01146 Voice 60 English - International Cooperative and Mutual
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01146 Voice 60 English - International Cooperative and Mutual
Voice 協力の真価を学んだオーストラリアのワークショップ AGILEを使った意思決定ワークショップをレポート 新規会員がICMIFに続々と加盟 新しく加盟した8社を紹介します 「私たちの生活に違いをもたらすような取り組みを続けたい」 フォルクサムのスンドストロムCEOにインタビュー 協力の真価を学んだ オーストラリアの ワークショップ the magazine of the International Cooperative and Mutual Insurance Federation issue 69/september 2010 目次 Voice issue 69/september 2010 編集 及び製作 01巻頭言 ジョン・ガリー 02 新規会員がICMIFに続々と加盟 04 協力の真価を学んだオーストラリアのワークショップ 06 ICMIF再保険会議に100名以上が参加 編集責任者:ジョーン・ガリー 副編集責任者:マーク・マギー デザイン:ICMIFクリエイティブ・スタジオ 寄稿 アンドリュー・ビビー、ジョン・ガリー、マイク・アシャース ト、ミック・サージェント、中村浩子 翻訳 フランス語 08フランスの相互保険者が、ウェブ上で反ソ ルベンシーIIキャンペーンを開始 10日本共済協会共済相談所は、法務大 臣公認のADR機関になりました 11 インド・ビハール州で災害支援を行うICMIF会員 12 「私たちの生活に違いをもたらすよう な取り組みを続けたい」 ハイヤット・ディファラ、フェイ・ラジャー スペイン語 リーガル・アンド・テクニカル・トランスレーション ズ・リミティッド、バネッサ・スミス 16 保険業界で100年生き残る事業スタイル 17 勢いが衰えない相互保険セクター:A Mベスト社のレポートから 日本語 18 リーガル・アンド・テクニカル・トランスレーション 21スイス再保険が保険監督規制に関 する最新調査レポートを発表 ズ・リミティッド、中村 浩子 寄稿の受付 最新のソリューションを使用したIT化のメリット 22 素晴らしい機会をもたらす協同組合というブランド +44 161 952 5053 [email protected] 23CFSが名誉ある賞を受賞 購読の受付 24ミューチュアル監督に関するIAIS討 議報告書が正式承認へ +44 161 929 5163 [email protected] 24 高い評価を受けるICMIF会員 25 中村浩子さんが事務局出向を終え、本帰国へ 08 18 12 Copyright © 2010 ICMIF. All rights reserved. Reproduction without permission is prohibited. The views and opinions expressed in voice are the author’s own and are not meant to reflect the official position of icmif, its entire membership, or their respective employers (unless otherwise specified). Information is provided for informational purposes only and provided with no warranty. While voice provides web links, ICMIF exercises no authority over thirdparty sites, each of which maintains its own independent policies and procedures. Voice is published by the International Cooperative and Mutual Insurance Federation (ICMIF), Denzell house, Dunham road, Bowdon, Cheshire, WA14 4QE, UK. Cover background image © tomas petruskevicius | dreamstime.Com WWW.ICMIF.ORG/VOICE 04 巻頭言 ジョン・ガリー デジタル化がもたらすコミュ ニケーションの急速な変貌 急速に変貌するコミュニケーションの世界‐デジタル化が飛躍 的に浸透し、正確にターゲット層に届く能力が向上しています。 