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2004年6月号 - 信金中金 地域・中小企業研究所

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2004年6月号 - 信金中金 地域・中小企業研究所
ISSN1346-9479
Shinkin Central Bank Monthly Review
第 3 巻 第 7 号( 通 巻 3 7 5 号 )
● F TA(自由貿易協定)構 想と日本 経 済へ の影 響
−市場開放の進展などにより、日本の大多数の産業にとってメリット大−
● 地 元 企 業 主 体によるP F I 事 業 参 画へ のポイント
● 下請型製造業の国内での生き残りのポイント
−先進的中小金属加工業の経営革新事例から−
● 中国環渤海地域(山東省)の投資環境
−煙台市の現況−
● 統計
2004. 6
「信金中金月報掲載論文」募集のお知らせ
○対象分野は、当研究所の研究分野でもある「地域金融」「中小企業金融」「協同組織金融」に関
連する分野とし、これら分野の研究の奨励を通じて、研究者の育成を図り、もって我が国にお
ける当該分野の学術研究振興に寄与することを目的としています。
○かかる目的を効果的に実現するため、本論文募集は、①懸賞論文と異なり、募集期限を設けな
い随時募集として息の長い取り組みを目指していること、②要改善点を指摘し、加筆修正後の
再応募を認める場合があること、を特徴としています。
○信金中金月報への応募論文の掲載可否は、編集委員会が委嘱する審査員の審査結果に基づき、
編集委員会が決定するという、いわゆるレフェリー制を採用しており、本月報に掲載された論
文は当研究所ホームページにも掲載することで、広く一般に公表する機会を設けております。
詳しくは、当研究所ホームページ(http://www.scbri.jp/)に掲載されている募集要項等をご参
照ください。
編集委員会 (敬称略、順不同)
委 員 長
堀内昭義
中央大学総合政策学部教授
副委員長
藤野次雄
横浜市立大学商学部教授(信金中金総合研究所長)
委 員
筒井義郎
大阪大学大学院経済学研究科教授
委 員
濱田康行
北海道大学経済学部教授
委 員
吉野直行
慶應義塾大学経済学部教授
問い合わせ先
信金中央金庫総合研究所「信金中金月報掲載論文」募集事務局(担当:落合、稲葉)
Tel : 03(3563)7541 / Fax : 03
(3563)7551
Shinkin
Central
B a n k
Monthly
Review
研 究
2004年 6月号 目次
FTA(自由貿易協定)構想と日本経済への影響
黒岩達也
2
地元企業主体によるPFI事業参画へのポイント
瀬戸仁志
23
下請型製造業の国内での生き残りのポイント
平井昌夫
46
篠崎幸弘
63
−市場開放の進展などにより、
日本の大多数の産業にとってメリット大−
−先進的中小金属加工業の経営革新事例から−
調 査
中国環渤海地域(山東省)の投資環境
−煙台市の現況−
信金中金だより
信金中央金庫総合研究所活動状況(4月)
73
統 計
信用金庫統計、金融機関業態別統計
75
2004
6
個人名による掲載文のうち意見にわたる部分は執筆者個人の見解です。
投資・施策実施等についてはご自身の判断によってください。
FTA(自由貿易協定)構想と日本経済への影響
−市場開放の進展などにより、日本の大多数の産業にとってメリット大−
信金中央金庫 総合研究所上席主任研究員
黒岩 達也
(キーワード)FTA、WTO、ASEAN、産業構造改革、ビジネス環境
(視 点)
日本と各国とのFTAをめぐる動きが活発化している。すでに、日本はシンガポールと経済連
携協定を結んでおり、今年3月にはメキシコとのFTA協議が妥結した。今後は、ASEAN諸国、
韓国、台湾などとの協議が深まり、ここ1∼2年のうちに、FTA締結で合意される可能性が高ま
っている。FTAは単に関税や非関税障壁の撤廃のみならず、投資や人的移動などをも促すもの
であり、市場の自由化が中小企業にどのような影響をもたらすのかを検証しておくことが重要
である。そこで、本稿では①FTAをめぐる最近の動きとその意義、②日本のFTAへの取り組み
とその必要性、③FTAが日本経済・産業へ与える影響、についてまとめ、最後に④農業の自由
化、人材の受け入れなどFTAを進める上での課題、を考察した。
(要 旨)
●
90年代以降、WTO体制の下での合意形成がむずかしくなるなか、多角的貿易体制を補完す
るものとしてFTA締結の動きが活発化している。
●
日本のFTAへの取り組みは遅れていたが、最近ではアジア諸国・地域を中心としたFTA協議
が進展している。日本にとってFTAのメリットは、貿易創造効果による経済の活性化、貿易
転換効果による不利益の解消・防止、新分野における連携の強化、内外の構造改革の促進、
などが考えられる。
●
ASEAN+3(日中韓)という広範囲な地域でFTAが成立した場合、日本のGDPは大きく押し
上げられる可能性が高い。産業界に与える影響は業種によって様々であるが、総じて言え
ば、相手国・地域の関税、非関税障壁の撤廃による輸出拡大、FTAを契機とした国内の産業
構造改革の進展などの面でメリットがデメリットを大きく上回る。
●
今後、FTAを円滑に進めるためには農産物市場の自由化と労働市場の開放がカギを握る。日
本の経済再生のためにも、これらの課題に主体的に取り組むことが求められる。
2
信金中金月報 2004.6
とを示唆した。
1.FTAをめぐる最近の動きとその意義
(1)多角的貿易自由化と地域統合
こうしたEUの経験を踏まえて、現在、世界
各地域で様々な地域統合の動きがみられる。そ
第二次大戦後の世界では、GATT(関税と貿
の内容は、大きく分けて発展段階別に5つのタ
易に関する一般協定)体制の下で8回におよぶ
イプに分類される(図表1)。1つは、「自由貿
多角的貿易交渉により大幅な関税引き下げや
易地域(Free Trade Area)
」であり、これは双
非関税障壁の削減が実現した。GATT体制は、
方の関税・数量制限を原則的に撤廃するもの
貿易の拡大や直接投資の増大をもたらし、世
である。この自由貿易地域が域外に対して共
界経済の発展に大きく貢献した。さらに、95
通の関税率を適用する場合を「関税同盟」と
年にはGATT体制を一段と強化するためにWTO
言う。
「共同市場」は、これらに加えて、労働
(世界貿易機関)が設立され、従来のモノの貿
力などの生産要素の移動まで自由化した地域
易自由化に加えて、サービス貿易の自由化を
であり、
「経済同盟」は共通通貨を基本として
も含めた多角的貿易自由化が目指されるよう
共通のマクロ経済政策を実施する段階に至っ
になっている。
た地域である。最終ゴールは、超国家機関を
GATT・WTO体制による国際化が急速に進
持つ「完全に統合された地域」である。
展する一方で、一部地域では地域統合の動き
図表2は、現在の代表的な地域統合を示した
も活発化した。1958年に成立したEEC(欧州
ものであるが、NAFTA、AFTA、日本・シン
経済共同体)はその代表的存在であり、共同
ガポール新時代経済連携協定がFTA、南米の
市場の創設を目指すものであった。EECは、68
MERCOSUR(メルコスール:南米南部共同市
年までの10年間に域内貿易の自由化と域外に
場)が関税同盟、EUが共同市場という位置づ
対する共通関税の適用を実現したと同時に、共
けになる。現在、人口規模、経済規模からみ
通農業政策を完成させた。さらに、
図表1 地域統合の形態別分類
ヒト・モノ・サービス・資本の域内
移動の自由化を経て、経済・通貨統
合を実現するマーストリヒト条約が
93年に発効し、EU( 欧州連合)が
発足した。
欧州における地域統合の経験は、
地域的な経済緊密化が必ずしも世界
経済の発展を妨げるものではなく、
自由貿易地域 関税同盟
関税・数量
制限の撤廃
対域外共通
関税の設定
国際化を促進させる可能性があるこ
経済同盟 完全な地域統合
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
生産要素の
移動自由化
共通のマクロ
経済政策実施
超国家機関
の設立
具体事例
むしろ、やり方によっては自由化・
○
共同市場
○
NAFTA、日シ MERCOSUR
EU
ユーロ
該当なし
(備考)1.○印は当該形態で採用される政策を示す。
2.WTO資料等により作成
研 究
3
て、アメリカを中心とするNAFTAと
図表2 世界の代表的な地域統合
ドイツ、フランスを中心とするEUが
世界の地域統合の両極を成している。
なお、WTOでは自由貿易協定
(Free Trade Agreement:FTA)を
「自由貿易地域」と「関税同盟」の2
つに定義しているが、本稿ではこれ
らの発展形態であるEUなどを含めて
FTAとして扱う。
(2)WTOとFTA
図表3は、WTOに報告された世界
のFTAの累積件数を示したものであ
名 称
人口
GDP
(億人)
(兆ドル)
加盟国
NAFTA
(北米自由貿易協定)
〈3カ国〉
アメリカ、カナダ、メキシコ
〈10カ国〉
インドネシア、マレーシア、フ
AFTA
ィリピン、シンガポール、タイ、
(ASEAN自由貿易地域)
ブルネイ、ベトナム、ラオス、
ミャンマー、カンボジア
〈2カ国〉
日本・シンガポール
日本、シンガポール
新時代経済連携協定
〈4カ国〉
MERCOSUR
アルゼンチン、ブラジル、パラ
(南米南部共同市場)
グアイ、ウルグアイ
〈15カ国〉
フランス、ドイツ、イタリア、ベ
ルギー、イギリス、オランダ、
ルクセンブルク、スペイン、ポ
EU(欧州連合)
ルトガル、ギリシャ、アイルラ
ンド、オーストリア、スウェー
デン、フィンランド、デンマーク
4.2
11.8
5.3
0.6
1.3
4.1
2.2
0.6
3.8
8.6
(備考)1.人口、GDPは2002年の数字。EU加盟国は2004年4月現在
2.世界銀行、EUROSTAT資料等により作成
る。FTA件数は90年代になって急速に増加し
っている(最恵国待遇の原則)
。しかし、特に
ており、現在活動中のFTAは昨年末で合計181
90年代以降、WTO加盟国が大きく増加したこ
件に達した。
とや交渉項目が多様化したことによって、
90年代以降、FTAが急速に増加している背
WTOでの合意形成が難しくなっている。実際、
景にはWTO体制の行き詰まりがある(図表4)
。
2000年11月のドーハ閣僚会議では114カ国が参
WTOは、どの国に対しても同様の条件で、
加し、2004年末までに関税、投資、環境保護
関税などの通商規則を定めることが原則とな
などの新ルール作りに取り組むことが宣言さ
図表3 世界のFTA件数の推移
(件)
200
181
180
160
90年以降、FTA締結の
動きが活発化
140
120
100
80
60
40
20
0
1958
1964
1970
(備考)WTO資料により作成
4
信金中金月報 2004.6
1976
1982
1988
1994
2000(年)
れたものの、その後、先進国と途上
図表4 WTOとFTAの関係
国の利害対立から一向に協議が進展
WTO体制
していない。
○どの国に対しても同様の条件で、
関税などの通商規則を定めること
が原則(最恵国待遇)
○関税、国内支持、輸出補助金等の
削減ルール等を交渉
こうした状況下、FTAはEUの成立
とも相まって、WTO体制を補完する
ものとして注目されるようになった。
加盟国の増加
交渉項目の多様化
WTOでの機動的な
交渉や合意形成が
難しくなる傾向
FTAはWTOの
多角的貿易体制を補完
WTO協定でも、FTAは域外に対して
障壁を高めないことや域内での障壁
を実質的にすべての貿易で撤廃する
自由貿易協定(FTA)
ことなど一定の条件の下、最恵国待
○協定構成国のみを対象として、排他的に関税
の撤廃等(特恵待遇)を実施する仕組み
○原則として、10年以内の関税撤廃を交渉
遇原則の例外として認められており、
FTA完成までの期間は原則10年以内
(備考)財務省、農林水産省資料により作成
とすることが了解事項となっている(注)1。
に与える影響については、これまでに様々な
議論がなされてきている(図表5)。FTAを積
極的に評価する意見としては、多角的貿易自
(3)FTAの意義と経済効果
FTAが多角的貿易自由化、つまりWTO体制
由化を推進する際、①各地域でFTAが形成さ
図表5 FTAが多角的貿易自由化に与える影響
■FTAが多角的自由化を推進する主な理由
①交渉主体の減少
(Summers, 1991; Krugman, 1993)
②小国の交渉力の増大
(Lawrence, 1996)
③国内産業調整の進展
(Wei and Frankel, 1995)
国の単位で多角的自由化交渉を行うより、地域統合締結後に地域単位同士で交
渉を行った方が、交渉が進みやすい。
規模の小さい国が地域統合を締結することにより、大国に対する自由化推進の
交渉力を高める(米国に対するMERCOSURの例)。
FTAの締結が国内構造調整を進展させる結果、衰退産業の規模が縮小し、長期
的には多角的貿易自由化に向けた政治的反発が弱くなる。
④国内改革推進による途上国の
多角的貿易自由化に消極的な途上国と先進国がFTAを結ぶことにより、途上国
マルチ交渉への参加
への直接投資流入や国内改革・自由化が進み、途上国が交渉を推進する誘因が
(Ethier, 1998)
高まる。
■FTAが多角的自由化を阻害する主な理由
①価格支配力の増大
(Kennan and Riezman, 1990;
Krugman, 1991)
域外に貿易障壁を残して域内貿易を自由化した場合、域内で生産される財の価
格支配力が増大し、域外に対する輸出価格の上昇・輸入価格の下落を通じて(域
外国の犠牲の下に)域内に追加的な利益をもたらすため(交易条件効果)、域
外に対する自由化の抵抗となる。
②国内産業の保護
(Grossman and Helpman, 1995;
Krishna, 1998)
一部の国にのみ自由化を行うFTAは、自由化の利益を享受しつつ国内産業への
競争圧力をある程度押さえることができるため、(域外国の犠牲の下に)多角
的貿易自由化以上の利益を享受できる可能性がある。
(備考)出所は経済産業省『通商白書』2001年版
(注)
1.
「ガット第24条」および94年の「ガット第24条の解釈に関する了解」による。関税については、
「構成地域間の実質上のすべ
ての貿易について廃止する」とされているが、「実質上」の解釈は明確ではなく、現状では多くのFTAにおいて例外的な関税
が残されている。
研 究
5
れることにより交渉主体が減少して合意形成
輸出の前年比を縦軸に、総輸出の前年比を横軸
が容易になる、②小規模な国家がFTAを締結
にとって、その関係をみるといずれも傾きが1
することで大国に対する交渉力が増大する、③
を超えている、つまり、域内輸出の方が総輸出
FTA締結により国内構造改革が進展すれば衰
を上回って伸びていることがわかる(図表7)
。
退産業の政治的反発が弱まる、などがある。反
このほかの効果としては、域内の関税撤廃
面、FTAは最終的には域外国に犠牲を強いる
により域外の製品の競争力が低下し、域内国
ものである、との指摘もある。
からの輸入に転換される「貿易転換効果」
、市
いずれにせよ、90年代以降のFTAの潮流は、
場統一によって規模の経済が実現する「市場
前述のように、WTO体制の行き詰まりという
拡大効果」
、域内国から投資や技術の移転が促
現実問題から発生しており、限定された地域
され、生産力、生産性が向上する「資本蓄積
間であったとしても、貿易の自由化が進展す
効果」および「技術拡散効果」
、加盟国間でよ
れば、その地域の経済発展への寄与が大きく、
り効率的な政策や規制が共有化される「制度
それが最終的に世界経済の発展にも貢献する
革新効果」などがある。
という考え方が、現在は大勢を占めるに至っ
ている。
FTAの経済効果としては、大きく分けて6つ
あると考えられている(図表6)。第一は「貿
易創造効果」であり、関税の撤廃等が域内貿
2.日本のFTAへの取り組みとその必
要性
(1)アジアとのFTAを模索する日本
日本は、世界的なFTAの潮流に乗り遅れて
易を一段と拡大させる効果である。実際、EU、
しまった。米国、欧州の先進諸国が積極的に
NAFTA、ASEAN、MERCOSURについて、域内
FTAの締結に動いた90年代前半、日本はFTA
図表6 FTAによる主な経済効果
①貿易創造効果…関税の撤廃など域内貿易障壁の削減に伴って、域内貿易が一段と拡大する。輸入国
の消費者は同じ輸入財・サービスをより安く消費することができ、輸出国の生産者
も輸出拡大による利益を得ることができるため、域内国の経済厚生は上昇する。
②貿易転換効果…関税等の撤廃は域内に限定されるため、ある財を低コストで生産可能な域外国から
の輸入に対して関税が課される結果、高コストであるが関税のかからない域内国か
らの輸入に転換される。
③市場拡大効果…域内の貿易および投資障壁が削減される結果、市場規模が拡大し、規模の経済が実
現することによって生産性が向上し、経済成長が加速される。
④資本蓄積効果…域内国における期待収益率の上昇、不確実性の減少等から、国内投資や海外からの
直接投資が増加し、生産能力が拡大する。
⑤技術拡散効果…海外の経営者、技術者等が自国に流入してくる場合、優れた経営ノウハウや技術が
自国に拡散するのに伴って生産性が向上し、経済成長が加速される。
⑥制度革新効果…FTA締結に向けた研究および交渉、あるいは締結後の協議等を通じて、加盟国間で
より効率的な政策・規制等のあり方に関するノウハウが共有・移転される。
(備考)経済産業省資料等により作成
6
信金中金月報 2004.6
図表7 FTAの輸出拡大効果
EU-15(93∼2002年)
30
20
y=1.0685x
R2=0.959
25
域
内
輸
出
前
年
比
︵
%
︶
NAFTA-3(94∼2002年)
20
15
10
5
0
-10
-5
0
10
20
30
域
内
輸
出
前
年
比
︵
%
︶
15
10
5
0
-10
5
10
15
総輸出前年比(%)
-10
総輸出前年比(%)
ASEAN-10(93∼2002年)
MERCOSUR-4(95∼2002年)
50
40
y=1.4194x
R2=0.9391
30
20
10
0
-10
-10
10
30
y=1.5553x
2
R =0.4561
30
50
-20
-30
総輸出前年比(%)
域
内
輸
出
前
年
比
︵
%
︶
20
-5
-15
-30
0
-5
-10
域
内
輸
出
前
年
比
︵
%
︶
y=1.1367x
2
R =0.7564
20
10
-40
-30
-20
-10
0
0
10
20
30
-10
-20
-30
-40
総輸出前年比(%)
(備考)WTO資料により作成
に対して消極的な態度に終始していた。この
めてFTAを締結した(図表8)。また、メキシ
背景には、多角的貿易体制の下での貿易自由
コとも今年3月に協議が妥結し、協定の署名を
化こそが日本にとって最もメリットがある、と
待つばかりの状況にある。このほか、日本は
考えられてきたことがある。しかし、WTO構
韓国、タイ、マレーシア、フィリピン、台湾、
成メンバーの増加や交渉の複雑化により多角
インドネシアと具体的協議に入っており、こ
的貿易体制が機能不全を生じるようになった
こ1∼2年のうちに交渉が妥結する可能性があ
結果、日本もFTAを活用して経済外交の幅を
る。このほか、今年からASEANとも包括的な
拡大する方針に転換した。ただ、日本政府は
経済連携に向けた協議が行われている。
WTOによる多角的貿易体制が世界経済のブロ
ック化を防ぐためには依然として有効であり、
FTAはWTO体制をあくまでも補完するもの、
と位置づけている。
98年以降、日本は本格的にFTA締結に向け
て動き出し、2002年1月、シンガポールとはじ
(2)日本にとってのメリット
日本にとってFTAのメリットは、大きく分
けて4つあると考えられる。第一は、貿易創造
効果によって輸出が拡大するメリットである。
たとえば、主要国の関税率を比較すると、日
研 究
7
図表8 日本と各国・地域との協議の進展度合い
国・地域
事前検討
90年11月
シンガポール
産学官共同
研究会
政府間交渉
00年3∼9月
01年1∼10月
協定署名
02年1月
(次官級会談)
99年2月∼00年4月
01年9月∼02年7月
02年11月∼04年3月
協議妥結
02年7月∼03年10月
03年12月∼
03年7∼11月
04年2月∼
(JETRO・商工省)
メキシコ
01年3月∼02年1月
(ビジネスフォーラム)
韓国
02年9月∼03年5月
(作業部会)
タイ
03年5∼7月
(タスクフォース)
03年9∼11月
04年2月∼
03年9∼11月
04年2月∼
(作業部会)
マレーシア
02年10月∼03年7月
(作業部会)
フィリピン
(合同調整チーム)
02年6月∼
(東亜経済人会議の検討会)
台湾
03年9月∼
インドネシア
(政府間の予備的協議)
(備考)1.このほか、ASEANとは2004年から協議を開始し、2012年までに実施措置を完了する予定
2.農林水産省資料等により作成
本の全品目の関税率は5%と低水準にある(図
図表9 各国の平均関税率の比較(2000年)
(単位:%)
表9)。これに対して、現在交渉中の韓国は
18%、タイは29%などとなっており、関税撤
廃は交渉相手国よりも我が国にとって非常に
メリットがある。
第二は、貿易転換効果による不利益の解消・
防止である。特に、メキシコとのFTA締結は、
この面で重要な意義がある。現行のメキシコ
の関税率をみると、すでにメキシコとFTAを
結んでいる対NAFTAや対EUの関税はゼロであ
るのに比較し、対日関税率は自動車20%、自
動車部品18%などと高い(図表10)
。自動車産
8
信金中金月報 2004.6
農産物
日本
米国
EU
カナダ
オーストラリア
スイス
ノルウェー
韓国
タイ
インド
アルゼンチン
メキシコ
フィリピン
マレーシア
インドネシア
12
6
20
5
3
51
124
62
35
124
33
43
35
14
47
全品目
5
4
7
5
10
9
26
18
29
67
31
36
27
16
40
(備考)出所は農林水産省『自由貿易協定を巡る各国との議論
の状況と今後の対応』(2003年12月)
業でみれば、日本企業は、FTA域外に置かれ
期待される。
ることにより、米国やEUの企業に比べて価格
競争力で2割ものハンディを負っている。
第三は、特にアジア諸国との間でWTOの動
きを先取りする分野、あるいはカバーされて
これによる日本の輸出減少額は、NAFTAが
いない分野での連携が可能になることである。
成立した94年から2002年までの累計で4.7兆円
図表12は「日本・シンガポール新時代経済連
に達したと考えられる(図表11)
。ただ、日本
携協定」の概要をまとめたものだが、これを
とメキシコがFTAで合意したことにより、今
モデルとして、日本政府は他のアジア諸国・
後はこうした不利益を避けることができると
地域とも交渉を進めている。シンガポールと
のFTAでは、関税の撤廃のほか、関税手続き
図表10 メキシコの対日関税率
(対NAFTA、EUの関税率は0%)
品 目
の簡素化、サービス貿易の自由化、投資環境
関税率(%)
の改善、知的財産権の保護など、WTOを先取
自動車
20
自動車部品
18
蓄電池
13
プリント基板
18
スイッチ・継電器等の機器
13
第四は、国内の構造改革の機運を盛り上げ
写真用の化学品
18
ることができることである。特に、日本がFTA
無線用の受信機器
23
りする内容も盛り込まれており、これらは日
本企業のビジネスチャンスを広げるものと期
待される。
を推進するためには、日本自身が一層、自由
(備考)出所は経済産業省
化・国際化され、相手国にとって魅力的な市
図表11 メキシコとのFTAに乗り遅れたことによる日本の輸出減少額
(億円)
16,000
対メキシコ輸出実績
試算による推計
14,000
12,000
10,000
輸出減少額
兆円
4.7兆円
(94∼02年累計)
年累計)
(94∼02年累計
8,000
6,000
4,000
2,000
0
90
91
92
93
94
95
96
97
98
99
00
01
02
(年)
(備考)1.NAFTA締結直前の対日輸入シェア(6.6%)が現在でも維持されていると仮定した試算
2.経済産業省資料等をもとに作成
研 究
9
図表12 日本・シンガポール新時代経済連携協定の概要
日本側
シンガポール側
往復の貿易額の98.5%が無税譲許
物品の貿易
対シンガポール輸入の93.8%
対日輸入の100%
(鉱工業品では98.2%)
4つの関税撤廃スケジュール
原産地規則
自
由
化
・
円
滑
化
分
野
即時撤廃
原則として「関税分類変更基準」を適用。化学製品を含む264品目については、付加価値基準
(60%)の選択的な適用が認められる。
関税手続き
関税手続きの簡素化や国際的調和に向けた努力
ペーパーレス貿易
貿易文書の電子化
相互承認
電気製品・電気通信機器が対象。輸出に当たって必要な検査手続きを自国で行うことが可能
サービス貿易
実務(研究開発、製造業付随サービス、警備
実務
(研究開発、
リース)
、
電気通信、
流通、
教育、
業等)、金融(年金運用、自賠責保険の再保険
環境、
金融
(保険、
銀行)
、
運輸
(国際海上運送、
等)
、
流通、
医療、
社会事業、
運輸
(国際海上運送、 道路運送、貨物運送代理店)など139分野
道路運送、貨物運送代理店)など134分野
投資
人の移動
投資家・投資財産の保護、投資にかかわる内国民待遇の供与、パフォーマンス要求の禁止
(技術移転や研究開発に関する要求等の禁止)
「90日以内の短期商用訪問」、
「企業内転勤」に加え、
「投資家」、
「相手国内企業との契約に基づ
く入国」を対象に追加(製造業、サービス業)。技術士資格(土木分野)の相互承認を検討
知的財産
両国にて同一の発明に関する特許出願を行う場合、日本での審査結果に基づき、シンガポ
ールでの特許付与手続きを円滑化。知的財産権データベースの相互接続等
その他
政府調達、競争政策
強経
化 済 金融、情報通信技術、科学技術、人材養成、貿易・投資の促進、中小企業、観光など
連
携
(備考)出所はJETRO『ジェトロセンサー』2002年12月号
場にならなければならない。
図表13は、国際化指数を作成して、日本が
主要国にくらべてどの程度国際化されている
かをみたものである。国際化指数は、対内開
3.FTAが日本経済・産業へ与える影響
(1)日本経済に与える影響
日本がFTAを締結した場合の経済的影響は、
放度指数、対外開放度指数、情報化指数で構
相手国・地域の状況によって異なるが、ここ
成している。日本はヒト・モノ・カネの移動
では日本がすでにFTAを締結あるいは合意し
という面で主要国に遅れをとっており、日本の
たシンガポール、メキシコおよび現在交渉を
国際化程度は主要37カ国・地域のなかで22番
進めているアジア諸国・地域について、その
目にとどまっている。今後は、日本自らが自由
影響を考えてみる。
化・国際化を進めることにより市場としての
日本がアジア諸国・地域等とFTAを締結し
魅力を高める必要があるが、FTAはこのための
た場合、貿易創造効果や市場拡大効果などに
構造改革を促す起爆剤となる可能性が大きい。
より域内の財・サービスの貿易が活発化し、日
10
信金中金月報 2004.6
図表13 主要国の国際化指数
国際化指数
対内開放度指数
対外開放度指数
情報国際化指数
1
香港
82.21
香港
73.82
香港
92.36
シンガポール
82.27
2
シンガポール
78.31
シンガポール
65.09
シンガポール
87.57
香港
80.45
3
スイス
53.07
ベルギー
47.65
オーストリア
66.69
デンマーク
61.11
4
デンマーク
52.75
スイス
46.26
ベルギー
65.11
オランダ
55.80
5
ベルギー
52.64
デンマーク
40.26
スイス
60.82
カナダ
55.32
6
オランダ
51.21
オランダ
39.68
オランダ
58.16
スウェーデン
53.68
7
オーストリア
45.40
チェコ
30.57
デンマーク
56.89
ノルウェー
52.88
8
ノルウェー
44.64
スウェーデン
29.82
ノルウェー
52.35
スイス
52.14
9
スウェーデン
43.84
ノルウェー
28.68
フランス
48.11
米国
50.99
10
カナダ
40.63
オーストリア
27.59
スウェーデン
48.02
フィンランド
48.09
11
イギリス
38.16
イギリス
23.79
カナダ
47.62
韓国
46.69
12
フィンランド
37.82
フィンランド
23.40
スペイン
45.93
イギリス
46.44
13
ドイツ
33.96
カナダ
18.94
ポルトガル
45.59
ベルギー
45.17
14
米国
32.47
ドイツ
18.58
ハンガリー
45.01
オーストラリア
43.98
15
オーストラリア
30.87
フランス
15.69
ギリシャ
44.62
オーストリア
41.93
16
フランス
30.83
マレーシア
14.49
イギリス
44.26
ドイツ
40.76
17
イタリア
28.48
ハンガリー
12.95
ドイツ
42.56
日本
39.44
18
韓国
28.46
スペイン
11.98
フィンランド
41.99
イタリア
32.78
19
チェコ
28.24
イタリア
11.07
イタリア
41.60
マレーシア
30.54
20
ポルトガル
27.44
ポーランド
10.52
オーストラリア
38.78
フランス
28.70
21
マレーシア
27.05
オーストラリア
9.86
米国
38.05
ポルトガル
27.64
22
日本
27.00
ポルトガル
9.09
チェコ
37.71
スペイン
22.91
23
スペイン
26.94
ギリシャ
8.88
マレーシア
36.11
ギリシャ
18.17
24
ハンガリー
24.30
米国
8.37
日本
35.47
チェコ
16.45
25
ギリシャ
23.89
韓国
6.79
韓国
31.89
ハンガリー
14.94
26
ポーランド
17.72
日本
6.07
ポーランド
30.93
ポーランド
11.71
27
タイ
12.13
メキシコ
2.61
インドネシア
30.87
メキシコ
10.39
28
トルコ
12.06
ロシア
2.11
トルコ
29.60
タイ
7.20
29
インドネシア
11.57
タイ
2.05
フィリピン
29.38
ラオス
6.87
30
フィリピン
11.45
トルコ
1.96
タイ
27.14
トルコ
4.62
31
ブラジル
11.00
ブラジル
1.62
ブラジル
26.80
ブラジル
4.58
32
ロシア
10.52
ラオス
1.18
ロシア
25.90
フィリピン
4.25
33
メキシコ
10.21
フィリピン
0.73
ラオス
19.76
ロシア
3.55
34
ラオス
中国
0.53
ベトナム
18.72
インドネシア
3.42
35
ベトナム
6.80
インドネシア
0.43
メキシコ
17.63
中国
2.12
36
中国
6.71
ベトナム
0.19
中国
17.49
ベトナム
1.50
37
インド
0.38
インド
0.07
インド
インド
0.78
9.27
0.29
(備考)1.対内開放度指数は、財貨輸出、サービス輸出、対外直接投資、出国者数により計算。対外開放度指数は、財貨輸入、サ
ービス輸入、対内直接投資、入国者数、関税率により計算。情報国際化指数は、国際電話通話時間、インターネット加入
者数により計算。国際化指数は、各指数の平均指数
2.浦田秀次郎等編『日本のFTA戦略』日本経済新聞社(2002年7月)を参考に作成
研 究
11
本のGDPが押し上げられる。図表14は、日本
押し上げ効果は0.1∼0.2%程度にとどまる。こ
とシンガポール、韓国、メキシコ、および
の背景には、両国がすでに比較的開かれた市
ASEAN+3(日中韓)という広範な地域でFTA
場であること、シンガポールの場合は国内市
が成立した場合、各国・地域のGDPにどの程
場規模が小さいこと、メキシコの場合は所得
度の影響を与えるかをみたものである。ここ
水準が高くないこと、などがあるものとみら
では、94年末に終了した最後の多角的貿易交
れる。一方、日韓FTAのGDP押し上げ効果は
渉であるウルグアイ・ラウンドでの合意水準
0.45%と比較的大きくなる。これは、韓国の関
を基準とし、各FTAの合意内容が同ラウンド
税率が相対的に高水準であるほか、同国の市
に比べて農業、工業の関税、サービス障壁が3
場規模の大きさ、所得水準の高さに起因して
割削減されたと仮定して、締結10年後のGDP
いる。
押し上げ効果を試算している。
さらに、ASEAN+3というマルチでのFTAが
日本が2国間でFTAを締結した場合、その
成立した場合、締結10年後の日本のGDPは2.6%
GDP押し上げ効果は相手国の経済規模や締結
程度押し上げられることになる。日本以外の
前の関税水準などに左右される。すでに、日
アジア諸国も総じて大きなメリットを享受で
本がFTAを締結しているシンガポール、締結
きる。
に合意しているメキシコの場合、10年後のGDP
図表14 FTAの経済効果
日本−シンガポール
%
百万ドル
〈先進国〉
日本
米国
カナダ
オーストラリア
ニュージーランド
EU・EFTA
〈アジア〉
中国
香港
韓国
台湾
シンガポール
インドネシア
マレーシア
フィリピン
タイ
その他アジア
その他地域
合計
12,029
2,356
163
216
35
2,343
0.45
0.00
0.01
0.02
0.02
0.00
5
31
216
202
2,360
