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平成19年度 統計情報 vol.3 滋賀県民経済計算からみた滋賀県経済の状況について 県民経済計算は、国民経済計算体系(通称93SNA)に基づき、内閣府の示した「県民経済計算標準方 式」に準拠して推計したものです。今回の統計情報では、「一人あたり県民所得」を切り口にして、県 民経済計算から滋賀県経済の特徴を概観することにより、県民経済計算のさまざまな側面から得ること ができる情報を取り上げています。 1.平成17年度滋賀県民経済計算の概要 去る2月5日、内閣府経済社会総合研究所より各都道府県で推計された都道府県民経済計算がとりまとめられ て公表されました。統計課では昨年12月4日に概要を公表し、ホームページで年報を公表しています。 滋賀県 国 県内総生産(実質) 県民所得 一人当たり県民所得 国内総生産(実質) 国民所得 一人当たり国民所得 平成16年度 6兆4286億円 4兆4285億円 322万2千円 527兆9933億円 363兆8976億円 284万9千円 平成17年度 6兆5879億円 4兆5200億円 327万5千円 540兆7696億円 366兆6612億円 287万1千円 (滋賀県「平成17年度滋賀県民経済計算」・内閣府「平成18年度国民経済計算」) 内閣府のとりまとめた平成17年度推計によると、滋賀県の一人あたり県民所得は全国で第4位の高さとな り、国民経済計算上の一人当たり国民所得を1割以上も上回ることとなりました。最も高いのは東京都、次いで愛 知県、静岡県で、滋賀県はそれに続く高さとなっています。第5位は神奈川県です。 そこで、滋賀県で一人あたり県民所得が高いということが滋賀県経済のどのような特徴を表しているのかとい うことを見てみました。 2.「県民所得」 「県民所得」とは何かについて整理しておきたいと思います(ご存じの方は5ページにお進みください。)。 (1)「国民経済計算」と「県民経済計算」 ・「国民所得」は「国民経済計算」、「県民所得」は「県民経済計算」から得られる1項目 「国民所得」と「県民所得」は、それぞれ「国民経済計算」・「県民経済計算」で得られる項目のうちの一つで す。「国民経済計算」、「県民経済計算」とは、一国あるいは一県の経済活動の状況を総合的に示す統計で、実 際には国勢調査をはじめとする各種統計を加工することによって作成されます。作成にあたっては、各国や地域 でバラバラに作成していては比較分析ができないので、現在は国連が採択したSNA(System of National Accounts)と呼ばれる方式に準拠して作成されています。この基準は改定が行われるのですが、現在用いられて いるのは1993年に採択されたため93SNAと呼ばれるバージョンです。県民経済計算は、国民経済計算の 推計を行っている内閣府経済社会総合研究所によって作成された標準方式を基本的なマニュアルとして、各都道 府県で推計を行っています。都道府県のほか、政令市も同様に推計を行って公表しています。 ・国民経済計算 「国民経済計算」はフロー編とストック編の両方を備えています。フロー編では、ある一定期間に新たに生み出 された付加価値に注目します。そして、その付加価値を生産、分配、支出という三面からそれぞれ測定します が、いずれの側面からみても同じ「付加価値」を測定しているため一致するという「三面等価」という前提に たっています(三面のそれぞれの内容は後述。)。このうち分配の側面から得られる項目の一つが国民所得で す。 国民経済計算から得られる項目で最も有名なのはフロー編から得られるGDP(国内総生産)ではないかと思 います。GDPは一国の経済規模を表す指標として、またその伸び率は経済成長率として、目にされる機会が多 いのではないかと思います。以前は、経済規模をあらわす指標としてGNP(国民総生産)が用いられていまし た。両方とも一定期間に生み出された付加価値を推計するという点は同じです。大きな違いは、「国民」なのか 「国内」なのか、ということです。「国民総生産」とは、一国の国民(企業も含む)が生み出した付加価値、 「国内」とは、一国内で生み出された付加価値をそれぞれ推計します。例えば、外国の方が日本で生産活動に従 事して生み出された付加価値は「国内」には含みますが「国民」には含みません。一方、海外で日本企業が生み 出した付加価値は「国民」には含みますが「国内」には含みません。企業の海外進出の活発化など国外での活動 が増加する中で、一国の経済や景気の実態を把握するには「国内」のほうがより適しているということで、現在 は「国内総生産」を経済活動をあらわす指標として用いられるようになりました。 このように、「国民」と「国内」、(「県民」と「県内」の差も同様です。)というのは、集計の範囲を区分 する概念です。現在の「国民経済計算」・「県民経済計算」では生産側と、それが分配された後にどのように支 出されたかをあらわす支出側は国内概念で、生み出された付加価値の分配形態からの額を表す分配系列は国民概 念で推計します。