保険業界に大きな可能性を提供するデジタルコミュニケーション を、多くのICMIF会員が、より効果的に顧客にコンタクトし 商品を販売するチャンネルとして活用したいと考えています。 ICMIF事務局でも同様に、会員に最大のリターンを生み出 すコミュニケーションを最重要課題としてとらえています。 事務局では今年の春、コミュニケーションに関するアンケート 調査を実施し、同種アンケートの基準回答率を上回る19%から ご回答をいただきました。コミュニケーションチームは、調査結 果を大いに参考にしながら、会員のご意見・要望を取り入れたコ ミュニケーション活動を進めています。 調査結果からは、季刊誌Voiceが高い評価を受け、個人でまた 職場でお読みいただいていることが明らかになりました。IC MIFサイト上で会員に関する最新ニュースをお届けする企画 好の機会です。このセミナーは今年早々に開催の予定でしたが、 も、圧倒的な支持を得ることができました。最新ニュース発信サ アンケートの調査結果や、SNSなどビジネスコミュニケーショ ービスについては、ささやかながらも配信を開始、今後は規模を ンツールによる影響をプログラムに組み込むため、開催時期を遅 拡大していく予定です。このサービスを会員、ICMIF双方に らせることにしました。セミナーの日時など詳細は近日中に皆様 とってより有意義なもののするために、サイトのリニューアルも にご連絡いたしますが、ICMIF会員コミュニケーション担当 行っています。 者の皆様がふるってご参加くださいますようお願いいたします。 調査では、回答者の55%がSNSを利用していると回答、I ICMIFは、協同組合保険者・相互保険者間の交流をサポー CMIF会員がSNS(ソーシャルネットワーキング・サービス) トし、会員のビジネスやサービスの質を高めるお手伝いをすると を広く活用している現状が明らかになりました。最も利用されて いう役割を担っています。その役割の中心となるのが、イベント いるSNSはリンクドインとフェイスブックです。 や活動内容などについて会員の皆様と優れたコミュニケーション を取ることだと考えています。 回答者はさらに、紙媒体でのコミュニケーションを削減または 廃止し、オンライン上でのコミュニケーションを広く活用するよ 同時に、コミュニケーションは双方向であるべきだとも考えて う求めています。このように調査結果は、我々コミュニケーショ います。会員組織の成功例、出来事、取り組みなどのニュースを ンチームに今後への期待感をもたらすと同時に、課題を提起しま ぜひ事務局まで積極的にお寄せください。 した。ICMIFは言うまでもなく、会員とのコミュニケーショ ン方法を改善していきたいと強く願っていますが、その一方でリ 会員の皆様からのコミュニケーションもお待ちしております。 ソースが限られているという現実があり、すぐにでも実行したい 取り組みをすべて実現することは難しいと、率直に認めないわけ にはいきません。そこで、会員の満足度を高めICMIFのメッ セージを効果的に届ける取り組みを優先して実行していくことが、 私たちの課題となります。 ICMIFコミュニケーションネットワーク・セミナーは、今 日のように進化したコミュニケーションを掘り下げて考察する絶 icmif voice issue 69 | september 2010 1 新規会員がICMIFに続々と加盟 この数ヶ月間に新しくICMIFに加盟した8社をご紹介します スイスからはスイスモビリアが新会員になりました。創 業は1826年、スイス国民には紹介の必要がないほど、 国内(また隣国リヒテンシュタイン)では由緒ある保険者 です。あらゆる種類の保険を提供しており、家財保険、ビ ジネス保険、純粋リスクをカバーする健康保険、生命保険 で確固たる地位を築いています。本社はベルン市に、また 特殊生命保険の事業部の本部をニヨン市に構えるほか、国 内各地に80店舗以上の代理店網を運営しています。 