区別環境評価
にて日系企業から上海市内の中でも相対的に
高い評価を受けている。
特に交通インフラ面に優れている。国際港
や空港への距離が比較的近く、アクセスのた
ニ.人材の状況
めの高速道路網が整備されているため、日本
・スタッフの採用は・インターネット、人材
からの出張、原材料輸入・製品輸出の面で便
市場、紹介会社を経由して採用した。
・月額給与は新卒者1,000元から最高5,000元程
度と幅がある。
・エンジニアはタイ工場で研修させている。日
本への研修も必要に応じ実施する。
利であると同時に、日系を始めとする外資系
企業が数多く進出している蘇州、無錫へのア
クセスも良い。
また、市中心区からの通勤も可能であるた
め、日本からの駐在員は良好な生活環境を享
・工員は人材紹介会社等を経由して採用して
受できる。2009年には市中心部と区内を結ぶ
いる。平均給与は700元強である。外地人が
電車の開通により、市中心区との交通は益々
多いが寮は準備していない。
便利となる予定である。
むすび
2.相対的に安価な進出コスト
上記のとおり良好な投資環境を備えている
今回の調査を通じて、嘉定区は上海市内に
にもかかわらず、進出コストは上海の他の開
あり交通アクセス等良好な投資環境に恵まれ
発区と比較し安価である。例えば嘉定工業区
ながらも、進出コストが比較的安価であり、投
の場合、浦東地区郊外の開発区と比較し工業
資進出地として総合的なバランスの取れた地
用地価格、標準工場賃料とも2割程度安価であ
域であると感じた。また、中小企業の進出を
る。
歓迎しており、これから進出を検討する企業、
また、中国国内で一般消費者を対象に製品
特に自動車関連企業にとり、進出候補地と成
を販売する場合、外資系企業製であるととも
り得る場所であると思う。ただし、地元のVW
に上海製であることが1つのブランドとなって
関連のセットメーカーへの販路拡大は容易で
いるが、嘉定区であれば給与が相対的に安い
調 査
97
隣接する江蘇省昆山市、太倉市から通勤する
模に開発を進める工業用地がある。
工員を採用することにより、人件費を抑え浦
また、区政府対外経済委員会、工業区管理
東地区等と比較して安いコストで上海ブラン
委員会とも自動車関連産業を中心とした中小
ドの製品を製造・販売できる。
企業の進出を歓迎している。例えば、自動車
部品メーカーが新規進出した場合、現状では
3.中小企業の進出を歓迎する姿勢
必ずしも現地セットメーカーへの販路拡大は
上海市内では、すでに数多くの日系企業が
容易ではない。しかしながら、対外経済委員
進出していること、未使用の工業用地に限り
会では、現地セットメーカーの現地調達比率
があることから、大企業の進出を優先し中小
を向上させ、現地に進出した外資系部品メー
企業を歓迎しない工業区もあるようである。こ
カーの受注を支援する施策を計画しているこ
れに対し嘉定区の場合は、嘉定工業区北区や
とも、中小企業の進出を歓迎していることの
上海国際自動車城産業園区等にこれから大規
一つの表れと言えよう。
98
信金中金月報 2005.8
調 査
第120回全国中小企業景気動向調査
(2005年4∼6月期実績・7∼9月期見通し)
4∼6月期業況は2四半期ぶりの小幅改善
【特別調査−後継者問題について】
信金中央金庫
総合研究所
調査の概要
1.調査時点:2005年6月1日∼7日
2.調査方法:全国各地の信用金庫営業店の調査員による、共通の調査表に基づく「聴取り」調査
3.標 本 数:16,000企業(有効回答数13,834企業・回答率86.5%)
4.分析方法:各質問項目について、
「増加」
(良い)−「減少」
(悪い)の構成比の差=判断D.I.に基づく分析
(概 況)
1.05年4∼6月期(今期)の業況判断D.I.は△18.9、1∼3月期(前期)比3.0ポイントのマイナ
ス幅縮小と、2四半期ぶりの小幅改善となった。また、収益面でも、前年同期比売上額およ
び同収益判断D.I.がそれぞれ△12.7、△17.3と、ともに3四半期ぶりの改善となった。また、
設備投資実施企業割合も小幅ながら3四半期ぶりに上昇し19.9%となった。なお、業種別の
業況判断D.I.では、建設業が2四半期連続で悪化したものの、それ以外の5業種では改善とな
った。
2.05年7∼9月期(来期)の予想業況判断D.I.は△15.1と、今期実績比3.8ポイントの改善見通
しとなっている。例年の7∼9月期見通しは季節的に改善が見込まれる傾向にあるが、今回の
改善幅は過去10年の平均(3.6ポイント)を若干であるが上回るものとなっている。
業種別天気図
時 期 2005年
1∼3月
業種名
総合
製造業
地区別天気図(今期分)
2005年 2005年
7∼9月
4∼6月 (見通し)
地 域
業種名
北
海
道
東
北
関
東
首
都
圏
北
陸
東
海
近
畿
中
国
四
国
九
州
北
部
南
九
州
総合
製造業
卸売業
卸売業
小売業
サービス業
小売業
サービス業
建設業
不動産業
建設業
不動産業
(この天気図は、景気指標を総合的に判断して作成したものです。)
好調←
→低調
調 査
99
なお、地域別には、東海を除く10地域で改
1.全業種総合
善となった。
○業況が2四半期ぶりに小幅改善
今期の業況判断D.I.は△18.9と、マイナス幅
○緩やかながら踊り場的局面の脱却を探る
が前期比3.0ポイント縮小し、2四半期ぶりの小
来期の予想業況判断D.I.は△15.1、今期実績
幅改善となった。また、前年同期比売上額お
比3.8ポイントの改善見通しとなっている。7∼
よび同収益の判断D.I.は、ともにマイナス幅が
9月期は季節的に前期比で改善が見込まれる傾
3.5ポイント縮小して△12.7、△17.3と、3四半
期ぶりの改善となった(図表1)。なお、前期
図表1 主要判断D.I.の推移
(D.I.)
0
比売上額および同収益判断D.I.も、季節要因な
△10
9.0ポイント縮小し△8.1、△14.0となった。
販売価格判断D.I.は2四半期ぶりにマイナス
△20
前年同期比売上額判断D.I.
△30
幅が縮小(価格が下降したとする企業の割合
△40
が減少)し、△9.1となった(図表2)。一方、
△50
2002.3 6
仕入価格判断D.I.も、価格が上昇したとする企
業の割合が2四半期ぶりに増加してプラス17.2
業況判断D.I.
9
12 03.3 6
3四半期ぶりの改善となった。一方、雇用面で
△40
前期比売上額判断D.I.
傾向値
2000.6
01.6
02.6
03.6
図表3 設備投資の実施企業割合、資金繰り、
借入難易度、人手過不足判断D.I.の推移
(%)
25
(D.I.)
10
人手過不足判断D.I.(右目盛)
設備投資の実施企業割合(左目盛)
19.9
20
△ 4.8
15
10
借入難易度判断D.I.(右目盛)
5
して全6業種中最も厳しいものとなっている。
0
2002.3 6
信金中金月報 2005.8
△10
△15.1
況判断D.I.の水準では小売業の△33.3が依然と
100
0
△ 4.4
改善した。改善幅では不動産業の10.2ポイント
ビス業の6.8ポイントが続いている。また、業
(時期)
05.6
04.6
(備考)傾向値とは5期分の移動平均値
連続で悪化したものの、それ以外の5業種では
が最大で、これに卸売業の7.0ポイント、サー
△ 8.1
△ 9.1
△20
△30
業種別の業況判断D.I.は、建設業が2四半期
(時期)
12 05.3 6
前期比売上額判断D.I.
また、資金繰り判断D.I.は△15.1と、こちらも
表3)。
9
販売価格判断D.I.
設備投資実施企業割合は前期比0.8ポイント
と、人手不足感は2四半期連続で弱まった(図
12 04.3 6
(D.I.)
0
△10
は、人手過不足判断D.I.が△4.4(前期は△6.5)
9
図表2 前期比売上額、販売価格判断D.I.の推移
(前期は13.7)となった。
上昇して19.9%と、3四半期ぶりに増加した。
△12.7
△17.3
△18.9
前年同期比収益判断D.I.
どから前期に比べマイナス幅がそれぞれ12.5、
△20
資金繰り判断D.I.(右目盛)
9
12 03.3 6
9
12 04.3 6
9
△30
△40
12 05.3 6(時期)
向にあるが、今回の改善幅は過去10年の予想
ント改善し、△2.7、△10.6となった。
値の平均改善幅(3.6ポイントの改善)を若干
であるが上回っており、緩やかではあるが踊
○設備投資実施企業割合は3期ぶり上昇
り場的局面の脱却を探るものとなっている。
設備投資実施企業割合は、前期の22.5%から
また、予想前期比売上額判断D.I.は△3.7、同
0.5ポイント上昇し23.0%と、3四半期ぶりの増
収益判断D.I.は△8.9と、それぞれ今期実績比
加となった。一方、人手過不足判断D.I.は前期
で4.4、5.1ポイントの改善見込みとなっている。
の△7.3から△5.2と前期に引き続き不足感がや
なお、業種別の予想業況判断D.I.は小幅悪化
や緩和した。また、残業時間判断D.I.は前期の
を見込む不動産業以外の5業種で、また地域別
△1.6から△2.3となり、前期に引き続きマイナ
には四国と南九州を除く9地域で、それぞれ今
ス幅(減少超)が拡大した。
期実績比で改善を見込んでいる。
販売価格判断D.I.は、デフレ収束傾向が2年
ぶりに足踏み状態となった前期の△7.3(前々
2.製造業
期△5.0)から今期は△5.7と再びマイナス幅
○業況は小幅な改善
(低下超)が縮小した。また、原材料(仕入)
今期の業況判断D.I.は△13.2、前期比2.0ポイ
価格判断D.I.もプラス29.5(前期26.3)と今期
ントのマイナス幅縮小となった。例年4∼6月
は上昇となった。ちなみに「経営上の問題点」
期は季節要因から改善がみられるが、今回の
として「原材料高」を挙げる企業の割合はや
改善幅は過去10年の平均である3.6ポイントに
や上昇となった(前々期23.2%、前期23.1%、
比べてやや小幅にとどまっている。
今期24.0%)
。資金繰り判断D.I.は△12.3(前期
また、前年同期比売上額および同収益の判断
は△15.6)と、やや改善した。
D.I.は、それぞれ、0.9、1.5ポイントマイナス幅
が縮小して△7.1、△13.1となり、前期までの改
善一服から小幅ながら改善に転じた(図表4)
。
なお、前期比の売上額および同収益判断D.I.
は、季節要因もあってそれぞれ13.5、9.2ポイ
(D.I.)
10
中、悪化8業種に対して改善13業種、横ばい1
業種と過半の業種で改善となった(図表5)。
目立った。
素材型業種は7業種中6業種で改善した。水
0
前年同期比収益
△ 7.1
△13.1
△13.2
△10
前年同期比売上額
準は低いものの皮製品の改善が目立ったほか、
鉄鋼が引き続きプラス水準を維持している。
△30
業況
△40
△50
2002.3 6
今期の業種別業況判断D.I.は、製造業22業種
とりわけ、素材型、消費財型などでの改善が
図表4 製造業 主要判断D.I.の推移
△20
○過半の業種で改善
9
12 03.3 6
9
12 04.3 6
部品加工型業種では金属プレスと金属製品
9
(時期)
12 05.3 6
が小幅ながら悪化となったが、プラスチック
調 査
101
は7.0ポイントの改善となった。
善した。特に、大メーカー型が依然として8.3
建設関連型業種では窯業・土石が改善し、木
と7四半期連続でプラス水準を維持している。
材、建設金属は小幅の、家具は大幅なそれぞ
輸出主力型の業況判断D.I.の改善幅が20.8ポ
れ悪化となった。
イントと内需主力型の改善幅0.8ポイントに比
機械器具型業種は一般機械が小幅の、電気
べて大きく、D.I.の水準でも輸出主力型が19.0
機械が大幅な悪化となる一方、輸送用機器、精
(内需型△14.0)と内需型に比べ高い状況が続
密機械が改善した。特に、これまで好調な輸
送用機器は22.5と製造業の中で最も高いプラス
水準となった。
いている。
従業員規模別の業況判断D.I.は、50∼99人層
を除きいずれの従業員規模においても改善し
消費財型業種は衣服がやや悪化したほかは、
たが、従業員規模間の格差はやや拡大した。ち
3業種で改善した。特に、食料品、玩具・スポ
なみに従業員規模別の業況判断D.I.の水準は、
ーツは比較的大幅な改善となった。
1∼19人が△19.6、20∼49人が△6.1、50∼99人
が△4.2、100人以上は5.1となっている。
○輸出主力型が大幅な改善
販売先形態別の業況判断D.I.は、いずれも改
○東北、首都圏を除き改善
地域別の業況判断D.I.は、東北、首都圏で若
図表5 業種別業況判断D.I.の推移
△50 △40 △30 △20 △10
0
10
(D.I.)
20 30
繊維
化学
皮製品
干悪化となったほかは全地域で改善した。特
に、北陸、四国、九州北部では2ケタの改善と
なった。水準では九州北部が△3.1、近畿が△
3.8と比較的小さなマイナスにとどまっている
素材型 ゴム
鉄鋼
非鉄金属
紙・パルプ
プラスチック
部 品
金属製品
加工型
金属プレス・メッキ
のに対し、北海道、東北のマイナス幅は30台
と大きくなっている(図表6)。
図表6 地域別業況判断D.I.の推移
窯業・土石
△40
建 設 建設建築用金属
関連型 木材・木製品
北海道
家具・装備品
関 東
一般機械
首都圏
機 械 電気機械
器具型 輸送用機器
中 国
●前期(2005年1∼3月期)⃝今期(2005年4∼6月期)
102
信金中金月報 2005.8
0
(D.I.)
10
東 海
近 畿
全 業 種 平 均
△10
北 陸
衣服その他
出版・印刷
△20
東 北
精密機械
消 費 食料品
財 型 玩具・スポーツ
△30
四 国
九州北部
南九州
全地域平均
●前期(2005年1∼3月期)⃝今期(2005年4∼6月期)
○業況は改善予想
○15業種中12業種が改善
来期の予想業況判断D.I.は△8.7、今期実績
業種別の業況判断D.I.は、衣服、鉱物金属・
比4.5ポイントの改善を見込んでいる。この改
燃料、建材で悪化したものの、15業種中12業
善幅は過去10年の平均(3.4)に比べてやや大
種で改善した。地域別では、北海道と北陸を
きいといえる。予想前期比売上額判断D.I.は
除くすべての地域で改善した。特に、南九州
1.3、同収益判断D.I.は△5.9と、それぞれ過去
の水準が△4.9まで改善したのが目立った。
10年の平均改善幅(3.9、3.3)を上回る今期実
績比4.0、4.7ポイントの改善を見込んでいる。
○業種により改善・悪化まちまち
業種別にも22業種中18業種で改善ないし横ば
来期の予想業況判断D.I.は△13.9と、今期実
いと見込まれている。特に、機械器具型では4
績比で3.6ポイントの小幅な改善を見込んでい
業種すべてがプラス水準を予想している。地域
る。業種別には、15業種中8業種で改善、2業
別にも11地域中8地域で改善予想となっている。
種で横ばい、5業種で悪化が見込まれており、
業種によりまちまちとなっている。地域別で
3.卸売業
は、九州北部でプラスに転じる見通しが示さ
○緩やかな改善傾向が継続
れている。
今期の業況判断D.I.は△17.5と、マイナス幅
が前期比7.0ポイント縮小した。前年同期の改
善幅(9.4ポイントのマイナス幅縮小)と比べ
4.小売業
○業況は小幅ながら改善
若干小幅な改善となったが、改善傾向が続い
今期の業況判断D.I.は△33.3と、前期比3.1ポ
ている。前年同期比売上額判断D.I.は、マイナ
イントマイナス幅が縮小し、小幅ながら改善
ス幅が3.6ポイント縮小し△11.7となった。前
した。前年同期比売上額判断D.I.は△25.7、同
年同期比収益判断D.I.も、マイナス幅が6.6ポ
収益判断D.I.は△29.3と、それぞれ前期比4.8ポ
イント縮小し△12.2となった (図表7)。
イント、同3.9ポイントマイナス幅が縮小した
(図表8)。
図表7 卸売業 主要判断D.I.の推移
図表8 小売業 主要判断D.I.の推移
(D.I.)
