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千葉県公営住宅のあり方 検討委員会報告書

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千葉県公営住宅のあり方 検討委員会報告書
千葉県公営住宅のあり方
検討委員会報告書
平成16年3月
千葉県都市部住宅課
目 次
1.検討の目的・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1
2.検討の背景・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2
3.千葉県における公営住宅の現状・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5
4.千葉県における公営住宅の基本的課題・・・・・・・・・・・・・・・・・7
5.今後の公営住宅政策の方向性・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・9
5−1
基本的な考え方・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・9
(1)市場を補完する住宅セーフティネットの再構築 ・・・・・・・・・・9
(2)効率的なストック活用
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・9
(3)活力ある地域の形成への寄与 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・9
5−2
対応の方向性・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・11
(1)中長期的需要への的確な対応・・・・・・・・・・・・・・・・・・11
(2)住宅困窮者への的確な対応・・・・・・・・・・・・・・・・・・・13
(3)県と市町村の役割分担の明確化・・・・・・・・・・・・・・・・・14
(4)民間活力の導入・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・17
(5)管理の適正化・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・18
(6)地域コミュニティの維持・活性化・・・・・・・・・・・・・・・・19
□検討経過・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・20
1.検討の目的
21世紀に入り、地方分権、市町村合併、財政難など地方公共団体を取り巻く
環境が大きな変動の時期を迎え、また、社会構造が変化していく状況の中で、公営
住宅のあり方について見直しを行い、今後の施策の方向性を検討する必要が生じて
いる。
そこで県として、有識者からなる「千葉県公営住宅のあり方検討委員会」を設置
して検討を行った。
この報告書は、5回にわたる委員会の検討内容を報告書としてまとめたもので
ある。
今後、県ではこの検討結果をもとに、具体的な方針や施策内容について決定を
していくこととしている。
<委員名簿>
※五十音順
委員長
浅見
泰司
東京大学空間情報科学研究センター
教授
委
小川
肇
(株)ちばぎん総合研究所情報調査部
上席研究員
國生
美南子
特定非営利活動法人たすけあいの会「ふきのとう」代表
齊藤
広子
明海大学不動産学部
助教授
白石
真澄
東洋大学経済学部
助教授
丸山
英氣
千葉大学法経学部
教授
員
1
2.検討の背景
近年、経済・社会情勢の変化、地方分権の進展、市場重視・ストック重視への
住宅政策の転換など、公営住宅を取り巻く状況が大きく変化しており、県の公営
住宅施策においても、こうした動向に的確に対応することが求められている。
(1)経済・社会情勢の変化
(少子・高齢化の急速な進展)