モビリアは「保険会社にとってベストな法的形態は相互 組織だと固く信じている。リスク分散と共同負担という本 来の保険制度にいちばん近いからだ。事業が成功すれば相 互社員はその利益に直接あずかることができ、株主に短期 的な利益を継続して提供することを求める株式市場の圧力 を受けないので、長期的な視点から事業を計画し運営する 2 ことができる」と、相互組織であることを誇りにしていま す。 同社の成長率は5年連続してスイス国内の平均成長率を 上回り、昨年は市場全体が冷え込む中、生命保険で4.4 %アップ、損害保険で2.4%アップを達成。収益は契約 者に還元、昨年は損害保険契約者に対して20%の割戻金 を確保しました。 保健医療従事者への保険に特化したフランスの老舗相互 保険者MACSFも新しく加盟しました。創立は1935 年、同国の医療専門職組合連合がリスク担保と年金を目的 として保険事業を立ち上げたのが、その始まりです。その 後対象を保健分野の従事者にも広げ、現在の相互社員数は 65万人を数えています。保健医療従事者を対象とした保 険ではトップ、国内全体で見ても18位につけています。 MACSFもスイスモビリアと同様、相互組織形態を誇 りにしており、信頼、関わり、プロ意識、他者の声に耳を 傾ける、敬意、団結といった相互組織の価値を大切にして います。相互社員は全員が、経営委員会(医師など保健医 療専門職で構成され、被雇用者代表2名を含む)が毎年提 出する議案に対して一票を投じる権利を有しています。収 益の分配については、経営委員会が社員配当と事業強化の ための内部留保の割合について議案を提出、社員の投票に 付されます。 MACSFのミシェル・デュピュイドピCEOは、全仏 相互保険組織連合ROAM(ICMIF会員)の理事長も 務めています。(ROAMについては8ページの記事もご 覧ください。) より、同社やICMIF会員のKÖBEなどの相互保険者 が自動車保険の分野で保険株式会社と競争できなくなるよ うな事態が起きようとしていましたが(Voice64号を参 照)、ICMIFやAMICE(欧州相互協同組合保険者 協会)の働きかけにより、この危機が回避されました。 パラグアイから新加盟したパナル(「蜂の巣」の意)損 害保険は、国内の協同組合運動で重要な役割を果たしてい ます。大学協同組合(貯蓄信用組合)とカバル(サービス 協同組合)が立ち上げたパナルは、他の協同組合や専門 職業団体と密接な提携関係にあります。また、理事のルル ド・オルデラド・シエンラ氏が2005年ICAグローバ ル理事会の理事に選出され、協同組合女性グループアメリ カ地域委員会の委員長を務めていることもあり、国際的に も活動しています。 英国からは、UIA,シェパーズ共済組合の2組織を新 会員に迎えました。UIAは創業1890年の相互保険者 で、歴史的に地方公務員労働組合と深いつながりを持って います。今でも労働組合員やNPO組織向け保険に特化し た事業を行っており、ロンドン北部の本社では100名以 上の職員が働いています。 マレーシアではタカフル市場が発展していますが、20 08年に創設されたACRリタカフルが新しくICMIF の準会員となりました。ICMIFに加盟するタカフル保 険者がまた増えたことになります。 最後に、英国ではAMI(相互保険者協会)とAFS( 同社のイアン・テンプルトン社長は、「ICMIFへの 加盟が認められ、役員会、職員ともどもうれしく思う。U IAは『原則に基づいた保険」を旗印にしており、これが 相互組織という形態を支えていると考える。ICMIFか ら学び、貢献する機会を楽しみにしている。外国の相互組 織と交流している実績もあり、このような活動を広げてい きたい」と語っています。 シェパーズ共済組合も、19世紀に労働者が興した疾病 共済組合が統合してできた、歴史に深く根を下ろした組織 です。今はモダンな保険金融機関に生まれ変わり、組合員 数は2年前の22,000名から今年は32,000名以 上に拡大するなど成長を続けています。 共済組合協会)が統合し、AFM(金融相互組織協会)と なりました。AFMは、引き続いてオブザーバー会員とし てICMIFに加盟しています。ICMIFのショーン・ ターバック事務局長は、「また、著名相互会社を含む多く の相互保険者・協同組合保険者を新会員として迎えること ができ、誠にうれしく思う。 ICMIFが昨今のような 情勢においても、健全に発展していることは喜ばしい。