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小学校女性教員の保護者対応の不安に関する研究

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小学校女性教員の保護者対応の不安に関する研究
小学校女性教貝の保護者対応の不安に関する研究
一子育て経験が及ぼす影響一
専 攻
コ 一 ス
学籍番号
氏 名
学校教育専攻
教育臨床心理コース
M05146E
吉 村 幸 子
【問題と日的】
近年、教師に求められる役割は多くなっ
ており、保護者や地域社会からの期待も多
岐に渡っている(後藤・田中1999)。全国
の公立小・中学校教員の70%以上が「保護
者や地域住民への対応が増した」と感じて
おり(文部科学省調査2007)、教師の精神
的な負担が増えている(船水2009)。
経験がなくてよかった点・困った点
(b)分類法:臨床心理学専攻大学院生6名
でKJ分類法を実施。
5 結果:8項目に分類された。子育て経
験あり群・なし群において、保護者対応
への意識に違いがあった。そこで『保護
者対応」に関する4項目「問い合わせ」
「悩み相談」「保護者対応」「子育て役立
文部科学省の平成12∼21年度調査にお
ち観」の尺度をつくった。
いて、教員の病気休職者・精神疾患による
【本研究】
休職者は平成12年に0.53%であったが
いる。校種別では小学校教員が全体の
1 目的:r保護者対応不安」「教職充実感
度」r保護者対応自信度」について子育て
経験 あり群・なし群と年代・就業年数
44.2%中学校28.4%高等学校15.3%で小学
も含めて比較検討を行う。
校において高い。また小学校教員を性別で
見ると、男性43.4%女性56.6%うち精神疾
2 調査対象:大阪市立小学校勤務の女性
年々増加し、平成21年ではO.94%となって
教員
患は男性49%女性51%といずれも女性の
3 調査時期:2012年9月∼10月上旬
割合が高い。女性教員は仕事と家庭の「両
立葛藤」が大きく、男性よりストレスを認
4 調査方法:大阪市立小学校に調査依頼、
知しやすい傾向がある(兵頭1992)。一方、
既婚・子育て経験をしている30歳前後の女
性教員に高い仕事姿勢や自信が見られたと
いう研究結果(明石・高野1998)もある。
本研究では、小学校女性教員の子育て経験
の有無による保護者対応不安と教職充実感
度との関連について比較検討を行った。
【予備調査】
1.目的:子育て経験の有無が女性教員の
意識や教職への充実感に及ぼす影響を調
べる。
2.調査対象:大阪市勤務の小学校女性教
員29名(子育て経験あり15名、子育て
経験なし14名)
3.調査時期:2010年5月∼6月
受け入れ校25校に無記名によるアンケ
ート340部を各校に郵送。198部回収(回
収率58.2%)164部有効(有効回答率
82.8%、34部欠損値により除外)
5 質問紙の構成:①「教職充実感度」「保
護者対応自信度」。Visua1AnaIog Sca1e
O∼100%にて測定②予備調査の結果から
作成した「保護者対応不安尺度」。下位尺
度は4項目で「間い合わせ」5問、「悩み
相談」4間、「保護者対応」3問、「子育て
役立ち観」2間の計14間。4点4件法で
Min.15点Max.56点。高得点ほど不安度
が高い。③State−Trait Anxiety
Inv・ntory−FormJTZ(STAI日本語版)40問
④フェイスシート「年齢・就業年数・子
育て経験の有無」
4、方法:(a)自由記述式質間紙による調査
6 結果
質問構成:①子育て経験の有無②(子育
て経験あり群)子育てしてよかった点・
困った点②(子育て経験なし群)子育て
(1)年代との関係
20代において「保護者対応自信度」
が最も低かった。年代を重ねること「保
護者対応自信度」は高まる。保護者対応不
安尺度のr問い合わせ」r悩み相談」につい
ては、20代30代の不安度がほぼ同じであ
り、30代で最も不安が高い結果であった。