そのため、分配系列から得られる項目である国民所得や県民所得は「国民」「県民」概念で推 計されています。 詳細版1/13 ところで、GDPは、公表段階に応じて5種類存在します。というのも、多くの一次統計を用いて推計を行うた め、正確さを追求すればするほど関係統計が出そろうのを待っていなければならず、公表が遅くなってしまうの ですが、一方で景気の動向を見るためにはできるだけ早く公表してほしいというニーズがあるからです。そこ で、4半期ごとの速報は2段階(速報値とその改定値)、年値については毎年12月に確報、さらにその翌年の確 報公表時に確々報が公表されます。また、その後も年ごとに改定されますし、最後に、遡及改定といわれる、基 準改定などに伴って行われる改定があります。後になればなるほど速報性はなくなりますが、より多くの統計を 用いることができるため厳密な推計が可能です。また、利用できる統計が多くなるため、順次数値は改定されま す。例えば、平成19年4−6月の4半期GDPの場合、成長率が速報段階ではプラスでしたが改定値ではマイ ナスとなりました。これは、速報値の推計段階では「法人企業統計」の結果が利用できず、改定値の速報から利 用したためにおこった影響といわれています。県民経済計算では、基本的には年度ごとに推計を行い、滋賀県で は確報値以降の公表を行っていますが、この場合であっても毎年の推計ごとに数字が改定されるので、利用にあ たっては常に最新版を用いていただく必要があります。 ・県民経済計算 県民経済計算は、各都道府県および政令市で一次統計の積み上げを原則として推計していますが、一部に国民 経済計算の年値である確報を受け、また推計に必要な資料を国民経済計算の推計を行っている内閣府から提供さ れて作成しています。そのため、国民経済計算の確報の翌年に確報を推計・公表しています。作成しているのは フロー編です。県民経済計算では国民経済計算のGDPに相当する県内総生産や国民所得に相当する県民所得の 数値を得ることができますが、それだけでなく各地域の経済の状況を様々な角度から分析することが可能である ということになっています。 さて、国民経済計算の1項目である国民所得で (2)3つの「国民所得」 すが、紛らわしいのは「国民所得」という言葉の つく名前を持った数字が3種類あることです。い ずれも分配の側面から付加価値を捉えて得られる 数字であることには違いないのですが、含まれる ものが少しづつ異なります。 国民総所得 国民所得(市場価格表示) 国民所得 (要素費用表示) 固定資本減耗 生産・輸入品に課される税(控除)補助金 まず、「国民総所得」(=NI)です。上述の 「三面等価」により生産・分配・支出のいずれの 側面から把握する付加価値も等価になるため、こ れは「国民総生産(GNP)」(GDPではあり ません。)に近い概念で、「国内総生産に海外か らの所得も含めて一国経済の実力を測る」などと 表現されることがあります。 あとの2つは、いずれも「国民所得」ですが、それぞれ「市場価格表示」と「要素費用表示」という異なる価 格の表示方法で表されています。国民経済計算から得られた金額として、単に「国民所得」とだけ書かれている 場合は、通常は要素費用表示の国民所得を示しています。一方、マクロ経済学のモデル上用いられる「国民所 得」は、国民総所得のことを指していることが多いようです。 なお、冒頭で一人当たり県民所得と一人当たり国民所得を比較した際に用いたのは、国民所得(要素費用表 示)です。この3種類ある、というのは県民所得にも同様に当てはまりますが、通常、単に「県民所得」という 場合は要素費用表示の県民所得のことを指します。従って、滋賀県で「一人当たり県民所得が高い」という場合 の県民所得は要素費用表示の県民所得です。 (3)県民所得とは(1) −何を把握するものか− 県民経済計算は、基本的な考え方は国民経済計 ■県民所得(要素費用表示) 算と同じです。フロー編の推計を行っており、県 =県内居住者および県内事業所の 経済のフローの部分に焦点をあて、対象となる一 生産への貢献に対して支払われる付加価値額 年度間に新たに生み出された「付加価値」に注目 します。そして、この付加価値を生産・分配・支 (≠県内居住者の収入の合計額) 出の3つの側面から把握します。 生産系列では、新たに生み出された付加価値を 文字どおり生産する側から、経済活動ごとに把握 します。そして、その付加価値が生産に必要な要 素にどのように分配されたかを計測するのが分配 系列です。付加価値が誰にどのような生産要素に 対する対価として所有されたことになるかを表し ます。 =県民雇用者報酬(=給料、社会保険料事業主負担金など) + 財産所得(=利息、配当金、特許権使用料など) + 企業所得(=企業の内部留保など) さらに、分配された付加価値がどのように支出または投資されたかを見るのが支出系列です。そして、投資と 支出の合計額は需要、生産は供給ですから、3つの系列が全て同じモノを見方を変えて把握していることになり ます。