13
△
363
4
50
66
429
20,143
0.00
0.01
0.94
△ 0.04
△ 0.02
0.03
△ 0.03
0.00
0.00
0.00
0.06
0.19
0.03
0.02
0.05
0.05
0.02
0.00
0.02
0.04
0.06
3.17
0.01
△ 0.30
0.00
0.02
0.01
0.06
日本−韓国
%
百万ドル
△
日本−メキシコ
%
百万ドル
29,503
292
46
83
12
△
264
0.10
△ 0.01
0.00
0.00
0.00
0.00
△
0.02
△ 0.01
0.00
△ 0.01
0.00
0.00
△ 0.01
0.00
0.00
0.00
0.58
△
2
9
5,342
△
157
△
19
65
△
32
4
1
16
313
34,062
6,640
832
36
10
3
△
148
△
△
△
△
△
△
△
△
△
△
1
7
17
32
3
6
12
2
0
4
2,023
7,588
ASEAN+3(日中韓)
%
百万ドル
2.62
0.14
0.12
0.40
0.42
0.04
170,390
12,980
870
1,770
310
4,290
1.95
0.16
4.21
3.08
10.66
2.29
6.44
7.28
2.60
△ 0.04
1.17
17,660
210
23,940
10,800
7,930
5,800
7,700
6,420
5,360
△
220
6,410
282,610
(備考)1.推計期間は1995∼2005年。2005年時点におけるGDP押し上げ効果。各FTAにおいて農業と工業の関税およびサービス障
壁が3割削減された場合を想定
2.出所はDrusiia K. Brown 他『Multilateral, Regional, and Bilateral Trade-Policy Options for the United States and Japan』
(2002年12月)
12
信金中金月報 2004.6
(2)日本の産業界に与える影響
車・同部品産業では日本の圧倒的な技術優位
図表15は、日本の産業界にとってのメリッ
性から大幅に生産・輸出が拡大する可能性が
ト、デメリットをまとめたものである。産業
ある。また、電機・電子分野では、韓国、台
界に与える影響は業種によって様々であるが、
湾などとの棲み分けが一段と進み、アジア全
総じて言えば、相手国・地域の関税、非関税
体としてIT関連産業の競争力が向上する効果
障壁の撤廃による輸出拡大、FTAを契機とし
が期待できる。さらに、銀行、証券、保険の
た国内の産業構造改革の進展などの面で、メ
金融分野では、FTAがアジア各国・地域にお
リットがデメリットを大きく上回ると予想さ
ける金融自由化、国際化を促す契機となるこ
れる。
とから、日本企業の市場参入機会が増大して
個別産業では、鉄鋼、自動車を中心とした
ビジネスチャンスが拡大すると期待される。
輸送機器、電機・電子などの機械機器、およ
中小企業にとっても、総じてFTAのメリッ
び金融、通信などのその他サービスの分野で
トは大きい。前述のように、日本から域内へ
メリットが大きいと考えられる。特に、自動
の製品輸出が拡大すれば、中小企業が強みを
図表15 ASEAN+3(日中韓)でFTAが実現した場合の日本の産業界でのメリット、デメリット
産業
全産業
農業
鉱業
食品・タバコ
繊維・衣料品
皮革・靴
木材・木製品
化学製品
非鉄製品
鉄鋼製品
輸送機器
機械機器
建設
商業・運輸
その他サービス
メリット
・相手国の関税引き下げによる輸出競争力の強化
・産業構造改革の加速
・農業構造改革の加速(法人化、ブランド化等の
進展)
・農産物市場の拡大(輸出の増加)
・すでに衰退し影響は少ない
・中国などで委託加工を行っている業者にとって
はコスト削減効果
・中国などで委託加工を行っている業者にとって
はコスト削減効果
・ブランド製品は輸出拡大の好機
・日本の関税引き下げで輸入原材料価格が低下
・ブランド製品は輸出拡大の好機
・ブランド製品を中心に輸出拡大
・輸出増で国内の雇用が若干増加
・高付加価値製品中心に輸出拡大
・国内の雇用が若干増加
・高付加価値製品の輸出が増大
・国内の雇用は比較的大きく増加
・日本の圧倒的技術優位性から生産・輸出が拡大
・資本技術集約型のため雇用は若干増
・電機・電子分野を中心として生産・輸出が拡大
・雇用も比較的大きく増加
・各国・地域で市場参入障壁が撤廃され、海外受
注が増大(雇用拡大効果は大きくない。)
・競争力を持つ小売業、運輸業には海外展開拡大
の好機
・物流の国際分業が実現
・金融、通信等で市場参入障壁が撤廃され、ビジ
ネスチャンスが拡大
デメリット
・市場競争の激化
・デフレ圧力の高まり
・農産物輸入の増加
・雇用は大幅に減少
・食料自給率の低下
・雇用面では若干のマイナス
・低価格製品の国内市場流入
・「食の安全」の確保が困難
・競争力のない国内産業にとって打撃は深刻。雇
用は大幅に減少
・海外への生産シフトが加速
・低価格製品の国内市場流入
・雇用は若干減少
・低価格製品の国内市場流入
・韓国、台湾などとの市場競争が激化する可能性
・韓国、台湾などとの市場競争が激化する可能性
・韓国、台湾などとの市場競争が激化するが、棲
み分けが進む。
・欧米車を締め出す効果があり、貿易摩擦が激化
する可能性
・欧米製品を締め出す効果があり、貿易摩擦が激
化する可能性
・日本でも参入障壁が撤廃されるが、アジアの競
争相手は少ない
。
・インターネット等を活用した国際的な流通革命
の進展による競争激化
・卸売業を中心に産業淘汰が加速
・日本でも参入障壁が撤廃されるが、アジアの競
争相手は少ない。
(備考)信金中金総合研究所作成
研 究
13
持つ部品等に対する需要も大きく伸びると期
日本にとって極めてセンシティブな部分であ
待されるからである。また、衰退産業であっ
り、FTA交渉に当たっては、我が国の食糧安
ても相手国・地域の関税が撤廃され、その分
全保障に悪影響を与えないよう配慮するとと
だけ輸出競争力が向上することから、高付加
もに、我が国の農林水産業における構造改革
価値製品であれば日本で生き残る道が広がる
の進展具合を十分に念頭に置く必要がある。」
可能性がある。
としている(注)2。また、労働市場の開放要求に
対しては、日本と外国との資格要件の違いや
4.日本に残された課題
(1)農業市場の自由化と労働市場の開放が最
日本語のコミュニケーションの重要性などを
指摘している。
大の課題
日本の主張は、国内の現状からみて一定の
次に、今後、日本がFTAを進めていく際、日
妥当性がある。急激な自由化が日本の農業の
本が克服すべき課題について考えておきたい。
荒廃や労働市場の混乱を招くことは好ましく
現在、日本はアジア諸国・地域とFTA協議
ない。しかし、農産物市場の自由化と労働市
を進めているが、アジアの共通した要求は日
場の開放はFTA推進に欠かせないだけでなく、
本の農産物市場の自由化と労働市場の開放で
日本経済の将来のカギを握るものであり、国
ある(図表16)。
内保護の観点から、いたずらにその構造改革
これに対して、日本政府は「農林水産業は
を遅らせることは許されない。
図表16 日本とアジアとのFTAをめぐる今後の焦点
交渉相手
アジア共通
韓国
タイ
マレーシア
フィリピン
インドネシア
台湾
日本側の論点
・農林水産業でセンシティブな部分を抱えてお
り、多様な農業の共存を主張
・労働市場の開放要求に関し、資格要件の違いや
日本語のコミュニケーションの重要性を指摘
・農業も含め、両国の産業界に不利益とならな
いよう検討
・不法入国等の防止措置の必要性
・投資やサービス貿易等に関して、レベルの高
い自由化ルールの策定を主張
・自動車の高関税の撤廃、投資、サービス分野
での自由化および政府調達分野での公平な参
入を要望
・制度運用の透明性・安定性、治安の確保に関心
相手側の論点
・日本の農産物市場の自由化、非関税障壁の撤
廃が重要
・日本の労働市場の開放を要求
・対日貿易赤字拡大と中小企業への影響を懸念
・人の移動に関して査証免除を要求
・鉄鋼製品、自動車および自動車部品等はセン
シティブ品目
・マッサージ師、看護師・介護士、調理師等の
労働市場の開放
・自動車は日本のコメに相当するセンシティブ
品目で、投資、政府調達も柔軟な対応を要望
・特に保健医療サービス分野において、日本の
労働市場の開放を要望
・日本の農産物市場の自由化に関心
・高関税品目の関税撤廃に関心。合板等は日本
のセンシティブ品目
・投資保護、ビジネス環境の整備
・台湾は、WTO協定上、独立関税地域であり、FTA締結は可能。双方の関税水準が低く、FTAのメ
リットは限定的だが、その他の分野での関係強化は重要(日本政府の認識)
(備考)経済産業省、農林水産省資料等により作成
(注)
2.農林水産省『自由貿易協定を巡る各国との議論の状況と今後の対応』
(2003年12月)
14
信金中金月報 2004.6
特に、農業問題は国民生活に密接に関わる
これに加えて、国際競争の激化、食料安全
重要課題であり、かつ早急な対策が求められ
保障の確立、食の安全の確保、などの課題を
ている。現状では、農業の担い手が年々減少
克服するためには様々な手段による農業構造
するなかで、耕作放棄される土地が増加し、担
改革の推進が求められる。その具体的措置と
い手も65歳以上が半数近くを占めるようにな
して考えられるのは、農業経営の法人化、農
ってきており、このまま放置すれば、日本の
産物のブランド化等による高付加価値化、新
農業が衰退の一途をたどるであろうことは容
しい流通システムの導入、食品行政の改革な
易に想像される(図表17)。
どである(図表18)。
まず、農業の担い手を確保し、効
図表17 農業生産者の高齢化と耕作放棄地の増加
(万人)
1,000
(%)
7
65歳以上(左目盛)
65歳未満(左目盛)
耕作放棄地率(右目盛)
800
6
600
400
5
である。政府は2000年の農地法改正
4
によって農業生産法人制度を見直し、
3
株式会社の農業参入を認めた。ただ、
2
株式会社設立に必要な要件は極めて
1
厳しく、実質的な進展はなかったと
言える。現在、一部の構造改革特区
0
70
75
80
85
90
95
96
97
98
99
00
(備考)1.耕作放棄地率=耕作放棄面積÷耕地面積×100
2.農林水産省資料により作成
01
農業への参入規制を大幅に緩和して
農業の法人化を促進することが必要
200
0
率的な生産体系を構築するためには、
02
(年)
では農業への株式会社の参入要件が
大幅に緩和され、株式会社の参入を
図表18 今後の日本の農業戦略
問 題 点
FTA締結による輸入
農産物の増加、競争
の激化
課 題
食料・農業・農村の
構造改革を加速
農業生産者の高齢化、
後継者不足、耕作放
棄地の増加
食料安全保障の確立
安全安心、環境問題の
関心の高まり
食料自給率の向上
消費者第一のフード
システムの確立
対 策
○「ブランドニッポン」戦略
(立地条件や資源等の優位性を活かした生
産・流通・販売)
○ライフサイエンスを活用した技術開発
○流通規制の緩和(多段階流通)
○農業経営の株式会社化等法人化
○都市と農山漁村の共生・対流
○食品安全基本法に基づく法整備とその厳格
運用
○食品行政組織の改革・再編
○トレーサビリティ(生産流通履歴情報把握)
システム導入促進
○輸入食品の監視・検査体制整備
(備考)農林水産省資料などをもとに作成
研 究
15
促す政策が取り入れられているが、今後は同様
の背景には、日本の農業がこれまで手厚く保
の措置を早急に全国的に展開させる必要があ
護されてきた結果、国際的にみて競争力が著
る(図表19)。
しく劣る分野が数多いということがある。図
食料安全保障の問題をみると、日本の食料
表21は、日本とタイの農産物価格を比較した
自給率は2000年で40%と他の先進国と比較し
ものだが、日本のコメはタイの10倍、鶏肉で
ても極めて低く、コメ以外の食料の大半を海
も3倍の格差があり、同じものを作っていたの
外に頼っているのが現状である(図表20)
。こ
では到底太刀打ちができない状況にある。
図表19 構造改革特区における株式会社等の農業参入
平成12年農地法改正
構造改革特区
担い手不足、農地の遊休化が深刻で、農業内部での対応
では問題が解決できないような地域
農業生産法人制度の見直し
=株式会社形態の導入
地域との調和や農地の適正かつ効率的な利用を確保する
仕組みのもとで、
【農業生産法人の要件】
①法人形態要件
農事組合法人、合名会社、
株式会社(株式譲渡制限のあるもの)、
有限会社
②事業要件
主たる事業が農業
(関連事業を含む)
③構成員要件
社員・株主は農地所有者・農業従事者
が中心
農外者の議決権は全体で4分の1以下、
個別企業で10分の1以下に制限
①参入法人は地方公共団体と協定締結
②地方公共団体等からの貸付方式
③農業担当の役員の設置
④経営開始後のチェック体制を整備
現行農業生産法人の要件は適用しない。
農業生産法人以外の株式会社等の
農業参入の実現
農業・地域の活性化
(備考)農林水産省資料等をもとに作成
図表20 主要先進国の食料自給率(カロリーベース)の推移
(%)
160
151
140
70年
90年
80年
2000年
142
131
120
132
129 125
112
104
100
75
80
60
60
66
53
48
40
40
74
46
20
0
日本
(備考)出所は農林水産省資料
16
信金中金月報 2004.6
イギリス
フランス
米国
今後は、海外でも評価されるようなブラン
高付加価値化に加えて、食の安全面を確保
ド製品や無農薬野菜など高付加価値製品を開
し、無秩序な食品輸入を抑制するためには、検
発することでしか日本の農業が生き残り、国
疫等による水際の取り締まり強化も必要であ
内自給率を高める方策はないと思われる。す
る。図表23は2002年の輸入食品の検疫検査に
でに、日本の農産物のなかには、りんごやメ
おける輸入地域別の違反状況をみたものだが、
ロンのように、まだ規模的には大きくないも
特にアジアからの輸入品は違反件数、違反発
のの、急速に輸出を伸ばしている製品もでて
生率ともに多く、アジア地域については農薬
きている(図表22)。
の使用、添加物の利用、衛生管理などを厳し
図表21 日本とタイの農産品価格比較(2001年)
コ メ
鶏 肉
で ん 粉
砂 糖
タイ産価格(A)
国内産価格(B)
倍率
(B)/(A)
28円/kg(うるち精米長粒種)
237円/kg(骨なしもも・冷凍)
23円/kg(タピオカでん粉)
29円/kg
271円/kg(うるち玄米短粒種)
650円/kg(もも肉)
108円/kg(馬鈴薯でん粉)
263円/kg(甘しゃ糖)
10倍
3倍
5倍
9倍
(備考)1.タイ産価格は、コメが食糧庁買付価格、鶏肉、でん粉、砂糖はCIF価格
2.農林水産省資料により作成
図表22 日本のりんご、メロンの輸出動向
りんご
(百万円)
1,200
4,500
トップ3 (万円)
トップ5 (百万円)
4,000
3,000
2,500
オマーン 858
台湾 147
香港 46
1,000
台湾 4,010
香港 93
タイ 87
インドネシア
33
米国 22
3,500
800
600
2,000
400
1,500
1,000
200
500
0
メロン
(万円)
98
99
2000
2001
2002
0
2003
99
2000
2001
2002
(年)
(備考)財務省資料により作成
2003
(年)
図表23 輸入食品の地域別届出・検査・違反状況(2002年)
輸入・届出件数
検査件数
違反件数
違反発生率(%)
ア ジ ア
769,059
100,123
801
0.8
ヨーロッパ
413,827
15,725
63
0.4
北 米
281,643
14,479
69
0.5
南 米
43,118
2,729
17
0.6
アフリカ
13,217
705
1
0.1
大 洋 州
98,010
2,326
21
0.9
1,618,880
136,087
972
0.7
合 計
(備考)1.違反発生率=違反件数÷検査件数×100
2.厚生労働省医薬食品局資料により作成
研 究
17
く指導していく必要がある。
には農業の構造改革にとどまらず、各方面で
国内においては、トレーサビリティシステ
構造改革を推進して日本経済の高コスト体質
ムの導入が急がれている。同システムは、農
を改善する必要がある。図表25は、食料品価
産物の生産、流通、加工の各段階に関する情
格に影響する諸要素の価格を日米比較したも
報をICカードやICチップ等に記憶させ、消費
のだが、通信費、高速道路料金から農機具に
者がインターネットを通じて自宅や小売店で
至るまで、日本は依然としてコストが高く、そ
農産物の生産履歴を確認できるシステムであ
れが農業の国際競争力にも悪影響を与えてい
る(図表24)
。これにより、消費者は生産年月
ることは否めない。
日や農薬使用の有無などを即座に知ることが
次に、人材の受け入れに関して、タイやフ
でき、生産者は安全と安心という付加価値を
ィリピンを中心とするアジア諸国が要求して
製品に付け加えることができる。とりわけ、最
いるのは主に介護福祉士と看護師の労働市場
近ではSARSや鳥インフルエンザの流行、BSE
開放である。介護福祉士について、現在、日
問題など食の安全を脅かす事態が発生してい
本では外国人の在留資格がまったく認められ
る。このため、消費者は食品の安全に敏感に
ていない(図表26)
。看護師についても、日本
なっており、国内農産物の安全・安心の保証
で准看護師養成所を卒業した場合、4年以内の
は需要の確保に直結すると期待される。
研修に限って在留資格が認められているのが
加えて、日本の農業の競争力を高めるため
現状である。
図表24 トレーサビリティシステムのイメージ
自宅のパソコン
消費段階
品目:大根
農協:信金農協
生産者:信金太郎
収穫日:4月5日
栽培方法:無農薬
ID番号により生産・流通情報を入手
店頭にある
タッチパネル
小売段階
インターネット
生産段階
生産情報の入力
流通・加工段階
ICタグ
バーコード
食品+ID番号の流れ
(備考)農林水産省資料をもとに作成
18
信金中金月報 2004.6
流通・加工情報の
入力
ICタグ
バーコード
図表25 食料品価格に影響を与える諸要素の日米比較(日本÷米国)
(単位:倍)
1
大口電気料金
1.7
通 信
高速道路料金
米国はほとんどが無料
ガソリン価格
2.6
3.1
トラック運賃
1.3
製造業賃金
2
事務所賃貸料
45.7
農 地 価 格
1.1
肥 料
1.4
配 合 飼 料
1.2
農 薬
1.1
農 機 具
1
10
100
日本の方が割高
(備考)出所は、全国農業協同組合中央会『韓国、タイ、フィリピン、マレーシア、インドネシアとの自由貿易協定(FTA)に関する
JAグループの基本的考え方』平成16年2月
図表26 介護福祉士、看護師等の資格制度の概要
資格名称
受 験 資 格
在留資格
介護福祉士
(1)3年以上介護等の業務に従事した者
(2)高等学校で、福祉課程の科目を修めて卒業した者
看 護 師
(1)文部科学大臣の指定した学校で、3年以上、看護師になるのに
必要な学科を修めた者
(2)厚生労働大臣の指定した看護師養成所を卒業した者
(3)免許を得た後3年以上業務に従事している准看護師、または高
等学校を卒業している准看護師で、文部科学大臣の指定学校
または厚生労働大臣の指定養成所で2年以上修業した者
(4)外国の看護師学校を卒業、あるいは学校で看護師免許を得た
者で、厚生労働大臣によって(1)または(2)に該当する者と同
等以上の知識と技能を有すると認められた者(永住資格およ
び日本語能力も必要)
准看護師養成所
を卒業または修了
後、4年以内の期間
中に研修として業
務を行うこと。
大学入学資格保有者で、文部科学大臣の指定した学校、または厚
生労働大臣の指定した養成施設で3年以上、必要な知識と技能を修
得した者
なし
按摩・マッサージ・
指圧師
なし
(備考)厚生労働省資料等により作成
研 究
19
今後、日本では高齢化の進展に伴って老人
介護や高齢者医療の需要が急速に高まってい
ガポール、台湾などがお互いにやりやすい相
手と言える。
くことが予想される。こうしたなか、現行の
一方、戦略的な重要度という点ではかなり
ような閉鎖的な制度をいつまでも維持するの
異なる。図表28は、貿易創造効果など各種の
は困難であり、まず外国人の在留資格を徐々
経済効果を数値化したものである。各項目の
に緩和するところから自由化を進めていく必
数値が大きいほど日本にとって重要度が高い
要があると考えられる。
ことを示すが、各数値の幾何平均値で総合評
価すると、米国、中国、韓国などの順で重要
(2)日本のFTA戦略上の課題と方向性
度が高くなっている。
最後に、日本のFTA戦略上、どのような国・
しかし、米国の場合は国際的な政治バラン
地域との経済連携がふさわしいのかを考えて
スの問題を十分に考慮する必要があること、中
おきたい。図表27は、日本と主要国・地域の
国の場合はWTOに加盟したばかりでその実行
産業構造の相関係数をみたものである。一般
状況をもうしばらく見守る必要があること、な
的に言えば、日本と相手国・地域との農業や
どを考慮すると、両大国とのFTA実現にはか
鉱工業における産業構造の相関係数が小さけ
なりの時間を要するだろう。
れば小さいほど、FTAが成立しやすいと考え
当面は、ASEAN諸国とFTAを結ぶことによ
られる。この観点からは、マレーシア、シン
って日本企業にとっての広い意味での投資環
図表27 日本と主要国・地域の産業構造の相関係数
1
インドネシア
韓国
タイ
中国
フィリピン
0.8
米国
0.6
農
業
の
相
関
係
数
台湾
0.4
0.2
シンガポール
0
0.55
-0.2
0.6
0.65
0.7
0.75
0.8
0.85
0.9
0.95
1
マレーシア
-0.4
鉱工業の相関係数
(備考)1.各国・地域の24業種(農業5業種、鉱工業19業種)の総産出額を用いて、農業と鉱工業の業種別構成比を算出し、日本
の構成比との相関をみたもの(95年時点)。
2.アジア経済研究所『アジア国際産業連関表1995年』により作成
20
信金中金月報 2004.6
図表28 日本のFTA戦略上からみた各国・地域の重要度
米国
貿
易
創
造
効
果
中国
韓国 メキシコ 台湾
インド フィリ
ニュージ シンガ
オースト マレー
香港
タイ
ネシア ピ ン
ーランド ポール
ラリア シ ア
一次産品関税率
48.0 744.0 224.0 796.0 248.0 32.0 400.0 308.0 112.0 236.0
(日本=100:2001年)
工業品関税率
111.8 758.8 358.8 864.7 170.6 258.8 323.5 594.1 388.2 200.0
(日本=100:2001年)
サービス市場参入障壁
43.7 94.7 39.3 27.2 34.5 35.0 25.2 25.2 33.5 25.2
(日本=100:2000年)
貿易総額
253.9 67.7 38.7 44.5 30.5 16.9 21.5 16.9 11.6
8.4
(日本=100:2001年)
地理的接近性
8.4 43.1 74.6
8.1 42.6 11.6 17.0 19.7 15.7 30.1
(東京−福岡=1、逆数)
0.0
20.0
0.0
0.0 164.7
0.0
25.2
35.0
25.2
52.2
3.6
31.6
31.1
10.3
17.1
大市
GDP規模
効場
240.0
果 拡 (日本=100:2001年)
28.5
10.2
14.9
6.7
8.8
2.1
2.8
3.5
1.7
3.9
1.2
2.0
進競
内外価格差
効争
76.9
果 促 (日本=100:2001年)
15.4
46.2
53.8
76.9
61.5
30.8
23.1
15.4
15.4
76.9
53.8
69.2
散技
技術レベル指標
効術
113.3
果 拡 (日本=100:2003年)
66.0
95.0
76.6 107.4
88.1
87.9
78.6
58.5
70.5
79.1
86.3
91.5
87.9
83.3
84.4
0.4 111.7
2.3
21.5
18.5
14.1
新 制 政府・法律整備度指標
効度
92.8 122.4 105.4 121.8
果 革 (日本=1、逆数:2003年)
95.5
83.3 103.5 106.6 146.0 161.1
積資
対外直接投資
効本
452.8
果 蓄 (日本=100:2002年)
10.7
13.1
3.7
18.0
27.5
6.1
0.8
0.8
92.1
75.4
59.6
53.4
53.2
38.0
36.6
30.4
25.0
幾何平均値
22.7
19.9
(備考)1.サービス市場参入障壁は関税換算レベル。技術レベル指標、政府・法律整備度指標は世界経済フォーラム発表の数値を
用いた。逆数は%表示。幾何平均=EXP(ΣLN(各項目数値))
2.信金中金総合研究所作成
境の改善を目指すことが次善の策で
図表29 主要国のビジネス環境
あろう。図表29は、世界経済フォー
ラムが発表している法律の整備度や
政府の腐敗度を加味した政府機関指
標の各国順位を示したものであるが、
タイ、インドネシアなどASEAN諸国
は総じて法律が未整備で政府の腐敗
度も高く、日本がこれら諸国とFTA
を結ぶことを通じて得られる制度的
な改善効果は大きいものと予想され
る。
日本経済はようやく長期低迷を脱
しつつあるが、国内構造改革なしで
は中長期的な安定成長の確保はむず
政府機関指標
順 位
国・地域名
内 訳
契約・法律指標
腐敗度指標
順 位
順 位
6
4
オーストラリア
3
5
ニュージーランド
5
3
6
シンガポール
7
5
10
香港
12
9
17
米国
17
24
21
台湾
24
19
30
日本
38
21
34
マレーシア
28
39
36
韓国
34
38
37
タイ
30
45
50
メキシコ
63
46
52
中国
60
50
76
インドネシア
65
88
85
フィリピン
75
92
(備考)1.調査対象は102カ国・地域
2.政府機関指標=0.5×契約・法律指標+0.5×腐敗度指標
3.WORLD ECONOMIC FORUM『Global Competitiveness Report』
2003−2004年版により作成
研 究
21
かしい。特に、日本の農業はすでに危機的な
本経済の将来のカギを握る農業や労働市場な
状況にあり、高率関税による農業保護は農業
どの問題を真剣に議論し、その方向性を明確
の構造改革を妨げている。市場開放によって
にすべきである。日本の国内問題の解決に本
打撃を受ける農家は直接所得補償によって救
腰を入れて取り組むことが、アジア諸国・地
済すべきである、というのが大方の専門家の
域とのFTA締結というかたちで結実する、と
意見である。
いう流れが最も望ましいシナリオである。
今後、日本はFTAをめぐる議論を通じて、日
〈参考文献〉
浦田秀次郎・日本経済研究センター編『日本のFTA戦略』日本経済新聞社(2002年7月)
高瀬保著『WTOとFTA』東信堂(2003年11月)
農林統計協会「図説 食料・農業・農村白書」
(平成14年度版)
財務省関税局『FTAの現状と今後のあり方』(2003年1月)
農林水産省『自由貿易協定を巡る各国との議論の状況と今後の対応』
(2003年12月)
全国農業協同組合中央会『韓国、タイ、フィリピン、マレーシア、インドネシアとの自由貿易協定(FTA)に関するJA
グループの基本的考え方』
(2004年2月)
Drusilla K. Brown等『Multilateral, Regional and Bilateral Trade-Policy Options for the United States and Japan』The
University of Michigan(2002年12月)
22
信金中金月報 2004.6
地元企業主体によるPFI事業参画へのポイント
信金中央金庫 総合研究所研究員
瀬戸 仁志
(キーワード)PFI、社会資本整備、コンソーシアム、運営重視型
(視 点)
「民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律」(通称PFI法)の施行
(1999年)以来、PFI事業の数は141件にも至っている。従来型公共事業のPFI事業への置き換え
が公共事業費のパイ縮小傾向の中で進んでいることに加え、現時点では大手企業のPFI事業参
画が目立っているため、建設業者をはじめとする地元企業の受注量減少への危機感は高まって
いる。ただし、危機感を持ちつつもどのように取り組めばよいのか等の情報の不足からかPFI
事業参画に向けた具体的な取り組みにまで至らない地元企業も少なくないと思われる。そこで
本稿では地元企業がPFI事業落札までに取り組むべきことや企画提案書作成における留意点・
課題とその克服方法を検討する。さらに信用金庫は、地元企業のPFI事業参画に向けてどのよ
うな役割が発揮できるのかも考えてみたい。
(要 旨)
●
PFI事業参画において地元企業に必要な要件は、①競争力のあるコンソーシアムを組むため
の独自性や専門性などの強み、②資金調達等のための信用力である。
●
地元企業が落札までのプロセスにおいて取り組むべきことは、①大手企業に遅れを取らずに
動き出せる体制づくりと、②地元ならではの提案内容を企画提案書に盛り込むことである。
●
地元企業の企画提案書作成までの課題は、①多方面の高度な知識・ノウハウの習得、②積極
的な人的・資金的投資、③信頼できるパートナーの確保である。
●
これらの課題解決に向けて取り組むべきことは、①実務経験者等が講演する研究会・勉強会
への参加、②大手企業のコンソーシアムへの参加などが考えられる。
●
信用金庫が地元企業のPFI事業参画に向けて果たすべき役割は、①コーディネーター機能の
発揮、②研究会・勉強会の開催、
③審査能力の発揮などで、行政に対しても①PFIに対する意識
改革・体制づくりの促進、
②情報提供等による事業の企画立案のサポートを行うべきである。
研 究
23
ンソーシアム(事業者グループ)を形成し企
1.PFIの概要
画提案書を作成の上PFI事業に応募する。コン
(1)PFIとは
ソーシアムを構成するのは、設計、建設、維
PFI(Private Finance Initiative)とは、民間の
持管理、運営を担う各企業である。事業落札
資金やノウハウを活かした社会資本整備等の
後、コンソーシアム構成企業はSPC(Special
ことである。行政は従来型の公共事業の場合、
(注)1
を設立し事業主体とな
Purpose Company)
計画立案から執行まですべての活動を行って
る。金融機関が三大プレーヤーの一員であるの
いたが、PFIの場合、計画立案および監視機能
は、SPCの事業実施に必要な資金の融資で重要
のみを担う。事業については民間事業者が実
な役割を果たすからである。通常SPCへの融資
施する。民間事業者は、自らの創意工夫のも
はプロジェクトファイナンス方式で行われる。
と設計から建設、維持管理、運営までの一連
PFI事業の代表的なスキームは図表1のよう
になる。
のプロセスを最も効率的かつ効果的に実施す
る方法を考える。その主たる目的は、行政と
なお、三大プレーヤーのほか、一般的に民
民間事業者による適切なリスク管理により事
間事業者側、行政側がFA(ファイナンシャル
業期間全体のコストを縮減し、併せて民間事
アドバイザー)や弁護士、技術コンサルタン
業者の経営ノウハウや先進的な技術力を導入
ト等の外部専門家を雇う。
して公共サービスの向上を図ること
図表1 代表的なスキーム
である。
(備考)1
PFIは1992年にイギリスで導入さ
れた政策手法であるが、日本でも財
政悪化による公共事業費の削減圧力
等を背景として、1999年9月に「民間
直接契約
行 政
利用者
事業契約
サービス提供
利用料金
出資
融資
SPC
金融機関
資金等の活用による公共施設等の整
各業務に関する契約
備等の促進に関する法律」
(通称PFI
法)が施行され、PFIによる社会資
本の整備、運営等が行われるように
なった。
PFI事業の三大プレーヤーは、行
政、民間事業者、金融機関である。
民間事業者は、代表企業を立ててコ
設計会社
建設会社
維持管理会社
企画運営会社
コンソーシアム
(備考)1.直接契約(ダイレクト・アグリーメント)とは、民間事業者の事
(備考) 業遂行が困難となった際に、資金供給を行った金融機関が事業の修
(備考) 復を目的に事業へ介入することについて行政と金融機関が取り交す
(備考) 契約のこと。
(備考)2.信金中金総合研究所作成
(注)1.特定目的会社のこと。特定事業の実施を目的に設立される会社であり、PFIにおいては、PFI事業以外は行わない。PFIの契
約期間が終了すれば解散する。
24
信金中金月報 2004.6
(2)PFI事業の動向
全体の約6割がPFI導入に前向きであることが
イ.増加する事業数と高まる行政の関心
わかる。ちなみに、同研究所が2002年3∼4月
1999年のPFI法施行以来、2004年3月31日現
に行った同様の調査では、PFI導入に前向きな
在に至るまで、行政により実施方針(当該事
自治体は4割弱であり、自治体のPFIに対して
業を実施することを広く周知させることを目
の関心度合いの高まりが窺われる。
的としたもの)が策定・公表されたPFI事業は
140件(注)2である。
また、市・区の導入状況を人口規模別に見
ると、
「導入済み」と「導入予定」を合わせた
事業主体別には、国(独立行政法人を含む)
割合が最も多いのは人口40万人以上の自治体
が32件、地方自治体が109件となっている(国
で36.1%に達する。これに対し5万人未満の市・
と地方と共同のものをそれぞれ1件としてい
区では「導入済み」はなく、「導入予定」も
