Comments
Description
Transcript
見る/開く - 岐阜大学機関リポジトリ
Title カルボニル還元酵素の組織内および細胞内局在に関する研 究 1. モルモット肝臓のカルボニル還元酵素の組織内局在お よび薬物ケトン類に対する基質特異性について 2. Ultrastructural localization of carbonyl reductase in mouse lung( 内容の要旨(Summary) ) Author(s) 松浦, 一也 Report No.(Doctoral Degree) 博士(医学)乙 第982号 Issue Date 1995-06-21 Type 博士論文 Version URL http://repository.lib.gifu-u.ac.jp/handle/123456789/15288 ※この資料の著作権は、各資料の著者・学協会・出版社等に帰属します。 氏名(本籍) 松 浦 学位の種類 博 士(医学) 学位授与番号 乙第 学位授与日付 平成 学位授与の要件 学位論文題冒 也(愛知県) 一 982 号 年 6 月 21日 学位規則第4条第2項該当 7 カルポニル還元酵素の組織内および細胞内局在に関する研究 1.モルモット肝臓のカルポニル還元酵素の組織内局在および 薬物ケトン類に対する基質特異性について 2・U(trastructurallocaIization of carbonYr reductasein mouse lung 委 員 (主査)教授 静 論 文 内 勲子 (副査)教授 谷村 査 大正 審 教授 容 の 野 要 澤 義 則 旨 カルポニル還元酵素(CR)は,NADPHを補酵素として種々のカルポニル化合物を相当するアルコール体へ と遼元する酵素である。CRはヒトや各種動物の臓器・組織に広く分布する。CRはステロイドやプロスタグラン ジンの代謝に関与することが示唆されており,また,生休にとって異物であるカルポニル化合物も還元するので 薬物代謝酵素としての機能も重要であると考えられている。 モルモット肝臓には2種の単量体CR(CRl,CR2)が存在し,両酵素は17β-ヒドロキシステロイド脱水素 酵素アイソザイムと同定されている。モルモット肝臓のCR2と免疫化学的に類似の性状を示すCRは腎臓にも分 布するが,その組織内局在は明らかにされていない。一方,モルモット,マウス,ブタの肺には,肺以外の組織 から精製されているCRとは基質特異性が著しく異なる四量体構造のCRが存在する。これらの動物の肺では,四 重体CRはクララ細胞.線毛細胞 Ⅱ型肺胞細胞に局在し,その役割として吸入された異物カルポニル化合物の 代謝や脂質過酸化により生じるカルポニル化合物の代謝に関与することが提唱されている。また,モルモット, マウス肺の細胞分画法による検討では,ミトコンドリア画分に最も高いCR比活性が存在することが認められて いるが・ミクロソーム画分およびサイトソル画分にも弱いCR活性が存在するので,CRの正確な細胞内局在を確 認することが必要である。 本研究では,法医中毒学的観点からCRの薬物代謝における役割をより明確にするために,モルモット組織に おける単量休CRの組織内局在を検討するとともに,モルモット肝臓の2種の単量体CRとモルモット肺の四量体 CRの薬物ケトン頬に対する基質特異性について検討した。さらに,マウス肺における四量体CRの細胞内局在を 免疫電子顕微鏡法によって検討し,以下の知見を得た。 実験方法 モルモット組織内における単量体CRの局在の検討は,モルモット組織をプアン液に固定乱 ペルオキシダー ゼ標識ストレプトアピジンービオチン法により行った。本研究では,モルモット肝臓の主酵素であるCR2に対す る抗体を一次抗体として用いた。 免疫電子顕微鏡法はtマウスの肺をグルタルアルデヒドで固定後,金コロイド標識二次抗体を用いたpostembedding法により行った。電顕写真からミトコンドリアの面積の測定は画像解析装置を用いて行った。 