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KLCニュース NO.8

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KLCニュース NO.8
2006 年夏号 / 通算8号
contents
■
■
■
■
最新研究紹介・・・・・・・・・・近畿大学医学部免疫学教室・教授
KLC の活動報告・・・・・・・・・■各種展示会出展
宮澤正顯
■特許出願件数の推移
新しい会社法について・・・・・・大学ベンチャービジネス創出チャンス到来
KLC からのお知らせ・・・・・・・■理工学部・江藤教授が産学官連携功労者表彰「経済産業大臣賞」受賞 ■経済産業省外部資金の獲得
■平成 18 年度大型補助金(私立大学学術研究高度化推進事業)の採択について
最新研究紹介
■エイズウイルス感染抵抗性遺伝子の発見
医学部免疫学教室・教授 宮澤 正顯
厚生労働科学研究費補助金から
「創薬等ヒューマンサイエンス総合研究事業」
の採択を受け、
過去4年間に総額1億円近い研究費の助成を受けるとともに、平成18年度の継続研究も認め
られました。HIV 曝露非感染者の遺伝的特徴を明らかにする研究は、既に診断薬として実用化
の見通しが立ちました。さらに、治療薬・感染予防薬への展開をはかります。
私は、学生時代からレトロウイルス感染に対する免疫
応答と、レトロウイルスが引き起こす病気の関係を研究
してきました。レトロウイルスとは、RNA を鋳型にし
て DNA を作り出す、
「逆転写酵素」と呼ばれるタンパ
ク質をウイルス粒子内に持ち、一本鎖 RNA から成るウ
イルス遺伝子の情報を二本鎖 DNA に変換して、感染細
胞の染色体に組込まれてしまうウイルスのことです。日
本で発見された成人 T 細胞白血病ウイルスも、今世界
中で感染爆発が進んでいるヒト免疫不全症ウイルス
(HIV、
「エイズウイルス」とも言う)も、レトロウイ
ルスの仲間です。
レトロウイルスは感染細胞の染色体に組込まれます
から、細胞分裂によって出来た子孫細胞も、最初からウ
イルス遺伝子を引き継いでいます。このため、一旦レト
ロウイルスに感染してしまうと、一生にわたって体内に
ウイルスの遺伝情報を持った細胞が潜み続けることに
なります。一方、この性質を利用すると、ヒトや動物の
細胞に特定の遺伝子を運び込ませ、ずっと染色体上に持
たせ続けることも可能になります。これは遺伝子治療の
有力な技法です。勿論、遺伝子治療に使うレトロウイル
スが体内で増え続けては困りますので、一旦目的の細胞
に遺伝子を注入したら、二度とウイルス粒子は出来ない
ような工夫をして使います。私が在米中最初に取得した
特許は、遺伝子治療用のレトロウイルスが二度と感染性
粒子を作らないことを確認するための抗体で、今でも毎
年実施料を頂いています。また、私たちの教室ではレト
ロウイルスを受精卵への遺伝子導入に使っています。
さて、HIV は全世界で年間300万人ものエイズ患
者を死に追いやり、中国の感染者数は 2010 年までに
1,000 万人に達するおそれがあると推計されています。
ところが、特定の HIV 感染者と継続して性的関係を維
持していながら、HIV 感染の兆候が認められず、体内
に HIV の遺伝情報も検出されない、
「HIV 曝露非感染
者」と呼ばれる一群の人たちがいます。これらの人たち
の体内からリンパ球を取り出して、HIV に対する免疫
応答を見てみますと、感染者よりもむしろ強いくらいの
反応が得られます(図1)
。また、これら曝露非感染者
の尿道粘液や膣粘液中には、HIV と反応する特殊な抗
体(IgA)が検出できます。そこで、これら曝露非感染
者は、HIV がごく僅か体内に侵入したときに普通より
も強い免疫反応を起こし、そのために、後々くり返して
HIV の侵入を受けても感染しないでいるのではないか
と考えられています。もしそうなら、曝露非感染者で成
立している HIV 感染防御免疫のしくみを明らかにする
ことで、感染予防ワクチンの開発や感染者の治療に役立
てることができるはずです。
1
KLC / NEWS
図 2.