0
(D.I.)
△20
前年同期比売上額
△10
△20
△11.7
△12.2
△17.5
前年同期比売上額
前年同期比収益
△30
△40
業況
△25.7
△29.3
△33.3
△30
前年同期比収益
業況
△40
△50
△50
△60
2002.3 6
9
12 03.3 6
9
12 04.3 6
9
(時期)
12 05.3 6
△60
2002.3 6
9
12 03.3 6
9
12 04.3 6
9
(時期)
12 05.3 6
調 査
103
○13業種中10業種で改善または横ばい
業種別の業況判断D.I.は、13業種中、医薬
品・化粧品、燃料、スポーツ用品・玩具等を
除く10業種で、改善または横ばいとなった。地
図表9 サービス業 主要判断D.I.の推移
(D.I.)
△10
前年同期比売上額
△16.3
△17.7
△19.9
△20
前年同期比収益
業況
△30
域別では、11地域中7地域で改善、4地域で悪
△40
化となった。なかでも南九州では、前期比15
ポイント超の大幅な改善となり、関東、近畿
△50
2002.3 6
とともに△20台の水準となっている。従業員
○全業種で業況が改善
規模別では、1∼4人が△41.3であるのに対し、
9
12 03.3 6
9
12 04.3 6
9
(時期)
12 05.3 6
業種別の業況判断D.I.は、8業種すべてで改
30人以上では△16.4と、依然として規模により
善した。なかでも情報サービス・調査・広告
大きな開きがある。
はプラスに転じている。また、地域別の業況
判断D.I.は、関東でマイナス幅が前期比7.7ポ
○業種、地域ともに改善傾向
イント拡大したものの、他の地域ではすべて
来期の予想業況判断D.I.は△29.2と、今期実
マイナス幅が縮小した。さらに、従業員規模
績比4.1ポイントの改善を予想している。また、
別では、全階層でマイナス幅縮小となった。
業種別では、13業種中9業種が改善または横ば
いの見通しとなっている。なかでも木材・建
○小幅な改善にとどまる見込み
築材料が比較的大幅な改善を見込んでいる。地
来期の予想業況判断D.I.は△16.8と、今期実
域別では、九州北部、南九州で小幅な悪化を
績比0.9ポイントの小幅な改善を見込んでいる。
見込んでいるものの、他の9地域では改善を見
業種別では、8業種中5業種で改善または横ば
込んでいる。
いの見通しとなった。地域別では、11地域中
北海道、関東、首都圏、中国の4地域で改善の
5.サービス業
予想となっている。
○業況、売上、収益ともに改善
今期の業況判断D.I.は△17.7と、マイナス幅
が前期比6.8ポイント縮小した。また、前年同
6.建設業
○業況は2四半期連続でマイナス幅拡大
期比売上額判断D.I.は前期比5.7ポイントマイ
今期の業況判断D.I.は△25.0、前期比5.0ポイ
ナス幅縮小の△16.3、同収益判断D.I.は前期比
ントのマイナス幅拡大となった。しかし、前
3.1ポイントマイナス幅縮小の△19.9と、いず
年同期の水準(△32.2)と比較すればマイナス
れも改善した(図表9)。
幅が7.2ポイント縮小しており、長期的には改
善基調もみてとれる。なお、前年同期比売上
額判断D.I.と同収益判断D.I.は、マイナス幅が
104
信金中金月報 2005.8
図表10 建設業 主要判断D.I.の推移
図表11 不動産業 主要判断D.I.の推移
(D.I.)
△10
(D.I.)
10
0
△20
△30
3.4
△ 0.3
△ 0.7
△15.5
前年同期比売上額
△23.2
△25.0
業況
△10
△20
業況
前年同期比売上額
前年同期比収益
△40
△50
2002.3 6
△30
9
12 03.3 6
9
12 04.3 6
9
(時期)
12 05.3 6
△40
2002.3 6
前年同期比収益
9
12 03.3 6
9
12 04.3 6
9
(時期)
12 05.3 6
小幅縮小して、それぞれ△15.5、△23.2となっ
ントのマイナス幅縮小と、水面下ながら大幅
た(図表10)。
な改善となった。また、前年同期比売上額判
断D.I.はプラス転換して3.4、同収益判断D.Iは
○全11地域中8地域で業況が悪化
請負先別の業況判断D.I.では、官公庁向けが
△0.3と、ともに前期比10ポイント前後の大幅
な改善となった(図表11)。
△38.5、前期比9.9ポイントの大幅な悪化とな
った。また、地域別では、全11地域のうち北海
○全11地域中4地域で業況がプラス転換
道などで持ち直す動きもみられたものの、東海
従業員規模別の業況判断D.I.は、規模が大き
や中国など8地域で悪化となった。一方、従業
くなるにつれて良好感が強まる傾向にあり、10
員規模別の業況判断D.I.では、全般悪化するな
人以上の階層ではプラス転換している。特に
か、100人以上の階層で若干の改善がみられた。
40人以上では34.1と規模間格差が顕著となって
いる。なお、地域別の業況判断D.I.は、全地域
○全11地域中9地域で悪化幅縮小の予想
来期の予想業況判断D.I.は△18.2、今期実績
で改善した。とりわけ、関東、近畿、九州北
部、南九州の4地域ではプラスに転じている。
比6.8ポイントの悪化幅縮小を見込んでいる。
請負先別では、官公庁向けが20ポイント以上
○南九州など3地域でプラス水準を見込む
の大幅な悪化幅縮小を見込んでいる。また、地
来期の予想業況判断D.I.は△2.5、今期実績
域別では、全11地域中8地域で悪化幅縮小見込
比1.8ポイントのマイナス幅拡大を見込んでい
みとなっているほか、残り3地域もほぼ今期並
る。地域別では、大半が悪化見通しではある
の水準を見込んでいる。
が、近畿、九州北部、南九州ではプラス水準
が維持される見通しである。従業員規模別で
7.不動産業
○業況は大幅改善
今期の業況判断D.I.は△0.7、前期比10.2ポイ
は、5∼9人でプラスに転じる見通しにあるも
のの、残りの階層では総じて前期水準を下回
る見通しとなっている。
調 査
105
特別調査
後継者問題について
○回答者(回答企業)の属性(経営組織およ
○社長(代表者)の高齢化が進む
び資本金規模)
社長(代表者)の年齢階層については、
「50
回答者(回答企業)の属性は、法人(株式
歳台」と「60歳台」の割合が高く、それぞれ
会社、有限会社、合名会社、合資会社など)が
34.1%、34.4%であった。一方、「20歳台・30
88.7%、個人事業主が11.3%となっている。資
歳台」の経営者は3.8%にとどまった。同一内
本金規模では、全体の40.0%を「1,000万円以
容について尋ねた第83回調査(96年1∼3月期)
上∼2,000万円未満」の階層が占めている(図
と比較すると、
「60歳台」と「70歳台以上」の
表12)。
合計が39.2%から47.2%へと上昇しており、こ
図表12 経営組織と資本金規模
(単位:%)
経営組織
資本金規模(法人)
法人(株式会
社、有限会社、
合名会社、合
300万円以上
個人事業主
300万円未満
満
資会社など)
全体
北海道
東北
関東
首都圏
地
北陸
域 東海
別 近畿
中国
四国
九州北部
南九州
従
業
員
規
模
別
業
種
別
106
1∼ 4人
5∼ 9人
10∼ 19人
20∼ 29人
30∼ 39人
40∼ 49人
50∼ 99人
100∼199人
200∼300人
製造業
卸売業
小売業
サービス業
建設業
不動産業
88.7
92.9
93.7
94.8
83.1
90.6
94.9
93.0
95.8
82.8
83.9
83.6
72.2
94.4
97.7
98.7
99.2
99.1
99.2
99.7
100.0
93.8
94.3
75.2
78.5
97.4
89.2
信金中金月報 2005.8
11.3
7.1
6.3
5.2
16.9
9.4
5.1
7.0
4.2
17.2
16.1
16.4
27.8
5.6
2.3
1.3
0.8
0.9
0.8
0.3
0.0
6.2
5.7
24.8
21.5
2.6
10.8
5.5
2.9
5.6
3.9
8.0
5.9
3.1
2.1
3.6
6.7
6.6
10.7
13.0
5.6
2.8
0.9
1.1
0.5
0.2
0.0
0.8
4.9
3.4
10.6
6.6
2.1
6.8
1,000万円以上 2,000万円以上
∼1,000万円未 ∼2,000万円未 ∼5,000万円未 5,000万円以上
満
27.5
19.9
26.8
24.5
39.3
21.2
15.4
14.1
20.9
33.9
32.0
39.8
49.5
35.9
20.7
13.8
8.3
7.4
2.9
1.4
0.8
25.7
21.2
43.4
34.7
16.7
26.9
満
40.0
39.1
33.7
35.2
40.0
39.1
40.9
48.0
38.2
35.5
38.9
32.0
33.0
46.6
50.2
47.0
43.6
33.7
26.3
14.9
8.3
41.0
48.3
33.7
39.0
32.6
48.9
18.5
27.6
24.9
23.6
8.7
24.0
25.8
24.2
25.6
17.7
15.2
14.3
3.7
10.0
23.0
32.1
32.8
34.0
38.4
33.0
19.8
18.7
19.2
9.1
12.8
34.8
11.2
8.5
10.5
9.0
12.8
4.0
9.9
14.7
11.6
11.7
6.1
7.3
3.2
0.8
1.8
3.4
6.2
14.2
24.3
32.1
50.7
70.2
9.6
7.9
3.2
7.0
13.7
6.2
の10年弱で高齢化が進んだ状況を読み取れる。
が36.9%と最多で、これに「まだ考えていない
また、現在の社長(代表者)が何代目である
(いまの社長(代表者)が若いなど)
」が29.3%
かについては、
「創業者」が42.6%と最多で、次
で続いている。ただ、
「候補者はいるが未決定
いで「二代目」が41.0%であった。ちなみに「創
(本人が承諾しないなど)」と「候補者が見当
業者」と回答した割合は小規模企業ほど高く、
たらない」も合わせて約30%と相当程度の水
従業員1∼4人では57.7%に達している(図表13)
。
準にあり、後継者難に直面する中小企業は少
なくないといえる。また、廃業予定、事業譲
○約3割の企業が後継者難に直面
渡希望などの事情から「後継者は不要」と考
後継者の決定状況については、「決定済み」
えている事業者も4.8%存在した。これを規模
図表13 社長の年齢階層と社長の代
(単位:%)
年齢階層
20歳台、
30歳台
地
域
別
全体
北海道
東北
関東
首都圏
北陸
東海
近畿
中国
四国
九州北部
南九州
従
業
員
規
模
別
1∼ 4人
5∼ 9人
10∼ 19人
20∼ 29人
30∼ 39人
40∼ 49人
50∼ 99人
100∼199人
200∼300人
製造業
業 卸売業
小売業
種
サービス業
別 建設業
不動産業
3.8
2.9
2.8
4.4
3.4
3.2
3.8
4.7
2.7
7.4
3.9
6.0
3.1
4.6
4.6
4.6
3.7
3.6
3.4
2.7
0.8
3.1
3.5
3.1
4.9
5.6
5.4
40歳台
14.9
14.8
16.5
18.4
11.9
12.8
17.7
16.7
17.2
12.8
16.6
18.0
12.0
15.3
16.4
17.1
17.9
14.7
18.4
16.0
19.8
14.8
14.5
13.7
15.0
17.9
13.1
50歳台
34.1
35.6
37.9
34.0
32.0
39.9
33.2
32.3
36.2
35.6
41.0
38.3
33.4
33.6
34.2
35.7
35.7
34.2
36.1
29.9
38.8
33.5
33.7
32.9
34.8
36.0
36.4
社長の代
60歳台
34.4
32.3
26.7
31.6
39.8
31.9
31.9
34.5
30.9
30.1
27.6
27.9
37.2
33.9
32.6
31.2
31.7
34.9
30.5
39.8
28.9
35.4
35.1
33.9
35.6
30.5
34.4
70歳台
以上
12.8
14.4
16.2
11.6
12.9
12.2
13.5
11.8
13.1
14.1
10.8
9.8
14.2
12.7
12.2
11.3
11.0
12.6
11.6
11.6
11.6
13.3
13.3
16.4
9.7
9.9
10.8
創業者
42.6
28.2
33.4
34.9
57.0
31.3
26.0
38.0
25.5
40.3
45.9
46.9
57.7
44.7
36.6
32.8
25.4
29.1
21.5
22.9
15.0
37.2
36.7
47.0
51.5
37.8
65.0
二代目
41.0
47.3
41.6
39.9
35.6
47.0
45.3
43.6
48.6
46.2
42.9
40.3
34.3
41.2
44.8
46.5
50.9
43.2
46.7
40.8
49.2
44.3
42.0
39.3
36.4
43.2
29.4
三代目
11.3
16.6
16.2
17.5
5.8
12.7
18.7
12.6
16.6
9.4
8.4
9.5
6.1
9.9
13.4
13.2
17.5
17.9
20.4
21.5
17.5
13.0
13.4
9.7
8.0
13.6
3.7
四代目
2.7
3.6
5.5
4.3
0.9
4.8
4.9
2.9
5.4
2.6
0.8
2.0
1.2
2.3
2.9
4.4
3.4
4.7
5.8
4.9
7.5
2.7
3.6
2.5
2.3
3.4
0.8
調 査
五代目
以上
2.4
4.3
3.3
3.5
0.7
4.2
5.1
2.8
3.9
1.5
2.0
1.4
0.8
1.9
2.3
3.1
2.8
5.0
5.6
9.9
10.8
2.8
4.2
1.5
1.9
2.0
1.2
107
別にみると従業員1∼4人(11.6%)で、業種別
役員、従業員」と「非同族の社外の人材」は
にみると小売業(8.3%)で、それぞれ高くな
合わせて15.0%にとどまった。回答割合は規模
っている。
の大きい企業ほど高く、従業員100∼199人で
後継者として希望する人材については、
「子
は24.7%、同200∼300人では24.1%となってい
供(娘婿を含む)・配偶者」が66.2%を占め
る(図表14)。
る。これに「その他同族者(兄弟、親戚など)
」
○承継に際しての最大の懸念材料は事業の将来性
を加えると77.3%に達し、全体の4分の3を超え
事業承継の際に想定される問題については、
る代表者(社長)が親族関係へのバトンタッ
「事業の将来性」と回答した企業の割合が71.8%
チを望んでいる状況である。一方、
「非同族の
図表14 後継者問題と希望する人材
(単位:%)
後継者について
地
域
別
全体
北海道
東北
関東
首都圏
北陸
東海
近畿
中国
四国
九州北部
南九州
従
業
員
規
模
別
1∼ 4人
5∼ 9人
10∼ 19人
20∼ 29人
30∼ 39人
40∼ 49人
50∼ 99人
100∼199人
200∼300人
製造業
業 卸売業
小売業
種
サービス業
別 建設業
不動産業
108
後継者決
候補者有
定済
未決定
36.9
35.1
41.3
41.1
32.9
42.0
40.7
39.5
39.6
39.5
33.1
38.6
31.1
40.4
41.5
38.9
37.0
39.5
40.1
39.2
35.0
39.2
38.0
36.1
33.9
36.5
31.2
21.7
23.1
22.4
24.5
17.1
21.8