千葉県の平成 14 年 10 月 1 日現在の高齢化率は 15.6%で、全国レベルでは
4番目に高齢化率が低い県である(全国平均 18.5%)。しかし、平成 37(2025)
年には 26.8%まで高齢化率は高まることが予測されており、今後は出生率の低下
と相まって 急速に少子・高齢化が進んでいくことが予測される。
県営住宅においては、県内の借家全体と比べ、65 歳以上の高齢者がいる世帯の
割合が高く、高齢化が進んでいる。特に、高齢単身・高齢夫婦の割合が高い状況
にある。
また、市町村営住宅は、県営住宅よりもさらに高齢化が進んでいる状況にある。
(経済・社会構造の大きな変化)
バブル崩壊以後、右肩上がりの経済成長、終身雇用・年功序列の賃金体系等
今までの経済の仕組みが崩れ、企業の倒産やリストラ、賃金体系の見直し、福利
厚生縮小等により、職とともに家を失う者やホームレスなど、さまざまな理由に
よる住宅困窮者が生じてきている。
また、離婚による母子・父子世帯の増加等、社会的弱者が増加してきている。
さらに、企業再編の影響を受けて県内から企業が撤退をする動きや、昨今の
都心回帰の現象により県内の人口が西地域に流入する動きもある。また、南地域
や東地域の一部では、人口の流出傾向が生じる人口動態となっている。
(2)行財政状況の変化
(厳しい財政状況)
長引く不況のため、県の平成 15 年度の税収は、平成3年度と比較すると
約8割まで減少すると予想されている。住宅関係予算も例外でなく、極めて厳し
い状況にあり、適切な整備・維持・管理が困難となってきている。
2
(民間の活用)
これまで、公営住宅をはじめとする社会資本の整備や公共の福祉に関するサー
ビスの提供については、行政主導で行われてきた。しかし、近年、行政関与の
あり方は「民間で出来ることは民間に」委ねる方向にある。また、長引く経済
不況により県・市町村の財政が非常に厳しい状況にある中、多様化・高度化する
住民ニーズに的確に対応するためには、社会資本整備や公共サービスの分野に
民間の資本・ノウハウを積極的に活用することが求められている。
(地方分権の進展)
「住民に身近な行政は、できる限り地方公共団体に委ねる」という基本原則の
もとに「地方分権一括法」が平成 11 年7月に制定された。
(平成 12 年4月施行)
これからの行政のあり方は、「市町村は日常生活に密着する事務を、県は広域
的な事務を」という表現に集約される。このように、今後さらに地方分権の流れ
が進展していくなかで、県と市町村の新たな関係を構築することが求められて
いる。
(市町村合併の流れ)
地方分権の時代を迎え、市町村は厳しい財政状況の中で、住民の期待に応え行
政サービスを維持・向上させることが求められている。このため、行財政基盤を
強化し、行財政を効率化する観点から、市町村合併の検討が進められている。
(住民自治の流れ)
地方自治体の財政は、危機的状況となっており、従来の行政による社会サービ
ス提供のあり方の転換が求められている。このような状況の中で、規制緩和や
構造改革の動きと相まって、ボランティア活動、市民活動といった自発的な活動
(NPO活動等)が活発化しており、今後は、これらの活動団体等が、新しい
社会サービス提供のパートナーとして、市民生活を支える新たな担い手となって
くることが想定される。
(3)住宅政策の流れ
国の住宅政策では、平成 13 年度より始まった第八期住宅建設五箇年計画に
向けた住宅宅地審議会答申において、住宅宅地政策は「市場重視」と「ストック
3
重視」の2つの視点を重視すべきとの方向性が示された。
(市場重視へ)
「市場重視」は、住宅ストックの大部分が民間により供給されているという
現状の中で、その民間住宅市場で良質なストックが形成、管理、流通されるよう、
市場を活用した政策展開が必要であるという考え方に基づくものである。
これにより、今後の住宅政策は、民間活力による良質な住宅ストックの維持・
形成に重点を移し、公の役割は市場が円滑かつ適正に機能するための条件を整備
し、支援することとしている。
また、これらの状況の中で、公営住宅は、自力で適切な居住水準を確保でき
