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微小重力実験フリースペース仕様の紹介

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微小重力実験フリースペース仕様の紹介
日本マイクログラビティ応用学会誌 Vol. 18 No. 2 2001 (7074)
特集航空機を利用した微小重力実験
(技術紹介)
微小重力実験フリースペース仕様の紹介
宮内
孝典・景山
大郎・筧
幸次郎
Introduction of Free Space Style for Reduced-gravity Experiment
Takanori MIYAUCHI, Dairo KAGEYAMA and Koujirou KAKEHI
Abstract
Since 1996, Reduced-gravity experiment ‰ight by GulfstreamII (GII) airplane has been carried out for the large
sized or more electric power system experiment. For the life science or medical area scientist requirement, Diamond Air
Service Inc. has been studied to modify the interior of GII cabin for ``Free Space Style'' and the modiˆcation plan was
approved by Civil Aviation Bureau of Japan this time. Up to this time, scientists and subjects need to fasten their seatbelt
during the reduced-gravity experiment ‰ight in Japan; notwithstanding they are conducting the free space training or experiment with unfastened condition in U.S.A., Russia, and France. This paper introduces outline of modiˆed GII airplane in hard and soft area for ``Free Space Style'' speciˆcation. And it will assure the good free space environment for
manned reduced-gravity experiment ‰ight training and medical or life science conditions such as standing, sitting, and
reclining positions or free ‰oating condition.
.
緒
言
Gulfstream 機( Fig. 1 に示す.以下 G と略す.)
による微小重力実験は平成 8 年より,大型の実験装置や大
電力の必要な実験について実施している.
ダイヤモンドエアサービス社(以下 DAS と略す.)で
は,かねてより,インフラ等整備検討委員会でも検討され
ていたライフサイエンス,医学系実験等の一部にも対応可
能な機内装備として, G 機にフリースペース仕様の追
加改修を行ない航空局の承認を受けることが出来た.
従来実験を行なう場合,パラボリックフライト中,実験
者,及び被験者はシートベルトを締めた状態でシートに着
席することが必要であった.一方,アメリカ,ロシア,フ
ランスでは既に航空機を用いた微小重力環境下での有人訓
練や無固定のライフサイエンス系実験が行われているが,
日本国内では今までこのような実験環境が整備されていな
かった.
この度,機内の改修などを含めたハード,ソフト面の対
応により,微小重力環境下の機内で自由に行動することが
Fig. 1
Gulfstream II (GII)
可能となった.このことにより,今後は航空機の微小重力
環境を利用した,有人,体感訓練や自由空間を利用した立
位,臥位,座位などの医学系,ライフ系実験及びフリーフ
能になった.本稿では微小重力実験フリースペース仕様を
ローティングによる良質な G 状態を利用する実験等が可
紹介する.
株 〒480
ダイヤモンドエアサービス
0293 愛知県西春日井郡豊山町大字豊場 1
Diamond Air Srvice Co. Ltd., 1, Oaza Toyoba, Toyoyama-cho, Nishikasugai-gun, Aichi 4800293, Japan
(E-mail: miyauchi@das.co.jp, URL: http://www.das.co.jp/)
16
― 70 ―
微小重力実験フリースペース仕様の紹介
.
フリースペース仕様の概要
.
機内レイアウトの種類
パラボリックフライト中の機内で,被験者や実験者が拘
機内レイアウトは Fig. 3~Fig. 6 に示す様に各種実験が
束されることなく自由な姿勢で浮遊したりその他の自由な
合理的に実施可能な様に 4 種類のバージョンを設定してい
実験が実施できる様,以下の対策を実施している.
る.下記にそれぞれのバージョンの特徴を示す.
パラボリックの前後に加わる下(床)方向の G に対す


Version 1 (Fig. 3)
る荷重の軽減やパラボリック中の前後,左右方向に発生す
搭乗者は DAS 支援者を含め合計 7 名搭乗することが出
る加速度による,壁などへの衝突荷重を軽減する為の対策
来る.このバージョンは最も広いフリースペースを確保し
として,パラボリックフライトパターンの変更(リカバ
てある為,フリーエリアでは 4 名程度の人で体感訓練など
リー時の G 軽減)やハード面ではフリースペースエリア
が実施出来る.又,シートを取り外すことにより,より広
の床,壁にクッション材の設置,又,搭乗者に対するパラ
いスペースを提供することも可能である.
ボリック終了前の合図(音,表示器)等を実施している.


Version 2 (Fig. 4)
フリースペース仕様の基本は,機内キャビンスペース
搭乗者は DAS 支援者を含め合計 9 名搭乗することが出
(全長約6.5 m)のエリアをフリースペースエリアとして,
来る.このバージョンは最も多くの人が搭乗可能である.
Version 3 (Fig. 5)
床,サイド,前後をクッション材等を利用し,全体を覆っ


ている.搭乗者のシートを含め実験に必要な装置,機材は
搭乗者は DAS 支援者を含め合計 7 名搭乗することが出
来る.実験装置または実験支援装置搭載用に G 共通ラ
この中に装備出来る様にしている.
本フリースペース仕様の装備は主に下記のものである.
ック(150 kg  2 台)が搭載可能である.
尚,Fig. 2 に機内装備写真を示す.




搭乗者は DAS 支援者及びベッドの被験者を含め合計 8
のパテーション及び実験用ラック等はクッション材で
名搭乗することが出来る.このレイアウトは航空機の離着
覆っている.又,窓はポリカーボネート板で保護して
陸を通してベッドを利用する実験が可能である.又,Ver-
sion 3 と同様実験装置搭載用 G 共通ラックも搭載可能
いる.


キャビン前方,後方には,浮遊物の飛び出し防止用
に防護ネットを設置している.


