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ファンドニュース IFRSリース会計と投資不動産との関係
ファンドニュース IFRSリース会計と投資不動産との関係 2013 年9月 概要 国際財務報告基準(IFRS)では、現在、リース会計についての見直しプロジェクトが進捗しており再公開草案が公開さ れています。その中で不動産のリースについては他の資産のリースとは異なる処理となることが予定されています。また、 投資不動産については、日本基準と IFRS との典型的な相違点の一つとして取り上げられることが多い公正価値評価モ デルの適用が可能ですが、当該取扱いは投資不動産にのみ認められた取扱いです。これら2つの基準は、直接関連す るものではありませんが、使用される概念について整合性がとられるべきとの意見もあるようです。また、新たなビジネス モデルとして、建物ではないものの電波通信塔のスペースを貸出すといったビジネスも登場しており、これについてどの ように考えるかという点も議論になっているようです。 これについて国際財務報告基準解釈指針委員会(IFRIC)(以下「解釈指針委員会」といいます。)における議論の内 容をご紹介したいと思います。 内容 解釈指針委員会の議論の動向は定期的に IFRIC Update として公表されています。この Update の July 20131におい て上記の問題が議論されていることが紹介されています以下で抄訳を掲載し、概要を説明いたしますが、正確なものは 必ずリンク先の原文を参照してください。 解釈指針委員会での検討中の事項(抄訳) ビルディング(以下「建物」とします。)としての物理的特性を欠いているようにみられる構造物への IAS 第 40 号(投資 不動産)の適用 解釈指針委員会は、テレコミュニケーションタワー(以下、「電波通信塔」という。)が IAS 第 16 号(有形固定資産)に基 づき有形固定資産として計上すべきものか、IAS 第 40 号(投資不動産)に従い投資不動産として計上するべきものかど うかを明確にしてほしいという要請について議論を行った。当該要請は、ある企業が電波通信塔を所有し、通信事業者 が機材を設置するためのスペースを通信事業者にリースしている状況を想定している。当該企業は通信事業者に対して メンテナンスサービスなど、いくつかの基本的なサービスも提供している。このような電波通信塔内のスペースのリースは 新たなビジネスモデルである。要請者は、次の点について具体的、明確化を求めている。 a. 1 電波通信塔は、 建物として、IAS 第 40 号の第5項に記載されて不動産に該当するか、および - http://media.ifrs.org/2013/IFRIC/July/IFRIC-Update-July-2013.pdf b. この問題を分析する際、リース契約に含まれているサービス要素および企業のビジネスモデルをどのように考慮す べきであるか 2012 年9月と 2013 年1月に行われた議論では、解釈指針委員会は、電波通信塔のスペースは賃料を得るためにテ ナント貸し出されているため、投資不動産のいくつかの特徴を有していることを指摘した。一方、解釈指針委員会は、次 のような懸念も表明した。 a. 電波通信塔は、壁、床、屋根など通常、建物にみられる特徴を欠いており、建物として適格であるか疑問 b. 同様な問題が、気体貯蔵タンクや広告看板などの他の構造物にも発生する可能性がある IAS 第 40 号の改正を検討することによって、IASB が IAS 第 40 号の範囲に、建物が通常有する物理的特性を欠いて いる構造体を含めるよう拡張されるべきであるかの決定に役立つメリットがある。また、電波通信塔内のスペースのリース などの新しいビジネスモデルにも対応できる。 しかしながら解釈指針委員会はまた、新たに提案されているリース会計モデルでは、(a)どのように貸し手の会計処理 を決定するか、また(b)どのように借り手がリース関連費用を損益計算書で認識するかを決定するためのガイドラインが当 該リースが「不動産」のリースであるかどうかに(大きな割合で)依存することを認識しており、そのため、この点において 「不動産」の意味が新たに提案されているリース会計モデルでのものと整合性を有するべきか懸念していた。 よって解釈指針委員会は、委員会で表明された見解を IASB に報告するようスタッフに指示するとともに、IAS 第 40 号 での不動産の定義と新しく提案されているリース会計モデルでの定義との整合性をどの程度考えるのかについて IASB の見解を求めるようにも指示した。 2013 年7月 16 日および 17 日に行われた解釈指針委員会の会議では、また 2013 年5月に発表されたリース公開草 案における新しく提案されているリース会計モデルと本件がどのように関係するかについて、スタッフから解釈指針委員 会に対して報告されるとともに、IAS 第 40 号における投資不動産の定義を改正するように提案されたアプローチが提示 された。議論の中で、解釈指針委員会は、資産の物理的特性や土地に固着していることに焦点をあてるのではなく、資 産の使用の態様に焦点をあて、電波通信塔のような構造物をも含めるように IAS 第 40 号の適用範囲を広げることにつ いて一般的な支持を与えた。 それにも関わらず、解釈指針委員会は、IASB が IAS 第 40 号の 投資不動産の定義とリース公開草案における不動 産の定義を暫定的に同一としたことを認識していた。解釈指針委員会は、IAS 第 40 号と提案されているリース会計モデ ルとが相互に関連しているため、IAS 第 40 号の中だけで定義されている投資不動産の定義を改正するアプローチを推 奨することは困難であると考え、この問題は IAS 第 40 号およびリースプロジェクトの双方の基準内で分析されるべきであ ると解釈指針委員会は指摘した。 したがって、解釈指針委員会は、IASB がリース基準を最終化した時点でこの問題を検討することができるように IASB に対して解釈指針員会の見解及び懸念を報告するとともに、解釈指針委員会が本件について追加的な作業を要するか についての IASB のガイダンスの提示を求めた。 今後の動向 この議論の結論は、直接問題とされている電波通信塔およびそのリースの会計処理に影響を与えるだけではなく、こ れまで不動産として認識されてこなかった構造物を不動産として取り扱い、IAS 第 40 号のリース会計の適用を検討する 必要が生じる可能性があり、または、その逆、すなわちこれまで不動産として取り扱われてきたものではあるけれども、除 外されるケースも考えられます。そうした構造物を有する企業は、以上の議論の動向が会計処理等に大きく影響する可 能性があるため、引き続き注意を払うことが必要といえそうです。 文中の意見にわたる部分は筆者の私見であることを申し添えます。 あらた監査法人 第3金融部(資産運用) マネージャー 太田英男 あらた監査法人 第3金融部(資産運用) お問い合わせフォーム 本冊子は概略的な内容を紹介する目的で作成されたもので、プロフェッショナルとしてのアドバイスは含まれていません。個別にプロフェッショナル からのアドバイスを受けることなく、本冊子の情報を基に判断し行動されないようお願いします。本冊子に含まれる情報は正確性または完全性を、 (明示的にも暗示的にも)表明あるいは保証するものではありません。また、本冊子に含まれる情報に基づき、意思決定し何らかの行動を起こされ たり、起こされなかったことによって発生した結果について、あらた監査法人、およびメンバーファーム、職員、代理人は、法律によって認められる範 囲においていかなる賠償責任、責任、義務も負いません。 © 2013 PricewaterhouseCoopers Aarata. All rights reserved. In this document, “PwC” refers to PricewaterhouseCoopers Aarata, which is a member firm of PricewaterhouseCoopers International Limited, each member firm of which is a separate legal entc 2013 PricewaterhouseCoopers Aarata. All rights reserved. In this document, “PwC” refers to PricewaterhouseCoopers Aarata, which is a member firm of PricewaterhouseCoopers International Limited, each member firm of which is a separate legal entity.