ない者に対しての住宅セーフティネットとしている。
(ストック重視へ)
「ストック重視」は、少子・高齢社会の到来に伴う投資余力の低下や地域環境
問題等に対応するため、これまでの新規供給を中心とした住宅整備のあり方を
見直し、既存住宅のストックを適切に維持管理し、有効に活用していくという
考え方である。
4
3.千葉県における公営住宅の現状
(1)公営住宅ストックの現状
平成 15 年4月1日現在の県内の公営住宅管理戸数は 41,918 戸であり、県営住宅
と市町村営住宅の割合は概ね5割ずつで、県営住宅 19,651 戸、市町村営住宅 22,267
戸となっている。
また、本県の公営借家率(公営住宅の全借家数に対する割合)は 1.8%と低いが
(全国第 46 位)、公団・公社住宅が多く、公営・公団・公社の公共賃貸住宅が
全世帯に占める割合は6%と、関東では東京に次いで高い割合となっている。
公営住宅ストックの分布状況をみると、公営住宅ストックの約半数は千葉ブロック
に集積しており、借家に占める公営住宅の割合は西地域で低い。また、県営住宅の
約半数は昭和40年代、50年代に建設されたものである。
(2)募集・応募状況
平成 14 年度の公営住宅の応募倍率は、県営住宅が 11.8 倍、市町村営住宅が 7.0 倍
である。特に、西地域の応募倍率は、県営住宅が 24.9 倍、市町村営住宅で 15.2 倍と
高い。
県では、住宅に困窮する者の中でも特に居住の安定を図る必要があると考えられる、
高齢者、母子・父子世帯、DV被害者世帯等に対しては、入居選考において優先的
な取り扱いを行っているが、公営住宅の応募倍率が高い中で入居が困難な状況にある。
(3)入居者の状況
県営住宅の入居世帯の推移をみると、高齢単身者、母子・父子世帯等が年々増加
している。特に高齢単身者世帯については、県営住宅入居世帯の 10.7%を占めており、
平成 12 年国勢調査による県全体の割合 4.5%と比べ高い。
また、入居者の収入をみると、公営住宅は原則収入分位 25%以下、高齢者等の裁量
階層については収入分位 40%以下を対象としているが、県営住宅入居世帯の約7割が
収入分位 10%以下であり、極めて収入の低い世帯が多い。
県営住宅の収入超過者・高額所得者数及び割合は、平成8年の公営住宅法の改正
以降共に低下しているものの、平成 14 年度においては収入超過者が 12.3%、高額
所得者が 0.5%存在している。また、入居世帯の約1割が入居承継承認世帯となって
いるなど、長期入居者の存在も見られる。さらに、入居後の家族人員の増減により、
最低居住水準未満世帯が出現する一方、5人・6人向けの住宅に1人・2人世帯が
5
居住している状況がみられるなど、世帯規模と住戸規模のミスマッチが生じている。
(4)財政と維持管理状況
公営住宅関連予算は、財政難の中で極めて厳しい状況にあり、公営住宅管理費も
平成9年度をピークに減少している。一方、家賃滞納世帯は増加し、ここ 10 年間
で約2倍となっている。また、家賃減免世帯は年々増加(入居者の約6%)して
おり、それに伴い家賃減免額も増加傾向にある。
このような中で、県営住宅については、昭和 40・50 年代に大量供給した住宅
ストックが大がかりな改善工事を必要とする時期(概ね耐用年限の 1/2 を経過した
時期)を迎えており、適正な維持管理が今後ますます困難となることが予想される。
市町村営住宅については、耐用年限を経過した住宅が多く、特に東地域・南地域
ではこれらのストックの維持更新が大きな課題となっている。
(5)市町村アンケート・ブロック会議の結果
市町村アンケートによると、東葛・葛南・千葉ブロックでは公営住宅は「不足
している」と回答している市町村が多く、今後の方針として、借上げ等により量的
充足を図るという市町村が多い。一方、その他の地域では、公営住宅は充足して
おり、今後の方針として需要の少ない団地については用途廃止等を図り、現在の
管理戸数より減少させるという市町村が多い。また、市町村営住宅は、県営住宅に
