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IAS 第37 号修正案公開草案「引当金、偶発負債
修正 IAS 第 37 号第 19 号和訳 IAS 第 37 号修正案 公開草案 引当金、偶発負債及び偶発資産 IAS 第 19 号修正案 公開草案 従業員給付 修正 IAS37 和訳 目次 背景 IAS 第 37 号「引当金、偶発負債及び偶発資産」修正案 コメントの募集 主要な変更の要約 目次 基準 付録:他の基準書に対する修正 結論の根拠 代替的な意見 設例 新旧対比表 IAS 第 19 号「従業員給付」修正案 コメントの募集 主要な変更の要約 目次 IAS 第 19 号修正案 本会計基準のその他の変更 結論の根拠 1 修正 IAS37 和訳 背景 1. IAS 第37号「引当金、偶発負債及び偶発資産」及び IAS 第19号「従業員給付」の修正 を提案する本公開草案は、2つのプロジェクト;短期統合プロジェクト及び企業結合プロ ジェクト第2フェーズの成果として、国際会計基準審議会から公表された。 2. 短期統合プロジェクト(米国財務会計基準審議会(FASB)と取り組んでいる)の目的 は、国際財務報告基準(IFRSs)と米国会計基準(US GAAP)との間の差異を縮小する ことにある。短期統合は、比較的短期に解決可能かつ現在の及び予定されている主要な プロジェクトの外で取り扱うことが可能な差異に焦点を当てている。世界中の会計基準 の統合という審議会の広範な目的の一つの過程である。 3. 短期統合共同プロジェクトの一つの部分は、高品質の会計基準を採用することを視野に 入れて、両審議会がお互いの最近の基準を検討することである。推定的債務、不利な契 約及びリストラクチャリング引当金に対する IAS 第37号の規定の修正案は、解雇給付に 対する IAS 第19号の規定の補足的な修正とともに、2002年に公表された米国財務会計基 準審議会基準書第146号「退出または処分活動に関連するコストに関する会計処理」 (SFAS 第146号)についての IASB の検討結果である。IASB は、本修正案が会計基準 を向上させ、かつ SFAS 第146号の認識の規定と実質的に統合されると考えている。 4. 企業結合プロジェクトの第2フェーズは、FASB との共同プロジェクトであり、IFRSs と米国会計基準のパーチェス法(IFRS 第3号企業結合の修正案の公開草案では「買収法」 と呼んでいる)の適用に対する規定の広範な再検討を含んでいる。これは、被買収企業 の偶発事象の企業結合での取扱いを再検討することを含んでいる。結果として、IASB は、 IAS 第37号(及び他の基準)で、 「偶発資産」及び「偶発負債」という用語を削除し、従 来そのように記述されていた項目を新たに分析することを提案している。これらの修正 案は、IAS 第37号の蓋然性の認識規準の再検討も要求している。IASB は、これらの修正 案によって、FASB 解釈指針第45号「第三者の債務に対する間接保証等の保証に係る、 保証人の会計処理ならびに開示要件」及び47号「条件付資産除却債務」の根底にある、 認識の原則との実質的な統合が達成されると考えている。これらの修正は、企業結合プ ロジェクト第2フェーズにより促されたものであるので、本公開草案は、IFRS 第3号の修 正案の公開草案と同時に公表された。基準として承認されれば、本公開草案の提案は、 IFRS 第3号の改訂の提案と同様に、2007年1月1日からの適用となる。 5. 本公開草案の作成において、IASB は短期統合プロジェクト及び企業結合プロジェクト の第2フェーズでの暫定合意に関連する修正を行っている。これらの修正は、特に定義及 2 修正 IAS37 和訳 び認識要件に影響している。IASB は、IAS 第37号及び IAS 第19号のすべての規定を再 検討していない。しかしながら、これは、IAS 第37号の範囲を明確にする契機となった。 その結果、IASB は定義された用語として「引当金」を用いずに、その代わり「非金融負 債」という用語を用いることを提案している。IASB は、いくつかの観点で、現行の測定 の要件を明確にする提案も行っている。 コメントの募集 6. IASB は、本公開草案で提案している IAS 第37号と IAS 第19号のすべての修正に対し てコメントを募集し、特にコメントの募集の質問に対する回答を歓迎する。上記のとお り、IASB は、今回 IAS 第37号と IAS 第19号のすべての規定を変更することを検討はして いない。従って、IASB は変更を提案していないそれらの基準書の部分に対するコメント は依頼していない。 7. コメントは2005年10月28日までに到着するよう、書面にて提出していただきたい。 文書の表示 8. 本公開草案は、2つの基準の各々につき修正案を提示している。 z コメントの募集。質問は主要な論点に限られているが、IASB は提案されている他の変 更点についてのコメントも歓迎する。 z 主要な変更の要約。この章は基準に対する変更の IASB からの提案を要約したものであ る。軽微な部分及び編集上の変更は記載していない。 z 改訂された本文。(a) IAS 第37号の本文の「修正履歴なし」案、(b)IAS 第19号の修正さ れた項の修正履歴 z 結論の根拠。この章は主要な論点についての IASB の結論の根拠を示している。 z 他の基準や IFRIC の解釈への間接的な修正 3 修正 IAS37 和訳 IAS 第 37 号修正案 公開草案 引当金、偶発負債及び偶発資産 4 修正 IAS37 和訳 コメントの募集 国際会計基準審議会は、特に、以下に示した質問に対する回答を歓迎する。コメントは、 関連するパラグラフを明示し、明確な理由を記述し、可能であれば代替的な文言の提案が あれば、たいへん有用である。 質問1-IAS 第 37 号の範囲 公開草案は、IAS 第 37 号が、特定の場合を除き、他の基準書の適用を受けないすべての非 金融負債の会計処理において適用されなければならないことの明確化を提案している(第 2 項参照)。この点を強調するため、本公開草案は、適用範囲とする負債を定義するための用 語として「引当金」を用いていない。その代わりに、非金融負債という用語を用いている (第 10 項参照)。一方、本公開草案は、企業がその財務諸表においてある種類の非金融負 債を引当金として表示してもよいことを説明している(第 9 項参照) 。 (a) IAS 第 37 号が、他の基準書の適用を受けないすべての非金融負債の会計処理において 適用されなければならないことに同意するか。同意しない場合、どの種類の負債につい て、規定が不適切であると考えるか及びその理由。 (b) 定義された用語として「引当金」を用いないことに同意するか。同意しない場合、同意 しない理由。 質問2-偶発負債 本公開草案は、「偶発負債」という用語の削除を提案している。 本公開草案の提案に対する結論の根拠は、負債が無条件(又は非偶発)債務からのみ生じるこ とを説明している(BC11 項)。したがって、結論の根拠は、負債(無条件の債務)であるもの が偶発的又は条件付であり得ないこと及び将来事象の発生又は非発生に関して偶発的又は 条件付である負債は、それ自身では負債を生み出すことはないことを強調している(BC30 項参照)。 結論の根拠は、偶発負債として以前に説明された多くの項目が、フレームワークにおける 負債の定義を満たすことも説明している。これは、偶発事象が無条件の債務が存在するか どうかに関係していないからである。むしろ、偶発事象は、無条件の債務を決済するのに 必要とされる金額に影響を与える 1 つ又は複数の不確実な将来事象に関連している(BC23 項)。 結論の根拠は、偶発負債として以前に説明された多くの項目が、2 つの債務として分析され 得ることを強調している:無条件の債務と条件付債務である。無条件の債務は、負債を立 証しており、条件付債務は、負債を決済するのに必要とされる金額に影響を与えている (BC24 項)。 本公開草案は、負債(無条件の債務)を決済するのに必要とされる金額が、1 つ又は複数の不 確実な将来事象の発生又は非発生に関して偶発的(又は条件付)である場合、不確実な将来事 5 修正 IAS37 和訳 象が発生する(又は発生しない)蓋然性とは無関係に認識されることを提案している。将来事 象に関する不確実性は負債の測定に反映される(第 23 項参照)。 (a) 「偶発負債」という用語を削除することに同意するか。同意しない場合、同意しない理 由。 (b) 負債(無条件の債務)を決済するのに必要な金額が 1 つ又は複数の不確実な将来事象の発 生又は非発生に関して偶発的である場合、負債は不確実な将来事象が発生する(又は発 生しない)蓋然性とは無関係に認識されなければならないことに同意するか。同意しな い場合、同意しない理由。 質問3-偶発資産 本公開草案は、「偶発資産」という用語の削除を提案している。 偶発負債と同様に、結論の根拠は、資産が無条件の(又は非偶発的)権利からのみ生じること を説明している(BC11 項)。したがって、結論の根拠は、資産(無条件の権利)が偶発的又は 条件付であり得ないこと及び将来事象の発生又は非発生に関して偶発的又は条件付である 権利は、それ自身では資産を生み出すことはないことを強調している(BC17 項参照)。 結論の根拠は、偶発資産として以前に説明された多くの項目が、フレームワークにおける 資産の定義を満たすことも説明している。これは、偶発事象が無条件の権利が存在するか どうかに関係してないからである。むしろ、偶発事象は、資産の持っている将来の経済的 便益の金額に影響を与える 1 つ又は複数の不確実な将来事象に関連している(BC17 項)。 本公開草案は、資産の定義を満たす、以前に偶発資産として説明された項目が、IAS 第 37 号ではなく、IAS 第 38 号「無形資産」の適用範囲になければならないことを提案している (IAS 第 37 号の範囲として残す補填権を除く)。これは、当該項目が物的実態のない非貨 幣資産であり、IAS 第 38 号の識別可能性規準を満たす場合には無形資産といえるからであ る(付録 A22 項参照)。本公開草案は、IAS 第 38 号の認識規準への修正を提案していない。 (a) 「偶発資産」の用語を削除することに同意するか。同意しない場合、同意しない理由。 (b) 資産の定義を充足する従来は偶発資産として記述されていた項目が IAS 第 38 号の範囲 に含まれるべきであることに同意するか。同意しない場合、同意しない理由。 質問4-推定的債務 本公開草案は、企業の行動の結果、他の当事者は、当該企業が遂行することに合理的に依 存することができるという妥当な期待をもつ場合に限って、企業は推定的債務を有するこ とを強調するために推定的債務の定義の修正を提案している(第 10 項参照)。本公開草案は、 企業に推定的債務が発生しているかどうかを決定する追加のガイダンスも提供している(第 15 項参照)。 (a) この推定的債務の定義を修正する提案に同意するか。同意しないとすれば、理由は何か。 どのように定義するか、またその理由。 6 修正 IAS37 和訳 (b) 企業に推定的債務が発生しているかどうかを決定する追加のガイダンスは適切で有用 か。そうでなければ、理由は何か。それは、十分か。そうでなければ、どのような他の ガイダンスを提供するべきか。 質問5-蓋然性の認識規準 本公開草案は、すべての場合に、無条件の債務は蓋然性の認識規準(以前の 14 項(b)を満た すため、当該規準を本基準書から削除することを提案している。従って、信頼性をもって 測定できない場合を除いて、負債の定義を満たす項目は認識される。 結論の根拠は、負債であると以前に判定された項目の決済に、企業からの経済的便益の流 出を必要とする可能性が高いかどうかを判定するために、フレームワークにおいて蓋然性 の認識規準が用いられることを強調している。言い換えれば、フレームワークは、企業に対 して、負債を認識するべきか否かの決定の前に、負債が存在しているか否かを決定するこ とを要求している。多くの場合、負債を決済するのに必要な資源の金額及び時期に関する 不確実性があるが、決済が資源のいくらかの流出を必要とする不確実性はほとんどないか 又は全くない。一例は、工場を閉鎖する義務又は過去に汚染された土地を復旧する義務の ある企業である。