21.7
26.4
27.6
25.3
26.8
23.8
14.8
19.6
24.7
28.0
29.4
30.5
29.1
31.9
29.1
22.3
22.4
18.7
21.5
23.5
22.1
信金中金月報 2005.8
候補者無
7.2
5.8
6.0
5.1
9.0
5.9
6.7
5.6
5.5
6.9
12.0
5.3
10.0
7.6
5.7
5.8
5.0
4.7
3.4
2.4
2.6
6.9
7.0
7.8
8.1
6.4
7.7
希望する人材
考えてい
後継者不
子供・配
その他同
非同族役
非同族社
ない
要
偶者
族者
員従業員
外人材
29.3
32.0
27.2
27.6
32.9
29.4
27.5
26.3
25.1
25.1
23.9
27.7
32.4
30.0
26.7
26.7
28.2
24.6
27.1
26.4
33.3
27.4
28.6
29.1
30.1
32.0
35.1
4.8
4.0
3.0
1.7
8.1
0.8
3.5
2.3
2.1
3.2
4.1
4.6
11.6
2.3
1.3
0.5
0.4
0.8
0.3
0.0
0.0
4.1
4.0
8.3
6.4
1.6
4.0
66.2
56.5
68.2
69.5
65.7
71.9
66.3
65.6
62.4
77.7
67.5
69.7
71.3
68.2
65.6
63.0
61.3
57.6
59.1
50.2
50.0
64.3
62.7
74.0
64.1
64.7
67.9
11.1
12.5
7.8
8.5
11.6
9.1
10.9
12.1
13.1
9.1
12.0
11.2
8.6
10.8
12.2
12.6
13.3
12.8
14.0
16.2
17.6
12.5
13.7
7.9
9.8
11.2
9.2
11.0
16.8
13.4
10.1
9.5
10.0
11.3
13.2
9.5
6.1
10.3
10.3
5.6
10.3
14.0
13.8
14.0
17.6
16.5
20.5
19.4
11.4
12.7
6.6
12.8
13.3
10.5
4.0
4.4
3.5
5.0
4.3
2.5
4.0
3.5
5.3
2.5
2.8
3.3
3.6
4.3
3.2
4.7
4.9
6.2
3.1
4.2
4.6
3.9
4.2
3.1
4.4
4.3
4.6
その他
7.7
9.9
7.1
6.8
8.9
6.6
7.5
5.6
9.7
4.7
7.5
5.4
11.0
6.4
4.9
5.9
6.4
5.8
7.3
8.9
8.3
7.8
6.6
8.4
8.9
6.5
7.8
と最も高く、次いで「後継者の力量」が59.1%、
ほど高く、従業員200∼300人では前者が19.1%、
「取引先の信頼維持」が46.0%であった。
「事業
後者は10.4%となっている(図表15)。
の将来性」の回答割合を地域別にみると、東
○経営者に必要な資質のトップは企画力・実行力
海(67.9%)、近畿(67.8%)が低い反面、北
中小企業経営者に求められる能力・資質に
海道(75.9%)
、東北(75.3%)
、南九州(76.5%)
ついては、
「企画力・実行力」が6割弱、
「先見
で高くなっているのが特徴的である。
性・洞察力」
、
「実践力・行動力」
、
「統率力」が
「相続等の税金対策」や「個人資産(自社株
4割前後となった。
等)の取り扱い」といった贈与関連の項目に
これら4項目のうち「先見性・洞察力」
、
「実
目を転じると、回答割合は規模が大きい企業
図表15 事業継承の際に想定される問題点
事業の将
来性
地
域
別
全体
北海道
東北
関東
首都圏
北陸
東海
近畿
中国
四国
九州北部
南九州
従
業
員
規
模
別
1∼ 4人
5∼ 9人
10∼ 19人
20∼ 29人
30∼ 39人
40∼ 49人
50∼ 99人
100∼199人
200∼300人
製造業
業 卸売業
小売業
種
サービス業
別 建設業
不動産業
取引先と
の信頼関
係の維持
71.8
75.9
75.3
69.4
72.8
74.5
67.9
67.8
72.6
72.0
71.4
76.5
74.7
76.0
72.4
70.2
66.2
66.3
62.2
57.2
52.2
70.4
71.5
74.9
70.9
74.5
68.3
46.0
46.4
44.2
46.2
46.5
47.3
42.4
47.6
47.8
42.7
47.1
45.8
40.6
49.0
47.9
48.7
51.6
43.5
50.6
54.1
54.8
50.3
52.0
35.6
39.4
50.5
42.7
社員の不
平・不満
6.7
4.7
6.6
6.9
5.6
7.9
8.1
9.0
5.4
7.9
7.0
7.0
2.9
5.9
9.8
10.6
6.9
11.0
9.0
13.1
11.3
7.2
6.5
5.4
7.3
7.5
5.8
先代経営
者の影響
力
11.4
11.7
13.7
14.5
8.8
9.6
13.3
13.0
13.8
12.9
12.3
12.5
7.6
9.4
13.4
13.0
15.4
17.5
17.8
18.7
19.1
11.2
11.3
9.6
10.8
13.6
14.2
(単位:%)
後継者の
候補者の
借金の個
相続等の
個人資産
力量
不在
人保証
税金対策
取り扱い
7.4
6.9
8.5
8.5
4.8
5.5
11.8
10.2
6.6
10.7
6.6
6.5
5.6
6.2
8.0
7.6
8.8
11.9
10.4
11.3
19.1
7.8
7.0
7.3
6.7
6.5
9.0
5.4
6.0
6.8
7.4
2.9
3.4
10.3
8.7
3.9
4.7
3.6
2.7
2.4
3.8
5.8
7.2
9.2
11.5
10.8
15.2
10.4
6.2
6.0
3.4
4.7
6.0
6.6
59.1
64.9
64.8
67.2
47.8
59.2
66.3
67.4
70.3
60.3
63.8
62.4
49.5
60.1
62.9
66.2
65.8
66.4
70.3
67.1
73.0
59.6
59.7
53.8
56.8
64.1
63.7
7.7
6.9
5.6
6.5
9.2
5.7
7.3
5.8
7.2
8.2
8.3
9.3
11.5
7.5
5.9
4.9
6.1
3.7
3.7
2.1
0.9
6.9
6.8
9.7
8.3
6.1
9.8
12.9
12.4
18.1
16.3
8.7
17.2
17.6
14.7
17.7
14.9
10.9
11.1
8.7
15.2
15.0
15.6
16.0
16.5
13.5
12.7
10.4
13.0
14.4
9.4
12.9
15.2
14.3
その他
1.6
1.1
1.7
1.7
2.2
0.8
1.2
1.0
1.9
0.7
1.2
1.7
2.6
1.3
1.2
0.9
0.7
1.3
1.0
0.0
0.9
1.4
1.4
2.4
2.1
0.8
1.7
(備考)複数回答
調 査
109
践力・行動力」、「統率力」の回答割合は規模
業種別にみると、
「豊富な現場経験」がサービ
の大きい企業ほど高く、従業員200∼300人で
ス業(22.5%)と建設業(20.3%)で、
「自社、
はそれぞれ53.4%、61.2%、47.4%となってい
業界固有の技術に関する知識」が製造業
る。一方、
「企画力・実行力」での規模間格差
(21.7%)でそれぞれ高くなっているのが特徴
は小幅なものとなっている。
的である(図表16)。
経験・知識に関連した項目への回答状況を
図表16 後継者に必要な資質
地
域
別
全体
北海道
東北
関東
首都圏
北陸
東海
近畿
中国
四国
九州北部
南九州
従
業
員
規
模
別
1∼ 4人
5∼ 9人
10∼ 19人
20∼ 29人
30∼ 39人
40∼ 49人
50∼ 99人
100∼199人
200∼300人
製造業
業 卸売業
小売業
種
サービス業
別 建設業
不動産業
販売企画
従業員
実行力
統率力
58.5
60.5
60.5
58.6
57.8
58.1
58.4
58.2
61.2
57.3
60.4
57.5
58.1
62.3
58.6
58.3
56.4
56.3
56.5
56.3
44.8
56.4
65.4
63.4
51.9
53.4
64.7
37.4
35.3
38.7
39.1
31.6
35.9
45.9
45.2
41.9
39.2
33.4
35.0
20.2
37.5
47.2
51.8
50.6
50.3
51.9
51.4
47.4
39.6
38.2
28.1
41.2
45.6
26.1
(備考)複数回答
110
信金中金月報 2005.8
(単位:%)
取引先等
市場動向
経営理念
との交渉
の先見性
・実践力
力
等
・行動力
22.7
21.9
22.6
23.1
23.2
22.0
18.9
23.7
26.4
25.6
23.3
20.0
21.4
24.8
25.5
23.6
21.9
20.5
19.8
18.9
13.8
24.5
24.6
16.6
17.4
26.4
27.7
43.4
50.5
46.6
48.1
36.6
44.8
49.0
45.0
41.3
48.9
46.1
51.2
42.8
42.8
42.0
42.1
41.6
48.7
46.1
51.4
53.4
41.9
46.8
46.1
38.1
39.0
54.7
38.1
44.4
43.8
46.5
28.4
46.5
47.6
42.1
46.7
34.7
36.0
40.5
28.9
35.3
39.0
44.3
48.3
51.3
54.8
55.9
61.2
38.9
40.1
33.0
35.9
44.1
35.8
財務関連
IT関連知
知識
識
16.1
18.9
22.9
18.2
11.3
19.7
18.6
17.3
18.5
13.9
19.1
20.8
12.3
16.0
18.1
19.0
18.8
22.1
19.3
16.1
11.2
15.4
18.1
15.0
15.1
18.1
15.8
8.4
10.0
9.1
10.2
6.8
10.8
8.0
7.8
10.6
11.9
8.0
12.2
9.3
10.0
7.8
7.8
8.5
5.1
4.9
6.3
6.0
7.4
7.8
9.7
7.8
9.1
10.3
技術知識
15.4
14.2
16.7
16.1
15.0
13.5
15.7
16.8
15.6
15.4
15.3
14.2
15.3
14.2
16.5
15.5
16.4
13.9
15.5
18.2
19.8
21.7
9.4
9.6
16.4
14.7
10.4
豊富な現
場経験
17.8
15.5
13.0
13.9
22.4
12.1
13.1
15.8
14.7
17.4
18.5
21.3
24.3
19.3
15.4
13.0
12.0
9.9
8.3
6.6
12.1
15.4
14.1
19.7
22.5
20.3
19.3
その他
0.9
0.7
1.0
0.4
1.5
0.4
0.5
0.6
0.8
0.5
0.6
0.3
1.9
0.5
0.4
0.2
0.4
0.7
0.6
0.0
0.0
0.8
0.6
1.5
1.5
0.2
0.7
信 金 中 金 だ よ り 信金中央金庫総合研究所活動状況(6月)
1.レポート等の発行
発行日
05.6.1
05.6.8
05.6.15
レポート分類
内外金利・為替見通し
貿易投資相談ニュース
内外経済・金融動向
05.6.15
05.6.22
アジア業務室情報
産業企業情報
通巻
タ
イ
ト
ル
17-3 ―
122 ―
17-2 設備投資は中期的にも上昇局面
―中小企業、非製造業にも回復のすそ野が広がる―
17-2 中国東北地域の投資環境―東北3省の現況―
17-1 地域貢献としてのNPO・コミュニティビジネス支援
―創業支援における新たな対象として―
執 筆
斎藤大紀
―
角田匠
者
佐藤克己
澤山弘
2.講座・講演・放送等の実施
実施日
05.6.1
種類
タ イ ト ル
講座 信用金庫の使命と役割
05.6.1
講座
05.6.2
05.6.2
05.6.2
∼6.4
05.6.6
05.6.7
05.6.7
∼6.9
05.6.8
講座・講演会・番組名称 場所・放送局
横浜信用金庫・信金中 神奈川大学
央金庫寄付講座
中小企業と信用金庫の日常的リレー
ションシップとその機能強化
講演 最近の経済・金融情勢について
川崎信用金庫仲町台
支店長 中野雅之氏
放送
講演
青木武
藤津勝一、
加藤要一、
里田雄俊
CRD協会 引馬滋氏
篠崎幸弘
藤津勝一、
加藤要一、
里田雄俊
長山宗広
講座
講座
講演
講演
川崎信用金庫・信金中 専修大学
央金庫寄付講座
SEC(西京経営者研究会) 西京信用金庫
練馬支部講演会
アメリカの銀行の支店について
ラジオ深夜便
NHKラジオ
中小企業経営改善支援実務研修
中小企業経営改善支援 天草信用金庫
実務研修
中小企業金融とCRD
信金中央金庫寄付講座 慶應義塾大学
中国における金融取引
投資セミナー
横浜信用金庫
中小企業経営改善支援実務研修
中小企業経営改善支援 千葉信用金庫
実務研修
足立成和信用金庫
商店街活性化の考え方および活性化 商店街活性化勉強会
事例
講 師 等
横浜信用金庫総合
企画部 上席専門役
中島久氏
05.6.8
講座
リレーションシップバンキングの
機能強化計画
05.6.8
講座
中小企業経営者からみた中小企業金融 川崎信用金庫・信金中 専修大学
央金庫寄付講座
05.6.10
∼6.12
05.6.13
講演
中小企業経営改善支援実務研修
05.6.14
05.6.14
講演
講演
05.6.14
∼6.15
05.6.14
∼6.15
05.6.15
講演
05.6.15
講座
講座
講演
講座
横浜信用金庫・信金中 神奈川大学
央金庫寄付講座
斎藤大紀
横浜信用金庫
総合企画部
調査役 高橋一雄氏
川崎信用金庫取引先
(株)神座 代表取締役
神座磯男氏
中小企業経営改善支援 日本海信用金庫 藤津勝一、
加藤要一、
実務研修
里田雄俊
わが国の中小企業金融の全体像と
信金中央金庫寄付講座 慶應義塾大学
慶應義塾大学経済学部
信用保証の経済分析
吉野直行教授
温泉旅館経営改善支援について
業種別研究会
新井信用金庫
長山宗広
個人情報保護法について
個人情報保護法に関す 大阪東信用金庫 間下聡
る勉強会
中国ビジネスの成功・失敗事例「中国市 中国ビジネスセミナー リーガルロイヤ 篠崎幸弘
場における中小企業のビジネスチャンス」
ルホテル小倉
中小企業経営改善支援実務研修
中小企業経営改善支援 高崎信用金庫
藤津勝一、
加藤要一、
実務研修
里田雄俊
横浜信用金庫融資部
創業・新事業支援に対する取組み
横浜信用金庫・信金中 神奈川大学
副調査役 野田淳嗣氏
央金庫寄付講座
創業・新規事業支援の概要
川崎信用金庫・信金中 専修大学
鉢嶺実
央金庫寄付講座
信金中金だより
111
実施日
05.6.16
種類
タ イ ト ル
講演 中小企業経営改善支援
05.6.17
∼6.18
05.6.20
講演
中小企業経営改善支援実務研修
05.6.24
講演
05.6.25
∼6.26
05.6.27
05.6.28
講演
05.6.21
∼6.23
05.6.22
05.6.22
05.6.29
05.6.29
05.6.29
∼6.30
05.6.30
講座・講演会・番組名称 場所・放送局
中小企業経営改善支援 ぐんま信用金庫
勉強会
中小企業経営改善支援 結城信用金庫
実務研修
信金中央金庫寄付講座 慶應義塾大学
講 師
藤津勝一
最近の中国ビジネスのポイント
―人民元、流通業開放、優遇政策、
電力、物流等10の視点から直言!
