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業務報告書 (PDF形式:2.17MB) - 四国経済産業局

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業務報告書 (PDF形式:2.17MB) - 四国経済産業局
平成 22 年度シビックプライド講座開催事業
業務報告書
2011 年 3 月 15 日
株式会社日本デザインセンター
プロデュース本部 チーフ・プロデューサー
紫牟田伸子
■ シビックプライド講座について
◎「シビックプライド講座」とは
「シビックプライド」という言葉は、
「市民がまちに対して抱く愛着・誇り・自負心」という意味である。
イギリスにおいて産業革命の頃(18 世紀)
、農村部から都市に流入してきた人々が都市をつくりあげてい
く誇り(シビックプライド)を視覚化していったことからこの言葉は使われ始め、現在、都市再生が行わ
れつつある EU 諸国(とくにイギリス)では、都市相互のグローバルな競争と連携の中で都市アイデンテ
ィの形成に重要な役割を果たすと認識されている。
「シビックプライド講座」は、シビックプライド研究会(*)が横浜市の文化施設「BankART1929」の
「2010 年度 BankARTschool」の一講座として、2010 年 6〜7 月に毎週一回、8回連続講座として開催し
たものである。この講座では、シビックプライドという概念や海外の先行事例に関する情報提供(レクチ
ャー)と、実際の都市をフィールドとして、都市と市民がコミュニケートできるポイントを市民自ら生み
出すワークショップとを組み合わせた。
◎シビックプライド研究会とは
都市計画家の伊藤香織(東京理科大学建築学科准教授)を中心に国内外の都市コミュニケーションの先行
事例調査・研究・国内自治体への提案を行う団体として 2006 年に発足。コミュニケーション、建築、都
市再生、アート、ランドスケープなど多彩な分野の産学のメンバーからなる。2008 年に『シビックプライ
ド:都市のコミュニケーションをデザインする』
(宣伝会議)を出版している。
◎シビックプライド講座の目的
より多くの市民がシビックプライドを持ち、
より暮らしやすく働きやすく、
豊かな暮らしを見出すことは、
地域活性および地域経済活性化において不可欠である。そのため、本講座では、地域の「プロモーション
アイデア」や地域と市民の「コミュニケーションプラン」を考えることで、地域特性および地域のポテン
シャルを引き出し、市民参加の実感を基盤とした地域への参加者意識を醸成することを目的とする。
地域への参加者意識とは「共同体意識」の強化をと同義語ではない。四国経済産業局が開催する本講座は、
あくまでも地域産業の可能性や地域で誇りをもって就業すること、観光産業や製造業といった地域を存続
させるための経済活動に関わる意識の醸成を目的としている。
◎シビックプライド講座の概要
シビックプライド講座は「①専門家によるシビックプライドについての講義」と「②グループワークによ
るアイデアの視覚化」を組み合わせる。多様なディテールの集積である地域を題材にして「アイデア」や
「プラン」
をアプトプットしていくプロセスを通じて、
参加者は自ずと地域の課題を発見することとなり、
アウトプットを表現する道筋を通して、都市の可能性を参加者自体が見出しうる構造をとる。
参加者は自治体と市民(住民、地域企業、来外者)から構成されることが望ましい。地域内部からの視点
や課題の抽出と、地域外の客観的な視点による魅力の掘り出しや、内部視点では見出し得ない地域特性の
見方が同時に行われることに意味があるからである。
◎シビックプライド講座の効用
シビックプライド講座を通じて、以下のような効用が見込まれる。
①人材育成
・ 講座に参加すること自体が都市への愛着を持った順剤を育む。
また町内会や商店会などの従来型セクタ
ーのしがらみにとらわれないコミュニティづくりにつながる。
・ 市民が表現することの訓練につながる
②プロモーション施策への反映
・ 良質かつ実現可能なアイデアは、自治体の施策として実施することができる
③都市が内包する価値の分析材料
・ 市民との恊働によるアイデアを専門家が分析的な視点で見ることにより、
まちが内包している価値や課
題が可視化される
・ ワークショップ・プログラムを繰り返すことで、シビックプライド醸成に向けたプロモーション施策と
して活用できる
従って自治体にとっては、下記のようにシビックプライド・ワークショップを戦略的に活用することがで
きる。
① プロモーション施策以外の事業、施策への反映
・ 行政と市民の恊働による新たな地域活性プランへの発展的展開の可能性があり、
新たな恊働プロジェク
トの発足が見込まれる
② 自治体内部への反映
・ 自治体の戦略立案時の事前リサーチとして利用できる
・ 自治体職員の研修プログラムとしても活用できる
■四国における「シビックプライド講座」の開催について
平成 22 年度の四国経済産業局による「シビックプライド講座開催事業」は、シビックプライド研究会(代
表:伊藤香織/東京理科大学建築学科准教授)との恊働で行った。
開催場所は、四国経済産業局との協議の末、下記の2都市で開催した。
1) 愛媛県松山市
2) 愛媛県西条市
実施日時と会場は、下記のとおりである。
1)松山市:2011 年 2 月 20 日(日)13〜17 時@椿の湯 2F 会議室(道後温泉)
2)西条市:2011 年 2 月 21 日(月)14〜18 時@西条産業情報支援センター2F 会議室
講座の実施に当たっては、シビックプライド研究会メンバーが参加し、講義とワークショップ全体のファ
シリテーションを行ったほか、グループワークにおいては、各グループにメンバーがひとりずつ加わりグ
ループごとのファシリテーションを行った。
各都市の講座参加者は次のとおりである。
1)松山市:参加者 25 名/研究会メンバー5 名
2)西条市:参加者 27 名/研究会メンバー7 名
シビックプライド研究会の参加メンバーは下記のとおり。
伊藤香織(東京理科大学建築学科准教授)
紫牟田伸子(デザインプロデューサー/株式会社日本デザインセンター)
韓亜由美(ランドスケープアーキテクト/StudioHanDesign 主宰)*西条市のみ出席
太田あゆみ(読売広告社都市生活研究所)
田井中慎(広告プランナー/4CYCLE 主宰)
武田重昭(兵庫県立人と自然の博物館研究員)*西条市のみ出席
仲村明代(九州大学芸術工学府大学院博士課程)
■ 各都市におけるシビックプライド講座の概要
それぞれの講座の議事進行については、添付の「実施報告:松山市」および「実施報告:西条市」を参照
されたい。ここでは講座設計の経緯と実施概要を述べる。
◎ 愛媛県松山市
松山での開催は「いよココロザシ大学」との共催となった。いよココロザシ大学は「誰もが先生、誰もが
生徒、どこでも教室」のコンセプトで運営されている NPO 法人である。
いよココロザシ大学との事前のやりとりの中で、道後温泉の最大の観光資源である道後温泉本館が、老朽
化のための改装が必要だが、あまりに大きな観光資源なので、仮に改修工事が行われた場合、改修期間は
5〜11 年ほどかかると予想され、現在9万人と言われる観光客が1万人にまで減るという試算があるとい
うことがわかった。
そこで、道後温泉本館は、現時点で市民が誇りを持っている場所であり、観光産業の中心をなしているが、
もし仮に「道後温泉本館が改修工事に入ったら」という仮定で、道後温泉本館に代わる観光資源の開発や
発掘、道後温泉 〜松山市内までの広域に渡っての地域活性
・経済活性に関わるプランニングを行うという
設定にすることにした。
講座の流れは下記のとおりである。
13:00〜 開会
13:05〜13:20 自己紹介と松山市のおすすめポイント(全参加者がコメント)
13:20〜13:50 シビックプライドと都市と人のコミュニケーションについて(伊藤香織)
13:50〜15:00 グループワーク「
“道後温泉本館”というシンボルがなくなったらどうする?
* 道後温泉の「シビックプライド」をどう表現するかがテーマ
* その後、グループ分けして、道後温泉をフィールドワーク
* カメラで「本館以外」の「シビックプライド」となりうるものを探して撮影するなど
15:00〜16:00 ディスカッション
16:00〜16:30 グループ発表
16:30〜17:00 まとめ
講座を行うにあたってのポイントは下記のとおりである。
・ 道後温泉の「観光」の多様化
・ 観光としての道後温泉と松山市内とのつながり
・ 道後のエリア性と活性の方策
・ シビックプライドを醸成する「シンボル」が欠如した場合の、新たなまちの編集の仕方
・ 「シンボル欠如」によるあらたなシビックプライドのよりどころの形成
・ 「シンボル」に対する考え方
グループワークを行うにあたってのポイントは下記のとおりである。
1) 「シビックプライド」の象徴であるものがなくなったら、ほかになにがあるかを考える