以前であれば偶発負債として説明された場合において、企業が無条件の 債務と条件付債務を有する場合、蓋然性の認識規準は、条件付債務ではなく無条件の債務(す なわち、負債)に適用されなければならないという IASB の結論も根拠として掲げている。 従って、例えば、製品保証の場合、問題は、企業が製品を修理又は取り替える必要がある 可能性が高いかどうかということではない。むしろ、問題は、保証期間中に保証範囲を提 供する(すなわち、保証請求を引き受けるために待機している)企業の無条件の債務が、結果 としておそらく経済的便益の流出となるかどうかということである(BC37-41 項を参照)。 結論の根拠は、フレームワークが、単なる現金の流出ではなく、経済的便益の流出の観点 から蓋然性の認識規準を明確にしていることを強調している。これには、サービスの引当 金が含まれる。不確実な将来事象が発生する(又は発生しない)場合、条件付債務を引き受け るために待機する企業の無条件の債務は、一種のサービス債務である。したがって、条件 付債務を組み入れている負債については、蓋然性規準は満たされる。例えば、製品保証の 発行者は、契約期間中にサービスを提供している(すなわち、補償請求を引き受けるために 待機している)ため、経済的便益の確実な(及び可能性が高いだけではない)流出がある (BC42-47 項を参照)。 蓋然性の認識規準の分析、従って、当基準から削除した理由に同意するか。もしそうでな ければ、製品保証、売建オプション及び条件付債務が組み込まれた他の無条件債務のよう な例に対する蓋然性の認識規準をどのように適用するか。 質問6-測定 本公開草案は、企業が非金融負債を、貸借対照表日に債務を決済するため支払う、あるい 7 修正 IAS37 和訳 は貸借対照表日に第三者に債務を移転するための、合理的な金額にて測定しなければなら ないことを提案している(第 29 項参照)。本公開草案は、期待キャッシュ・フロー法は、 同一の種類の類似した複数の債務及び単一の債務の双方について、非金融負債を測定する ための適切な基礎であると説明している。最も可能性の高い結果による単一の債務の測定 は、当基準の測定目的に必ずしも整合していないことを強調している(第 31 項参照)。 測定の規定に対する当改訂案に同意するか。同意しない場合、理由は何か。どのような測 定を提案するか。その理由は何か。 質問7-補填 本公開草案は、企業が非金融負債を決済するために必要となる経済的便益の一部又は全部 に対して補填の権利を有するとき、当該補填権が信頼性をもって測定可能な場合には、当 該補填権を資産として認識することを提案している(第 46 項参照)。 補填権に対する認識規定に対するこの改訂案に同意するか。同意しない場合、理由は何か。 どのような認識規定を提案するか。その理由は何か。 質問 8-不利な契約 本公開草案は、企業自身の行動により契約が不利になる場合、企業がその行動をとるまで は負債を認識してはならないことを提案している。従って、オペレーティング・リースに より保有している資産で、企業自身の行動により(例えば、リストラクチャリングの結果) 契約が不利になる場合には、企業が資産の使用を中止した時に、負債が認識される(第 55 項及び 57 項を参照)。さらに、本公開草案は、不利な契約がオペレーティング・リースで ある場合、その契約の不可避的な費用は、企業がサブリースを行う意思があるかどうかに かかわらず、企業が合理的に獲得しうる見積サブリース料を控除した残存リース料となる (第 58 項参照)。 (a) 企業自身の行動により不利になるような契約に対する負債は、企業がその行動をとった 場合にのみ負債を認識しなければならないというこの改訂案に同意するか。同意しない 場合、いつ認識するべきか、その理由は何か。 (b) 不利なオペレーティング・リースに対する負債の測定を明確にする追加のガイダンスに 同意するか。同意しない場合、同意しない理由。負債を測定する方法は何か。 (c) 同意しない場合、統合を達成するための改訂を受入れる準備ができているか。 質問 9-リストラクチャリング引当金 本公開草案は、リストラクチャリングに関連するコストの非金融負債は、あたかもリスト ラクチャリングとは独立して生じたかのような同一の基礎に基づいて、すなわち企業がそ れらのコストに対する債務を保有している場合に、負債として認識されることを提案して いる(第 61 項及び 62 項)。 8 修正 IAS37 和訳 本公開草案は、しばしばリストラクチャリングに関連する 2 つのタイプのコスト、すなわ ち解雇給付及び、契約終了コストに対してこの原則を適用するためのガイダンス(又は他 の基準書の参照)を提案している。 (a) リストラクチャリングに関連する各コストに対する負債は、特定の時点で、リストラク チャリングに関連するすべてのコストに対する単一の負債を認識するという現在のア プローチと対照的に、企業がそれらのコストに対する債務を保有している場合に認識さ れなければならないというこの改訂案に同意するか。同意しない場合、その理由は何か。 (b) リストラクチャリングに関連するコストに対する当基準書の原則の適用に対するガイ ダンスは、適切か。適切でない場合、その理由はなにか。それは十分か。十分ではない 場合、どのような他のガイダンスを追加しなければならないか。 9 修正 IAS37 和訳 主要な変更の要約(IAS 第 37 号) 以下の主要な変更が提案されている: IAS 第 37 号の範囲 • IAS 第 37 号は、引当金を「時期又は金額が不確定な負債」として定義している。 本公開草案は、定義のための用語として、 「引当金」を用いず、他の負債と同様に引 当金として従来記述された項目も含み、非金融負債という用語を用いることを提案 している。 • 本修正の目的は、IAS 第 37 号が、特定の場合を除いて、他の基準書の適用を受け ないすべての非金融負債に対して適用されなければならないことを明確にすること である。 偶発負債 • IAS 第 37 号は、認識されない潜在的な債務又は現在の債務として偶発負債を定義 している。資源の流出が当該債務を決済するのに必要とされる可能性が高くないた め、又は債務の金額が十分な信頼性をもって測定することができないため、現在の 債務である偶発負債は認識されていない。偶発負債の決済に当たって経済的資源の 流出の可能性がほとんどない場合を除いて、偶発負債は認識せずにそれを開示する ことを求めている。本公開草案は: ○ 「偶発負債」という用語の削除を提案している。 ○ 負債が存在するかどうかに関する不確実性ではなく、負債を決済するのに求められ る金額に関する不確実性に言及するために「偶発事象」という用語を用いている。 ○ 決済金額が、1 つ又は複数の不確実な将来事象を条件とする負債は、不確実な将来 事象が発生する(又は発生しない)蓋然性とは無関係に認識されることを明確にした。 • 本修正の目的は: ○ 企業の(潜在的な債務ではなく)現在の債務のみが負債を生み出し、負債は無条件の 債務から生じることを明確にすることである。 ○ 負債の決済に求められる金額に影響を与える将来事象に関する不確実性を、負債の 測定に反映させるように求めることである。 偶発資産 • IAS 第 37 号は、潜在的な資産として偶発資産を定義している。IAS 第 37 号は、偶 発資産を認識することを認めていないが、経済的便益の流入の可能性が高い場合、 偶発資産を開示することを求めている。本公開草案は: 10 修正 IAS37 和訳 ○ 「偶発資産」の用語を削除することを提案している。 ○ 資産が存在するかどうかに関する不確実性ではなく、資産がもつ将来の経済的便益 の金額に関する不確実性に言及するために「偶発事象」という用語を用いている。 ○ 偶発資産として以前に説明された項目でありながら、フレームワークにおける資産 の定義を満たすものは、IAS 第 37 号ではなく、IAS 第 38 号の適用を受けることを 明確にしている。(補填権を除く、補填権は引き続き IAS 第 37 号の範囲である。) • 本修正の目的は、 (潜在的な資産ではなく)過去の取引又は事象の結果として、企業 によって現在支配される資源のみが、資産を生み出し、資産は無条件の権利から生 じることを明確にすることである。 推定的債務 • IAS 第 37 号は、企業が(a)他の当事者に、当該企業が特定の責務を受入れることを 表明しており、(b)その結果、企業は当該責務を果たすであろうという妥当な期待を 他の当事者の側に惹起している場合、企業の行動から発生する債務として推定的債 務を定義している。本公開草案は以下を提案している: ○ 推定的債務の定義を変更し、他の当事者が、当該企業がその責務を果たすことに合 理的に依存することができるという妥当な期待をもつという結果にならなければ ならないことを明確にする。 ○ 企業が推定的債務を負っているかどうかの判定に関する追加的指針を与えること。 蓋然性の認識規準 • IAS 第 37 号は、経済的便益をもつ資源の流出が、引当金の決済に求められる可能 性が高い場合、引当金は認識されなければならないと記載している。本基準書に付 随する設例は、本公開草案が条件付債務として現在分析しているものに対して、こ の蓋然性の認識規準を適用しているものもある。例えば、製品保証の場合、本基準 書は、企業が保証において生じる請求の可能性を考慮すると説明している。結果的 に、このことは、企業は、条件付債務が経済的便益をもつ資源を流出する結果にな る可能性が高いかどうかを検討することを意味している。修正された偶発負債の解 釈と整合するように、結論の根拠は、可能性の高い流出の規準が常に負債(すなわち、 無条件の債務)に適用されなければならないと説明している。したがって、企業が、 条件付債務を随伴する無条件の債務から生じる非金融負債を有する場合、当該蓋然 性の認識規準は条件付債務にではなく、無条件の債務に適用される。例えば、製品 保証の場合、規準は保証請求を引き受けるために(すなわち、保証範囲を提供するた めに)待機状態にある無条件の債務に適用しなければならない。結果として、結論の 根拠は、蓋然性の認識規準は常に満たされ、したがって、公開草案は当該規準を本 基準書から削除することを提案している。 11 修正 IAS37 和訳 測定 • IAS 第 37 号は、引当金が貸借対照表日における現在の債務を決済するために必要 な支出の最善の見積りで測定しなければならないことを記載している。最善の見積 りは、 「貸借対照表日の債務を決済するため、又は貸借対照表日に債務を第三者に移 転するために企業が合理的に支払う金額」として記載されている。期待値は多くの 項目を含む引当金を測定する際の基礎となるとしつつ、本基準書は、単一の債務に 対する最善の見積は、 「見積られた個々の結果のうち最も起こりそうなもの」となり 得ると記載している。本公開草案は: ○ 非金融負債は、企業が貸借対照表日に現在の債務を決済するため、又は債務を第三 者に移転するために合理的に支払う金額で測定されなければならないことを提案 している。 ○ 期待値は、同一種類の債務及び単一の債務に関する非金融負債を測定する基礎とし て用いられ得ることを強調している。 ○ 単一の債務に関する非金融負債を最も起こりそうな結果で測定することは、必ずし も本基準書の測定目的と整合することにはならないことを説明している。 補填 • IAS 第 37 号は、引当金を決済するのに必要な支出が、他の当事者から補填される ことが予想される場合、補填金を受取ることがほぼ確実な場合に、補填金は認識さ れなければならない。修正された偶発資産の解釈と整合するように、本公開草案は、 企業が補填金を受取る権利を有する場合、当該権利は信頼性をもって測定可能であ れば認識されなければならないことを提案している。 不利な契約 • IAS 第 37 号では、不利な契約とは、債務を履行するための不可避的な費用が、経 済的便益の見込を超過する契約として定義している。企業は、契約における現在の 債務と引当金として認識する。基準書は、引当金がどのような場合に認識されるべ きかに関する指針をそれ以上は提供していない。本公開草案は以下を提案している: ○ 企業自身の行動の結果、契約が不利となる場合、企業が当該行動をとるまでは負債 を認識してはならないことを明確にするための追加的な認識の指針。 ○ 不利なオペレーティング・リースの場合、債務を履行するための不可避的な費用は、 企業が物件をサブリースするかどうかにかかわらず、不可避的なリース料から企業 が物件から獲得し得るサブリースのレンタル料を控除した額に基づかなければな らないと規定すること。 