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脱「印刷インキ」で挑んだ 透明放熱性塗料の開発 ノウハウ 合金の新

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脱「印刷インキ」で挑んだ 透明放熱性塗料の開発 ノウハウ 合金の新
b-platz press 9 月号 vol.116 【特集 C10P】2P
脱「印刷インキ」で挑んだ
透明放熱性塗料の開発
がいることを知り、黒鉛やカーボンを使わ
電子機器向けの透明な
放熱性塗料を開発
だ。一方で、インキ製造で培った技術力を
電子機器は、内蔵する集積回路や半導
生かし、塗料を100ナノ単位まで細かく分
体素子の進化に伴うジレンマを抱えてい
散させることで光の透過性を高める技術を
る。高性能化とともに電気エネルギーが増
新たに開発した。新開発した塗料は、アル
大し、集積回路や半導体素子自身の弱点
ミニウムやマグネシウムなど5種類の物質
である熱までも発しやすくなってしまうから
を配合して焼き固めたセラミックス素材を
だ。この問題を解決するために合同インキ
粉末にし、樹脂と混ぜて液体にしている。
ずに放熱できる物質の配合について学ん
が今年に入って開発したのが、透明な放
粉末と樹脂の光の屈折率を一致させないと
熱性塗料。塗料に含まれるセラミックスが
光透過率を高めることができないため、
「樹
熱エネルギーとして移動する赤外線の放
脂の選択にも苦労した」と坪井氏。完成
射を活発にし、素子が出す熱を逃がす仕
した放熱性塗料の光透過率は90%を超え、
組みだ。
「透明なためどこに塗っても目立
特許の取得にこぎつけた。
たない。大手テレビメーカーや自動車メー
カーから多くの引き合いが来ている」と坪
現在引き合いが活発なのはLED向けだ。
「今後、モーターやプリント基板向けにも応用
井氏は確かな手ごたえを感じている。
できる。透過率を95%以上に高めればガラス
同社では、10数人いる技術者の一人ひ
にも塗布できるので、カメラ関連にも広がる」
とりに年に数回新たな開発アイデアを出
と坪井氏。
さらに、
塗料自体に着色することもで
すことを課している。
「従来付き合いのあ
きるため、
さまざまな用途が期待できるという。
る会社からだけではアイデアにつながる
情報は得られない」と、積極的に新しい
会社の人と会うことを促す。ただし分野だ
「1社でできることは
知れている」
けは絞っている。
「環境、エネルギー、そ
同社の本業は雑誌やチラシなどに使われ
して雇用につながるジャンル。いずれも経
る印刷用インキ。だが、WEBの台頭による
済産業省が力を入れている分野です」
。出
紙離れでこれからのインキの成長は見込み
てきたアイデアはすべて取り組んでみるの
にくい。そこで10数年前から「脱印刷イン
が同社のモットーだ。
キ」を掲げ、アートフラワー向けの絵の具、
透過率の高さで特許取得
その中から3年前に開発テーマに挙がっ
偽造防止用インキのほか、見る角度によっ
て色が変わる偏光インキ、さらには非接触
ノ
合
透明放熱塗料の
他社製品との比較(負荷10.8W)
(℃)
100
97.5
ヒーター接触部温度
表面温度
94.2
86.0
80
金属
た欠点
83.1
82.5
80.9
の特性
がる。
によっ
60
素が入
びにく
40
大阪
金属学
20
0
最先
高純
て高純
かけは
アルミ版
(塗装なし)
他社放熱塗料
(ツヤ消し黒)
自社ラッカータイプ
(透明)
▲アルミ版をヒーターブロックに貼り付け、
アルミ版に塗布。
それぞれ黒塗装(他社)
と透明塗料(自社)
を行った
(塗装膜
厚 20μm)
。表面温度・接触部温度とも、他社製品より高
い性能を示した。
ジスタ
高純度
たこと
純度金
以来、
比べ、
物 半導
いう超
合同インキ株式会社
代表取締役 坪井 良平氏
テルル
http://www.godoink.co.jp/
TEL 06-6716-2851 子や宇
会社DATA
設立/1948年
資本金/7,000万円 従業員数/115名
事業内容/オフセットインキ、グラビアインキ、ダ
ンボールインキのほか各種特殊インキを製造。近
年は新機能性製品に注力している。坪井氏は「技
術力を磨くためには日々の努力のみ。地道な積み
重ねの中にしか新たなものは生まれない」と説く。
認証用アンテナ向けの導電性特殊剤などを
ル、P
ンサー
10年
10
いて日
派遣し
てきたのが放熱性塗料。当初は、先行開
次々に開発してきた。新分野に挑むにあたっ
ガンに
発されている放熱性の高いカーボンや黒
ては、常に大学や研究機関にあるシーズを
いる。
鉛を放熱材料として使っていたが、出来
探り、異業種の多くの企業にアプローチし、
と異な
上がりの塗料が黒くなってしまうため、
「放
市場のニーズを探る。その上で、開発段階
解法、
熱部分が目に付く家庭向け製品ではデザ
では印刷機械や塗料メーカーなどの協力を
異物の
インが悪くなるので使えない」と電気製
積極的に仰ぐ。
「うち1社でできることは知れ
られる
品メーカーから指摘を受けた。そこで透明
ています。ないものは他社に補ってもらえば
た。3
な放熱性塗料を開発する挑戦が始まった。
いい」
。そんな柔軟な発想が、どこにもない
得した
大阪市立工業研究所に放熱材料の研究者
製品を生み出している。
必要と
02 b-platz press vol.116
bpp1009_02_11p.indd 1
10.8.31 1:40:02 PM
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