40代から不安が大幅に低くなっていた。
(2)就業年数との関係
就業年数11∼20年において「教職充実感
度」「保護者対応自信度」の両方が最も低か
った。また、就業年数11∼20年は、保護者
対応不安尺度において「間い合わせ」『悩み
相談」への不安が最も高かった。11∼20年
と21∼30年の差が非常に大きく、21∼30
年、31∼40年と経験を得るごとにその不安
は低くなる。「子育て役立ち観」については、
就業年数11∼20年で平均得点が最も高く、
他の就業年数の層よりも「子育て経験は教
職より役立っ」と考えていた。
(3)子育て経験の有無との関係
保護者対応不安尺度のr間い合わせ」r保
護者対応」について子育て経験なし群の不
安が、子育て経験あり郡より高かった。「子
育て役立ち観」については、子育て経験あ
り群の方が「子育て経験は教職より役立っ」
と考えていた。
(4)子育て経験あり群・なし群の群間比較
子育て経験の有無別に年代・就業年数で
比較した。「問い合わせ」「悩み相談」に年
代・就業年数の主効果があった。年代との
関係において、30代を除いて子育て経験な
し群の不安が全体的に高かった。しかし子
育て経験あり群30代については、他の層に
比べてr間い合わせ」r悩み相談」への不安
が最も高かった。子育て経験なし群につい
ては、20代の不安が最も高く、年代が上が
るに従いその不安は低くなる。就業年数と
の関係では、各群内で11∼20年のr間い合
わせ」r悩み相談」の不安が最も高くなって
いた。特に子育て経験なし群11∼20年は、
他の層に比べて最も高い不安であった。r子
育て役立ち観」は、子育て経験の有無・就
業年数に主効果があり、特に子育て経験あ
り群11∼20年が「子育ては教職に役立っ」
と考えていた。一方、子育て経験あり群11
∼20年のr教職充実感度」は71%、r保護者
対応自信度」は60%で他の層よりも最も低
かった。r教職充実感度」r保護者対応自信
度」は全体的に子育てなし群が高かった。
【総合考察】
本調査の結果では、子育て経験の有無よ
りも年代と就業年数が回答に影響していた。
特に就業年数が大きく影響しており、子育
て経験あり群・なし群ともに11∼20年の不
安が最も高かった。また、子育て経験あり
群30代と就業年数11∼20年の層で保護者
対応自信度が低く、保護者対応不安が高い
ことも特徴であった。子育て経験あり群30
代・就業年数11∼20年は、育児・子育ての
最中と推測される。「子育て役立ち観」にお
いて高い数値を示していたことから、体験
を通して子育てが教職にプラスの影響を及
ぼすことを実感している時期と考えられる。
しかし、その意識は「教職充実感度」「保護
者対応自信度」の高まりやr保護者対応へ
の不安」軽減につながっているわけではな
かった。女性教員が抱えている困難には、
仕事と家庭の両立があり、厳しい状況にさ
らされている(高島2011)。「子育て役立ち
観」の高さより「両立葛藤」の強さが大き
く影響し「教職充実感度」「保護者対応自信
度」が低く「保護者対応への不安」が高い
という結果になったと考える。また、就業
年数11∼20年ついては、職務10年を経過
し、仕事の責任や負担が重くなる時期と考
えられる。より仕事に専念しやすい子育て
なし群においては、職務上の悩み・困難が
増大する時期と推測される。しかし、周囲
のサポート体制は新卒時期より当然少なく、
自ら相談することも容易でない辛い状況が
生じやすい時期とも考えられる。子育て経
験なし群には、職務に専念するほど生じや
すい仕事への困難が存在するものと考えら
れる。以上のことから、子育て経験あり群・
なし群ともに30代・就業年数11∼20年の
小学校女性教員に乗り越えるべき大きな課
題があり、職場や社会においてこの時期の
小学校女性教員を支えるサポート体制やそ
の改善策が求められる。
主任指導教員 有園 博子
指導教官 有園博子
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