リストラクチャリング引当金 12 修正 IAS37 和訳 • IAS 第 37 号は、(a)リストラクチャリングに関する詳細な計画を正式に有し、かつ (b)リストラクチャリングを実施するであろうという妥当な期待の影響を受ける 人々に惹起させている企業は、推定的債務を有すると記載している。このような場 合に、企業はリストラクチャリングから生じる直接の支出について引当金を認識す る。本公開草案は、以下を提案している: ○ リストラクチャリングに関連するコストに係る非金融負債は、負債の定義がそのコ ストに対して満たされる場合に限って認識されることを明確にするようリストラ クチャリング引当金の適用指針を改訂すること。従って、リストラクチャリングに 関連するコストは、あたかもリストラクチャリングとは独立して生じたかのような 同一の基礎に基づいて負債として認識される。 ○ 以下のようなリストラクチャリングにおいてしばしば発生するコストの会計処理 に関する特定の指針。 • 従業員の解雇給付のコストは、IAS 第 19 号「従業員給付」に従って認識される。 • 契約により残存期間にわたって発生し続け、企業に対して同等の経済的便益をもた らさないコストに係る負債は、企業が契約によって得られた権利の使用を止める場 合に(かつて契約が不利となると判定された場合に認識された負債に加えて)認識 される。 • 期間の終了前に契約を終了させるコストは、企業が契約条件に従って契約を終了さ せる時に認識される。 13 修正 IAS37 和訳 目 次 目 的 --------------------------------------------------------- 1 範 囲 --------------------------------------------------------- 2-9 定 義 --------------------------------------------------------- 10 認 識 --------------------------------------------------------- 11-28 負債の定義の充足 ------------------------------------------------ 12-21 偶発事象 -------------------------------------------------------- 22-26 債務の信頼できる見積り ------------------------------------------- 27-28 定 --------------------------------------------------------- 29-45 債務の決済若しくは移転のために企業が支払う合理的な金額 ------------ 29-34 リスクと不確実性 ------------------------------------------------ 35-37 現在価値 -------------------------------------------------------- 38-40 将来の事象 ------------------------------------------------------ 41-42 継続的な測定 ---------------------------------------------------- 43-45 測 填 --------------------------------------------------------- 46-50 認識の中止 ------------------------------------------------------- 51 認識及び測定ルールの適用------------------------------------------ 52-66 将来の営業損失 ----------------------------------------------------- 52-54 不利な契約 ------------------------------------------------------ 55-59 リストラクチャリング--------------------------------------------- 60-66 雇用契約終結に係る給付 ----------------------------------------- 63 契約終結費用 -------------------------------------------------- 64 その他の関連費用 ---------------------------------------------- 65 示 --------------------------------------------------------- 67-71 経過規定及び実効日 ----------------------------------------------- 72 IAS第37号(1998年公表)の廃止 ----------------------------------- 73 補 開 14 修正 IAS37 和訳 国際会計基準書(公開草案) IAS 第37号 非金融負債 目 1. 的 本基準書(現段階での公開草案を指す。以下同様。)の目的は、非金融負債の認識、測定および 開示の原則を設定することである。これらの原則は、信頼にたる測定ができる場合には、企業が非 金融負債を認識するよう要求する。非金融負債の決済において必要とされる経済的便益に関する金 額やタイミングの不確実性については、負債の測定に反映させる。これらの原則はまた、企業の非 金融負債の金額や性質、負債を決済する際に必要とされる経済的便益の将来の流出に関する不確実 性について、財務諸表利用者が理解できるような十分な情報を提供するよう要求する。 範 2. 囲 本基準書は、以下の項目を除いて、非金融負債を会計処理するに当たって、すべての企業に適用 しなければならない。 (a) 不利な契約を除く、未履行契約に起因するもの (b) 他の国際会計基準書で取り扱われているもの 3. 未履行の契約とは、いずれの当事者もその債務を全く履行していないか、あるいは、双方ともそ れらの債務を部分的に同じ程度に履行している状態の契約をいう。 4. 特殊な非金融負債について他の国際会計基準書が取り扱っている場合には、企業は本基準書に替 わって、当該他の基準書を適用する。ある種の引当金は、例えば、以下の基準書で取り扱われてい る。 (a) 工事契約(IAS 第11号「工事契約」を参照); (b) 法人所得税(IAS 第12号「法人所得税」を参照); (c) 従業員給付(IAS 第19号「従業員給付」を参照); (d) 保険契約(IFRS 第4号「保険契約」を参照)。但し、IFRS4号が適用される保険契約の元での 契約上の義務及び権利から発生したもの以外の、保険者(insurer)の非金融負債についてはこ の基準(草案)を適用する。 5. 以下の契約上の義務について、それらが不利になった場合にのみ、この基準を適用する。 15 修正 IAS37 和訳 (a) IAS 第17号「リース」を適用するオペレーティング・リースにおける義務 (b) IAS 第39号「金融商品:認識及び測定」の適用から除外されるローン・コミットメント 6. IAS 第17号は不利になったオペレーティング・リースの取扱いについて特別な規定を含まない ので、そのような場合には、本基準書を適用する。同様に、IAS 第39号が特定のローン・コミッ トメントについて適用範囲から除外しているため、不利になったローン・コミットメントについ てもこの基準を適用する。 7. 非金融負債には、収益の認識に関係するものがある。例えば、企業が保証料を得て保証をする場 合がある。本基準書は、収益の認識は取扱っていない。IAS 第18号「収益」は、収益が認識される 状況を識別し、認識規準を適用する際の実務指針を規定している。本基準書は、IAS 第18号の要件 を変更するものではない。 8. 他の国際会計基準書は、非金融負債の認識に付随して発生する相手勘定について、資産とするか 費用とするかについて規定している。これらの論点は、本基準書(草案)では取り扱っていない。 9. 法域によっては、特定の種類の負債について、「引当金(provisions)」という用語を用いている。 例えば、相当程度の見積りを用いてのみ測定されうる負債がこれに当たる。この基準書は「引当金」 という用語を用いないが、企業が非金融負債をどのように表示するかを規定するものではない。従 って、企業はある種類の非金融負債を、「引当金」として表示することは可能である。 定 義 10. 以下の用語は、本基準書では特定の意味で用いている。 推定的債務とは、次のような企業の過去の行動から発生した現在の債務をいう。 (a) 確立されている過去の実務慣行、公表されている企業の方針又は極めて明確な最近の文書によ って、企業が外部者に対しある責務を受諾することを表明しており; かつ (b) その結果、企業はこれらの責務を果たすであろうという妥当な期待を外部者の側に惹起してい る。 法的債務とは、以下から発生した債務である。 (a) 契約(明白な若しくは黙示的用語を通じて); (b) 法律の制定; 又は (c) 法律のその他の運用。 16 修正 IAS37 和訳 負債とは、過去の事象から発生した企業の現在の債務で、その決済により、経済的便益を有する 資源が企業から流出する結果となることが予想されるものである。 非金融負債とは、IAS 第32号「金融商品:開示及び表示」で定義されている金融負債以外の負債 である。 不利な契約とは、契約による債務を履行するための不可避的な費用が契約上の経済的便益の受取 見込額を超過している契約である。 認 識 11. 企業は、次の場合に非金融負債を認識しなければならない。 (a) 負債の定義を満たしており、 (b) 当該非金融負債について信頼できる見積りが可能な場合。 負債の定義の充足 12. 「フレームワーク」での負債の定義を満たす場合に限り、この基準書に従って非金融負債を認識 する。 13. 負債の本質的な特徴は、企業が過去の事象から発生した、現在の債務を負っているといることで ある。 現在の債務を発生させる過去の事象により、企業はその債務を決済することから逃れることは殆 どできない。現在の債務を生じさせた過去の事象は、債務を発生させた事象としてしばしば参照さ れる。 14. 大半の負債は法的債務より発生するため、司法による強制執行により決済される可能性がある。 一方、推定的債務より発生した負債もある。これは、第三者との明示的な同意若しくは法律により 発生するというよりもむしろ、企業の過去の行動により生成もしくは推定されるものである。ある 法域のもとでは、推定的債務もまた司法により強制執行される場合がある。例えば米国において禁 反言(promissory estoppel)1として知られている法的原理や、同様の効力を持つ他の法的システム の原理に従った場合などである。 15. 法的強制力がない場合、現在の債務の決済を免れることが殆どできないかどうかを判断するに当 1 Black’s Law Dictionary では、約束者において受約者が約束を信頼していると合理的に期待している一 方、受約者が損害に対する約定について真に信頼している場合、約束は、考慮の余地なく権利の侵害を妨 げることができるという原理 17 修正 IAS37 和訳 たって、特に注意することが必要である。推定的債務の場合、これは以下のようなケースに限られ る。 (a) 企業が相手方に対し、特定の責務を負うことを受入れることを過去に示したことがあること; (b) 企業がこれらの責務を遂行することについて、相手方が合理的に期待することができること; (c) 相手方が企業の債務の履行から便益を得るか、または不履行から損害を被るかのいずれかであ ること。 16. 貸借対照表日に負債が存在するか否かの決定に当たっては、企業は入手可能なすべての証拠、例 えば専門家の意見などを考慮する。考慮すべき証拠には、貸借対照表日以降に発生した事象による 追加的な情報も含まれるが、それは貸借対照表日に存在した状況に関する情報に限られる。 17. 企業の将来の行動(例えば事業に関する将来の運営)と独立して存在する、過去の事象により生 じた現在の債務のみが負債となる。