比べて耐用年限を経過した住宅が多く、設備改善や建替、バリアフリー化の遅れ
などが大きな課題となっている。
(6)世論調査結果
平成 15 年に県民を対象に実施した公営住宅のあり方に関する世論調査によると、
住まいを維持することが困難になった場合の公営住宅入居意向については、「公営
住宅に入居したい人」が4割を超え最も高く、住宅困窮層に対する住宅セーフティ
ネットとしての役割が期待されている。また、公営住宅に入居しやすくした方が
良いと思う世帯については、
「高齢者世帯」が最も高く、次いで「母子・父子世帯」
、
「生活保護世帯」、「身体障害者世帯」となっている。
今後、公営住宅に新たに組み合わせると良いと思われる機能については、「保育
所、託児所などの子育てを支援する機能」や「デイサービスセンターなどの高齢者
向けサービスが行える施設としての機能」が上位となっており、公営住宅に子育て
支援や高齢者生活支援などの機能を付帯することが望まれている。
6
4.千葉県における公営住宅の基本的課題
公営住宅を取り巻く状況と千葉県における公営住宅の現状を踏まえて、千葉県に
おける公営住宅の基本的課題を以下のとおり抽出した。
(1)公営住宅の需要の把握と対応
これまで公営住宅は、経済的に住宅を確保することが困難な者への住宅セー
フティネットとして、その役割を果たしてきた。しかし、市場重視の住宅政策へと
移行している中、これまでの経済的な観点からだけではなく、年齢や障害などに
より市場から敬遠される者への対応も含めた住宅セーフティネットへと、公営住宅
に求められる役割は変化してきている。このため、公営住宅が今後果たすべき役割
と位置付けを明確化して、これに基づく公営住宅需要を的確に把握することが求め
られる。
また、県内の人口及び世帯数は依然増加を続けているものの、平成 27(2015)年
∼平成 32(2020)年頃にピークを迎え、減少に転じることが予測されている。公営
住宅を整備する上で公営住宅需要については、短期的に焦点を定めるのではなく、
中長期的な視点から捉えていく必要がある。
さらに地域的に見ると、西地域で公営住宅需要が高く、ストックが不足する一方、
南地域や東地域の一部で需要が低いなど、需給に偏りがあるため、それぞれの地域
における公営住宅を取り巻く状況を的確に把握し、適切な対応を図ることが求めら
れる。
(2)真に住宅に困窮する者への対応
県内の公営住宅の応募倍率は高く、真に住宅に困窮する者の入居が困難な状況
にある。一方、公営住宅には高額所得者や長期入居者なども居住しており、
不公平感を生む状況となっている。
財政が厳しい中、真に住宅に困窮する者に対応していくためには、地域の実情
や入居希望者の住宅困窮事情をきめ細かく反映させ、困窮度の高い者から入居
できるような仕組みとすることが求められる。
また、近年、ホームレス、DV被害者など経済的な住宅困窮層以外の困窮者が
増えており、こうした人々への新たな対応が求められている。
7
(3)ストックの管理と財政難
県営住宅においては、昭和 40 年代後半から 50 年代半ばにかけて大量供給した
中層耐火構造の住宅が全ストックの約半数を占めている。これらのストックは、
今後一斉に大規模改修等の時期を迎えることから、財政難の中で如何に適切な
維持管理を図っていくかが重要な課題となっている。
また、市町村営住宅については耐用年限を経過した住宅が多く、特に東地域・
南地域ではこれらのストックの維持更新が重要な課題となっている。
(4)地域における公営住宅の役割
近年、公営住宅では、高齢者世帯(特に高齢単身者)や母子世帯等の、福祉
サービスを必要とする世帯が増加しており、福祉との連携が求められる。
また、古い団地では、入居者が高齢化し、年齢層や世帯構成・所得階層に偏り
が大きくなっており、団地の維持管理活動やコミュニティ活動の停滞につながっ
ているため、良好なコミュニティを維持・形成することが求められている。
さらに今後は、団地内だけでなく周辺地域の再生・活性化に寄与するため、
保育所やデイサービス施設等の生活支援施設を団地内に併設するなど、地域と