2) 松山から道後温泉までのルートの中に「宝物」があるかもしれない
3) 宝物があるとすればそれはなにか、どうつくるか、どう編集するか
4) 「外部の目」でおもしろがれること、
「内部の目」の掘り出し
5) 掘り出したものの「楽しみ方」を発信する方策を考える
実施状況については、添付の「実施報告:松山市」を参照していただきたいが、ここではとくに、ワーク
ショップ内で行ったフィールドワークの重要性を参加者自らも体感していたことを指摘したい。このこと
は、開催後に「いよココロザシ大学」が実施したアンケート調査結果から見ることができる。アンケート
調査では、参加者すべてから「たいへん満足」
「満足」という評価を得た。
「実際に現地を見て回ったこと」
「何気ない日常を見つめ直す大切さ」
「違った立場の人々と話せて楽しかった」
「話し合いの部分でどんど
んアイデアが出ていった」
「デリバリーという概念を理解できた」
「地域資源活用の可能性の多様性につい
て」
「まちの可能性の幅をどう広げるのかをたくさんの人と共有していく大切さと面白さ」
「道後温泉本館
の大切さを“無くなる”と想像して初めてわかった」などといった意見が多数見られた。
<実施者より>
「いよココロザシ大学」という、地域資源を見つめ直し、地域の仕事を評価しなおし、地域の良いところ
/改良すべきところを、個々人の創造力でつくりあげていこうとする NPO との共催であったことが、非
常に前向きな提案を多々生み出したといえる。参加者の通常の業務や社会活動の背景が異なるために、動
機はそれぞれだが、
「道後温泉本館のない道後温泉」をどうつくりあげ、活性化するかという具体的な設定
が、積極的なアイデアにつながったともいえよう。
本講座は半日しかなく、アンケート調査でも「今回は企画までだったので、プランニングしていくプロセ
スが知りたい」
「今回の内容を具体的に取り組む作業について」などを知りたいという参加者もみられた。
また、シビックプライド自体に対してももう少し深く知りたいという参加者もいたので、横浜市のような
連続講座や具体的な事案プロセスをワークショップ形式で行うなど、さまざまな展開が可能である。この
半日講座ではもったいないと思わされた。
◎ 愛媛県西条市
西条市での開催は、西条市役所が中心である。西条市は自然に恵まれており、産業も順調、切迫した人口
減や就業難といった問題を抱えている都市ではない。水や自然が豊富なために大手企業の工場もあり、農
業も盛んで、市民が楽しみにしている祭りもある。他方、観光には力を入れていないので、観光客はほと
んど来ないが、あらゆる点で生活に恵まれた状況にあり、切迫した都市再生を必要としている状況にはな
い都市である。
こうした都市でシビックプライド講座を行う意味について、西条市役所商工労政課とやりとりを行った結
果、西条市で行うシビックプライド講座では、何らかの課題を解決することではなく、西条市というまち
を行政と市民で見直す契機としてとらえ、未来の西条市を「よりよくする」ための“企画”を考えていく
ということとした。西条市役所として初めて行うワークショップであることもあり、市役所としては、こ
の講座をきっかけとして、新たに市民とのネットワークを構築したいという要望もあった。
そこで、今回のワークショップは、まちづくりのためではなく、
「愉しみながら、
“街を知る”
“街を伝える、
届ける”
」部分を主体とし、これから起こりうるであろう化学反応(それぞれの参加者の持つ想いや能力の
反応)を促進するための触媒となることを目指して構成した。
講座の流れは下記のとおりである。
14:00 開会
14:05〜15:00 グループワーク①(ディスカッション)
「お互いを知ろう」
「西条のいいところ」
*5 グループ(あらかじめ分けておく)
*各グループにシビックプライド研究会メンバーが1名ずつ参加。グループのファシリ
テーターとなる
*ポストイットに話されたことを書いていく
15:00〜15:30 グループごとの話題を発表(西条市の参加者より代表1名が話す)
*話題を5つチョイス
15:30〜15:50 シビックプライドってなんだろう
〜都市が人とコミュニケートするということ
(伊藤香織)
15:50〜16:00 休憩(休憩中に“この話題について話したい”という人がグループを形成
16:00〜17:30 グループワーク②(企画会議)
・5つのグループでそれぞれの話題について「企画会議」を行う
*ポストイットにアイデアを書いていく
17:30〜18::00 グループごと発表(西条市の代表者1名が発表)
18:00 終了
講座を行うにあたってのポイントは下記のとおりである。
・ 「市民」のとらえかた
・ 風景、イベント、モノ(企業)
、食べ物(企業)などがまちと人の気持ちに果たす役割の認識
・ シビックプライドとコミュニケーションがもたらす未来(移住や仕事の発生などなど)の醸成
・ 「これでまちがどうなったら、どう楽しく、よりよくなるのか」に対する共有
・ 現状の「まちの資産」の有効な活用と、未来に「まちの資産」になるものを見出す
・ 次年度以降の、こうした「講座」あるいは「集まり」に対する意欲を醸成する
グループワークを行うにあたってのポイントは下記のとおりである。
1)それぞれの人々の活動を認知する
2)それぞれの人々が持っている課題を共有する
3)それぞれの立場で人々の課題に対してなにができるかを考える
4)西条市を「もっと楽しく」
「もっと好きになる」方策を考える
5)西条市のよいところを倍増させる
6)西条市が「もっと楽しく」
「もっと好きになる」方策を西条市内外に伝える方法を考える
実施状況については、添付の「実施報告:西条市」を参照していただきたいが、ここではとくに、最初の
ブループワークから導き出された「5つの話題」について触れたい。5つの話題は、下記のとおりである。
A:西条に行かないと手に入らないものづくり→ものづくりで西条を楽しくする
B:人があつまる、人がつながる、景観の活かし方→人がふれあう景観づくりで西条を楽しくする
C:外から人を呼び込める西条にしたい→人を呼び込むことで西条を楽しくする
D:食文化で地元の人が西条を知るツールをつくりたい→PR ツールづくりで西条を楽しくする
E:農の視点で西条を楽しくする
これら5つの話題は、それぞれ生活や仕事と直結するものを選んでいる。西条がもつ資産を活かして、さ
らにビジネスにもつながるようなアイデアが出てきたことにも注目したい。講座後、
「行政と市民が集まる
機会がなかったので、楽しかった」
「人が集まっていろいろなアイデアがでた」と、楽しかったという感想
が多々聞かれた。また、松山同様、
「デリバリーという概念を初めて知った」
「つくって終わりではなく、
つくって始まるというデリバリーの考え方は重要だと思った」など、
「デリバリー」という概念の説明は深
い印象を与えたようであった。
なお、市役所と市民とのネットワーク構築のため、講座修了後、アンケート調査は行わず、直ちに、西条
市役所主催で交流会を開催することとし、現在、市役所の呼びかけにより、参加者間のメーリングリスト
が立ち上がったところである。
<実施者より>
初めての試みだったが、グループワーク①で人々がネットワークされ、グループワーク②で具体的な事項
について話されて、具体的ではないものも多かったが、非常に活発な意見交換が見受けられた。
「契機とな
る」という目的はある程度達成されたと言えるだろう。ただし、松山同様、半日の講座では、企画を話し
合う段階で終わってしまい、企画を練り上げたり、構成していく時間はなかった。しかし、講座を通じて、
景観を考えることからのビジネス、農を考える観点からのコミュニティ・ビジネスなどのアイデアが続々
と出たことが特徴である。講座設定の関係上、話題は多岐にわたり、広く浅くなったが、これにさらにフ
ィールドワーク(景観や工場訪問、農家訪問、ショップまわり)などが取り入れられると、さらに興味深
い結果をもたらすことになったのではないかと思われる。また、参加者も、企業関係者や工場主などが加
わると、ものづくりを含め、多様なアイデアが出る「企画会議」となるだろうと思われる。
可能であれば、引き続きこうした市民と行政が恊働できる場(講座)を続けていくことができれば、コミ
ュニティ・ビジネスや個々の企業のビジネスのアイデアや、産業人材育成、観光産業などの具体的な実施
プランや施策プランが生まれていくだろうと思われ、市民どうしのより緊密なネットワークに発展するだ
ろうと思われる。
■ シビックプライド講座の今後の可能性について
◎ 総括
松山と西条での講座開催は、いくつかの点で対照的である。講座の発生の仕方という点では、松山が NPO
との開催に対して、西条では行政主導だということがある。この違いは、松山での参加者はすでにそれぞ
れのネットワークを持ち、さまざまな活動を行っている人々が多いということであり、逆に西条で集まっ
た参加者はこれからの活動のポテンシャルを秘めた人々であるということでもあろう。松山ではいわば、
シビックプライド講座がなくともいよココロザシ大学という基盤を通じて、シビックプライドを醸成する