規 模の拡大が影響力の強化につながり、相互組織・協同組合 の声を世界各地で発信することができるようになる」と、 新会員を歓迎しています。 ハンガリーからは、自動車保険を扱う小規模相互保険者 TIRが加わりました。ハンガリーでは、保険法の改正に ICMIFでは、ITフリーダム社(www.it-freedom.com)を新 ルタントに転身した経歴の持ち主です。同社は英国の会社です しく協賛会員に迎えました。損害保険業界向けソリューションで が、ヨーロッパをはじめアジア太平洋地域にクライアントを抱え 市場をリードするIT企業で、2002年にミック・サージェン ており、相互保険向けソリューションも専門分野の一つです。( ト氏とアンドリュー・パスフィールド氏が共同で創設しました。 本誌18ページに、サージェント氏の寄稿記事「最新のソリュー サージェント氏はリーガル&ジェネラル、アクサなどの外部コン ションを利用したIT化のメリット」が掲載されていますので、 サルタントを務めるなど保険業界での経験があり、パスフィール あわせてご覧ください。) ド氏は、保険引き受け業務に携わった後、プログラマー、コンサ icmif voice issue 69 | september 2010 3 写真(左から)マイク・コールズ氏(カプリコーン技術サービス部部長)、アンドリュー・ウォルトン氏(豪HBF広報部マネージャー)、イア ン・マンドリー氏(AMI技術サービス部マネージャー)、アンドリュー・フィッツパトリック氏(カプリコーンリエゾンオフィサー) 協力の真価を学んだオースト ラリアのワークショップ 組織全体の能力向上を目的としたAGILEシミュレーショ ンツールを活用する戦略的意思決定ワークショップがこの6 月、オーストラリアのパースで開催され、オーストラリア、ニュー ジーランド、シンガポールから9組織58名が参加しました。 4 ワークショップのホスト団体カプリコーン・フ AMI保険(ニュージーランド)CEOでICM ィナンシャルサービシーズ(オーストラリア)のグ IF会長も務めるジョン・バームフォース氏は、こ レッグ・ルグイアーCEOはワークショップについ の企画を強く支持、「ICMIF会員が集まり、力 て、「当社の参加者は、戦略的意思決定に関する見 を合わせて合わせた以上の力を発揮できるようにす 識を高め、今後の意思決定を根本から変えるような る取り組みを支持したいと思った。このような取り 各種ツールを持ち帰ることができた」と、明確な意 組みこそICMIFの真価ですから」と語ってい 義を認めています。 ます。 NTUCインカム(シンガポール)のタン・ス この企画は地域のICMIF会員から大きな反響 ー・チー最高責任者(写真)も「新しいツールと効 を呼び、1回の定員をオーバーしたため、追加ワー 果的な手法を用いて『リアルな』企業環境の中で、 クショップを続けて行うことになりました。セッシ 戦略的で重大な経営上の決定を導き出すことができ ョンのリーダーはICMIF事務局の研修担当バイ た」と、ワークショップを高く評価しています。「 スプレジデント、マイク・アシャースト氏とシミュ NTUCインカムが組織を通じて信奉する『考え、 レーション・ビジネス社のデイブ・クラウザー氏、 計画する』という原則は、グローバルな事業を展開 ジム・オロックリン氏の3名が務めました。 する株式会社と同じ土俵で競争しなければならない 当社の経営者にとって、特に重要な原則と位置付け られています。」 アシャースト氏は、「2回目のワークショップ の1日目、昼食時間になっても29名は席を立とう とせず、戦略的課題に取り組み続けた。少なくとも 同氏は、「競争戦略、分析に基づいた枠にとらわ 10分は昼休みに食い込んだと思う」と、参加者の れない考え方、意思決定に際して感情を入れないこ 熱心さに心を打たれたワークショップを振り返り と、成功と失敗両方に対処すること‐これらはリー ました。 ダーにとって貴重な学びです。ワークショップの参 加者は、実際にミスをしたときの悲惨な結果を恐れ バームフォース会長も「現場で、相互組織・協同 ることなく、このような教訓を学ぶ機会を得たこと 組合が持つ『他との違い』がワークショップに導入 を高く評価していると思う」とも語っています。 され、AGILEシミュレーションで強化され、参 加者が『リアルな』難しい課題に取り組む様子に心 ワークショップを開催するきっかけとなったの を奪われた。