る)。図表2のとおり、1999年度以降、実施事
1.8%にとどまっているものの「導入を検討」
業数は増加基調を辿り、最近2カ年は48件に達
している自治体は43.6%にのぼり、今後のPFI
し、2002年度からは国からの発注事業も増え
事業の裾野の拡がりが期待される。
ている。地域別では、東京都、神奈川県、千
このように実際の事業数が増え、関心が高
葉県、大阪府など、大都市圏の都府県の割合
い自治体が多いのは、PFI導入によって、①財
が高いが、島根県八雲村(人口約7,000人)や
政支出の軽減、②財政負担の平準化(民間の
兵庫県八鹿町(人口約12,000人)といった小規
サービス提供に対し、行政は毎年一定の対価
模町村でもPFI事業が行われ始めている。
を支払う)
、③公共サービスの質の向上、④行
次に行政のPFIへの関心を日経産業消費研究
政、民間事業者の適切なリスク分担によるリ
所の調査(注)3でみると、全国47都道府県、677
スク管理コストの削減、⑤行政経営の改善(顧
市・東京23区において、2003年3∼5月時点で
客である住民重視の姿勢への転換)などのメ
PFIを「導入済み」の自治体は6.6%、
「導入予
リットが得られるためである。
定」が2.9%、「導入を検討」が51.8%であり、
共事業を削減させながらさらに従来型公共事
図表2 年度別PFI事業数
年 度
1999
2000
2001
2002
2003
計
計
3
12
29
48
48
140
地方自治体
3
12
28
27
39
109
特に財政面で危機感を持つ行政は多く、公
国 等
業をPFI事業に置き換えていくことが今後増加
すると予想される。
1
21
10
32
(備考)PFIインフォメーション(㈱PFIネット)より信金中金
総合研究所作成
ロ.今後、
「運営重視型」事業の増加が予想さ
れる
PFI法が定める「公共施設等」には、道路、
(注)
2.本稿執筆(2004年5月19日)までに断念された事業を除く。
(注)
3.日経産業消費研究所「本格化するPFI活用」『日経地域情報(№417)
』
(2003年6月16日号)
研 究
25
鉄道、港湾、庁舎、廃棄物処理施設や情報通
業」をはじめとする庁舎・宿舎が最も多く、
信施設など多様な施設が含まれ、民間事業者
「京都大学(桂)総合研究棟Ⅴ(桂)福利・保
にとってのビジネスチャンスは多岐にわたる
健管理棟施設整備事業」のような大学・研究
が、PFI導入にあたっては、法、基本方針、ガ
施設や廃棄物処理施設、複合施設がそれに続
イドラインに則り、民間事業者に対して一般
いている(図表3)
。
的に①専門性や創意工夫の発揮、②公共サー
導入当初のPFI事業は、庁舎・大学のように
ビスの向上あるいは公的財政負担の軽減(VFM
施設の設計、建設が主体のいわゆる「箱モノ」
による評価(注)4)、③リスクの軽減・除去への
事業が多かった。現在、PFIの導入が検討され
対応、④事業の適正な実施と継続、が求めら
ている事業においても、箱モノ事業が多い「教
れる。
育文化」分野が依然として多い(ただし、
「庁
これまで実際には庁舎、宿舎、病院、大学、
舎」は減少している)
。しかしながら足元では
小中学校、図書館、美術館、駐車場、廃棄物
「廃棄物処理施設」
、
「医療」
、
「保健衛生」分野
処理施設、余熱利用施設などでPFIが導入され
の事業など運営業務のウエイトが高い「運営
ており、これを事業分野別事業数でみると「九
重視型」事業の割合が高まりつつあり、事業
段第3合同庁舎・千代田区役所本庁舎整備等事
分野の多様化もみられる(図表4)
。
図表3 事業分野別事業数
事業分野(大分類)
教育と文化
生活と福祉
健康と環境
産業
まちづくり
庁舎と宿舎
複合施設等
事業分野(小分類)
小中学校・高校
大学・試験研究機関
社会体育施設
給食センター
文教その他
文化施設(公民館・市民ホール、図書館、美術館、文化交流施設等)
福祉・老人福祉施設等
医療施設(病院、保健衛生施設、衛生試験場)
廃棄物処理施設(ごみ処理施設、廃棄物循環型社会基盤施設)
斎場
商工業振興施設(観光施設、漁港、インキュベーション)
道路・駐車場・駐輪場
都市公園
下水道施設
港湾施設
公営住宅
市街地再開発事業
事務庁舎・宿舎
複合施設等
国 等
地 方
6
16
2
14
4
5
4
6
11
5
15
4
5
3
5
7
4
3
2
5
15
計
6
16
4
5
6
6
11
5
15
4
5
3
5
7
4
3
2
18
15
(備考)1.2004年3月31日現在
2.九段第3合同庁舎・千代田区役所本庁舎整備等事業(国土交通省・東京都千代田区)を国等と地方自治体でそれぞれ一件
としてカウントしているため、小計を足したものと総計は一致しない。
3.PFIインフォメーション(㈱PFIネット)より信金中金総合研究所作成
(注)4.VFM=バリュー・フォー・マネー:行政の支払額(マネー)に対する公共サービス価値(バリュー)を表す概念。行政が
自ら実施する場合の事業期間全体を通じた公的財政負担額とPFI事業として実施する場合の公的財政負担額の見込み額の現在
価値を比較し、後者が前者を下回った場合にVFMが出る、という。
26
信金中金月報 2004.6
図表4 検討されているPFI事業の施設種類
35
(単位:件)
33
32
2003年度
2001年度
30
25
20
15
15
10
10
6
5
0
5
6
7
8
7
6
5
0
5
4
3
3 3
2
5
4
2 2 2
0
2
1
0
2
1 1
0
1
0
1
2
0
0
1
0
教 庁 社 観 港 公 公 廃 下 医 駐 新 研 宿 熱 リ 上 保 情 そ
育 舎 会 光 湾 営 園 棄 水 療 輪 エ 究 舎 供 サ 水 健 報 の
文
福 施
住
物 道
場 ネ 施
給 イ 道 衛
他
化
祉 設
宅
処
設
ク
生
理
ル
(備考)内閣府「PFIに関する全国自治体アンケート」
(2003年度)より信金中金総合研究所作成
ハ.受注企業が利益を確保できる事業規模は
のように10億円を下回る事業も出始めてきた。
20億円∼30億円
日本で行われているPFI事業には、高知県・
ニ.大手企業主導で全国ベースの受注競争が
高知市による「高知医療センター整備運営事
展開
業」のような約2,300億円の大型案件もあるが、
民間事業者は、PFI事業に参画することで、
「岡山県当新田環境センター余熱利用施設整
備・運営事業」や「仙台市松森工場関連市民
利用施設整備事業」のように事業規模10億円
一般的に長期にわたる安定した収入に加え、こ
図表5 事業規模別事業主体別事業数
25
その他
事務組合
市区町村
政令市
都道府県
国
∼50億円が最も多い(図表5)。
一般的に、外部専門家にかかる費用だけで
20
8
も2,000万円∼3,000万円(たとえば、弁護士費
15
用約500万円∼1,000万円、技術コンサルタント
費用約1,000万円∼1,500万円)かかるため、受
2
1
10
5
注企業が利益を確保するためには20億円∼30
億円の事業規模が必要だといわれている。
5
1
4
(事業場所:神奈川県鎌倉市)や「高浜市新型
ケアハウス事業」(事業場所:愛知県高浜市)
1
3
0
4
2
2
7
4
ただし、行政のPFI導入ニーズの高さから、
「鎌倉市山崎地区屋内温水プール施設整備事業」
3
2
1
3
1
2
1
10億円未満 10億円∼ 50億円∼ 100億円∼ 200億円∼ 1,000億円∼
事業規模
(備考)1.2003年11月30日現在
2.PFI推進委員会の資料より信金中金総合研究所作成
研 究
27
れまで行政が行っていた事業を民間に移転す
もあり、応募に向けた具体的な取り組みにま
ることによる事業機会の増大などのメリット
で至れない企業も少なくないだろう。
が得られる。
地元企業のPFI事業参画形態としては①協力
PFI事業が地元・非地元問わず民間事業者に
会社としての参画、②大手企業とコンソーシ
参画・競争を促すという公平性の原則のもと
アムを組んでの参画、③地元企業主体での参
で行われるものであるといった背景もあり、こ
画があげられ、各参画形態には図表7のような
れまでのPFI事業は、上記のメリットの享受を
メリット/デメリットがある。
狙い積極的にノウハウの蓄積を図ろうとする
大手ゼネコン、大手商社主導による全国ベー
スの受注競争が進められてきた(図表6)。
イ.協力会社としての参画では利益率が低位
にとどまることが多い
このためPFI導入が進むことによって受注機
PFI事業には地元企業は参入しにくいことが
会が減少するのではないかという危機感を増
懸念されているが、大手企業が受注しても実
大させている地元企業(特定の地域を営業基
際の建設や維持管理は、従来型の公共事業と
盤としている企業)も少なくないであろう。
同様、協力会社としての地元企業
(大手企業の
系列である場合が多い)
が請け負うことも多い。
(3)地元企業が利益を維持・拡大するにはコ
協力会社としてPFI事業に参画する場合、コ
ンソーシアムを組むことが必要
ンソーシアム構成企業ではないことからPFI事
危機感を持っている地元企業の中には、PFI
業への応募にかかる企画提案書作成などの煩
事業に参画したいが、何をいつまでに取り組
雑な作業は回避できる。しかし、PFI事業が効
む必要があるのか等のPFIに対する情報不足等
率性を重視することから下請けとなる地元企
図表6 受注企業ランキング
(4件以上受注の企業)
企業名
大林組
新日本製鐵
大成建設
鹿島建設
ハリマビステム
佐藤総合計画
三菱商事
伊藤忠商事
清水建設
竹中工務店
東畑建築事務所
西松建設
日建設計
三井物産
件 数
12
10
9
7
6
5
5
4
4
4
4
4
4
4
(備考)1.2003年11月8日現在
2.日本PFI協会『PFI年鑑2004年版』
より信金中金総合研究所作成
28
信金中金月報 2004.6
図表7 地元企業の参画形態とメリット/デメリット
地元企業のメリット
協力会社としての
参画
大手企業と組んでの
参画
地元企業主体での
参画
◆企画提案書作成など
煩雑な作業の回避
◆収益性の向上
◆地元へのアピール
◆多様な事業分野への参画
◆大手企業のリーダシッ
プによる業務の円滑な
進展、地元企業の負担
軽減
◆収益性の極大
◆より強い地元へのアピ
ール
◆企画提案力の向上
◆事業規模拡大の可能性
(備考)信金中金総合研究所作成
地元企業のデメリット
◆収益性が低い
◆大手企業主導の
業務推進による
収益の限定化
◆業務推進にかか
る地元企業の負
担増
業の利益率も低位にとどまっているといわれ
積み上げが一巡しつつあることから、小規模
ている。したがって地元企業は今後、自らの
案件よりも収益性のより高い国等による大型
生き残りを賭けた利益の維持・拡大のために
の案件に傾注する可能性が高いだろう。
協力会社としての参画に加えて、大手企業と
それにより地方の小規模PFI事業では大手企
コンソーシアムを組んでの参画や地元企業主
業が参入せず、地元企業主体でコンソーシア
体での参画も積極的に検討する必要がある。
ムを組めなければ成立しなくなる可能性も考
えられる。そこでこれをビジネスチャンスと
ロ.大手企業と組めば収益性の向上や多様な
とらえる地元企業には、地元行政が発注する
事業分野への参画などが期待できる
小規模なPFI事業は自分たちのプロジェクトで
最近では地域経済への配慮など発注者側の
あり、ビジネスチャンスであるという認識を
行政の意向もあり、大手企業と地元企業がコ
持ち、PFI事業に主体的に参画できるよう準備
ンソーシアムを組んで事業に参画しているケ
しておくことが求められる。
ースも少なくない。
また今後増加するであろう運営重視型事業
地元企業は、このように下請けではなくコ
では、民間の創意工夫の余地が大きく、地元
ンソーシアムの構成企業になることで収益性
色を出しやすいことに加えて、運営事業者の
の向上、インターネット・新聞等に名前が公
選定において行政が地元での運営実績を重視
表されることによる地元へのアピールが期待
するケースがある。よって運営重視型事業が
できるほか、大手企業の技術力等を活かして
増加すれば、地元ニーズを的確に把握し事業
地元企業主体での場合に比べて多様な事業分
展開する力がある地元企業が落札(優先交渉
野に参画できる可能性がある。
権の獲得)する可能性が高まると考えられる。
ただし、代表となる大手企業が役割分担や
たとえば、
「長岡市高齢者センターしなの整
利害調整、事業計画策定等でリーダーシップ
備、運営および維持管理事業」
(事業場所:新
を発揮してPFI事業を推進してくれる反面、そ
潟県長岡市)のような福祉施設の整備運営事
の分地元企業が享受できるメリットは限定的
業では、地元の社会福祉法人が運営企業とし
になる可能性が高い。
てコンソーシアムに入っているケースがいく
つかある。
ハ.地元企業主体での参画が理想的
(イ)今後、小規模かつ運営重視型事業では参
したがって、特に小規模で運営重視型のPFI
事業であれば、競合も少なく地域性を発揮し
画できる可能性が高まる
やすいため、地元企業は落札(優先交渉権の
現在PFI事業に積極的に参画している大手企
獲得)しやすい。小規模事業で実績を積み上
業は案件の増加に伴い、今後応募する事業の
げれば、より大規模な運営重視型の事業にお
選別を始めると考えられる。すなわち、実績
いて、受注できる可能性が高まり、事業規模
研 究
29
を拡大できるチャンスをつかめよう。
特に前提として備えるべき要件や事業落札(優
先交渉権の獲得)までの留意点、課題を取り
(ロ)収益の極大化、企画提案力の向上が期待
上げ、それらの克服方法について検討したい。
できる
地元企業自らが主体となってコンソーシア
ムを組成しPFI事業に参画すれば、大手企業と
組む場合と比べて、①収益の極大化、②より
強い地元へのアピール、③ノウハウの蓄積に
よる企画提案力の向上が期待できる。
①については、地元企業がリーダーシップ
2.地元企業がPFI事業の落札
(優先交渉
権の獲得)に向けて取り組むべきこと
(1)地元企業に必要な要件
地元企業はPFI事業への参画を検討する際、
前提となる以下の要件を満たしているかをチ
ェックする必要がある。
を発揮する場合、大手企業が主導する場合に
比べ地元企業の収益はより多くなるだろう。
②については、コンソーシアム代表企業と
イ.競争力のあるコンソーシアムを組むため
の独自性や専門性などの強み
なれば、大手企業と組み構成企業の一員とな
地元企業主体で競争力のあるコンソーシア
ることに比べ、新聞・公報などに取り上げら
ムを組むには、設計、建設、維持管理、運営
れるケースが多くなる。建設業者などは代表
を担う各企業が、独自性や高い専門性など同
企業となることで、地元での評価が高まり受
業他社にない強みを有していることが必要で
注増につながることも考えられよう。
ある。たとえば、建設業者ならば空調関係や
③については、PFI事業は行政が施設の仕様
給排水、電気関係などでは地域で一番である
や工法・資材などを指定する仕様発注方式で
とか、福祉施設の建設では、大手企業にも引
はなく、サービス内容や水準のみを行政が明
けをとらないなどである。また、運営業者な
示し、その達成手段は民間事業者が自由に企
らばスポーツ施設やケアハウスの運営ではノ
画提案する性能発注方式で行われる。よって
ウハウが蓄積されているとか、維持管理業者
自らが中心となって業務遂行を行うことによ
ならば機械警備の分野には強い等である。な
り企画提案力の向上が見込め、それはPFI事業
お、コスト削減能力は、VFMに直接反映する
以外の民間企業等による事業公募に応じる場
ため全業種に共通した強みと考えられる。
合にも役立つはずである。
地元企業主体での参画は理想的であるが参
画するためには備えるべき要件や業務推進に
かかる留意点、克服すべき課題がある。
ロ.資金調達等のための信用力
PFI事業は一般的に事業期間が10∼30年と長
期にわたることから行政は、コンソーシアム
そこで以下では、地元企業主体のコンソー
に対し、事業期間中万が一運転資金不足に陥
シアムによるPFI事業参画のポイントについて
った場合を想定して、金融機関からの融資枠
30
信金中金月報 2004.6
の設定を求めることがある。
また、PFI事業における建設期間中のファイ
イ.PFI導入可能性調査、実施方針の策定およ
び公表段階で取り組むこと
ナンスはSPCから工事請負契約を受注した建
PFI導入可能性調査とは、ある公共事業に
設会社がコーポレート・ファイナンスで賄う
PFIを導入した場合のメリット、デメリット、
ことが多いため、一定以上の資金調達力が必
課題等を整理し、導入すべきか否かを行政側
要となる。
で調査することである。
したがって、経営事項審査点数など一般的
一般的に大手企業は、PFI導入可能性調査の
な公共事業の入札参加資格を満たしているこ
段階で応募に向けて水面下で動き出しており、
とにはもちろんのこと、財務面等で信用力が
どの企業と組み、どのように事業を組み立て
ない企業や過去の業務における納期・品質な
るかなどのストーリーを描いている。よって
どのパフォーマンスや技術力等で信用力がな
地元企業は、なるべく大手企業の動きに遅れ
い企業は、PFI事業への参画が困難になる。
をとらぬよう定期的に行政のホームページや
担当部署で情報収集を行う必要がある。いち
(2)落札(優先交渉権の獲得)までのプロセ
図表8 行政側のPFI事業のプロセス
スにおける留意点
PFI導入可能性調査の実施
PFI事業に実際に参画しようとする場合、図
P
F
I
事
業
落
札
ま
で
の
プ
ロ
セ
ス
表8の行政側のプロセスに従うことになるが、
ここでは地元企業が各プロセスにおいて取り
実施方針の策定および公表
組むべき内容を整理する。なお、PFI事業では
各段階でPFI導入可能性調査の結果や実施方針
特定事業の評価・選定、公表
などが公表されるが行政のホームページを利
用するほか、行政の担当部署での書面の閲覧・
入手が可能である。
民間事業者の募集、
評価・選定、公表
なお、各プロセスにおいて地元企業は、事
業性の評価を行う必要がある。最初の段階で
の事業性評価は、行政による公表資料の制約
協定等の締結等
P
F
I
事
業
落
札
後
の
プ
ロ
セ
ス
から限定的なものになろうが、PFI事業が効率
性を重視することや事業期間が長期におよぶ
事業の実施、監視等
ことに加えて、これまでのPFI事業の中には民
間事業者が過度のリスク負担をしている事業
もあると言われることから事業性の評価は重
要である。
事業の終了
(備考)信金中金総合研究所作成
研 究
31
早く事業の存在をつかみ、少なくとも実施方
次審査では①必要とされる資格および事業遂
針が公表された段階では、自社の強みが活か
行能力を有していること、②事業にかかる提
せる事業であるか等を検討し、事業性を評価
案内容が一定の要求を満たしていることが審
のうえ参画の適否を決断したい。参画を決め
査される。一次審査段階での企画提案書には
た後、コンソーシアムの組成を検討すること
設計、建設から維持管理、運営までの各業務
になるが、大手企業をはじめとする競合他社
に対する当該コンソーシアムの考え方など提
とパートナーとなる地元企業の奪い合いが起
案の概要となるものを盛り込む。また、二次
こる可能性があるため、候補となる地元企業
提案書には、通常、①一次提案書の内容をよ
への迅速な打診が必要である。
り具体的にしたものに加え、②提案価格を盛
なお実施方針には、事業の目的、範囲、期
り込み、技術面と価格面の審査を受ける。審
間のほか、民間事業者の選定基準や募集・選定
査においては学識経験者、地元関係者、行政
のスケジュール、応募資格要件、施設・運営仕
職員等から構成される審査委員会が組織され
様、リスク分担のあり方などが含まれている。
るのが一般的で、審査基準に則って各企画提
案書を審査のうえ落札企業(優先交渉権者)が
ロ.特定事業の評価・選定、公表段階で取り
決定される。通常一次審査で3∼5社程度に絞
組むこと
られ、二次審査で最終落札企業(優先交渉権
実施方針の公表後、民間からの意見の受付、
者)が決まる。
回答プロセスを経て、PFI導入によりVFMが見
事業の規模にもよるが募集から一次提案書
込めると評価された場合に当該事業が特定事
提出まで通常約2、3カ月程度しかないため、地
業として選定・公表される。
元企業にはいち早い募集要項の入手が必要で
この段階ではVFMの算定結果が出されるこ
ある。
とから、地元企業は企画提案書を作成する際
の参考として目を通しておく必要がある。
(3)企画提案書の内容と作成時の留意点
イ.企画提案書の内容
ハ.民間事業者の募集、評価、選定段階で取
コンソーシアムの組成後、募集要項に従っ
り組むこと
て直ちに企画提案書の作成を行うが、企画提
特定事業の選定の後、募集要項が作成・公
案書の内容によって落札(優先交渉権の獲得)
表され、実際にPFI事業を実施する事業者の募
できるかが決まるため、この作業がPFI事業落
集、企画提案書の受付、審査が行われる。
札(優先交渉権の獲得)に向けて重要となる。
審査には一次審査と二次審査があり、民間
企画提案書には一般に、①各施設に対する
事業者は落札(優先交渉権の獲得)までに段
具体的な仕様項目(規模・構造、安全性、機
階に応じて二つの企画提案書を作成する。一
能性、利便性、環境性、魅力度、地域景観へ
32
信金中金月報 2004.6
の配慮、環境保全策など)
、②各施設でのサー
域住民の味覚にあった食事を提供する地産地
ビス内容(営業日数、営業時間、独自プログ
消によるサービス提供を盛り込むことも考え
ラム、料金、メニューなど)
、③保守点検計画、
られる。その他、維持管理面では地元に拠点
修繕計画に加え、④事業計画(事業スキーム、
があることによるサービスの迅速性・機動力
提案価格、資金調達計画、計数計画、リスク
をアピールするなどがある。事業計画では、赤
管理方針など)などを盛り込む。
字を避けるため採算面を固く見積もることは
それぞれについて、行政が要求するサービ
もちろん、地域での営業実績を基にした説得
ス水準等を示した要求水準書および評価の視
力のある市場予測、商圏分析による計数計画
点や評価点の配分を示した事業者選定基準書
を策定したい。
の内容を参考に、行政の指定する様式に従い
作りあげていく。
(4)地元企業主体で企画提案書を作成するま
での課題
ロ.作成時の留意点は独自性の発揮を心掛け
地元企業が上記の留意点を踏まえ、高い評
ること
価を得られる企画提案書を作成するためには、
落札(優先交渉権の獲得)できる企画提案
以下のような点が課題となる。
書とするためには、発注者の意図に沿い事業
全体のコスト削減策などをアピールすること
イ.多方面の高度な知識・ノウハウの習得
は前提として、それに加えてはっきりと他社
企画提案書を、募集から一次審査までの約
と差別化できる点を盛り込み、審査委員から
2、3カ月という短期間でまとめあげるために
高い評価が得られるよう努力する必要がある
は、スキームや事業方式、プロセスなどPFI事
だろう。
業にかかる多方面の高度な知識の習得が必要
そこで地元企業は、企画提案書の作成にあ
である。また、設計から運営までのリスクを
たり設計、建設、運営、維持管理それぞれの
管理する方法やコスト削減方法、サービス向
側面で地元ならでは、自社ならではの提案内
上方法、企業間の役割分担の仕方等における
容を盛り込むなど独自性の発揮を心掛けたい。
独自性をいかにコンパクトに提案書に落とし
設計・建設面では、短工期・低コストで行
込んでいくかという、見せ方を含めた企画提
うことや機能面での付加価値をつけることは
案書作成のノウハウも求められる。
もちろんのこと、地域の景観への配慮も積極
たとえば大手ゼネコン等では海外でPFI事業
的にアピールすべきである。運営面は、最も
を経験した人材を活用したり、日本でPFI事業
独自性ある提案内容が盛り込める部分であろ
が行われ始めた時期に積極的に取り組んだこ
う。たとえば、給食事業の運営において地元
ともあり、現在ではある程度の知識・ノウハ
の食材を用い、地元ならではの調理方法で、地
ウが蓄積されている。一方、地元企業はそも
研 究
33
そも一地域内でのPFI事業が現時点では多くな
ハ.業務推進円滑化のための信頼できるパー
いこともあり、知識・ノウハウの蓄積が十分
トナーの確保
でない場合が少なくないと考えられる。
企画提案書を設計、建設、維持管理、運営
それぞれの分野の地元企業が共同して短期間
ロ.知識・ノウハウの不足をカバーするため
でまとめるには、リーダーシップを取れる企
の積極的な人的・資金的投資
業の存在に加えて各企業間の役割分担が必要
知識・ノウハウの不足をカバーするには、①
である。
外部専門家を活用する、②PFI担当者を配置・
経験豊富な大手企業が中心であれば、利害
育成する、など、資金面、人材面での積極的
調整や事業性評価、プロジェクト管理面でリ
な投資が必要になる。
ーダーシップを取りながら提案書内の詳細な
一つ目に関して、FAや弁護士、技術コンサ
内容についても大手企業が責任を持つかもし
ルタント等を雇うことになるが、それにはお
れない。一方、経験の少ない地元企業のみで
おむね2,000万円∼3,000万円かかるといわれて
コンソーシアムを組む場合、代表企業が利害
いる。二つ目に関しては、高度な専門知識・
調整等でリーダーシップをとりながらも各業
ノウハウの習得に加えて短期間で膨大な事務
務内容や事業性など企画提案書の詳細な部分
作業をこなさなくてはならないため、社内で
については、各企業が相対的に得意な分野に
も優秀な人材をPFI担当として配置・育成して
基づいて責任を持つことになる。
いく必要がある。具体的には、向学心がある
したがって、提案書を作成できる能力と同
ことはもちろんPFIにかかる高度な専門知識・
時に、役割を任せられる信頼性があるパート
ノウハウをベースとしながら技術面、財務面
ナーの確保が必要となってくる。
等に詳しい自社内外の人材を企画提案書作成
のために上手に使いこなせるマネジメント能
力や外部専門家のアドバイスを企画提案書に
正確に反映させられる能力などが求められる。
(5)課題解決のために考えられる対応
イ.実務経験者等が講演する研究会・勉強会
への参加
事業を落札(優先交渉権の獲得)できなけ
研究会・勉強会に参加する目的は、①PFIに
れば、これらの投資はほとんどが無駄になっ
関する知識・ノウハウの習得、②情報収集ル
てしまう可能性がある。PFI事業を一度以上経
ートの構築、③企業間のネットワーク形成を
験している企業とコンソーシアムを組んで当
図ることである。
該企業の知識・ノウハウの蓄積を活用し、外部
一つ目について、実際にPFI事業を経験した
専門家にかかる費用の軽減を図ることなども
民間事業者、弁護士、FA等が講演する研究会・
考えられるが、いずれにせよ企画提案書作成の
勉強会ならば、法務面、事業計画面等におけ
ためにある程度の投資は必要不可欠であろう。
る実務上のポイントなど生の声を聞くことが
34
信金中金月報 2004.6
できる。二つ目について、自治体のPFI担当職
者の育成が十分でなくても大手企業の人材に
員などが参加している研究会・勉強会であれ
よって企画提案書作成がうまく回ることも考
ば、情報収集ルートの構築を図ることができ、
えられるし、地元企業の参入障壁になりうる
大手企業に遅れずに動きだせる体制作りにも
外部専門家を雇う費用を軽減できる可能性も
つながる。三つ目について、設計事務所、建
高い。
設会社、運営会社、維持管理会社など様々な
大手企業としても地元企業をコンソーシア
業種が参加している研究会・勉強会ならば地
ムに入れ、緊急時の迅速な対応など小回りの
元企業間のネットワーク作りが期待でき、そ
よさ(機動力)等を活かしたいというケース
れが地元企業主体でコンソーシアムを組む際
が多いため、強みのある地元企業であれば大
の足がかりになるだろうし、大手企業が参加
手企業のコンソーシアムに参加できる可能性
していれば大手とのパイプ作り等に役立つ。
は高まるであろう。
なおPFI事業の実務経験者、自治体職員、大
よって取引のある大手企業とのパイプは太
手企業を含む多様な業種の企業が一同に参加
くしておく必要がある。また、取引のない大
する研究会・勉強会は、商工会議所や日本PFI
手企業に対しては、大手企業が参加する研究
協会等の業界団体、金融機関などによって主
会に参加して接点を持ったり、大手企業と取
催されていることが多い。
引のある地元企業にアプローチするなどして、
パイプ作りを図ることも考えられる。
ロ.効率的なノウハウ蓄積を目的とした大手
企業のコンソーシアムへの参加
地元企業主体でコンソーシアムを組む前段
3.地元企業の取り組み事例
【事例1】㈱ナルックス
階として、自社内で企画提案書づくりを完結
ここでは、ゼネコンを代表企業とするコン
できる大手企業のコンソーシアム構成企業に
ソーシアムの構成企業として「四日市市立小
なり、効率的なノウハウの蓄積を図ることも
中学校施設整備PFI事業」に応募した地元企業
有効である。すなわち実際のPFI事業に携わ
の㈱ナルックスを取り上げる(図表9)。同社
り、様々な議論が行われているテーブルに着
は、四日市市を中心に事業展開するコンクリ
くことによる人材育成、知識・ノウハウの吸
ート製品製造・建設施工業者である。
収が期待できる。ただし、積極的に事業に関
なお本事業は、老朽化した小中学校4校に対
与していかなければ、下請けと変わらず、ノウ
し、解体・撤去から設計・企画、改築、維持管理
ハウの蓄積が進まないことに注意する必要が
までを一貫して行う事業である。運営業務が全
ある。
く含まれていないため、建設重視型の事業とい
また付随的な効果として投資負担の軽減も
える。事業の概要は図表10、図表11のとおり。
期待できる。仮にこの段階で地元企業の担当
研 究
35
応募から優先交渉権獲得までの経緯
同社は、資本関係があり、過去に
図表9 ㈱ナルックスの企業概要
所在地(本社)
四日市市天カ須賀5-4-13
創業
1930年
資本金
997,296千円
従業員
170名
にコンソーシアムの構成企業として
代表取締役社長
生川 浩平
応募した(図表12)。
事業内容
コンクリート製品製造・建設施工業
取引実績もあったことを背景に、大
成建設㈱からの打診を受けて本事業
コンソーシアムの代表企業を務め
た大成建設㈱は、会社の方針として
(備考)㈱ナルックスホームページより信金中金総合研究所作成
図表10 四日市市立小中学校施設整備PFI事業の概要
PFIに限らず地方の仕事の場合、地
事業名
四日市市立小中学校施設整備PFI事業
元のことをよく解っており、かつ小
発注者
四日市市
回りの利く(機動力のある)地元企
事業の内容・範囲
業と組んで取り組むこととしている。
事業期間
20年(建設期間を除く)
四日市市から地域経済への配慮が要
実施方針公表年月
2003年2月
請されていたこともあるが、今回の
応募事業者数
7グループ
PFI事業でも、資本関係があって信
用力に関して理解しており、過去の
老朽化した小中学校4校の解体・撤去から
設計・企画、改築、維持管理までを行う
(備考)四日市市資料より信金中金総合研究所作成
図表11 四日市市立小中学校施設整備事業のプロセス
実績で技術力にも信頼がおける㈱ナ
ルックスに声をかけた。㈱ナルック
2003年 2 月 4 日
実施方針等の公表
2003年 6 月26日
特定事業の選定
2003年 7 月22日
募集要項の公表
スは、大手企業とコンソーシアムを
組むことでPFIにかかるノウハウを
吸収できるほか、構成企業として名
前が公表されることにより地元貢献
をアピールできることを目的に参加
した。
57日間
2003年 9 月 5 日∼17日
提案書(一次提案)の受付
なお、一次審査において7グループ
から3グループに絞られた後、二次審
119日間
2003年10月15日
一次審査結果通知
査を経て当コンソーシアムは当該事
業の優先交渉権を獲得した。提案価
62日間
2003年12月15、16日
提案書(二次提案)の受付
2004年 1 月30日
優先交渉権者決定・公表
格は、約65億3千万円であった。
これまで小中学校の建設事業は、1
校ごとの入札であったため、金額の
規模が小さく地元企業の受注が中心
36
信金中金月報 2004.6
(備考)四日市市資料より信金中金総合研究所作成
図表12 四日市市立小中学校施設整備事業のスキーム
直接契約
四日市市
事業契約
融資
出資
金融機関
SPC
(大成建設グループ)
各業務に関する契約
設計会社
建設会社
建設会社
(大成建設) (ナルックス)
建設会社
建設会社
建設会社
維持管理会社
コンソーシアム
(備考)四日市市資料より信金中金総合研究所作成
であった。しかし今回は、PFIを導入すること
大成建設㈱に蓄積されているノウハウによっ
で4校分を同時に入札にかけたことに加え、受
てカバーされた。
注企業の制限をなくしたため、大手企業の参
さらに、大成建設㈱内のアレンジャー機能
画が進んだ。大手企業と組んだ㈱ナルックス
を担う組織が、PFIの応募にかかる手続きやリ
も従来から取り組んでいた小中学校の施設整
スクの分担、ファイナンス面等においてリー
備に設計から維持管理までという一貫したか
ダーシップをとり、コンソーシアム内の利害
たちで関与することができた。ちなみに㈱ナ
調整を行った。
ルックスは当該事業において学校の建設を担
当している。
この例のように、地元企業主体でPFI事業を
落札(優先交渉権の獲得)する際の課題は、実
績のある大手企業と組むことでその多くが克
諸課題への対応方法
服できる場合がある。ただし、大成建設㈱が
㈱ナルックスは、大成建設㈱から参画の打
地元企業を活用するメリットを重視していた
診があった段階で若手を含む3名からなる研究
ことに加え、㈱ナルックスが堅実経営と技術
チームを社内に作り、書籍購読やセミナー参
力により大成建設㈱との良好な関係を維持し
加、大成建設㈱への相談などにより知識の蓄
続けてきたことが背景にあることを忘れては
積に努めた。
ならない。