ことができるので、引き続き講座を行うとすれば、いよココロザシ大学の中の一講座として行われる可能
性がある。また、それに対して行政側も市民をサポートしやすい環境がすでにあると言えるだろう。他方、
西条市では、行政はあくまでも住民に対するサポートの側であり、市民側とのネットワークを、この講座
をきっかけにして築いていくことになるだろう。
また、松山では松山市在住者のみならず今治市や坂出市(香川県)などの周辺都市からの参加者もいたのに
対して、西条市では西条市在住者のみであった。西条市はもともと観光客が少なく、まちを客観的に見る
経験値が少ない。従って西条こそ、部外者とともに自分のまちを見直してみるということも必要ではない
かと思われた。部外者だけでなく、今回のように「違うタイプの人と話す」ということは重要な動機付け
になると思われる。例えば主婦どうしの会はあっても、農業や工業の人たちと同じひとつの話題を話す機
会は西条と同様のまちでは少ないのである。民間の参加者のポテンシャルは高いと思われるので、今後、
民間も行政も含めたうえで、多様な人々が入り交じって西条が人とどうコミュニケートしていくかを考え
る機会があると良いと思う。
ワークショップの実施に関しては、松山が具体的なひとつの話題をグループごとに討議したのに対して、
西条では多様な話題をグループごとに討議したことは、当初より意図していたことではあった。都市それ
ぞれが抱える何らかの課題を抽出するとすれば、松山(とくに道後温泉)では、
「現状のシビックプライド」
のあり方と「未来のシビックプライド」のあり方、すなわち、都市として過去の遺産に寄りかかるのでは
なく、未来に積み上げて行くさまざまな可能性のほうを論議した。この、非常に具体的なテーマ設定は、
シビックプライドを理解してもらうには好都合だったといえるだろう。
西条においては、
テーマをむしろ、
参加者の側から提供してもらう構造を取った。そのことで基本的なテーマが5つほど見えてきたわけであ
る。それぞれのテーマに関しては、これからの討議できるきっかけとなればよいと思う。
また、伊藤氏による「シビックプライドについて」のレクチャーの中で、多くの人々が反応した部分は、
「デリバリー」である。デリバリーとは、たとえば建物が出来上がることを日本語では「竣工」と言い、
あたかもそれが到達点のように思われるが、海外では竣工を「デリバリー」と言う。つまりこれは、出来
上がったものを「これから使ってください」と手渡すことであり、
「出来上がったから終わり」というわけ
ではない。このことに松山でも西条でも「竣工はつくり手の言葉」
「人に伝えるということの重要性」など
と、大きな反応が合ったことは無視できないと思う。
◎ 今後の展開可能性について
シビックプライド講座はまちづくりのワークショップとしても機能するが、四国経済産業局の目指す、四
国基準の働き方や仕事、小さくとも豊かな産業のあり方を話し合う機会としても非常に有効である。
ひとつには、
「地域ならではのコミュニティ・ビジネス」の可能性である。多くの人々がそれぞれの立場か
ら、もうひとつの自分の立場を見出すことは、現代では当たり前のことになっている。それがボランティ
アではなく、収入をもたらし、自らの仕事として誇りを持てることは、新たな産業を生み出すだけでなく、
地域としての新たな誇りを持つことに他ならない。コミュニティ・ビジネスにおいては、
「自分が何かすれ
ば」
という気持ちを起こさせる必要があり、
自分たちがもっとクリエイティブになれるということを知り、
気持ちを変えていくことが必要だ。
もうひとつは、その地域でしかできない、あるいは「その地域だからこそ生まれたビジネス」の展開であ
る。たとえば、西条市のワークショップでは、
「野菜の洗い場」というアイデアが生まれた。西条市でつく
られるマンションには「野菜の洗い場」がある。これは全国に広げられるビジネスアイデアでもあり、具
体的なものに落とし込む過程で、ビジネスへと転化していく、
「アイデアの素」がこの講座から生み出され
る。シビックプライド講座は、たんなる社会実験の講座ではなく、具体的に、市民がクリエイティブに発
想し、クリエイティブにビジネスを起こしていくきっかけづくりである。
海外事例を紹介すると、
「都市プロモーション」の側面ばかりが目につくようだが、実際に都市プロモーシ
ョンをする狙いとは、産業誘致、観光客誘致、仕事の創造と人材誘致(クリエイティブな発想でビジネス
チャンスを広げられる人)にあるのである。こうしたことから、たんに実験的な講座としてではなく、具
体的にビジネスチャンスを生み出す「装置」としてのシビックプライド講座は、四国でも活用できうると
思う。
松山と西条はそれぞれ、シビックプライド講座という仕掛けに興味を持ち、実際に半日講座をトライアル
してみた都市であるが、今後、どちらかといえば、西条市はシビックプライド講座を継続させていくこと
に意義があると思われる。先に述べたように、松山の NPO 法人「いよココロザシ大学」は、すでにシビ
ックプライド講座で伝えたいことをすでにある程度実行している部分がある。そのため、具体的に「どう
デザインすればよいのか」という、
「プランニング」
「デザイニング」の部分を今後、展開していくことが
可能だ。一方、西条はいよココロザシ大学のような活動として、シビックプライド講座を活用することが
できると思う。
今後、四国全土にシビックプライドという概念、デリバリーという概念、コミュニケーションという概念
が、四国の仕事づくりや働き方、新たなビジネスの創出という点で活用していくならば、松山や西条のケ
ースをテストケースとしたツール(ミニパンフなど)をつくり、コミュニティ・ビジネスの具体的な方策
づくりのワークショップとして開催、地域ビジネスの企画会議、観光・景観サービス醸成のためのワーク
ショップなどといった具体的な目的に応じた講座として広めていくことができるのではないかと思われる。
「地域ブランド」や「コミュニティ・ビジネス」などの地域産業に関わる講座として、市町村を招待して
の、松山や西条での引き続きの講座開催という展開もあるかもしれない。
いずれにせよ、四国全体でさまざまな地域のシビックプライドが醸成され、四国全体が楽しく、活性化す
ることを望んでいる。
<資料1> 実施報告:松山市
いよココロザシ大学研修会 vol.3「シビックプライド講座」
【日時】 2011 年 2 月 20 日(日)13:00〜17:00
【場所】 道後温泉椿の湯2階会議室
【人数】 31 名(受講生 25 名、研究会メンバー5 名、四国経済産業局 1 名)
■ スケジュール
■自己紹介
自己紹介として、名前、出身地、講座に期待すること、
松山のおすすめスポット等について受講生に発表しても
らった。出身は松山の他、今治、新居浜、南与八幡浜、
宇和島や県外からも数名の参加があった。
松山のおすすめスポットとしては、道後温泉や市内にあ
る公園、松山城などが挙げられたほか、受講生の職業や
活動に関するスポット等も紹介された。
道後温泉/城山公園/鹿島/伊佐庭神社/愛媛大学/伊
予山の辺の道/県庁舎/子規記念博物館/堀之内公園/
三津港
■講義
グループワークに取り組む前に、受講生に「シビックプ
ライドとは何か?」
「グループワークの際にどういったと
ころに注目すると良いのか」についてより理解を深めて
もらう必要があると考え、レクチャーの時間を設けた。
講師はシビックプライド研究会・伊藤香織(東京理科大
学建築学科准教授)
。
「シビックプライドと都市と人のコミュニケーションに
ついて」20 分ほどのレクチャーが行われた。
■テーマ発表、全体ディスカッション
今回のワークショップのテーマは左のとおりである。
このテーマに至った経緯・背景についての説明が田井中
氏よりなされた後、各テーブルにてディスカッションが
行われた。
2011 年 1 月 17 日の朝日新聞より、道後温泉が全国 5 番
目に人気のある温泉街であると紹介されているように、
街全体が温泉のまち、という印象である。人気の理由と
して、街の雰囲気を好むという理由が 82.9%を占めてい
る。その1週間後に、道後温泉本館の修繕に踏み切れな
い、という内容の記事があった。道後温泉本館は老朽化
もあり改修工事が必要なのだが、そのためには 5 年半、
入浴客が最も多い「神の湯」を利用できなくなり、この間は入浴客数が 9 割も減少すると見込まれている。
また、改修予算も五 〜数十億と高い。そのため、改修をいつすればいいのか、という問題が出てきている。
伊藤氏の講義の中で紹介された、9つのコミュニケーションポイントの中には「建築物」も挙げられてい
る。道後温泉本館は、まちと人が「コミュニケーションするポイント」であり、だからこそまちのシンボ
ルなのではないか、ということを参加者と共有し、このまちのシンボルである道後温泉本館がなくなった
時、このまちのシビックプライドとはなんだろかということについて、まずはディスカッションを行って
もらった。
ディスカッションの前に
(例えば、紫牟田さんならどんなことを考えますか?)