私の会社のスタッフも多くのことを学 は、昨年10月のトロント総会。総会に先立って開 ぶことができたにちがいない」と、このイベントに 催された戦略的意思決定ワークショップに、カプリ 真の価値を見出しています。 コーンの役員や職員が数名参加、「当社の役員や上 級職が全員AGILEを体験すると有意義ではな いかと考え、パース市でのワークショップ開催を企 画、さらに参加者との交流を楽しんだトロントワー クショップに倣い、地域のICMIF会員にも参加 を呼びかけた」と、ルグイアーCEOが開催への経 緯を説明してくれました。 icmif voice issue 69 | september 2010 5 ICMIF再保険会議 に100名以上が参加 MEETING OF REINSURANCE OFFICIALS2010 WIESBADEN ICMIFが隔年で開催する再保険会議が今年5月ドイツのウ 会議専用サイト内の特定のページに質問やコメントを送ります。 ィスバーデンで開かれ、25カ国から多くの保険者や再保険者、 こうして送られた質問等は公開され、参加者はだれでも見ること ブローカーが参加しました。会員にとって恒例の行事となったこ ができます。この試みは好評で、会議セッション中100件を超 の会議は、今回も期待を裏切ることなく、3日間の期間中多くの えるコメントや質問が寄せられました。発表者に対する質問で、 発表やワークショップ、イベントが行われました。以前と同様、 時間切れのために回答できなかった分については、後日サイト上 モンテカルロ会議のミニ版ともいえるセッションでは、再保険契 に回答が掲載されました。 約を直接交渉し合意する機会も設けられました。 会議初日は、R+V再保険のクリストフ・ラムビー氏の再保 ウィリス再保険(英国)のトニー・フィリップス氏は再保険会 険市場の概要に関する発表で、好スタートを切りました。発表で 議の価値を強く確信する一人であり、「この会議は一年おきに私 は、上位10再保険グループが世界の再保険能力のおよそ3分の たちを結びつけてくれ、ウィリスのようなブローカーや再保険会 2を占めているものの、近年、中規模再保険者がシェアを大きく 社だけでなく、ICMIF会員にとっても、お互いに興味のある 伸ばしている現状について報告があり、特にアジアの再保険会社 事柄を話し合う絶好の機会」と評価しています。タジュ保険(パ に成長の機会があることが示唆されました。 ラグアイ)のカルロス・ベニテス会長も、「再保険会議は私たち を高めてくれる経験であり、参加者と交流し、再保険者と一対一 続いて行われたパネルディスカッションでは、座長を務めたコ で顔を合わせ、会社や経営陣を強化する機会である。この会議は ブステダーネス・フォルシキリング(デンマーク)のモゲンス・ 私たちの期待を100%満足させてくれる」と、同様の意見を述 スコフ氏のもと、再保険市場をあらゆる立場から考察しました。 べています。 パネリストは、出再者を代表してCIS(英国)のスー・スキナ ー氏、再保険者側からはセキュラ(ベルギー)のリュック・ボグ 20回目となる今回の再保険会議はR+V再保険(ドイツ)がホ 氏とEMC(アメリカ)のロン・ハレンベック氏がそれぞれ欧州 スト団体となって開催され、44組織から106名が参加しまし とアメリカを代表、ブローカー側としてウィリス再保険のフィリ た。 ップス氏が、また格付け側としてAMベストヨーロッパのマイル 今回は新しい取り組みとして会議セッション中、各テーブルに ラフ・エルメルト氏がそれぞれ務めました。座長がパネリストに ラップトップパソコンを設置、参加者はそれを使って発表者や他 2010年契約更改の規律や、リーマンショック後の出再者の出 の参加者とインタラクティブに対話をすることができるようにし 再理念、ソルベンシーII実施後の格付け機関の役割などについて ました。パソコンはワイヤレスネットワークに接続されており、 意見を求め、次に参加者がパソコンを使って質問を投げかけまし ズ・トロッター氏が、監督機関からはドイツ連邦金融監督庁のオ 6 た。質問の内容はチリ大地震の影響から信用調査機関の監督、再 保険者によるモデル分析の活用状況など多岐にわたりました。 術支援、再保険能力を提供する目的で2008年の再保険会議で 結成され、コーポレーターズのアンジー・ショー氏がコーディネ ーターとして、特別ワーキンググループや再保険委員会、ICM 午後の部は、2025年の未来へタイムトラベル。