また、外部専門家を雇う費用の負担は、全
では、地元企業は大手企業が代表となるコ
国でPFI事業の経験がある大成建設㈱内の人材
ンソーシアムに構成企業として入った経験を
を活用することにより解消された。同時に提
活かして、次回以降、自らが代表となって地
案書作成に関するノウハウの不足についても
元企業のみのコンソーシアムを組み、PFI事業
研 究
37
を落札(優先交渉権の獲得)することができ
ーシアム構成企業として岡山市のPFI第1号案
るのであろうか。これを事例2でみていく。
件であった「当新田環境センター余熱利用施
設整備・運営PFI事業」に応募し、このときは
【事例2】㈱岡山スポーツ会館、蜂谷工業㈱
二次提案まで進んだ。
二つ目の事例として地元企業のみで形成さ
本事業では、そのとき蓄積された知識・ノ
れたコンソーシアムにおいて代表企業、構成
ウハウを活かし、代表企業として応募した。建
企業を務め「岡山市東部余熱利用健康増進施
設部門におけるコンソーシアム構成企業につ
設整備・運営PFI事業」に応募した企業2社を
いては、県内の有力企業で以前から知り合い
取り上げる。㈱岡山スポーツ会館は1972年の
であった蜂谷工業㈱を選んだ(図表17)。
設立以来、岡山県内で7つの直営クラ
図表13 ㈱岡山スポーツ会館の企業概要
ブを経営し、1カ所の業務委託、1カ
所在地(本社)
岡山県岡山市絵図町1-50
所の指導者派遣、13カ所での教室開
設立
1972年
催を実施している。中国、四国、九
資本金
2,500万円
従業員
49名(パートタイマー含めると220名)
代表者
江尻 博子
事業内容
スポーツクラブ経営
州地区ではトップクラスの事業展開
をしている企業である(図表13)
。一
方、蜂谷工業㈱は、岡山県を中心に
中国、四国地区で事業展開する岡山
県でも有数の総合建設業者である
(図表14)。なお、本事業の目的は、
ごみ処理施設から発生する余熱を有
効利用する温水プールと事業場所か
ら湧出する温泉を活用した健康増進
施設を整備・運営することで、市民
に休息およびコミュニケーションの
(備考)㈱岡山スポーツ会館ホームページより信金中金総合研究所作成
図表14 蜂谷工業㈱の企業概要
所在地(本社)
岡山県岡山市鹿田町1-3-16
創業
1917年
資本金
3億円
従業員
203名
代表取締役社長
蜂谷 泰祐
事業内容
総合建設業
(備考)蜂谷工業㈱ホームページより信金中金総合研究所作成
図表15 岡山市東部余熱利用健康増進施設整備・運営PFI事業の概要
場を提供し、地域の活性化と公共福
事業名
岡山市東部余熱利用健康増進施設整備・運営PFI事業
祉の増進を図ることである。事業の
発注者
岡山市
概要は、図表15、図表16のとおり。
事業の内容・範囲
ごみ処理施設から発生する余熱を有効利用する
温水プールと事業場所から湧出する温泉を活用
した温泉施設とを中心とした健康増進施設の整
備(設計・建設)および運営(維持管理を含む)
応募から優先交渉権獲得までの経緯
㈱岡山スポーツ会館は大手ゼネコ
ンの誘いに応じたことをきっかけに
PFI事業に取り組み始めた。コンソ
38
信金中金月報 2004.6
事業期間
15年(建設期間を除く)
実施方針公表年月
2002年6月
応募事業者数
2グループ
(備考)岡山市資料より信金中金総合研究所作成
一方蜂谷工業㈱は、岡山市の財政の厳しさ
から近い将来PFI事業が出てくるだろうと考
出し、本事業における企画提案書づくりの参
考とした。
え、書籍等でPFIに関する知識の蓄積に努める
ことに加えて、社内でプロジェクト
なお、当コンソーシアムは、大手ゼネコン
チームをつくり(その後正式に組織
図表16 岡山市東部余熱利用健康増進施設整備・運営PFI
事業のプロセス
化)、積極的に事例研究に取り組ん
2002年 6 月21日
実施方針等の公表
2002年 9 月10日
特定事業の選定
2002年 9 月10日
募集要項の公表
だ。また、公共事業の縮小が続く中、
建設業者としてPFI事業に取り組ま
ないと仕事がなくなってしまうので
はという危機感もあった。
その上で東京に本社を置くゼネコ
91日間
ンからの誘いに応じてコンソーシア
提案書(一次提案)の受付
2002年12月 9 日、10日
ムの構成企業として岡山県発注の
156日間
「岡山リサーチパーク・インキュベー
ションセンターPFI事業」に応募し
一次審査結果通知
2003年 2 月 4 日
65日間
た。このときは落札に至らなかった
が、企画提案書作成にかかる相応の
2003年 4 月10日
提案書(二次提案)の受付
2003年 5 月22日
優先交渉権者決定・公表
知識・ノウハウの蓄積が図られた。
また、この時行政が示した提案書に
対する評価点等から改善点を見つけ
(備考)岡山市資料より信金中金総合研究所作成
図表17 岡山市東部余熱利用健康増進施設整備・運営PFI事業のスキーム
直接契約
岡山市
利用者
事業契約
サービス提供
利用料金
出資
融資
SPC
(PFIヘルスプラザ岡山)
金融機関
各業務に関する契約
設計会社
建設会社
(蜂谷工業)
維持管理会社
運営会社
(岡山スポーツ会館)
コンソーシアム
(備考)岡山市資料より信金中金総合研究所作成
研 究
39
グループとの競争の結果、当該事業の優先交
った(ただし、優先交渉権獲得後の契約交渉
渉権を獲得した。提案価格は、31億5千万円で
においては、弁護士を利用している)
。そのた
あった。
め応募コストは大幅に軽減できた。コンサル
当該事業において㈱岡山スポーツ会館は、温
タント等をつけないことによって企画提案書
水プールの運営を担当することとなっている。
の形式や内容について本当にこれで問題がな
一方、蜂谷工業㈱は、施設の建設に加え、SPC
いかという不安感が生まれ、コンソーシアム
の設立、維持管理等を担当している。
構成企業同士が疑心暗鬼になってしまうおそ
㈱岡山スポーツ会館と蜂谷工業㈱は、自ら
れがあったが、㈱岡山スポーツ会館と蜂谷工業
がリーダーシップを取り地元企業のみでコン
㈱のリーダーシップのもと市場予測に対する
ソーシアムを組んだことにより、PFI事業の応
裏づけを取ったり、各企業間の役割分担、リ
募に必要な税制、法制面などの知識に明るく
スク分担をきちんと行うことにより、コンソ
なったほか、事業計画、資金計画等の作成能
ーシアム構成企業間で信頼関係を築くことが
力の一層の向上が図られ、企業として一回り
できた。特に蜂谷工業㈱は、これまで総合建
大きくなれたと感じているという。
設業者として様々な現場において多種多様な
地元企業と共同で業務を遂行してきたことで
諸課題への対応
当コンソーシアムでは当該案件の募集要項
得られた利害調整能力、プロジェクト管理能
力を発揮することができた。
の公表から一次・二次提案を経て優先交渉権
ちなみに以前からの取引により信頼関係が構
の獲得に至るまでの約5カ月間、二週に一度の
築されている地方銀行からは、関心表明書(注)5
頻度で構成企業同士が会議を行った。
を出してもらうなど資金調達に関する協力も
PFI事業の担当者は、両社とも社内でも優秀
な人物3名程度が選ばれている。この背景とし
得られたうえ、審査力を活かした事業計画の
アドバイスなどをしてもらった。
ては、両社が地域で有数の優良企業であり、人
この例のように大手企業のコンソーシアム
材に対して積極的な投資を行う余裕のあるこ
に入った経験を活かして、地元企業のみのコ
とが挙げられる。
ンソーシアムでPFI事業を落札(優先交渉権の
当コンソーシアムは、企画提案書の作成に
獲得)できるケースも実際にある。ただし、外
おいて大手企業と組んでPFI事業への応募を経
部専門家を雇わずに優先交渉権獲得まで至っ
験した㈱岡山スポーツ会館と蜂谷工業㈱の知
た背景として、PFI事業への応募を経験した地
識・ノウハウを利用したことおよび地方銀行
元企業二社が組んでいたことに加え、㈱岡山
の協力により、特別に外部専門家を雇わなか
スポーツ会館にとって余熱利用施設整備・運
(注)
5.金融機関が対外的に発出する当該事業への関心・融資の検討について表明するレター。あくまでも融資検討の実施の表明に
すぎず、融資の確約ではない。PFI事業においては、資金調達の確実性を担保するために、審査基準に関心表明書の取得が盛
り込まれていることが多い。
40
信金中金月報 2004.6
営PFI事業への応募が今回で2度目であったと
か存在する(図表18)。
いう特殊事情があったことにも留意する必要
(1)地元企業に対する役割
がある。
イ.地元企業の知識・ノウハウの蓄積等を目
4.地元企業の企画提案書作成におけ
る信用金庫の役割
的とした研究会・勉強会の開催
信用金庫が中心となってPFIに関する研究
金融機関は、資金提供者、モニタリングの
会・勉強会を開催することも考えられる。前
実行者としてPFI事業の重要なプレーヤーであ
述したように研究会・勉強会の目的は、地元
ることから、地元企業主体によるPFI事業への
企業のPFIに関する知識の習得のほか、研究会
信用金庫の支援は本業そのものと言える。ま
メンバー同士の情報共有、企業間のネットワ
た地元企業の他、発注者側の行政としても地
ーク形成を図ることである。
域内の資金循環、税収の増加、地元での雇用
三重県を地盤とする地方銀行の百五銀行で
増加等が見込め、住民サイドも地域ニーズを
は、2002年10月∼2003年9月までの一年間にわ
より多く取り入れた公共サービスの提供が期
たり三重PFI研究会を主催した。参考までに内
待できるため、信用金庫による事業の支援は
容等を紹介しよう。
地域貢献としてもとらえられる。
よって積極的な役割の発揮が期待されるが、
百五銀行がインターネット等で研究会開催
の告知をした結果、地元の建設会社、維持管
その内容は地元企業に対するものと行政に対
理会社、運営会社等の計30社程度の他、大手
するものとに分けられる。ちなみに「リレー
ゼネコンも会員となった。地元企業は、他業
ションシップバンキングの機能強化計画」に
種の地元企業と接点を持てたことに加え、大
おいてPFIへの積極的な取り組みをあげている
手企業とのパイプを太くすることができた。な
信用金庫も少なくない。貸付ベースでみれば、
お、研究会の運営は、会員からの参加費6万円
実際に取り組みを実施済みのところもいくつ
によって行われている。
図表18 信用金庫のPFIへの取組み状況
(単位:件)
実
施
済
み
実
施
予
定
うち2003年3月末以前から(貸付を)実施しているが2003年度上半期未実施
1
うち2003年3月末以前から(貸付を)実施し2003年度上半期も実施
1
2003年度上半期から(貸付を)実施
3
計
5
2003年度中に(貸付を)実施予定
2
2004年4月以降(貸付を)実施予定
1
すでに諸準備が整い案件発生時に(貸付を)実施予定
1
未定
10
計
14
2003年度上半期貸付実施件数
4
(貸付実行額)
(40億円)
(備考)(社)全国信用金庫協会「信用金庫(全314金庫)における、平成15年度上半期の『リレーシ
ョンシップバンキングの機能強化計画の進捗状況』の概要」より信金中金総合研究所作成
研 究
41
研究会の具体的な内容は、研究会に参加し
ハ.ビジネスプランに妥当性を持たせるため
た企業同士でコンソーシアムを組み、PFI事業
の審査能力の発揮
に応募することを最終的な目標としているた
地元企業からの要請があれば、PFI事業の事
め、PFIの概要の説明からはじまり、事例紹介
業計画策定において事業リスク・事業採算を
を経て契約や事業性評価等の実践的なものに
見極め、ビジネスプランに妥当性を持たせる
までおよんでいる(図表19)。また、PFI事業
などの支援を行うこともできるであろう。ア
の経験がある一流のコンサルタントや公認会
ドバイスを通じてファイナンスまで実行でき
計士、弁護士等が講師を務め、生の情報を伝
れば、信用金庫にとって大きなメリットにな
えることにより地元企業の意欲向上を図った。
る。
実際、この研究会に参加した地元企業のう
ただし、PFIのようなプロジェクトファイナ
ち何社かが大手ゼネコンと組んでPFI事業に応
ンスは特定の企業の信用力ではなく、当該プ
募し、百五銀行は、当該コンソーシアムに対
ロジェクトからのキャッシュフローが重要と
し関心表明書を出した。
なるため、当該事業自体の評価やキャッシュ
フローの試算等が特に重要となるが、信用金
ロ.競争力のあるコンソーシアム形成に向け
たコーディネーター機能の発揮
信用金庫は、地域において多くの
取引先を持ち、経営内容や経営状況
なども把握しているため、コーディ
ネーター機能の発揮によって信頼の
置けるコンソーシアム形成に貢献で
きる。具体的には異業種交流会、既
存の会員組織等を通じた地元企業同
士のマッチングの促進などである。
また究極的には、自らの主導のも
と地元企業を集めてコンソーシアム
を形成することも考えられるが、こ
れには相応のマネジメント能力と技
術面・価格面等での専門知識が必要
となることから、長期的にとらえる
必要があるだろう。
庫のプロジェクトファイナンスにかかるノウ
図表19 三重PFI研究会の演題
回 数
(開催日)
1回
(2002.10.22)
2回
(2002.11.21)
3回
(2002.12.19)
4回
(2003.1.22)
5回
(2003.2.20)
6回
(2003.3.19)
演 題
まちづくりとPFI
三重県におけるPFI事業の動向
PFIとプロジェクトファイナンス
―PFI事業に携わっていくための基礎知識―
PFI事業参画のためになすべきこと
PFIの現状と課題
(手続きの流れ、評価のポイント等)
調布市立調和小学校PFI事業の概要
行政がPFIの導入を決めるまで
―PFIで求められる民間のノウハウとは―
桑名市図書館等複合公共施設特定事業の概要
四日市市におけるPFIの取り組み
国内PFI案件に関するプロジェクトファイナンスにつ
いて
桑名市図書館等複合公共施設特定事業の概要
7回
(2003.4.17)
PFI事業契約の意義
8回
(2003.5.22)
VFMについて
9回
(2003.6.19)
PFI事業のVFM評価と事業キャッシュフロー分析①
10回
(2003.7.23)
PFI事業のVFM評価と事業キャッシュフロー分析②
『地方におけるPFIに向けての提言』(講演、交流会、
11回
(2003.9.19∼9.20) パネルディスカッション)
(備考)百五銀行資料より信金中金総合研究所作成
42
信金中金月報 2004.6
ハウの蓄積は未だ十分ではないという指摘も
元企業のPFI事業参画を促進するという意味で
ある。この点で事業評価を行う専担者の配置・
は、行政側が①地域ならではの提案など非価
育成など組織的対応が一層必要となろう。
格面にウェイトを置いた提案書の評価方法の
導入、②実際のサービス利用者の審査員へ招
(2)行政に対する役割
イ.PFI導入に向けた行政の意識改革・体制づ
聘、③投資負担の軽減のための応募者への一
定金額の支払などを検討できるよう先進事例
くりの促進
の情報提供をすることなどが考えられる。た
PFI事業では、行政、民間事業者および金融
とえば四日市市では二次提案で次点以下とな
機関の三者のPFI事業に対する認識一致のレベ
った企業に対し200万円を支払っており、こう
ルが事業の成否を左右する重要なポイントに
した情報を提供することなどが考えられる。
なる。地元企業、金融機関がPFI事業に積極的
さらに行政の意識改革の促進と並行して、新
であっても行政の認識が低ければ、PFI事業は
たな施設整備へのPFI導入を行政に対し積極的
行われない。よって、普段から地元行政との
に提案することも考えられる。
深いつながりを持つ信用金庫は、PFI事業の受
これらの役割発揮を通じて、一定地域内で
注を目指す地元企業と共同しPFI導入に向けて
年間一案件以上のPFI導入が行われれば、地元
行政の意識改革を促すことも考えられる。
企業にとってもPFI事業参画のインセンティブ
具体的な方法の一つとしては、研究会、勉
となりえるだろう。
強会への参加機会の提供が挙げられる。実際、
先ほど紹介した三重PFI研究会では、地元行政
がオブザーバーとして参加していた。また、
おわりに
最近、PPP(Public Private Partnerships)と
PFI導入で先行している行政の情報を還元する
いう言葉がよく使われている。PPPとは、行
などによって、PFI事業への認識を高め、実際
政と民間事業者・NPO・住民とのパートナー
にPFIに取り組むための専担者の配置、研究チ
シップに基づく行政サービスの民間開放を表
ームの組成等を後押しすることもできる。ちな
す概念であり、民間事業者の創意工夫による
みに、岡山市役所では、PFI法の施行後間もな
財政負担の軽減と行政サービスの質的向上の
い2000年4月に総合政策部内にPFI推進班が設
実現を目的としている。今回取り上げたPFIは
置され、専担者がついてPFI事業を進めている。
PPPの一手法として位置づけられるが、PPPに
はその他、公共施設の管理運営において清掃・
ロ.情報提供等による事業の企画立案のサポート
警備など一部の業務のみを民間事業者に委託
信用金庫は地域の事情を良く知っている者
する「業務委託」や公共施設等を行政が建設
の一人として、相談役的立場から事業の企画
した後、その管理運営を民間事業者に委ねる
立案をサポートすることもありえる。特に、地
「管理運営委託」等が含まれる。
研 究
43
新たな社会資本整備が存在しないことや事
してその上で、大手企業からの打診を受けて
業規模等の理由からPFI導入が困難な場合であ
コンソーシアム構成企業となり、知識・ノウ
っても、PPP手法が活用されれば財政支出の
ハウの蓄積をした後に地元企業主体でコンソ
削減が期待できる他、民間事業者のビジネスチ
ーシアムを組むことになろう。
ャンスはより拡大していくものと考えられる。
そして、PFI事業への参画によって得られる
本稿第2章において、地元企業主体でPFI事
業に参画する際の前提条件として「独自性や
企画提案力やプロジェクト管理、
リスクマネジ
専門性などの強み」と「信用力」を挙げたが、
メント能力は、
他のPPPの手法にも活かせるだ
前述の段階論的なアプローチで考えてみても、
ろう。
すなわちPFI事業への参画は、
多様なビジ
これはPFI事業参画のすべての形態に共通する
ネスチャンスをものにする第一歩になりうる。
前提条件であることがわかる。
本稿では、地元企業のPFI事業への参画形態
「独自性や専門性などの強み」
、
「信用力」は
について①協力会社としての参画、②大手企
大手企業が協力会社やコンソーシアム構成企
業と組んでの参画、③地元企業主体での参画
業として地元企業を選定する際にも同様の条
を挙げ、そして特に③の形態に注目し留意点
件であるはずであり、PFI事業に限らず企業が
や克服すべき課題を検討した。それは公共事
永続的に発展するために必要な要素でもある。
業費の縮小傾向の中でPFI導入が進む現在、地
これは備えようとして一朝一夕に備わるも
元企業が収益の維持・拡大を目指すには地元
のでなく、常日頃からの経営努力が必要であ
企業主体での参画の検討が喫緊の課題であろ
り、信用金庫としてもPFI事業への参画可能な
うという問題意識からである。
企業を自金庫の取引先に一つでも多く持てる
ただし、はじめから主体となれる地元企業
よう、地元企業の良きアドバイザーとして情
はそう多くないことを考慮すると、まずは協
報収集や事業評価ノウハウの蓄積などに努め
力会社としての参画を目指し大手企業とのパ
る必要があろう。
イプを一層太くすることが先決であろう。そ
44
信金中金月報 2004.6
〈参考文献〉
井熊均『自治体PFIプロジェクトの実務』東洋経済新報社(2003年)
植田和男「地元中小企業の参入方式について―地域完結型PFI―
(上)
」
『全建ジャーナル』
(社)全国建設業協会(2004年
1月号)
同上「地元中小企業の参入方式について―地域完結型PFI―
(下)
」
『全建ジャーナル』
(社)全国建設業協会(2004年2月号)
小泉伸洋「地域金融機関のPFIへの取組み」『金融法務事情(1693号)』金融財政事情研究会(2003年)
佐野修久「地域再生とPPP(Public Private Partnerships)」『信金中金月報』
(2004年5月号)
(社)全国建設業協会P.P.P研究会『PFI事業への挑戦』(2004年)
(社)全国信用金庫協会「信用金庫(全314金庫)における、平成15 年度上半期の『リレーションシップバンキングの機能
強化計画』の進捗状況の概要」(2004年)
内閣府「PFIに関する全国自治体アンケート」(2003年)
日経産業消費研究所「本格化するPFI活用」『日経地域情報(№417)』日本経済新聞社(2003年6月16日号)
日本PFI協会『PFI年鑑2004年版』
(2004年)
横浜商工会議所PFI研究会「横浜商工会議所PFI研究会報告書」(2003年)
研 究
45
下請型製造業の国内での生き残りのポイント
−先進的中小金属加工業の経営革新事例から−
信金中央金庫 総合研究所上席主任研究員
平井 昌夫
(キーワード)下請型製造業、金属加工、海外シフト、多品種少量生産、経営革新事例
(視 点)
本稿は、国内生産での生き残りを目指す下請型製造業の存立要件を探ろうとするものであ
る。下請型製造業は発注元ユーザー企業のグローバル化、IT化・機械技術の革新等と技術移転
によるアジア諸国の追い上げ、ニーズの高度化等により転廃業が相次ぐなどかつてない難局の
中にある。小規模層を中心に国内での生き残りが大きな課題になっているが、本稿では、下請
型製造業の一般的な生き残りのポイントを取り上げる。先進事例の中小金属加工業2社がこう
した課題対応するための取り組みにおいて共通しているのは、多品種少量生産、IT活用、人材
の活用、社内・社外(同業・周辺業種)ネットワークなどをキーワードとしたビジネスモデル
の構築である。小零細層がそのままこれを行えるわけではなかろうが、問題解決の基本的な考
え方において共通する、あるいは参考になる部分がある。
(要 旨)
●
金属加工業に代表される下請型製造業は、技術力や納期面ではまだ高い国際競争力を有して
いるものの、コスト競争力は低下している。ユーザーの海外シフトに伴い、部品メーカーも
追随しており、汎用品・量産品を中心に海外シフトが進んでいる。このため、生産額はユー
ザーの海外シフト等から97年を直近のピークに減少している。
●
下請型製造業が国内で生き残りを図るためには、海外ではできない確固たる技術や、特注品
など多品種少量・変量生産、超短納期等高度化するニーズに応えられる生産体制が必要であ
る。
●
ここで紹介する事例企業は、国内での生き残りを図るため、今後ともわが国の競争力が強く
国内生産が中心と考えられる一般機械、産業機械などの業種・分野をターゲットに高度化す
るニーズに対応できるビジネスモデルを構築している。
46
信金中金月報 2004.6
水準にとどまっている(図表1)
。
1.下請型製造業を取り巻く環境変化
また、素形材製品の輸出入はわずかであり、
本稿は、我が国加工組立型産業の発展を支
国内中心の市場であることが特徴である。こ
えてきた板金、切削、めっきなどを中心とす
れは、重量がありかさばることや、海外から
る中小金属加工業を代表例として、下請型製
の調達ではユーザーの短納期要求に応えにく
造業が、グローバル化の波の中で引き続きサ
いといった事情があろう。もっとも自動車等
ポーティング・インダストリーとして国内で
では最終製品の部品として輸出され、間接的
生き残りを図るための示唆を得ることを目的
に国際競争にさらされており、また、ユーザ
としたものである。事例として紹介する先進2
ー企業の海外市場への展開やコスト削減のた
社の取り組みには、ITや先進的な技術の活用
めの海外生産の増加から、部品や最終製品と
などかなり進んだものがあり、これを経営資
して輸入されるケースが増えているとみられ、
源に限りのある小零細層の企業でそのまま取
国内生産品の市場縮小につながっている。こ
り入れることは容易とはいえない。しかし、そ
うした国内需要の減少や、以下に述べる環境
の底流にある基本的な考え方を参考とし、そ
変化の結果、ここ数年で事業所数が大幅に減
れぞれの身の丈に合った形で課題解決に努力
少している(図表2)
。
する意味は大きいと思われる。そこで、まず、
中小金属加工業を事例として国内市場の縮小、
ユーザー企業のニーズの高度化などの環境変
化から簡単にみていく。
(2)ユーザー企業の海外展開と現地調達の進展
1985年のプラザ合意以降の円高の影響など
により、金属加工業のユーザーである組立型
産業の海外進出が進み、製造業の海外生産比
(1)国内需要の減少
率が大きく上昇した。特に近年は、中国を中
金属加工業を素形材製品(鋳造品、鍛造品、
心にアジア地域へのシフトが急速に進んでい
金属プレス加工品、粉末冶金製品)でみると、
る。業種別に海外生産比率(2001年度)をみ
その出荷額は、91年に過去最高の5兆3,863億円
に達した後、バブル経済崩壊から94年には4兆
図表1 素形材生産額推移
(十億円)
6,000
5,445億円に落ち込んだ。97年には4兆9,723億
5,000
円まで戻したものの98年以降はITバブル崩壊
4,000
による関連需要の激減、中国などアジアへの
3,000
2,000
需要シフトから再び大きく落ち込んでいる。ち
なみに、2001年の生産額は4兆252億円と、91
年のピーク比で75%(金属プレス1兆6,115億
円、同80%、鋳造品1兆8,092億円、同70%)の
1,000
0
88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 2000 2001
(年)
粉末冶金
鍛造品
鋳造品
金属プレス
(備考)経済産業省『工業統計表』
研 究
47
ると、製造業全体では16.7%であるが、輸送機
械は44.1%、電気機械でも27.6%と高く、一般
図表2 金属加工事業所の従業員規模別
増減数・率(97→2001)
金属プレス
機械(11.3%)、精密機械(13.6%)では比較
的低い。部品調達が国内か海外かは、一部の
国内調達が不可欠なものを除き、基本的には
ユーザーの組立てがどちらで行われるかによ
る。ただ、精度や技術力を要する製造装置、検
査・測定機器など製造業を支える一般機械・
産業機械は比較的我が国の競争力が強く、国
内での組立てが主体であり、部品調達も国内
が中心といわれる。このように、中小金属加
工業が今後国内生産で生き残りを図るために
は、取引先ユーザーの業種や国内での生産分
従業員別
計
4∼19
20∼29
30∼49
50∼99
100∼ (単位:人、%)
97年
4,984
3,934
526
230
196
98
2001年
4,651
3,717
453
212
183
86
増減数
△ 333
△ 217
△ 73
△ 18
△ 13
△ 12
増減率
△ 6.7
△ 5.5
△ 13.9
△ 7.8
△ 6.6
△ 12.2
97年
3,186
2,124
437
239
221
165
2001年
2,689
1,775
346
211
202
155
増減数
△ 497
△ 349
△ 91
△ 28
△ 19
△ 10
増減率
△ 15.6
△ 16.4
△ 20.8
△ 11.7
△ 8.6
△ 6.1
鋳造品
従業員別
計
4∼19
20∼29
30∼49
50∼99
100∼ (備考)経済産業省『工業統計表』より作成
野(試作・開発型のもの、多品種小ロット対
転にともない、アジア諸国の追い上げが急速
応のもの、高付加価値のもの、短納期のもの
に進行している。このため、CAD/CAM、NC
など)を見極め、これに対応できるものづく
機など高機能化した加工設備の導入や活用と
り経営力(技術力、生産システム、マーケテ
いった一定の技術力・設備の保有を前提とし
ィング、社内・社外(同業・周辺業種)との
た上での競争力が問われる状況が多くなって
ネットワーク)を整備していくことが必要で
いる。これらは、ユーザーニーズの急速な変
ある。
化によりもたらされたものである。
(3)IT化・機械技術の革新等と技術移転によ
るアジア諸国の追い上げ
これまでの金属加工技術は、経験、勘等に
(4)ユーザーニーズの急速な変化
技術や生産プロセスなどにかかるユーザー
ニーズの変化として、多品種少量・変量生産、
よって支えられ日々の現場での改善の積み重
超短納期、ピラミッド構造の崩壊、といった
ねによって蓄積されてきた部分が少なくない。
「発注を取り巻く変化」、高精密・高精度、複
いわゆるノウハウ(技能)的要素が強かった
合加工や新素材への対応など「技術を取り巻
のである。継承人材の枯渇化の中で、技能の
く変化」がある。
継承が大きな課題となるとともに、電子・情
報技術や機械技術などの高度化によって、機
イ.発注を取り巻く変化
械化、自動化、情報化による技能の技術化も
これまで、親企業は傘下に多くの協力企業
進展している。同時にこうした技術の海外移
を抱える安定的なピラミッド構造を構築し、長
48
信金中金月報 2004.6
期継続取引を行ってきた。しかしながら、低
端技術などより高度な研究が進められている
コスト化や製品寿命の短サイクル化など需要
が、こうした領域への対応は現状レベルの自
環境の不確実性が高まる中で、従来の協力企
社技術だけでは限界もあろう。自社技術の深
業をそのまま抱え続けることは困難化してお
耕や、新たな分野との融合化等を進めるには、
り、ユーザーはこれまでの取引関係に必ずし
他企業、工業技術センター、大学等との連携
もこだわらず、国際的な最適調達を志向する
など外部機関を有効に活用していくことなど
ようになってきている。
も重要である。
また、組立メーカーの海外への生産シフト
により国内市場での競争が一段と激化する中
2.国内生産での生き残りのポイント
で、金属加工業は生産工程の情報化、技能の技
こうした業界環境の中で、後述する事例等
術による代替でより装置産業化し、資金力・技
から中小金属加工業に代表されるような中小
術力などある程度の企業体力がなければ、企業
下請型製造業が国内生産で生き残りを図って
が独立して存続していくことがますます困難
いくためのポイントを挙げてみたい。
になってきている。加えて、部品の共通化やモ
ジュール化を進める一方で、発注先に購買機能
の一部代替を求めるようになった。このため、
(1)多品種少量・変量生産、超短納期への対応
多品種少量・変量生産とは、多品種少量生
特定部品の専業者や、他企業とのネットワーク
産であって、かつロットや発注が安定しない
化などで複数工程分野を請け負える部品企業
ことを意味している。また、小ロットでも安
が今後主流になってくるものと予想される。
定した発注であれば海外メーカーにシフトす
ると考えられるため、国内生産の第1のポイン
ロ.技術を取り巻く変化
既述のように、最近の素形材技術において
トは、変量、超短納期にいかに対応するかに
ある。
は「技能の技術化」が進展している。これに
最近の仕事は受注が安定せず、加工内容も
伴って、情報機器や新しい技術の利用、新し
変動が大きくなっている。企業規模にかかわ
い装置の利用・保守などに新たな技能が求め
らず、受注品が多品種になればそれだけ効率
られてくる。重要なことは、これらの高機能
的に現場の生産情報を管理することが必要で
加工設備の導入や活用を前提とした上で、そ
ある。特に、中小企業の生産情報管理の問題
れらの活用ノウハウを含めた技能のさらなる
点は、顧客からの問い合わせ時に必要な情報
高度化とその維持・継承が喫緊の課題になっ
がすぐに検索できないことや、図面等の情報
ていることである。
の再利用(流用)ができていないなどにある。
また、日本国内に残るものづくりがますま
まずは、ユーザーニーズへの対応という目的に
す高度化していく中で、素形材の分野でも先
あわせた管理のため、情報を整理して使い勝手
研 究
49
良く蓄積し、身の丈に合った見積の効率化等に
ジニアリング㈱でも、半導体、FA等生産財市
活かすことが基本として重要である。その際、
場の精密部品のメニューを用意して、外注工
ツールとしてのIT活用も有効な手段である。
場のグループ化によってユーザー仕様の特注
品生産という個別のニーズに対応できる体制
(2)一括発注への対応
を整えている。
グローバルな競争環境下、勝ち組、負け組
ユニット化、モジュール化への対応として
が明確化してくる中で、最近のユーザーの大
は、このように自社での対応と、企業間連携・
きな変化として、事業の選択と集中を行い、従
グループ化も重要になる。後者の場合、その
来内製していた製造部門のアウトソーシング
中核的企業となる場合と、グループの一員と
を進めていることがある。たとえば、板金の
して得意分野を活かしていく選択がある。中
受注だけではなく、プレス、塗装、といった
核的企業にはユーザーの製品設計への参画能
周辺分野を含めたユニット化、モジュール化
力や周辺技術のコーディネート力などが必要
した部品として納入できる業者を求めるよう
となるため、これをこなせる企業は限られる。
になっている。ユーザーは、企画、営業、最
また、グループに参画する場合でも、単に中
終組立といった主要部分を担当し、それ以外
核企業に任せておけばよいというものではな
の部分を下請業者に任せつつある。
い。後述するプラスエンジニアリング㈱の例
こうした流れを受けて、下請企業側でも、対
のように外注グループへの参画企業には一定
応を模索する動きが出てきている。金属加工
の技術力、人材などの基準を設けており、保
業は従来、プレス、板金、塗装、などそれぞ
有技術等を明確化してアピールし、これを的
れの工程分野の中で、専門業者が効率化を図
確に活かしていくことが不可欠であろう。
り、ムダ取りを行ってきた。最近では、これ
らの複数工程を一貫してこなし、下請間のやり
(3)求められる問題解決能力と情報発信
取りにかかる横持ち費用などをなくして最終
日本のものづくりの優れた点はムラのない
製品までの全体で「ムダ取り」を行うことが重
一定の品質保持能力や納期厳守などにある。こ