例えば、既に発生している損傷の修復が必要な範囲において、 企業は石油装置や原子力発電所の解体に関する債務を負債として負う。この場合、企業がその債務 をほとんど免れることができないことについて、将来の行動を考慮する必要はない。 18. 将来の経済的便益に伴う経済資源の流出に関し、これを発生させようとする意図があったとして も、これは負債を発生させるのに十分な条件を満たしていない。その支出が企業における将来の操 業の継続に不可欠であったとしてもである。例えば、商業上の必要性や法的な要請により、企業は 将来特定の方法で操業するための支出を発生させようとしたり、発生させる必要が生じたりする (例えば、特定のタイプの工場におけるスモークフィルターの設置である)が、企業は操業を変更 するなどの将来の行動によって、将来の支出を避けることができるため、将来の支出に係る現在の 債務はなく、負債も存在しないのである。 19. 現在の債務は、債務の貸手側となる相手方の存在を必然的に伴う。しかしながら、誰が貸手なの かを特定することは、必ずしも必要なことではない。実際、債務を公衆一般に対して負っているか も知れない。負債は常に相手方を伴うため、貸借対照表日における経営者の決定は、通常現在の債 務を発生させない。その判断が貸借対照表日前に、相手方が企業の債務の履行を合理的に信用しう ると十分期待させるだけの特別な方法で通知された場合にのみ、債務は発生する。 20. 今現在の債務を生み出さない事象でも、法律の変化や推定的債務を生じせしめるような企業の行 為(例えば、十分に特定された公的なステートメント)は、将来の時点で債務を発生させることが ある。例えば、環境への損傷が発生した時点では、その結果を修復する現在の債務は発生していな い。しかしながら、新しい法律が損傷の修復を求めた場合や、推定的債務を負うような修復責任を 企業が受入れた場合、現在の債務が発生する。 18 修正 IAS37 和訳 21. 新しい法律が提案された場合、新たな法律に基づく現在の債務は、法案を制定する過程において 残された手続が結果に影響を及ぼさない程度まで、法が実質的に制定された時点ではじめて発生す る。法域によって法律の制定を取り巻く環境が異なるため、法律を実質的に発効させる単一の事象 を特定することは不可能である。時には、法が実際に成立するまで、実質的に発効しない場合もあ る。 偶発事象 22. 決済に必要とされる金額が、ひとつあるいは複数の将来の不確実な事象の発生もしくは非発生に より左右される負債を企業は有している場合がある。このようなケースでは、企業は過去の事象の 結果とし て 、2つの 債 務-無条 件債 務(unconditional obligation)と条 件 付債務(conditional obligation)を有している。 23. 決済に必要とされる金額が、ひとつあるいは複数の将来の不確実な事象の発生もしくは非発生に より左右される場合には、無条件債務から発生する負債は、不確実な将来の事象が発生する(若し くは発生しない)蓋然性にかかわらず認識される。将来の事象に関する不確実性は、認識される負 債の測定の中で反映される。 24. 決済に必要とされる金額が、将来の不確実な事象の発生もしくは非発生により左右される負債 は、待機状態にある(stand ready)債務といわれることがある。不確実な将来の事象が起こる時 (もしくは起こらないとき)に条件付債務を履行するために待機するという無条件債務を有してい るからである。その負債は、経済的便益の流出を伴うサービスの提供という無条件債務である。 25. 待機状態にある債務の一例として、製品保証がある。製品保証の発行者は、製品の修理若しくは 取替えについて待機状態にあるという無条件債務を有し(言い換えれば、保証期間中に亘る保証の 提供)、不具合があった場合に補修若しくは取替えを行うという条件付債務も負っている。発行者 は、保証を与えたという無条件債務から発生する負債を認識する。製品が保証若しく取替えを必要 とする(条件付債務)かどうかについての不確実性は、負債の測定において反映される。 26. 同様に、企業が訴訟を受けている場合にも、法廷の命令次第で義務を履行するための待機状態に あるという無条件債務を負っている。法廷が下す罰則(条件付債務)に関する不確実性は、負債の 測定の際に反映される。 債務の信頼できる見積り 27. 多くのケースで、非金融負債の金額については見積られることになる。見積りの使用は財務諸表 19 修正 IAS37 和訳 作成の不可欠の一部分であり、財務諸表の信頼性を損なうものではない。極めて稀な例外を除き、 信頼可能な負債の測定において見積りを使うことができる。 28. 非金融負債について信頼できる見積りができないという極めて稀な場合、この基準書の認識の規 準を満たさない負債が存在する。このようなケースでは、第69項の定めに従い非金融負債に関する 情報を開示する。非金融負債は、信頼しうる測定が可能になった時に始めて認識される。 測 定 企業が債務の決済若しくは移転のために支払う合理的な金額 29. 企業は、貸借対照表日における債務の、決済若しくは移転のために第三者に支払う合理的な金額 により非金融負債の測定を行う。 30. 貸借対照表日において、債務の決済若しくは移転に必要とされる金額を決定するのに際し、契約 若しくはその他の市場におけるエビデンスが使用できる場合がある。しかし、多くのケースでは、 企業が債務の決済若しくは移転に際して第三者に支払う合理的な金額に関する観察可能な市場に おけるエビデンスが存在せず、見積りを行わなければならない。 31. 非金融負債の見積りの基礎は期待キャッシュ・フロー・アプローチであり、起こりうる結果の幅 を反映した複数のキャッシュ・フローに関するシナリオを、それらが起こる確率によって加重平均 する。期待キャッシュ・フロー・アプローチは、同種の複数の債務に関する負債と、単一の債務に 関する負債の両方に適している方法である。これは、企業が債務の決済若しくは移転に際して第三 者に支払う貸借対照表日現在での合理的な金額が基礎であるためである。 これとは対照的に、最も発生が見込まれる結果に基づき測定された単一の債務に関する負債は、企 業が債務の決済若しくは移転のために支払う合理的な金額を必ずしも表現しないであろう。 32. 見積りの結果とその財務上の影響は、同種取引の経験や、ある場合には独立した専門家の報告に よって補足された企業の経営者の判断により決定される。考慮される証拠には、貸借対照表日後の 事象により提供された追加的証拠も含むが、貸借対照表日において存在していた債務に関連する情 報のみに限られる。 33. ひとつあるいは複数の将来の不確実な事象の発生(もしくは非発生)により左右される非金融負 債を企業が見積もろうとする場合、負債の測定において将来の事象に関する不確実性を反映する。 例えば、製品保証に関する債務の見積りにおいては、企業は保証のもとでのクレームの発生度合い と、これらのクレームに見合って必要となるキャッシュ・フローの量とタイミングを考慮する。 20 修正 IAS37 和訳 34. 非金融負債の税効果については、IAS 第12号「法人所得税」の中で取り扱っているので、非金融 負債は税引前金額で測定される。 リスクと不確実性 35. 第29項に従った非金融負債の測定において、企業はリスクと不確実性に関する影響を考慮しなけ ればならない。 36. リスクにより結果は変動する。リスクの調整は、他の条件が等しい一方でリスクの調整を含めな いで測定した場合に比べ、負債の測定金額を通常増加させる。これは、企業が負債に備わっている 環境の不確実性若しくは不透明性に対して企業が要求した価格を反映しているからである。不確実 性を伴う状況下では、負債を過小評価しないよう、判断を行うに当たって注意する必要がある。し かし、不確実性は負債の過大表示を正当化するものではない。例えば、著しく不利な結果にかかわ る予想費用を、合理的に期待される範囲の上限で見積った場合には、その結果は現実的なケースよ りも確率が高いものとしては敢えて取扱わない。非金融負債の過大計上をもたらす、リスクと不確 実性に対する二重の修正を回避するよう注意が必要である。 37. 経済的便益の流出の金額及びタイミングに関する不確実性については、第68(c)項により開示され る。 現在価値 38. 将来のキャッシュ・フローの予測を含む見積方法を使用して非金融負債を測定する場合、時間的 価値や負債に特有のリスクに関する現時点での市場の評価を反映した、税引き前の割引率を用い る。将来のキャッシュ・フローが既にリスク調整済みの場合には、割引率にリスクを反映させない。 39. 貨幣には時間的価値があるため、貸借対照表日直後にキャッシュ・アウト・フローの発生が見込 まれる場合には、同額のキャッシュ・アウト・フローが後日に発生する場合よりも不利である。そ れゆえに、キャッシュ・フローは割り引かれる。 40. 企業がリスクと不確実性を、キャッシュ・フローの見積りによってでなく、割引率の調整により 反映させた場合には、その割引率は原則として、リスク・フリー・レートより低くなる。 将来の事象 41. 非金融負債の測定に当たっては、債務の決済に必要となる金額に影響を与える将来の事象を反映 21 修正 IAS37 和訳 しなければならない。 42. 債務の性質を変えることなく、債務の決済に必要とされる金額に影響を与える将来の事象の影響 だけが、非金融負債の測定において必要である。例えば、企業は過去の経験より、用地の使用期間 の終了時点における浄化費用が、将来の技術の変化によって減少すると考えうるかもしれない。し たがって、負債を測定するに際して、企業は浄化作業のコストに関連する将来の技術の影響と、そ のような技術の利用可能性の両方の評価を反映させる。反対に、将来の事象が発生させる新たな債 務(若しくは既存の債務の変化又は不変)の影響は、債務の測定に反映させない。例えば、新たな 法律の影響は、負債の測定に反映させない。その法律が債務そのものを新たに生み出すか、債務の 性質を変化させるためである。 事後的な測定 43. 企業は非金融負債の帳簿価額を貸借対照表日ごとにレビューし、企業が現在の債務を決済若しく は第三者に移転するために合理的に支払うであろう、その時点での金額を反映したものに修正す る。 44. 企業は第30項から第42項に従い、非金融負債を事後的に再測定する。それゆえ、再測定は以下の 変動を反映させる。 (a) 債務の決済に必要な経済的便益の金額とタイミングに関する期待 (b) 債務に関するリスクと不確実性 (c) 負債の測定に使用する割引率 45. 時間の経過に伴う非金融負債の帳簿価額の変動は、借入費用として認識される。 補 填 46. 非金融負債を決済するのに必要な経済的便益の一部又は全部を第三者から補填される権利を企 業が有している場合で、補填金について信頼可能な測定が可能である場合、補填に関する権利を認 識する。補填に関する権利の金額は、非金融負債の金額を超えてはならない。 47. 企業は、非金融負債を決済するために必要な経済的便益の一部又は全部の提供を他の者に求める ことができる場合がある(例えば、保険契約、損害賠償条項あるいは、製造業者の保証を通じて)。 他の者は、企業が支払った金額を補填することもあるし、その金額を直接支払うこともある。補填 そのものは条件付の権利であるが、補填を受取るという無条件の権利が資産の定義を満足し、信頼 可能な測定が可能であれば、これを認識する。 22 修正 IAS37 和訳 48. 企業は、非金融負債と補填に関する権利として認識した金額とを相殺してはならない。 49. 補填は、第三者から受取り可能なものであるので、法的に有効な相殺権はなく、非金融負債と補 填に関する権利は別々に認識される。しかしながら、第三者の支払が滞った場合に債務の決済に必 要な金額を、企業が負債として負わなくてよいのであれば、企業はこれらの金額を負債として有し ておらず、負債の測定にも反映させない。 50. 損益計算書上、非金融負債に関連する費用は補填に関する権利によって生じる収入との純額で表 示する。 認識の中止 51. 債務を決済、取消し若しくは消滅させたとき、企業は非金融負債の認識を中止する。 認識及び測定ルールの適用 将来の営業損失 52. 企業は、将来の営業損失を認識しない。 53. 将来の営業損失は、過去の事象に係る現在の債務を含まないため、負債の定義を満たさない。 54. 企業が将来の営業損失を予想しているということは、企業が保有している資産が減損していた り、不利な契約を締結していることを示唆している。