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ユーロ圏発足後、英国とスイスは経済成長や雇用面でユーロ圏よりも良好

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ユーロ圏発足後、英国とスイスは経済成長や雇用面でユーロ圏よりも良好
第2章第2節
周辺域外国のパフォーマンス:ユーロ参加国との比較
∼①マクロ経済パフォーマンス等の比較
②金融面を通じた影響 ∼
ユーロ圏発足後、英国とスイスは経済成長や雇用面でユーロ圏よりも良好なパフォーマンスを達成。主要産業
である金融業は、ユーロ導入後も比較優位性を維持し、国際金融センターとしての地位は揺るがず。(第75図、
第76図)
両国ともに、ユーロ圏から資金を調達し、圏外へ貸出。世界金融危機後には資金の流れは逆転。いずれの局
面でも、ユーロ圏と非ユーロ国との資金需給の結節点として両国の金融業の重要性は高まる。(第77図、第7
8図)
第77図 英国の対外貸出・借入残高の国別内訳
(借入)
(貸出)
第75図 各国の経済パフォーマンス
(1)実質経済成長率
12.0
4.0
(%)
90年代
日本
90
10.0
2.0
その他
100
アメリカ
80
70
8.0
(%)
90
6.0
70
スイス
-6.0
2000年代
(危機後)
-8.0
英国
スイス
ユーロ圏
00年代 00年代
(危機前) (危機後)
2.0
フランス
南欧
諸国等
20
英国
スイス
ユーロ圏
ドイツ
フランス
0
2000
第76図 産業構造
(1)英国
(%)
80
70
専門・娯楽等
サービス
60
金融・保険・
不動産
50
90
80
70
専門・娯楽等
サービス
60
金融・保険・
不動産
50
30
建設業
30
建設業
20
製造業
20
製造業
10
農林水産業
0
10
農林水産業
2000
10
(%)
その他
100
日本
90
アメリカ
80
70
2000
10
11
(%)
90
50
50
その他
ユーロ圏
南欧
諸国等
ドイツ・
フランス
20
10
0
07
11
日本
70
60
30
新興国
80
英国
40
その他
100
60
2000
0
07
アメリカ
英国
40
その他
ユーロ圏
南欧
諸国等
ドイツ・
フランス
30
20
10
0
2000
07
ユーロ圏
卸小売・運輸・
宿泊・外食
40
2000
ユーロ圏
卸小売・運輸・
宿泊・外食
40
公的管理・
防衛・医療
0
11
非ユーロ圏
90
その他
30
10
非ユーロ圏
公的管理・
防衛・医療
(%)
100
スイス
その他
ユーロ圏
南欧
諸国等
ドイツ・
フランス
40
第78図 スイスの対外貸出・借入残高の国別内訳
(借入)
(貸出)
(2)スイス
その他
100
07
50
20
ドイツ・
フランス
10
0.0
ドイツ
30
アメリカ
ユーロ圏
4.0
-4.0
その他
ユーロ圏
40
日本
60
ユーロ圏
50
-2.0
新興国
80
60
0.0
その他
100
非ユーロ 圏
6.0
(2)失業率
(%)
90年代 00年代
(危機前)
非ユーロ圏
(%)
11
18
第2章第2節
周辺域外国のパフォーマンス:ユーロ参加国との比較
∼③貿易面を通じた影響
④ショック吸収能力のユーロとの比較∼
両国ともにユーロ圏と貿易面において結び付きは強いが、実質貿易量の変化は対照的な状況。(第79図)
ユーロ導入直後や世界金融危機後の為替変化の方向の違いだけでなく、両国のユーロ圏に対する非価格競
争力の差も影響した可能性。(第80∼第81図)
経済状況が異なるユーロ圏では中央銀行がすべての国の情況に即した金融政策を採ることは不可能だが、両
国では、相対的に柔軟な対応が可能。(第82図)
一方、共通通貨に比べて、内外の経済的ショックに影響されやすい傾向。(第83図)
第79図 各国のユーロ圏向け実質貿易量の変化
(ユーロ導入前、導入から金融危機前、金融危機後の比較)
第82図 政策金利変更時における経済の動向
第81図 ユーロ圏向け貿易特化係数の推移
(年平均変化率、%)
(1)
14
12
輸入
0.4
0.3
6
90年代
2000年代
0.1
2
0.2
0.1
-0.2
-0.2
英国
スイス
ドイツ
フランス
-0.3