実際の推計を行う際にも、一部で他の系列の推計結果を利用しますが、原則としてはそれぞれの系列で一 次統計を積み上げることで推計を行います。 県民経済計算の「所得」とは、分配系列で把握される、生産要素に対して支払われる付加価値の額を表しま す。生産要素とは、生産活動を行うために必要な労働力や資本のことです。これらの生産要素を用いて付加価値 を生産した場合、生産要素の貢献に対して対価が支払われます。この対価のうち県内居住者および県内事業所に 対して支払われた額を推計したのが県民所得です。具体的には、県民が提供した労働力に対して支払われる県民 雇用者報酬、資本に対して支払われる財産所得、そして、企業自身の受取額(内部留保益等)として企業所得の 3つから構成されます。なお、県民所得は「県民」が受け取るということに着目して集計しますので、付加価値 の生産が県内で行われた場合には限定されません。 詳細版2/13 (4)県民所得とは(2) −生産系列と分配系列との相互関連− 県内総生産(市場価格表示) 県内純生産(市場価格表示) 【生産】 中間投入 要素所得 県外からの所得(純) 財産所得 【分配】 県民雇用者報酬 固定資本減耗 生産・輸入品に課される税(控除)補助金 企業所得 県民所得(要素費用表示) 県民経済計算の体系のなかで見ると、県民所得は生産系列で推計される要素所得に県外からの所得を加えたも のと同じです。要素所得は、別名を「要素費用表示の県内純生産」といいます。ということは、生産側で計測さ れた付加価値のうち要素費用表示の県内純生産と、県外から得た所得(純額)が、県民および県内の事業所にど のように分配されているのかを推計したものが県民所得です。新たに生み出された付加価値は必ず誰かに分配さ れることになりますが、それが家計部門であるとは限りません。事業所や企業に留保された場合は、企業に分配 された所得として把握されることになります。 なお、要素所得(=要素費用表示の県内純生産)は県民雇用者報酬と営業余剰・混合所得の合計額となります。 (5)県民所得とは(3) −収入との違い− 「県民所得」は、収入とは異なります。 「県民所得」に含まれる 企業の利益 政府が受け取る財産所得(利息・賃借料等) 社会保険料事業主負担金(給与とみなすため) 労災保険料・雇用保険料事業主負担金(同上) 持家の帰属家賃 「県民所得」に含まれない 年金(給付額。事業主負担金は含まれる。) 社会保障給付(給付額。事業主負担金は含まれる。) 土地や株式の売却益(転売益) 相続した遺産、お祝い(受贈益) 宝くじの当選金、勝ち馬投票券の払戻金 県民所得は、従って、付加価値の分配の「かた ち」を表しているのであって、県民の収入とは全 くの別物です。そのため、一人あたり県民所得 も、県民の得ている収入の平均ではありません し、日常的に「所得」という言葉で言い表されて いるものとも異なることがあります。例えば、所 得税の課税対象となる「所得」とも異なります。 →「生産された付加価値の分配」なので、新たな付加価値から分配 される以外のもの(単に移転するだけの場合)や、ストックの移転に伴 う時価変動のみを要因とした売却益などは「県民所得」には含まれま せん。 具体的には、県民所得には前述のとおり企業の 利益が含まれるだけでなく、地方自治体などの政 府部門が受け取る利息(純額)も含まれます。付 加価値のうち「家計に分配されたもの」に限定さ れないため、家計以外の経済主体に分配されたも のも全て合算して把握するためです。そのため、 家計の収入として認識されないもので県民所得に 含まれるものもいくつもあります。 例えば企業の利益や政府の受け取る利息などのほか、企業が従業員について支払う社会保険料事業主負担金 も、いったん給料の一種として本人に支給されたと擬制するため含まれます。 一方、「所得」や「収入」としてイメージされそうなものであっても、県民所得に含まれないものもありま す。例えば年金や各種の社会保障給付は県民所得には含まれません。これらは新たに生み出された付加価値が分 配されるのではなく、一旦誰かに分配された付加価値を移転させているからです。土地や株式のような資産の売 却益も含まれません。役員などの報酬として近年注目を集めているストックオプションについても、当初に与え られるのは「購入する権利」ですし、付与された者が実際に得る利益は株式の転売益ですので、現在の体系上は 所得に含まれないことになります(※)。その他、相続した遺産や、ご祝儀、宝くじの当選金なども含まれませ ん。買った馬券が当たったら、払戻金は所得税の課税対象になりますが(一時所得)、「県民所得」には含まれ ません。 そして、年金や社会保障給付などが含まれないことからわかるように、政府による所得の再配分が行われる前 の段階の所得を表しています。 さらに、県民経済計算は国連提唱の93SNAという統計体系に基づいているわけですが、比較を可能とする ため等の理由で実際に取引が行われていなくても、取引が行われたと擬制して計上することがあります。