紫牟田:これを契機に人の流れを別のところに移動させたり、回遊させたりできないだろうか。あるいは
改修工事自体がとてもおもしろいプロセスで発信される。別の建物をつくるわけにはいかないので、他の
コミュニケーションポイントと組み合わせて違うものをつくっていく。
(地元の人間としてはどう思われるか? )
大仲:城の改修など、改修そのものをイベント化している例を参考にする。
森:本館とは、道後温泉街の人たちが頼りきっている場所。新しい観光資源を発掘していかなくてはいけ
ない。回遊性のある町、滞在型の観光地、周辺の観光資源を開発する必要がある。
中島:本館がなくなると温泉地の雰囲気を味わえなくなる。地元の人たちに危機感をもってもらえるよう
な考え方を共有したい。どうしてもお客さんは減ってしまうのだから、そういった厳しい状況を乗り越え
るための気持ちを醸成するがあるのではないか。
また、ここで改修に必要な期間について「5年ではなく 11 年」という指摘があったため、これ以降、改修
期間を 11 年に改め、ディスカッションを行った。
全体ディスカッション
4つのテーブルに研究会のメンバーが一人ず
つグループごとのファシリテーターとなり、
テ
ーマについてディスカッションを行った。
(20
分程度)
・グループ A(紫牟田)
・グループ B(太田)
・グループ C(田井中)
*開会当初から自由に席についてもらったの
で、ついた席ごとのグループで行っている。
・ グループ D(伊藤)
グループ A
健康、食、温泉の魅力の回復について議論した。二度目に道後に来
てもらうためにはどうすればよいか。道後温泉本館というのは、
様々な源泉から湯を引いていることで成り立っている。つまり、地
域全体が道後温泉である。改修が行われているからこそ見ることが
できる本館の様子を見せる方法があるのではないか。
グループ B
なくなることがニュースである。新しいものを取り入れるにはどう
すればよいかについて話し合った。例えば、本館改修のプロセスを
見せることをひとつの提案である。道後の歴史文化、健康にいいお
湯を使った体験プログラムをつくる。松山の人情に触れるような機
会、例えば民泊など、人に触れる体験プログラムをつくる等。
グループ C
議論で松山市の内の目と外の目の2つの視点が明らかとなった。市
内 vs 道後。市内の人は道後温泉を自分たちのものと感じたことが
ないのではないか。だとすれば、これから 11 年間は道後温泉を自
分たちのものとして捉え直すチャンスではないか。一方で、よそ者、
うち者の二項対立ではなくて、両者をつなげるためには、フードな
どを使って何かできないか。また、ディズニーランドの経営に倣い、
完成しないまちづくり、未完の道後温泉をつくっていこうという意
見も出された。
グループ D
道後温泉本館に代わるものはないと考えた。3、5、10 年ではもの
の考え方が大きく違う。道後温泉は先代から残してもらったもので
あるとすれば、今度は我々が孫やその先に残すものをつくるといい
のではないか。危機を共有する機会として何かを起こそうではない
か。具体的にはいくつか事例が出てきていたが、例えば 10 年前か
らやっている「言葉の力プロジェクト」等。また、瀬戸内国際芸術
祭は市民が盛り上げていったように、下からの盛り上げを考えたい。
■グループワーク
テーマに基づいて、街歩きをしながら松山
のシビックプライドを維持・醸成するコミ
ュニケーションポイントを各グループで見
つける。
また、その後街歩きで見つけたコミュニケ
ーションポイントを活かすプログラムにつ
いて企画・検討を行った。
(街歩き、ディスカッション共に約1時間
程度)
街歩き
各グループとも、道後温泉本館界隈だけでなく、駅前広場、
商店街、伊佐爾波(いさにわ)神社や道後公園などを歩い
た。またそれぞれに温泉組合の方やボランティアガイドの
方がメンバーの中にいたので、彼らが案内人となって歩い
て回れることができたグループもあった。
グループディスカッション
街歩きの後、見つけたコミュニケーションポイントや気が
ついたことなどを議論しながら、プログラムを企画・検討
する。模造紙にアイデアやキーワードを書き出しまとめて
いく。
街歩きを行ったことで見えてきた現状把握や問題点の洗
い出しから始めるグループもあれば、まちで見つけたポイ
ントからコミュニケーションをどのように誘発させてい
けるかについて考えるグループもあり、そのプロセスは
様々であった。1時間ほどのディスカッションを経て、次
のグループ発表が行われた。
グループ発表
各グループで話し合われたことが発表された。以下に各グループの発表をまとめる。
グループ A
道後と松山市の中心部が分離していることが問題点とし
て。そこをどのように回遊してもらうかについて話し合わ
れた。対応策として、俳句、お遍路、接待など松山にゆか
りのあるものでつなげていくことが提案された。一番に重
要なことは、改修することによる市民の「復興」の気持ち
を高めて行くことであるとした。また、訪れた人に応援し
てもらうことでその気持ちをさらに高めることの重要性
についても指摘された。松山にいる 200 人ほどのボランテ
ィアガイドを語り部として活用することや、大学生など若
者の力も必要である。例えば、若者に人力車を引っ張って
もらう、環境対応の自動車やレンタサイクル等の移動手段
を使って回遊する等。またその際、ボランティアガイドに
同行してもらい、一般市民に松山の良さを伝える役割を担
ってもらうといったアイデアが提案された。
グループ B
「本館がなくなっても大丈夫!」というスローガンを立て、
新しいプログラムの導入を提案した。道後温泉の美容に良
い効能を押し進める、ネオン街の坂の端でおばあちゃんの
料理教室を開く、パワースポットとして神社を巡る等、本
館以外の道後の魅力でどんどん推す提案がなされた。また、
「喪失感を楽しむ」という言葉を用い、本館がなくなると
観光客が減少するかもしれないが、本館以外にも勝負でき
る資源がたくさんあるのだという気づきを示した。結びに、
それらの資源をいかに見つけ出し活かすかが、本館がなく
なったときに松山市民が試されるときであるということ
が示された。
グループ C
道後温泉の改修期間 11 年を回避することは難しいという
ことを示した上で、より街全体を見た周遊性のあるものを
求めるという提案がされた。例えば、公式のマップにはな
い、市民だけが知っている情報が載ったゆるい観光マップ
やリアルな松山の魅力を伝えるマップ等。また、先のディ
スカッションで問題とした道後と市民を結ぶという点に
ついては、市内電車に注目し、観光客も市民も楽しく行き
来できるコンテンツに変えることが示された。例えば、沿
道でのイベント、ちんちん電車で宴会等。自動車ではなく、
市内電車と徒歩でスローな松山を楽しむ提案。名前は、
「松
山 MY トレインプロジェクト」
。松山全体の移動手段を魅
力的に示し、演出する。ケータリングや屋台としての市内
電車の活用。最終的には、市内の商店街との連携まで考慮
した交通コンテンツを企画することが示された。
グループ D
問題点として、ホテルの連携がない、歩いて楽しくない、
非日常が演出されていない、過ごし方がわからない、マッ
プとのギャップがあること等が挙げられた。それを踏まえ
て街中で発見したヒントとして、玉の石、アーティスティ
ックなもの、健康に良い足湯等であるとした。提案は、そ
れらを、アート作品を巡るように設定にすることである。
マップも手触り感やストーリーが必要であるとし、露地の
楽しさ、ネオン坂、伊佐爾波神社からの眺め等が活用でき
るとした。さらに、足湯を活かした物語性のある周遊コー
スを提供することで、観光客に対して非日常を演出し、そ
こでのコミュニケーションを喚起することなども示され
た。
また、観光客だけではなく、市民も客として誘導することも考え、市民が入りやすい足湯やホテルにする
ためには、やはりアートや音楽がきっかけになるとし、最終的にはそれらをきっかけに道後温泉に行くこ
とが、松山市民のライフスタイルになるようなイメージを描いた。いよココロザシ大学の講座もそのひと
つとした。11 年という期間を考えると、毎年毎年を積み重ねていくプロセスのデザインが必要であると
した。
<資料 2>「いよココロザシ大学によるアンケート集計結果
2011年2月28日
いよココロザシ大学研修会 vol.3「シビックプライド講座」
アンケート結果
【日 時】2011年2月20日(日)13:00
〜17:00
【場 所】道後温泉椿の湯2階会議室
【人 数】25名
【回答数】23名(92%)
【講 師】シビックプライド研究会(紫牟田伸子、伊藤香織、田井中慎、太田あゆみ)
【主 催】経済産業省 四国経済産業局
【共 催】NPO 法人いよココロザシ大学
【後 援】松山市
【協 力】シビックプライド研究会
①本日の「授業」の満足度を教えてください。
大変満足した【9】
満足した【12】
物足りなかった【0】
よく分からなかった【0】
②「授業」の中で印象的な内容はありましたか?
あった【19】