東京二水会
篠崎幸弘
講演
中小企業経営改善支援実務研修
講座
政策金融改革について
中小企業経営改善支援 二戸信用金庫
実務研修
信金中央金庫寄付講座 慶應義塾大学
等
藤津勝一、
加藤要一、
里田雄俊
金融広報中央委員会
講座 家計からみた日本の金融システム
会長 増永嶺氏
講演 中小企業経営改善支援実務研修
中小企業経営改善支援 大田原信用金庫 藤津勝一、
加藤要一、
実務研修
里田雄俊
横浜信用金庫融資部
講座 経営改善支援の取組み
横浜信用金庫・信金中 神奈川大学
調査役 久保田明良氏
央金庫寄付講座
講座 川崎信金における創業・新規事業支援 川崎信用金庫・信金中 専修大学
川崎信用金庫融資部
の概要
央金庫寄付講座
次長 佐伯昇氏
SEC(西京経営者研究会)
大泉支部講演会
講座 新しい中小企業金融への取組み
横浜信用金庫・信金中
央金庫寄付講座
講座 中小企業の早期事業再生の概要
川崎信用金庫・信金中
央金庫寄付講座
講演 温泉旅館の経営改善について
企業支援にかかる情報
交換会
放送 アメリカにおける人脈の重要性について ラジオ深夜便
中小企業経営への示唆について
信金中央金庫
八重洲別館
西京信用金庫
藤津勝一、
加藤要一、
里田雄俊
中小企業金融公庫
総裁 水口弘一氏
藤津勝一
専修大学
横浜信用金庫融資部
副専門役 富沢雅樹氏
藤津勝一
米子信用金庫
長山宗広
NHKラジオ
青木武
神奈川大学
3.原稿掲載
発行日
05.6.10
112
タ
イ
ト
ル
最新中国事情⑩
「反日デモはなにを意味するのか」
信金中金月報 2005.8
掲 載 誌
信用金庫6月号
発
行
全国信用金庫協会
執筆者
黒岩達也
統 計
1.信用金庫統計
(1)信用金庫の主要勘定概況 ………113
(2)信用金庫の店舗数、合併等 ……117
(3)信用金庫の預金種類別預金、地区別預金 …118
(4)信用金庫の預金者別預金 ………119
(5)信用金庫の科目別貸出金、地区別貸出金 …120
(6)信用金庫の貸出先別貸出金 ……121
(7)信用金庫の余裕資金運用状況 …122
2.金融機関業態別統計
(1)業態別預貯金等 …………………123
(2)業態別貸出金 ……………………124
統計資料の照会先:信金中央金庫 総合研究所
Tel 03-3563-7541 Fax 03-3563-7551
(凡 例)
1.金額は、単位未満切捨てとした。
2.比率は、原則として小数点以下第1位までとし第2位以下切捨てとした。
3.記号・符号表示は次のとおり。
〔 0 〕ゼロまたは単位未満の計数 〔―〕該当計数なし 〔△〕減少または負
〔…〕不詳または算出不能 〔*〕1,000%以上の増加率
〔p〕速報数字
〔r〕訂正数字 〔b〕b印までの数字と次期以降との数字は不連続
4.地区別統計における地区のうち、関東には山梨、長野、新潟を含む。東海は静岡、愛知、岐阜、三重の4
県、九州北部は福岡、佐賀、長崎の3県、南九州は熊本、大分、宮崎、鹿児島の4県である。
※ 信金中金総合研究所のホームページ(http://www.scbri.jp/)よりExcel形式の統計資料をダウンロードすることができます。
1.
(1)信用金庫の主要勘定概況
イ. 2005年4月末
○預 金
4月の全国信用金庫の預金は、月中1兆1,098億円、1.0%増と、前年同月(7,904億円、0.7%増)と同様に増加
した。
① 要求払預金は、年金振込金の滞留、預託金の受入れ、月末休日による残高高どまり等から、月中1兆1,944
億円、3.4%増と、前年同月(8,151億円、2.4%増)と同様に増加した。
② 定期性預金は、公金預金や預託金の受入れ等から、月中790億円、0.1%増と、前年同月(866億円、0.1%
増)と同様に増加した。
③ 外貨預金等は、月中1,636億円、26.3%減少した。
なお、2005年4月末の預金の前年同月比増減率は、2.1%増となった。
○貸出金
貸出金は、月中2,729億円、0.4%減と、前年同月(5,244億円、0.8%減)と同様に減少した。
① 割引手形は、月末休日による商手決済の翌月へのズレ込み等から、月中1,450億円、7.0%増と、前年同月
(518億円、2.3%減)の減少から増加となった。
② 貸付金は、住宅ローンの実行等がみられたものの、資金需要の減退に加え、地方公共団体向け融資の回収
が進んだこと等から、月中4,179億円、0.6%減と、前年同月(4,726億円、0.7%減)と同様に減少した。
なお、2005年4月末の貸出金の前年同月比増減率は、0.2%増となった。
統 計
113
○余資運用資産
余資運用資産は、月中1兆1,752億円、2.2%増と、前年同月(1兆2,758億円、2.6%増)と同様に増加した。
主な内訳をみると、預け金は、月中2兆3,188億円、11.6%増となった。
金融機関貸付等は、買入手形およびコールローンが減少したこと等から、月中1,634億円、66.1%減となった。
有価証券は、投資信託(601億円増)および短期社債(138億円増)等が増加したものの、国債(6,688億円減)
および社債(1,652億円減)等が減少したことから、月中8,804億円、3.0%減となった。
ロ.2005年5月末
○預 金
5月の全国信用金庫の預金は、月中6,270億円、0.5%減と、前年同月(1,734億円、0.1%減)と同様に減少した。
① 要求払預金は、年金振込金の流出、営業資金および決済資金のための流出、前月末休日による残高高どま
りの反動減等から、月中6,579億円、1.8%減と、前年同月(2,644億円、0.7%減)と同様に減少した。
② 定期性預金は、公金預金の受入れがみられたものの、要求払預金や他商品へのシフト、定期積金の満期流
出等から、月中56億円、0.0%減と、前年同月(858億円、0.1%増)の増加から減少となった。
③ 外貨預金等は、月中365億円、7.9%増加した。
なお、2005年5月末の預金の前年同月比増減率は、1.7%増となった。
○貸出金
貸出金は、月中4,320億円、0.6%減と、前年同月(2,751億円、0.4%減)と同様に減少した。
① 割引手形は、前月末休日による商手決済のズレ込みや、期日落込みの増加等から、月中2,365億円、10.7%
減と、前年同月(140億円、0.6%減)と同様に減少した。
② 貸付金は、住宅ローンの実行等がみられたものの、売上代金・工事代金による返済、地方公共団体向け融
資の回収等から、月中1,955億円、0.3%減と、前年同月(2,611億円、0.4%減)と同様に減少した。
なお、2005年5月末の貸出金の前年同月比増減率は、0.0%減となった。
○余資運用資産
余資運用資産は、月中1,252億円、0.2%減と、前年同月(1,782億円、0.3%増)の増加から減少となった。
主な内訳をみると、預け金は、月中2,733億円、1.2%減となった。
金融機関貸付等は、コールローンおよび買現先勘定が減少したことから、月中256億円、30.6%減となった。
有価証券は、国債(572億円増)、社債(346億円増)および投資信託(333億円増)等が増加したことから、
月中1,791億円、0.6%増となった。
114
信金中金月報 2005.8
信用金庫の主要勘定増減状況(2005年4月末)
(単位:百万円、%)
前 月 比 増 減
区
分
金
(小 切 手 ・ 手 形)
預
け
金
(信 金 中 金 預 け 金)
(譲 渡 性 預 け 金)
金 融 機 関 貸 付 等
金 融 機 関 貸 付 金
買
入
手
形
資
コ ー ル ロ ー ン
買
現 先 勘 定
債券貸借取引支払保証金
買 入 金 銭 債 権
金 銭 の 信 託
産 商 品 有 価 証 券
有
価
証
券
国
債
地
方
債
短
期
社
債
社
債
項
株
式
貸
付
信
託
投
資
信
託
外
国
証
券
そ の 他 の 証 券
目
小
計 貸
出
金
(月
中
平
残)
割
引
手
形
貸
付
金
手
形
貸
付
証
書
貸
付
当
座
貸
越
預 金 ・ 積 金
(月
中
平
残)
要
求 払 預 金
当
座
預
金
負
普
通
預
金
貯
蓄
預
金
通
知
預
金
債
別
段
預
金
納 税 準 備 預 金
定
期 性 預 金
定
期
預
金
項
定
期
積
金
外
貨 預 金 等
質
預
金
目 実
譲 渡 性 預 金
借
用
金
預
貸
率
残
現
員
勘
定
増
1,758,486
△
(
267,137 )
22,234,589
(
20,833,167 )
(
48,000 )
83,767
△
1,000
0
△
73,767
△
8,999
0
341,272
299,240
7,433
△
27,877,017
△
7,577,667
△
3,085,500
△
14,297
11,002,811
△
556,068
△
71
734,615
4,802,487
103,495
△
52,601,807
61,821,945
△
(△
61,581,765 )
2,200,551
59,621,393
△
6,877,323
△
49,834,876
2,909,193
△
108,542,347
(
107,548,947 )
36,275,191
2,844,529
31,243,808
1,265,294
△
164,018
△
714,608
△
42,932
71,809,114
64,866,298
6,942,816
△
458,040
△
108,275,210
118,476
525,239
56.8
(
(
(
(
(
会
会
員
勘
定
普 通 出 資 金
優
先 出 資 金
優 先 出 資 払 込 金
資
本 準 備 金
そ の 他 資 本 剰 余 金
利
益 準 備 金
特
別 積 立 金
前
期 繰 越 金
未 処 分 剰 余 金
土 地 再 評 価 差 額 金
株 式 等 評 価 差 額 金
処 分 未 済 持 分
自己優先出資払込金
自 己 優 先 出 資
高
△
5,864,662
589,905
57,390
0
40,699
0
358,224
4,302,656
6,896
324,135
186,173
0
1,419
0
0
△
△
△
△
減
額
増 減 率
前年同月比
増 減 率
157,714
△
8.2
(
(
56,644 )
26.9 )
2,318,865
11.6
(
(
5,739,198 )
38.0 )
(
(△
19,000 )
65.5 )
163,452
△ 66.1
0
0.0
90,700
△ 100.0
81,752
△ 52.5
8,999
―
△
0
―
27,029
8.6
△
31,394
11.7
△
432
△
5.4
△
880,432
△
3.0
668,842
△
8.1
60,591
△
1.9
13,898
*
165,265
△
1.4
△
57,060
△
9.3
0
0.0
△
60,105
8.9
4,104
0.0
6,783
△
6.1
1,175,258
2.2
272,906
△
0.4
(△
(△
316,711 )
0.5 )
145,029
7.0
417,935
△
0.6
314,551
△
4.3
△
34,806
0.0
138,190
△
4.5
△
1,109,819
1.0
(
(
646,057 )
0.6 )
1,194,418
3.4
127,015
4.6
1,295,772
4.3
10,707
△
0.8
△
83,771
△ 33.8
134,276
△ 15.8
△
387
0.9
79,018
0.1
△
159,483
0.2
80,464
△
1.1
△
163,617
△ 26.3
1,053,176
0.9
18,510
18.5
19,222
3.7
23,837
183
0
0
0
0
0
156
111,852
300,783
4
213,256
154
0
0
△
△
△
△
△
0.4
0.0
0.0
―
0.0
―
0.0
0.0
94.1
*
0.0
100.0
9.7
―
―
前
月中増減額
11.4
△
(△
31.4 )
7.8
(
6.8 )
(△
31.4 )
14.0
△
―
―
△
16.2
△
10.0
―
7.2
3.0
57.5
2.3
2.1
12.5
*
1.8
17.0
△
69.6
25.4
1.3
70.6
△
4.8
0.2
△
(△
0.2 )
0.6
△
0.1
△
7.4
△
1.6
△
4.7
△
2.1
(
1.8 )
7.7
19.9
△
8.0
4.1
△
5.8
△
17.0
9.0
△
0.4
0.1
5.8
△
1.7
△
2.0
65.4
△
19.8
3.1
2.3
31.6
―
2.6
△ 100.0
1.3
1.6
2.0
38.8
△
6.9
△ 100.0
29.7
―
―
△
△
△
年
同
25,697
△
(△
17,157 )
984,944
(
4,026,033 )
(△
21,000 )
144,076
△
0
60,000
△
94,075
△
9,999
0
58,391
35,608
1,560
365,163
52,836
67,246
100
168,254
69,665
△
0
20,600
129,471
3,680
△
1,275,893
524,456
△
(△
481,348 )
51,818
△
472,638
△
344,329
△
13,002
△
115,307
△
790,425
(
628,536 )
815,174
132,745
△
974,627
257
△
101,758
△
77,691
2,383
△
86,642
139,945
53,302
△
111,391
△
807,583
7,303
△
10,660
89,069
9,218
0
0
232
0
0
192
90,709
209,742
450
39,699
107
0
0
月
前年同月比
増 減 率
1.6
2.2
(
7.7 )
25.9 )
5.0
△
0.6
(△
25.9 )
0.5 )
( △ 25.7 )
23.0 )
66.2
△ 32.5
―
―
100.0
△ 100.0
59.7
6.3
―
44.9
―
△ 100.0
18.8
△ 27.9
13.0
20.4
9.7
△ 20.9
1.3
9.3
0.7
21.6
2.5
12.7
101.0
―
1.5
2.3
12.7
2.5
0.0
△ 82.3
3.6
△
0.9
2.8
10.4
5.7
0.9
2.6
4.3
0.8
△
0.6
(△
0.7 )
0.6 )
2.3
△
5.7
0.7
△
0.4
4.4
△
8.4
0.0
1.2
3.6
△
5.9
0.7
1.7
(
0.5 )
1.9 )
2.4
4.5
5.3
5.9
3.4
5.4
0.0
△
2.1
39.6
2.7
9.9
△ 12.7
5.7
0.5
0.1
0.5
0.2
1.1
0.7
△
4.3
19.8
△
3.3
0.7
1.7
9.2
86.9
2.4
△ 14.5
月中増減率
△
△
△
△
1.5
1.6
0.0
―
0.5
0.0
0.0
0.0
93.0
878.9
0.2
99.9
8.9
―
―
△
△
△
△
△
△
2.3
4.2
147.8
―
94.8
99.3
2.0
2.7
62.3
468.5
7.6
99.9
42.7
―
―
(備考)1.預貸率=貸出金/預金・積金×100(預金には譲渡性預金を含む。)
( 2.前年同月比増減率は、旧杵築信用金庫を調整して算出
統 計
115
信用金庫の主要勘定増減状況(2005年5月末)
(単位:百万円、%)
前 月 比 増 減
区
分
金
(小 切 手 ・ 手 形)
預
け
金
(信 金 中 金 預 け 金)
(譲 渡 性 預 け 金)
金 融 機 関 貸 付 等
金 融 機 関 貸 付 金
買
入
手
形
資
コ ー ル ロ ー ン
買
現 先 勘 定
債券貸借取引支払保証金
買 入 金 銭 債 権
金 銭 の 信 託
産 商 品 有 価 証 券
有
価
証
券
国
債
地
方
債
短
期
社
債
社
債
項
株
式
貸
付
信
託
投
資
信
託
外
国
証
券
そ の 他 の 証 券
目
小
計 貸
出
金
(月
中
平
残)
割
引
手
形
貸
付
金
手
形
貸
付
証
書
貸
付
当
座
貸
越
預 金 ・ 積 金
(月
中
平
残)
要
求 払 預 金
当
座
預
金
負
普
通
預
金
貯
蓄
預
金
通
知
預
金
債
別
段
預
金
納 税 準 備 預 金
定
期 性 預 金
定
期
預
金
項
定
期
積
金
外
貨 預 金 等
質
預
金
目 実
譲 渡 性 預 金
借
用
金
預
貸
率
残
現
員
勘
定
増
1,729,784
△
(△
147,451 )
21,961,239
△
(△
20,581,894 )
(
49,000 )
58,089
△
1,000
0
51,089
△
5,999
△
0
364,535
299,342
7,417
△
28,056,132
7,634,884
3,108,106
26,193
11,037,498
565,153
71
767,927
4,811,363
104,932
52,476,541
△
61,389,848
△
(△
61,219,040 )
1,963,997
△
59,425,851
△
6,646,408
△
49,837,062
2,942,381
107,915,269
△
(△
107,538,189 )
35,617,245
△
2,489,152
△
30,670,563
△
1,263,845
△
134,336
△
1,020,033
39,313
△
71,803,434
△
64,935,101
6,868,333
△
494,589
107,767,817
△
111,104
△
619,393
56.8
(
(
(
(
(
会
会
員
勘
定
普 通 出 資 金
優
先 出 資 金
優 先 出 資 払 込 金
資
本 準 備 金
そ の 他 資 本 剰 余 金
利
益 準 備 金
特
別 積 立 金
前
期 繰 越 金
未 処 分 剰 余 金
土 地 再 評 価 差 額 金
株 式 等 評 価 差 額 金
処 分 未 済 持 分
自己優先出資払込金
自 己 優 先 出 資
高
△
5,861,621
590,162
57,390
0
40,699
0
358,224
4,302,656
5,876
322,256
185,691
0
1,335
0
0
△
△
△
△
減
額
増 減 率
28,702
△
(△
119,686 )
273,350
△
(△
251,273 )
(
1,000 )
25,678
△
0
0
22,678
△
3,000
△
0
23,263
102
16
△
179,115
57,217
22,606
11,896
34,687
9,085
0
33,312
8,876
1,437
125,266
△
432,097
△
(△
362,725 )
236,554
△
195,542
△
230,915
△
2,186
33,188
627,078
△
(△
10,758 )
657,946
△
355,377
△
573,245
△
1,449
△
29,682
△
305,425
3,619
△
5,680
△
68,803
74,483
△
36,549
507,393
△
7,372
△
94,154
3,041
257
0
0
0
0
0
0
1,020
1,879
482
0
84
0
0
△
△
△
△
△
1.6
(△
44.8 )
1.2
(
1.2 )
(△
2.0 )
30.6
△
0.0
―
30.7
△
33.3
△
―
6.8
△
0.0
△
0.2
△
0.6
0.7
0.7
83.2
0.3
△
1.6
0.0
△
4.5
0.1
1.3
0.2
0.6
△
(△
0.5 )
10.7
△
0.3
3.3
△
0.0
1.1
△
0.5
(
0.0 )
1.8
12.4
1.8
0.1
△
18.0
△
42.7
8.4
0.0
△
0.1
△
1.0
△
7.9
0.4
6.2
17.9
0.0
0.0
0.0
―
0.0
―
0.0
0.0
14.7
0.5
0.2
―
5.9
―
―
(備考)1.預貸率=貸出金/預金・積金×100(預金には譲渡性預金を含む。)
( 2.前年同月比増減率は、旧杵築信用金庫を調整して算出
116
信金中金月報 2005.8
前年同月比
増 減 率
△
△
△
△
前
月中増減額
9.6
△
(△
0.3 )
6.3
(
5.4 )
(△
3.9 )
16.9
△
―
―
16.1
△
33.3
△
―
6.5
3.1
49.7
△
2.5
4.2
△
9.8
*
1.8
13.2
69.6
23.9
0.7
71.3
4.1
0.0
△
(△
0.2 )
9.5
△
0.3
△
7.2
△
1.6
△
4.0
1.7
△
(
1.7 )
6.6
△
8.9
△
7.1
△
4.1
△
5.4
△
2.1
1.3
△
0.6
0.0
5.9
△
8.6
1.7
△
34.8
27.4
3.1
2.1
31.6
―
2.0
100.0
1.3
1.6
27.0
41.3
7.1
100.0
28.2
―
―
△
△
△
年
同
1,117
△
(△
55,258 )
41,879
(
11,265 )
(△
19,000 )
3,534
△
0
0
2,534
△
1,000
△
0
22,143
522
2,751
△
121,082
91,453
△
87,831
0
29,626
24,109
0
34,326
36,052
592
178,224
275,148
△
(△
343,058 )
14,019
△
261,129
△
262,864
△
7,850
△
9,585
173,415
△
(
116,619 )
264,406
△
86,494
△
299,361
△
1,971
△
12,918
△
136,938
602
△
85,886
161,163
75,278
△
5,105
118,157
△
10,810
47,818
155
993
0
0
232
0
0
2,711
1,302
5,402
45
0
53
0
0
月
前年同月比
増 減 率
0.0
2.2
( △ 43.5 )
27.1 )
0.2
2.0
(
0.0 )
1.9 )
( △ 49.6 )
27.1 )
4.8
△ 32.7
―
△ 100.0
―
△ 100.0
3.9
△ 16.0
10.0
0.0
―
△ 100.0
6.0
△ 33.1
0.1
19.4
15.7
△ 34.6
0.4
8.2
1.2
20.8
3.2
13.6
0.0
―
0.2
0.7
5.0
8.9
0.0
△ 84.4
5.8
2.9
0.7
7.6
0.9
0.8
0.3
4.8
0.4
△
1.1
(△
0.5 )
0.6 )
0.6
△ 14.7
0.4
△
0.5
3.5
△
8.5
0.0
0.9
0.3
△
4.5
0.1
1.6
(
0.1 )
1.9 )
0.7
4.4
3.6
△
6.3
1.0
4.3
0.1
△
2.1
8.3
△ 14.9
15.8
75.3
1.5
△
6.1
0.1
0.4
0.2
0.9
1.0
△
4.2
1.1
△
4.5
0.1
1.7
15.0
62.4
10.9
△
9.4
月中増減率
△
△
△
△
0.0
0.1
0.0
―
0.5
0.0
0.0
0.0
19.2
2.3
0.0
0.0
4.8
―
―
△
△
△
△
△
2.4
4.1
147.8
―
96.0
99.3
2.0
2.9
8.5
*
3.2
―
44.3
―
―
1.