一体となった地域貢献型の公営住宅整備も求められており、公営住宅と地域の
まちづくりとの関わりがますます必要になっている。
8
5.今後の公営住宅政策の方向性
ここでは、千葉県における公営住宅を取り巻く状況や課題を踏まえ、今後の公営
住宅政策の基本的な考え方と対応の方向性を示す。
5−1
基本的な考え方
(1)市場を補完する住宅セーフティネットの再構築
・市場重視の住宅政策へと転換する中、公営住宅政策においても、民間賃貸住宅
市場との関係や、公団住宅、特定優良賃貸住宅などの公的賃貸住宅政策との
関係の中で、公営住宅のあり方や位置付けを考えていく必要がある。
・また、市場重視の中で、市場機能のみでは住宅を確保できない者への、柔軟で
公平な対応を図っていくことが必要である。
・このため、公営住宅がこれまで以上に、真に住宅に困窮する人に的確に供給
され、県民共有のセーフティネットとして一層有効に機能するよう、入居資格
の適正化に努めながら、住宅セーフティネットの再構築を図る必要がある。
・今後はさらに、地域の住宅事情や市場状況の把握・分析に努め、県と市町村の
連携を強化しながら、適切な対応を図ることが重要である。
(2)効率的なストック活用
・県内には、平成 15 年度末現在、約4万2千戸の公営住宅ストックがある。
今後の公営住宅政策においては、財政難や、環境問題など環境面からの制約が
強まる中で、ストック重視の視点から、これまで蓄積してきたストックを有効
に活用していくことが重要である。
・特に、県内の公営住宅のストックは年代的偏在、地域的偏在の問題があること
から、ストックマネジメントの観点を取り入れ、既存ストックを適切に維持
管理・修繕しつつ、効率的に運用していくことが必要である。
(3)活力ある地域の形成への寄与
・近年の、公営住宅における高齢者世帯(特に高齢単身者)や母子世帯等の福祉
サービスを必要とする世帯の増加に対応し、これまでの供給重視から、高齢者
対応など、ソフト面に重点を置いた居住重視の公営住宅政策へと転換していく
必要がある。
9
・このため、今後の公営住宅政策は、地域の居住状況を把握しつつ、福祉との
連携やコミュニティの維持・活性化、まちづくりへの寄与など、地域貢献を
視野に入れて、地域政策と一体的に展開していくことが求められる。
・また、その実現に向けては、県と市町村、さらにNPOなどとの連携を一層
強めていく必要がある。
10
5−2
対応の方向性
(1)中長期的需要への的確な対応
公営住宅の需要について、市場機能のみでは自ら住宅を確保できない低額所得
者を対象に、県営・市町村営住宅ストックと公営住宅並家賃の公団住宅ストック
をもとに試算してみると、西地域では需要が高い一方、それ以外の地域では低い
状況が推察される。
また、長期的視点でみると、公営住宅需要は今後も増加するが、人口・世帯数
が減少に転じる平成 27 年頃をピークに減少し、平成 52 年頃には現在の対応スト
ック数と同程度になるものと推測される。
このため、中長期的な人口・世帯数の推移を鑑み、地域需要を的確に把握し、
県と市町村は、既存ストックを有効活用するための計画の見直しと総量の調整を
図る。
なお、西地域については、当面は量的に早急な対応を図ることが必要であり、
西地域以外の地域では、地域の状況等を勘案しながら効率的な運用を図ることが
必要である。
(県の取り組み)
●公営住宅需要を的確に把握し、広域的な観点から既存ストックを有効かつ効率的
に活用していく。(建替え・改善等の推進、統廃合、等)
●需要に対して既存ストックが充足状況にあると推察される地域については、地域
の実情等を勘案しながら統廃合を進めていく。また、効率的な活用が困難な団地
等についても同様に検討を進めていく。
●公営住宅需要の高い西地域を中心に供給することとし、その手法としては従前の
整備方式に加えて、維持管理を含めたトータルコストに配慮しながら、新たに
借上方式の導入を行う。なお、借上方式については、県内の特定優良賃貸住宅に
空き家が多く、住環境やバリアフリー化などの面で公営住宅の整備基準に適合