視されるようになってきており、そうしたもの
れを可能にしているのが日本の強みである現
作りを前提とした受注競争に移行しつつある。
場での経験、ノウハウを活かした高度な熟練
これに対応するため、後述の事例の岡田鈑
技能や連携である。これによって高い品質、検
金㈱では、ユーザーの変化に対応しながら、主
査能力が保たれ、品質への大きな信頼につな
力の板金に加えて、プレス、塗装、最終組立、
がっている。事例のプラスエンジニアリング
そして設計、と漸次守備範囲を広げつつ、一
㈱では、品質管理を標準化された作業・行動
括発注に対応できる体制作りに向けて展開を
の約束事として盛り込み、検査という工程を
行っている。もうひとつの事例のプラスエン
別途設けなくとも個々の社員が結果的に各工
50
信金中金月報 2004.6
程ごとに実態として検査を担っている。その
中小金属加工業は、自動車産業をはじめと
前提には「5S」など小零細から大企業まで共
するユーザー産業に主導されてきたが、今後
通する基本動作の徹底といった重要な取り組
は、独自ノウハウを活かした提案型企業とし
みがあることは言うまでもない。また、ユー
て、積極的にユーザー産業側の問題解決への
ザーから加工技術や製法で新たな提案を求め
アピールを行っていくことが期待される。そ
られるケースも増えつつある。この場合には、
のためには、最終需要の動向など情報を極力
既成概念にとらわれない新たな発想、問題解
正確かつ幅広に把握したり、自らの技術力等
決能力が必要になる。周知のように、我が国
について積極的に情報発信していくことが必
では、小規模であっても得意分野に秀でた専
要である。
門企業が現場経験の積み重ねによってものづ
くりに独自のノウハウを生み出しており、こ
うした潜在能力を引き出していくことが欠か
3.企業事例−新たなビジネスモデル
作りの取り組み
せない。しかし、せっかくの自らの技術がユ
以下では、国内でのユーザーニーズへの対
ーザー企業にとって、どのように利用できる
応に取り組む中小金属加工業の経営革新事例
かを認知していない、あるいは認知できない
を紹介する。はじめに、両社の取組内容をま
場合が多いのではなかろうか。
とめると図表3のようになる。
図表3 事例企業の取組み内容
岡田鈑金㈱
(環境変化と対応の方向)
(1)環境変化
(2)対応の方向
(具体的取り組み)
(3)IT活用・生産管理
ユーザーの海外シフト
ユーザー自体の変化(アウトソーシング)
ユニット発注の増加
ユニット発注への対応(ムダ取り)
生産工程の自動化・省力化
小ロットのEMS
社内カンパニー制による柔軟経営
プラスエンジニアリング㈱
標準・規格・量産品の海外シフト
特注品の規格品並の調達
顧客満足・ユーザーのムダ取り
「生産財の精密機械加工部品」専門製造システム
製造力・営業力・社員力の充実
生産の自動化・24時間稼動
CAD/CAMデータベース構築
による多品種少量・変量生産システム
自社開発ERPによる社内情報化
GTを駆使したFMSによる
多品種少量生産システム
(4)本社・工場・外注先
(パートナー)の連携
大田区(本社)・茨城(工場)の分離と連携
都内(本社)・宮城(工場)の分離と連携
外注先(パートナー)の育成・活用
(5)人事管理
多能工によるカンパニー間の人材流動化
年俸制による業績給の導入
目標管理
従業員の自立性を重視した管理
「管理レス」の経営(役割の明確化)
社内業務のマニュアル化・標準化
目標管理と業績給の導入
(6)営業・顧客管理
1業種1社を原則とする戦略的営業
顧客データの作成・管理
技術情報提供によるニーズ対応
(備考)信金中金総合研究所作成
研 究
51
第1のポイントは、環境・ニーズの変化を十
機械・ソフトメーカーから多品種少量生産の
分把握し、対応の方向を明確にしていること
自動化システムを導入し、生産関係のデータ
である。両社とも、ユーザーの海外シフトに
ベース構築による板金部門の多品種少量の生
伴い、国内でのニーズが高度化する中で、あ
産自動化を行っている。P社では、生産財市場
くまで国内での生産に生き残りをかけている。
での規格化されない特注品受注にターゲット
つまりターゲットの絞込みを図っている。具
を絞り、これに対応した専門製造システム、す
体的には、両社の主たるユーザーは我が国が
なわち多品種少量生産の作業標準化を実現す
強い競争力を有し、国内での生産・組立が主
を駆使
るためのGT
(グループテクノロジー(注)1)
体である製造装置、検査・測定機器等一般機
したFMS
(Flexible Manufacturing System:
械・産業機械の業種・分野であり、この分野
多品種少量・変種変量に対応できる混合生産
の部品の多くは、規格化されず、生産のノウ
システム)を構築している。また、生産面に
ハウ・工夫・熟練を要する多品種少量生産品
とどまらず、自社独自の全社的な統合的情報
である。こうした分野で、岡田鈑金㈱(以下
システム(ERP(注)2)を開発している。両社に
「O社」という)では、ユーザーからのユニッ
共通するのは、過去に受注した図面などをデ
ト発注への対応を図り、プラスエンジニアリ
ータベース化して、効率よく活用できるシス
ング㈱(以下「P社」という)では、規格化さ
テムを構築しており、このためにITを活用し
れない特注品受注に対応した専門製造システ
ていることである。
ムを構築している。
人材の活用については、O社では徹底的な自
ノウハウ・販路等を含め企業によって保有
動化を進めた上でなお受注の変動に対応する
する経営資源に違いはあるが、自社の経営資
ために多能工化を進め、仕事量に応じた部門
源の十分な吟味と環境変化を的確にとらえた
間での人材の適正配置をフレキシブルに行う
うえで対応の方向を明確にすることが重要で
とともに、外部からの適材の採用により独立
ある。
採算の社内カンパニー制としてユニット発注
第2のポイントとしては、
「具体的取り組み」
に対応している。一方、P社では社内情報の共
における効率性の追求で、両社ではこれにIT
有化により社員の自立性を育て、独自の製造
を活用していること、人材の活用、社内・社
システムを担う社員力を強化している。また、
外(同業・周辺業種)ネットワーク化を図っ
生産管理面でも、機械的な計画によらず、現
ていることである。
場の社員、チームによる調整を重視し、現場
効率化のためのIT活用については、O社では
主義を徹底している。中小企業では大企業以
(注)1.類似製品を1つのグループにまとめて、できる限りの標準化を進めることによって工程編成、ロット編成、作業スケジュー
ル編成を合理化し、量産工場に負けない効率を実現するもの。
2.事業運営における販売、生産、購買、人事などの企業全体の経営資源を全体最適の観点から計画的に有効活用し、経営効率
を高めるための手法、概念
52
信金中金月報 2004.6
上に個々人に依存する度合いが大きい。この
外と競合する仕事を避けるのが当社の基本戦
ため、従業員の能力が最大限に発揮されるよ
略である。このため、主力である板金の多品
う生産や人事面等での柔軟な仕組みや運用が
種少量の生産自動化に加えて、板金、プレス、
重要である。
塗装、組立、設計の各部門にカンパニー制を
ネットワークの面でも、O社では生産データ
の一元化による「O・BANネットワーク」と
導入し、採算管理を徹底するなど効率的で柔
軟な体制の構築を図っている。
いう社内ネットワークを構築、P社では「ネッ
トファクトリ」という外注工場をネットワー
イ.環境変化―ユーザーのユニット、モジュ
ク化し、社内工場と一体となった製造システ
ール化志向
ムを構成している。
最近の顕著な変化は、元受業者(ユーザー)
グローバル化の中で、これまでの取引関係
が既述のように、板金だけでなく、プレス、塗
の特徴であった系列、下請といった固定的な
装、といった周辺分野を含めたユニット化、モ
企業間関係が激変している。このため、差別
ジュール化した部品として納入できる下請業
化された得意分野を活かして弱い部分を互い
者を求めるようになっていることである。当
に補完したり連携していくためのグループ化
社は1業種1社を原則に主要取引先10∼20社を
など新たな企業間関係の構築過程にあるとの
擁し、従来遊戯機械を主力としてきたが、現
認識が重要である。
在ではユニット化、モジュール化への対応も
あり、半導体等の製造装置、試験機などに広
(1)岡田鈑金㈱ ―一括発注への対応
(精密板金加工業 創業1923年 従業員43人
がりをみせている。これらの分野はいずれも
精密板金を必要とするものである。
年商7億円)
当社は、産業用電気機器の制御盤や遊戯機
(注)3
を目
ロ.対応の方向―小ロットの「EMS」
械、産業機械の板金を手がける精密板金加工
指す
業者である。板金業界は海外との競合が他の
ユニット化、モジュール化に対応した当社
金属加工よりは比較的少ない業界ではあるが、
の取り組みをまとめると、
(イ)生産自動化と
コンピュータの筐体等量産物については中国
モジュール化への対応と、(ロ)人材の育成、
などへの海外シフトが進んでいる。こうした
効率的活用のための社内カンパニー制導入と
中で、国内生産のニーズ、すなわち、量産品
受注に応じた部門間での人材の適正配置等が
と違って手間がかかるため他社の手がけたが
ある。
らない小ロット受注に対応して、中国など海
(イ)では、多品種少量生産と同時にコスト
(注)
3.EMS(Electronics Manufacturing Service)はエレクトロニクス製品メーカーが自社の経営資源を競争力の要因である研究開
発とマーケティングなどに集中し、設計や製造業務をアウトソーシングする際に、その受け皿となる業態である。エレクトロ
ニクス産業の発展に伴い、急成長している。
研 究
53
ダウンを図るため、生産管理を含めた製造部
ットワーク化したシステムとして提案できる
門の生産関係データベースの構築・活用によ
機械・ソフトメーカーを選択した。生産管理ソ
る板金加工の自動化における積極的なIT投資
フトについては、メーカー仕様を自社の生産実
を進めてきた。その後、順次、塗装・プレス・
態や長年蓄積してきた現場のノウハウが活か
組立工程についても社内で手がけ、一貫生産
せるよう修正を行う一方で、活用実績を踏まえ
体制を構築することにより、ユニット発注、モ
てメーカーへの提案を行うなど使いやすさの
ジュール化にも対応できる生産体制を整備し
向上を図っている。なお、受注・進捗管理につ
てきた。また、
(ロ)では、板金、塗装等部門
いては、広く一般に利用されているデータベー
別採算の明確化と社員の原価意識向上のため、
スソフトを用い、特別なものは用いていない。
社内カンパニー制による独立採算制を導入し
板金部門では、一元化されたCAD用図面デ
た。さらに、受注の変動に対応するため、部
ータ・設計データ、CAM用加工データ、MRP
門間での人材の適正配置を行い、ユーザーの
(資材所要量計画)用部品データ等生産関係デ
多品種・変量生産と超短納期生産に対応でき
ータベースを構築、展開図作成・加工データ
る柔軟な組織作りを行っている。こうした取
入力など板金作業の90%を占める段取りなど
り組みにより、当社は小ロットの「EMS」に
準備工程を省力化するとともに、材料供給、金
なることを目標にしている。
型交換を含めた生産自動化による24時間稼動
以下、当社の具体的な取り組みを述べる。
体制を実現した。
なお、板金に限らず、機械加工等において、
(イ)生産自動化とモジュール化への対応
①データベース構築による板金部門の生産自
機械設備の実稼働時間以外の段取り等準備作
業は大きなウエイトを占めるもので、ITの活
動化
用いかんにかかわらず、その合理化による時
板金部門の多品種少量生産における生産自
間短縮の重要性は変わらない点に留意が必要
動化の狙いは、板金作業の90%を占める段取
である。当社は、これにより、設計から製造
りなど準備・段取り時間の短縮による納期短
までのリードタイムを大幅に短縮、板金後の
縮、省力化にある。また、当然ながら、新規
溶接、塗装工程を入れても最短1日から半月程
設備・ソフト導入には、創業以来長年にわた
度までの短納期で90%以上の納期遵守率を実
り蓄積された板金加工での経験・ノウハウが
現している。
ベースになっている。多品種少量生産のため
板金では、受注後、リピート品については
の設備および生産管理ソフトの導入に際して
直ちに(新規受注品についてはデータ入力後)
は、生産の自動化を図る上でソフトとハード
入力済みデータにより工程の能力・負荷計算
(CADとCAM)の連携が必要であるため、機
械単体ではなく、設計から機械加工までをネ
54
信金中金月報 2004.6
がなされ、生産実行に移される。
生産工程の自動化省力化を優先し、365日24
時間稼働体制を取り、昼間の8時間は職人が関
認識することになった。そこで、組織そのも
与せざるを得ない仕事を重点的に行う。一方、
ののあり方を見直し、当社そのものが板金専
無人運転する16時間をいかに有効活用するか
業から「EMS」を目指すなど業態を変えてい
がポイントで、稼働率は最近では80%と高ま
く必要があると判断し、組織改革に取り組む
っている。
ことになった。なお、生産面では品質管理など
に課題が残っており、今後、専門家の嘱託採用
②ユニット・モジュール化への対応
こうした板金部門での情報化投資を積み重
により社内での取り組みでカンパニーによる
ISOレベルの品質を確立したいと考えている。
ね、97年、
「O・BANネットワーク」という当
社のITツールを完成させた。これで多品種少
量生産対応ができると考えられたが、デフレ
(ロ)受注に対応した組織の見直し
①社内カンパニー制による部門採算管理
経済の下で、ユーザーからのコストダウン要
当社はそれまでフラットシステムという組
請で価格が下がり(91年ピーク比で現在約△
織体制をとってきた。これは中間管理職を置
50%)
、また、ユニット発注への対応も必要と
かず、社長や専務が直接現場に指示を出せる
なり、板金の前後工程の合理化が不可避とな
体制であったがうまく機能しなかった。従業
った。このため、2000年に塗装部門、2002年
員が自分の業務のみにこだわり、人材を状況
にはプレス部門においてマネジメントができ
に応じて機動的に配置できなかったからであ
る技術者を中途採用することでこれを進めた。
る。そこで、2002年4月、この体制を抜本的に
2003年には、組立部門をM&Aで、設計部門は
見直し、板金、プレス、塗装、組立という4つ
個人会社を社内外注化した。
のカンパニーを作り、部門別採算管理を徹底
こうして板金だけでなく、こうした他部門
した。社長、専務が全社的な統括を行うとと
にも生産関係データ管理の一元化を進め、
「O・
もに、各カンパニーのトップが各部門の利益
BANネットワーク」の機能拡張を図っている。
目標と実行行動計画を立てる独立採算制を取
しかし、このITツールを使えば多品種少量・
る。カンパニーのトップは収益責任を負う代
変量生産ができると考えたが、今の時代はこ
わりに給与体系は年俸制プラス成功報酬(業
れでも十分ではないと気づいた。コンピュー
績給)である。部門採算は限界利益による損
タによるネットワークシステムは、多品種少
益分岐点で把握している。部門別利益は、本
量生産でも所詮は安定受注を前提とした仕組
社費(金利は含まない)を控除して金利控除
みになっている。ところが、最近の仕事は受
前の経常利益段階まで算出している。兼務の
注が安定せず、加工内容も変動が大きくなり、
マネージャーの人件費は業務量に応じて部門
コンピュータネットワークによる生産管理で
別に配賦し、本社費の配賦は育成すべき部門
はこうした状況に対応するには限界があると
の配慮など社長の裁量で決めている。
研 究
55
②人材の流動化による効率的活用
従業員は板金、組立などそれぞれの部門に
ば製造各部門(カンパニー)に工程別に仕事
を流すことになる。同時に納期厳守のために
配置していたが、固定化して仕事の繁閑に対
工程管理は営業部門が板金部門と連携を取り、
応ができなかったため、状況に応じた機動的
ミス、遅れのないよう行っている。なお、営
な人材の配置に取り組んだ。すなわち、各従
業部門は各製造部門への発注に際して10%の
業員はいずれかのカンパニーに本籍を持つも
管理費を受け取ることで採算を取っている。ま
のの、要求があればカンパニー間を自由にシ
た、板金、プレスなど製造部門も、営業部門
フトする体制に切り替えた。この体制をとる
に依存するだけでは受注の確保が難しいため、
ため全従業員が多能工となっている。また、正
同時に各カンパニー独自に営業活動を行うこ
社員に限らず、パートや人材派遣もカンパニ
ととしている。
ー間で柔軟性を持たせるようにした。当社の
仕事は納期が非常に短く、海外にシフトし難
(2)プラスエンジニアリング㈱―「生産財の
いものである。こうした強みがあるとはいえ、
精密機械加工部品を専門に製造するシステ
受注が安定しないため、この変動に対応でき
ム」の追求
る生産体制を組むことが重要と考えた結果で
ある。
(精密機械加工部品製造業 創業1974年
従業員115名 年商25億円)
カンパニー制によって、社員の原価意識が
当社は精密機械加工部品の製造業者で、
「生
高まる、独立採算で社内の問題点が明確にな
産財の精密機械加工部品を専門に製造するシ
る、などのメリットがある。まだ全体的には
ステム」を特徴とする当社のビジネスモデル
年功給の色彩が強く、業種柄技能・技術レベ
は、製造工程の標準化により、完全なオーダ
ルを反映した人事考課制度などの面で取り組
ーメイドでありながら規格品並みの価格と納
みが遅れているが、処遇については管理者層
期を実現するものである。自社開発による
を中心に社員の約3割(10人)で年俸制とする
「ERP」ソフトの導入など基幹系、情報系を含
など、成果給を導入しつつある。
めた全社的に徹底されたIT活用による経営効
率化によりこれを実現している。
(ハ)営業・顧客管理
当社は現在では板金、プレス、塗装、組立、
設計、という5つの製造部門と営業部門のあわ
イ.環境変化―内需は多品種少量・特注品へ
(イ)ビジネスモデルの発想
せて6つのカンパニー制を取っている。営業部
当社は1974年の創業時から経営理念として
門は、3人の専任者と社長、専務が担当し、主
「精密加工技術、産業インフラを目指す、顧客
力の板金を中心とした周辺加工を含む複合加
の技術開発の一翼を担う」を掲げ、多品種少
工部品の全社的な受注活動を行い、成約すれ
量の特注品を専門的に扱ってきた。したがっ
56
信金中金月報 2004.6
て、その後、バブル経済が崩壊し右肩上がり
場は、生産設備市場と工場消耗品市場に分け
の時代が終わり、国内需要が量産・規格品か
られる。前者は、半導体、FA、医療、製薬等
ら多種少量・特注品へと変わる中で、当社の
様々な分野の製造・検査等の機械・装置で我
ビジネスモデルが活きる時代になった。いわ
が国が世界的に競争力を有する分野であり、そ
ば、環境が変化し時代が後からついてきたと
のキーパーツをターゲットにしており、コス
いうのが実態である。
ト競争力強化が課題である。後者は、ユーザ
当社のビジネスモデルの原点には、現社長
ーの海外シフトによる空洞化リスクがあるが、
が当社を創業する前に従事した特殊鋼卸売業
全国に散在する顧客のフォローとサービスの
での経験がある。問屋として自動車部品業者
強化が課題である。こうした分野ではユーザ
に材料を販売していたが、得意先の部品業者
ーは部品についてはほとんど内製しておらず、
を観察する中で、下請型企業では特定の受注
これまで、標準部品については専門部品メー
先に依存せざるを得ず、付加価値の拡大にも
カーから調達するほか、特注品については、多
限界があることを強く感じていた。そこで、創
様な中小金属加工業者に発注してきた。しか
業に際して「自立」を経営の中核に位置づけ
しながら、ユーザー側では、需要の変動に加
ることになった。すなわち、当社は、特定の
えて、グローバル競争の下で、Q(品質)、C
もの(個人・企業・顧客)に依存せず、また、
(コスト)
、D(納期)のいずれにおいても競争
社員も個人として当社に依存しない、言い換
環境が激化し、部品業者に対する要求が厳し
えれば、当社は自立した主体性を持った組織
さを増している。
として社会にその存在価値を訴えていく、そ
のためにも、自立した主体性を持った社員に、
ロ.対応の方向―顧客価値の創造
その能力を存分に発揮できる「場」をどうし
多品種少量・特注品受注に対応した当社の
たら提供できるかを考えてきた。また、特定
取り組みをまとめると、
(イ)企業目標の明確
の受注先に依存しない、自立した企業を目指
化、(ロ)GTを駆使したFMSによる多品種少
す中で、その独自性を「多品種少量の部品加
量生産システム、
(ハ)自主性を活かした成果
工で取引先の納期・予算の期待に応えるファ
主義である。
ウンドリー企業(受託企業)
」に求めることに
なった。
まず(イ)では、当社は顧客価値の創造を
企業目標として顧客満足度を第一に考え、顧
客の「ムダ取り」に貢献することを目指して
(ロ)高度化するユーザーニーズ
当社のターゲットとする生産財の精密機械
いる。これを実現するため、納期については、
「その部品を必要とするお客様が決めるもので、
加工部品の市場は約500億円と推定され、この
供給者の都合が優先するものではない」と考
うちの約10%の確保を目指している。この市
えている。このため、先方の発注(希望納期)
研 究
57
イコール生産指示と考えて、「管理レス」、つ
産においてユーザーニーズに的確に対応する
まり、
「計画・管理」より「仕組み・システム」
には、現場での対応が重要である。まず、納
を重視した組織作りを行っている。IT活用につ
期については、
「その部品を必要とするお客様
いては、自社開発による「ERP(統合業務ソフ
が決めるもので、供給者の都合が優先するも
ト)」の導入により、経営・営業・技術・製造
のではない」と考えている。このため、
(物理
の各データベースにより最新の情報を全社員
的に生産可能な範囲での)先方の発注(希望
のパソコンに提供し、統合システムによる協業
納期)イコール生産指示と考えて、「管理レ
により業務のスピードと効率を実現している。
ス」
、すなわち、
「計画・管理」より「仕組み・
(ロ)では、製造工程の標準化により、完全
システム」を重視した組織作りを行っている。
なオーダーメイドでありながら規格品並みの
具体的には、
「顧客満足と強化戦略」のため、
価格と納期を実現するビジネスモデルを目指
「社員の自己実現」を通して社員力の充実を図
している。生産管理面でも、工場でのチーム
るとともに、
「業務システム」として、ネット
間の調整・協力など従業員の自主性を活かし
ワークファクトリ(外注工場)を含めた製造
た納期・品質管理を行っている。
力(技術、価格、納期、品質)および営業力
また、
(ハ)では、顧客満足度という企業目
を強化する。そして、自立性を持つ「社員」が
標が、成果給による目標管理を通じて、従業
「業務システム」を活用して、「目標」を遂行
員が自主性を発揮することで達成される仕組
する、というのがシステムの中心であり、こ
みを作っている。社内規程の文書化・標準化、
れを支えるのがITを活用した情報マネジメン
役割の明確化によって、
「自分の給与は自分で
トである(図表4)。
決める」仕組みづくりを行っている。
以下、当社の具体的な取り組みを述べる。
情報システム構築の目的は業務プロセスの
革新であり、ITはそのための重要な手段であ
る。当社のIT活用は生産面の情報化から始め
(イ)企業目標の明確化―顧客価値の創造
られたが、その後、コンピュータの経験者の
当社は顧客価値の創造を企業目標として顧
受入れにより漸次自社開発による「ERP(統
客満足度を第一に考え、「在庫のムダ」「メン
合業務ソフト)
」の導入を進めてきた。経営・
テナンス・品質管理のムダ」
「標準品に合わせ
営業・技術・製造の各データベースにより最
るムダ」
「納期管理のムダ」など顧客の「ムダ
新の情報を全社員のパソコンに提供し、統合
取り」に貢献することを目指している。これ
システムによる協業が業務のスピードと効率
を実現するため、
「生産財の精密機械加工部品
を支えている。同時に、業務ごとの初期画面
を専門に製造するシステム」
、すなわち、キー
に当社における各業務の目的、方針やルール
パーツに不可欠な特注品を規格品並みの価格
が表示されており、社員の基本動作の確認と
で供給するシステムを構築している。受注生
遵守を促す仕組みを確立している。また、
「掲
58
信金中金月報 2004.6
図表4 プラスエンジニアリングの経営モデル
顧客価値の創造
顧 客 満 足 と 強 化 戦 略
パ
フ
ォ
ー
マ
ン
ス
に
対
す
る
顧
客
の
評
価
企業理念・リーダーシップ
社員の自己実現
業務システム
自己革新
成長支援研修と
強化戦略
製
造
営
業
個人と組織と
強化戦略
強化戦略
パ
フ
ォ
ー
マ
ン
ス
に
対
す
る
顧
客
の
評
価
企業価値と強化戦略
目標と結果
フネ
ァッ
クト
トワ
リー
ク
ターゲット
成果配分
活動結果
情 報 マ ネ ジ メ ン ト
社会環境との調和
地域社会の発展に貢献
(備考)信金中金総合研究所作成
示板」による経営環境情報など徹底した社内
情報の共有化が図られている。
具体的には、24の市場(FA、半導体、電子
部品など)に対応した79の製造ラインで3,418
メニューの精密部品の製造工程を標準化して
(ロ)GTを駆使したFMSによる多品種少量生
産システム
いる。同時に、表面処理を入れて200社に上る
外注先(パートナー)を持つ。
①「生産財の精密機械加工部品を専門に製造
するシステム」
②従業員の自立性を重視した生産管理
製造工程の標準化により、完全なオーダー
多品種少量生産の作業標準化を実現するた
メイドでありながら規格品並みの価格と納期
めの上記GTを駆使したFMSと約200社に及ぶ
を実現する「産業インフラ」を目指している。
多様な加工、表面処理技術を持つ外注先ネッ
生産財の需要分野は多岐にわたるが、最新鋭
トワーク(ネットワークファクトリ)の体制
機種の導入と要素技術の蓄積、多品種少量生
により、見積の約80%で社内・外注の選択→
産の作業標準化を実現するためのGT(グルー
見積→納期回答まで4時間以内というクイック
プテクノロジー)を駆使したFMS(Flexible
レスポンスが可能となっている。見積には、類
Manufacturing System)の採用によって、高
似品や外注単価(市場価格)を参考としてい
稼働と低コストを実現している。
る。
研 究
59
受注してからは、リピート品については過
間短縮などが成果給に反映する仕組みとし、受
去の図面(CAD/CAM)データから、新規オ
注の確保や品質管理、納期管理のインセンテ
ーダーについては生産技術課での工程設計と
ィブとなっている。
基準日程作成を経て製造に指示が回る。製造
部門(9ショップ(工程)に分かれ、1ショッ
③品質管理は約束事―不良ゼロは会社の収益
プが2∼3チーム(1チーム3名)で構成される)
と信用に寄与する
が日程調整の上、フォワード・スケジューリ
約束事(正しい考え方、正しい工程設計、標
ング(仕事を最早着手日に合せて決める)で
準化された作業・行動)を守れば不良品は発
生産に着手する。
生しないとの考え方から社内品の検査は行わ
工数計画、小日程計画による納期管理はチ
ない(良品を作るプロセスを重視し、品質は
ームリーダーによる現場の調整(前後工程の調
作りこむ)
。また、受入不良品は発注者の責任
整、3チーム間の相互協力)に任せられている。
として、不良ゼロの記録達成度を成果給に反
工数・負荷にはもともとかなりの幅があり、機
映し、やりがいに直結する。また、不良品に
械的な工数計算はかえって自主的な努力を失
関するデータ(発生場所、何が、誰が)がト
わせるとの考えから、計画は現場のチ−ムリー
レーサビリティとして品質管理に役立つ情報
ダーに責任を持たせることで、短納期(2日∼
になる。
15日)での高い納期遵守率を実現している。
この製造システムの成果は営業データ6項目
④本社・工場・外注先の連携
の目標(目標値)で評価される。すなわち、不
当社は本社機能・営業を都内に置き、スペ
良率(0.1%以下)、指示納期遵守率(90%以
ースを要する工場は地方に配置している。ま
上)、リードタイム(8∼10日、60%、11∼15
た、独自の製造システムを支えるため、外注
日、25%)、見積ヒット率(85%以上)、見積
先(パートナー)と緊密な関係を保持してい
時間(4時間以内100%)、納期確定率(4時間
る。パートナーは従業員規模10人前後の得意
以内100%)である。
分野(技能)を持つ先で、ランク付けで評価
こうした目標達成を促す仕組みが社員の自
選別する。基準としては、実力に合致した発
主性を重視した目標管理と成果給による処遇
注を行うこととし、スキル(競争力となる技
というインセンティブである。目標時間設定
能)を持った人材、機械別に経験年数を有す
など管理のための時間管理を排して、仕事の
る人材を持つ企業を選定する。発注は特定先
実績(成果)としての生産金額(付加価値ベ
に依存せず、3社の相見積もりを実施するため、
ースの受注額)等を自己申告し、経験年数に
Q、C、D、S(サービス)を評価して3∼5社を
応じて決められた目標生産金額の達成度や顧
選定し、主力と準主力先のランク付けを行い、
客からの品質クレームの実績、納期や加工時
1社につき1百万円/月を発注限度としている。
60
信金中金月報 2004.6
(ハ)人事管理―自立性を重視した成果主義
①経営はシンプルが一番
自己管理ができて「一人前」であり、
「管理」
割合はまだ7:3と成果給のウエイトが低いが、
今後は高めたいとしている。
所定内給与は職歴給(年齢給)
+基本能力給
はコストであることから「管理レス」を重視
(執務態度)+専門能力給(専門能力・成果)
する。このため、役割の明確化(生産管理−
に、諸手当は、生産目標金額を基準とする成
納期、営業−受注確保、生産−コストダウン)
果給と、自己管理による管理成果を基準とす
が重要であり、全体の整合性が取れた手順、行
る責任給などからなる。基本能力給および専
動、基準を徹底して文書化、標準化している。
門能力給のベースとなる執務態度と専門能力・
たとえば、既述のように、生産・作業の実績
成果については、具体的な行動で明示した判
は本人が申告するといった自主性を重視した
定基準を基に自己評価とグループ評価を半年
生産管理を行い、品質管理もほとんどが約束
ごとに行い、その期間の給与額を決定する。生
事として標準化している。作った人が「部品
産目標金額を基準とする成果給については、
検査員」として検査を実施しているという意
「目標を公平に設定する唯一の基準は本人の給
味で社内品について別途検査工程を設けるこ
料」との考えから、
「給料を基準とした生産目
とは行わず、社外からの受入検査のみ実施し
標金額を設定し、成果給を決定する」
。すなわ
ている。人による作業を含めた工程能力は理
ち、原則として本人の給料(社会保険料等の
屈どおりではなく、工夫次第で向上する。目
本人にまつわる付随費用を含む)の3倍を生産
標とする計画値はどうしても甘めになりがち
目標金額とし、その達成度合いのほか、顧客
で、目安にはなっても信頼できるデータにな
満足度指標としての指示納期達成率、契約納
らない。こうした考えから、単なる生産量等
期達成率などの達成度を基準に成果給が決定
の目標値の達成度合ではなく、結果としての
される。自己管理による管理成果を基準とす
生産・生産外金額(研修、保守・点検等)を
る責任給については、品質クレーム、不良の
申告することで、インセンティブが働くこと
有無などによって責任給が決定される。これ
になる。
らの算定は1日単位など最小単位での管理をす
ることで、新たな達成意欲を促進できるよう
②「自分の給与は自分で決める」
給与については「自分の給与は自分で決め
る」を原則として、会社はいかに公平に決め
考慮している。また、これらのきめ細かな管
理はITの活用により容易になっている点が重
要である。
るか、そのための客観的なものさしを作るこ
とに腐心している。
(ニ)営業・顧客管理
給与は、年功給的色彩が強い所定内給与と
営業は見込み先を担当するマーケティング
成果給である諸手当に大きく分けられ、その
チーム(3人)と、既往先を担当するカスタマ
研 究
61
ーサービス第1∼4チーム(各3∼4人)が管理
諸国の追い上げ、顧客ニーズの高度化・多様
する。取引先は既往先600∼700社、見込み先
化等からかつてない困難な局面に直面してい
(潜在顧客)600社。顧客はデータシートで管
理し、既取引先は親密度でランク付け(固定
客∼スポット先)をする。取引先に対しては、
る。
本稿では、事例企業における対応のポイン
トとして、多品種少量生産、IT活用、人材の
「テクニカルレポート」等で技術情報等を発信
活用、社内外(同業種・周辺業種)ネットワ
し、当社HPへのアクセスも月7万件を超えて
ークなどの取り組みを挙げたが、これら以外
いる。また、パートナーへは品質管理等啓蒙
にも、素形材に特有の取引慣行の見直し、知
のための情報発信(
「PEC通信」
)を行っている。
的財産の保護、技能者の育成などの環境整備
営業部門の評価は、見積枚数×ヒット率=
も重要であろう。
営業成果、指示納期遵守率など顧客志向の目
しかしながら、これらの具体的対応以上に
標管理により、やりがい、成果および給料を
重要な点は、国内生産において諸外国と比し
連動させる。
比較優位にある分野や自社の技術力・ノウハ
ウの優位性等を見極め、モジュール化や徹底
おわりに
本稿では、下請型製造業の典型として自動
車など組立型産業の裾野を形成する中小金属
した特注品生産への対応など顧客ニーズに的
確に対応しようとした経営の基本的舵取りそ
のものである。
加工業を取り上げた。下請型製造業は素形材
事例企業の取り組みは、単なる合理化努力