企業は IAS 第36号「資産の減損」に従ってこ れらの資産に減損に係るテストを実施し、また不利な契約に関しては、以下の第55項から第59項に 従って会計処理を行う。 不利な契約 55. もし、企業が不利な契約を有しているならば、当該契約による現在の債務を負債として認識しな ければならない。企業自身の行動の結果として契約が不利になることが見込まれる場合、企業は行 動を実際に起こすまで負債を認識してはならない。 56. 多くの契約(例えば、日常的な購買注文)は、相手への補償金の支払なしで解約することができ、 したがって債務ではない。それ以外の契約は、それぞれの契約当事者に権利と義務の双方をもたら 23 修正 IAS37 和訳 す。契約がある事象によって不利な契約となる場合には、当該契約は本基準書の適用を受け、認識 されるべき負債が存在する。未履行契約で不利な契約でないものは、本基準書の適用を受けない。 57. 企業のコントロールが及ぶ範囲外の事象の結果、契約が不利になる場合がある。例えば、財また はサービスに対し固定した価格で支払うことを約していた時に、市場価格がその固定価格を下回っ た場合である。一方、企業自身の行動により契約が不利になる場合もある。例えば、契約上の権利 を行使しない一方、契約の下での債務に係るコストは被り続けているケースである。この事例では、 企業は契約上の権利の行使を中止するまで負債を認識しない。 58. 本基準書では、不利な契約とは、契約による債務を履行するための不可避的な費用が、契約上の 経済的便益の受取見込額を超過している契約と定義している。契約による不可避的な費用は、契約 から解放されるための最小の純費用を反映する。それは契約履行の費用と契約不履行により発生す る補償又は違約金のいずれか低い方である。オペレーティング・リース契約の場合、企業は残存リ ース債務を参考に不可避的な費用を決定する。この時、転貸の意図が企業にない場合でも、転貸に よる収入の見積り額分を減額する。 59. 不利な契約に対する負債を認識する前に、企業は、当該契約に関する資産に生じた減損を認識す る(IAS 第36号「資産の減損」を参照)。 リストラクチャリング 60. 下記は、リストラクチャリングの定義に含まれる事象の例である。 (a) 一事業部門の売却又は撤退; (b) 国若しくは地域における事業所の閉鎖、又はある国若しくは地域から他の国若しくは地域への 事業活動の移転; (c) 経営管理構造の変更、例えば管理階層の削減; 及び (d) 企業の事業運営の性格と重点に重要な影響を及ぼす根本的な再編成。 61. リストラクチャリング費用に対する非金融負債は、負債の定義を満たしたときにのみ認識され る。 62. 負債は、企業が他者に対する債務の決済を殆ど免れることができないような、現在の債務を必然 的に伴っている。リストラクチャリングを実施するという経営者の決定は、リストラクチャリング の実施期間中に見込まれる費用に関する他者への現在の債務を生み出さない。従って、経営者によ 24 修正 IAS37 和訳 るリストラクチャリングの実施の決定は、負債の認識に必要な過去の事象でなない。リストラクチ ャリングに関連する費用は、これらが独立して発生した場合と同じ規準で負債として認識する。第 63項から第65項は、リストラクチャリングにしばしば関連する特定のコストに対する負債の定義の 適用についての追加的なガイダンスである。 雇用契約終結における給付 63. 企業は、従業員雇用契約の終結に関連する給付について、IAS 第19号(公開草案)第132項~第 147項に定められている要件を適用する。 契約終結費用 64. 企業は、契約期間終了前に契約を終結させるために要する費用や、企業に相応の経済的便益をも たらさない契約の下で契約の残存期間中に発生し続ける費用について、第55項~第59項までの要件 を適用する。従って、以前は不利な契約ではなかった契約における、契約満了期間前に終結するた めの費用に係る負債については、契約条項に従い企業が実際に契約を終結する時点で認識する。例 えば、契約により特定された通知期間内に企業が相手方に文書で通知した時や、相手方と契約の終 結に関して交渉を行ったときが契約の終結時点である。同様に、以前は不利ではなかった契約の下 で、企業への経済的便益がもたらされないまま発生し続ける費用に関する負債については、企業が 契約によってもたらされる権利の使用を中止したときに認識する。 例えば、もはや操業しない工場のためのオペレーティング・リースの支払いに関する追加的な負債 は、リース物件の使用を中止したときに認識する。 その他の関連する費用 65. リストラクチャリングに関するその他の費用については、例えば以下のような費用が含まれる。 (a) 雇用を継続する従業員の再教育又は配置転換費用; (b) 設備の統合若しくは閉鎖; (c) 新しいシステム及び流通組織への投資。 企業は、これらの負債を負ったとき、これを認識する(一般に、財又はサービスを受取ったとき となる) 。 66. 貸借対照表日以降に企業がリストラクチャリング計画に着手したり、その主要な特徴について公 表した場合には、IAS 第10号「後発事象」に基づく開示が要求される。 25 修正 IAS37 和訳 開 示 67. 企業は、認識した非金融負債は種類ごとに、期末の計上価額およびその債務の性質を開示しなけ ればならない。 68. 不確実性に関する見積りを使用している非金融負債については、以下の項目も開示しなければな らない。 (a) 期首及び期末計上価額の調整 (ⅰ)当期発生額; (ⅱ)当期決済額; (ⅲ)時間の経過や割引率の変動による影響から生じた割引額の変動; (ⅳ)負債の額に関するその他の調整(例.負債の決済に必要と見積られたキャッシュ・フローの 改訂)。 (b) 経済的便益の流出が予想される時期 (c) これらの流出の金額や時期に関する不確実性の内容。適切な情報を提供するために、必要があ る場合には、第41項で述べられているように、企業は将来の事象に関する重要な仮定を開示し なければならない。 (d) 補填を受ける権利に係る金額及び、この権利に関して認識される資産の金額 69. 非金融負債が、信頼可能な測定ができないことにより認識されていない場合には、企業はその事 実を以下の項目とともに開示する必要がある。 (a) 債務の性質に関する記述; (b) 信頼可能な測定ができなかったことに関する理由; (c) 経済的便益の流出の金額及び時期に関する不確実性の内容; (d) 補填を受ける権利の存在。 70. どの非金融負債が同一種類のものとして合算できるのかを決定するに当たっては、第67~69項の 開示要求を単一の記述で開示できる程度に、合算される項目の性質が十分に類似しているか否かを 考慮する必要がある。したがって、異なった製品の保証に係わる非金融負債も単一の種類として取 り扱うことが適切なこともあるが、通常の保証にかかわる金額と訴訟によって左右される保証の金 額とを単一種類として取り扱うことは適切ではない。 26 修正 IAS37 和訳 71. 極めて稀ではあるが、第68~70項で要求されている情報の一部又は全部を開示することが、非金 融負債に関する他の者との係争において、企業の立場を著しく不利にすると予測できる場合があ る。このような場合には、企業はその情報を開示する必要はない。しかし企業は、係争の一般的内 容を、情報が開示されなかった事実及びその理由とともに開示しなければならない。 経過措置及び発効日 72. 本基準書は、2007年7月1日以後に開始する期間にかかる年次財務諸表について適用する。比較の ための情報はリステートしない。早期適用は推奨される。しかし、この基準書が公表されて以降に 開始する年度からしか適用してはいけない。企業がこの基準書をその発効日以前に適用する場合 は、その事実を開示しなければならない。 IAS 第37号(1998年公表)の廃止 73. この基準書は、IAS 第37号「引当金、偶発負債及び偶発資産」(1998年公表)に置き換わる。 27 IAS37 号修正案設例 設例 これらの設例は IAS 第 37 号の一部を構成するものではない。 項目 設例 1:係争中の訴訟 設例 2:潜在的な訴訟 設例 3A:土壌汚染-明文化された法律の施行 設例 3B:土壌汚染と推定的義務 設例 4A:広範囲の製品保証 設例 4B:広範囲の製品保証‐非推定的義務 設例 5:保証 設例 6:海上油田 設例 7:アスベスト撤去義務 設例 8:複合されたいくつかの負債 設例 9:買戻し方針 設例 10A:新立法 1 設例 10B:新立法 2 設例 11:事業部門の閉鎖 設例 12:不利な契約 設例 13:排煙フィルター設置を求める法的規制 設例 14:法人税制の変更に伴う従業員の再訓練 設例 15:修理と保守 設例 15A:改装費用-法的な要請がない場合 設例 15B:改装費用-法的な要請がある場合 設例 16:自家保険 設例 17:解体義務の測定 設例 18:保証義務の開示 設例 19:解体義務の開示 設例 20:開示の免除 1 IAS37 号修正案設例 設例における会社はすべて 12 月 31 日が決算日である。すべてのケースにおいて、非金融 負債は信頼性をもって測定可能であるとする。いくつかの設例においては、資産の減損が 生じるが、この点は、設例では扱っていない。 設例 1:係争中の訴訟 20X0 年の結婚式の後、10 人が死亡する。それはおそらく企業が販売した製品の食中毒によ るものである。企業に損害額を要求する訴訟手続が開始している。しかしながら、食品が 有害であったとは企業は考えていないことから、負債計上には反対している。20X0 年 12 月 31 日の財務諸表の公表を承認する日まで、企業の顧問弁護団は、賠償を負うことは起こ りえないと助言している。 過去の事象の結果としての現時点の義務 過去の事象が、訴訟手続の始まりである。その ときまで、企業は有害な食品を販売しているとは認識していなかった。決算財務諸表の公 表を承認する日においても、企業が有害な食品を売っていたということについて争ってい た。それにもかかわらず、訴訟手続の開始により、裁判所の命令があれば即従わなければ ならない状態にさらされ(stand ready)ることから、企業に現時点における義務が生じて いる。 結論-非金融負債が認識される。 測定に関する留意点-負債の測定の目的は、決算日における義務を決済又は移転するため に企業が支払うことが合理的な金額を見積ることである。賠償金を支払うことはないと企 業が想定しているときでも、企業による賠償を伴わない、決算日における義務を当然のこ とと思う関係者は誰もいない。訴訟を受けて立つコストや、結果に反対するリスクのため である。 20X0 年 12 月 31 日の負債を測定する場合には、企業は以下のような要因を考慮する。 • 起こり得る訴訟結果 • 訴訟結果に伴うキャッシュ・フロー(訴訟関連費用を含む) • キャッシュ・フローのタイミング • 起こり得る確率 • その義務に関連するリスクと不確実性(つまり、起こり得る結果の幅又は多様性) 設例 17 で期待キャッシュ・フローアプローチの利用に関するガイダンスを示している。そ こでは、負債測定の基礎として、起こり得る確率により複数のキャッシュ・フローシナリ オが加重平均されている。 2 IAS37 号修正案設例 設例 2:潜在的な訴訟 20X0 年 12 月 31 日が押し迫った頃、手術中のミスによりある患者が死亡した。病院は、医 療ミスの発生に気付いている。このような状況では、過去の経験からも、また弁護士のア ドバイスからも、患者の遺族は訴訟手続を開始し、いざ法廷に持ち込まれれば、病院は過 失責任を負う可能性が高いとわかっている。 財務諸表が承認される 20X1 年初頭時点では、病院は、訴状を受け取っていない。 過去の事象の結果としての現時点の義務‐過去の事象は、過失が起きた手術である。 結論-非金融負債は認識される。 測定に関する留意点-負債の測定は、病院が賠償金を支払わなければならないという可能 性、賠償金額や賠償時期を反映したものである。 設例 3A:土壌汚染-明文化された法律の施行 石油産業に属するある企業は、土壌汚染を引き起こしても、操業している国の法律で浄化 が求められたときにのみ浄化を行っている。企業が以前に操業していたある国では、浄化 を義務づける法律がなかったため、数年にわたり、その国において土壌を汚染してきた。 しかしながら、その国の政府は、以前の土壌汚染も含めて、土壌汚染を浄化することを義 務づける法律の導入を検討している。