(2)信用金庫の店舗数、合併等
信用金庫の店舗数、会員数、常勤役職員数の推移
店
年 月 末
2001. 3
02. 3
03. 3
03. 9
12
04. 3
04. 5
6
7
8
9
10
11
12
05. 1
2
3
4
5
本 店
支 店
(信用金庫数)
371
7,842
349
7,781
326
7,673
321
7,595
314
7,513
306
7,471
306
7,460
306
7,452
304
7,438
304
7,427
304
7,398
303
7,365
301
7,346
301
7,347
301
7,344
299
7,329
298
7,312
298
7,309
298
7,301
舗
(単位:店、人)
数
出張所
267
270
264
258
266
282
282
281
274
271
273
268
270
270
269
272
268
271
276
常
会 員 数
合 計
8,480
8,400
8,263
8,174
8,093
8,059
8,048
8,039
8,016
8,002
7,975
7,936
7,917
7,918
7,914
7,900
7,878
7,878
7,875
r
8,941,138
8,981,084
9,001,391
9,058,720
9,083,334
9,091,805
9,106,748
9,112,262
9,113,379
9,116,103
9,121,880
9,124,839
9,129,343
9,136,429
9,139,656
9,144,344
9,134,309
9,139,669
9,144,928
常勤役員
2,804
2,734
2,557
2,488
2,455
2,396
2,387
2,385
2,380
2,379
2,373
2,372
2,360
2,358
2,355
2,351
r 2,342
2,340
2,336
勤
男 子
94,112
91,451
87,922
87,065
86,194
84,345
85,307
84,696
84,388
84,150
83,744
83,412
83,173
82,878
82,603
82,375
r 81,429
82,876
82,682
役
職
職
員
女 子
41,004
38,851
37,086
37,429
36,622
35,051
36,720
36,381
36,040
35,762
35,395
35,206
35,094
34,655
34,435
34,284
33,338
35,514
35,363
員
数
計
135,116
130,302
125,008
124,494
122,816
119,396
122,027
121,077
120,428
119,912
119,139
118,618
118,267
117,533
117,038
116,659
r 114,767
118,390
118,045
合
計
137,920
133,036
127,565
126,982
125,271
121,792
124,414
123,462
122,808
122,291
121,512
120,990
120,627
119,891
119,393
119,010
r 117,109
120,730
120,381
信用金庫の合併等
年 月 日
異
2003年 7 月 7 日 芝
東調布
2003年 7 月 7 日 一宮
愛北
2003年 7 月22日 東京東
小岩
2003年 7 月22日 赤穂
伊那
2003年10月20日 秋田
五城目
2003年10月20日 富山
射水
2003年10月20日 福岡ひびき
新北九州
2003年11月 4 日 能登
共栄
2004年 1 月13日 王子
太陽
2004年 1 月19日 直江津
高田
2004年 1 月19日 北伊勢
上野
2004年 2 月 9 日 高松
さぬき
2004年 2 月 9 日 鹿児島相互
川内
2004年 2 月16日 興能
(高浜信組)
2004年 3 月22日 金沢
福光
2004年 7 月12日 下関
豊浦
2004年 7 月20日 彦根
近江八幡
2004年10月12日 大阪
南大阪
2004年11月15日 大牟田
柳川
2004年11月22日 足利
小山
2005年 1 月 4 日 伊勢崎太田
2005年 2 月14日 北海
古平
2005年 2 月14日 阪奈
八光
2005年 3 月14日 (大分県信組) 杵築
動
金
庫
名
津島
門司
築上
荒川
日興
直方
新金庫名
芝
いちい
東京東
アルプス中央
秋田
富山
福岡ひびき
のと共栄
城北
上越
北伊勢上野
高松
鹿児島相互
興能
金沢
下関
滋賀中央
大阪
大牟田柳川
足利小山
アイオー
北海
大阪東
(大分県信組)
金庫数
325
323
322
321
320
319
315
314
311
310
309
308
307
307
306
305
304
303
302
301
301
300
299
298
異動の種類
合併
合併
合併
合併
合併
合併
合併
合併
合併
合併
合併
合併
合併
合併
合併
合併
合併
合併
合併
合併
名称変更
合併
合併
合併・解散
統 計
117
1.
(3)信用金庫の預金種類別預金、地区別預金
預金種類別預金
(単位:億円、%)
預金計
年 月 末
2001.
02.
03.
03.
3
3
3
9
12
04. 3
04. 5
6
7
8
9
10
11
12
05. 1
2
3
4
5
1,038,043
1,028,198
1,035,536
1,053,808
1,068,100
1,055,175
1,061,345
1,070,958
1,069,663
1,071,058
1,070,466
1,072,481
1,070,447
1,085,557
1,073,341
1,078,486
1,074,325
1,085,423
1,079,152
前年同月比
増 減 率
1.7
△ 0.9
0.7
2.1
1.9
1.8
1.6
1.5
1.8
1.3
1.5
2.0
1.4
1.6
1.6
1.6
1.8
2.1
1.7
要求払
230,205
297,903
312,842
322,502
336,074
328,610
334,117
341,198
337,982
338,902
340,543
344,680
343,476
355,831
342,412
349,189
350,807
362,751
356,172
前年同月比
増 減 率
7.3
29.4
5.0
4.6
4.8
5.0
4.4
4.9
6.5
4.7
5.5
6.9
5.0
5.8
5.5
5.4
6.7
7.7
6.6
定期性
801,008
723,681
716,192
726,178
727,873
720,951
722,676
724,892
727,453
727,436
725,012
723,529
722,149
725,305
726,009
724,527
717,300
718,091
718,034
前年同月比 外貨預金等 前年同月比
増 減 率
増 減 率
0.4
6,829 △ 20.0
△ 9.6
6,613 △ 3.1
△ 1.0
6,500 △ 1.7
1.2
5,127 △ 8.1
0.7
4,152 △ 13.0
0.6
5,614 △ 13.6
0.4
4,551 △ 4.5
△ 0.0
4,866
5.1
△ 0.1
4,227 △ 5.8
△ 0.1
4,719
8.8
△ 0.1
4,910 △ 4.2
△ 0.0
4,270 △ 4.8
△ 0.1
4,821
2.5
△ 0.3
4,419
6.4
△ 0.1
4,919
18.9
△ 0.1
4,769
17.5
△ 0.4
6,216
10.7
△ 0.4
4,580
1.7
△ 0.6
4,945
8.6
実質預金
1,033,760
1,024,192
1,032,788
1,051,883
1,065,180
1,052,971
1,059,865
1,069,538
1,067,069
1,069,717
1,068,785
1,070,047
1,069,066
1,083,009
1,071,968
1,077,044
1,072,220
1,082,752
1,077,678
前年同月比
増 減 率
1.6
△ 0.9
0.8
2.2
2.0
1.9
1.7
1.5
1.7
1.4
1.6
1.9
1.5
1.6
1.7
1.7
1.8
2.0
1.7
譲渡性預金
105
114
244
915
766
789
824
938
977
1,207
1,099
1,148
1,201
1,252
1,109
1,303
999
1,184
1,111
前年同月比
増 減 率
△ 13.3
7.9
113.7
202.8
138.1
223.1
62.4
44.1
51.0
35.3
20.0
14.2
10.8
63.3
14.8
52.3
26.6
65.4
34.8
(備考)1.預金計には譲渡性預金を含まない。
2.実質預金は預金計から小切手・手形を差引いたもの。
( 3.2005年3月以降の増減率は、旧杵築信用金庫を調整して算出
地区別預金
年 月 末
2001.
02.
03.
03.
3
3
3
9
12
04. 3
04. 5
6
7
8
9
10
11
12
05. 1
2
3
4
5
年 月 末
2001.
02.
03.
03.
3
3
3
9
12
04. 3
04. 5
6
7
8
9
10
11
12
05. 1
2
3
4
5
(単位:億円、%)
北海道
53,392
54,596
55,302
55,749
57,719
56,194
56,622
57,357
57,005
57,133
56,869
57,031
57,543
58,882
56,990
57,170
57,186
57,863
57,328
近
畿
207,950
201,814
201,600
205,386
207,067
205,213
206,367
208,296
208,205
208,434
208,501
208,700
208,393
210,818
209,303
210,071
209,461
212,010
210,965
前年同月比
増 減 率
3.2
2.2
1.2
0.8
1.5
1.6
1.6
1.5
2.1
1.7
2.0
2.5
1.5
2.0
1.7
1.7
1.7
1.6
1.2
前年同月比
増 減 率
0.7
△ 2.9
△ 0.1
2.0
1.7
1.7
1.6
1.6
1.8
1.5
1.5
2.0
1.5
1.8
1.9
1.9
2.0
2.5
2.2
東
北
39,684
39,036
39,462
40,145
40,851
39,896
40,242
40,639
40,517
40,590
40,438
40,721
40,552
41,067
40,597
40,782
40,036
40,836
40,457
中
国
49,578
49,651
50,175
50,844
51,138
50,456
50,569
51,106
51,030
51,049
50,911
50,989
50,908
51,687
50,987
51,438
51,044
51,615
51,109
前年同月比
増 減 率
2.1
△ 1.6
1.0
1.1
1.2
1.0
0.7
0.7
0.9
0.6
0.7
1.3
0.6
0.5
0.5
0.4
0.3
0.6
0.5
前年同月比
増 減 率
0.1
0.1
1.0
1.8
0.9
0.5
0.4
0.1
0.6
0.0
0.1
1.3
0.8
1.0
1.2
1.6
1.1
1.7
1.0
東
京
194,416
190,125
193,270
196,553
199,155
196,903
198,014
199,329
199,319
199,038
199,504
200,269
199,570
201,919
199,994
201,060
200,759
202,302
201,265
四
国
17,773
18,064
18,206
18,491
18,769
18,625
18,699
18,887
18,946
18,952
18,954
18,996
18,952
19,263
19,089
19,200
19,286
19,453
19,456
前年同月比
増 減 率
1.2
△ 2.2
0.8
2.4
2.5
1.8
1.4
1.4
1.8
0.8
1.5
1.9
1.1
1.3
1.2
1.3
1.9
2.0
1.6
前年同月比
増 減 率
3.3
1.6
0.7
2.0
2.3
2.3
2.0
2.1
2.5
2.2
2.5
3.0
2.4
2.6
2.4
2.5
3.5
3.9
4.0
関
東
199,809
198,309
197,820
201,450
204,715
201,888
203,184
205,068
204,725
205,230
204,838
205,454
204,742
208,026
205,579
206,371
205,375
207,339
205,933
九州北部
17,940
17,916
17,984
18,452
18,766
18,298
18,577
18,751
18,728
18,745
18,665
18,815
18,750
19,087
18,830
18,966
18,597
19,085
18,940
前年同月比
増 減 率
1.0
△ 0.7
0.4
1.8
1.8
2.0
1.7
1.6
1.9
1.5
1.6
2.0
1.4
1.6
1.6
1.4
1.7
1.9
1.3
前年同月比
増 減 率
3.0
△ 0.1
0.3
2.0
1.7
1.7
1.0
0.8
1.4
0.7
1.1
1.9
1.4
1.7
1.4
1.7
1.6
2.3
1.9
(備考)1.沖縄地区は全国に含めた。
2.東京・関東地区の2003年3月の増減率は、地区間の事業譲渡を調整して算出
( 3.南九州地区・全国の2005年3月以降の増減率は、旧杵築信用金庫を調整して算出
118
信金中金月報 2005.8
北
陸
31,560
31,829
32,313
32,778
33,108
32,710
32,912
33,249
33,132
33,199
33,031
33,040
32,889
33,312
32,991
33,146
33,050
33,317
33,145
南九州
24,392
23,556
23,746
24,306
24,855
24,219
24,331
24,541
24,539
24,587
24,525
24,613
24,581
25,117
24,695
24,628
24,085
24,493
24,375
前年同月比
増 減 率
2.6
0.8
1.5
2.3
1.5
1.2
0.7
1.3
1.1
0.6
0.7
0.8
0.2
0.6
0.5
0.4
1.0
0.9
0.7
前年同月比
増 減 率
1.0
△ 3.4
0.8
2.1
1.7
1.9
1.2
1.1
1.6
1.2
0.9
2.0
1.4
1.0
1.5
1.6
1.0
2.3
1.7
東
海
200,034
201,901
204,281
208,248
210,580
209,402
210,500
212,288
212,039
212,642
212,782
212,426
212,149
214,966
212,887
214,266
213,983
215,642
214,770
全国計
1,038,043
1,028,198
1,035,536
1,053,808
1,068,100
1,055,175
1,061,345
1,070,958
1,069,663
1,071,058
1,070,466
1,072,481
1,070,447
1,085,557
1,073,341
1,078,486
1,074,325
1,085,423
1,079,152
前年同月比
増 減 率
3.5
0.9
1.1
3.1
2.3
2.5
2.2
1.9
2.0
1.9
2.1
2.4
2.0
2.0
2.1
2.1
2.1
2.4
2.0
前年同月比
増 減 率
1.7
△ 0.9
0.7
2.1
1.9
1.8
1.6
1.5
1.8
1.3
1.5
2.0
1.4
1.6
1.6
1.6
1.8
2.1
1.7
1.