様々な提案ができて、楽しかったです。更に松山が好きになりました。

常信寺に行った際、杉浦氏の石碑を発見。森さんから説明を受けた紫牟田さんが案内人になっ
た。

メンバーの思考プロセスが解け合っていた点。

シビックプライドの概念。

新潟市のまちづくり事例。

実際に現地を歩き回ったこと。外に出て感じる事が多々あった。

講座の作り方。

何気ない日常を見つめ直す大切さ。それらの作業に関わる仲間の大切さを感じました。

街に対する思いの温度差をどうするか?には、やはり積み重ねが大事と思った。

「デリバー」という考え方。
「竣工」は作り手の言葉。

「シビックプライド」は「郷土愛」とは違い「街の気分をつくる」こと。

足湯。

ブレーンストーミングで色々な方の意見が聞けたこと。

Iamsterdem

新潟市の商店街のポップな成功例。

待ち歩き。
無 い【2】
③「授業」の中で、もっと詳細を知りたい内容がありましたら、教えてください。
あった【13】

シビックプライドの本を購入してもっともっと勉強したいです。

海外の事例。









シビックプライドについて。
伊藤先生のお話をもう少し聞きたかった。
日本の中核市における他のシビックプライドの取り組みの具体例。
今回の内容を具体的に取り組む作業について。
市民にシビックプライドを持ってもらう方法。
ポートランドと新潟市の事例。
「デリバーする」という概念。
コミュニケーションの事例を変えた手法。
ワークショップがアイデア出し→企画までだったので、プランニングしていくプロセスが知り
たい。
無 い【5】
④本日の授業であなたが、
「学んだこと」を教えてください。
あった【20】

発信するだけでなく、その結果を届けることが大切だということ。

議論、発表の仕方、協調性。

シビックプライドの本質的なところ。

街歩きは楽しい。

自分の考え方に無い考えを教えてもらった。

再発見と創造。

物事を多角的に見ることの重要さを学んだ。

地域資源活用の可能性の多様性について。

市民に伝えていく大切さ。

シビックプライド=人とのかかわり合い。

色々なアイデア。

市民が中心となり、自らが主役のシビックプライドの重要性を感じることができました。

毎日の積み重ね。

楽しみながらやる!考える!

道後温泉本館の大切さを「無くなる」と想像して初めて分った。

灯台下暗し。

「シビックプライド」は「郷土愛」と違う「街の気分をつくること」
。

自分の無知を良く知れた。他者の意見を理解するのを頑張りました。

住んでいる人に、いかに自分の街に興味を持ってもらうか?に尽きる!