20X0 年 12 月 31 日、新法が施行される。 過去の事象の結果としての現時点の義務‐過去の事象は、土壌汚染の浄化を義務づける法 律の施行である。そのため、企業は土壌汚染を浄化する現時点における義務を負っている。 結論-土壌汚染を浄化するための非金融負債が認識される。 測定に関する留意点-20X0 年 12 月 31 日の負債に測定は、土壌汚染浄化のための支出時期 及び支出金額に関して不確実性を反映する。 3 IAS37 号修正案設例 設例 3B:土壌汚染と推定的義務 石油産業に属するある企業は、土壌汚染を引き起こしているが、環境規制のない国におい て操業している。しかしながら、当該企業は、環境方針を広く世間に公表しており、自ら が引き起こした土壌汚染については浄化することを約束している。企業は、この公約を守 ってきた実績がある。 過去の事象の結果としての現時点の義務‐過去の事象は土壌汚染であり、そのために現時 点の推定的義務が生じている。それは以下の理由による。 ・ 環境方針を公表することで、企業は、土壌汚染を浄化する責任があることを示す政策を 広く世間に訴えてきた。 ・ 環境方針を公表し、過去にそれを守ってきたことから、利害関係者は、土壌汚染を企業 が浄化することに関して合理的に信頼することができる。 ・ この企業が土壌汚染を浄化しない場合には、利害関係者が損害を負うことが見込まれる。 結論-土壌汚染を浄化するための非金融負債が認識される。 設例 4A:広範囲の製品保証 ある製造業者は、製品購入者に対して広範囲の製品保証を販売している。保証契約期間中、 販売時点から 3 年以内に起こった製造物の欠陥については、修理又は交換により、製造者 は保証を履行する。 過去の事象の結果としての現時点の義務‐過去の事象は、保証の販売であり、それにより 保証期間にわたりサービスを提供するという、現時点の義務が生じている。 結論-非金融負債が認識される。 測定に関する留意点-決算日において保証義務を決済又は移転するために必要な金額を決 めるための市場での証拠がない場合には、企業は次のような要素を考慮する。 ・ 決算日時点又はそれ以前における、販売した保証より発生した請求の見積数。 ・ 見積った請求数をこなすために必要なキャッシュ・フロー ・ キャッシュ・フローの時期 ・ 義務に関連するリスクと不確実性 企業が有償で製品保証を発行するときには、収益は IAS 第 18 号「収益」に従い認識する。 4 IAS37 号修正案設例 設例 4B:広範囲の製品保証‐非推定的義務 前提条件は、設例 4A と同じである。しかし、追加して、この設例では、顧客との関係維持 を保つために、販売後 4~5 年に製造物の欠陥が起きたときには、修理又は交換に応じてい る。企業は、この事実が広く知れ渡らないようにしている。加えて、企業は、販売後 4~5 年後に寄せられたクレームを注意深く調べ、顧客との関係維持に悪影響を与えないように 修理又は交換に要するコストを評価検討している。 過去の事象の結果としての現時点の義務‐販売時点では、販売時点から 4~5 年後も保証す るというような推定的義務は企業にない。法的な保証期間経過後も企業は修理することが あるが、これが一般的であると顧客に伝えるつもりはない。加えて、企業は、保証期間経 過後にクレームを処理するかどうかは自由裁量によっているため、顧客側からすれば、企 業がクレームに対処してくれるかどうかに頼ることはできない。 結論-保証期間経過後の保証に対する負債は認識されない。 設例 5:保証 20X0 年 12 月 31 日、企業 A は、企業 B の借入金の債務保証をする。その時点の企業 B の財 政状態は、健全である。20X1 年中に企業 B の財政状態は悪化し、20X1 年 6 月 30 日に債務 の履行ができなかった。 この契約は、IFRS 第 4 号「保険契約」における保険契約の定義を充たしている。IFRS 第 4 号では、もし特定の最低要件が充たされるならば、保証者は、保険契約に関する既存の会 計方針をとり続けることが認められている。また IFRS 第 4 号では、特定の規準を充たす会 計方針への変更も認められている。以下の記述は、IFRS 第 4 号で認められる会計方針の例 を示している。 過去の事象の結果としての現時点の義務‐過去の事象は、保証したことである。それによ り、保証期間にわたりサービスを提供するという現在の義務が生じている(企業 B の借入 を弁済することにさらされていること)。 結論-負債が認識される。 測定に関する留意点-保証は、当初、公正価値で認識される。事後的に、以下の高い方で 測定される。(a)義務の決済又は第三者への移転するために支払を要する合理的な金額、(b) 5 IAS37 号修正案設例 当初 IAS 第 39 号金融商品:認識と測定にしたがって認識される金額から、もし適切であれ ば、IAS 第 18 号に従い認識される償却累計額を差し引いた金額。 設例 6:海上油田 企業は海上油田を操業している。油田のライセンス契約では、生産終了時にリグを撤去し、 海底を元に戻すことが企業に求められている。最終的なコストの 90%は、リグの撤去と、 リグの建設による損害の復旧費用であり、10%が、原油の採掘から生じる。決算日では、 リグは建設されているが、原油は採掘されていない。 過去の事象の結果としての現時点の義務‐原油リグを建設することで、ライセンス期間中 は、リグを撤去し、海底を元の状態に戻すという、現時点における義務が発生している。 しかし、決算日には、原油採掘による損害を修復する義務は生じていない。 結論-原油リグを撤去し、その建設による損害を修復する義務は、非金融負債として認識さ れる。 測定に関する留意点-決算日における負債の測定には、原油リグの撤去と海底の修復から 生じる最終コストの 90%だけを反映する。原油の採掘から生じる被害の修復義務は、発生 時、すなわち原油採掘時に認識する。 当初認識される負債は、IAS 第 16 号「有形固定資産」に従い、原油リグの取得原価に含ま れる。負債測定における事後的な変動は、IFRIC 第 1 号「廃棄、原状回復及びそれらに類 似した既存の負債の変動」に従って認識されなければならない。 設例 7:アスベスト撤去義務 ある企業は、アスベストが使用されている工場を取得する。取得日後、新法が施行され、 企業は、工場の大規模修繕又は取壊しの際には、特定の方法によりアスベストを扱い、撤 去しなければならなくなった。それ以外の場合には、企業はアスベストを除去する必要は ない。企業は、将来、工場を廃止するためのいくつかの選択肢を持っており、選択肢の中 には、取壊し、売却、放置が含まれる。 過去の事象の結果としての現時点の義務‐アスベスト除去の実行は、工場の大規模修繕や 取壊しの場合に限られるが、法律の施行により、特定の方法でアスベストを撤去する現時 点の義務が企業に生じている。アスベストは、最終的には特定の方法で除去又は廃棄され なければならない。加えて、アスベストを除去する以前に工場を売却する企業の能力によ 6 IAS37 号修正案設例 っても、企業の義務は取り除かれるものではない。資産の売却は、他の企業に義務を移転 するものの、その移転は売却価格に影響を与える。 結論-アスベストを除去する、非金融負債は、法律が施行された際に生じる。 設例 8:複合されたいくつかの負債 20X0 年、企業 A と企業 B は、企業 C が所有している土地から鉱物を採掘する共同契約を締 結する。企業 C との契約の中で、企業 A と企業 B は、契約終了時(20X9 年と見込まれる) には、起業 C の土地を原状回復する義務を共同して又は各自で負っている。企業 A と企業 B の間の共同契約では、企業 B が土地の原状回復を行うことが取り決められている。20X5 年 中に企業 B の財政状態が悪化したため、企業 A が 20X9 年に土地の原状回復を行う可能性が 高くなっている。 過去の事象の結果としての現時点の義務‐企業 A と企業 C の間の契約によれば、企業 A に 現時点における義務が生じている。契約により、企業 B が土地の修復の第一次責任を負う が、企業 C は企業 A に対して土地の修復を求める権利を持っている。 結論-企業 A は、非金融負債を認識する。 測定に関する留意点-負債測定において、企業 A は、企業 B よりも、土地の修復を求めら れる可能性を反映しなければならない。企業 A が負債を認識するときには、企業 B に対す る求償権を認識することも考慮されなければならない。 設例 9:買戻し方針 法律で要求されていないが、顧客の不満足な商品を買い戻す方針を掲げている小売店があ る。買い戻すという方針は、周知されている。 過去の事象の結果としての現時点の義務‐過去の事象は商品の販売であるため、不満足な 顧客から買い戻す状態に常にあるという、現時点での推定的義務が生じている。 ・ 買戻し方針を周知させることで、顧客から買い戻すことを企業は広く示している。 ・ 買戻し方針を周知させることで、顧客は、企業が顧客から買い戻してくれることを合理 的に信頼できる。 ・ 企業が、この方針に従って買戻しをしない場合には、顧客は損害を被ることになる。 7 IAS37 号修正案設例 結論-常に買い戻しに応じなければならない義務に対し、非金融負債が認識される。 測定に関する留意点-負債測定には、決算日前における顧客から買い戻しを求められる可 能性や、時期、金額を反映することになる。 買戻し義務に関連する取引から収益を計上するときには、IAS 第 18 号に従う。 設例 10A:新立法 1 政府が新たな環境規制を導入しようと考えているような国において、電気製品を販売して いる企業がある。法が施行された際には、規制により企業は、リサイクリングのために顧 客から製品を回収し、廃棄しなければならない。その規制は、遡及適用される。そのため、 顧客は、今導入が検討されている規制の施行の前に販売された、製品についても廃棄のた めに回収してもらえると考えている。 決算日には、規制はまだ施行されていない。 過去の事象の結果としての現時点の義務‐決算日においては、義務はない(企業が、法律 の施行前に自らの行動により推定的義務を生み出さない限り)。 結論-負債は認識されない。 設例 10B:新立法 2 事実関係は、10A と同じである。しかし、この例では、企業は以前に取引先と契約を結んで いた。この契約条件に従えば、企業は取引先から、この契約締結以前に販売した電気製品 のリサイクリングコストや廃棄コストが補償される。 過去の事象の結果としての現時点の義務‐決算日において、取引先は、契約締結の結果、 現時点における義務を有している。 結論‐取引先は、負債を認識する。 これは保険契約の例であり、IAS 第 37 号の範囲外である。しかし、説明のためにこの例は 含まれている。 設例 11:事業部門の閉鎖 8 IAS37 号修正案設例 20X0 年 12 月 12 日、ある企業の経営陣は、事業部門の閉鎖にかかる詳細な計画を承認した。 その計画では、(a)種々の契約の終結、(b)その事業部門における従業員の雇用契約の終結 が求められている。20X0 年 12 月 31 日、企業はプレスリリースを公表し、事業部門の閉鎖 に関する決定を伝えた。 事業部門閉鎖の決定を企業が行う前には、不利な契約はなかった。 20X1 年 1 月 31 日、企業は、契約期間中に、契約を打ち切ることを関係する取引先に通知し、 同年 3 月 1 日には、雇用契約の打ち切りを開始した。 (a) 20X0 年 12 月 31 日の決算日 過去の事象の結果としての現時点の義務‐リストラのための義務を発生させるような過去 の事象は発生していない。事業部門閉鎖の方針を企業が公にしても、それによって、現時 点の義務が生じるものではない。 結論‐負債は認識されない。 (b) 20X1 年 1 月 31 日 過去の事象の結果としての現時点の義務‐契約を負担付とさせる事象は、これらを打ち切 るための通知である。 企業は、IAS 第 19 号「従業員給付」に従い、企業は雇用契約終了給付を認識する。 設例 12:不利な契約 ある企業は、オペレーティングリースにより工場を借り、黒字操業をしている。20X0 年 12 月中に、企業はその工場での操業を新しい工場に移管する。古い工場のリース契約は、今 後 4 年間続き、解約できない。リースが開始してから、近隣の商業ビルのリース料は、下 落してきている。 過去の事象の結果としての現時点の義務‐旧工場のリース契約により、法的義務が生じて いる。契約により新たに負担が生まれることとなる。