である.必要に応じてシートやラックの取り外しが可能で
ある.
キャビンスペースの前後のパテーションに G 値又
は mG 残時間表示の表示盤を設置している.


Version 4 (Fig. 6)
機内キャビンスペースの床面と側面,キャビン前後
尚,各機内レイアウトで搭載する共通のオリジナル実験
支援装置は下記に示すものである.
mG 終了前合図ブザーを設置している.
Fig. 2
日本マイクログラビティ応用学会誌 Vol. 18 No. 2 2001


G システム


電源システム(AC100V 7 KVA, DC28 V 160 A)
Interior of the Cabin
― 71 ―
17
宮内 孝典,他
Fig. 3
18
Cabin Arrangement Version 1 (7 Persons, Standard)
Fig. 4
Cabin Arrangement Version 2 (9 Persons)
Fig. 5
Cabin Arrangement Version 3 (7 Persons)
Fig. 6
Cabin Arrangement Version 4 (8 Persons)
日本マイクログラビティ応用学会誌 Vol. 18 No. 2 2001
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微小重力実験フリースペース仕様の紹介
. 被験者が立位状態での安全性


mG 突入前の加重
mG 突入前に加重力(床面方向に約1.8 G)を受けるが全
身で受ける為,十分対応する事が可能と考えられる.これ
は諸外国でも実験されており,又,当社に於いても試験飛
行時に実施したところ問題無く対応可能であった.万一横
方向に倒れる又は床方向の荷重に耐えられない場合は,被
験者の回りに設置されている手摺又は航空機の手摺でサ
ポートすることで対応出来る.


前後左右方向の荷重に対する不安定性の対応
通常,左右方向は最大0.03 G,前後方向は最大0.15 G の
加速度がかかる場合があるが,被験者を 60 kg とすると,
Fig. 7
G/Time Display
それぞれ1.8 kg と 9 kg の荷重となり十分対応可能である.
又,この荷重に耐えられない場合は,被験者の回りに設
置されている手摺又は航空機の手摺でサポートすることで
対応出来る.


mG 終了後の加重力
mG 終了後に加重力(床面方向に約1.8 G)を受けるが,
これも前項同様に対応可能である.又,mG 中に浮遊して
いる人がリカバリー G により急に床面に落下することを
防止する為,リカバリー G を0.2 G で 2 秒以上継続させた
のち通常のリカバリーを行う様,緩やかなパラボリックパ
ターンに変更している.この変更により,機内の高さ 1.8
m から床に落下したとしても,地上(G = 1 G )に於いて
30 cm の高さから落下したのと同じ荷重となり,ソフトに
床面に着地出来る.


Fig. 8
Experimental Support Equipment
更に,被験者が計測位置から離脱した場合でも機内
のフリースペースエリアにはこれらの荷重に対してもクッ
ション材等により保護されている為十分安全である.


被験者への連絡


フロアクッション


サイドパネル
進行や不具合等全て連絡を取りながら実施可能である.


防護ネット
又,パイロットからの機内放送による30秒前コールにより,


G/時間表示装置(Fig. 7)
mG 前の引き起こし G に対する被験者の注意を促している.


フリースペース用実験支援装置搭載棚(Fig. 8)
被験者には実験者又は機内の支援者がついており実験の


G/時間表示装置,mG 終了の警報ブザー
CCD ビデオカメラ, VTR ,オンスクリーン装置
又, G /時間表示装置が機内前後に設置されており,搭
(以上各 2 セット), DAT データレコーダ( 32 CH )
乗者は現在の G 値,又は,mG 残時間の確認が出来る.さ
(1 セット).
らに,mG 終了の警報ブザーにより,リカバリー G に備え


高圧ガス供給システム(必要時搭載)


機外排気システム(必要時搭載)
. 一般安全


航空機用電話(地上の実験責任者と搭乗者間で通話


て体制を立て直したり,荷重に対する準備が可能である.
が可能)


.
基準に合致した方のみ搭乗が可能としている.
機内環境センサ(気温,湿度,気圧)
健康診断書
飛行当日の健康状況報告書
安全性について


ライフサイエンス,医学系実験では被験者がパラボリッ
.
クフライト中機内で立った状態で各種データを取得するこ
日本マイクログラビティ応用学会誌 Vol. 18 No. 2 2001
搭乗者には安全教育を実施している.
遊泳状況
当社で は H12. 10. 24 に 社内飛行試 験を実施し, H12.
とが考えられている.これらの安全性に対する考え方につ
いて,以下に示す.
一般搭乗者は下記書類の提出を依頼し, DAS 搭乗
10. 25 に航空局検査官立会の下飛行試験を実施し,航空局
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宮内 孝典,他
の承認を得た.その時の遊泳状況として,社内飛行試験時
に撮影した写真を Fig. 9~Fig. 12に示す.
Fig. 9
Flying with a mG condition
Fig. 12
.
ま
と
Playing with a mG condition
め
床面への衝突荷重を軽減する為,パラボリックフライト
パターンの引き起こしを緩和すること,及び,床面,側面
等をクッション材で覆うこと等により,実験者及び被験者
は座席から離れた状態でも安全に実験が可能となった.こ
のことにより,フリースペースを利用した,立位,臥位,
座位等の医学系,ライフ系実験,及び,フリーフローティ
ングによる良質な G 状態を利用する実験や,有人,体感
訓練も実施可能な環境を整える事が出来た.
Fig. 10
今後は幅広く,一般の人にも無重力体験が出来,宇宙実
Rolling with a mG condition
験者の裾野を広げることを視野に入れて,航空機が利用さ
れることを期待する.
(年月日受理)
Fig. 11
20
Standing with a 1.8 G condition
日本マイクログラビティ応用学会誌 Vol. 18 No. 2 2001
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