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国語総合
第 58 〜 59 回
(短歌)〈全二回〉
現代文 短歌・俳句
その子二十
自然を短歌にどのように
■第一回 学習のポイント
の
ポイント
学習
描いているか、読み取る
講師 畠 山 俊
一首目の北原白秋の歌は竹やぶと蛍を詠んでいる。竹やぶの薄
闇の中ではかすかに存在を感じられた蛍だが、そこを出たとたん
の
第一回 五七五七七のリズムを持つ短歌を詠んで、歌に描
かれている情景をとらえる。
第二回 孤独や望郷の念といった短歌に表現されたさまざ
まな感情を読み取る。また、短歌に描かれた生と死を読み
短歌の流れを見通す
比べる。
ポイント
学習
*明治時代初め……伝統的な和歌の流れを守る
*明治三十年代……浪漫的な和歌 与謝野晶子
写実的な和歌 正岡子規
*明治四十年代……自然主義 若山牧水、石川啄木
島木赤彦、斎藤茂吉
耽美派 北原白秋
*大正期……………写実主義(正岡子規の流れ)
た。竹やぶの薄暗さと蛍のほの明かり。竹やぶの竹のまっすぐな
(白秋門下)木俣修、宮柊二
自由な歌風 釈 迢空、北原白秋
そして、その水が豪快に落ちてくる際に、空までも引きずりおろ
してくるかの力強い様子に見える情景を詠んでいる。自然の大き
さ、豪快さを表現している。「ひきおろしざま」の語が四句目と
五句目にまたがって置かれているのが力強さを効果的に伝えてい
る。
の
ポイント
学習
昔と今の恋の歌を読み比べる
俵万智、河野裕子
*戦後………………………近藤芳美、寺山修司、塚本邦雄 二首目の上田三四二の歌は那智の滝(和歌山県)を詠んだ歌で
ある。滝を見上げると、水がいきなり躍り出てくるように見える。
岡井隆、上田三四二、馬場あき子
*近年………………口語・外来語表現を自由に使う
と細かさを表現している。
力強さと日の光の強さ。この強弱のコントラストが自然の大きさ
にその存在がかき消えてしまったかのように見える瞬間をとらえ
学習のねらい
一首目は今から百年以上前に作られた与謝野晶子の歌である。
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高校講座・学習メモ
ラジオ
学習メモ
[現代文] 短歌・俳句
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第 58 〜 59 回
なかった作者の生涯を思うと、視点が絞られるのと同時に孤独
くしけず
髪の毛を梳りながら、自分の美しい若さを春の華やかな美しさ
望郷の念からくる孤独を読む
感がいっそう迫ってくる感じがする。
と重ねている。自分の美しさを誇らしげに思う気持ちがあふれ
ている歌である。
二首目の歌は現代の歌で俵万智の作である。せっかくいとし
の
作者寺山修司は東北青森から東京に出てきた人である。ある
ポイント
学習
も残念なので、その予定だけは鉛筆書きで入れた、いつでも変
時、友人と喫茶店で向かい合った。友人はふるさとのなまりを
い人のために空けてあった日に予定が入ってしまった。いかに
えられるように。かわいらしい、控えめな女性の歌になってい
すっかり失くして標準語で話しているのだろう。それを作者は
モカ珈琲は決してふるさとで飲むようなものではなく、実は自
る。ともに恋を主題にした女性の歌だが、印象の違いを読み比
分も知らず知らずのうちに都会の雰囲気に溶け込んでいたので
気にするが、ふと自分がモカ珈琲を飲んでいることに気づく。
■注意する語
ある。友人がふるさとから離れていく孤独感。それとともに自
べ、味わってみるとおもしろい。
空白なりし……「し」は古文の過去の助動詞。
三行書きの短歌を詠む
一首目は大正時代に作られた歌で、斎藤茂吉が母の死を扱っ
短歌に詠まれた生と死とを読み取る
この歌の一行目は「東海」「小島」
「磯」
「白砂」と海辺に居
たものである。母親が死んでいくのであるが、その母は自分を
にがし……古語。現代語では「苦い」
なくせし…「し」は古文の過去の助動詞
■注意する語
持ち(望郷の念)の裏側に潜む孤独感を鋭くついた歌である。
分もそこから切り離されていく孤独感。ふるさとを懐かしむ気
予定を入れぬ…「ぬ」は古文の完了の助動詞。
の
■第二回 学習のポイント
学習
ポイント
作者石川啄木は短歌を三行書きにすることを始めた人である。
「短歌とは短詩、短い詩である」という考えのもと、三行に分
の
る作者の視点が徐々に絞られていくように書かれている。二行
産み、その乳によって自分を育てた存在である。それをそのま
ポイント
学習
目は自分の境遇の説明。そして三行目は今の状況。泣いていて、
ま歌に詠んだ。出産から死までの母の一生が凝縮されたような
ける書き方を始めたと言われている。
なぐさめてくれるのは蟹だけだというのだ。どうして泣いてい
歌であり、「母よ」の呼びかけが死を悼む気持ちを強調している。
二首目は現代の歌で河野裕子の作である。生んだばかりの子
るかは書かれていないが、仕事や私生活で悩みを抱えた作者の
孤独感が根底にあると考えられている。生前ほとんど認められ
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[現代文] 短歌・俳句
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第 58 〜 59 回
どもを湯につけ、抱いて眠ると自分と子どもの区別がつかないよ
うな母子一体の豊かな時間が感じられるという歌である。
どちらの歌も肉親への痛切な思いが感じられ、そのいとしさは
死にゆくものと生まれ出たものであるのに、不思議と似た感じが
ある。読み味わってみたい。
だ
み
の
よ
あき
ま
じ
こ
ち
智
万
孤 独
■
■■
いそ
しらすな
東海の小島の磯の白砂に
かに
命 ■
■■
コーヒー
ち
た
いし かわ たく ぼく
石川啄木
てら やま しゆう じ
も
こ
きち
寺山 修 司
さい とう
ゆう
斎藤茂吉
の
子がわれかわれが子なのかわからぬまで子を抱き湯に入り子を抱き眠る
河野裕子
かわ
我が母よ死にたまひゆく我が母よ我を生まし乳足らひし母よ
わ
ふるさとの訛りなくせし友といてモカ珈琲はかくまでにがし
なま
われ泣きぬれて
うえ
きた はら はく しゆう
■注意する語
■■
さ
上田三四二
北原白 秋
蟹とたはむる
はたち
■■
やぶ
い
たまひ……古語で用いる敬語。母に敬意を表している
自 然
■
まうそう
その子二十 [短歌]
かす
昼ながら幽かに光る蛍一つ孟宗の藪を出でて消えたり
恋 ■
よ
俵
たわら
与謝野晶子
滝の水は空のくぼみにあらはれて空ひきおろしざまに落下す
くし
その子二十櫛にながるる黒髪のおごりの春のうつくしきかな
君のため空白なりし手帳にも予定を入れぬ鉛筆書きで
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