Comments
Description
Transcript
産業構造の変化に対応する企業間・業種間ネットワーク構築に
別紙 平成22年度県立大学地域貢献研究の研究成果について( 完了報告・中間報告 ) 研究テーマ 研究期間 主たる研究者 福井県の各産業界における取引構造の変容と、産業構造の変化に対応する企業 間・業種間ネットワーク構築に向けての調査研究 平成 22 ~ 23 年度 【学部・学科】地域経済研究所 【職・氏名】教授 南保 勝 ○研究目的 本研究は、グローバル化が進展する中、今後の中小企業の戦略として中小企業間・業種間ネッ トワークの必要性に鑑み、福井県産業界での構造変化を把握したうえで、それに対応可能な県内 中小企業にふさわしいネットワークとはいったいどうあるべきかを研究するものである。 ○研究成果 初年度にあたる22年度は、県内産業の取引構造が過去、現在にわたりどう変化しているかを マクロ的視点で分析した。具体的には、グローバル化により企業間の取引構造がどのように変容 しているかを、産業連関表をもとに分析した。そのうえで、今後、地域経済が持続的発展を遂げ るために、企業と地域がどのような関係を構築することが必要なのかについても若干の考察を試 みたい。 ■グローバル化進展の中で、変化する県内企業の取引構造 県内企業の取引構造が、グローバル化によりどのように変容しているかについては、様々な分 析手法があると考えられるが、ここでは福井県産業連関表の 1985 年と 2005 年を利用し、県際 取引に着目した各産業部門における取引構造が、この間にどのような変容を見せたかを分析、そ の変容振りを明らかにした。ただし、この間、産業連関表自体の産業部門が組み替えられている ため、あくまで 2005 年の連関表を基準に 1985 の産業部門を組み替えて比較を行った。 また、各産業部門の県際取引構造に関しては、 ○「県際交流型産業」 → 移輸出率、移輸入率がともに高く、県外・海外から多くの原材料・ サービスを仕入れ、県外・海外へ製品・サービスを多く供給している産業部門。 ○「移輸入依存型産業」 → 移輸入率は高いが移輸出率は低く、県外・海外から多くの原材 料・サービスを仕入れ、製品・サービスは県内への供給が多い産業部門。 ○「移輸出型産業 」 → 移輸入率は低いが移輸出率は高く、多くの原材料・サービスは県内 で調達し、製品・サービスは県外・海外への供給が多い産業部門。 ○「県内自給型産業」 → 移輸出率、移輸入率がともに低く、多くの原材料・サービスを県 内で調達し、製品・サービスは県内への供給が多い産業部門。 の 4 区分に類型化し分析を行った。 では、これら 4 区分に類型化した本県の各産業が、1985 年から 2005 年でどのように変容した か(図 12.13) 。その結果をみると、最大の変化として、2005 年には製造業のほとんどが「県際 交流型産業」に含まれるようになったことが挙げられる。この事実は、本県の製造業が、近年、 県外・海外と強く結びついていることを裏付けるものである。1985 年には「移輸入依存型産業」 に含まれていた飲食料品や輸送機器、窯業・土石、石油石炭製品などの業種が、2005 年には同 部門に含まれるようになった。近年、自社の海外展開や取引先のグローバル化等の進展により、 県外・海外との取引関係が非常に高まっていること、特に、地場産業の中では、精密機械に分類 される眼鏡枠産業で移輸出、移輸入ともに高いウエイトとなっていることがわかった。そして、 この結果から予測されることは、グローバル化の進展により、県内企業の域内取引量が相対的に 縮小していることであり、このことは地域経済そのものの縮小を意味しているものと思われる。 図12 県際取引構造の変容 1985年 100.0% 非鉄金属 鉄鋼 石油・石炭製品 電子部品 電気機器 情報・通信機器 鉱業 化学製品 一般機械 【移輸入依存型産業】 金属製品 分類不明 繊維製品 その他の製造工業製品 輸送機器 飲食料品 パルプ・紙・木製品 精密機械 窯業・土石製品 移 輸 50.0% 入 率 【県際交流型産業】 農林水産業 対事業所サービス 運輸 【移輸出型産業】 【県内自給型産業】 通信・放送 商業 不動産 対個人サービス 金融・保険 医療・保健・社会保障・介護 教育・研究 その他の公共サービス 0.0% 0.0% 建設 水道・廃棄物処理 公務 事務用品 電力・ガス・熱供給 50.0% 100.0% 移輸出率 2005年 100.0% 精密機械 石油・石炭製品 化学製品 鉄鋼 飲食料品 パルプ・紙・木製品 鉱業 非鉄金属 窯業・土石製品 【移輸入依存型産業】 移 輸 50.0% 入 率 情報・通信機器 輸送機器 金属製品 電気機器 一般機械 その他の製造工業製品 電子部品 繊維製品 【県際交流型産業】 農林水産業 対事業所サービス 通信・放送 【県内自給型産業】 【移輸出型産業】 水道・廃棄物処理 商業 金融・保険 対個人サービス 運輸 教育・研究 その他の公共サービス 分類不明 医療・保健・社会保障・介護 電力・ガス・熱供給 不動産 0.0% 0.0% 建設公務事務用品 50.0% 100.0% 移輸出率