しやすいことから、既存特定優良賃貸住宅の県営住宅への転用することも検討
していく。
11
図
公営住宅需要の推移(概念図)
公営住宅の需要
(推計量)
現時点の
ストック量
現時点
平成 27 年∼平成 32 年
平成 52 年頃
人口世帯のピーク
・公営住宅の需要(推計量)は、平成 52 年頃に現在のストック量と
同程度になる。
・中短期的な需要に対しては、借上方式等による対応が考えられる。
12
(2)住宅困窮者への的確な対応
近年の経済社会情勢の変化に伴い、住宅に困窮する低額所得者に加え、高齢や
障害などにより市場から敬遠される者、またDV被害者やホームレス等、さまざま
な理由による住宅困窮者(新たな住宅困窮者)が生じており、住宅セーフティネッ
トの役割を捉え直していく必要がある。
また、企業の人員削減、賃金体系の見直し、福利厚生縮小等も行われ、いわゆる
社会構造に組み込まれたセーフティネットが崩壊傾向にあり、このような状況に
対しても柔軟な対応が求められている。
このことから、真に住宅に困窮する者に対して、福祉施策と連携を図りつつ公営
住宅の枠組みの中で、的確で柔軟な運用を図ることが必要である。
(県の取り組み)
●DV被害者・ホームレス等、新たな住宅困窮者に対して、福祉部局における支援
策と連携しながら、柔軟で適切な対応を図る。
●増加する高齢者世帯(特に高齢単身者)や母子世帯等の福祉サービスを必要と
する世帯に対応するため、福祉部局との連携を今後一層強化していく。
図
公営住宅(住宅政策)で対応すべき領域・対象(概念図)
新たな住宅困窮者への対応
住宅に困窮する低額所得者への対応
公営住宅
DV 被 害 者・ ホ ー ム レス
同居親族のある者で低額
等
所得者
高齢者等:40%以下
<入居者選考の優先的な
取り扱い>
一定の資格を有する者
・所得要件
(自立)
・自立要件
セーフティ
ネット機能
シェルター機能
(一時的な保護機能)
(緊急)
<単身入居>
高齢者・生活保護世帯・
身体障害者等
民間住宅
(常時介護を要し、居宅に
おいてこれを受けること
が困難な者を除く)
精神障害者・知的障害者
一定要件
の単身者
福祉政策
住宅政策
13
福祉的な対応による居住の確保
原則:収入分位 25%以下
(3)県と市町村の役割分担の明確化
公営住宅法では、公営住宅事業の事業主体を「地方公共団体」と位置付けるのみ
で、都道府県と市町村の明確な役割分担はなされていない。
しかし、市場重視、居住重視の公営住宅政策への転換や、地方分権、市町村合併、
住民自治の流れの中で、公営住宅においても地域とのつながりが重要となっており、
地域の状況に対応した公営住宅政策が求められる。
今後一層、県と市町村の連携を強化し、互いの取り組みを尊重しつつ住宅セーフ
ティネットを確保するため、今後の県と市町村の役割を以下のように明確化する
ことが求められる。
(市町村の役割)
①住宅セーフティネットの地域的な対応
・市町村内で発生する住宅困窮層に対応するため、住宅政策における住宅セーフ
ティネットの位置付けを明確にし、主体的に公営住宅政策を行うことが求め
られる。
・そのためには、まず市町村は地域の市場状況や地域で発生する住宅困窮層に
対する需要を的確に把握し、計画的かつ効率的な公営住宅の供給・管理を行う
ための計画づくりを行い、主体的に取組んでいくことが求められる。
②地域居住政策ニーズへの対応
・福祉やまちづくりとの連携など、地域の居住支援や地域の魅力を高めるため、
地域居住政策ニーズに総合的に対応した公営住宅政策を行うことが求め
られる。
(県の役割)
①住宅セーフティネットの広域的な対応
・モデル的な取組みやDV被害者・外国人対応など、地域分散よりも市町村の
枠を超えて対応する方が政策効率の高いものについては、県が対応していく。
・広域的な観点から、市町村域を超えた需要や県内の公営住宅の需給バランスに
配慮し、効率的な公営住宅政策を行う。
②主体的に取組む市町村への支援
・市町村の主体的な取り組みを促進するため、公営住宅について主体的に取組む