たくさんの視点が聞けて「道後」を考えることができた。

街の可能性の幅をどう広げるのか?をたくさんの人と共有していく大切と面白さ

結局は「人」であること。
無 い【0】
⑤他の受講生と交流はできましたか?
あった【18】

違った立場の方々と話せて楽しかったです。

話し合いの部分で、どんどんアイデアが出ていった。

この後の懇親会でしたいです。

話しができた。

ぶらぶらと歩きの中で人が見えてきた。

グループワークにより、意見交換ができた。

多くの人の異なる考えに触れる事ができた。

会話する程度でした。

色々な方の意見が聞けてよかったです。

待ち歩き。

ワークショップ作業。
無 い【0】
⑥先生の教え方はいかがでしたか?
非常に分かりやすかった【7】 分かりやすかった【14】 専門用語が多かった【0】 難しかった
【0】
⑦今回の参加費用について教えてください。
有料でも良かった【3】
授業料相当【0】
もっと安価が妥当【0】
無料相当【9】
⑧あなたの年齢、性別、居住区などを教えてください。
【年 齢】 20代【3】 30代【8】 40代【8】 50代【2】 60代以上【2】
【性 別】 男 性【16】
女 性【7】
【居住区】 松山市【17】
今治市【3】
その他松山市【2】
【会員情報】 正会員【6】
賛助会員【2】
⑨授業をより良くするアイデア、今後実施してほしい授業など、自由にお書き下さい。

時間が短かった。

講座のスピードが早く、もっとじっくりと「シビックプライド」について知りたいです。

現在、取り組んでいる事業についての題材だったので、大変良かったです。

交流から生まれる「もの」を、つなげていく必要がある。

有料でも良かったです。
2/20「シビックプライド講座」アンケート結果【先生】
①本日の「授業」の満足度を教えてください。
大変満足した【1】
満足した【2】
物足りなかった【0】
不満足だった【0】
②「授業」の中で印象的な事項はありましたか?
あった【3】

ココロザシがみんな、同じであること。

失う事で初めて気づく都市への愛着。今後の日本的シビックプライドを考える際の大きなヒント
を得た。

短い時間でも参加者の人たちが道後温泉を自分たちの問題として捉え直し始めたことの変化。
③「授業」をするまで、不安・心配だったことはありますか?
あった【3】

ぶっつけ本番の、どんな人がくるか。

自分が松山を知らないこと。

コミュニケートできる言葉を皆で共有できるかどうか。
④本日の授業で先生が、
「学んだこと」を教えてください。
あった【3】

現場のパワー。工夫。それぞれの考え方や態度。

短い時間でも参加者の人たちが道後温泉を自分たちの問題として捉え直し始めたことの変化。

今後の日本的なシビックプライドを考える際の大きなヒント。地域の人と待ち歩きを通した気づ
き。
⑤生徒と交流はできましたか?
あった【3】

多様な専門の方がいらしたので、それぞれに。

とてもたくさんのことを教えていただきました。
⑥授業開発について教えてください。
思い通りに開発できた
良い助言を受けられた【1】
一時悩んだ【1】
⑦授業中、実は(ああすれば良かった・・・)と思った時はありましたか?
あった【2】

時間管理。課題設定の甘さ。

考える時間の余裕が少なかった。
無 い【1】
⑧授業終了後も「継続」して学べる、先生の授業要素(特徴)は何ですか?