この計 算を帰属計算といい、代表例としては、県民所得には持家の家賃について帰属家賃として含めることがあげられ ます。これは、持家については自分に自分で貸してその家賃が支払われたと仮定して付加価値を推計するもので す。賃貸の分は不動産業で算出されたと扱われますが、実際に賃貸住宅分のみ推計すると、持ち家指向など社会 的・文化的背景の違いなどの影響をうけることになるため、実際には取引が行われていない持家分も帰属計算を 行って計上することになります。 ただし、これらは現行の体系下での状況ですので、今後の改定状況によっては現在含まれていないものが含ま れたり、またその逆が起こる可能性があります。 詳細版3/13 (6)滋賀県民経済計算の特徴 県内総生産および国内総生産の産業構成比 滋賀県の県内総生産によって表し た産業構成は右図のとおりです。最 も構成比が高いのは製造業、次いで サービス業です。 県 国 滋賀県の製造業は、県内総生産の 約40%を占めています。日本の国 内総生産に製造業が占める割合は約 20%なので、約2倍を占めている ことになります。 製造業 サービス業 製造業 農林水産業 電気・ガス・水道業 運輸・通信業 サービス業 鉱業 卸売・小売業 サービス業 製造業 金融・保険業 その他 建設業 不動産業 滋賀県「平成17年度滋賀県民経済計算」・内閣府「平成18年度国民経済計算」より 平成17年度・平成17年分について作成 近隣府県の産業構造と比べても、滋賀県は第2次産業(鉱業、製造業、建設業)が総生産に占める割合は高くなっています。こ れは、製造業の伸びを主要な要因として、平成16・17年度の実質経済成長率、平成17年度の名目経済成長率がそれぞれ全国1 位だった三重県・和歌山県より、大きな割合となっています。 近隣府県の 産業構成比 第3次産業 第2次産業 第1次産業 滋賀県 京都府 大阪府 兵庫県 奈良県 和歌山県 三重県 内閣府「平成17年度県民経済計算」より作成 (※)ストックオプションについて ストックオプションとは、通常、役員等に対する企業の報酬の一形態で、「一定の金額で自社の株を購入する 権利を付与」するものです。会社の業績の向上により株価が上昇して契約した額よりも株価が高くなれば、その 権利を行使することで株式を「安く買って高く売る」ことができるため、役員等の企業の業績向上へのインセン ティブを高めやすい報酬形態とされています。日本では、平成13年11月の商法改正で新株予約権制度が導入 されて以来、利用が活発になったと言われています。会計処理上は、権利付与時にそれに応じて役員等から取得 するサービスを費用計上し、同額を新株予約権として貸借対照表の純資産の部に計上しますが(資金が動くわけ ではありません。)、県民経済計算上は推計対象外となります。 詳細版4/13 3.生産側から見た県民所得 以下では、一人当たり県民所得を高めている要因が何なのかを考えていきます。 (1)県民所得=県内要素所得+県外からの所得(純) 定義として、要素費用表示の県民所得は、要素所得と県外からの所得の合算値です。ここから、一人あたり県 民所得が高いということは、一人あたりの県内純生産と県外からの所得のいずれか、または双方が高いというこ とになります。 そこで、まず県外からの所得(純)と要素所得がそれぞれどのような状況であるのかを考えます。 (2)県内要素所得について 県内要素所得の大きさはどうなっているのでしょうか。 県民一人当たり県内要素所得 就業者一人当たり県内要素所得 1 東京都 188.02 1 東京都 141.01 2 愛知県 121.81 2 滋賀県 111.18 3 静岡県 111.69 3 愛知県 109.06 4 滋賀県 107.60 4 大阪府 103.62 5 大阪府 107.19 5 広島県 103.58 … … (全国=100) (全国=100) 内閣府「平成17年度県民経済計算」より作成 県内要素所得とは、県内純生産(市場価格表示)から「生産・輸入に課される税−補助金」を控除して要素費 用表示にしたものです。 これによると、県民一人当たり要素所得は滋賀県の場合、全国平均を超え、相対的に高いことがわかります。 さらに、要素所得について就業者一人当たりでみてみると、全国2位の高さにあることもわかります。このこと から、滋賀県内の労働生産性の高さがわかります。 (3)県外からの所得(純)について 県外からの所得(純)が 県外からの所得(純)(%) 県民所得に占める割合 が % 県民一人当たりの県外からの所得 1 埼玉県 27.86 1 埼玉県 822.67 2 奈良県 26.25 2 神奈川県 717.77 3 千葉県 23.78 3 千葉県 712.73 … 18 滋賀県 3.14 … 46 大阪府 -3.67 46 大阪府 -111.63 47 東京都 -16.00 47 東京都 -764.00 … 14 滋賀県 102.62 … (全国平均=100) (全都道府県平均=3.85) 内閣府「平成17年度県民経済計算」 一方、県外からの所得についてですが、滋賀県は、県民所得に占める県外からの所得の割合も、一人あたりの 県外からの所得(純)も、全国平均レベルであることがわかります。