なぜなら、工場から経済的便益を受 け取ることを望むことはできないし、契約により不可避的なコストが発生するからである。 このリース契約を不利なものにしているのは、企業が旧工場から立ち退いたことである。 結論‐負債を認識する。 過去の事象の結果としての現時点の義務‐負債の測定では、例え企業がサブリースを行う 9 IAS37 号修正案設例 つもりがないときでも、企業が合理的に得られる見積サブリース料により減額されるリー ス料が考慮される。 設例 13:排煙フィルター設置を求める法的規制 新しい規制の下では、企業は、20X1 年 6 月 30 日までに工場内では排煙フィルターを設置す ることが求められる。そうしないと、罰金を払わなければならない。 (a) 20X0 年 12 月 31 日 過去の事象の結果としての現時点の義務‐排煙フィルターの設置コストも罰金も生じてい ないので、現時点の義務はない。これは、(a)排煙フィルターを設置することを回避する自 由裁量が企業にあること、(b)20X1 年 12 月 31 日時点では、適法状態にあるからである。 結論‐排煙フィルター設置コストに対して、負債を認識しない。 (b) 20X1 年 12 月 31 日 過去の事象の結果としての現時点の義務‐過去の事象により、企業がフィルターを設置す ることを企業が約束したわけではないので、排煙フィルターを導入する費用についての義 務はない。企業は工場の使用を止めることができることから、フィルターの導入を回避で きる。しかし、法律に基づく罰金等を支払う義務は発生するかもしれない。なぜなら、債 務発生事象(工場の法令違反操業)は発生しているからである。 結論-排煙フィルターを導入するコストに対する負債を認識しない。しかしながら、罰金を 支払う義務については非金融負債を認識する。 設例 14:法人税制の変更に伴う従業員の再訓練 政府が法人税制の多くの部分を変更する。この結果、金融サービスセクターの企業は、金 融サービス法制へのコンプライアンスを継続するために、管理部門と販売部門の多くの従 業員を再訓練することが必要となる予定である。貸借対照表日においては、従業員の再訓 練は行われていない。 過去の事象の結果としての現時点の義務‐過去の事象(例.再訓練)が起こっていないの で、義務は発生していない。企業は、従業員を再訓練することを避ける裁量を有している 10 IAS37 号修正案設例 ためである。 結論‐負債を認識しない。 設例 15:修理と保守 いくつかの設備については、通常の保守のほかに、数年ごとに大規模な修繕、改良や主要 部品の取替えなどの大きな支出が必要とされる。IAS 第 16 号では、設備の主要な部分へ、 この金額を配分するための指針を与えている。 設例 15A:改装費用-法的な要請がない場合 溶鉱炉は、技術的な理由で 5 年ごとに取り替えることが必要とされる内壁を有している。 貸借対照日においては、企業の将来の行動と独立して存在する内壁の取替義務は存在して いない。企業が溶鉱炉での操業の継続と、内壁の取替えを決断し、その支出を負担しよう という意図を持っている場合においてもである。負債が認識される代わりに、内壁の減価 償却が考慮される。例えば、5 年間で償却される。内壁の取替費用は、溶鉱炉の帳簿価額の 一部として発生し、認識される。新しい内壁の消費に応じ、事後的に 5 年間で償却される。 結論-負債は認識されない。 設例 15B:改装費用-法的な要請がある場合 航空会社は、航空機使用の継続の条件として、法律により 3 年毎のオーバーホールが求め られている。 過去の事象の結果としての現時点の義務‐現在、義務は存在していない。 航空機のオーバーホールに関する費用は、設例 15A で負債として認識されなかった溶鉱炉 の内壁取替費用と同様の理由で負債としては認識しない。オーバーホールが法的要請であ ったとしても、その費用は負債に該当しない。なぜなら、企業の将来の行動と独立して存 在するような、オーバーホールの義務はないからである。負債が認識される代わりに、航 空機の減価償却に関しては将来の保守費用の発生を考慮する。例えば、発生が予想される 保守費用と同額を、3 年間にわたって減価償却する。 結論‐負債は認識しない。 11 IAS37 号修正案設例 設例 16:自家保険 直販店のチェーンを展開する企業が、消費者から被る事故に関する負債についての保険契 約を見直す。企業は公的に負債に関する保険の設定を求められてはいないし、自家保険の 設定を決断していない。言い換えれば、消費者からのクレームに関するリスクをとるとい うことである。 過去の事象の結果としての現時点の義務‐将来において保険でカバーされていない事故が おこるという点では、現在義務は存在していない。 結論‐保険でカバーされない事故が将来発生するかもしれないということに関しては、負 債は認識しない。負債は、貸借対照表日前に起こった事故についてのみ認識する。企業は、 報告をうけていない事故に関しても、既に発生した事故については見積りを行わなければ ならない。 設例 17:解体義務の測定 設例の目的は、第 29~42 項の要件を適用する際の、ひとつの方法を示すことである。 企業は、海上にリグを設置している。企業は法令により、リグの耐用年数終了後、これを 解体、除却することを求められている。耐用年数は 10 年と見積られている。企業は、リグ の解体及び除却に必要なキャッシュ・フロー(インフレーションの影響を含む)の範囲を 見積もり、発生可能性の評価を以下のとおりとした。 キャッシュ・フローの見積もりと発生確率 キャッシュ・フロー 確率評価 期待キャッシュ・フロー (見積もり) CU CU % 200,000 25 50,000 225,000 50 112,500 275,000 25 68,250 231,250 期待キャッシュ・フロー 企業は、当該義務に関する不確実性と環境の不透明性を反映して、キャッシュ・フローを 5% 増しで見積る(例えば、リグの除却費用が想定以上にかかるリスク)。このリスク調整は、 12 IAS37 号修正案設例 発生する結果の変動幅や、今後 10 年間に発生が見込まれるキャッシュ・フローに関する不 確実性と環境の不透明性を、今日の価格に固定する際に第三者が通常要求するであろう金 額などの要因によって決定される。 企業は、現在の市場における貨幣の時間価値の評価を反映し、割引率を 6%と見積った(負 債に固有のリスクはキャッシュ・フローの見積もりに含めている)。 企業は、当該義務の当初測定値を、以下のとおりに見積った。 CU CU 231,250 期待キャッシュ・フロー 11,563 リスク調整 242,813 割引率 6%を 10 年間使用した場合の現在価値 135,586 設例 18:保証義務の開示 製造者は、3つの製造ラインの購入者に対し、売却時に保証を与える。保証条項のもとで は、販売日より 2 年間、製造者が十分に機能しない部分の修理や取替えを実施することに なっている。貸借対照表日において、60,000CU の負債が認識されている。以下の情報が開 示される: “60,000CU の負債が、過去 3 年間に販売した生産物に対して予想されるクレームの保証と して認識されている。クレームの大半は来年発生し、そのすべてが貸借対照表日以降、2 年 以内に発生するものと予想されている。” 設例 19:解体義務の開示 原子力発電所を保有する企業は、2000 年に解体費用に関する負債として、300 百万 CU を 認識する。負債は、現在存在する技術を前提に、リスク調整を施して見込んだ費用を基礎 に算定されている。費用は現在の価格を反映し、2%で割引かれている。その他の重要な仮 定は、約 90%の確率で解体が 60~70 年後に行われ、残りの 10%は 100~110 年後に行わ れるであろうということである。 以下の情報が開示される: “300 百万 CU の負債が解体費用として認識されている。これらの費用は、2060~70 年の 間に発生するものと想定される。しかしながら、2100~2110 年まで解体が実施されない可 能性もある。これらの異なった結果についての発生確率は、負債の測定において考慮され 13 IAS37 号修正案設例 ている。負債は現在存在する技術及び現在の価格によって見積られ、2%の割引率で割り引 かれている。 ” 設例 20:開示の免除 企業は競争相手との争議に巻き込まれている。競争相手は企業に対し、特許権の侵害を主 張し、100 百万 CU の損害賠償を求めている。企業は、その義務の決済もしくは移転のため に合理的に支払われる金額を非金融負債として認識したが、第 68 項で求められている情報 を全く開示していない。なぜならこれらの情報が、企業のポジションに対して重要な偏見 をもたらすものと考えられるためである。以下の情報が開示されている: “会社と競争相手との間には争議がある。これは、会社は特許権の侵害で訴えられ、100 百万 CU の損害賠償が求められている。IAS 第 37 号「非金融負債」で原則として求められ ている情報は、法廷において重大な影響を与えるものと想定されるため、開示していない。 会社の取締役は、その訴えは退けることができるとの見通しを意見として持っている。” 14 IAS 第 19 号改訂案和訳 IAS第 19 号「従業員給付」改訂案 コメントの募集 ボードは、以下に示した質問に対する回答を特に歓迎する。コメントは、関連するバラ グラフを明示し、明確な理由を記述し、可能であれば代替的な文言の提案があれば、大変 有用である。 ■ 質問1 解雇給付の定義 公開草案は、給付と交換に自発的退職を受け入れるという従業員の決定の結果支払うべ き従業員給付は、それらが短期間に支給される場合にのみ、解雇給付に該当することが明 確になるよう、解雇給付の定義を修正することを提案する(第 7 項参照)。通常の退職日前 に従業員に退職するよう勧奨するために行われるその他の従業員給付は、退職後給付であ る(第 135 項参照)。 この提案に同意するか。同意しない場合、そのような給付をどのように性格づけるか、 また、同意しないのはなぜか。 ■ 質問2 解雇給付の認識 公開草案は、自発的退職による給付を、企業からの当該給付の申し出を従業員が受け入 れた時点で認識することを提案する(第 137 項参照)。また、従業員の将来の労働サービス の対価として支給されるものである場合を除き、企業が関係する従業員に解雇計画を通知 し、当該計画が特定の規準を充足した時点で、非自発的退職による給付を認識することを 提案する(第 138 項参照)。 自発的退職による給付又は非自発的退職による給付に係る負債を、これらの時点で認識 することは適切か。適切でなければ、いつ認識すべきか。また、適切でないのはなぜか。 ■ 質問3 将来の労働サービスに対応する非自発的退職による給付の認識 公開草案は、非自発的退職による給付が、従業員の将来の労働サービスの対価として支 給されるものである場合、解雇給付に係る負債を、従業員の労働サービスの行われる期間 にわたって認識することを提案する(第 139 項参照)。また、公開草案は、どのような給付 が、従業員の将来の労働サービスの対価として支給される、非自発的退職による給付であ るかを決定するための3つの規準を提案する(第 140 項参照)。 これらの規準に同意するか。同意しない場合、なぜか。また、同意しない場合、どのよ うな規準を提案するか。その場合、解雇給付に係る負債を、従業員の労働サービスの行わ れる期間にわたって認識することは適切か。適切でなければ、いつ認識すべきか。また、 適切でないのはなぜか。 1 IAS 第 19 号改訂案和訳 主な変更の概要(IAS19) 主な変更点としては、以下の内容が提案されている。 解雇給付の定義 IAS 第 19 号の解雇給付の定義には、給付と交換に自発的退職を受け入れるという従 業員の決定の結果支払うべき従業員給付が含まれている。公開草案は以下の点を提案 する。 ■ 給付と交換に自発的退職を受け入れるという従業員の決定の結果支払うべき従業 員給付は、それらが短期間に支給される場合にのみ、解雇給付に該当するよう、 定義を明確にすべきである。 ■ 通常の退職日前に従業員に退職するよう勧奨するために行われるその他の従業員 給付は、退職後給付である。 認識 IAS 第 19 号は、企業が、従業員の雇用を通常の退職日前に終了すること、又は自発 的退職を勧奨するために行った募集の結果として解雇給付を支給すること、のいずれ かを余儀なくされたと証明できる場合に、解雇給付を認識しなければならない、とし ている。