(4)信用金庫の預金者別預金
(単位:億円、%)
預金計
年 月 末
2001.
02.
03.
03.
3
3
3
9
12
04. 3
04. 5
6
7
8
9
10
11
12
05. 1
2
3
4
5
年 月 末
2001.
02.
03.
03.
3
3
3
9
12
04. 3
04. 5
6
7
8
9
10
11
12
05. 1
2
3
4
5
年 月 末
2001.
02.
03.
03.
3
3
3
9
12
04. 3
04. 5
6
7
8
9
10
11
12
05. 1
2
3
4
5
1,037,617
1,027,696
1,035,334
1,053,806
1,068,098
1,054,774
1,061,344
1,070,956
1,069,662
1,071,056
1,070,465
1,072,480
1,070,445
1,085,555
1,073,340
1,078,485
1,074,223
1,085,421
1,079,151
個人預金
前年同月比
増 減 率
1.7
△ 0.9
0.7
2.2
1.9
1.8
1.6
1.5
1.8
1.3
1.5
2.0
1.4
1.6
1.6
1.6
1.8
2.1
1.7
一般法人預金
200,268
182,602
173,622
176,942
183,661
175,486
175,508
175,929
178,942
173,257
178,803
180,009
176,711
184,607
174,643
174,309
178,067
184,444
176,870
要求払
3,569
12,046
11,804
11,960
9,971
10,008
14,002
12,748
10,885
13,104
11,646
9,584
13,158
10,154
11,798
12,060
10,292
10,506
14,368
792,296
802,012
820,195
833,099
846,003
842,751
842,430
851,169
850,365
853,612
850,091
855,761
851,472
863,937
859,332
864,889
861,040
866,517
860,570
前年同月比
増 減 率
△ 0.4
△ 8.8
△ 4.9
△ 0.1
0.4
1.0
△ 2.0
0.7
3.6
△ 1.6
1.0
3.7
△ 1.6
0.5
△ 1.3
△ 1.3
1.5
3.9
0.8
要求払
前年同月比
増 減 率
3.9
237.4
△ 2.0
△ 17.0
△ 18.6
△ 15.2
10.4
△ 10.4
△ 20.0
13.2
△ 2.6
△ 15.6
16.5
1.8
21.9
24.6
2.8
△ 11.9
2.6
定期性
69,649
85,538
84,315
88,331
96,030
88,317
88,453
89,321
92,393
86,828
92,214
93,523
91,015
99,046
88,933
88,851
93,657
99,974
93,057
20,719
10,738
10,366
13,747
12,817
10,641
13,524
15,534
15,821
15,578
14,227
13,606
13,212
12,657
12,552
11,666
9,410
10,534
11,850
前年同月比
増 減 率
3.1
1.2
2.2
3.3
2.9
2.7
2.3
2.2
2.2
1.9
2.0
2.2
1.9
2.1
2.0
2.0
2.2
2.3
2.1
要求払
前年同月比
増 減 率
11.2
22.8
△ 1.4
3.0
3.6
4.7
△ 1.2
4.3
10.2
△ 0.9
4.3
9.6
△ 0.7
3.1
△ 0.6
△ 0.3
6.0
11.0
5.2
定期性
153,271
195,149
211,169
217,690
226,794
226,091
227,575
235,714
232,606
235,435
233,048
239,572
235,376
244,003
238,588
244,256
243,198
249,912
244,912
130,298
96,760
88,922
88,215
87,249
86,811
86,700
86,241
86,191
86,060
86,230
86,111
85,318
85,187
85,326
85,125
84,078
84,131
83,482
前年同月比
増 減 率
8.0
27.3
8.2
7.2
7.3
7.0
5.9
6.6
7.6
6.2
7.0
7.6
6.5
7.5
7.0
6.5
7.5
8.1
7.6
定期性
638,772
606,630
608,742
614,990
618,654
616,073
614,269
614,853
617,135
617,523
616,392
615,496
615,309
619,105
619,861
619,748
616,915
615,699
614,775
前年同月比 外貨預金等 前年同月比
増 減 率
増 減 率
2.0
240
0.5
△ 5.0
220
△ 8.3
0.3
273
24.1
1.9
407
61.7
1.3
544
117.4
1.2
576
111.0
0.9
575
89.8
0.6
591
85.7
0.3
612
81.2
0.2
643
85.8
0.2
641
57.3
0.2
682
47.6
0.2
775
62.7
0.0
818
50.2
0.2
872
57.7
0.3
874
54.4
0.1
915
58.6
0.1
894
49.0
0.1
872
51.6
前年同月比 外貨預金等 前年同月比
増 減 率
増 減 率
△ 5.7
309
△ 4.1
△ 25.7
293
△ 5.0
△ 8.1
376
28.2
△ 3.2
386
11.3
△ 2.9
373
5.2
△ 2.3
349
△ 7.3
△ 2.7
346
△ 5.6
△ 2.6
358
1.4
△ 2.5
348
△ 1.6
△ 2.4
360
△ 1.0
△ 2.2
350
△ 9.2
△ 1.9
365
△ 3.1
△ 2.5
368
0.9
△ 2.3
365
△ 2.0
△ 2.1
374
2.4
△ 2.3
324
△ 6.6
△ 3.0
323
△ 7.4
△ 3.3
330
△ 3.9
△ 3.6
323
△ 6.7
前年同月比 外貨預金等 前年同月比
増 減 率
増 減 率
△ 0.2
611
33.9
△ 48.1
200
△ 67.1
△ 3.4
118
△ 41.2
△ 0.7
51
35.2
△ 1.7
57
54.1
2.6
298
152.7
3.6
19
△ 74.8
△ 2.4
371
77.8
△ 1.8
11
△ 27.5
△ 0.2
154
319.2
3.4
190
266.5
2.1
105
535.5
0.5
269
33.5
△ 1.2
22
△ 60.1
△ 0.9
7
△ 41.2
△ 1.9
2
△ 97.7
△ 11.5
349
17.2
△ 8.9
1
△ 97.9
△ 12.3
85
340.4
金融機関預金
20,141
20,084
19,217
17,995
15,577
15,579
15,851
15,195
13,628
15,342
15,497
13,404
15,613
14,168
14,997
15,549
15,055
13,410
15,397
公金預金
24,903
22,990
22,292
25,763
22,850
20,951
27,549
28,657
26,721
28,839
26,068
23,300
26,644
22,838
24,362
23,732
20,055
21,045
26,307
政府関係
前年同月比 預 り 金
増 減 率
△ 22.1
2
△ 0.2
2
△ 4.3
1
△ 6.5
1
△ 10.2
0
△ 18.9
0
△ 1.2
0
△ 11.9
0
△ 19.0
0
△ 1.3
0
△ 13.8
0
△ 15.4
0
△ 0.7
0
△ 9.0
0
4.2
0
3.8
0
△ 3.3
0
△ 11.1
0
△ 2.8
0
前年同月比
増 減 率
0.9
△ 7.6
△ 3.0
△ 8.9
△ 9.8
△ 6.0
6.7
△ 5.6
△ 10.1
5.9
1.1
△ 5.6
8.1
△ 0.0
8.9
9.4
△ 4.2
△ 10.7
△ 4.4
譲渡性預金
105
114
244
915
766
789
824
938
977
1,207
1,099
1,148
1,201
1,252
1,109
1,303
999
1,184
1,111
(備考)1.日本銀行『預金現金貸出金調査表』より作成。このため、
『日計表』による(3)預金種類別預金、地区別預金の預金計とは
一致しない。
2.2005年3月以降の増減率は、旧杵築信用金庫を調整して算出
統 計
119
1.
(5)信用金庫の科目別貸出金、地区別貸出金
科目別貸出金
(単位:億円、%)
貸出金計
年 月 末
2001.
02.
03.
03.
3
3
3
9
12
04. 3
04. 5
6
7
8
9
10
11
12
05. 1
2
3
4
5
661,879
639,805
626,342
625,431
633,013
622,364
614,368
615,321
619,714
616,348
622,105
621,686
619,837
629,296
620,383
619,366
620,948
618,219
613,898
割引手形
前年同月比
増 減 率
△ 3.6
△ 3.3
△ 2.1
△ 0.6
△ 0.7
△ 0.6
△ 1.1
△ 0.7
△ 0.2
△ 1.2
△ 0.5
△ 0.2
△ 1.1
△ 0.5
△ 1.1
△ 1.1
△ 0.1
0.2
△ 0.0
33,932
28,762
24,051
22,238
26,093
22,388
21,730
21,682
23,697
20,655
20,832
22,705
20,622
24,118
21,074
20,401
20,555
22,005
19,639
貸付金
前年同月比
増 減 率
6.7
△ 15.2
△ 16.3
△ 7.9
△ 7.2
△ 6.9
△ 14.7
△ 5.9
4.1
△ 15.9
△ 6.3
2.0
△ 16.1
△ 7.5
△ 16.9
△ 17.8
△ 8.1
0.6
△ 9.5
627,946
611,043
602,291
603,192
606,919
599,975
592,638
593,638
596,017
595,693
601,273
598,981
599,215
605,177
599,309
598,965
600,393
596,213
594,258
前年同月比
増 減 率
△ 4.1
△ 2.6
△ 1.4
△ 0.3
△ 0.4
△ 0.3
△ 0.5
△ 0.5
△ 0.3
△ 0.6
△ 0.3
△ 0.3
△ 0.5
△ 0.2
△ 0.4
△ 0.4
0.1
0.1
0.3
手形貸付
97,975
90,943
84,739
79,940
80,066
77,758
71,686
71,481
71,932
72,150
73,854
72,570
72,400
74,024
72,073
72,137
71,918
68,773
66,464
前年同月比
増 減 率
△ 9.1
△ 7.1
△ 6.8
△ 7.5
△ 7.9
△ 8.2
△ 8.5
△ 8.6
△ 8.3
△ 8.2
△ 7.6
△ 8.1
△ 8.0
△ 7.5
△ 7.9
△ 7.6
△ 7.4
△ 7.4
△ 7.2
証書貸付
493,986
485,532
484,045
490,191
495,078
490,499
490,291
491,932
494,014
493,185
495,820
496,224
496,200
500,898
497,248
496,760
498,000
498,348
498,370
前年同月比
増 減 率
△ 2.9
△ 1.7
△ 0.3
1.2
1.0
1.3
0.9
1.1
1.2
0.8
1.1
1.2
0.9
1.1
0.9
0.9
1.5
1.6
1.6
当座貸越
35,984
34,567
33,506
33,060
31,774
31,717
30,660
30,223
30,069
30,357
31,598
30,186
30,614
30,254
29,986
30,067
30,473
29,091
29,423
前年同月比
増 減 率
△ 6.5
△ 3.9
△ 3.0
△ 5.0
△ 4.5
△ 5.3
△ 4.5
△ 5.5
△ 6.1
△ 4.2
△ 4.4
△ 5.6
△ 4.2
△ 4.7
△ 4.1
△ 3.7
△ 3.8
△ 4.7
△ 4.0
(備考)2005年3月以降の増減率は、旧杵築信用金庫を調整して算出
地区別貸出金
年 月 末
2001.
02.
03.
03.
3
3
3
9
12
04. 3
04. 5
6
7
8
9
10
11
12
05. 1
2
3
4
5
年 月 末
2001.
02.
03.
03.
3
3
3
9
12
04. 3
04. 5
6
7
8
9
10
11
12
05. 1
2
3
4
5
(単位:億円、%)
北海道
29,377
29,521
29,628
29,083
30,095
29,855
28,526
28,524
28,792
28,845
29,485
29,731
29,604
30,313
29,481
29,574
29,999
29,459
29,051
近
畿
136,814
130,271
124,418
124,171
125,340
122,626
121,745
121,845
122,789
121,660
122,425
122,441
121,775
123,521
121,850
121,622
121,978
122,233
121,457
前年同月比
増 減 率
△ 2.7
0.4
0.3
0.3
0.7
0.7
0.5
0.9
1.4
0.3
1.3
1.3
0.5
0.7
0.0
0.3
0.4
1.0
1.8
前年同月比
増 減 率
△ 5.5
△ 4.7
△ 4.4
△ 1.6
△ 1.7
△ 1.4
△ 2.0
△ 1.5
△ 0.8
△ 2.1
△ 1.4
△ 1.0
△ 2.2
△ 1.4
△ 2.1
△ 1.9
△ 0.5
0.1
△ 0.2
東
北
24,875
24,520
24,413
23,944
24,136
23,865
23,274
23,242
23,350
23,303
23,543
23,531
23,467
23,624
23,352
23,406
23,463
23,235
22,941
中
国
31,863
30,826
30,140
29,978
30,114
29,815
29,347
29,412
29,567
29,492
29,702
29,577
29,470
29,852
29,494
29,591
29,537
29,269
28,914
前年同月比
増 減 率
△ 0.8
△ 1.4
△ 0.4
△ 1.3
△ 1.5
△ 2.2
△ 2.3
△ 2.0
△ 1.9
△ 2.3
△ 1.6
△ 1.6
△ 2.1
△ 2.1
△ 2.4
△ 2.2
△ 1.6
△ 1.2
△ 1.4
前年同月比
増 減 率
△ 4.7
△ 3.2
△ 2.2
△ 1.2
△ 1.8
△ 1.0
△ 0.8
△ 0.7
△ 0.7
△ 1.4
△ 0.9
△ 0.5
△ 1.0
△ 0.8
△ 1.2
△ 1.0
△ 0.9
△ 0.5
△ 1.4
東
京
131,381
125,915
124,445
124,861
126,390
123,525
122,917
123,115
124,253
123,066
123,743
123,851
123,456
125,326
123,555
123,201
123,026
123,043
122,109
四
国
11,060
10,974
10,823
10,867
10,893
10,800
10,653
10,628
10,664
10,673
10,774
10,748
10,732
10,874
10,731
10,715
10,753
10,629
10,583
前年同月比
増 減 率
△ 2.8
△ 4.1
△ 2.1
△ 0.9
△ 0.6
△ 0.7
△ 1.4
△ 0.9
△ 0.2
△ 1.6
△ 0.8
△ 0.6
△ 1.4
△ 0.8
△ 1.4
△ 1.3
△ 0.4
△ 0.2
△ 0.6
前年同月比
増 減 率
△ 0.3
△ 0.7
△ 1.3
0.4
△ 0.0
△ 0.2
△ 1.3
△ 1.4
△ 1.4
△ 1.6
△ 0.8
△ 0.5
△ 1.1
△ 0.1
△ 0.9
△ 0.7
△ 0.4
△ 0.4
△ 0.6
関
東
125,418
120,357
116,756
116,985
118,457
116,513
115,322
115,517
116,136
115,785
117,045
116,937
116,916
118,592
117,144
116,879
117,256
116,611
116,091
九州北部
11,797
11,551
11,575
11,434
11,553
11,406
11,177
11,184
11,261
11,197
11,311
11,345
11,331
11,502
11,362
11,371
11,364
11,284
11,176
前年同月比
増 減 率
△ 6.0
△ 4.0
△ 1.9
△ 0.2
△ 0.3
△ 0.2
△ 0.5
△ 0.2
0.0
△ 0.6
0.0
0.2
△ 0.2
0.1
△ 0.4
△ 0.6
0.6
0.7
0.6
前年同月比
増 減 率
△ 1.9
△ 2.0
0.2
△ 0.3
△ 1.5
△ 1.4
△ 2.4
△ 1.7
△ 1.2
△ 2.3
△ 1.0
△ 0.6
△ 1.2
△ 0.4
△ 0.7
△ 0.8
△ 0.3
0.0
△ 0.0
(備考)1.沖縄地区は全国に含めた。
2.東京・関東地区の2003年3月の増減率は、地区間の事業譲渡を調整して算出
( 3.南九州地区・全国の2005年3月以降の増減率は、旧杵築信用金庫を調整して算出
120
信金中金月報 2005.8
北
陸
20,088
19,287
19,061
18,847
19,077
18,768
18,530
18,580
18,722
18,666
18,703
18,680
18,693
18,940
18,661
18,632
18,633
18,575
18,451
南九州
16,530
15,972
15,489
15,498
15,788
15,470
15,239
15,336
15,412
15,473
15,586
15,616
15,653
15,892
15,687
15,615
15,362
15,223
15,187
前年同月比
増 減 率
△ 1.4
△ 3.9
△ 1.1
△ 0.8
△ 1.7
△ 1.5
△ 1.4
△ 0.7
△ 0.4
△ 0.9
△ 0.7
△ 0.4
△ 0.9
△ 0.7
△ 1.4
△ 1.6
△ 0.7
△ 0.6
△ 0.4
前年同月比
増 減 率
△ 2.5
△ 3.3
△ 3.0
△ 0.1
△ 0.5
△ 0.1
△ 0.1
0.6
0.7
0.6
0.5
0.7
0.3
0.6
0.6
0.3
0.6
1.2
0.9
東
海
121,487
119,553
118,573
118,739
120,157
118,715
116,643
116,943
117,776
117,196
118,796
118,238
117,737
119,853
118,060
117,752
118,485
117,572
116,900
全国計
661,879
639,805
626,342
625,431
633,013
622,364
614,368
615,321
619,714
616,348
622,105
621,686
619,837
629,296
620,383
619,366
620,948
618,219
613,898
前年同月比
増 減 率
△ 1.3
△ 1.5
△ 0.8
0.2
△ 0.2
0.1
△ 0.8
△ 0.1
0.3
△ 0.6
0.0
0.2
△ 0.8
△ 0.2
△ 0.7
△ 0.8
△ 0.1
0.4
0.2
前年同月比
増 減 率
△ 3.6
△ 3.3
△ 2.1
△ 0.6
△ 0.7
△ 0.6
△ 1.1
△ 0.7
△ 0.2
△ 1.2
△ 0.5
△ 0.2
△ 1.1
△ 0.5
△ 1.1
△ 1.1
△ 0.1
0.2
△ 0.0
1.