このことから、県外からの所得が滋賀県の 県民所得を押し上げる特徴的な要因とはなっているとは言いがたいことがわかります。そして、そのことから、 一人当たり県民所得を押し上げる主要な要因は、やはり要素所得の高さにあるということがわかります。 滋賀県は、南部を中心に、京阪神への通勤が可能です。県外からの所得には、当然、県外からの雇用者報酬が 含まれますから、ここで県外からの所得が余り多くないことは意外に感じられるかもしれません。ただ、これは あくまでも純額のため、県外への所得も多ければ結果として純額は少なくなることになります。 詳細版5/13 4.労働生産性について では、具体的にはどの産業の労働生産性が高いのでしょうか? そこで、各産業別の労働生産性を国値と比較してみるため、各産業ごとに就業者で割って比較してみることに しました。ただ、資料の制約から厳密に比較することができず、国値は年値、県値は年度値となっているうえ、 就業時間については県では数値を出していないので、その影響を加味することができていません。そのため、こ こでは傾向のみ確認します。 平成17年度の場合、滋賀県では、産業部門では鉱業、製造業、建設業、サービス業の各分野で就業者一人あた りの総生産の国値を上回っていることがわかります。同様に、平成16年について調べたところ、やはり17年分と 同じ分野で国値を上回っていました。 滋賀県の産業構造の特徴は、製造業に特化していることです。製造業の労働生産性が高いことが確認できたた め、以下では工業統計の結果を用いて製造業について考えていきます。 (参考値) 産業別県の労働生産性/国の労働生産性(平成17年および17年度) 2 1 平成18年国民経済 計算、平成17年度滋 賀県民経済計算より 作成。ただし、前者が 暦年のため、参考 値。 0 サービス業 運輸・通信業 金融・保険業 卸売・小売業 電気・ガス・水道業 建設業 製造業 鉱業 農林水産業 産業計 詳細版6/13 5.製造業について (1)1事象所当たりの従業者数・出荷額 製造業全体の特徴としては、1事業所あたりの従業者数の多さがまずあげられます。事業所の従業者規模 ごとの従業者数の割合を全国値と比較すると、規模の大きい事業所に偏って分布する傾向があることがわか ります。ここでは製造業以外にも示していますが、例えば卸売・小売業については全国とほぼ同じ分布、建 設業や金融・保険業については小さい事業所に偏った分布をしていることがわかります。 製造業 建設業 0.35 0.3 0.25 0.2 0.15 0.1 0.05 0 全国 滋賀県 1 ∼ 5 ∼ 10 4 人 9 人 ∼ 19 人 20 ∼ 29 人 30 ∼ 49 人 50 100 200 ∼ ∼ ∼ 99 199 299 人 人 人 0.35 0.3 0.25 0.2 0.15 0.1 0.05 0 300 人 以 上 全国 滋賀県 1 ∼ 5 ∼ 10 4 人 9 人 ∼ 19 人 20 ∼ 29 人 卸売・小売 全国 滋賀県 20 ∼ 29 人 30 ∼ 49 人 50 100 200 300 ∼ ∼ ∼ 人 99 199 299 以 人 人 人 上 金融保険 0.35 0.3 0.25 0.2 0.15 0.1 0.05 0 1 ∼ 5 ∼ 10 4 人 9 人 ∼ 19 人 30 ∼ 49 人 50 100 200 ∼ ∼ ∼ 99 199 299 人 人 人 0.35 0.3 0.25 0.2 0.15 0.1 0.05 0 全国 滋賀県 1 ∼ 5 ∼ 10 4 人 9 人 ∼ 19 人 300 人 以 上 20 ∼ 29 人 30 ∼ 49 人 50 100 200 300 ∼ ∼ ∼ 人 99 199 299 以 人 人 人 上 総務省「平成18年事業所・企業統計調査」より作成 滋賀県内の大規模事業所(従業者300人以上)の産業内訳 サービス業, 14 プラスチック, 7 公務, 12 教育、学習支援業, 5 一般機械, 15 製造業 73 電気機械, 11 医療・福祉, 20 デバイス, 10 飲食店、宿泊業, 1 金融・保険業, 3 卸売・小売業, 10 計:142事業所 運輸業, 2 総務省「平成18年事業所・企業統計調査」より作成 詳細版7/13 また、事業所数でみ ると、滋賀県の大規模 事業所は製造業が5 1.4%を占めていま す。その中では、電気 機械と一般機械の割合 が高くなっています。 製造業1事業所あたりの従業者数 および付加価値 額 付加価値額 多 山口 滋賀 三重 大分 神奈川 千葉 岡山 静岡 広島 和歌山 従業者数 少 徳島 京都 埼玉 大阪 東京 愛媛 奈良 新潟 長崎 岐阜 香川 鹿児島 福井 北海道 石川 島根 兵庫 群馬 山梨 福岡 長野 愛知 栃木 茨城 各県の一事業所あた りの従業者数と付加価 値額について、工業統 計調査の結果を用いて 分布を見てみることに しました。すると、滋 賀県はやはり一事業所 あたりの従業者数が多 いこと、また一事業所 あたりの出荷額も多い ことがわかります。 