市町村に対し、その取組に応じた支援を行う。
14
但し、上記の役割分担を実現するためには、現実的に行財政などの面で解決
すべき課題が多いため段階的取組みが必要である。
また、市町村の行財政状況等は異なることから、市町村の実情に応じた対応が
必要である。
このため、今後の県と市町村の役割分担のあり方を見据え、公営住宅の需給
バランスに配慮しながら、お互いの状況や住宅政策の方向性を尊重しながら、
実情に応じた具体的な対応を、検討・協議していく。
(県の取り組み)
①
住宅セーフティネットの広域的な対応
●DV被害者など新たなニーズへの対応や、PFI的事業等のモデル的な取組み
など、市町村の枠を超えて対応する方がより政策効率の高い事業を行う。
●現在、既存県営住宅は、千葉県内の公営住宅ストックの約半数を占め、住宅
セーフティネットとしての役割を大きく担っている。このため、県は、既存
県営住宅の適切な維持管理を図りつつ、広域的な観点から、市町村域を超えた
需要や県内の需給バランスに配慮し、効率的な公営住宅政策を行う。
具体的には、以下の取組みを行う。
・既存県営住宅の有効活用
公営住宅需要を適切に把握しながら、既存ストックを有効に活用していく。
・既存県営住宅の市町村への移管
既存県営住宅の有効活用を必要とする市町村へは、移管を進める。
また、用地を市町村等が所有する旧特別県営住宅については、市町村合併を
念頭に入れながら、市町村への移管や統廃合を進める。
・西地域の需要への対応
西地域については、市町営住宅に対して県営住宅の割合が少ない状況である。
また一方で、県外・県内他市町村からの移動が多く、公営住宅需要が高いこと
から、市町による取組に加えて県においても、借り上げ方式や既に取得した
新規住宅用地等の活用により公営住宅の供給を図る。
・千葉市への対応
千葉市では、市営住宅に対して県営住宅の割合が大きい状況であり、公営
住宅需要も概ね充足状況にあると推察されることから、政令指定都市としての
主体的な取組を尊重して、今後は基本的に県営住宅の新規供給は行わず、既存
ストック量についても適正な役割分担となるよう検討・協議を進め、漸減させ
15
ていく。
②
主体的に取組む市町村への支援
●市町村の主体的な公営住宅の整備を促進するため、県は以下のような支援を
行う。
・住宅事情や公営住宅需要等の調査・分析及び情報提供を含めた政策立案面の
支援
・公営住宅の計画や設計等の技術的支援
・公営住宅の管理・運営面の支援(ノウハウの提供等)
・財政的に困難な市町村への財政面的支援(移管時)
等
特に、一部の地域の市町村営住宅においては、耐用年限を経過した木造・簡易
耐火構造の住宅が多く、ストック再生が重要な課題になっていることから、
ストック再生の面から市町村の取り組みを支援する。
16
(4)民間活力の導入
県・市町村の財政が厳しい状況の中で、行政としては適正な住宅政策を行い、
効率的な対応を図る必要があり、その一つの方策として、民間の資金・ノウハウ
を活用することが求められている。
このため、公営住宅整備事業に民間を活用(PFI的手法・借上げ等)すること
により、需要に的確に対応し、効率的な政策展開を図る。
但し、公営住宅建替等に際しては、単にコストやサービスの効率化だけではなく、
住宅政策を柔軟かつ効率的に展開するため、ソーシャルミックスや多様な居住形
態の推進、高齢者世帯や子育て世帯への対応等、民活により様々な機能の導入を
検討する。
(県の取り組み)
●県営住宅の整備(新設・建替)にあたっては、地域の状況を把握して幅広い住宅
政策を展開する視点から、PFI的手法や借上方式等、民間活力の導入を原則と
して検討したうえで進めていく。
●民間による適切な公営住宅の建設を誘導するための、指針の作成を検討する。
17
(5)管理の適正化
県内では公営住宅の入居希望者が多数存在する一方、収入超過者・高額所得者等
が居住するほか、入居承継により長期にわたって継続して居住する状況がみられる
など、公営住宅居住者の一部の実態に対して不公平感が生じていることが指摘され