スコフ氏と IF事務局のサポートを受けながら運営しています。 セキュラのピエト・ハエルス氏が、今年の新聞だけでなく5年後、 10年後の新聞の記事を取り出し、ソルベンシーIIが世界中の相 南米地域からはLARG(南米アメリカ再保険グループ)につい 互保険者に資本増強の圧力をかけている状況を説明、再保険提携 て、FEDPA保険(パナマ)のアミルカール・コルドバ氏から により費用削減と資本解放を実現しようとする試みは失敗に終わ 発表がありました。LARGは「協力すれば違いが生まれる」を ったとする将来の記事を読みあげました。このセッションでは、 スローガンにしており、コープセグロス(ドミニカ共和国)のペ 中小保険者対策を行わないと、中小は最終的に大手に飲み込まれ ドロ・アブロイ氏はLARGのメリットについて、再保険へのア てしまうが、相互保険者と協同組合保険者が連携を強化すれば、 クセスや再保険料節約、また組織成長への寄与といった観点から、 状況を少しでも改善できるという結論が示されました。 統計を用いた発表を行いました。SSVMN(コスタリカ)のジ ェオルジーナ・ディアス氏からも、同社にとってのLARGの意 ICMIF会員からも再保険の経験について発表がありまし 義についての発表がありました。 た。JA共済連の山里也寸志氏は、JA共済連が地震エクスポー ジャーに関するリスクマネージメントとして、従来の保険市場と そのほか、コープセグロス(エクアドル)のフアン・エンリ キャットボンドの両方を使っている方針を報告、リスク移転を一 ケ・ブスタマンテ氏、タピオカ(フィンランド)のミカ・マッコ 層安定化させるために、ICMIF会員間でカタストロフィー・ ネン氏とキモ・ハイキネン氏、パートナー再保険のクリストフ・ リスクスワップを進めてはどうかとする案が示されました。コー カエギ氏などから、刺激的で示唆に富む発表がありました。 ポレーターズ(カナダ)のジャニス・レイナー氏からは、再保険 コスト削減の取り組みについての発表があり、CISのスキナー 近日中のお届けする再保険会議の全内容報告を楽しみにお待ち 氏は、再保険ブローカーとの関係に関する発表を行い、従来の再 ください。 保険料の一定の割合を支払う手数料制は経験にそぐわないと考 え、固定手数料制に変えたいきさつが説明されました。 AGILEとAICPCUのパートナーシップ 次に、ICMIF会員同士の統合を通じて再保険コスト削減 国内外で優れた保険学習ツールを求めていた米国CPCU研究 に成功したアルゼンチンのケースについての共同発表がありまし 所(AICPCU)はこのほど、AGILEに関する戦略的パー た。モニカ・スパダベッキア氏がAACMS(アルゼンチン協同 トナーシップについて発表、さらにウォートンスクールで2週間 組合保険者相互保険者協会)の活動を紹介、次に、再保険ブロー にわたり開催される有名なエグゼクティブ開発プログラムの最後 カーのストップロス再保険を設立し(2001年の危機以降に) に、AGILEを使った2日間のワークショップが行うことが明 再保険プール・ナショナルを設立した経緯について、リバダビア らかになりました。 保険のホセ・ルイス・バレーラ・ロペス氏から、政治的・経済的 背景の説明がありました。ストップロス再保険のイェズス・オス 保険学習ツール調査の一環としてICMIF事務局を訪問し カル・プリエート氏は、7協同組合のコンソーシアムとして発足 たことがある、研究所のバイスプレジデント、ソール・J・スウ したプール・ナショナルが、17社が参加するまでに成長した経 ォータウト氏はAGILEについて、「現在の、また将来的な競 緯を報告しました。 争や社会、環境などの諸要因に合わせた戦略的ニーズの構築につ いて、学習者の理解を支援するツールであり、これがAGILE 最終セッションでは、ICMIF会員が地域レベルで行ってい の真の能力であり、力強いディスカッションを生み出す」と評価 る共同事業について広く考察しました。ヨーロッパからは、AM しています。さらに続けて「自分が属する組織の戦略的意思決定 ICE再保険特別調査チームが構築を目指している「再保険マネ プロセスを開発し、実行し、認識することができれば、個人レベ ージャー欧州ネットワーク」について、ハエルス氏とともに調査 ル、組織レベルの両方でよりパワフルな結果が生まれる。