公開草案は以下の点を提案する。 ■ 自発的退職による給付は、企業からの当該給付の申し出を従業員が受け入れた時点 で認識しなければならない。 ■ 非自発的退職による給付は、関係する従業員に解雇計画を通知し、当該計画が特定 の規準を充足した時点で認識しなければならない。ただし、非自発的退職による 給付が、従業員の将来の労働サービスの対価として支給されるものである場合を 除く。そのような場合、解雇給付に係る負債を、従業員の労働サービスの行われ る期間にわたって認識しなければならない。 2 IAS 第 19 号改訂案和訳 目次 国際会計基準第 19 号 「従業員給付」 ・・・ 定義 7 ・・・ 解雇給付 132-147 認識 137-142 測定 143-145 開示 146-147 ・・・ 発効日 本会計基準のその他の変更 改定案に関する結論の背景 159D 3 IAS 第 19 号改訂案和訳 国際会計基準第 19 号の改定案 従業員給付 参照の便宜のため、改訂を提案するパラグラフについては、追加する文章に下線を引き、 削除する文章に抹消線を引いて示している。新たに提案するパラグラフには下線を引いて いない。 定義 第 7 項を以下のように修正する。 7 以下の用語は、本基準書では特定の意味で用いている。 ・・・・ 解雇給付とは、次のいずれかの結果として支払うべき従業員の雇用の終了に伴っ て与えられる従業員給付をいういい、次のいずれかに該当する。 (a) 通常の退職日前に従業員の雇用を終了するという企業の決定の結果として与 えられる、非自発的退職による(involuntary)解雇給付; 又は (b) 当該給付を見返りに自発的退職を受け入れるという従業員の決定の見返りと して短期間支給される、自発的退職による(voluntary)解雇給付 最低留保期間とは、退職に先立って、企業が、従業員に提供することが要求される 予告期間である。当予告期間は、法律、契約、又は労働協約で明記され、又はビ ジネスの慣行として暗示されているかもしれない。 解雇給付 第 132 項修正。第 135 項を移動・修正し、第 133 項に項番変更。第 134 項・第 135 項を追 加。第 136 項を移動・修正。 132 本基準書は、解雇給付を他の従業員給付とは別個に取り扱う。第 139 項及び第 140 項で説明されている場合を除き、債務を生じさせる事象が従業員の勤務ではなく、 解雇だからである。 135133 企業は、法令により、企業と従業員若しくはその代表者との間の契約若しくは他の 取決めにより、又は実務慣行、慣習若しくは公平に行動しようとする欲求に基づく 推定的債務により、企業が従業員の雇用を終了するときには、従業員に支払を行う 4 IAS 第 19 号改訂案和訳 (又は他の給付を支給する)ことを余儀なくされることがある。当該支払は、解雇 給付である。解雇給付は、典型的には一時金の支払であるが、時には、以下に掲げ る事項を含むことがある (a) 従業員給付制度を通じた間接的若しくは直接的な退職給付又はその他の退職 後給付の引上げ; 及び (b) 従業員が企業に経済的便益をもたらす勤務をもはや提供しない場合の、特定の 予告期間末日までの給与。 134 非自発的退職による給付は、多くの場合、現行の給付制度を踏まえた条件で行われ る。例えば、それらの条件は、規則、雇用契約、労働協約によって決められている 場合もあろうし、事業主が過去に行った同様の給付慣行から暗に示される場合もあ ろう。そうでなければ、例えば、企業が継続的な給付制度を有していないとか、現 行の給付制度で規定された額に追加して給付を行うということになるため、そうし た給付は企業の裁量で支払われ、従業員が通常受け取る権利を有する給付に追加し て支給される。 135 企業によっては、通常の退職日前に、従業員に自発的に退職を受け入れるよう勧奨 するために、給付を行うことがある。本会計基準の目的に照らすと、そのような給 付は、短期間に行われる場合にのみ、解雇給付となる。従業員に自発的に退職を受 け入れるよう勧奨するために行われる、その他の給付(例えば現行の給付制度で得 られるようなもの)は、従業員の労働サービスの対価として支払われるものである から、退職後給付である。 136 従業員給付の中には、従業員の退職理由とは無関係に支払われるものがある。当該 給付の支払は確実である(権利の確定又は最低勤務期間の要件を条件とする)が、 その支払時期は不確実である。当該給付は、ある地域では離職補償又は退職慰労金 と表現されるが、それらは解雇給付ではなく退職後給付である。そして企業はそれ らを退職後給付として会計処理する。企業によっては、従業員の要求による自発的 退職による給付(実質的に退職後給付)を、企業の要求による非自発的退職の場合 よりも低い水準により支給する。非自発的退職により支払うべき追加的給付が、解 雇給付である。 認識 第 133、134、137、138 項を削除。第 137 項~第 147 項を追加。 137 企業からの申し出により、従業員が自発的退職による給付を受け入れる場合、企業 は、解雇給付を、負債及び費用として認識しなければならない。 138 第 139 項に規定される場合を除き、企業が、関係する従業員に通知済みの解雇計画 5 IAS 第 19 号改訂案和訳 を有し、当該計画を完遂するのに必要な手立てから判断して、計画に重要な変更が なされる、あるいは計画が撤回される可能性を有しない場合には、企業は、非自発 的退職による解雇給付を、負債及び費用として認識しなければならない。そのよう な計画は、以下の点を明らかにしなければならない。 (a) その勤務を終了させるべき従業員の数、職能、所在、計画の完了予定日;及び (b) 給付の種類(現金を含み、現金に限定されない)や金額等、従業員が退職後に 受け取る給付を決定するのに十分詳細な内容 139 非自発的退職による給付が、従業員の将来の労働サービスの対価として支給される ものである場合、企業は解雇給付を、従業員の労働サービスの行われる期間(第 138 項に規定される日から解雇までの日)にわたって、負債及び費用として認識し なければならない。 140 非自発的退職による給付の中には、従業員の将来労働サービスの対価として支給さ れるものがある。本会計基準の目的に照らすと、以下のような給付がこれに該当す る。 (a) 従業員が通常受け取る権利を有する給付に追加して支給される(現行の給付制 度の条件には従わない) ; (b) 雇用の終了まで確定しない;及び (c) 最低留保期間を超えて留保される従業員に支払われる 141 事業主は、既存の給付制度の条件の拡充と言えるような、非自発的退職による給付 を支給することがある。例としては、雇用法による給付が倍増される場合や、退職 後給付制度を通じて支払われる退職給付が割り増されるといった場合があげられ る。現行給付制度の拡充に帰せられる解雇給付が、現行制度の条件の改訂を意味せ ず(したがって将来離職する従業員に適用されず)、第 140 項(b)の規準を充足する 場合、その解雇給付は、第 139 項に従って認識される。 142 解雇給付が、退職後給付制度を通じて支給される場合、当初認識される負債及び費 用には、それらの解雇給付の支給から生ずる追加的給付の価値のみが含まれる。従 業員が従来の想定よりも早く離職することに起因する、退職後給付制度に係る確定 給付債務のその他の変動は、保険数理差損益又は縮小として認識しなければならな い。 測定 第 139・140 項を修正し、第 143・145 項に項番変更。第 144 項及び適用例を追加。 139143 貸借対照表日後 12 ヵ月後以降に解雇給付の期日が到来する場合には、企業は、当 該給付はを第 78 項中で明示した割引率を使用して割り引かき、退職後給付の認識 6 IAS 第 19 号改訂案和訳 及び測定の要件に従わなければならない。 144 その結果、解雇給付が退職後給付制度を通じて支給される場合には、当初の測定と その後の認識及び測定は、内在する退職後給付制度に係る IAS 第 19 号の要件と整 合する。 140145 自発的退職を勧奨するために申し出を行った場合には、確定していない非自発的退 職による給付に係る債務の測定は、当該申し出を受け入れると予想される従業員数 を基礎に解雇給付確定前に従業員が自発的に離職する可能性を反映しなければな らない。 第 138-145 項を説明する例 背景 ある企業は、つい最近行われた買収の結果として、12 ヶ月以内に工場の一つを閉鎖し、 閉鎖時点で残っている工場労働者を全て退職させることを計画している。この企業は、契 約の履行にあたりこの工場の労働者の専門技能を必要としているため、次のような解雇給 付制度を発表する。残る 12 ヶ月の全期間工場に留まり業務を行う従業員には、解雇給付と して、雇用法で規定される額の 3 倍の現金を退職日に支給する。 この企業では、雇用法で規定される最低限の解雇給付を支給するのがこれまでの慣例で ある。その金額は、この工場の労働者の場合、一人あたり 10,000 である。雇用法ではまた、 企業が解雇の意図を 60 日前もって従業員に通知することを要求している。 この工場には 120 人の労働者がおり、うち 20 人は、閉鎖の前に自発的に離職すると見込 まれる。したがって、この解雇給付制度のもとでの期待キャッシュ・フローの総額は、 3,200,000 である(20×10,000+100×30,000)。 第 141 項で要求されているように、企業はこの給付を、現行給付制度部分と拡充部分と に分けて別個に会計処理する。 現行給付制度部分 当該解雇給付のうち現行制度に従って支給される部分の負債 1,200,000(120×10,000) は、解雇の計画が発表された時点で認識される。その負債は、法律により支払が要求され る 1,200,000 の給付を表す。 追加給付部分 従業員が通常受け取る権利を有する給付に追加して支給される(そして将来の労働サー ビスに対応する)解雇給付の期待キャッシュ・フローは 2 百万(100×20,000)である。こ の例では割引は要求されないので、負債及び毎月 166,667 の費用(2,000,000÷12)が、将 来の 12 ヶ月のサービス期間にわたって認識される。もし閉鎖の前に自発的に離職すると見 7 IAS 第 19 号改訂案和訳 込まれる従業員数が変わる場合には、企業は、解雇給付に係る期待キャッシュ・フローの 見積もりについて相応の調整を行う。この結果、認識される負債についても同様に調整を 行う。 開示 第 141 項を削除。第 142・143 項を修正し、第 146・147 項に項番変更。 142146 IAS 第1号による要求によって、当該費用が重要な場合には、企業は、費用の性質 及び金額を開示する。解雇給付の費用は、当該要求に準拠するためのに開示を必要 とするような費用を生じさせる場合があろう。 143147 IAS 第 24 号「関連当事者についての開示」により要求される場合には、企業は、 重要な役職者への解雇給付に関する情報を開示する。 発効日 第 159D 項を以下のように修正する。 159D 企業は、第 7 項及び第 132-147 項の修正を、2007 年 1 月 1 日以後開始する最初の 年度の期初から適用しなければならない。比較情報をリステートする必要はない。 早期適用は推奨される。ただし、企業は、改定案の発行される日以後開始する年度 の期初からのみ適用しなければならない。企業が発効日より前に当該修正を適用す る場合には、その事実を開示しなければならない。 本会計基準のその他の変更 上記の変更の結果、他のパラグラフが以下の説明のとおり修正される。 第 111 項を以下のように変更する。 111 縮小は、次のいずれかの場合に発生する。 (a) 企業が制度の対象となる従業員数の相当の削減を行うことを余儀なくされた と証明できる場合; 又は (b) 企業が、現在の従業員による将来の勤務の重要な要素がもはや給付に適格とは ならず、又は減額された給付のみに適格であるように給付建制度の条件を改訂 した場合。 8 IAS 第 19 号改訂案和訳 縮小は、工場の閉鎖、又は営業の廃止又は制度の終了若しくは停止のような独立 した事象から発生するであろう。縮小による損益の認識が財務諸表に重要な影響 を及ぼす場合には、当該事象は、縮小に該当するだけの重要性がある。縮小は、 リストラクチャリング解雇給付の支給と結合していることもある。したがって、 企業は、縮小を関連するリストラクチャリング解雇給付と同時に会計処理する。 9