ている。こうした不公平感を解消し、公営住宅を真に住宅に困窮する者に供給する
ため、公営住宅を的確に運営する観点から、制度の見直しや柔軟な制度運用を図る。
また、財政状況が逼迫する中で、適切な維持管理、修繕を行う必要があるため、
自治会等の住民による自主管理を促進するとともに、民間活力の導入などにより、
管理の効率化を図る。
(県の取り組み)
●真に住宅に困窮する世帯に対応するため、国の動向を踏まえつつ、具体的な方策
を検討していく。
●管理の効率化を図るため、指定管理者制度の導入に際し、修繕計画の策定を含む
管理の一括委託を検討していく。
(主要な取組事項)
①
真に住宅に困窮する世帯が入居できる仕組み・方策
②
長期継続入居者への対応
③
収入超過者・高額所得者対策
④
世帯と住戸規模のミスマッチの解消
⑤
効率的な維持管理と修繕の実施
⑥
便益を家賃に反映させる仕組み(応益性の徹底)
⑦
家賃滞納の解消(徴収ルール・手続きの見直し)
⑧
福祉との連携
⑨
コミュニティ・維持管理活動への支援
⑩
コミュニティミックスの推進
18
(6)地域コミュニティの維持・活性化
公営住宅では入居者が高齢化し、年齢層や世帯構成、所得階層に偏りが大きく
なっており、住民の維持管理活動やコミュニティ活動の停滞につながっている。ま
た、高齢者・障害者・母子家庭等が増加する傾向の中で、住民と身近な関係にある
市町村の福祉部局等との連携を一層強化していく必要がある。
さらに、今後は団地周辺地域との関係もより重視し、周辺地域の再生・活性化に
寄与するような、公営住宅団地としていくという視点も重要である。
このため、今後は適正な団地内コミュニティの維持に視点を置いた公営住宅の
供給・管理のあり方を検討するとともに、地域のまちづくりや福祉などと連携し、
一体となった良好なコミュニテイの形成に努める。
(県の取り組み)
●既存の県営住宅においては、団地内コミュニティの維持・活性化を支援するため、
自治会活動を強化するための方策や住民組織・NPO等との連携・活動支援策、
多世代ミックスを図るための手法等を検討していく。また、県営住宅を含む地域
の再生・活性化に寄与するよう、まちづくりや福祉などとの連携を検討していく。
●県営住宅の建替えに際しては、地域に貢献する施設との併設を検討したうえで
進める。
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□検討経過
1
委員会開催経過
区
分
第1回
開
催
日
平成 15 年 6 月 11 日
検
討
内
容
○千葉県における公営住宅のあり方について
・公営住宅の現状と必要性
・今後の進め方
第2回
平成 15 年 8 月 1 日
○公営住宅の需要推計と新たな住宅困窮者への
対応について
○民間活力の導入について
第3回
平成 15 年 12 月 15 日
○県と市町村の役割分担について
○民間導入の「PFI及びPFI的手法」について
第4回
平成 16 年 1 月 16 日
○管理の適正化について
第5回
平成 16 年 2 月 25 日
○報告書(案)について
※第 3∼5 回委員会では、10 市3町がオブザーバー参加した。
参加市町:千葉市、船橋市、松戸市、流山市、佐原市、成田市、佐倉市、茂原市、
君津市、袖ヶ浦市、小見川町、一宮町、千倉町
2
実施した調査等
(1)県民世論調査
平成 15 年 8 月に、県内在住の 3,000 人を対象に、「公営住宅のあり方」に
ついて県民世論調査を実施した。
(2)市町村ブロック会議
市町村営住宅の状況把握と意見交換を行うため、平成 15 年 9 月 9 日∼25
日にかけて、県内 5 会場(大網白里町、木更津市、成田市、千葉市、船橋市)
においてブロック会議を開催した。
なお、会議に先立ち、施策方針等に関するアンケートを実施した。
3
事務局
・千葉県都市部住宅課(住宅政策室)
・協力コンサルタント:(株)市浦都市開発建築コンサルタンツ
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