具体的なプログラム作りの支援。
⑨授業をより良くするアイデア、今後実施したい授業など、自由にお書き下さい。

具体的なプログラム作り。
難しかった
2/20「シビックプライド講座」授業コンサルティングシート結果
①先生と生徒は自由に意見交換していたか?
5
4
3
(具体的に)6〜7人に1人の講師&街歩きができて良かった。
2
1
②生徒同士が意見交換などをしていたか?
5
4
3
(具体的に)良いメンバーがバランスよく行っていた。
2
1
③(準備物、当日スタッフも含め)授業は円滑に進行したか?
5
4
3
(具体的に)時間延長、準備不足。
2
1
④授業の中で参考になった点はあったか?
5
4
3
2
1
(具体的に)良い参加者を分割バランスよく揃えることが大事。街の活動状況を知っているいよココロ
ザシ大学さんに助けられました。
⑤授業の中で(こうしたらもっと良くなる)という改善点はあったか?
5
4
3
2
1
厳しいかもしれませんが、2日連続講座にして、2日目は本館の改修作業に入るには何をして、どうい
う状態にしておけば良いのか?までやれれば良かった。
⑥授業終了後も継続して「学べる」
、要素や特徴を感じたか?
5
4
3
(具体的に)
2
1
以上
(記入者)
川井保宏(経済産業省 四国経済産業局)
<資料 3>実施報告:西条市
愉しみながら街を知る、伝える、届ける「シビックプライド講座」
【日時】 2011年2月21 日(日)14:00〜18:00
【場所】 西条産業情報支援センター1 階交流サロン
【人数】 37 名(受講生 27 名、研究会メンバー7 名、四国経済産業局+西条市役所 3 名)
■スケジュール
•
■グループワーク①:自己紹介
予め割り振られたグループに分かれ、出身地、西条在住歴や移住してきた参加者にはその理由、西条市で
の現在の活動ややりたいと考えていること、西条の好きなところなどについて、インタビュー形式で自己
紹介し合う(40 分程度)
。
[お手本として、山崎泰輔さんに田井中氏がインタビュー]
富山県出身で去年から西条に。富山、仙台、東京に出向した次に西条へ来た。生まれたところも水が綺麗
で西条と重なる部分がある。この一年間は居心地良く過ごすことができた。西条市で実現したいことは、
農家の人と関わりを持ち、現場に入ることで生の声を聞き技術を学び、それを東京に持ち帰りたい。農業
を元気にしたいと考えている。
また、自己紹介と同時に、西条の良いところについてのディスカッションも行われた。自己紹介から見え
てきた参加者の活動に関するテーマからも考えることで、参加者が西条についてどういった点に注目して
いるのか、何を問題として捉えているのか等を把握するためのディスカッションでもある。このグループ
ワークで話し合われたことは、後半のグループワークのテーマ決めの参考にもなった。
■グループワーク①のシェア
グループ A(太田)
田坂:このグループは西条生まれ西条育ちが3名、香川出身
で東京住まいの人が1名。今西条で自転車がはやっていると
いう話題になった。そこで注目されたのは、OEM。メーカー
は東京にでも生産しているのは台湾だとか中国ということが
ある一方で、工房に行って職人の方と相談しながら自分だけ
の自転車をオーダーするやり方が機能以外に+α満足を得ら
れるという点に魅力があるとした。例えば、さぬきうどんや
じゃこ天についても同じことが言えるのではないか。店の人
と話しながら揚げたてのじゃこ天を食べる。ものづくりも、
そういう実際その場所に行って味わうというようなところに
ヒントがあるのではないか。
グループ B(韓)
高橋:景観的にも水辺の仕掛けなどいいものがある西条だが、
新しい人が訪れない、立ち止まらない、コミュニケーション
が生まれないことが指摘された。また、西条の人たちの人と
なりについては、西条の人は団結力があり、やさしい、親し
いが、外の人から入り込みにくい一面もあることが話された。
その話の流れから、景観の中で人と人が出会い、コミュニケ
ーションが生まれるような仕掛け作りについて注目した。昔
「うちぬき」が生活に密着しているときは、野菜の洗い場が
コミュニケーションの場であり、外から移り住んできた人も
生活の場ということで打ち解けやすかった。そういう場が西
条で新しく仕掛けられないだろうか。人と人、田舎の人が持
っている人の良さをアピールできるような提案がしたいとい
うことが示された。
グループ C(伊藤)
寺田:このグループには、広報やクリエイティブな活動をする
人たちが多く集まった。また西条を一度出た人や海外生活の経
験がある人が多いことも特徴的である。そこで注目されたのが、
西条の文化面について。美術館や博物館での催し物の広報やア
ピールの仕方が効果的でない点や映画館が無いこと(以前は 6
〜7 館あった)等が指摘された。そこから、仕事を超えて発信
していけるような、大人がまったりゆったり過ごせる場所や過
ごし方の提案を考えたいとした。また、西条市の、コンパクト
でいろいろそろっている点や日本の中でも特殊な地形をして
いる点等を活かしたいということが話された。
グループ D(紫牟田)
加藤:農業関係の人が2名。作って売る一貫したしくみを考え直す必要があるとして、米農家が減少して
も流通の仕方でカバーすることを考えている人、遊休農地で豚を育てて「西条ライスポーク」と名付けよ
うと考えている人がいた。食育というテーマから、市民にもっと水の良さを知ってほしいという意見も出
た。また現在、西条市を PR するポスターがないことが指摘され、お祭りなどのポスター以外に、
「これが
西条市だ」
、とアピールできるポスターをつくることで西条市のいいところをうまく発信できるのではない
かといったことが話し合われた。
グループ E(武田)
崎山:祭りが大好きな人が多かった。西条は非常にたくさんいいところがある。例えば、景観生態学が専
門の参加者の話では、西条はコンパクトな地形で、研究するには貴重な場所である。それを発信したいと
いう意見が出た。また、高校で甲子園に行った経験がある参加者もおり、西条高校が高校野球で優勝する
ことは市民の誇りになるのではないか、といったことが話された。応援したいという気持ちがシビックプ
ライドにならないか。また、地元好きが多く、その理由について知りたいという意見も出た。祭りなのか、
水なのか。合併したことによって地域の良いところが増えてきているので、それを活かしてどのように一
体感をつくることができるかについても興味があるという声も上がった。
■シビックプライド講義/伊藤香織
後半のグループワークの前に、思考のヒントとして「シビ
ックプライドとは」についての講義が行われた。
講師は、シビックプライド研究会・伊藤香織(東京理科大
学建築学科准教授)
。各地の事例紹介や、街を知る、伝え
る、届けるための「9 つのコミュニケーション・ポイント」
や「デリバリー」といった考え方についてのレクチャーが
行われた。
■グループワーク②
「西条でのくらしを楽しくする」ことを大テー
マとして、先のグループワーク(自己紹介とデ
ィスカッション)で挙げられたトピックを参考
に、小テーマを5つ設けた。各自、興味関心の
あるテーマを選択し再度 5 つのグループに分か
れ、
各グループには4〜6 名の受講生が集まり、
約 1 時間半、そのテーマについての企画会議が
行われた。
各グループのテーマとシビックプライド研究会
のファシリテーターは下記の通りである。
A.
B.
C.
D.
E.
西条に行かないと手に入らないものづくり→ものづくりで西条を楽しくする(紫牟田)
人が集まる、人がつながる、景観の生かし方→人がふれあう景観作りで西条を楽しくする(韓)
外から人を呼び込める西条にしたい→人を呼び込むことで西条を楽しくする(伊藤)
食文化で地元の人が西条を知るツールをつくりたい→PR ツールづくりで西条を楽しくする(太田)
農の視点で西条を楽しくする(武田)
グループワークで話し合われた企画等について、各グループの発表が行われた。内容は以下の通り。また、
各グループに講師として付いた研究会メンバーのコメントや補足についても合わせて記載する。
グループ A:ものづくりで西条を楽しくする/紫牟田
越智:西条ものづくり企画会議をすることが考えられた。西条市の中小企業が下請けという立場から脱し
ないといけないことや西条でのものづくりについての市民の認知度がないことが問題である。ものづくり
のまち西条という認識が薄い。農・工・商業高校を盛り上げたい。しかし、他のものづくりのまちとの差
別化はどうするか、どういったもので差別化できるかを考える必要があり、そのとき「水」をキーワード
にしたものづくりなども考えられる。例えば、水に注目した化粧水、衣料をつくる。また、現在小学生対
象のものづくり教室をしているが、もっとものづくりの楽しさを伝えるようなプログラムをつくる必要が
あるという意見も出た。
紫牟田:このグループでは、人材育成が次のステップに向かうためにはどうしたらいいかという話が中心
だった。西条の駅から会場までの道のり、西条市でつくられたもの、特に工業製品がまちのなかで見られ
なかった。また、西条のパンフレットもほとんど食べ物と自然の話で工業製品については情報が載ってい
ない。出荷額は高くても、どういうものづくりがあるのかは見えてきていない。そこが見えてくると良い。
農工商の下向きの雰囲気を上向きにするための種まきをしていく。常にデリバリーしていかなくてはなら
ない。どういったことが種まきになるかというと、人をどうつくっていくか、人とどう楽しさを共有する
のかということである。何をつくるのかではなく、どうものづくりの話を継承していくのかという話にな
った。それがものづくりで西条を楽しくすることだと思う。
グループ B:人がふれあう景観作りで西条を楽しくする。/韓
高橋:西条が持っているもので活かせるものは何かと考えたとき、野菜の洗い場に注目した。また庭づく
りの技術を新しく活用できないかと考えたときに、西条の里山の良さにも気づいた。その里山のすてきな
ところを町の中にひっぱってくることはできないか。そう考えたときに、今のまちには緑が少ない、鎮守
の森もないという問題があがり、まちの緑として里山の雰囲気をもってくることはできないか、というア
イデアが出てきた。
一色:中心にある泉はただ単にある池でなくて、野菜の洗い場である。野菜の洗い場というのは普通、個
人個人の家の裏手にあるが、それを近隣の家同士の井戸端会議の場としてあえて中心に持ってきて、その
周りに家庭菜園や田んぼがある。そこで実ったものを採って洗って食する。人とふれあうことができる場