競争も チームを率いるレアレ・ムツア(イタリア)のアンドレア・カル 意思決定も、絶えず変化する場所で起きているのであり、静的空 ージ氏が報告。調査チームはICMIF会員にネットワーク参加 間で起きているのではない」と語っています。 を呼び掛けており、また来年5月の12~13日には、ブダペス トで欧州相互協同組合再保険マネージャー会議を開催する予定で す。このマネージャー会議は、ICMIF再保険会議が開催され ない年に開催されています。 北米地域についてはコーポレーターズのビクター・ブランドニ シオ氏から北米地域委員会について紹介がありました。この委員 会は、地域のICMIF会員に研修、情報共有、アドバイス、技 icmif voice issue 69 | september 2010 7 フランスの相互保険者が、ウェブ上で 反ソルベンシーIIキャンペーンを開始 「フランスの相互保険者はソルベンシーIIに対して大きな懸 念を抱いている」 (マリー=エレーヌ・ケネディー女史) 「ソルベンシーIIは全体として非常に複雑なシステムで負担が いドイツのことを考えドイツ語のサイトも開設した。これらの国 大きいため、現在、優れた商品やサービスを提供し、お客様が満 の人々と同じ考えを分かち合えると思う。」 足していて、現行ソルベンシーIでまったく問題がなくても、ソ ルベンシーII下では、会社がつぶれてしまうのではないかとまで ケネディー女史は、ソルベンシーIIの問題は、契約者の保護向 思いつめている会社もある。」 上という当初の目的にあるのではなく、相互保険者、とくに中小 ROAM(全仏相互保険組織連合)のマリー=エレーヌ・ケネ としているところにあるとしています。契約者保護についてRO ディー代表はこう訴えています。ROAMはフランス保険市場の AMは「この本来の目的について反対していない」と、今でも崇 保険会社にも規模とリスクの量に見合わない厳格な要件を課そう 7%にあたる国内46相互保険者が加盟する団体で、この5年間、 高な目的であるととらえています。「しかし、ソルベンシーIIに ソルベンシーIIに関する考察を積極的に進めてきました。ROA ついて検討が始まった当時から私たちは、今日の保険市場で不可 MのソルベンシーII対策プロジェクトチームは、ほぼ毎月のベー 欠な役割を果たしている会社の多くが消滅する結果になると指摘 スで話し合いを行っていますが、ソルベンシーII実施に関する詳 してきた。このような会社は主に相互保険者で、とくに特定の職 細が、昨年11月にCEIOPS(欧州保険年金監督者会議)か 種に特化した相互会社であることが多い。」 ら明らかになったことをうけ、行動することを決意しました。 ケネディー女史はROAM会員の中から、建設業者向け賠償責 その行動とは、ソルベンシーIIに反対する考えを一般市民に示 任保険に特化しその分野で40%のシェアを持つ相互保険者や、 すための専用ウェブサイトとブログを開設すること。「ブログで 医師の賠償責任保険で35%のシェアを持つ組織を一例として挙 は、私たちの原則に基づいた主張を、はっきりした切り口で、専 げ、「このような相互組織は、特化分野について知りぬいてお 門知識がなくても読んで理解してもらえるように、可能な限り簡 り、優れたサービスを優れた価格で提供しているから成功してい 単な形で表現することができる」と、ケネディー代表は説明、ウ る。アクサ、アリアンツ、ジェネラリなどの巨大保険会社は、こ ェブサイトでは、関連資料やROAMの活動を伝える記事、ビデ のようなニッチ市場についての専門知識を有しておらず、進出す オなどを掲載するほか、重要なオンライン署名のページもあり、 ることも欲していない」と述べています。 賛同者に署名を呼び掛けています。 ROAMは「ソルベンシーIIは、主に生保事業を営む巨大保 ウェブサイトはフランス語(www.stopsolvabilite2.com) 険会社の監督要件に重きを置きすぎた形になっており、検討過 のほか、英語(www.stopsolvency2.com)、ドイツ語(www. 程において、損保を扱う中小保険会社が多数存在することを忘 stopptsolvency2.com)、スペイン語(www.altoasolvencia2. れた」と指摘、ケネディー女史も、ソルベンシーIIの影響はフラ com)の4ヶ国語で開設しました。「最初から、ROAMの会員 ンス国内にとどまらず「ヨーロッパ各地の何百という相互保険者 やフランス保険市場の範囲を超えた活動を考えていた。