を中心とする中小金属加工業などものづくり
や効率化努力というレベルではなく、外部環
の基盤産業であり、加工組立型産業のサポー
境や顧客ニーズおよび自社の経営全般につい
ティング・インダストリーとして戦略的重要
て客観的視点から絶えず分析を行い、将来に
性を有する。
向けて必要な対応を図っていくという経営革
しかしながら、近年の組立型産業の海外シ
新の領域に踏み込まなければ下請型製造業は
フトに伴う部品の海外調達傾向、IT化・機械
生き残るのが難しいということの証左である
技術の革新等と技術移転を背景としたアジア
ように思える。
〈参考文献〉
素形材技術戦略策定会議『素形材技術戦略』素形材センター(2000)
素形材センター『我が国素形材産業の直面する課題と将来展望』機械振興協会経済研究所(2002)
安室憲一『中国企業の競争力』日本経済新聞社(2003)
新原浩朗『日本の優秀企業研究』日本経済新聞社(2003)
62
信金中金月報 2004.6
中国環渤海地域(山東省)の投資環境
−煙台市の現況−
信金中央金庫 総合研究所アジア業務相談室室長
篠崎 幸弘
(要 旨)
アジア業務相談室では、今年度2003年10月15日
(水)
から17日
(金)
にかけて山東省の煙台市を
訪問した。渤海に面し豊富な資源を活かして工業化を進める煙台市の現況について報告する。
1.煙台市経済
(1)2003年の煙台市のGDPは1,316億元となり、成長率17.4%を達成し、中国全体の成長率8.0%
を大きく上回った。97年以降、GDP成長率は2桁成長率を維持している。
(2)2002年の輸出入総額は44.8億ドルと前年比31.0%の増加となった。そのうち外資企業の輸
出入額は33.1億ドルと全体の74.0%を占めている。
2.投資環境
(1)煙台市の印象は非常にコンパクトにまとまった街で、市内中心部と空港、経済技術開発区
が近くに配置され道路網が整備されている。空港からは車で市内の主要なところへ短時間に
て行くことができる。
(2)煙台市への2003年の外国投資の実績は、契約件数938件(前年比33.6%増)、契約金額22.4
億ドル(前年比0.9%増)、実行金額10.8億ドル(前年比10.0%減)となり、契約件数は伸び
たものの、契約金額、実行金額とも一服感が見られた。
(3)煙台市には、経済技術開発区、ハイテク産業開発区、輸出加工区といった3つの国家級開
発区があり、経済技術開発区に隣接し福山高新技術産業区がある。
(4)煙台市は外国投資の受け入れに非常に熱心である。投資促進局と各開発区は連携してお
り、いずれの部署でも日本語が堪能な人材が丁寧な対応をしてくれる。
3.信用金庫取引先現地法人の現況
経済技術開発区内にある信用金庫取引先現地法人(食品加工工場)を訪問したところ、そこ
には商談先の見学を意識して加工処理場が階上の窓越しに見られる見学者用通路が設置され、
衛生面でも日本の工場と遜色ない新設工場があった。
調 査
63
煙台市の現況
緯度に位置している。気候は、冬場の最低気
温がマイナス8∼10度、夏場の最高気温が35度
1.面積・人口(図表1)
ぐらいと寒暖の差が大きいが、長期滞在者に
よると日本の夏場に比べて湿度が低く非常に
図表1 煙台市の人口、面積(単位:km 、万人、人/km )
2
面 積
山東省
煙台市
人 口
2
さわやかなようである。夏場はゴルフをして
人口密度
156,720
9,069
579
13,715
646.7
472
も汗をかかず、生活的には気温も気候も日本
に近くむしろ日本より快適とのことであり、冬
(備考)1.『山東統計年鑑』にもとづき作成
2.市全体の面積、戸籍人口は各区・市・県の合計
は寒く雪も降るが、湿度がないのでサラサラ雪
で風に飛ばされてしまうそうである(図表2)
。
2.位置および気候
3.行政区画(図表3、4)
煙台市は、南東北地方から北関東地方と同
図表2 気象データの比較(2002年)
位 置
東 経
119.34∼121.67
118.10∼102.01
140.54
140.21
140.28
140.28
139.46
煙台市
坊市
仙台市
山形市
福島市
水戸市
東 京
(単位:度、℃、時間、mm)
北 緯
36.16∼38.23
35.43∼37.26
38.16
38.15
37.46
36.23
35.41
年
13.7
13.1
12.7
12.0
13.3
13.4
16.7
平均気温
1月
1.9
-0.2
1.5
-0.5
1.4
2.8
5.8
8月
24.8
25.4
24.1
24.6
25.2
25.0
27.1
年日照時間
年降水量
2,621.4
2,497.8
1,861.7
1,625.3
1,755.7
1,886.8
1,990.0
452.7
330.1
1,240.5
1,215.0
1,188.0
1,326.0
1,294.5
(備考)1.『山東統計年鑑』、気象庁電子閲覧室データより当室にて作成
2.1および8月の平均気温は大連が2002年、日本の各都市が1971∼2000年の30年間の平均
図表3 煙台市の区市県別面積、人口(2002年)
2
図表4 煙台市概要
2
(単位:km 、人、人/km )
区県名
煙台市
面 積
戸籍人口
13,715
646.7
472
芝罘区
174
65.6
3,770
福山区
591
38.0
643
牟平区
1,589
48.0
302
菜山区
258
17.0
659
長島県
56
4.5
804
龍口市
894
62.6
700
菜陽市
1,732
89.4
516
菜州市
1,878
86.5
461
蓬来市
1,207
45.0
377
招遠市
1,433
57.2
399
栖霞市
2,016
65.0
322
海陽市
1,887
68.0
360
(備考)1.『山東統計年鑑』にもとづき作成
2.市全体の面積、戸籍人口は各区・市・県の合計
64
信金中金月報 2004.6
長島県
人口密度
龍口市
芝罘区
蓬菜市
福山区
菜山区
招遠市
栖霞市
牟平市
菜州市
菜陽市
海陽市
渤 海
◎煙台市
●済南市
● 坊市 ●青島市
山 東 省
黄 海
図表5 GDP成長率推移
(単位:%)
年
1996
1997
1998
1999
2000
2001
2002
2003
煙 台 市
8.5
10.4
12.3
11.2
10.6
11.0
14.1
17.4
中国全体
9.6
8.8
7.8
7.1
8.2
7.3
8.0
9.1
ており、第3次産業は年々割合を増加させ、
4.経済動向
2002年には36%となった(図表6)。
(1)GDP成長率の推移
(3)貿易
03年の煙台市のGDPは1,316億元となり、成
長率17.4%を達成し、中国全体の成長率8.0%
2002年の輸出入総額は44.8億ドルと前年比
を大きく上回った。97年以降、GDP成長率は
31.0%の増加となった。そのうち外資企業の輸
2桁成長率を維持している(図表5)
。
出入額は33.1億ドルと全体の74.0%を占めてい
る(図表7)。
(2)産業構造の変化
5.投資環境
煙台市の第1次産業は、GDP金額はほぼ横ば
いであるものの、全市のGDPに占める割合が
(1)日本との関係
97年に20%を下回り年々その割合を低下させ
イ.友好都市
煙台市−岩手県宮古市、大分県別府市
ている。第2次産業の割合が97年に50%を超え
ロ.日本からの直行便
図表6 GDPにおける産業別割合の推移
週2便(大阪・関西2便/03年11月に就航)
(単位:億元、%)
年
1996
1997
1998
1999
2000
2001
2002
2003
GDP
650.31
725.00
740.00
800.66
879.59
979.50
1,115.00
1,316.00
第1次産業 第2次産業 第3次産業
22.0
48.6
29.4
18.0
51.6
30.4
17.9
51.2
30.9
16.0
51.9
32.1
14.3
51.8
33.8
13.5
51.4
35.1
12.2
51.8
36.0
10.8
53.3
35.9
大阪以外の地域へは、
上海、
北京、
ソウル
乗換えを利用する人が多いようである。
(2)生活環境
市内中心部と空港、経済技術開発区が近く
に配置され道路網が整備されており、煙台市
(備考)『山東統計年鑑』にもとづき作成
の印象は、非常にコンパクトにまとまった街
図表7 貿易金額の推移
年
輸出
うち外資企業
輸入
うち外資企業
(単位:万ドル)
1996
1997
1998
1999
2000
2001
2002
110,297
137,829
128,295
146,553
196,621
215,727
256,907
69,804
91,094
84,113
99,169
136,296
151,170
182,362
85,704
78,470
94,437
82,287
117,324
125,921
190,784
64,787
60,641
76,354
59,327
86,491
97,825
148,974
(備考)『山東統計年鑑』にもとづき作成
調 査
65
である。車で空港から市内中心部へは15分、空
技術産業区がある。
港から経済技術開発区へは20分、市内中心部
煙台経済技術開発区は、インフラがよく整
から開発区の入り口までは10分と非常に便利
っており、世界30カ国の企業が投資している。
である。最近は日本食レストランが増えてい
投資金額は1位が韓国、2位が香港、3位が米国、
るが、まだ10軒程度である。しかし、韓国人
4位が日本となっている。開発区の中にはITパ
が多いため、刺身は韓国料理店で食べること
ーク、自動車パーク、輸出加工区など8つの専
ができる。長期滞在者は、ホテルのほか外国
門的な産業パークがあり、最近ではGM自動車
人向けマンションを利用している。
が進出し自動車産業の集積が始まっている。リ
サイクル産業パークも企画され、労働コスト
(3)投資動向
の低い中国へ外国の工業廃棄物を輸入し、新
煙台市への外国投資の実績は、98年をボト
ムに契約件数、契約金額が増加基調に転じ、
しい製品を生産することを日本関係者と協議
している。
2002年は契約件数702件(前年比50.3%増)
、契
また、同開発区の開発予定面積が36km2から
約金額22.2億ドル(前年比86.6%増)、実行金
228km2に大幅に拡張され、海岸線に沿って新
額12.0億ドル(前年比76.5%増)と高い伸びを
蓬莱港との間を開発していくこととしている。
見せた。
同開発区への通勤は市中心部よりバスで30分
2003年は契約件数938件(前年比33.6%増)
、
と便利で、特に開発区内の道路はゆとりがあ
契約金額22.4億ドル(前年比0.9%増)
、実行金
る。土地の値段は80元/m2であり、投資総額が
額10.8億ドル(前年比10.0%減)となり、契約
大きければもっと安くなるとのことである。標
件数は伸びたものの、契約金額、実行金額と
準工場は、管理委員会が開発区5カ所に準備し
も一服感が見られた(図表8)。
ている。
ハイテク産業開発区は国家級開発区で莱山
(4)開発区
区にあり、空港、市役所もある。開発区内に
煙台市には、経済技術開発区、輸出加工区、
は煙台大学、中国石炭経済学院、国際経済貿
ハイテク産業開発区の3つの国家級開発区があ
易学院などがあり、3万人の学生が在籍してい
る。また、経済技術開発区に隣接し福山高新
る。
図表8 外国投資の推移
年
(単位:件、億ドル)
1996
1997
1998
1999
2000
2001
2002
2003
契約件数
300
181
175
227
371
467
702
938
契約金額
11.5
3.1
3.0
3.4
7.0
11.9
22.2
22.4
3.83
1.73
1.73
1.44
1.90
2.55
3.19
2.38
4.8
3.8
4.6
3.2
4.4
6.8
12.0
10.8
1件当たりの金額
(単位:百万ドル)
実行金額
(備考)『山東統計年鑑』にもとづき作成
66
信金中金月報 2004.6
福山高新技術産業区はAPEC諸国の企業に開
投資促進局、煙台経済技術開発区管理委員会
放するために開発され、高い技術を導入する
および日系現地企業(信用金庫取引先現地企
ためインキュベーションセンターとして500m2
業を除く)2社からヒアリングした結果をとり
ぐらいの研究開発型小工場が用意されている。
まとめた。
(5)日系企業の受け入れ態勢
イ.主要産業
煙台市は対外貿易経済合作局に投資促進局
を設置し、外国投資を積極的に受け入れてい
・山東省は日本、韓国向けに製造業基地戦略
を打ち出し、煙台市はその中心都市である。
る。投資促進局と各開発区は連携しており、い
・3方を海に囲まれ、資源が豊富である。農産
ずれの部署でも日本語が堪能な人材が丁寧な
物の生産量は中国有数であり、野菜の年生
対応をしてくれる。
産量は266万トンで山東省では輸出1位であ
投資環境調査で投資促進局に訪問し、急遽
る。くだものは250万トン、りんごは全中国
自動車工業学校の見学を要望したが、快く案
の9%を占める。落花生は山東省が有名で、
内してくれた。非常に熱心であり、我々の要
その中でも煙台が有名である。
望を真摯に受け止め、我々の立場にたって行
・野菜くだものが豊富なのでそれを原料にし
動してくれた。煙台市は、日系中小企業の進
た食品加工業が盛んである。煙台市はぶど
出に対してより良い投資環境を提供しようと
うの生産、栽培に1番適しており、ぶどう酒
我々と今も議論を重ねている(図表9)。
の生産は中国随一である。りんご、ぶどう、
なし、オレンジを原材料に加工したジュー
(6)現地機関ヒアリング結果
スはアメリカへ輸出している。ニワトリ、豚
ここでは、現地投資誘致機関である煙台市
の加工が盛んで、日系企業がニワトリを加
図表9 日本語対応可能な誘致担当者
機関名(住所)
煙台市投資促進局
(山東省煙台市建設路71號)
担当者名
張祖峽 副局長
亜洲一部
①劉明杰 部長
②姜中喬※
煙台開発区投資促進局
丁慧 副局長
(煙台開発区行政中心638室)
孫 霞
煙台経済技術開発区駐日本(神戸) 丁慧 所長
事務所(兵庫県神戸市中央区港 孫 霞
島南町1-5-2 キメツクセンター
ビル7階)
煙台市菜山区対外貿易経済合作局/
煙台高新技術産業開発区招商局
(煙台菜山区楓林路24号)
①韓萍 局長
②宋修広 投資促進科長
電話番号/FAX番号
T:86-535-6289047
F:86-535-6288934
T:86-535-6288947
/6684043
F:86-535-6288934
T:86-535-6396850
F:86-535-6396666
T:078-306-1518
F:078-306-1536
T:①86-535-6891577
T:②86-535-6891482
F:86-535-6891626
メールアドレス
[email protected]
[email protected][email protected][email protected]
※(コンサルティング)
[email protected]
[email protected][email protected][email protected]
調 査
67
工し製品はすべて日本に輸出している。
・水産物は年間150万トンで、なまこ、あわび、
ウニなど高級水産物もある。
・金の埋蔵量は中国の1/5、大理石の埋蔵量は
中国2位である。
・以前の工業は時計産業だったが、改革開放
後は新しい産業に取り組んでいる。
・自動車産業はその柱でこれからも力を入れ
・電子産業では、韓国系2社が大きな工場を設
立している。煙台は夏、湿度が低いので電
子部品の生産に適している。金加工業は、産
出される金を原材料に電子部品、機械部品
を生産している。
・紡績、服装加工が盛んで、ストッキング、下
着などを生産している。服装関係は日系が
目立って多いというわけではない。
ていきたいと思っている。GMが進出してき
て、月間5千台、年間6万台規模で生産を始
ロ.交通インフラ
めた。元々は大宇と一汽でエンジン工場を
・フェリーは大連―煙台があり、鉄道フェリ
作り、出来上がったエンジンを韓国に輸出
し、大宇の完成車を韓国から輸入する予定
であった。そのプロジェクトが潰れ、現在
ーが計画されている。
・高速道路は東北地方から上海までの中継に
なる。
のGMの組立工場の隣にあるエンジン工場を
・煙台市は1984年に開放された14の沿海都市
山東省が大宇から譲り受け、03年の春先に
の1つで、山東省の東に位置し日本との交流
GMが買収した。まだ、一汽大宇の名前が残
がしやすい。煙台港にはコンテナバースが
っているが、上海GMに変わり組立工場の隣
あり、関東ライン(名古屋、東京、横浜)関
にエンジン工場ができ物流的にもメリット
西ライン(大阪、神戸、門司)に週2∼3便
が出てくる。GMは、韓国の大宇の工場を買
がある。
い取って進出したことから、大半の部品を
大宇系の企業や上海汽車系の会社から仕入
ハ.生産関係(原材料調達等)
れているが、現地モデルでは競争力がなく
・地場のメーカーは原材料をすべて地元より
なるので同社も中国で調達したいと考えて
調達しており、合弁パートナーから調達で
いる。
きる企業もある。独資企業は総じて現地調
・ベンツは大型バス・トラックの生産工場を
検討している。トヨタ系の会社はこれまで
達が難しく、現地調達率が10%ぐらいのと
ころもある。
天津に集中していたが、最近は青島、煙台
・原材料は煙台港からスムーズに入ってくる。
にも進出してきている。煙台市には、煙台
本社から船便1週間で来る。量が少ないので
経済技術開発区および福山区に数社進出し
コンテナは貸し切りではなく、混載を利用
てきており、2次・3次下請部品メーカーも
している。とは言っても、コンテナを開け
進出してきている。
ると同社のものしか入っていない。梱包は、
68
信金中金月報 2004.6
下はプラスチックの受け皿、周りは強度の
こへ就職するように指定されていたが、今
高いダンボール、上はプラスチック1m3の中
は優秀な学生をどこからでも採用できるよ
で満杯になるよう依頼する。
うになった。しかし、優秀な学生は、北京、
・自動車関係はかさばるので日本に送っても
上海、深 、広州といった賃金の高いとこ
なかなか儲からない。日本生産で対応でき
ろに流れてしまうので、山東省の有名大学
ているので、中国現地法人は中国国内の市
の学生を採用するようにしている。
場をターゲットとしている。
・煙台市は春節のころ交流センターを開設す
・煙台に適していると思えるのは、輸出で日
るので当社もブースを構えてパンフレット
本に持って行っても儲かるような小物で、輸
を配布したりしている。進出当時はそれも
送賃が安く福岡であれば近いし、週2便船便
なかったので、合弁先から人を出向しても
がある。
らっていた。立ち上げの創業第一期ぐらい
はそうやって人を確保していた。99年から
ニ.生産関係(労務管理)
自由取引となり、一挙に退社率が8%を超え、
・F/Sを行った結果、人件費が大連、青島、上
何か手を打たなければいけないという状況
海の半分以下だった。当時、ワーカーの最
に陥った。給与をあまり低く抑えても問題
低賃金は360元、実際は400元ぐらいであっ
があるということで手当て制度を導入した。
た。現在の最低賃金は400元ぐらいである。
人員の確保は、直接そんなことをしなくて
外資系企業は、最低賃金の1.2倍の賃金、も
もいくらでも確保できるが、管理・監督、中
しくは同業他社の賃金が把握できる場合、そ
堅まで育てたのが辞めてしまう。技術職、営
の賃金の1.2倍の賃金を払わなければならな
業職で優秀な人にはいろいろな名目で手当
い。通常、それくらいは出しているが、そ
てを付けている。
の当時青島では800元ぐらいであった。日系
・技術学校卒18歳ぐらいで現場に入ることが
企業の進出が多く、かさ上げされていた。時
多いが、初任給がだいたい600元ぐらいにな
間の問題かも知れないが、大連も同様に高
ってしまう。これに福利費が加わり、1.5倍
く、煙台はその狭間にあって、まだ人は朴
ぐらいになる。この地区は優秀な通訳がい
訥としてそんなにパサパサしていない。
ない。ただ、朝鮮族は小学校まで日本語を
・人の流動性も高くなく、ワーカーのレベル
習っている人がいることと、日本語学校が
もそんなに差がない。問題は、管理・間接
開発区内だけでも3校あり自費で通う人もい
事務の人の面であった。進出当時は苦労し
る。入校時に日本語検定3級に達していない
たが、今は大卒であればどこの省でも行け
人でも、1年経つと2級を取得し、3年で1級
るようになったので全国的に採用できるよ
まで取得してしまう。非常に学習能力が高
うになった。99年までは大学から学生に、ど
い。社内で日本語の話せる人材を育成して
調 査
69
いくようにしている。昔は通訳を雇うと1,200
ういう査定をしたかエビデンスを残すよう
∼1,500元ぐらい払っていたが、しばらくす
にしている。たとえば、営業の場合だとこ
ると上海では3,000∼5,000元という話を聞き、
の人は回収能力が高い、お客にこういった
引き抜かれて、やがて上海へ行ってしまう。
意味で信頼を発揮したというように証拠を
通訳を雇うのではなく、一般の社員を教え
日誌形式で記録し、ある得点以上になると
込むようにしている。社内で優秀な人を講
何百元与えますということにしている。技
師にして、講師には講師手当てを支給して
術についても、図面の間違い発見能力、新
いる。中小企業の人もそうだが、なかなか
製品開発日数が短いといったようなことを
中国語の勉強だけやっているわけにはいか
日常の中で見て毎月評価する。非常に手間
ない。我々が覚えられるのは、せいぜい日
がかかっているが、やらざるを得ない。
常会話ぐらいまでである。こちらから指示
・雇用契約上、他人に自分の給与を見せては
したことが正しく伝わるように社員の日本
いけないという縛りは入れていない。入れ
語能力を高めていかないといけない。通訳
ても守らないと思う。雇用契約は3年にして
を介して、指示しても業務を理解していな
いる。日本へ(財)海外技術者研修協会を利
い通訳だといい加減に訳している。業務を
用した研修に行かせている。研修に行かせ
やっている課長、班長であれば、自分にも
る人間は2年契約を延長して5年契約にして
メリットがある。能力が上がれば、日本語
から日本に行かせている。それでも、優秀
手当てがつき、英語も同じである。モチベ
な者ほど辞める。今まで研修に行かせた者
ーションを持たせると一生懸命働いてくれ
の半分が辞めている。違約金はとるが、新
るようになる。そういった事で給料格差が
しく入った会社に払わせている。雇用契約
あっても中国人社員は理解してくれる。理
上は、辞めて同業他社に入ってはならない
由がわかれば、納得する。
こととなっているが、最初は違っても2番目
・本社は現地事情を知らないことが多く、現
の会社は同業かもしれない。我々にはそん
地の人も日本の本社のことが理解できない
な暇もないし、中国は広すぎる。次のとこ
ことが多く日本語もわからない。通訳を一
ろへは档案制度により、移さないという嫌
人雇っているが、給与が安くて良い通訳を
がらせはできてもその次は手が及ばない。
雇えない。通訳の基本給は初任給の倍程度
で1,200元ぐらいである。良い通訳を雇おう
ホ.情報面
とすると、中間管理職クラス(副部長クラ
・煙台市には日系の銀行がないので情報面で
ス)と同じ3,000∼4,000元になってしまう。
なかなか厳しい。山東省の場合、法令が発
・こちらではお互いに給与を見せ合うので、す
令されてから、
「もう決まったよ。今日から
ぐになぜ高いのか、上司に追求してくる。ど
やっている」と後から聞く場合が多い。当
70
信金中金月報 2004.6
社の場合は、北京、天津、広州に事務所が
あり、これまで順調にきた。今回手狭になっ
あるので、そちらから情報がはいってくる
たので60,000m2の土地を購入し、新工場を建
ので助かっている。しかし、法令の適用が
てた。栗、佃煮、缶詰、キムチの工場の他、寄
変わる時期は省によって違う。上海はもう
宿舎、食堂も作った。新工場は総投資額6億円
やっているが、山東省はまだということは
で、平成15年9月に稼動した。
よくある。合弁企業では、外貨の送金方法、
売上は今年栗だけで7,000万元を予想してい
資本金の振り込みや払い出し、いろいろと
る。ほとんど日本向け(関西、関東)で、独
煩雑な書類や大事な事が皆、中方へ行って
自の販売はないが大手の食品メーカーを通し
しまい日本側で見られなくなってしまう。
て全国販売している。大手量販店にも入って
いる。100%輸出だが、増値税の還付は順調に
信用金庫取引先現地法人の現況
進んでいる。
従業員は1,300名(正社員300名、臨時工1,000
今回は、経済技術開発区内にある信用金庫
名)で、栗がメインなので、9∼12月が1番忙
取引先現地法人(食品加工工場)を訪問した。
しい時期である。若い人が多く、平均年齢は
そこには、商談先の見学を意識して加工処理
21歳である。結婚・出産で辞め、入れ替わり
場を階上の窓越しに見られる見学者用通路が
は激しい。臨時工の1,000名は出稼ぎが多く、
設置され、衛生面でも日本の工場と遜色ない
すべて宿舎に入っている。一部屋は8人で2段
新設工場があった。
ベッドの生活である。正社員は近隣より通勤
し、給与水準はワーカーの平均が1,300元/月で
1.進出動向
当初韓国で栗加工してから日本に入れてい
ある。女工は残業込で700元/月であり、ほと
んど出来高性を採用している。
たが、将来、加工は中国に変わるのではない
原料調達は、韓国から栗(保税扱い)
、砂糖
かと社長が予想し、10年前に合弁会社を設立
(保税扱い)を輸入し、缶は浙江省にある日系
した。設立時は、現在の工場ではなく7km離
メーカーの現地法人より買っている。食品添
れたところのアメリカと中国の合弁会社が倒
加物は日本で騒がれているので中国のものは
産して残った工場を買い取って改装した。
使用していない。
原料の栗は韓国産を使用しており、煙台は
韓国から近く船積みなど利便性が高い。
合弁当初は電力不足で送電がとどまること
が多かったが、ここ5年はほとんどない。近く
に火力発電所を作っている。10年前に比べる
2.進出企業の業績
当初、日本の中国専門商社のアドバイスも
とインフラは変わった。特に、ここ5年でガラ
ッと変わった。
調 査
71
煙台市の主な開発区のデータ(参考資料)
煙台経済技術開発区
(2004年1月現在)
煙台輸出加工区
煙台ハイテク産業開発区
福山高新技術産業区
国家級・省級等区分
国家級
国家級
国家級
省級
所在地
煙台市経済技術開発
煙台市環海路88号
煙台市莱山区楓林路
煙台市福山高新技術
24号
産業区永達街881号
区黄河路
批准年月
立
地
条
件
1984年10月
2000年4月
1994年4月
1993年10月
空港
煙台空港まで20km
煙台空港まで17km
隣接
煙台空港まで18km
高速道路IC
区内にあり
区内にあり
区内にあり
区内にあり
鉄道
駅まで9km
駅まで1km
駅まで8km
駅まで9km
港
煙台港まで9km
区内にあり
煙台港まで8km
煙台港まで6km
応相談
応相談
応相談
応相談
応相談
応相談
応相談
応相談
0.471∼0.573元
0.5664∼0.5734元
0.5664∼0.5734元
0.56∼0.58元
1.65元
2.094元
1.65元
自動車、機械、電
電子、バイオ、医
医薬、自動車、バイ
バイオ技術、製薬、新
子、食品、ファイン
薬、ファインケミカ
オ、新素材、機械、
素 材、フ ァ イ ン ケ ミ
ケミカル
ル、機械、自動車
電子情報、農業新技
カル、電子情報技術
土地使用権取得価格
2
(元/m /50年)
標準工場賃借料
2
(元/m /年)
電力料
費
用
(元/KWH)
工業水(元/屯) 1.86元
誘致奨励産業
術、食品、化学、軽
工業、観光
進出外資系企業数
約500社
N.A
N.A
約150社
主な進出日系企業
デンソー、
ニチレイ、
N.A
N.A
矢崎総業、荏原製作所
進出企業には自動車
煙台から日本への定
市役所、
空港があり、
自動車部品専用団地
部品と食品関連業種
期貨物船便あり。
教育施設が多い。
を計画中である。
大豊工業、アツギ、
豊田自動織機、光生
アルミニューム工業
その他特記事項
が多い。
72
信金中金月報 2004.6
信金中央金庫総合研究所活動状況(4月)
1.レポート等の発行
発行日
レポート分類
通巻
タ
イ
ト
ル
執筆者
04.4.1
内外金利・為替見通し 16-1
―
斎藤大紀
04.4.7
金融調査情報
個人情報保護法の全面施行と民間業者の義務
―信用金庫など金融機関も顧客情報管理の一層の強化を―
間下聡
04.4.14
貿易投資相談ニュース 108
04.4.15
中小企業景気動向調査 115
04.4.21
産業企業情報
04.4.28
アジア業務相談室情報 16-1
16-1
16-1
―
―
1∼3月期業況も引き続き改善基調
(特別調査:中小企業の雇用と設備投資の動向について)
―
下請型製造業の国内での生き残りのポイント
―先進的中小金属加工業の経営革新事例から―
平井昌夫
投資先としてのアセアンの魅力
日本アセアンセンター
中西宏太氏
2.講座・講演・放送等の実施
実施日
種類
タ イ ト ル
講座・講演会・番組名称
場所・放送局
講 師 等
04.4.5
放送
第115回中小企業景気動向調査
ブルームバーグテレビ ブルームバーグ
鉢嶺実
04.4.7
講演
中小企業経営改善支援研修
本部部長・店長研修
東京シティ
信用金庫本店
藤津勝一
04.4.7
放送
アメリカのクレジットカードについて ラジオ深夜便
NHKラジオ
青木武
04.4.8
放送
第115回中小企業景気動向調査
ファイナンシャルBOX ラジオNIKKEI
藤津勝一
04.4.8
講座
本授業のねらいと全体像
金融機関論I
服部秀樹
横浜市立大学
04.4.12
講座 本講座の入口―中小企業と中小企業金融 信金中央金庫寄付講座 慶應義塾大学
服部秀樹
04.4.12
講座
序論
金融制度論
澤山弘
04.4.14
講演
中小企業経営改善支援研修
営業店融資担当者研修 東京シティ
神奈川大学
藤津勝一
信用金庫本店
04.4.15
放送
第115回中小企業景気動向調査
朝イチマーケッツ
ラジオNIKKEI
藤津勝一
04.4.15
講座
金融取引と金融機関(1)
金融機関論I
横浜市立大学
服部秀樹
04.4.16
講演
商業環境
戸田市商工会・川口
戸田市商工会
信用金庫主催セミナー 大ホール
笠原博
04.4.16
講座
∼4.17
中小企業経営改善支援研修
中小企業経営改善支援 信金中央金庫
研修
東北支店
藤津勝一、
加藤要一
04.4.17
講座
ベンチャービジネスとは(1)
ベンチャービジネスと 専修大学
地域活性化
長山宗広
04.4.19
講座
理論偏重、現実軽視についての
現状批判と課題
信金中央金庫寄付講座 慶應義塾大学
KPMGジャパン
木村剛氏
04.4.19
講座
今日の経済・金融環境と金融制度
金融制度論
神奈川大学
澤山弘
04.4.20
講演
人口移動、産業構造からみた地域経
済の空洞化―人口減少がもたらす東
北経済の将来―
東北経済産業局主催
講演会
パレス宮城野
斎藤大紀
04.4.20
講座
∼4.21
中小企業経営改善支援研修
中小企業経営改善支援 信金中央金庫
研修
南九州支店
藤津勝一、
加藤要一
04.4.21
アメリカのレストラン業界について
ラジオ深夜便
青木武
放送
NHKラジオ
信金中金だより
73
実施日
種類
タ イ ト ル
04.4.22
講座
金融取引と金融機関(2)
金融機関論I
04.4.22
講座
日本金融システム小史
信金中央金庫寄付講座 早稲田大学
早稲田大学アジア太平洋
研究科教授 岩村充氏
04.4.22
講座
∼4.23
中小企業経営改善支援研修
中小企業経営改善支援 信金中央金庫
研修
福岡支店
藤津勝一、
加藤要一
04.4.24
講座
ベンチャービジネスとは(2)
ベンチャービジネスと 専修大学
地域活性化
長山宗広
04.4.26
講座
中小企業金融について
信金中央金庫寄付講座 慶應義塾大学
金融庁参事官
木下信行氏
04.4.27
講座
∼4.28
中小企業経営改善支援研修
中小企業経営改善支援 信金中央金庫
研修
中国支店
藤津勝一、
04.4.28
第115回中小企業景気動向調査
ブルームバーグテレビ ブルームバーグ
鉢嶺実
放送
講座・講演会・番組名称
場所・放送局
横浜市立大学
講 師 等
服部秀樹
加藤要一
3.原稿掲載
発行日
04.4.19
74
タ
イ
ト
金型産業の現状と今後の方向
信金中金月報 2004.6
ル
掲 載 誌
最新金型加工機械
2004年版
発
工業調査会
行
執筆者
平井昌夫
1.信用金庫統計
(1)信用金庫の主要勘定概況…………75
(2)信用金庫の店舗数、合併等………77
(3)信用金庫の預金種類別預金、地区別預金 …78
(4)信用金庫の預金者別預金…………79
(5)信用金庫の科目別貸出金、地区別貸出金 …80
(6)信用金庫の貸出先別貸出金………81
(7)信用金庫の余裕資金運用状況……82
2.金融機関業態別統計
(1)業態別預貯金等……………………83
(2)業態別貸出金………………………84
統計資料の照会先:信金中央金庫 総合研究所
Tel 03-3563-7541 Fax 03-3563-7551
(凡 例)
1.金額は、単位未満切捨てとした。
2.比率は、原則として小数点以下第1位までとし第2位以下切捨てとした。
3.記号・符号表示は次のとおり。
〔 0 〕ゼロまたは単位未満の計数 〔―〕該当計数なし 〔△〕減少または負
〔…〕不詳または算出不能 〔*〕1,000%以上の増加率
〔p〕速報数字
〔r〕訂正数字 〔b〕b印までの数字と次期以降との数字は不連続
4.地区別統計における地区のうち、関東には山梨、長野、新潟を含む。東海は静岡、愛知、岐阜、三重の4
県、九州北部は福岡、佐賀、長崎の3県、南九州は熊本、大分、宮崎、鹿児島の4県である。
1.