富山 福島 熊本 従業者数 多 佐賀 宮城 山形 鳥取 岩手 青森 宮崎 秋田 高知 沖縄 付加価値額 少 経済産業省「平成17年工業統計」より作成 (2)製造業産業中分類ごとの生産性 ・労働生産性と特化係数 飲料・たばこ・飼料 労働生産性 3.0 生産性が高く特化している 生産性は高いが特化していない 2.0 窯土 化学 輸送 ゴム 精密 家具 全体 金属 特化していない 食品 衣服 -0.5 1.0 電気 一般 繊維 その他 0.5 印刷パルプ・紙 情報通信 木材 鉄鋼革 非鉄 石油・石炭 プラ 1.5 特化している 2.5 電子 生産性は高くなく特化していない 経済産業省「平成17年工業統計」より作成 0.0 製造業の中分類ごとに労働生産性と、製造業のなかの特化係数について、各中分類の全国比を計算し、散 分図としました。ここから、特化している(全国値以上に構成比が高い)産業だけでなく、それ以外にも生 産性の高い産業がいくつもあるということがわかります。さらに特徴を見るため、製造業の中分類ごとに、 労働生産性に影響を与える要素によってグループに分けを行い、それぞれの特徴をみてみることにしまし た。 詳細版8/13 ・労働生産性をどのように説明するか 労働生産性の向上を説明するに ■労働生産性の上昇率=資本装備率の上昇率+TFPの上昇率 は、おもに2つの方法がありま ←経済成長理論を背景にした分析手段。 す。 ・長期的・マクロの経済成長の分析に用いられます。 まず、労働生産性の上昇率を資 ・TFP(全要素生産性)とは、資本装備率の伸び以外の要素。そのため、 本装備率の上昇とTFP(全要素 特に短期間の分析では変動の影響を除去することが難しい。 生産性)の上昇の2つの要素に分 ■労働生産性=資本装備率×資本回転率×売上高付加価値率 解して説明する方法です。資本装 ←財務分析的手段 備率は労働者一人あたりの資本設 ・労働生産性を3つの要素の積に分解し、各要素の動向によって説明しま 備量で、資本ストックを労働投入 す。 量で割ることで求められます。 ・業種内での比較に適しています(異業種間の比較は難しい。)。 もう一つは、労働生産性の定義 ・個別の企業の財務状況の分析などに用いられます(クロスセクション分 式を分解して、労働生産性=資本 析)。 装備率×資本回転率×売上高付加 価値率、という式から、右辺の各 項目について説明する方法です。 TFPについては、「資本装備率以外の何か」であり、労働生産性の向上から資本装備率の伸びを除いた ものとして定義されています。内容として複数の要素が考えられるために絞り込むことは難しいのですが、 最近ではIT化などが挙げられています(平成19年情報通信白書など。)。また、「残りの何か」という定 義から、TFPについて、特に短期間の分析にあたっては景気変動の影響を除去することが困難であると言 われています。 今回は、「伸び」を検討するわけではありませんが、両手法に共通する資本装備率、加えて財務分析的手 段に用いる資本回転率と売上高付加価値率によって製造業の産業中分類をグループ分けしました。 ・中分類をグループ分けする① グループ分けにあたって用いた項目は、資本装備率、資本回転率、製造出荷額に占める付加価値の割合 (売上高付加価値率の代理)で、いずれも中分類ごとの全国値との比較を行いました。また、参考として大 規模な事業所の割合も確認しました。 なお、各指標の概要を説明しますと、資本装備率とは労働力に対する資本の集積をみるための指標です。 ここでは、有形固定資産のうち土地を除いた値を人件費で除した値としました。高ければ高いほど、労働力 に対して資本の集積が進んでいることを表す一方、遊休資産が蓄積していてもこの値は高くなってしまいま す。そこで、集積された資産がより有効に生産活動に投入されているかどうかをみる指標として用いられる のが資本回転率です。売上高を有形固定資産を除して求めます。労働生産性は3つの指標の積なので、ここで も有形固定資産から土地を除いた額を求めます。3つめが、売上高付加価値率です。文字通り、売上高に含ま れる付加価値の率を表します。この付加価値に何を取るかについては分析目的によって変える必要があり、 今回は便宜上、工業統計上の付加価値の値を用いました。 ■資本装備率=有形固定資産/人件費 労働力に対する資本(生産設備等)の集積をみる指標。 高いほど多くの生産設備が備えられていることになるが、活用されていない資産も含 みます。 ■資本回転率=売上高/有形固定資産 集積された資本(生産設備)が有効に使用されているかどうかをみる指標。 効率よく資本を使用していると高くなり、有休資産が多いと低くなります。 ■売上高付加価値率=付加価値額/売上高 B/S 貸借対照表 ※有形固定資産は土地を除く額を用いる 資産の部 負債の部 Ⅰ 流動資産 Ⅰ 流動負債 Ⅱ 固定資産 Ⅱ 固定負債 1 有形固定資産 2 無形固定資産 P/L 損益計算書 Ⅰ 売上高 Ⅱ 売上原価 ※付加価値は算出目的に応じた額を用いる 売上総利益 Ⅲ 負債の部計 販売費及び一般管理費 人件費 純資産の部 営業利益 Ⅲ 3 投資その他の資 産 繰延資産 資産合計 純資産合計 Ⅳ 営業外利益 Ⅴ 営業外損失 負債純資産合計 … 資本回転率=売上高/有形固定資産 経常利益 売上高付加価値率=付加価値額/売上 資本装備率=有形固定資産/人件費 詳細版9/13 これらの指標を平成17年工業統計により算出し、グループ分けを行うと、このようになりました。 産業名 製造業計 大規模事業所 売上高 割合 付加価値率 資本装備率 資本回転率 1.26 1.02 1.14 高い (1以上 最高2.4) 普通 (1前後) 普通 (1前後) ・「県内製造業計」に 多い 最も類似している。 (概ね2以上 ・労働生産性・特価係 最高3.8) 数共に高い。 低い (概ね1未 満) 高い (1以上) 高い (1以上) ・資本装備率は低いが 少ない 付加価値率が高く、生 (1以下) 産性が高い 低い 高い 低い (概ね1以上 (概ね1未 (1未満) 満) 最高1.5) ・資本装備率・付加価 値率は高くないが、資 少ない 本回転率が高い。 (0∼2未 ・資本装備率が高いほ 満) ど労働生産性が高い傾 向がある。 高い (1以上 最高2.8) 低い (1未満) 低い (1未満) 多い (概ね2以 上) ・資本回転率の高い産 業は労働生産性が高い 傾向があり、グループ 内でも2分されてい る。 − − − − − 1.96 特徴 − 繊維工業 プラスチック製品製造業 ゴム製品製造業 窯業・土石製品製造業 一般機械器具製造業 電気機械器具製造業 輸送用機械器具製造業 化学工業 精密機械器具製造業 食料品製造業 衣服・その他の繊維製品製造業 木材・木製品製造業 パルプ・紙・紙加工品製造業 なめし革・同製品・毛皮製造業 鉄鋼業 電子部品・デバイス製造業 家具・装備品製造業 印刷・同関連業 金属製品製造業 情報通信機械器具製造業 飲料・たばこ・飼料製造業 石油製品・石炭製品製造業 非鉄金属製造業 1つめは、大きな事業所の占める割合が高く、資本装備率も高いグループです。このグループは、付加価 値率は全国値と比べると標準的ですが、労働生産性、特化係数ともに高くなる傾向にあります。 2つめは、大きな事業所の割合は、滋賀県内としては高くなく、資本装備率もあまり高くはありませんが、 付加価値率が高い上に資本回転率も高い傾向にあり、それにより高い労働生産性を発揮しているグループで す。 3つめは、大きな事業所の割合は高くはなく、資本装備率・付加価値率も高くありませんが、資本回転率が 高いグループです。グループ内の労働生産性を比較すると、資本装備率が高い分野ほど労働生産性が高い傾 向が見られます。最も資本装備率が高いのは食料品製造業で、グループ中最も高い生産性を示しています。 いずれも特化係数はあまり高くはありませんが、既存の資本が効率的に活用されていると考えることができ ます。 4つめは、大きい企業の割合が高く、資本装備率も高いが、付加価値率・回転率があまり高くないグループ です。この中では、資本回転率が相対的に高い産業の方が労働生産性は高い傾向が見られます。とくに、こ の中では比較的回転率の高い家具・装備品と金属製品については1つめのグループと遜色ない生産性を発揮 しています。 詳細版10/13 (3)企業規模と労働生産性 一つめのグループの特徴は、資本 装備率が高く、また、大規模な事 業所が多いことでした。 右図は、中小企業白書に掲載さ れた統計表から、大企業と中小企 業の労働生産性の差をグラフ化し たものです。なお、元データは法 人企業統計となっています。産業 や年によって差はありますが、労 働生産性にはおよそ1.5倍から 2倍の差があることがわかりま す。 2.5 2 1.5 2003 2004 2005 1 0.5 0 全産業 製造業 卸売・小売業 サービス業 建設業 中小企業庁「2007中小企業白書」第16表より作成 (財務省「法人企業統計年報より再編加工されたもの) (4)労働生産性と特化係数 グループ分けを再度、先ほどの図で示すと下のようになります。 みかん色で書いてあるのが1つ目のグループで、大規模事業所が多く資本装備率の高い産業で、右上の方 に分布する傾向があります。2つめは赤で書いてあるグループで、大きい事業所は少ないが生産性の高い事 業所です。特化計数は1つめのグループほどではありませんが、生産性が高いことがわかります。緑色で書 いてある3つめ、と藍色の4つめはいずれも左下を中心に分布していますが、緑色の3つめのなかでは資本 装備率の最も高い食料品の生産性が最も高く、4つめのグループの中では資本回転率が高い分野とそうでは ない分野で大きく二つに分かれており、高い分野では1,2グループと比べて遜色のない高い生産性を示し ていることがわかります。 