所を、単なるきれいな公園ではなくて、農村と家と水とがつながるアイデアにした。西条には、石鎚の山
もあって、下ると干潟がある。山と海をつなぐ生活のあり方みたいなものをここで示せないかという思い
で図にした。老若男女が集える場所であり、自転車や徒歩で行けるコンパクトな場所にしたい。
崎山:景観作りというのは、見るということが中心であったが、人の姿そのものが景観ではないか、とい
う話の流れから、そのきっかけとなる場をつくりたいということが議論された。人がいる景色そのものが
西条の思い出になる。いつまでも頭の中に残っている、どこに行っても体験したことを忘れない場にした
い。場をつくる素材に西条は恵まれている。場には、歴史や必然性があり、物語が必要である。それがな
いと意識や思い出に残らない。だから、西条の素材を使うことで物語ができる。例えば、野菜の洗い場の
周りには、里山の西条らしい木や草が生えていて、食べられる草や実がなっていて、そこに来た人が摘ん
で水で洗って食べる、というような物語があるというイメージをみんなで共有した。
高橋:一つの例として、まちのまん中である場所に新しいスーパーやマンションができたとき、きれいな
玄関にするのではなくて、洗い場をつくる、広場をつくる、側に田んぼをつくる、食べられる環境をつく
るという提案がある。洗い場にもしゃべれるような場所を付属させる。実現するためには、行政に補助金
制度をつくってもらいたい。
韓: 今日初めて西条に来て、水の美しさをうらやましく思う気持ちがある。80 年代に行われた水辺の整
備計画は残念な感じが残っている。そういうことを反省して、そうではないやり方を模索するべきである。
日常の中に手が届く風景をつくっていく。すぐできるようなことをすべきである。景観といったときに絵
はがきにできるような美しさではなく、そこに関わる人や訪れる人が関われるような場づくりを考える。
そこでどこから手を付けるといいかと考えたとき、洗い場に注目した。また、その他にも旧体育館の保存
の是非についての話が出てきた。この敷地の隣にグラウンドや庭園があるので、ここを単に博物館や展示
の場所にするのではなくて、活かせる、使える場所にしていくというように、このグループが考えたこと
と結びつけていけるのではないだろうか。周りにもいい素材がある。水も湧いている。こういったところ
にデザインや企画が加わると良い。水景も断絶してしまっているところがあるので、海からつながってい
ることを感じさせるような場所づくりが必要という議論になった。
グループ C:人を呼び込むことで西条を楽しくする。/伊藤
渡部:人をつなげる、人を呼び込んでまちをたのしくするということで、西条市民のためのつながりを考
えたとき、あんちょこづくりが必要なのではないかという意見が出た。あんちょこというのはどういうこ
とかというと、例えば西条市がつくったパンフレットがたくさんあるが、パンフレットよりも実際見た方
が良いという意見をもらった。そこで、市民しか知らない情報を載せていけばいいのではないか。その情
報とは、西条の人たちが過ごして気持ちのいい場所はどこか、西条の人が外から来た人を、つながりのあ
る人と結びつける。そういったつながりをあんちょこのようにすればいいのではないか。人のつながりに
よって、西条の新しい良さを知ることで、西条を楽しくするというのが提案。
伊藤:ここはいろいろな人で構成されたチームで、海外にいた人とか旅をしていた人とかが多かった。自
分の思い出に残るというのは、わかりやすさではなくて、例えばちょっと立ち寄ったパン屋さんでこうい
うことがあったとか、お祭りは楽しいけど、実は外から来た人には入りづらい、そういうひとつひとつの
体験で形成されている。もともとは文化というテーマもあったので、生活文化、伝統文化、芸術文化など
について考えてみると、自転車、お祭り、アーティストの話が出た。
西条のサイズは自転車向き。農村もある、まちもある、工場地帯もある。それらを自転車でつなぐと車で
は行けないところでの体験は多いことに気がつく。場所をつなぐことと人をつなぐことを考えた。みんな
知っていたり知らなかったりすることがあってそれらをつなぐ。
祭りの話では、だんじり原理主義のようなものがあることがわかり、それはコアな部分としてあってもい
いが、必ずしもこれまでのような伝承システムではやっていけなくなっている現状もある。半分くらいが
外から来た人であるということも。しかし、そういう人たちは祭りに参加しにくい現状もあって、それぞ
れの関わり方ができるようになるといいと思う。例えば、だんじり研修があって、踊りや歴史を学べるよ
うな参加の仕方など。
アーティスト、クリエイターのネットワークをつくるという話も、実際始まっているらしいが、目指すと
ころは居場所づくりである。触媒になるのがアーティストで、そこでの制作のプロセスでコミュニケーシ
ョンできる。そこで展示があってアーティストと話ができる。そこで音楽が聴ける。そういう場作りがあ
って、興味のある人が集まり、ネットワークができて、最終的には大人がゆっくり過ごせる場所、西条市
民のための気持ちの良い場所になる。
そのように、人や場所にとてもいいところがあるはずなのに今はばらばらなので、それらをうまくネット
ワーク化していく、
「実はこういう人がいるよ」
、というあんちょこをつくるといいのではないかというの
がこのグループのまとめである。必ずしもコミュニティの中に居続けなければいけないのではなくて、い
ろんな関わり方ができるような道具立てと仕組みが必要である。
グループ D:PR ツール作りで西条を楽しくする。/太田
寺田:すべて水が媒体になっている。水がすべてを語るのではないか。それを PR のテーマにする。
例えば、企業を介した PR(コカコーラ、アサヒなど)
、商品化することを考えた。あるいは、西条にある
酒蔵や蕎麦やが使っていることを伝える。専門家に川や水を見てもらい良さを知る。水を知ってもらうこ
とが大事である。そしてそのことを市外の方にも知ってもらう。
まず水を PR する前に、自分たちが水の良さを知らなくてはならない。認識しないといけない。外に発信
するためには知ることが必要である。そこで、西条市民ひとりひとりが水大使、ウォーターマイスター、
水ソムリエになるというアイデアが出た。住民が「水おいしい!」ということを発信する気持ちを持って
もらえるようにすることが情報発信の基盤になる。その基礎づくりとして、今回はポスターをデザインし
た。蕎麦やさん「甲」のご主人は毎日西条市の水を使っていて、美しい手を保っている。西条の水は肌に
もいい、身体にもいい、ということで「毎日水を触っています」というキャッチフレーズでポスターがで
きた。
太田:企業を介するのはわかりやすいやり方だが、情報がたくさんあって世界中の状況を知ることができ
るようになっている今、そんなことをやっても仕方がない。何の情報を信じるかというと、やはり人づて
という話になった。信用できる人から教えてもらった情報は信用できる。コミュニケーションが大切。と
いうことで、それを西条でやってみようと考えた。まず人を起点にするには、西条の人が水を当たり前に
思いすぎているところがあったので、そこから変える。ひとりひとりが水大使になって水の良さを知ると
いうこと。水の良さはやっぱり尋常ではない。ここに来て思ったのは、西条の人たちは毎日この水を飲ん
でいるので身体だけではなくて心もきれいなのでは!?ということ。そのきれいな水大使が自分の信頼の
おける人たちにその良さを伝える。そしてその情報を受け取った人も本当にいいと思ったら伝えていく。
悪いと思った人の情報はそこで止まっていくので結果的に「好き」
、
「好き」が伝わっていく。好きをつな
げる PR。最後にポスターをつくらなくてはとなったときに、甲のご主人の手が毎日水を使っているのにと
てもきれいでとても白い。例えば、甲慎さん(
「そばや甲」の主人)がここに移り住んで以来毎日水を扱っ
ているのに、こんなにきれいな手をしているよ、というような、人が主役になるような PR をしていこう
ということになった。
グループ E:農の視点で西条をたのしくする。/武田
玉井:農業を楽しむためにはどうすればいいかブレーンストーミングを行った。そこで農業をする人が楽
しむにはどうしたらいいか、という話になった。農家には閉塞感があるといったような問題が挙げられた。
それは何故かということを考えたときに、デリバリーができていないという考えに至った。その土地の人
間が農業を続けていくことが大切で、それがシビックプライドにつながるのではないか。つくったものを
届けてお客さんの評価を知ることが必要である。いかに楽しむかということを考えたとき、例えば農業者
が女子高生でそれはとても意外性があるというように、実際に農業をしている人もまわりから見ている人
も楽しめるような見せ方があるといいのではないか。また、例えばオーガニックの綿を栽培してタオルを
つくるといったような、製品までつくっていくやり方も必要。西条ならでは、のやり方を考えたとき、海
抜 2000m まで短距離で行けるのは世界的にも珍しい地形に注目した。例えば、最初魚を釣って、里山を
駆け巡り、
野菜や米を収穫して、
それを 2000m の山まで持っていて食べる。
名付けて
「0 to 2000 project」
。
そういう提案もあった。
武田:とても楽しめ、いろいろ教えてもらえた。一番思ったのは、西洋の都市や日本の大都市とは違った
シビックプライドの起点として西条には農業に可能性があるということである。農業をやるにはその土地
に住んでやらなくてはならない、そういう意味では自分の生活と仕事が一緒になっていて、そこにシビッ
クプライドが芽生える可能性がある。農業の過程を経て地域の良さをプロダクトとしてつくる作業もある。
それをひとりひとりに届けていくプロセスの中に、たくさんの人が関わっていける可能性がある。また農
業だけではなくて、ほかの分野とのコラボレーションも可能である。農業は、より多くの人を巻き込める。
外へプレゼンすることと、中の人たちの楽しさや満足の兼ね合いは微妙なバランスではあるが、そこに住
んでいる人、やっている人が楽しめて、シビックプライドが醸成されて、その輪が広がっていくことで外
から評価されて、それがさらに内部の人のモチベーションをあげる。そういうスパイラルが可能なのが農
業なのではないか。特に自然環境や地形環境を活かしたプロジェクトも考えられる。農の良さ、可能性を
もう一度感じられる場になった。
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