HIV 曝露非感染者の遺伝的特徴
図 1.HIV 曝露非感染者の免疫学的性質
とを明らかにし、それらの発現調節領域における DNA
の塩基配列が、曝露非感染者と感染者で異なることを見
つけだしました。勿論これらの発見は、KLC のサポー
トを得て全て国際特許を出願済です。
幸い、それらの一部は診断薬として実施の見通しがつ
き、大学にも少しですが恩返しができそうです。
この研究が最終的に治療薬や感染予防薬として実を
結ぶには、まだまだ数年は研究を継続していくことが必
要で、当然製薬企業などとの共同研究が不可欠です。長
い道のりですが、タイやアフリカ、そしてヨーロッパの
共同研究者たちとの交流を糧に、これからも努力を続け
たいと思っています。
私たちはこの目標に沿って、イタリアやタイ王国の研
究者から検体の提供を受け、HIV 曝露非感染者の遺伝
的特徴を明らかにする研究を開始しました。この研究は
厚生労働科学研究費から「創薬等ヒューマンサイエンス
総合研究事業」の採択を受け、過去4年間に総額1億円
近い研究費の助成を受けるとともに、平成18年度の継
続研究も認めて頂いています。
この研究により、私たちはヒトの第 22 染色体にある
特定の遺伝的マーカーが、曝露非感染者に集積している
ことを明らかにしました(図 2)
。さらに DNA マイクロ
アレイを駆使して、これら遺伝的マーカーの間にある二
つの特定の遺伝子の発現が、曝露非感染者でのみ高いこ
KLC の活動報告
■ 各種展示会出展
名称・主催・場所
モノモノ展2005
大阪府中小企業家同友会 大阪東ブロック
クリエイションコア東大阪
近畿特許流通フェア 2006
特許庁、近畿経済産業局
インテックス大阪
SMBC アグリビジネス交流会
SMBC コンサルティング、三井住友銀行
大阪国際会議場
大学マッチングカンファレンス大阪
開催 IT 共同体、大学コンソーシアム大阪
大阪科学技術センター
開催日
出展テーマ
高活性ナノ酸化物触媒の成膜技術(理工学部・藤野隆由)
表面処理によるチタン材の高機能化(理工学部・岩崎光伸)
平成 17 年
11 月 12 日
高活性ナノ酸化物触媒の成膜技術(理工学部・藤野隆由)
排水・排ガス浄化効果評価装置(理工学部・藤野隆由)
平成 18 年
1 月 26・27 日
骨代謝を正常化するクズの有効成分(農学部・河村幸雄)
大学発ベンチャー
(株)ア・ファーマ近大 (株)アーマリン近大
平成 18 年
2 月 17 日
画像情報 P2P 共同システム(理工学部・井口信和)
平成 18 年
自然言語によるデーターベースアクセス(理工学部・溝渕昭二・森山真光)
3月9日
AHP を電子商取引に適応した販売支援システム(理工学部・湯元真樹)
2
KLC / NEWS
■特許出願の推移(意匠・商法・TLO 出願を含む)
年度
合計
理工
薬
農
医
H15
41
6
5
4
0
H16
52
7
2
9
1
H17
75
22
5
10
0
工
研究所
法人
特許出願数(合計)の推移
KLC
産業理工
生物理工
3
16
2
1
4
0
80
1
11
5
8
5
3
70
15
10
6
2
0
5
60
50
40
「学会発表の前に特許出願を!」の呼びかけが浸透して、特許申請
はここ2−3年大幅に増え、他大学に負けない出願数になりました。
本年度からは、特許の活用(ライセシング収入の確保)につとめ
ます。
30
20
10
0
平成15年度
平成16年度
平成17年度
新しい会社法について(2006 年 5 月 1 日施行)
大学ベンチャービジネス創出チャンス到来)
■大学ベンチャービジネス創出チャンス到来
株式会社
有限責任
合同会社
個人事業
このたび商法の大改正が行われ、会社のあり方
事業組合 (LLP)
(LLC)
が大きく変わることになりました。
形
態
法人
組合(法人でない)
法人
個人
まず、これまで5年間に限られていた資本金1
責
任
有限責任(役員を除く)
有限責任
有限責任
無限責任
円以上の株式会社の年限制限がなくなったこと
資 本 金
1 円以上( 年限制限なし ) 1 円×2 以上
1 円以上
不要