結果および考案 研究1 1)CRの代表的な基質であるp-ニトロアセトフユノンを基質に用いてモルモットの消化管組織におけるCR活 性の分布を検討した結果,胃,小腸,結腸にもCR活性が分布することを新たに認めた。さらに.イムノブロッ 45 ト分析を行った結見 これらの消化管組織にCR2抗体と反応するタンパク質を認めた。 2)本抗体を一次抗体として,単量体CRのモルモット組織内における局在を検討した結果,肝臓では肝細胞 および胆管の上皮細胞,腎臓では近位尿細管の上皮細胞に局在することが判明した。また,空腸,回腸では吸収 上皮細胞に局在することが明らかになった。 3)モルモット肝臓の2種の単量体CR(CRl,CR2)はロキソプロフェン,ベフノロール,ナロキソン, ダウノルビシンのケトン基を遺元した。肝臓の両酵素は,肺の四主体CRやアルデヒド還元酵素に比べて高い触 媒効率でこれらの薬物ケトン類を還元した。特にCR2のロキソプロフェンに対するVmax/Km値 (12units/mgprotein/mM)は,代表的な基質である芳香族カルポニル化合物に対する値に匹敵した○一方, モルモット肺の四主体CRはロキソプロフェンおよびダウノルビシンを弱く還元したのみであった。 研究2 1)マウス肺における四主体CRの細胞内局在を免疫電子顕微鏡法により検討した。マウス肺ではクララ細胞, 線毛細胞,Ⅱ型肺胞細胞のミトコンドリアが金コロイドにより標識されたが,その他の細胞小器官は陰性であっ た。特にクララ細胞では金コロイドはミトコンドリアのマトリックスに認められた。Ⅰ型肺胞細胞,肺胞マクロ ファージ,結合組織の細胞は模識されなかったことから,四主体CRはクララ細胞,線毛細胞,Ⅱ型肺胞細胞の ミトコンドリアに局在し,ミトコンドリア内ではマトリックスに局在することが明らかになった。 2)クララ細胞,線毛紺胤 Ⅱ型肺胞細胞の間で,ミトコンドリア面積当りの金コロイド粒子数を比較するこ とによる半定量的な解析を行った結果t CRはクララ細胞のミトコンドリアにより高濃度に存在することが判明 した。 以上の成績から,モルモットでは単量体CRは肝臓,腎臓に加え,異物により接しやすいと考えられる小腸の 吸収上皮細胞に局在することが判明した。単量体CRは,四主体CRやアルデヒド還元酵素よりも高い触媒効率で 薬物ケトン類を還元することから,ステロイド代謝以外に薬物代謝酵素として薬物ケトン類の遺元代謝や経口摂 取された異物カルポニル化合物の還元代謝において重要な役割を果たすことが考えられた。また,四量体CRは, マウス肺のクララ細胞,線毛細胞,Ⅱ型肺胞細胞のミトコンドリアのマトリックスに局在することが確認された。 マウス肺の四量体CRと類似の性状を示すモルモット肺の四主体CRは.本研究において薬物ケトン頬に対しては 低い触媒効率を示すことが判明したので,薬物代謝酵素としての機能等の従来提唱されてきた本酵素の機能の他 に,ミトコンドリア内において別の生理的意義を持つことが考えられるので,今後はその解明のためにさらに検 討が必要である。 論文審査の結果の要旨 申請者松浦一也は,カルポニル還元酵素のモルモット組織内局在およびマウス肺における細胞内局在を明らか にした。さらに,法医中毒学的観点から,本酵素の薬物ケトン類に対する触媒特性を明らかにした。 これらの新知見は,カルポニル還元酵素の生体内における役割の解明ならびに法医中毒学の進歩に少なからず 寄与するものと思われる。 [主論文公表誌] カルポニル還元酵素の組織内および細胞内局在に関する研究 1.モルモット肝臓のカルポニル還元酵素の組織内局在および薬物ケトン類に対する基質特異性について 平成7年1月発行 岐阜大医紀 2.Ultrastructurallocalization 平成6年4月発行 43(1):22∼30 of carbonylreductasein HistochemicalJourna126:311∼316 46 mouselung