(6)信用金庫の貸出先別貸出金
(単位:億円、%)
貸出金計
企業向け計
年 月 末
製造業
2001. 3
661,877
459,368
前年同月比
構成比
増 減 率
△ 4.3
69.4
78,299
前年同月比
構成比
増 減 率
△ 5.4
11.8
02. 3
639,803
△ 3.3
100.0
435,084
△
5.2
68.0
94,053
△
8.2
14.7
71,366
△
8.8
11.1
03. 3
626,341
△ 2.1
100.0
415,266
△
4.5
66.3
86,148
△
7.9
13.7
65,273
△
8.5
10.4
03. 6
9
619,689
625,429
△ 1.2
△ 0.6
100.0
100.0
409,544
412,144
△
△
3.4
2.5
66.0
65.8
84,655
84,519
△
△
7.1
5.5
13.6
13.5
62,023
63,150
△
△
7.4
6.4
10.0
10.0
△ 0.7
0.6
0.7
0.5
0.5
0.1
100.0
417,958
△
2.8
66.0
86,323
△
100.0
100.0
100.0
100.0
100.0
405,336
400,204
405,257
411,017
404,559
△
△
△
△
△
2.3
2.2
1.6
1.6
0.1
65.1
65.0
65.1
65.3
65.1
82,022
80,845
81,511
83,493
79,391
△
△
△
△
△
5.1
4.7
4.5
3.5
3.2
3.1
13.6
13.1
13.1
13.1
13.2
12.7
63,997
61,786
59,001
60,444
61,279
59,475
△
△
△
△
△
△
5.8
5.3
4.8
4.2
4.2
3.6
10.1
9.9
9.5
9.7
9.7
9.5
12
633,012
04. 3
6
9
12
05. 3
622,363
615,319
622,104
629,294
621,061
年 月 末
2001.
02.
03.
03.
3
3
3
6
9
12
04. 3
6
9
12
05. 3
年 月 末
卸売業
39,320
36,758
34,242
33,804
33,991
34,913
33,039
32,441
32,689
33,621
32,322
△
△
△
△
△
前年同月比
構成比
増 減 率
△
△
△
△
△
△
△
△
△
△
△
3.9
6.5
6.8
5.5
3.9
3.6
3.5
4.0
3.8
3.7
2.1
5.9
5.7
5.4
5.4
5.4
5.5
5.3
5.2
5.2
5.3
5.2
小売業
46,558
42,824
39,615
38,943
38,719
38,724
37,328
36,586
36,632
36,058
34,517
前年同月比
構成比
増 減 率
△
△
△
△
△
△
△
△
△
△
△
6.7
8.0
7.4
6.4
6.1
5.5
5.7
6.0
5.3
6.8
7.4
7.0
6.6
6.3
6.2
6.1
6.1
5.9
5.9
5.8
5.7
5.5
飲食店
15,623
14,524
13,622
13,380
13,265
13,110
12,684
12,526
12,456
12,353
11,829
前年同月比
構成比
増 減 率
△
△
△
△
△
△
△
△
△
△
△
6.1
7.0
6.2
5.9
5.9
6.4
6.8
6.3
6.0
5.7
6.7
2.3
2.2
2.1
2.1
2.1
2.0
2.0
2.0
2.0
1.9
1.9
不動産業
71,861
74,989
78,140
79,243
80,660
81,759
82,306
83,358
85,104
86,796
92,962
前年同月比
構成比
増 減 率
△
1.8
4.3
4.2
5.7
5.8
5.5
5.3
5.1
5.5
6.1
12.9
10.8
11.7
12.4
12.7
12.8
12.9
13.2
13.5
13.6
13.7
14.9
個 人
地方公共団体
サービス業 前年同月比
(各種サービス) 増 減 率 構成比
102,545
前年同月比
構成比
増 減 率
△ 4.1
15.4
建設業
前年同月比
構成比
増 減 率
△ 3.6
100.0
前年同月比
構成比
増 減 率
前年同月比
構成比
増 減 率
2001. 3
02. 3
03. 3
80,128
77,123
86,079
△ 3.8
△ 3.7
―
12.1
12.0
13.7
11,762
13,527
15,680
0.5
15.0
15.9
1.7
2.1
2.5
190,747
191,192
195,395
03. 6
9
12
04. 3
6
85,450
85,644
86,286
83,956
83,353
―
―
―
△ 2.4
△ 2.4
13.7
13.6
13.6
13.4
13.5
13,637
13,957
14,630
16,932
15,293
10.8
8.8
8.9
7.9
12.1
2.2
2.2
2.3
2.7
2.4
9
12
05. 3
83,992
84,233
80,949
△ 1.9
△ 2.3
△ 3.5
13.5
13.3
13.0
15,615
16,224
18,529
11.8
10.8
9.4
2.5
2.5
2.9
△
住宅ローン 前年同月比
構成比
増 減 率
2.2
0.2
2.1
28.8
29.8
31.1
123,501
127,347
134,682
1.8
3.1
5.7
18.6
19.9
21.5
196,508
199,328
200,424
200,095
199,822
2.8
2.9
2.9
2.4
1.6
31.7
31.8
31.6
32.1
32.4
136,540
139,909
142,644
143,110
143,772
5.9
6.9
7.0
6.2
5.2
22.0
22.3
22.5
22.9
23.3
201,232
202,053
197,973
0.9
0.8
1.0
32.3
32.1
31.8
144,922
146,884
143,961
3.5
2.9
0.6
23.2
23.3
23.1
△
(備考)1.日本銀行『業種別貸出金調査表』より作成。このため、『日計表』による(5)科目別・地区別貸出金の貸出金計とは一致
しない。
2.企業向け計には、海外円借款、国内店名義現地貸を含む。
3.2003年3月の業種分類の見直しに伴い、製造業の対象業種から「出版業」が除かれ、従来の「出版・印刷業」に代えて
「印刷業」のみが対象となったことから、増減率の算出においては、出版業・印刷業とも除いて算出した。また「サービ
ス業」は「各種サービス」となり、飲食店等を含む。
4.2005年3月以降の増減率は、旧杵築信用金庫を調整して算出
統 計
121
1.
(7)信用金庫の余裕資金運用状況
(単位:億円、%)
年 月 末
2001.
02.
03.
03.
3
3
3
9
12
04. 3
04. 5
6
7
8
9
10
11
12
05. 1
2
3
4
5
年 月 末
2001.
02.
03.
03.
3
3
3
9
12
04. 3
04. 5
6
7
8
9
10
11
12
05. 1
2
3
4
5
年 月 末
2001.
02.
03.
03.
3
3
3
9
12
04. 3
04. 5
6
7
8
9
10
11
12
05. 1
2
3
4
5
現
金
14,238
19,391
17,492
15,148
18,842
16,040
15,772
15,385
15,848
15,075
15,158
14,069
16,882
19,237
17,348
15,645
19,162
17,584
17,297
金融機関
預 け 金
買入金銭
貸 付 等 うちコール う ち 債 券 貸 借
うち譲渡性
うち信金中金預け金
債
権
預 け 金
ロ ー ン 取引支払保証金
183,867( 25.1)
2,553
166,783( 28.8) 11,180
7,556
―
4,134
182,044(△ 0.9)
845
159,156(△ 4.5)
3,004
2,104
―
2,084
194,070(
6.6)
883
159,131(△ 0.0)
2,654
1,654
1,000
3,274
192,727(△ 2.3)
853
163,256(△ 6.1)
1,424
945
89
4,579
199,978(
0.2)
605
189,285(
1.0)
582
449
63
4,555
196,398(
1.1)
910
154,855(△ 2.6)
2,175
1,575
0
3,095
206,666(
2.0)
510
195,228(
1.9)
699
609
0
3,900
207,344(△ 0.4)
510
193,808(△ 0.9)
578
498
0
4,232
200,710(△ 0.0)
410
186,621(△ 1.8)
549
449
0
4,238
208,705(
5.0)
410
194,193(
3.2)
482
372
0
4,053
206,143(
6.9)
410
166,545(
2.0)
1,119
1,119
0
3,439
211,157(
8.5)
380
193,205(
4.9)
542
432
0
3,697
206,939(
5.7)
380
192,468(
3.9)
573
473
0
3,796
210,465(
5.2)
420
195,406(
3.2)
725
625
0
4,005
208,091(
5.9)
400
193,875(
4.1)
691
611
0
3,782
213,959(
3.5)
390
199,134(
1.7)
768
668
0
3,667
199,157(
1.4)
290
150,939(△ 2.4)
2,472
1,555
0 r 3,142
222,345(
7.8)
480
208,331(
6.8)
837
737
0
3,412
219,612(
6.3)
490
205,818(
5.4)
580
510
0
3,645
金銭の
信 託
4,057
3,103
2,463
2,601
3,297
2,729
3,090
3,089
3,167
3,164
3,202
3,238
3,283
3,275
3,265
3,245
2,678
2,992
2,993
198
188
197
272
208
159
147
152
150
135
121
112
95
91
86
102
78
74
74
有価証券
国
221,566(
236,169(
248,064(
270,957(
267,560(
268,761(
273,624(
281,796(
283,389(
280,791(
277,917(
278,075(
279,339(
278,968(
279,949(
283,005(
r 287,574(
278,770(
280,561(
11.7)
6.5)
5.0)
12.9)
10.9)
8.3)
8.2)
9.1)
8.0)
4.2)
2.5)
3.0)
3.7)
4.2)
4.5)
6.5)
7.0)
2.3)
2.5)
貸付信託 投資信託
58
24
17
4
4
2
2
2
2
2
0
0
0
0
0
0
0
0
0
14,226
8,034
5,176
5,976
6,106
5,650
6,199
6,315
6,631
6,691
6,519
6,787
6,933
6,831
6,893
6,910
6,745
7,346
7,679
債
50,807(
58,911(
62,730(
72,767(
68,790(
73,655(
73,268(
78,190(
79,303(
77,171(
76,097(
74,316(
74,306(
74,933(
75,610(
78,216(
82,465(
75,776(
76,348(
外国証券
36,743(
39,660(
41,917(
47,723(
48,380(
46,121(
47,777(
48,751(
48,992(
49,106(
48,485(
49,090(
49,592(
49,677(
49,787(
49,240(
47,983(
48,024(
48,113(
地方債
34.6)
15.9)
6.4)
34.0)
32.0)
17.4)
20.8)
24.3)
21.6)
10.7)
4.5)
4.1)
6.2)
8.9)
8.8)
14.4)
11.9)
2.1)
4.2)
20,554
24,778
24,914
26,233
26,237
26,755
28,306
29,244
29,426
29,603
29,675
30,000
30,356
30,329
30,554
30,956
31,460
30,855
31,081
短期社債
―
―
0
0
0
0
1
1
2
2
2
3
3
3
4
3
3
142
261
社
債
公社公団債
92,497(
6.7) 15,595
99,328(
7.3) 21,166
108,534(
9.2) 27,267
113,131(
8.8) 32,126
112,821(
5.0) 33,364
110,483(
1.7) 33,875
112,462(
0.7) 35,947
113,591(
0.8) 37,211
113,222(
0.2) 37,412
112,321(△ 2.0) 37,170
111,146(△ 1.7) 37,083
111,813(△ 1.1) 37,430
112,094(△ 1.2) 37,719
111,153(△ 1.4) 37,854
111,067(△ 1.2) 38,097
111,614(
0.0) 38,674
111,680(
1.1) 39,070
110,028(△ 1.8) 38,369
110,374(△ 1.8) 38,579
余資運用 信金中金
その他の 資 産 計 利 用 額
(B)
証
券 (A)
7.4)
346
439,243
166,783
7.9)
442
445,987
159,156
5.6)
565
468,216
159,131
12.1)
627
487,710
163,256
11.7)
630
495,024
189,285
10.0)
643
489,360
154,855
7.6)
612
503,901
195,228
6.2)
619
512,578
193,808
3.7)
625
508,054
186,621
2.9)
619
512,408
194,193
1.5)
630
507,102
166,545
2.4)
631
510,893
193,205
2.8)
637
510,910
192,468
2.6)
638
516,770
195,406
3.3)
635
513,216
193,875
2.7)
639
520,393
199,134
4.0) r 1,102
514,265
150,939
1.3)
1,034
526,018
208,331
0.7)
1,049
524,765
205,818
預貸率 (A)
/預金
63.7
62.2
60.4
59.2
59.2
58.9
57.8
57.4
57.8
57.4
58.0
57.9
57.8
57.9
57.7
57.3
57.7
56.8
56.8
42.3
43.3
45.2
46.2
46.3
46.3
47.4
47.8
47.4
47.7
47.3
47.5
47.6
47.5
47.7
48.1
47.8
48.4
48.5
金融債
31,849
34,374
37,894
36,287
35,081
34,274
34,358
34,586
34,368
33,987
33,661
33,582
33,457
32,789
32,635
32,700
32,452
31,926
32,075
その他
45,052
43,787
43,372
44,717
44,376
42,334
42,155
41,793
41,441
41,163
40,401
40,800
40,918
40,509
40,334
40,239
40,158
39,732
39,720
信金中金月報 2005.8
株
式
6,325
4,987
4,206
4,492
4,587
5,449
4,993
5,079
5,182
5,273
5,358
5,429
5,413
5,399
5,395
5,422
6,131
5,560
5,651
預証率 (B)
/預金(B)/(A)
21.3
22.9
23.9
25.6
25.0
25.4
25.7
26.2
26.4
26.1
25.9
25.9
26.0
25.6
26.0
26.2
26.7
25.6
25.9
(備考)1.( )内は前年同月比増減率
2.預貸率=貸出金/預金×100(%)、預証率=有価証券/預金×100(%)(預金には譲渡性預金を含む。)
( 3.2005年3月以降の増減率は、旧杵築信用金庫を調整して算出
122
商品有価
証
券
16.0
15.4
15.3
15.4
17.7
14.6
18.3
18.0
17.4
18.1
15.5
17.9
17.9
17.9
18.0
18.4
14.0
19.1
19.0
37.9
35.6
33.9
33.4
38.2
31.6
38.7
37.8
36.7
37.8
32.8
37.8
37.6
37.8
37.7
38.2
29.3
39.6
39.2
2.