(1)信用金庫の主要勘定概況(2004年3月末速報)
○預 金
3月の全国信用金庫の預金は、月中5,695億円、0.5%減と、前年同月(459億円、0.0%増)の増加から減少と
なった。
① 要求払預金は、前月末休日による残高高どまりの反動減、信用保証協会等の預託金や年金振込金の流出等
から、月中2,558億円、0.7%減と、前年同月(2,225億円、0.7%増)の増加から減少となった。
② 定期性預金は、定期積金の掛込みがみられたものの、公金預金や預託金の流出等から、月中4,837億円、0.6%
減と、前年同月(3,703億円、0.5%減)と同様に減少した。
③ 外貨預金等は、月中1,697億円、41.8%増加した。
なお、2004年3月末の預金の前年同月比増減率は、1.9%増となった。
○貸出金
貸出金は、月中2,679億円、0.4%減と、前年同月(1,315億円、0.2%減)と同様に減少した。
① 割引手形は、前月末休日による商手決済のズレ込みや、期日落込みの増加等から、月中2,405億円、9.6%減
と、前年同月(331億円、1.3%減)と同様に減少した。
② 貸付金は、住宅ローンの実行がみられたものの、直接償却や前月末休日による回収分のズレ込み等から、
月中278億円、0.0%減と、前年同月(984億円、0.1%減)と同様に減少した。
なお、2004年3月末の貸出金の前年同月比増減率は、0.4%減となった。
○余資運用資産
余資運用資産は、月中5,698億円、1.1%減と、前年同月(290億円、0.0%減)と同様に減少した。
主な内訳をみると、預け金は、信金中金預け金の減少から、月中1兆214億円、4.9%減となった。
金融機関貸付等は、コールローン、買入手形の増加から、月中1,435億円、192.4%増となった。
有価証券は、社債(1,610億円減)、外国証券(1,330億円減)等が減少したものの、国債(5,804億円増)、地
方債(269億円増)等が増加したため、月中2,620億円、0.9%増となった。
統 計
75
信用金庫の主要勘定増減状況(2004年3月末速報)
(単位:百万円、%)
前 月 比 増 減
区
分
金
(小 切 手 ・ 手 形)
預
け
金
(信 金 中 金 預 け 金)
(譲 渡 性 預 け 金)
金 融 機 関 貸 付 等
金 融 機 関 貸 付 金
買
入
手
形
資
コ ー ル ロ ー ン
買 現 先 勘 定
債券貸借取引支払保証金
買 入 金 銭 債 権
金 銭 の 信 託
産 商 品 有 価 証 券
有
価
証
券
国
債
地
方
債
短
期
社
債
社
債
項
株
式
貸
付
信
託
投
資
信
託
外
国
証
券
そ の 他 の 証 券
貸 付 有 価 証 券
目
小
計 貸
出
金
(月
中
平
残)
割
引
手
形
貸
付
金
手
形
貸
付
証
書
貸
付
当
座
貸
越
預 金 ・ 積 金
(月
中
平
残)
要 求 払 預 金
当
座
預
金
負
普
通
預
金
貯
蓄
預
金
通
知
預
金
債
別
段
預
金
納 税 準 備 預 金
定 期 性 預 金
項
定
期
預
金
定
期
積
金
外 貨 預 金 等
目
実
質
預
金
譲 渡 性 預 金
借
用
金
預
貸
率
残
現
(
(
(
(
(
高
1,600,005
(△
220,228 )
19,639,946
△
(△
15,484,410 )
(
91,000 )
218,173
0
60,000
158,173
0
△
0
△
309,818
△
272,447
△
16,317
△
26,830,698
7,415,045
2,674,969
99
10,998,903
△
466,408
234
△
549,514
△
4,660,984
△
63,785
0
48,887,404
△
62,368,660
△
(△
62,234,601 )
2,242,250
△
60,125,947
△
7,805,767
△
49,147,659
△
3,172,521
105,531,527
△
(△
105,000,029 )
32,860,871
△
2,503,735
27,954,674
△
1,320,159
△
256,562
783,390
41,607
72,095,002
△
64,661,470
△
7,433,363
△
575,450
105,311,299
△
78,904
△
430,243
△
59.0
増 減 額
増 減 率
191,945
(△
44,987 )
1,021,427
△
(△
4,092,184 )
(
35,996 )
143,583
0
60,000
98,584
5,999
△
9,001
△
92,226
△
53,300
△
494
△
262,060
580,421
26,946
0
161,001
△
408
160
△
53,851
△
133,012
△
1,555
0
569,862
△
267,984
△
(△
13,452 )
240,550
△
27,896
△
5,896
△
70,529
△
48,530
569,562
△
(△
168,098 )
255,825
△
150,261
538,754
△
7,105
△
86,608
50,122
2,302
483,703
△
471,685
△
12,186
△
169,762
524,575
△
6,687
△
16,238
△
信金中金月報 2004.6
月中増減額
13.6
△
8.5
( △ 19.8 )
(
16.9 )
4.9
1.2
△
(△
(△
20.9 )
2.6 )
(
(
65.4 )
3.0 )
192.4
△ 17.8
―
―
─
─
165.4
△
4.3
100.0
―
△
100.0
△ 100.0
22.9
△
5.3
△
16.3
10.6
△
2.9
△ 17.2
0.9
8.1
8.4
18.2
1.0
7.3
0.0
─
1.4
1.3
0.0
10.8
△
40.6
△ 86.5
△
8.9
6.1
△
2.7
11.1
△
2.4
12.8
△
―
△ 100.0
1.1
4.4
△
0.4
△
0.4
△
(△
(△
0.0 )
0.5 )
9.6
△
6.7
△
0.0
△
0.1
△
0.0
△
7.8
△
0.1
1.5
△
1.5
△
5.3
0.5
1.9
(
(△
0.1 )
2.1 )
0.7
5.0
6.3
6.0
1.8
5.9
△
0.5
△
2.1
△
50.9
△ 20.6
6.8
△
5.9
△
5.8
1.1
0.6
0.6
△
0.7
1.2
△
0.1
△
4.3
△
41.8
△ 11.4
0.4
1.9
△
7.8
223.1
△
3.6
△ 19.6
(備考)預貸率=貸出金/預金・積金×100(預金には譲渡性預金を含む。)
76
前年同月比
増 減 率
前
年
同
月
前年同月比
増 減 率
26.6
△
9.7
( △ 31.4 )
66.3 )
2.2
6.6
(
15.3 )
0.0 )
(
15.7 )
4.4 )
75.2
△ 11.6
―
―
―
―
12.9
△ 21.3
100.0
△ 100.0
─
─
33.4
57.0
23.5
△ 20.6
17.6
4.3
0.6
5.0
8.5
6.4
0.9
0.5
─
─
0.2
9.2
19.8
△ 15.6
29.8
△ 30.2
24.3
△ 35.5
2.3
5.6
7.2
27.8
0.0
0.0
0.0
4.9
0.2
△
2.1
(△
0.0 )
1.7 )
1.3
△ 16.3
0.1
△
1.4
0.3
△
6.8
0.1
△
0.3
0.7
△
3.0
0.0
0.7
(
0.1 )
0.2 )
0.7
5.0
20.2
△
6.5
0.7
6.6
0.7
△
6.7
119.3
△ 27.9
14.8
42.0
15.2
△
2.9
0.5
△
1.0
0.5
△
0.5
0.5
△
4.5
42.4
△
1.7
0.0
0.8
25.0
113.7
69.9
31.9
月中増減率
368,140
(
109,554 )
442,973
△
(△
2,881,419 )
(
12,000 )
113,973
0
0
18,919
4,996
△
100,050
164,386
△
76,027
△
2,956
169,291
493,617
24,335
─
28,959
104,072
△
742
△
166,294
△
102,080
△
4,434
△
0
29,027
△
131,584
△
(△
54,760 )
33,137
△
98,447
△
34,003
△
90,887
△
26,443
45,936
(△
126,513 )
222,591
397,906
202,162
△
9,533
△
175,844
144,907
△
5,444
370,383
△
327,812
△
42,571
△
193,728
63,619
△
8,157
△
220,479
1.
(2)信用金庫の店舗数、合併等
信用金庫の店舗数、会員数、常勤役職員数
店
年 月 末
2000.
01.
02.
02.
3
3
3
6
9
12
03. 3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
2004. 1
2
3
本 店
支 店
(信用金庫数)
386
8,004
371
7,842
349
7,781
343
7,760
340
7,736
330
7,707
326
7,673
326
7,670
326
7,662
326
7,655
321
7,648
321
7,633
321
7,595
315
7,529
314
7,514
314
7,513
309
7,508
307
7,502
p
306
舗
(単位:店、人)
数
常
出張所
合 計
248
267
270
269
265
267
264
258
258
258
255
250
258
262
265
266
267
266
8,638
8,480
8,400
8,372
8,341
8,304
8,263
8,254
8,246
8,239
8,224
8,204
8,174
8,106
8,093
8,093
8,084
8,075
8,058
会 員 数
常勤役員
8,876,360
8,941,138
8,981,084
8,933,646
8,946,274
8,982,770
9,001,391
9,012,732
9,024,328
9,032,713
9,039,955
9,048,504
9,058,720
9,067,020
9,073,614
9,083,334
9,086,064
9,093,543
9,091,976
2,900
2,804
2,734
2,664
2,651
2,606
2,556
2,553
2,547
2,507
2,495
2,493
2,487
2,462
2,458
2,454
2,425
2,413
勤
男 子
98,124
94,112
91,451
91,712
90,665
89,712
87,922
89,124
88,799
88,196
87,840
87,502
87,065
86,761
86,522
86,194
85,865
85,489
役
職
職
員
女 子
43,781
41,004
38,851
40,844
39,599
38,706
37,086
39,164
38,996
38,559
38,151
37,858
37,429
37,204
37,095
36,622
36,380
36,149
員
数
計
141,905
135,116
130,302
132,556
130,264
128,418
125,008
128,288
127,795
126,755
125,991
125,360
124,494
123,965
123,617
122,816
122,245
121,638
合
計
144,805
137,920
133,036
135,220
132,915
131,024
127,564
130,841
130,342
129,262
128,486
127,853
126,981
126,427
126,075
125,270
124,670
124,051
121,795
信用金庫の合併等
年 月 日
2002年 7 月15日
2002年 7 月15日
2002年 7 月15日
2002年 7 月15日
2002年 7 月22日
2002年 8 月 5 日
2002年 8 月 5 日
2002年 8 月12日
2002年 9 月17日
2002年 9 月17日
2002年 9 月17日
2002年 9 月24日
2002年10月14日
2002年10月15日
2002年10月15日
2002年11月 5 日
2002年11月18日
2002年11月18日
2002年11月18日
2002年12月16日
2003年 1 月 1 日
2003年 1 月 6 日
2003年 1 月14日
2003年 3 月10日
2003年 3 月24日
2003年 3 月24日
2003年 7 月 7 日
2003年 7 月 7 日
2003年 7 月22日
2003年 7 月22日
2003年10月20日
2003年10月20日
2003年10月20日
2003年11月 4 日
2004年 1 月13日
2004年 1 月19日
2004年 1 月19日
2004年 2 月 9 日
2004年 2 月 9 日
2004年 2 月16日
2004年 3 月22日
甲府商工
たちばな
筑後
興産
秋田
長野
上田
平塚
西武
東京東
昭和
石岡*
豊川
東都中央
伊豆
京都北都
群馬中央
銚子
徳島
足立
札幌
水戸
かもめ
摂津
金沢
能登
芝
一宮
東京東
赤穂
秋田
富山
福岡ひびき
能登
王子
直江津
北伊勢
高松
鹿児島相互
興能
金沢
異
動
大月
(島原信組)
(両筑信組)
(第三信組)
(秋田中央信組)
(上田商工信組)
(上田商工信組)
(厚木信組)
平成
(永代信組)
(永代信組)
(岡崎市民信組)
東京産業
下田
福知山
大栄
旭
鳴門
成和
石狩中央
土浦
福鞆
水都
(石川銀行)
(石川銀行)
東調布
愛北
小岩
伊那
五城目
射水
新北九州
共栄
太陽
高田
上野
さぬき
川内
(高浜信組)
福光
東舞鶴
金
庫
名
舞鶴
綾部
門司
築上
直方
荒川
日興
津島
新金庫名
山梨
たちばな
筑後
興産
秋田
長野
上田
平塚
西武
東京東
昭和
水戸
豊川
さわやか
伊豆
京都北都
ぐんま
銚子
徳島
足立成和
札幌
水戸
しまなみ
摂津水都
金沢
能登
芝
いちい
東京東
アルプス中央
秋田
富山
福岡ひびき
のと共栄
城北
上越
北伊勢上野
高松
鹿児島相互
興能
金沢
金庫数
342
342
342
342
342
342
342
342
341
341
341
340
340
339
338
334
333
332
331
330
329
328
327
326
326
326
325
323
322
321
320
319
315
314
311
310
309
308
307
307
306
異動の種類
合併
事業譲受
事業譲受
事業譲受
事業譲受
事業譲受
事業譲受
事業譲受
合併
事業譲受
事業譲受
事業譲渡解散
合併
合併
合併
合併
合併
合併
合併
合併
合併
合併
合併
合併
事業譲受
事業譲受
合併
合併
合併
合併
合併
合併
合併
合併
合併
合併
合併
合併
合併
合併
合併
(備考)1.*印は預金保険法にもとづく破綻信用金庫である。
2.信用組合等からの事業譲受日は、金融庁公表資料による。
統 計
77
1.
(3)信用金庫の預金種類別預金、地区別預金
預金種類別預金
預金計
年 月 末
2000.
01.
02.
02.
3
3
3
6
9
12
03. 3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
04. 1
2
3 p
1,020,320
1,038,043
1,028,198
1,035,283
1,031,142
1,047,505
1,035,536
1,044,809
1,044,410
1,054,744
1,050,575
1,056,653
1,053,808
1,050,779
1,055,159
1,068,100
1,055,949
1,061,010
1,055,315
(単位:億円、%)
前年同月比
増 減 率
1.4
1.7
△ 0.9
△ 2.1
△ 2.1
△ 1.2
0.7
1.3
1.9
1.8
2.2
2.3
2.1
2.2
2.3
1.9
2.4
2.5
1.9
要求払
214,497
230,205
297,903
313,936
308,290
320,432
312,842
322,051
319,924
325,170
317,343
323,633
322,502
322,398
327,046
336,074
324,452
331,166
328,608
前年同月比
増 減 率
4.1
7.3
29.4
31.9
30.3
27.1
5.0
4.0
4.6
3.5
4.4
4.7
4.6
5.0
5.4
4.8
6.7
6.6
5.0
定期性
797,284
801,008
723,681
716,726
717,273
722,295
716,192
718,100
719,717
724,946
728,742
728,684
726,178
723,891
723,409
727,873
727,359
725,787
720,950
前年同月比 外貨預金等 前年同月比
増 減 率
増 減 率
0.8
8,539 △ 9.2
0.4
6,829 △ 20.0
△ 9.6
6,613 △ 3.1
△ 11.9
4,620 △ 14.1
△ 11.6
5,579
3.0
△ 10.0
4,776 △ 10.0
△ 1.0
6,500 △ 1.7
0.3
4,656 △ 12.9
0.8
4,768 △ 8.6
1.1
4,627
0.1
1.2
4,489 △ 0.9
1.4
4,334 △ 8.6
1.2
5,127 △ 8.1
1.2
4,489 △ 13.4
1.1
4,703 △ 11.4
0.7
4,152 △ 13.0
0.7
4,137 △ 14.6
0.8
4,056 △ 11.1
0.6
5,754 △ 11.4
実質預金
1,016,862
1,033,760
1,024,192
1,032,619
1,028,558
1,043,490
1,032,788
1,043,194
1,041,788
1,053,240
1,049,149
1,054,039
1,051,883
1,049,323
1,052,500
1,065,180
1,053,362
1,058,358
1,053,112
前年同月比
増 減 率
1.4
1.6
△ 0.9
△ 2.0
△ 2.0
△ 1.2
0.8
1.4
1.8
1.9
2.2
2.3
2.2
2.2
2.3
2.0
2.3
2.4
1.9
譲渡性預金
122
105
114
225
302
321
244
383
507
650
647
891
915
1,005
1,084
766
965
855
789
前年同月比
増 減 率
△ 36.7
△ 13.3
7.9
71.5
73.3
129.4
113.7
124.1
120.9
189.0
149.9
250.1
202.8
177.5
230.4
138.1
225.6
162.7
223.1
(備考)1.預金計には譲渡性預金を含まない。
2.実質預金は預金計から小切手・手形を差引いたもの。
地区別預金
年 月 末
2000.
01.
02.
02.
3
3
3
6
9
12
03. 3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
04. 1
2
3 p
年 月 末
2000.
01.
02.
02.
3
3
3
6
9
12
03. 3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
04. 1
2
3 p
(単位:億円、%)
北海道
51,708
53,392
54,596
55,636
55,300
56,826
55,302
56,105
55,723
56,473
55,801
56,148
55,749
55,624
56,645
57,719
55,985
56,167
56,193
近 畿
206,301
207,950
201,814
201,714
201,308
203,462
201,600
202,506
202,952
204,930
204,352
205,269
205,386
204,412
205,232
207,067
205,239
206,117
205,284
前年同月比
増 減 率
2.5
3.2
2.2
0.7
0.5
0.4
1.2
1.4
2.1
1.5
1.6
2.0
0.8
1.6
1.9
1.5
2.3
2.0
1.6
前年同月比
増 減 率
0.7
0.7
△ 2.9
△ 4.2
△ 4.3
△ 3.3
△ 0.1
0.3
0.8
1.5
2.0
2.1
2.0
2.0
2.2
1.7
2.3
2.5
1.8
東 北
38,831
39,684
39,036
39,953
39,703
40,360
39,462
40,151
39,950
40,347
40,118
40,336
40,145
40,170
40,281
40,851
40,355
40,619
39,896
中 国
49,526
49,578
49,651
50,042
49,920
50,632
50,175
50,383
50,363
51,036
50,717
51,017
50,844
50,300
50,480
51,138
50,337
50,618
50,468
前年同月比
増 減 率
1.7
2.1
△ 1.6
△ 1.5
△ 1.5
△ 0.5
1.0
1.4
1.9
0.9
1.0
1.2
1.1
1.2
1.3
1.2
1.7
1.8
1.0
前年同月比
増 減 率
0.8
0.1
0.1
△ 1.8
△ 1.1
△ 0.7
1.0
1.4
2.1
1.9
2.1
2.3
1.8
1.5
1.6
0.9
1.1
1.3
0.5
東 京
192,017
194,416
190,125
192,124
191,804
194,208
193,270
194,493
195,195
196,425
195,738
197,315
196,553
196,386
197,385
199,155
197,620
198,294
196,946
四 国
17,198
17,773
18,064
18,137
18,119
18,341
18,206
18,313
18,320
18,483
18,468
18,540
18,491
18,438
18,494
18,769
18,634
18,730
18,625
前年同月比
増 減 率
0.3
1.2
△ 2.2
△ 3.4
△ 3.0
△ 1.8
0.8
1.8
2.7
2.2
2.7
3.2
2.4
2.7
2.8
2.5
3.1
2.9
1.9
前年同月比
増 減 率
2.0
3.3
1.6
△ 0.8
△ 0.5
△ 0.4
0.7
1.6
2.0
1.9
2.4
2.5
2.0
2.2
2.2
2.3
2.8
2.9
2.3
関 東
197,800
199,809
198,309
199,562
197,699
201,075
197,820
199,922
199,633
201,691
200,888
202,145
201,450
201,355
201,837
204,715
202,305
203,450
201,890
九州北部
17,411
17,940
17,916
18,191
18,085
18,439
17,984
18,414
18,389
18,597
18,454
18,612
18,452
18,455
18,486
18,766
18,558
18,645
18,298
前年同月比
増 減 率
0.9
1.0
△ 0.7
△ 1.3
△ 1.9
△ 0.9
0.4
0.9
1.3
2.3
1.4
1.3
1.8
2.0
2.0
1.8
2.2
2.3
2.0
前年同月比
増 減 率
2.5
3.0
△ 0.1
△ 1.7
△ 1.4
△ 0.6
0.3
1.7
2.4
2.2
2.1
2.4
2.0
2.3
2.2
1.7
2.8
2.6
1.7
(備考)1.沖縄地区は全国に含めた。
2.東京・関東地区の2002年6月以降の増減率は、地区間の事業譲渡を調整して算出
78
信金中金月報 2004.6
北 陸
30,732
31,560
31,829
32,404
32,016
32,600
32,313
32,587
32,673
32,818
32,769
32,994
32,778
32,774
32,796
33,108
32,812
32,992
32,714
南九州
24,139
24,392
23,556
23,807
23,793
24,424
23,746
24,023
24,041
24,269
24,141
24,274
24,306
24,119
24,230
24,855
24,312
24,226
24,219
前年同月比
増 減 率
1.6
2.6
0.8
0.4
△ 0.1
0.4
1.5
1.5
2.5
1.2
1.7
1.8
2.3
2.4
2.1
1.5
2.6
2.7
1.2
前年同月比
増 減 率
1.2
1.0
△ 3.4
△ 4.8
△ 3.3
△ 1.9
0.8
1.5
2.3
1.9
1.7
1.8
2.1
1.9
1.9
1.7
2.5
2.4
1.9
東 海
193,122
200,034
201,901
202,346
201,980
205,777
204,281
206,551
205,823
208,291
207,712
208,601
208,248
207,358
207,916
210,580
208,431
209,789
209,411
全国計
1,020,320
1,038,043
1,028,198
1,035,283
1,031,142
1,047,505
1,035,536
1,044,809
1,044,410
1,054,744
1,050,575
1,056,653
1,053,808
1,050,779
1,055,159
1,068,100
1,055,949
1,061,010
1,055,315
前年同月比
増 減 率
3.4
3.5
0.9
△ 0.3
△ 0.5
0.2
1.1
2.3
2.6
2.9
3.1
3.2
3.1
2.7
2.9
2.3
2.5
2.6
2.5
前年同月比
増 減 率
1.4
1.7
△ 0.9
△ 2.1
△ 2.1
△ 1.2
0.7
1.3
1.9
1.8
2.2
2.3
2.1
2.2
2.3
1.9
2.4
2.5
1.9
1.
(4)信用金庫の預金者別預金
(単位:億円、%)
預金計
年 月 末
2000.
01.
02.
02.
3
3
3
6
9
12
03. 3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
04. 1
2
3
年 月 末
2000.
01.
02.
02.
3
3
3
6
9
12
03. 3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
04. 1
2
3
年 月 末
2000.
01.
02.
02.
3
3
3
6
9
12
03. 3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
04. 1
2
3
1,019,963
1,037,617
1,027,696
1,035,281
1,031,041
1,047,491
1,035,334
1,044,807
1,044,408
1,054,739
1,050,573
1,056,651
1,053,806
1,050,777
1,055,157
1,068,098
1,055,947
1,061,009
1,054,774
個人預金
前年同月比
増 減 率
1.4
1.7
△ 0.9
△ 2.1
△ 2.1
△ 1.2
0.7
1.3
1.9
1.8
2.2
2.3
2.2
2.2
2.3
1.9
2.4
2.5
1.8
一般法人預金
201,155
200,268
182,602
179,737
177,263
182,904
173,622
177,167
179,129
174,582
172,593
176,231
176,942
173,553
179,661
183,661
177,071
176,720
175,526
要求払
3,433
3,569
12,046
14,833
14,413
12,262
11,804
13,004
12,681
14,234
13,611
11,572
11,960
11,363
11,290
9,971
9,673
9,677
9,986
768,266
792,296
802,012
809,100
806,218
821,867
820,195
825,985
823,407
832,512
831,375
837,644
833,099
836,650
835,115
846,003
842,122
847,639
842,752
前年同月比
増 減 率
△ 1.0
△ 0.4
△ 8.8
△ 10.8
△ 11.6
△ 7.4
△ 4.9
△ 1.9
1.7
△ 2.8
△ 0.4
△ 0.1
△ 0.1
△ 0.0
0.2
0.4
3.4
3.5
1.0
要求払
前年同月比
増 減 率
10.7
3.9
237.4
444.6
445.2
361.3
△ 2.0
△ 14.2
△ 24.1
△ 4.0
△ 12.5
△ 20.3
△ 17.0
△ 15.3
△ 15.7
△ 18.6
△ 25.1
△ 25.8
△ 15.4
定期性
62,619
69,649
85,538
86,645
85,695
92,675
84,315
87,519
89,595
85,598
83,788
87,649
88,331
85,307
91,736
96,030
89,515
89,178
88,339
20,770
20,719
10,738
14,863
13,848
13,047
10,366
11,322
13,049
15,932
16,121
15,611
13,747
13,323
13,145
12,817
12,672
11,901
10,623
前年同月比
増 減 率
2.0
3.1
1.2
0.6
0.1
0.6
2.2
2.7
3.0
2.8
3.1
3.4
3.3
3.3
3.3
2.9
3.0
3.0
2.7
要求払
前年同月比
増 減 率
△ 0.2
11.2
22.8
26.5
23.4
27.2
△ 1.4
2.3
9.0
△ 1.2
3.4
3.4
3.0
3.3
3.4
3.6
10.3
10.2
4.7
定期性
141,879
153,271
195,149
208,748
202,900
211,302
211,169
217,273
214,709
221,079
216,059
221,570
217,690
222,508
220,874
226,794
222,961
229,245
226,091
138,202
130,298
96,760
92,702
91,211
89,865
88,922
89,281
89,157
88,622
88,441
88,208
88,215
87,859
87,551
87,249
87,182
87,185
86,830
前年同月比
増 減 率
6.2
8.0
27.3
27.3
25.8
22.3
8.2
6.5
7.2
5.9
6.7
7.4
7.2
7.3
7.7
7.3
7.9
7.9
7.0
定期性
626,134
638,772
606,630
600,112
603,054
610,303
608,742
608,428
608,383
611,104
614,967
615,716
614,990
613,669
613,754
618,654
618,597
617,817
616,073
前年同月比 外貨預金等 前年同月比
増 減 率
増 減 率
1.1
238
119.2
2.0
240
0.5
△ 5.0
220
△ 8.3
△ 6.2
228
8.8
△ 6.2
252
9.0
△ 5.1
250
16.2
0.3
273
24.1
1.4
272
24.1
1.6
303
34.7
1.8
318
39.5
1.9
337
33.7
2.0
346
34.6
1.9
407
61.7
1.9
462
87.3
1.7
476
93.9
1.3
544
117.4
1.3
552
112.9
1.3
566
112.6
1.2
576
111.0
前年同月比 外貨預金等 前年同月比
増 減 率
増 減 率
△ 1.4
323
8.9
△ 5.7
309
△ 4.1
△ 25.7
293
△ 5.0
△ 30.2
380
44.5
△ 30.2
347
△ 6.8
△ 27.8
354
9.0
△ 8.1
376
28.2
△ 5.8
358
19.6
△ 4.7
367
10.4
△ 4.4
353
△ 7.1
△ 3.8
354
0.5
△ 3.5
364
2.3
△ 3.2
386
11.3
△ 3.1
377
8.2
△ 2.9
365
4.2
△ 2.9
373
5.2
△ 2.8
365
△ 0.5
△ 2.3
347
△ 3.2
△ 2.3
349
△ 7.3
前年同月比 外貨預金等 前年同月比
増 減 率
増 減 率
10.3
456
27.2
△ 0.2
611
33.9
△ 48.1
200
△ 67.1
△ 50.5
105
△ 71.9
△ 47.6
38
△ 87.4
△ 47.0
37
△ 70.7
△ 3.4
118
△ 41.2
4.5
2
△ 91.3
2.9
77
27.1
7.1
208
98.3
5.8
15
△ 73.1
4.4
36
△ 67.8
△ 0.7
51
35.2
0.9
16
105.5
0.5
201
342.4
△ 1.7
57
54.1
△ 0.0
12
△ 63.9
△ 0.6
93
167.0
2.4
298
152.7
金融機関預金
25,857
20,141
20,084
16,631
19,248
17,361
19,217
17,316
16,054
17,259
16,845
15,546
17,995
15,861
15,733
15,577
14,386
14,969
15,579
公金預金
24,663
24,903
22,990
29,805
28,304
25,350
22,292
24,331
25,812
30,379
29,752
27,223
25,763
24,706
24,640
22,850
22,361
21,675
20,911
政府関係
前年同月比 預 り 金
増 減 率
△ 4.8
14
△ 22.1
2
△ 0.2
2
△ 11.8
1
3.8
2
△ 7.9
1
△ 4.3
1
△ 12.7
1
△ 20.3
1
3.7
1
△ 5.3
1
△ 4.6
0
△ 6.5
1
△ 7.8
1
△ 5.4
1
△ 10.2
0
△ 11.9
0
△ 11.6
0
△ 18.9
0
前年同月比
増 減 率
10.6
0.9
△ 7.6
△ 10.1
△ 3.6
△ 7.5
△ 3.0
△ 6.5
△ 12.4
1.9
△ 3.5
△ 8.0
△ 8.9
△ 7.2
△ 7.1
△ 9.8
△ 12.8
△ 13.5
△ 6.1
譲渡性預金
122
105
114
225
302
321
244
383
507
650
647
891
915
1,005
1,084
766
965
855
789
(備考)日本銀行『預金現金貸出金調査表』より作成。このため、
『日計表』による(3)預金種類別預金、地区別預金の預金計とは一
致しない。
統 計
79
1.
(5)信用金庫の科目別貸出金、地区別貸出金
科目別貸出金
(単位:億円、%)
貸出金計
年 月 末
2000.
01.
02.
02.
3
3
3
6
9
12
03. 3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
04. 1
2
3 p
687,159
661,879
639,805
627,349
629,551
638,093
626,342
620,951
621,691
619,691
621,145
624,062
625,431
623,438
626,852
633,013
627,637
626,366
623,686
割引手形
前年同月比
増 減 率
△ 3.4
△ 3.6
△ 3.3
△ 3.6
△ 3.6
△ 2.6
△ 2.1
△ 1.3
△ 0.6
△ 1.2
△ 0.6
△ 0.6
△ 0.6
△ 0.5
△ 0.5
△ 0.7
△ 0.2
△ 0.2
△ 0.4
31,785
33,932
28,762
27,376
24,168
28,125
24,051
23,207
25,495
23,054
22,745
24,578
22,238
22,256
24,592
26,093
25,388
24,828
22,422
貸付金
前年同月比
増 減 率
△ 4.9
6.7
△ 15.2
△ 14.8
△ 20.8
△ 9.9
△ 16.3
△ 7.1
1.5
△ 15.7
△ 8.1
△ 8.3
△ 7.9
△ 7.7
△ 7.7
△ 7.2
1.0
1.8
△ 6.7
655,373
627,946
611,043
599,973
605,383
609,968
602,291
597,743
596,196
596,636
598,400
599,483
603,192
601,182
602,259
606,919
602,249
601,538
601,259
前年同月比
増 減 率
△ 3.4
△ 4.1
△ 2.6
△ 3.0
△ 2.7
△ 2.2
△ 1.4
△ 1.0
△ 0.7
△ 0.5
△ 0.3
△ 0.3
△ 0.3
△ 0.2
△ 0.2
△ 0.4
△ 0.2
△ 0.2
△ 0.1
手形貸付
107,804
97,975
90,943
83,823
86,444
86,970
84,739
81,140
78,408
78,219
78,489
78,595
79,940
79,025
78,708
80,066
78,310
78,116
78,057
前年同月比
増 減 率
△ 8.7
△ 9.1
△ 7.1
△ 8.6
△ 8.2
△ 8.4
△ 6.8
△ 7.3
△ 6.9
△ 6.6
△ 7.0
△ 7.3
△ 7.5
△ 7.3
△ 7.5
△ 7.9
△ 7.7
△ 8.1
△ 7.8
証書貸付
509,049
493,986
485,532
483,103
484,104
489,691
484,045
484,106
485,679
486,415
487,873
489,172
490,191
490,176
491,561
495,078
492,647
492,181
491,476
前年同月比
増 減 率
△ 2.2
△ 2.9
△ 1.7
△ 1.8
△ 1.6
△ 0.8
△ 0.3
0.2
0.5
0.6
1.0
1.1
1.2
1.3
1.3
1.0
1.3
1.4
1.5
地区別貸出金
年 月 末
2000.
01.
02.
02.
3
3
3
6
9
12
03. 3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
04. 1
2
3 p
年 月 末
2000.
01.
02.
02.