-0.3
-0.4
-0.4
-0.5
-0.5
第80図 実質為替レート(対ユーロ)
(ポンド/ユーロ)
1.0
(スイスフラン/ユーロ)
実質スイス
フラン
1.8
0.8
1.6
実質ポンド
1.4
0.7
ポンド・フラン安ユーロ高
0.6
ポンド・フラン高ユーロ安
0.5
2000
02
04
06
08
英国
スイス
10
1.2
1.0
12(年)
スイス
ドイツ フランス
1.5
-1.0
-1.5
% -1.5
利下げ幅
-2.0
-2.5
英国
ドイツ フランス
利下げ幅
第Ⅳ象限
第Ⅲ象限
-2.0
利上げ幅
第Ⅲ象限
0.0
1.0
2.0
3.0
-3.0 -2.0 -1.0
0.4
0.3
0.3
2000年代
0.2
0.1
8
6
4
0.0
-0.1
-0.2
-0.2
-0.3
-0.3
90年代
-0.4
-0.5
-0.6
-0.6
英国
スイス
ドイツ フランス
3.0
】
導入前
導入後
(危機前)
2
2000年代
-0.4
-0.5
2.0
(前月比、%)
0.1
0.0
1.0
第83図 各国通貨(実効レート)の月次変化率
0.2
-0.1
0.0
【 GDPギャップ(%)
(4) 光学・精密機器等
0.4
第Ⅳ象限
-2.5
-3.0 -2.0 -1.0
【 GDPギャップ(%) 】
(3) 機械・輸送機器
0.9
%
-0.6
-0.6
2.0
90年代 2000年代
第I象限
第Ⅱ象限
2.0
イ 1.0
ン
フ 0.5
レ
ギ 0.0
ャ -0.5
ッ
プ -1.0
利上げ幅
︼
-0.1
英国
︶
-0.1
2.5
︵
前 後 後
① ②
︼
前 後 後
① ②
︶
0.0
前 後 後
① ②
イ
ン 1.0
フ 0.5
レ
ギ 0.0
ャ
ッ -0.5
プ
︵
0.0
前 後 後
① ②
0
2.0
1.5
0.3
0.2
4
(2)
第I象限
︻
0.4
輸出
︻
10
8
(2) 化学製品
(1) 燃料・原材料
ユーロ圏
2.5 第Ⅱ象限
0
-2
90年代
英国
スイス
-4
ドイツ フランス
-6
-8
導入後
(危機後)
-10
ポンド
スイス
フラン
スウェーデン
クローナ
ユーロ
19
第2章第3節
通貨制度に関するアジア地域の経験
∼アジアにおける通貨制度の選択とその評価
①アジア通貨危機発生の背景
②通貨危機後の制度変更と構造改革の進展∼
一部のアジア諸国では、通貨危機前まで米ドルとの事実上のペッグ制を採用。規制緩和や高金利とあいまっ
て、短期資金の流入が拡大、自国通貨はドルに対して増価圧力が継続。対外短期債務も外貨準備高を大きく
上回る状況。(第84∼第86図)
流入資金は、国内の設備投資等の増加に寄与。住宅市場にも流入し、一部の国で過熱。(第87図、第88図)
TFP(全要素生産性)の上昇率は通貨危機発生までは低下基調。流入した資金が必ずしも潜在成長率の向上
に結び付かなかったことを示唆。(第89図)
IMFによる通貨危機対応支援後のアジア通貨は、インドネシアを除き、総じて変動幅が縮小。(第90図)
第84図 資本収支(タイ)
(億ドル)
300
その他投資
(負債)
200
第86図 外貨準備高に対する対外短期債務の割合
(%)
400
証券投資
(負債)
韓国
5
香港
300
250
0
インドネシア
200
0
中国
150
-100
(寄与度、%)
10
通貨危機発生
350
直接投資
(負債)
100
第89図 実質経済成長率に対するTFPの寄与
その他投資
(資産)
直接投資
(資産)
92
94
96
98
証券投資
(資産)
2000(年)
タイ
50
1990
1990 92
94
96
第87図 住宅価格
98 2000 02
04
06 07(年)
タイ
180
130
160
120
140
110
120
100
100
香港
80
韓国
(右目盛)
60
80
1992 94 96 98 2000 02 04 0607
90
(年)
160
140
120
100
80
60
1,400
1,200
1,000
インドネシア
800
(右目盛)
600
400
タイ 200
0
1991 93 95 97 99 01 03 05 07
92
94
インドネシア
96
98
2000(年)
第90図 各国通貨(実効レート)の月次変化率
(1)タイ (2)インドネシア (3)韓国 (4)香港