今あるもの以外は有限会社ができなくなったこと
出 資 者
1 名以上
2 名以上
1 名以上
不要
取締役の
1 名以上
なし
業務執行者 1 名
なし
です。
数
以上
それ以上に注目すべきは、日本版 LLP(Limit取締役会
株式譲渡制限会社は任意
ed Liability Partnership)と LLC(Limited Liability
任意設置
不要
設置、それ以外は必ず設
不要
置(3 名以上)
Company)が登場したことです。
監 査 役
株式譲渡制限会社は任意
英国における LLP は、2000 年に創設され、1
設置、それ以外は原則設
不要
任意設置
不要
万社が誕生しています。また、米国における LLC
置
取締役等
原則、取締役 2 年
は、ここ 10 年間で 80 万社が誕生しています。
の 任 期
監査役 4 年
日本版 LLP(有限責任事業組合)/LLC(合
株式譲渡制限会社は、定
不要
なし
不要
同会社)の特徴は、
款にて、それぞれ任期 10
年まで可能
① 有限責任
定
款
必要
不要(契約書必要) 必要
不要
仮に会社が債務超過に陥っても、出資者は
定 款 の
必要(認証代 5 万円、印紙
不要
不要
不要
出資した額の範囲で責任を負えばよく、基本
認
証
代 4 万円)
(印紙代 4 万円)
的には出資者個人は債権者から請求を受ける
登
記
必要
必要
必要
不要
(登録免許税 15 万円
(登録免許税 6 万円)
(登録免許税 6 万
(税部署に
ことはない。なお、株式会社も右の表では有
円)
開業届)
限責任になっているが、これは出資者の場合
決算広告
義務あり
義務なし
義務なし
義務なし
で、自分で株式会社を起こして経営者になっ
利益の
原則、出資割合
契 約書で自 由に決
定 款で 自由に決
配分
定、定めなければ出
定、
た場合は経営責任が発生するので注意が必要
不要
資割合
定 めな ければ出
である
資割合
②自由な組織運営
課
税
法人課税+個人所得に課
法人課税なし
法 人課 税+個人
個人課税
税
構成員に課税
の 所得 に対して
株主総会の議決などの制約がなく、自主的に
課税
運営ができる
組織変更
株式⇔LLC・合資・合名へ
LLP⇔株式・LLP・合
LLC⇔株式・合資・合名
個人⇔株式・
③人的資産の重視(ただし、労務出資は禁止)
変更可能
資・合名へ変更不可
へ変更可能
LLC ・ 合 資 ・ 合
株式⇔LLP へ変更不可
新たに法人設立
LLC⇔LLP へ変更不可
名・LLP へ変更
出資額にとらわれずに、会社の経営に対する
不可
発言権や利益の配分がその人のもつ知的・経営
新たに法人設
的能力に応じてできる
立
④設立にかかる経費が安い
会社法の詳細は http://www.moj.go.jp/HOUAN/houan33.html で検索できます。
⑤出資者と経営者が一致している(LLC のみ)
⑥法人税がかからない(LLP のみ)
などであり、事業展開がやり易くなりました。
この LLP/LLC の利用は、大企業のジョイントベンチャー、弁護士、弁理士、公認会計士などの高度サービス業、
ソフトウエア/コンテンツビジネス、ファンドによる金融サービス等のほか、シニア層、女性層、若者層による個
人及び大学生・院生の創業、大学研究者等の創業や共同創業が実現可能となり、自己実現、産業再生や新分野産業
の創出に大きく寄与するものと思われます。
特に大学等における知的財産、技術力やノウハウを最大限に生かしたベンチャービジネスの創出にチャンスが到
来してきました。そこで、この新しい会社の仕組みの相違点をわかり易く比較して表に示しておきます。
KLC では新制度を有効に活用するために、秋までに何度か勉強会をして、理解を深めていきたいと存じます。ご希望
の方は、KLC 事務局までご連絡ください。また同時に、KLC ニュースでは今後、「新会社法」についてシリーズ化
のうえ情報発信していく予定です。
KLC 事務局:近畿大学総務部
TEL:06‐6721‐2332、FAX:06‐6727‐4435 E-mail:[email protected]