3
3
3
6
9
12
03. 3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
04. 1
2
3 p
38,520
35,984
34,567
33,045
34,833
33,306
33,506
32,496
32,108
32,001
32,037
31,715
33,060
31,980
31,988
31,774
31,291
31,239
31,725
前年同月比
増 減 率
△ 2.9
△ 6.5
△ 3.9
△ 5.1
△ 2.9
△ 4.6
△ 3.0
△ 3.7
△ 4.7
△ 3.1
△ 4.3
△ 4.5
△ 5.0
△ 5.1
△ 4.4
△ 4.5
△ 5.9
△ 6.0
△ 5.3
(単位:億円、%)
北海道
30,197
29,377
29,521
28,116
28,972
29,862
29,628
28,819
28,362
28,255
28,374
28,742
29,083
29,346
29,451
30,095
29,461
29,472
29,860
近 畿
144,784
136,814
130,271
126,965
126,280
127,566
124,418
123,782
124,329
123,725
123,816
124,396
124,171
123,680
124,553
125,340
124,471
124,035
123,349
前年同月比
増 減 率
△ 1.3
△ 2.7
0.4
△ 0.1
1.0
1.0
0.3
0.4
1.3
0.4
1.0
1.1
0.3
1.1
1.1
0.7
1.7
1.7
0.7
前年同月比
増 減 率
△ 3.1
△ 5.5
△ 4.7
△ 6.0
△ 6.8
△ 5.9
△ 4.4
△ 3.4
△ 2.4
△ 2.5
△ 1.7
△ 1.6
△ 1.6
△ 1.4
△ 1.4
△ 1.7
△ 0.9
△ 0.8
△ 0.8
東 北
25,091
24,875
24,520
23,975
24,268
24,506
24,413
24,043
23,832
23,735
23,819
23,873
23,944
23,930
23,993
24,136
23,941
23,952
23,902
中 国
33,451
31,863
30,826
30,181
30,356
30,692
30,140
29,659
29,598
29,641
29,793
29,927
29,978
29,740
29,797
30,114
29,880
29,904
29,896
前年同月比
増 減 率
△ 1.2
△ 0.8
△ 1.4
△ 1.1
△ 1.1
△ 0.7
△ 0.4
0.2
0.2
△ 0.9
△ 0.9
△ 1.2
△ 1.3
△ 1.1
△ 1.3
△ 1.5
△ 1.2
△ 1.2
△ 2.0
前年同月比
増 減 率
△ 4.4
△ 4.7
△ 3.2
△ 2.9
△ 2.8
△ 1.6
△ 2.2
△ 1.5
△ 1.4
△ 1.7
△ 1.0
△ 1.0
△ 1.2
△ 1.2
△ 1.3
△ 1.8
△ 1.0
△ 1.0
△ 0.8
東 京
135,174
131,381
125,915
125,840
126,092
127,252
124,445
124,109
124,697
124,278
124,577
125,078
124,861
124,624
125,315
126,390
125,432
124,884
123,798
四 国
11,098
11,060
10,974
10,749
10,814
10,901
10,823
10,748
10,801
10,788
10,826
10,850
10,867
10,808
10,856
10,893
10,838
10,799
10,811
前年同月比
増 減 率
△ 6.0
△ 2.8
△ 4.1
△ 4.1
△ 3.6
△ 2.8
△ 2.1
△ 1.1
△ 0.5
△ 1.2
△ 0.7
△ 0.6
△ 0.9
△ 0.6
△ 0.7
△ 0.6
△ 0.1
△ 0.2
△ 0.5
前年同月比
増 減 率
△ 0.6
△ 0.3
△ 0.7
△ 1.6
△ 2.0
△ 1.5
△ 1.3
0.0
0.5
0.3
0.9
0.8
0.4
0.4
0.4
△ 0.0
0.2
0.0
△ 0.1
関 東
133,558
125,418
120,357
117,157
117,269
118,814
116,756
115,865
115,912
115,768
116,072
116,496
116,985
116,639
117,227
118,457
117,704
117,604
116,590
九州北部
12,030
11,797
11,551
11,384
11,474
11,736
11,575
11,431
11,463
11,389
11,404
11,462
11,434
11,416
11,478
11,553
11,453
11,469
11,409
前年同月比
増 減 率
△ 3.7
△ 6.0
△ 4.0
△ 3.7
△ 3.8
△ 2.7
△ 1.9
△ 1.3
△ 0.7
△ 1.1
△ 0.7
△ 0.7
△ 0.2
△ 0.2
△ 0.0
△ 0.3
0.1
0.2
△ 0.1
前年同月比
増 減 率
△ 1.7
△ 1.9
△ 2.0
△ 1.6
△ 1.4
△ 0.1
0.2
0.6
1.2
0.0
0.0
△ 0.1
△ 0.3
△ 0.3
△ 0.7
△ 1.5
△ 0.6
△ 0.6
△ 1.4
(備考)1.沖縄地区は全国に含めた。
2.東京・関東地区の2002年6月以降の増減率は、地区間の事業譲渡を調整して算出
80
当座貸越
信金中金月報 2004.6
北 陸
20,387
20,088
19,287
18,988
19,005
19,419
19,061
18,829
18,811
18,720
18,813
18,839
18,847
18,773
18,879
19,077
18,939
18,942
18,798
南九州
16,971
16,530
15,972
15,415
15,527
15,874
15,489
15,273
15,260
15,232
15,295
15,380
15,498
15,505
15,594
15,788
15,584
15,560
15,473
前年同月比
増 減 率
△ 2.0
△ 1.4
△ 3.9
△ 3.1
△ 3.5
△ 1.3
△ 1.1
△ 0.7
△ 0.5
△ 1.4
△ 0.3
△ 0.9
△ 0.8
△ 1.0
△ 1.1
△ 1.7
△ 0.7
△ 0.4
△ 1.3
前年同月比
増 減 率
△ 3.1
△ 2.5
△ 3.3
△ 4.7
△ 5.3
△ 4.2
△ 3.0
△ 2.0
△ 1.3
△ 1.1
△ 0.9
△ 0.6
△ 0.1
△ 0.2
△ 0.0
△ 0.5
△ 0.5
△ 0.4
△ 0.1
東 海
123,154
121,487
119,553
117,533
118,442
120,414
118,573
117,386
117,613
117,141
117,339
118,000
118,739
117,963
118,694
120,157
118,923
118,736
118,793
全国計
687,159
661,879
639,805
627,349
629,551
638,093
626,342
620,951
621,691
619,691
621,145
624,062
625,431
623,438
626,852
633,013
627,637
626,366
623,686
前年同月比
増 減 率
△ 2.1
△ 1.3
△ 1.5
△ 1.9
△ 1.6
△ 0.2
△ 0.8
△ 0.0
0.5
△ 0.3
0.2
0.0
0.2
0.1
0.1
△ 0.2
0.1
0.1
0.1
前年同月比
増 減 率
△ 3.4
△ 3.6
△ 3.3
△ 3.6
△ 3.6
△ 2.6
△ 2.1
△ 1.3
△ 0.6
△ 1.2
△ 0.6
△ 0.6
△ 0.6
△ 0.5
△ 0.5
△ 0.7
△ 0.2
△ 0.2
△ 0.4
1.
(6)信用金庫の貸出先別貸出金
(単位:億円、%)
貸出金計
企業向け計
年 月 末
製造業
建設業
2000. 3
687,157
前年同月比
構成比
増 減 率
△ 3.6
100.0
480,319
前年同月比
構成比
増 減 率
△ 4.5
69.8
106,973
前年同月比
構成比
増 減 率
△ 5.5
15.5
01. 3
661,876
△ 3.6
100.0
459,367
△
4.3
69.4
102,550
△ 4.1
15.4
78,299
△
5.4
11.8
02. 3
639,803
△ 3.3
100.0
435,084
△
5.2
68.0
94,053
△ 8.2
14.7
71,366
△
8.8
11.1
6
9
627,347
629,549
△ 3.6
△ 3.6
100.0
100.0
424,004
423,123
△
△
5.7
6.2
67.5
67.2
91,671
90,024
△
△
8.6
9.5
14.6
14.2
67,016
67,526
△
△
9.5
9.8
10.6
10.7
12
638,092
626,340
619,689
625,429
633,012
622,492
△
△
△
△
△
△
100.0
100.0
100.0
100.0
100.0
100.0
430,011
415,696
410,032
412,646
418,470
405,917
△
△
△
△
△
△
4.9
4.4
3.2
2.4
2.6
2.3
67.3 b
66.3
66.1
65.9
66.1
65.2
91,584
86,168
84,676
84,541
86,344
82,052
△
△
△
△
△
△
7.6
14.3
67,981
△
9.2
10.6
7.9
7.1
5.5
5.1
4.7
13.7
13.6
13.5
13.6
13.1
65,371
62,121
63,252
64,107
61,905
△
△
△
△
△
8.4
7.3
6.3
5.6
5.3
10.4
10.0
10.1
10.1
9.9
03. 3
6
9
12
04. 3
年 月 末
卸売業
2000. 3
01. 3
02. 3
6
9
12
03. 3
6
9
12
04. 3
年 月 末
40,922
39,320
36,758
35,792
35,401
36,235
34,255
33,818
34,004
34,927
33,063
2.6
2.1
1.2
0.6
0.7
0.6
前年同月比
構成比
増 減 率
△
△
△
△
△
△
△
△
△
△
△
6.0
3.9
6.5
6.8
7.9
6.2
6.8
5.5
3.9
3.6
3.4
5.9
5.9
5.7
5.7
5.6
5.6
5.4
5.4
5.4
5.5
5.3
小売業
49,905
46,557
42,824
41,643
41,245
40,983
39,648
38,977
38,752
38,757
37,365
前年同月比
構成比
増 減 率
△
△
△
△
△
△
△
△
△
△
△
5.5
6.7
8.0
8.3
8.5
8.2
7.4
6.4
6.0
5.4
5.7
7.2
7.0
6.6
6.6
6.5
6.4
6.3
6.2
6.1
6.1
6.0
16,654
15,622
14,524
14,229
14,108
14,008
13,653
13,415
13,300
13,145
12,723
前年同月比
構成比
増 減 率
83,373
80,128
77,123
△ 2.7
△ 3.8
△ 3.7
12.1
12.1
12.0
11,695
11,762
13,527
2.5
0.5
15.0
1.7
1.7
2.1
195,143
190,747
191,192
6
9
12
03. 3
6
75,835
75,897
76,674
86,254
85,633
△ 4.4
△ 4.4
△ 4.0
―
―
12.0
12.0
12.0
13.7
13.8
12,303
12,824
13,426
15,680
13,637
18.1
21.7
23.5
15.9
10.8
1.9
2.0
2.1
2.5
2.2
85,831
86,476
84,192
―
―
△ 2.3
13.7
13.6
13.5
13,957
14,630
16,933
8.8
8.9
7.9
2.2
2.3
2.7
9
12
04. 3
△
△
△
△
△
△
△
△
△
△
△
3.9
6.1
7.0
7.3
7.0
7.1
5.9
5.7
5.7
6.1
6.8
2.4
2.3
2.2
2.2
2.2
2.1
2.1
2.1
2.1
2.0
2.0
前年同月比
構成比
増 減 率
2000. 3
01. 3
02. 3
b
前年同月比
構成比
増 減 率
不動産業
73,187
71,861
74,989
74,924
76,218
77,439
78,217
79,366
80,787
81,889
82,419
前年同月比
構成比
増 減 率
△
△
1.1
1.8
4.3
3.7
2.9
2.8
4.3
5.9
5.9
5.7
5.3
10.6
10.8
11.7
11.9
12.1
12.1
12.4
12.8
12.9
12.9
13.2
個 人
地方公共団体
サービス業 前年同月比
(各種サービス) 増 減 率 構成比
飲食店
82,844
前年同月比
構成比
増 減 率
△ 5.5
12.0
△
△
住宅ローン 前年同月比
構成比
増 減 率
1.5
2.2
0.2
28.3
28.8
29.8
121,253
123,501
127,347
5.0
1.8
3.1
17.6
18.6
19.9
191,040
193,602
194,655
194,964
196,020
0.2
1.1
1.4
1.9
2.6
30.4
30.7
30.5
31.1
31.6
128,835
130,858
133,267
134,672
136,530
3.6
4.2
4.6
5.7
5.9
20.5
20.7
20.8
21.5
22.0
198,825
199,911
199,641
2.6
2.7
2.3
31.7
31.5
32.0
139,484
142,207
141,966
6.5
6.7
5.4
22.3
22.4
22.8
(備考)1.日本銀行『業種別貸出金調査表』より作成。このため、『日計表』による(5)科目別貸出金、地区別貸出金の貸出金計と
は一致しない。
2.企業向け計には、海外円借款、国内店名義現地貸を含む。
3.2003年3月の業種分類の見直しに伴い、製造業の対象業種から「出版業」が除かれ、従来の「出版・印刷業」に代えて
「印刷業」のみが対象となったことから、増減率の算出においては、出版業・印刷業とも除いて算出した。また「サービ
ス業」は「各種サービス」となり、飲食店等を含む。
統 計
81
1.
(7)信用金庫の余裕資金運用状況
(単位:億円、%)
年 月 末
2000.
01.
02.
02.
3
3
3
6
9
12
03. 3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
04. 1
2
3 p
年 月 末
2000.
01.
02.
02.
3
3
3
6
9
12
03. 3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
04. 1
2
3 p
年 月 末
2000.
01.
02.
02.
3
3
3
6
9
12
03. 3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
04. 1
2
3 p
現 金
14,277
14,238
19,391
16,560
16,204
19,941
17,492
15,442
15,425
15,863
14,732
14,438
15,148
13,522
14,936
18,842
15,566
14,080
16,000
金融機関
預 け 金
買入金銭
貸 付 等 うちコール う ち 債 券 貸 借
うち譲渡性
うち信金中金預け金
債
権
預 け 金
ロ ー ン 取引支払保証金
146,973(
8.5)
1,373
129,402( 12.8) 24,425
5,900
―
4,182
183,867( 25.1)
2,553
166,783( 28.8) 11,180
7,556
―
4,134
182,044(△ 0.9)
845
159,156(△ 4.5)
3,004
2,104
―
2,084
209,393(△ 1.4)
1,175
197,322(△ 2.3)
1,028
730
―
3,949
197,381(△ 0.6)
799
174,030(△ 7.7)
1,888
1,580
―
3,828
199,514(△ 0.3)
1,103
187,256(△ 0.9)
1,301
1,301
―
5,213
194,070(
6.6)
883
159,131(△ 0.0)
2,654
1,654
1,000
3,274
207,647(
3.8)
943
196,279(
4.4)
1,088
596
99
5,105
202,518(
2.4)
1,013
191,507(
3.5)
1,039
725
99
5,835
208,191(△ 0.5)
853
195,676(△ 0.8)
1,205
905
99
6,188
200,749(△ 0.7)
953
190,063(△ 0.0)
1,099
810
89
5,804
198,658(△ 2.9)
933
188,171(△ 2.3)
969
660
89
5,514
192,727(△ 2.3)
853
163,256(△ 6.1)
1,424
945
89
4,579
194,467(△ 1.4)
880
184,147(△ 0.8)
613
443
89
4,789
195,734(△ 0.7)
775
185,067(△ 0.4)
662
511
80
4,536
199,978(
0.2)
605
189,285(
1.0)
582
449
63
4,555
196,366(
1.9)
550
186,157(
2.2)
744
597
87
4,229
206,613(
4.0)
550
195,765(
4.1)
745
595
90
4,020
196,399(
1.2)
910
154,844(△ 2.6)
2,181
1,581
0
3,098
金銭の
信 託
4,725
4,057
3,103
3,406
3,349
3,223
2,463
2,560
2,587
2,673
2,689
2,691
2,601
3,332
3,318
3,297
3,262
3,257
2,724
535
198
188
212
189
164
197
221
226
263
250
287
272
255
223
208
197
168
163
有価証券
国
198,272(
221,566(
236,169(
231,391(
239,826(
241,184(
248,064(
249,064(
252,731(
258,273(
262,355(
269,405(
270,957(
269,930(
269,250(
267,560(
267,647(
265,686(
268,306(
投資信託
15,654
14,226
8,034
8,593
8,155
7,517
5,176
5,913
6,020
6,149
6,101
6,124
5,976
6,003
6,146
6,106
5,842
6,033
5,495
9.8)
11.7)
6.5)
2.1)
0.7)
0.9)
5.0)
6.7)
8.0)
11.6)
11.8)
14.6)
12.9)
12.6)
12.1)
10.9)
9.2)
7.8)
8.1)
外国証券
34,184(
36,743(
39,660(
42,281(
42,567(
43,306(
41,917(
42,934(
44,377(
45,895(
47,212(
47,698(
47,723(
47,916(
48,223(
48,380(
48,153(
47,939(
46,609(
37,723(
50,807(
58,911(
49,193(
54,280(
52,105(
62,730(
61,000(
60,632(
62,868(
65,164(
69,681(
72,767(
71,365(
69,919(
68,790(
69,463(
68,346(
74,150(
債
地方債
41.0)
34.6)
15.9)
23.9)
14.1)
3.7)
6.4)
14.8)
15.6)
27.7)
31.0)
40.1)
34.0)
37.6)
34.2)
32.0)
25.5)
18.2)
18.2)
18,507
20,554
24,778
25,003
24,997
24,942
24,914
24,328
24,898
25,476
25,712
26,033
26,233
26,288
26,116
26,237
26,550
26,480
26,749
社
債
86,672(△
92,497(
99,328(
100,596(
103,952(
107,394(
108,534(
109,638(
111,596(
112,671(
112,992(
114,679(
113,131(
113,106(
113,566(
112,821(
112,450(
111,599(
109,989(
公社公団債
5.4) 13,679
6.7) 15,595
7.3) 21,166
3.3) 21,142
5.4) 22,628
5.0) 24,993
9.2) 27,267
9.3) 27,957
11.1) 29,374
12.0) 30,091
10.1) 30,695
11.4) 31,457
8.8) 32,126
6.6) 32,526
6.6) 33,066
5.0) 33,364
3.4) 33,538
3.0) 33,597
1.3) 33,889
余資運用 信金中金
その他の 貸
付 資 産 計 利 用 額
(B)
証
券 有価証券 (A)
16.0)
―
5
393,392
147,096
7.4)
346
5
439,243
166,783
7.9)
442
0
445,987
159,156
6.0)
545
23
465,942
197,322
0.9)
588
0
462,667
174,030
1.2)
633
0
470,543
187,256
5.6)
565
0
468,216
159,131
5.2)
601
0
481,131
196,279
6.2)
607
0
480,364
191,507
8.5)
619
0
492,659
195,676
9.8)
621
0
487,682
190,063
10.6)
623
0
491,965
188,171
12.1)
627
0
487,710
163,256
12.1)
632
0
486,910
184,147
12.0)
634
0
488,662
185,067
11.7)
630
0
495,024
189,285
11.5)
616
0
488,014
186,157
11.6)
622
0
494,572
195,765
11.1)
637
0
488,874
154,844
金融債
29,579
31,849
34,374
35,403
37,179
37,994
37,894
38,041
38,016
37,722
37,199
37,440
36,287
35,526
35,479
35,081
34,922
34,644
34,195
預貸率 (A)
/預金
67.3
63.7
62.2
60.5
61.0
60.8
60.4
59.4
59.4
58.7
59.0
59.0
59.2
59.2
59.3
59.2
59.3
58.9
59.0
38.5
42.3
43.3
44.9
44.8
44.9
45.2
46.0
45.9
46.6
46.3
46.5
46.2
46.2
46.2
46.3
46.1
46.5
46.2
その他
43,412
45,052
43,787
44,049
44,143
44,406
43,372
43,639
44,205
44,858
45,097
45,780
44,717
45,053
45,019
44,376
43,990
43,357
41,904
株 式
信金中金月報 2004.6
5,467
6,325
4,987
5,133
5,260
5,256
4,206
4,632
4,583
4,581
4,529
4,548
4,492
4,610
4,640
4,587
4,565
4,660
4,664
貸付信託
57
58
24
21
23
26
17
13
15
10
9
6
4
4
4
4
3
3
2
預証率 (B)
/預金(B)/(A)
19.4
21.3
22.9
22.3
23.2
23.0
23.9
23.8
24.1
24.4
24.9
25.4
25.6
25.6
25.4
25.0
25.3
25.0
25.4
(備考)1.( )内は前年同月比増減率
2.預貸率=貸出金/預金×100(%)、預証率=有価証券/預金×100(%)(預金には譲渡性預金を含む。)
82
商品有価
証
券
14.4
16.0
15.4
19.0
16.8
17.8
15.3
18.7
18.3
18.5
18.0
17.7
15.4
17.5
17.5
17.7
17.6
18.4
14.6
37.3
37.9
35.6
42.3
37.6
39.7
33.9
40.7
39.8
39.7
38.9
38.2
33.4
37.8
37.8
38.2
38.1
39.5
31.6
2.
(1)業態別預貯金等
(単位:億円、%)
年 月 末
信用金庫
国内銀行
前年同月比
増 減 率
(債券、信託
を含む) 前年同月比
増 減 率
大手銀行
(債券、信託
を含む) 前年同月比
増 減 率
うち預金
前年同月比 うち都市銀行 前年同月比
増 減 率
増 減 率
地方銀行
前年同月比
増 減 率
2000. 3
1,020,320
1.4
6,639,673
1.0
4,298,016
1.7
2,433,587
0.8
2,090,975
0.4
1,742,961
1.5
01. 3
1,038,043
1.7
6,641,871
0.0
4,288,153
△ 0.2
2,466,900
1.3
2,102,820
0.5
1,785,742
2.4
02. 3
1,028,198
△
0.9
6,790,535
2.2
4,416,792
2.9
2,699,067
9.4
2,308,919
9.8
1,813,848
1.5
02. 9
1,031,142
△
2.1
6,696,188
1.1
4,341,360
1.8
2,669,637
7.2
2,303,682
8.2
1,790,940
0.1
12
1,047,505
△
1.2
6,701,855
1.0
4,323,991
1.3
2,666,605
5.4
2,292,954
5.9
1,806,287
0.5
03. 3
1,035,536
0.7
6,798,976
0.1
4,424,063
0.1
2,760,299
2.2
2,377,699
2.9
1,813,487
△ 0.0
03. 4
1,044,809
1.3
6,653,145
△
4.0
4,270,916
△ 6.5
2,780,765
△ 3.5
2,401,926
△ 5.3
1,831,373
1.3
5
1,044,410
1.9
6,657,431
△
1.7
4,274,314
△ 3.2
2,783,791
1.6
2,401,142
0.6
1,833,404
1.7
6
1,054,744
1.8
6,644,211
△
1.5
4,239,210
△ 2.7
2,753,332
2.5
2,365,201
1.3
1,850,150
1.1
7
1,050,575
2.2
6,638,554
△
1.0
4,264,200
△ 2.1
2,760,310
2.7
2,371,542
2.0
1,823,556
1.6
8
1,056,653
2.3
6,653,041
△
0.4
4,268,686
△ 1.4
2,768,453
3.9
2,383,157
3.6
1,831,946
2.1
9
1,053,808
2.1
6,641,341
△
0.8
4,271,387
△ 1.6
2,770,950
3.7
2,385,332
3.5
1,816,601
1.4
10
1,050,779
2.2
6,580,434
△
0.9
4,241,987
△ 1.7
2,733,683
2.8
2,353,812
2.8
1,792,664
1.5
11
1,055,159
2.3
6,653,866
△
0.8
4,288,017
△ 1.7
2,767,642
2.3
2,385,727
2.3
1,816,427
1.6
12
1,068,100
1.9
6,673,286
△
0.4
4,289,361
△ 0.8
2,757,888
3.4
2,368,299
3.2
1,825,041
1.0
04. 1
1,055,949
2.4
6,651,254
△
0.4
4,302,101
△ 1.2
2,760,911
2.6
2,378,636
2.9
1,799,432
1.6
2
1,061,010
2.5
6,687,936
△
0.5
4,326,416
△ 1.4
2,773,222
1.6
2,389,622
1.7
1,809,568
1.8
3
p 1,055,315
1.9
4
年 月 末
第二地銀
信用組合
前年同月比
増 減 率
労働金庫
前年同月比
増 減 率
農業協同組合
前年同月比
増 減 率
郵便貯金
前年同月比
増 減 率
預貯金等合計
前年同月比
増 減 率
前年同月比
増 減 率
2000. 3
598,696
△
5.1
191,966
△
4.9
111,791
4.4
702,555
1.8
2,599,702
2.9
11,266,007
1.4
01. 3
567,976
△
5.1
180,588
△
5.9
117,212
4.8
720,944
2.6
2,499,336
△ 3.8
11,197,994
△ 0.6
02. 3
559,895
△
1.4
153,541
△ 14.9
125,200
6.8
735,373
2.0
2,393,418
△ 4.2
11,226,265
02. 9
563,888
△
1.1
148,848
△ 15.2
130,795
6.3
738,729
0.8
2,365,559
△ 2.2
11,111,261
12
571,577
△
0.3
149,872
△ 10.8
134,012
5.5
751,811
0.7
2,359,130
△ 1.8
11,144,185
0.2
△
0.1
0.0
03. 3
561,426
0.2
148,362
△
3.3
131,619
5.1
744,202
1.2
2,332,465
△ 2.5
11,191,160
△
0.3
4
550,856
△
1.0
149,574
△
2.3
134,006
4.8
748,586
1.5
p 2,331,069
△ 2.6
11,061,189
△
2.7
5
549,713
△
0.7
149,717
△
1.4
133,466
2.5
748,571
1.6
p 2,317,870
△ 2.7
11,051,465
△
1.3
6
554,851
△
1.2
150,940
△
0.6
136,476
2.6
757,417
1.6
p 2,322,076
△ 2.9
11,065,864
△
1.2
7
550,798
△
0.7
150,749
0.7
136,115
2.5
754,711
1.7
p 2,313,523
△ 2.8
11,044,227
△ 0.8
8
552,409
△
1.0
151,677
1.4
135,935
3.1
757,023
1.8
p 2,314,695
△ 2.7
11,069,024
△ 0.4
9
553,353
△
1.8
151,772
1.9
135,179
3.3
752,178
1.8
p 2,299,381
△ 2.7
11,033,659
△ 0.6
10
545,783
△
1.8
151,407
2.1
134,787
3.1
756,441
1.9
p 2,300,260
△ 2.7
10,974,108
△ 0.7
11
549,422
△
2.1
151,575
2.2
134,809
3.4
757,171
2.0
p 2,289,603
△ 2.6
11,042,183
△ 0.6
12
558,884
△
2.2
153,408
2.3
137,941
2.9
766,812
1.9
p 2,299,689
△ 2.5
11,099,236
△ 0.4
04. 1
549,721
△
1.6
152,296
2.7
137,193
3.1
760,885
2.1
p 2,293,052
△ 2.5
11,050,629
△
2
551,952
△
1.5
152,828
2.9
137,276
3.3
p 2,294,104
△ 2.4
135,713
3.1
3
4
p 2,272,994
△ 2.5
p 2,272,153
△ 2.5
0.3
(備考)1.日本銀行『金融経済統計月報』、日本郵政公社ホームページ等より作成
2.大手銀行は、国内銀行−(地方銀行+第二地銀)の計数
3.国内銀行・大手銀行には、全国内銀行の債券および信託勘定の金銭信託・貸付信託・年金信託・財産形成給付信託を含
めた。
4.預貯金等合計は、単位(億円)未満を切り捨てた各業態の預貯金残高の合計により算出した。
統 計
83
2.
(2)業態別貸出金
(単位:億円、%)
信用金庫
年 月 末
大手銀行
前年同月比
増 減 率
地方銀行
前年同月比
増 減 率
都市銀行
前年同月比
増 減 率
第二地銀
前年同月比
増 減 率
信用組合
前年同月比
増 減 率
前年同月比
増 減 率
2000. 3
687,159
△
3.4
2,788,233
△
1.0
2,151,274
1.9
1,340,878
△ 3.0
505,738
△ 4.0
142,433
△ 7.6
01. 3
661,879
△
3.6
2,746,303
△
1.5
2,133,507
△ 0.8
1,357,418
1.2
465,931
△ 7.8
133,612
△ 6.1
02. 3
639,805
△
3.3
2,601,800
△
5.2
2,035,627
△ 4.5
1,359,864
0.1
444,432
△ 4.6
119,082
△ 10.8
02. 6
627,349
△
3.6
2,549,726
△
5.1
2,166,966
4.2
1,332,817
△ 0.5
435,877
△ 2.1
104,857
△ 18.8
9
629,551
△
3.6
2,489,833
△
8.0
2,105,103
0.5
1,337,110
△ 0.9
435,113
△ 2.9
96,509
△ 24.7
12
638,093
△
2.6
2,519,538
△
5.5
2,135,044
3.0
1,354,958
△ 0.5
441,929
△ 2.0
93,079
△ 24.8
03. 3
626,342
△
2.1
2,451,214
△
5.7
2,072,578
1.8
1,352,514
△ 0.5
429,130
△ 3.4
91,512
△ 23.1
4
620,951
△
1.3
2,404,547
△
6.6
2,033,740
△ 6.7
1,337,796
0.2
413,662
△ 5.4
90,911
△ 21.4
5
621,691
△
0.6
2,386,046
△
6.4
2,016,538
△ 6.7
1,334,349
0.4
413,458
△ 4.9
90,803
△ 20.0
6
619,691
△
1.2
2,379,564
△
6.6
2,006,581
△ 7.4
1,330,607
△ 0.1
413,407
△ 5.1
90,545
△ 13.6
7
621,145
△
0.6
2,345,999
△
7.5
1,974,348
△ 8.4
1,335,036
0.5
414,468
△ 4.7
90,841
△ 11.5
8
624,062
△
0.6
2,359,386
△
7.2
1,986,811
△ 8.1
1,339,580
0.5
415,777
△ 4.7
91,103
△ 7.4
9
625,431
△
0.6
2,375,563
△
4.5
1,993,783
△ 5.2
1,345,276
0.6
416,370
△ 4.3
91,511
△ 5.1
10
623,438
△
0.5
2,336,226
△
6.4
1,962,538
△ 7.1
1,335,550
0.4
414,822
△ 4.3
91,409
△ 4.9
11
626,852
△
0.5
2,356,647
△
6.2
1,985,128
△ 6.8
1,340,065
0.2
417,592
△ 4.1
91,770
△ 4.7
△ 0.7
12
633,013
△
0.7
2,361,749
△
6.2
1,991,686
△ 6.7
1,352,962
△ 0.1
423,823
△ 4.0
92,384
04. 1
627,637
△
0.2
2,341,942
△
6.1
1,971,502
△ 6.7
1,346,007
0.3
420,122
△ 3.6
91,927
△ 0.3
2
626,366
△
0.2
2,330,705
△
5.6
1,951,514
△ 6.6
1,347,901
0.4
419,680
△ 3.5
91,897
△ 0.3
623,686
△
0.4
前年同月比
増 減 率
うち中小
企業向け
3
年 月 末
p
労働金庫
農業協同組合
前年同月比
増 減 率
公的金融機関
前年同月比
増 減 率
前年同月比
増 減 率
うち住宅
金融公庫
合 計
前年同月比
増 減 率
前年同月比
増 減 率
2000. 3
73,830
4.0
220,863
0.2
1,729,489
8.0
297,448
4.3
745,413
3.3
7,488,623
0.0
01. 3
76,213
3.2
220,078
△
0.3
1,731,885
0.1
293,556
△ 1.3
759,220
1.8
7,393,319
△ 1.2
02. 3
81,054
6.3
217,357
△
1.2
1,693,486
△ 2.2
288,025
△ 1.8
726,516
△ 4.3
7,156,880
△ 3.1
02. 6
81,133
6.8
215,119
△
1.6
1,685,609
△ 2.8
285,471
△ 2.0
718,620
△ 5.5
7,032,487
△ 3.4
9
82,728
7.7
215,552
△
1.8
1,656,860
△ 3.6
282,568
△ 2.8
701,480
△ 6.7
6,943,256
△ 4.9
12
85,122
7.8
213,487
△
1.7
1,645,069
△ 3.7
284,652
△ 2.4
690,486
△ 7.0
6,991,275
△ 3.7
03. 3
87,266
7.6
215,147
△
1.0
1,617,238
△ 4.5
279,743
△ 2.8
671,999
△ 7.5
6,870,363
△ 4.0
4
87,569
7.8
214,142
△
0.6
1,609,421
△ 4.4
277,393
△ 2.3
667,477
△ 7.6
6,778,999
△ 4.1
5
87,748
8.4
213,791
△
0.8
1,615,500
△ 4.3
277,483
△ 1.6
666,699
△ 7.8
6,763,386
△ 3.9
6
87,930
8.3
213,430
△
0.7
1,606,884
△ 4.6
278,349
△ 2.4
659,966
△ 8.1
6,742,058
△ 4.1
7
88,245
8.5
213,914
△
0.6
1,593,666
△ 4.9
277,051
△ 1.7
650,957
△ 8.5
6,703,314
△ 4.2
8
88,882
8.5
214,368
△
0.5
1,583,101
△ 5.1
276,547
△ 1.6
642,128
△ 9.1
6,716,259
△ 4.1
9
89,637
8.3
214,601
△
0.4
1,569,865
△ 5.2
277,987
△ 1.6
634,452
△ 9.5
6,728,254
△ 3.0
10
90,443
8.1
214,696
△
0.1
1,560,756
△ 5.3
275,448
△ 1.4
629,594
△ 9.7
6,667,340
△ 3.8
11
91,205
7.7
214,889
0.0
1,559,932
△ 5.2
277,480
△ 1.3
626,931
△ 9.7
6,698,952
△ 3.7
12
91,749
7.7
213,529
0.0
1,556,901
△ 5.3
279,855
△ 1.6
622,745
△ 9.8
6,726,110
△ 3.7
04. 1
91,394
7.6
212,930
0.1
1,546,860
△ 5.1
276,757
△ 1.1
618,112
△ 9.7
6,678,819
△ 3.5
2
91,794
6.8
1,538,354
△ 5.1
275,699
△ 1.3
612,729
△ 9.7
3
92,664
6.1
(備考)1.日本銀行『金融経済統計月報』より作成
2.大手銀行は、国内銀行−(地方銀行+第二地銀)の計数
3.公的金融機関は、日本政策投資銀行、国際協力銀行、国民生活金融公庫、住宅金融公庫、農林漁業金融公庫、中小企業
金融公庫、公営企業金融公庫、沖縄振興開発金融公庫、商工組合中央金庫の合計
4.公的金融機関のうち中小企業向けは、国民生活金融公庫、中小企業金融公庫、商工組合中央金庫の合計
5.合計は、単位(億円)未満を切り捨てた各業態の貸出金残高の合計により算出した。
84
信金中金月報 2004.6
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本誌5月号表紙の掲載記事一覧に次の誤りがありました。
お詫びして訂正します。
(正)●第5回 信用金庫取引先海外進出状況調査結果
(誤)●第5回 信用金庫取引先海外進出状況調査結果
−04∼08年度の年平均実質成長率は1.9%と予測−
ISSN 1346−9479
2004年( 平 成16年 )
6月1日 発行
2004年6月号 第3巻 第7号( 通 巻375号 )
発 行 信金中央金庫
編 集 信金中央金庫 総合研究所
〒1 0 4−0031 東京都中央区京橋3−8−1
T E L 0 3( 3 5 6 3 )7 5 4 1 F A X 0 3( 3 5 6 3 )7 5 5 1
<本誌の無断転用、転載を禁じます>
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