労働生産性が高い 飲料・たばこ・飼料 窯業・土石製品 ゴム製品 化学工業 プラスチック製品 電気機器 家具・装備品 精密機械器具 輸送用機械器具 情報通信機械器具 金属製品 食料品衣服その他の繊維製 品 製造業全体 一般機械器具 その他の製造業 印刷・同関連 繊維工業 特化している 木材・木製品 鉄鋼業 石油・石炭 パルプ・紙・紙加工品電子部品・デバイス 非鉄金属 なめし革・同製品・毛 皮 経済産業省「平成17年工業統計」より作成 詳細版11/13 (5)生産性の高い製造業中分類と付加価値に占める構成比 滋賀県では製造業の24分類のうち、15で労働生産性が全国を上回っています。下図では、この15の 労働生産性の対全国比(全国=1)と、それぞれが県内製造業に占める付加価値の構成比を図にしたもので す。 分類名が□で囲んである産業は、大規模事業所の割合の低いものです。このうち化学工業は、資産の効率的 な活用と高い付加価値率などにより高い労働生産性を実現し、県内の製造業が生み出す付加価値のうち、最 も大きな割合を占めています。 生産性対全国比(全国=1) 4.0 生産性が高く 構成比も高 い 生産性 高 飲料・たばこ・飼料 3.0 2.0 ゴム製品 精密機械 家具・装飾品 繊維 食料品 1.0 化学工業 輸送用機器 プラスチック製品 電気機械 一般機械 金属製品 窯業・土石 その他製造業 衣服 構成比 付加価値額(粗付加価値額)に占める割合(%) 0.0 0 5 10 経済産業省「平成17年工業統計」より作成 15 (6)県内の化学工業 2つのグループのうち化学工業についてみてみることにします。 化学工業は、大規模事業所の割合や資本装備率は全国値を下回っていますが、資本回転率、付加価値率が いずれも高く、全体としては労働生産性が高くなっています。また、化学工業の従業者の全製造業従業者に 占める割合は、全国が4.197%なのに対して滋賀県は4.474%となっている一方、事業所数の割合 は全国が1.764%、滋賀県が3.109%というところから、事業所は多く従業者がほぼ同じ割合とい うことで、事業所あたりの従業者数の少なさが推測されます。実際、従業者の分布を見るとグラフの中央付 近に多く分布していることがわかります。一方、生産性についてみると、分布が多い従業者区分のあたりで 全国に比較して非常に高くなっていることが確認できます。 滋賀県は、全国的に見ると大規模事業所が多く、製造業合計では、300人以上の事業所の割合は全国の約2 倍となっています。そのため、特化係数の高い分野はそのなかでも特に大規模事業所の割合が高く、資本集 積の進んだ分野が多くなっていますが(上述の1グループ)、一方で、化学工業のように大規模事業所の割 合はさほど高くなく、中堅規模の事業所が高い生産性を発揮することで、高い労働生産性を実現している産 業があり、このことも滋賀県の製造業の高い生産性に寄与しているのではないかと考えています。 従業者規模別従業者数の分布(H17化学工業) 従業者規模別生産性(H17化学工業) 0.6 100 90 80 70 60 50 40 30 20 10 0 9 上 00 人 以 9 99 ∼ 0 50 1 ,0 30 0 ∼ 29 49 9 99 ∼ 0 10 19 29 ∼ 30 工 学 化 1,0 総務省「平成18年事業所・企業統計調査」より作成 ∼ 計 業 00 999 人 以 上 49 9 ∼ 0 50 29 9 ∼ 0 30 99 ∼ 0 10 ∼ 30 19 ∼ 20 9人 ∼ 10 ∼ 4 29 0 20 0.1 9人 0.2 全国 県 ∼ 全国 滋賀県 0.3 4∼ 0.4 10 0.5 経済産業省「平成17年工業統計調査」より作成 詳細版12/13 6.県民所得の特徴 ■滋賀県の県民所得の特徴 ①県内での要素所得が高く、かつ県外からの所得(純)もプラスである。 ②県内の要素所得が高い →労働生産性が高い 特に、県内産業を特徴づける製造業の労働生産性が高い ←製造業のうち、労働生産性が高いのは、例えば ・資本が集積している分野 例:繊維、窯業土石、電気機械、一般機械、プラスチック製品 ・資本が効率的に活用されており、かつ付加価値率が高い分野 例:化学、精密機器 滋賀県の県民所得を生産側から見ると、県内で生み出される要素所得が相対的に大きいことがわかりまし た。定義として、県民所得はこの要素所得に県外からの所得(純)を加えたものですが、この県外からの所 得(純)は県民所得を大きく押し上げるほどの特徴的な要因とはなりませんが、受取額のほうが多くなって います。 この、要素所得の高さからわかることは、滋賀県内の労働生産性の高さです。 そこで、産業別の労働生産性をみると、全国と比較すると、県内の産業構成を特徴づけている特化係数の 高い製造業の労働生産性が高いことがわかります。さらに、その製造業の中分類ごとに見ると、労働生産性 の高い業種には主に2種類あることがわかります。一つは、大規模事業所が集積している分野です。繊維、 窯業土石、電気機械などの分野があります。これらの産業は、集積させた資本を生かして高い生産性を発揮 していると考えることができます。一方、資本の効率的な活用と高い付加価値率により、高い生産性を発揮 している分野があります。例としては化学や精密機器があります。 詳細版13/13