[email protected] URL : http://ccpc01.cc.kindai.ac.jp/honbu/menu/sangaku.html
3
KLC / NEWS
理工学部・江藤剛治教授が産学官連携功労者表彰
KLC からのお知らせ
理工学部・江藤剛治教授が産学官連携功労者表彰
「経済産業大臣賞」を受賞
理工学部社会環境工学科の江藤剛治教授は、6 月 10・
11 日の 2 日間、京都国際会館で開かれた第 5 回産学官
連携推進会議(内閣府等主催)において、産学官連携功
労者表彰「経済産業大臣賞」を受賞しました。
江藤教授はリンク・リサーチ株式会社の武藤秀樹社長、
株式会社島津製作所とともに、超高速 CCD(ISIS)を
用いて、1 秒間に 100 万コマの映像を記録できる「超高
速ビデオカメラ」を開発しました。このカメラは 2005
年 3 月から市販されています。
現在、基礎研究から、インクジェットなどのマイクロ
マシン開発、最先端材料開発まで国内外で幅広く利用さ
れています。
このビデオカメラを用いた研究成果により、米物理学
会流体力学部門、SPIE(国際光工学会)等からも江藤
教授らに対して国際的な学会賞が贈られています。
経済産業大臣賞を受賞する
江藤教授
今回表彰を受けたテーマは 11 件で、私立大学が関わ
った研究成果は近畿大学だけでした。本学は 2 年前も
「飯塚(e-ZUKA)TRY VALLEY 構想の推進」で飯塚
市とともに産業理工学部(福岡県飯塚市)が経済産業大
臣賞を受賞しており、今回が 2 度目の受賞となりました。
10・11 日とイベントホールで開催された受賞企業研
究機関による「展示ブース」では超高速ビデオカメラの
実物も展示されました。
■経済産業省外部資金の獲得
経済産業省の平成18年度地域新生コンソーシアム
研究開発事業に3カ年計画で、
●生物理工学部助教授・渡辺俊明 「手指関節のリハビ
リ運動を支援するロボットの開発」
(初年度 3,000 万円)
●工学部教授・京極秀樹 「自動車用軽量化部材のラ
ピットプロセス技術の実用化研究開発」
(初年 2,800 万
円)が採択されました。
また、再委託先として本学が参画しているものは、以下の通り
です。
●国際レスキューシステム 「RT 応用メッシュネットによるユ
ビキタス防災防犯システム」
(理工学部講師・大坪義一)
●立命館大学 「屋上・壁面緑化用多機能性バイオ苔の LED 活
用高効率生産技術」
(生物理工助教授・秋田 求)
●㈱レザック 「パルスレーザーを用いた電子部品用微細トリミ
ング金型の開発」
(理工学部助教授・中野人志他)
■平成 18 年度大型補助金(私立大学学術研究高度化推
進事業)の採択について
今年度は、平成 13−17 年度採択された総合理工学研
究科のオープン・リサーチセンター整備事業「広域環境
4
計測と適応技術の開発」
(代表者 大学院部長 森本信
明に交代)の3年間の継続と、新規としてリエゾンセン
ター長/副学長 宗像 惠を代表者とする社会連携研究
推進事業「医工連携による医療技術のイノベーション」
(平成 18∼22 年度 4 億 1,500 万円)が文部科学省から
採択されました。関西で唯一の医学部をもつ私立総合大
学として、3つの総合病院を持ち優れた医療スタッフを
有する医学研究科と、在来の電子・機械・応用化学から
最新の情報、生命科学まで広い分野のバランスの取れた
研究組織である総合理工学研究科が連携して開発研究
活動を行い、診断治療等の医療技術のイノベーションを
はかります。その際、学内の複数の研究科の連携と、大
手企業から東大阪・八尾の優れた中小企業との共同開発、
市場調査、マーケティングなどをリエゾンセンターが統
括・支援します。
3つのプロジェクト(①先端医療診断法を活用した医
療技術の IT・ロボット化 ②最新の量子光学技術の悪
性腫瘍(ガンなど)治療への応用 ③電気化学的手法に
よる機能性材料を活用した医療診断と治療への応用)を
運用の大きな柱として、近畿大学の研究成果を社会貢献
に繋げます。
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