(1)業態別預貯金等
(単位:億円、%)
年 月 末
信用金庫
国内銀行
前年同月比
増 減 率
2001. 3
1,038,043
02. 3
1,028,198
03. 3
03. 9
(債券、信託
を含む。) 前年同月比
増 減 率
大手銀行
(債券、信託
を含む。) 前年同月比
増 減 率
うち預金
前年同月比 うち都市銀行 前年同月比
増 減 率
増 減 率
地方銀行
前年同月比
増 減 率
1.7
6,641,871
0.0
4,288,153
△ 0.2
2,466,900
1.3
2,102,820
0.5
1,785,742
2.4
0.9
6,790,535
2.2
4,416,792
2.9
2,699,067
9.4
2,308,919
9.8
1,813,848
1.5
1,035,536
0.7
6,798,976
0.1
4,424,063
0.1
2,760,299
2.2
2,377,699
2.9
1,813,487
1,053,808
2.1
6,641,341
△
0.8
4,271,387
△ 1.6
2,770,950
3.7
2,385,332
3.5
1,816,601
1.4
12
1,068,100
1.9
6,673,286
△
0.4
4,289,361
△ 0.8
2,757,888
3.4
2,368,299
3.2
1,825,041
1.0
04. 3
1,055,175
1.8
6,798,238
△
0.0
4,420,297
△ 0.0
2,842,197
2.9
2,456,008
3.2
1,825,541
04. 6
1,070,958
1.5
6,820,754
2.6
4,413,657
4.1
2,801,267
1.7
2,415,082
2.1
1,849,677
7
1,069,663
1.8
6,799,707
2.4
4,411,376
3.4
2,807,968
1.7
2,420,989
2.0
1,832,415
8
1,071,058
1.3
6,775,417
1.8
4,394,076
2.9
2,801,325
1.1
2,413,968
1.2
1,827,581
9
1,070,466
1.5
6,766,095
1.8
4,390,204
2.7
2,812,367
1.4
2,422,226
1.5
1,818,903
0.1
10
1,072,481
2.0
6,772,980
2.9
4,402,443
3.7
2,810,390
2.8
2,426,064
3.0
1,840,313
2.6
11
1,070,447
1.4
6,834,275
2.7
4,455,299
3.9
2,856,652
3.2
2,466,062
3.3
1,848,023
1.7
12
1,085,557
1.6
6,805,698
1.9
4,397,021
2.5
2,797,507
1.4
2,410,195
1.7
1,868,042
2.3
05. 1
1,073,341
1.6
6,796,554
2.1
4,421,376
2.7
2,811,261
1.8
2,416,332
1.5
1,842,403
2.3
2
1,078,486
1.6
6,820,506
1.9
4,434,605
2.5
2,812,815
1.4
2,421,313
1.3
1,851,089
2.2
3
1,074,325
1.8
6,902,096
1.5
4,483,596
1.4
2,862,150
0.7
2,470,227
0.5
1,878,876
2.9
4
1,085,423
2.1
6,909,364
1.4
4,488,501
1.3
2,857,610
1.1
2,470,674
1.1
1,880,588
2.8
5
1,079,152
1.6
6,923,710
1.3
4,516,268
1.5
2,884,859
1.2
2,493,531
0.9
1,871,665
2.0
△
△
0.0
0.6
△
0.0
0.4
△
0.2
6
年 月 末
第二地銀
信用組合
前年同月比
増 減 率
労働金庫
前年同月比
増 減 率
農業協同組合
前年同月比
増 減 率
郵便貯金
前年同月比
増 減 率
預貯金等合計
前年同月比
増 減 率
前年同月比
増 減 率
2001. 3
567,976
△
5.1
180,588
△
5.9
117,212
4.8
720,944
2.6
2,499,336
△ 3.8
11,197,994
02. 3
559,895
△
1.4
153,541
△ 14.9
125,200
6.8
735,373
2.0
2,393,418
△ 4.2
11,226,265
△ 0.6
0.2
03. 3
561,426
0.2
148,362
△
3.3
131,619
5.1
744,202
1.2
2,332,465
△ 2.5
11,191,160
△ 0.3
03. 9
553,353
△
1.8
151,772
1.9
135,179
3.3
752,178
1.8
2,300,064
△ 2.7
11,034,342
△ 0.6
12
558,884
△
2.2
153,408
2.3
137,941
2.9
766,812
1.9
2,300,362
△ 2.4
11,099,909
△
04. 3
552,400
△
1.6
152,526
2.8
135,713
3.1
759,764
2.0
2,273,820
△ 2.5
11,175,236
△ 0.1
04. 6
557,420
0.4
154,072
2.0
140,395
2.8
772,433
1.9
p 2,261,257
△ 2.6
p11,219,869
1.3
7
555,916
0.9
154,249
2.3
140,296
3.0
771,625
2.2
p 2,247,216
△ 2.8
p11,182,756
1.2
0.3
8
553,760
0.2
154,457
1.8
139,624
2.7
773,108
2.1
p 2,241,378
△ 3.1
p11,155,042
0.7
9
556,988
0.6
155,056
2.1
138,731
2.6
769,856
2.3
p 2,216,109
△ 3.6
p11,116,313
0.7
10
530,224
△
2.8
155,101
2.4
138,658
2.8
774,911
2.4
p 2,214,131
△ 3.7
p11,128,262
1.3
11
530,953
△
3.3
154,474
1.9
138,083
2.4
774,666
2.3
p 2,193,274
△ 4.2
p11,165,219
1.1
12
540,635
△
3.2
156,737
2.1
140,959
2.1
783,907
2.2
p 2,193,498
△ 4.6
p11,166,356
0.5
05. 1
532,775
△
3.0
155,504
2.1
140,265
2.2
778,575
2.3
p 2,178,929
△ 5.0
p11,123,168
0.6
2
534,812
△
3.1
155,950
2.0
140,289
2.1
780,957
2.2
p 2,174,183
△ 5.2
p11,150,371
0.4
3
539,624
△
2.3
138,604
2.1
776,685
2.2
p 2,141,330
△ 5.8
4
540,275
△
2.3
140,826
2.0
780,703
2.2
5
535,777
△
3.0
6
p 2,135,480
△ 6.0
p 2,110,746
△ 6.4
p 2,110,407
△ 6.6
(備考)1.日本銀行『金融経済統計月報』、日本郵政公社ホームページ等より作成
2.大手銀行は、国内銀行−(地方銀行+第二地銀)の計数
3.国内銀行・大手銀行には、全国内銀行の債券および信託勘定の金銭信託・貸付信託・年金信託・財産形成給付信託を含
めた。
4.預貯金等合計は、単位(億円)未満を切り捨てた各業態の預貯金残高の合計により算出した。
統 計
123
2.
(2)業態別貸出金
(単位:億円、%)
年 月 末
信用金庫
大手銀行
前年同月比
増 減 率
地方銀行
前年同月比
増 減 率
都市銀行
前年同月比
増 減 率
第二地銀
前年同月比
増 減 率
信用組合
前年同月比
増 減 率
前年同月比
増 減 率
2001. 3
661,879
△
3.6
2,746,303
△
1.5
2,133,507
△ 0.8
1,357,418
1.2
465,931
△ 7.8
133,612
△ 6.1
02. 3
639,805
△
3.3
2,601,800
△
5.2
2,035,627
△ 4.5
1,359,864
0.1
444,432
△ 4.6
119,082
△ 10.8
03. 3
626,342
△
2.1
2,451,214
△
5.7
2,072,578
1.8
1,352,514
△ 0.5
429,130
△ 3.4
91,512
△ 23.1
03. 9
625,431
△
0.6
2,375,563
△
4.5
1,993,783
△ 5.2
1,345,276
0.6
416,370
△ 4.3
91,511
△ 5.1
12
633,013
△
0.7
2,361,749
△
6.2
1,991,686
△ 6.7
1,352,962
△ 0.1
423,823
△ 4.0
92,384
△ 0.7
04. 3
622,364
△
0.6
2,344,621
△
4.3
1,958,921
△ 5.4
1,352,081
△ 0.0
420,236
△ 2.0
91,234
△ 0.3
04. 5
614,368
△
1.1
2,287,430
△
4.1
1,913,218
△ 5.1
1,325,597
△ 0.6
412,920
△ 0.1
90,416
△ 0.4
6
615,321
△
0.7
2,280,592
△
4.1
1,910,458
△ 4.7
1,324,230
△ 0.4
413,043
△ 0.0
90,456
△ 0.0
7
619,714
△
0.2
2,283,623
△
2.6
1,915,566
△ 2.9
1,331,384
△ 0.2
415,252
0.1
90,910
0.0
8
616,348
△
1.2
2,288,310
△
3.0
1,920,610
△ 3.3
1,320,041
△ 1.4
412,277
△ 0.8
90,721
△ 0.4
△ 0.1
9
622,105
△
0.5
2,298,590
△
3.2
1,920,894
△ 3.6
1,330,223
△ 1.1
415,191
△ 0.2
91,404
10
621,686
△
0.2
2,262,948
△
3.1
1,889,727
△ 3.7
1,349,841
1.0
396,849
△ 4.3
91,469
0.0
11
619,837
△
1.1
2,261,103
△
4.0
1,885,709
△ 5.0
1,348,112
0.6
396,574
△ 5.0
91,532
△ 0.2
12
629,296
△
0.5
2,262,020
△
4.2
1,885,334
△ 5.3
1,373,768
1.5
404,221
△ 4.6
92,358
△ 0.0
05. 1
620,383
△
1.1
2,242,250
△
4.2
1,864,138
△ 5.4
1,362,481
1.2
398,503
△ 5.1
91,546
△ 0.4
91,519
△ 0.4
2
619,366
△
1.1
2,240,982
△
3.8
1,868,226
△ 4.2
1,365,368
1.2
398,228
△ 5.1
3
620,948
△
0.2
r 2,243,788
△
4.3
1,869,540
△ 4.5
1,372,381
1.5
r 403,403
△ 4.0
0.1
2,225,183
△
2.9
1,845,500
△ 3.5
r 1,363,867
2.0
400,287
△ 3.4
△
0.0
2,204,388
△
3.6
1,825,122
△ 4.6
1,353,910
2.1
397,502
△ 3.7
前年同月比
増 減 率
うち中小
企業向け
4
618,219
5
613,898
年 月 末
労働金庫
農業協同組合
前年同月比
増 減 率
公的金融機関
前年同月比
増 減 率
前年同月比
増 減 率
うち住宅
金融公庫
合
計
前年同月比
増 減 率
前年同月比
増 減 率
2001. 3
76,213
3.2
220,078
△
0.3
1,731,885
0.1
293,556
△ 1.3
759,220
1.8
7,393,319
△ 1.2
02. 3
81,054
6.3
217,357
△
1.2
1,693,486
△ 2.2
288,025
△ 1.8
726,516
△ 4.3
7,156,880
△ 3.1
03. 3
87,266
7.6
215,147
△
1.0
1,617,238
△ 4.5
279,743
△ 2.8
671,999
△ 7.5
6,870,363
△ 4.0
03. 9
89,637
8.3
214,601
△
0.4
1,569,865
△ 5.2
277,987
△ 1.6
634,452
△ 9.5
6,728,254
△ 3.0
12
91,749
7.7
213,529
0.0
1,556,901
△ 5.3
279,855
△ 1.6
622,745
△ 9.8
6,726,110
△ 3.7
04. 3
92,664
6.1
214,871
0.1
1,531,569
△ 5.2
274,726
△ 1.7
605,947
△ 9.8
6,669,640
△ 2.9
04. 5
92,590
5.5
214,406
0.2
1,527,198
△ 5.4
270,630
△ 2.4
601,093
△ 9.8
6,564,925
△ 2.9
6
92,663
5.3
214,190
0.3
1,522,584
△ 5.2
272,745
△ 2.0
595,953
△ 9.6
6,553,079
△ 2.8
7
92,746
5.1
214,457
0.2
1,518,198
△ 4.7
277,180
0.0
589,569
△ 9.4
6,566,284
△ 2.0
8
93,061
4.7
214,776
0.1
1,508,032
△ 4.7
274,463
△ 0.7
583,785
△ 9.0
6,543,566
△ 2.5
9
93,555
4.3
214,504
△
0.0
1,496,693
△ 4.6
277,060
△ 0.3
578,784
△ 8.7
6,562,265
△ 2.4
10
94,046
3.9
214,153
△
0.2
1,489,838
△ 4.5
275,243
△ 0.0
575,288
△ 8.6
6,520,830
△ 2.1
11
94,448
3.5
213,602
△
0.5
1,483,737
△ 4.8
273,841
△ 1.3
572,517
△ 8.6
6,508,945
△ 2.8
12
94,852
3.3
212,704
△
0.3
1,480,807
△ 4.8
277,263
△ 0.9
568,428
△ 8.7
6,550,026
△ 2.6
05. 1
94,317
3.1
212,134
△
0.3
1,470,876
△ 4.9
272,692
△ 1.4
563,239
△ 8.8
6,492,490
△ 2.7
2
94,664
3.1
212,304
△
0.4
1,463,396
△ 4.8
271,484
△ 1.5
557,460
△ 9.0
6,485,827
△ 2.6
3
95,249
2.7
212,986
△
0.8
4
95,130
2.7
212,152
△
1.0
△
5
(備考)1.日本銀行『金融経済統計月報』より作成
2.大手銀行は、国内銀行−(地方銀行+第二地銀)の計数
3.公的金融機関は、日本政策投資銀行、国際協力銀行、国民生活金融公庫、住宅金融公庫、農林漁業金融公庫、中小企業
金融公庫、公営企業金融公庫、沖縄振興開発金融公庫、商工組合中央金庫の合計
4.公的金融機関のうち中小企業向けは、国民生活金融公庫、中小企業金融公庫、商工組合中央金庫の合計
5.合計は、単位(億円)未満を切り捨てた各業態の貸出金残高の合計により算出した。
124
信金中金月報 2005.8
ホームページのご案内
当研究所のホームページでは、当研究所の調査研究成果である各種レポート、信金中金月報のほか、統計デー
タ等を掲示し、広く一般の方のご利用に供しておりますのでご活用下さい。
また、「ご意見・ご要望窓口」を設置しておりますので、当研究所の調査研究や活動等に関しまして広くご意
見等をお寄せいただきますよう宜しくお願い申し上げます。
【ホームページの主なコンテンツ】
○当研究所の概要、活動状況、組織
○各種レポート
内外経済、中小企業金融、地域金融、
協同組織金融、産業・企業動向等
○刊行物
信金中金月報、全国信用金庫概況等
○信用金庫統計
日本語/英語
○アジア主要国との貿易・投資に関する各種情報
アジア業務室ページ
○論文募集
【URL】
http://www.scbri.jp/
ISSN 1346−9479
2005年( 平 成17年 )
8月1日 発 行
2005年8月号 第4巻 第8号( 通 巻389号 )
発 行 信金中央金庫
編 集 信金中央金庫 総合研究所
〒1 0 4−0031 東京都中央区京橋3−8−1
T E L 0 3( 3 5 6 3 )7 5 4 1 F A X 0 3( 3 5 6 3 )7 5 5 1
<本 誌の無 断 転 用、転 載を禁じます>
Fly UP