第88図 総固定資本形成
(1991年=100)
(1992年=100) (1991年=100)
1,600
韓国
200 180
通貨危機発生
(1992年=100)
通貨危機発生
150
140
タイ
-15
0
第85図 為替動向
香港
-10
100
-200
1990
-5
韓国
(前月比、%)
25
97年5月∼2000年4月
0
-25
1990年∼97年4月
2000年5月∼07年
-50
(年)
20
第2章第3節
通貨制度に関するアジア地域の経験
∼アジアにおける通貨制度の選択とその評価
③人民元の動向∼
中国では、変動幅が厳しく管理された管理変動相場制を採用、国際的短期資金の移動も厳しく制限していたた
め、通貨危機後も人民元は安定を維持。(第91図)
01年のWTO加盟後の資金流入によって、人民元の増加圧力が強まり、当局は為替介入を繰り返したため外
貨準備高が増加。(第92図)
資本規制が厳しいため、対内投資は直接投資中心。資本収支と経常収支は共に黒字。(第93図、第94図)
人民元の国際化が貿易決済の場や、香港オフショア市場において徐々に進行中。(第95図、第96図)
(人民元/ドル)
6
(10年=100)
110
人民元実質実効レート
100
7
90
80
8
人民元高
70
人民元対ドル名目為替レート
(右目盛)
人民元安
60
9
(億ドル)
3,000
2,500
資本収支
2,000
1,500
直接投資収支
1,000
500
0
-500
証券投資収支
-1,000
-1,500
(年)
02
15
経常移転収支
6
2.5
2.0
2000
外貨準備残高
6,000
5,000
(シェア、%)
12
人民元預金残高
預金残高全体のうちのシェア
(右目盛)
10
8
4,000
6
3,000
4
2,000
2
1,000
0
その他投資収支
07
11
(年)
(%、GDP比)
(%)
8
GDPに対する
外貨準備残高の割合
(右目盛)
3.0
1997
(億元)
7,000
第94図 経常収支
第92図 外貨準備高の推移
(兆ドル)
3.5
第95図 香港における人民元建て預金残高の推移
第93図 資本収支
第91図 人民元実質実効為替レート
財・サービス収支
10
0
1 3 5 7 9111 3 5 7 9111 3 5 7 9111 3 5 7 9111 3 5 7 9 (月)
(年)
2008
09
10
11
12
第96図 人民元建て債権の新規発行額
(億元)
1,200
1,000
800
4
5
2
0
経常収支
1.5
600
400
1.0
200
0.5
0.0
1990 92
94
96
98 2000 02
04
06
08
0
10 11 (年)
-5
所得収支
1990 92 94 96 98 2000 02 04 06 08 10 (年)
0
2007
08
09
10
11(年)
21
第2章第4節
まとめ
限られる固定的通貨制度のメリット
固定的通貨制度採用は貿易投資の活発化の必要条件ではない。EU等自由貿易圏等への加盟によっ
ても活発化は可能。
小国では固定的通貨制度による物価安定を期待。しかし、インフレ体質が依然残るケースも(ギリシャ
等)。一方、ユーロ圏外国でも政策次第でインフレ抑制は可能。
共通通貨は個別国通貨より安定性では優る面も。他方、周辺国への影響と責任は大きい。
固定的通貨制度維持に不可欠な市場の信認と安全網の整備
 為替リスクがないため、国外から短期資金が流入し、住宅投機や放漫財政に向かうリスクが存在。
⇒事前事後にかかる安全網の整備と構造改革を進め、内的ショックに対する耐性を高める必要性
再確認すべき「最適通貨圏」の条件
 「最適通貨圏」理論によると、非対称ショックがあっても生産要素の移動性、価格伸縮性等が確保されて
いれば共通通貨の導入は可能。
⇒現実には、ユーロ圏では特定国で非対称性ショックが頻発しているが、労働移動や賃金調整は硬直的
 財政資金の移転がなされれば不均衡是正は可能。しかし、世論反発も根強く、財政同盟の実現可能性
は不透明。
 最適通貨圏の条件を再確認し、内外に向けて盤石な通貨制度を確立するための意思が問われる局面。
22
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