欧州レベ が、この3~4年の間に消えてなくなる可能性がある」と懸念し ルで私たちと同じように懸念を抱いている人々に注目してもら ています。「意図としては立派でも、複雑すぎる欧州の監督規制 い、政治家にも私たちの声を届けるのが目標だ。英語の使用はも 体制のせいで、なぜ自分たちの中から犠牲者が出なければならな ちろんだが、スペインには数多くの相互組織が存在しており、ヨ いのか、欧州の相互保険者は理解に苦しんでいる。このような監 ーロッパの保険監督規制改革に関心を持っている南米諸国のこと 督規制の枠組みの見直しを急速に進めることが急務だ」と指摘し を考えスペイン語を、同様に相互組織、特に中小相互保険者が多 ています。 8 写真 マリー=エレーヌ・ケネディー氏(右)とミシェル・デュピュイドビ氏 また、今こそ、ソルベンシーIIが専門家の手を離れて、各国の政 治家が関与するときだとも考えています。 は、その地域との結びつき、特にアフィニティグループや職業と の結びつきが強いことを忘れてはならない。相互組織を失うとい うことは地域の結びつきを破壊することになり、今日のグローバ しかしここで問題なのは、ROAMのサイト名のようにソルベ ル化の社会においても、地域の結びつきの重要性は失われていな ンシーIIを止めることは、この段階ではもはや不可能だというこ いのです。」 とです。ROAMにとってキャンペーンの真の目的は、ソルベン シーIIの指令が発動される前に、一歩立ち止まる余裕を確保する フランスの相互保険者40社が加盟し、同じくICMIF会員 ことにあります。ケネディー女史も「すでに投票が行われており でもあるGEMA(相互保険会社グループ)も、ソルベンシーII ソルベンシーIIを止めることは問題外だ。だから、悲惨な結果 に関する議論に積極的に参加しています。 を避けるためにも、ここで立ち止まって、保険料、消費者、雇用 の観点からその影響を適切に評価する必要性を各国政府に理解し てもらうことが、キャンペーンの趣旨」と認めています。 GEMAのジャン=リュック・ドボワシユー事務局長は、5月 にフランスのビジネス紙「エコー」のインタビューでソルベンシ ーIIに関する考えを述べましたが、「まだ、交渉の余地があり、 「『stopsolvency2』(ソルベンシーIIを止めよう)というサ 全関係者が受け入れられるような道理的な妥協に達することも可 イト名を選んだのは、数ヶ国語で表現できて、私たちの主張を示 能だ」と今でも考えています。 す短くて簡潔なサイト名を探していたというのが、その理由の一 つ」とケネディー女史は説明します。サイトには「ソルベンシー ドボワシユー氏が指摘するように、ソルベンシーIIが行き過ぎ II:正しい問いかけかもしれない。でも答えは間違っている」と だとEUに提言しているのは保険団体だけでなく、ヨーロッパの いう副題が表示されています。 消費者団体も保険料の引き上げにつながるのではないかという懸 念を示しています。 ROAMの会員は多くがフランス国内の老舗相互保険者で、い ちばん古い保険者は1774年の創立です。ROAM自体も18 同氏はさらに、相互保険者が各種のハイブリッド資本を有して 55年に設立という古い歴史を誇っています。ROAMは、ソル いることに注意を促し、資本規制で容認できる資本の種類につい ベンシーII関連キャンペーンのほかにも相互保険者(とくに相互 てもっと検討を加えるべきだと呼びかけています。また、透明性 の原則と理念を固守している中小保険者)の利益擁護に国内外で 要件については、中小相互保険者が、競合他社に有利に働くよう 熱心に取り組んでいます。ICMIFやAMICEでも熱心に活 な情報を直接開示することを求められることになる、と指摘して 動しており、ヨーロッパ全土の相互組織を結びつける法的措置と います。 して、「欧州会社」と同様の「欧州相互会社」形態の実現化に向 けた活動を行っています。このような組織形態は、ソルベンシー IIに関する交渉で役立つと思われます。 写真 マリー=エレーヌ・ケネディー女史(右)とミシェル・デ ROAM会員には、ニッチ市場で事業を行う非常に規模の小さ ュピュイドビ氏 い保険者があり(そのうち9社は保険料収入が500万ユーロ未 満)、それらは職員50人未満のところがほとんどです。しかし これらの会社は地域で重要な役割を果たしています。「相互組織 icmif voice issue 69 | september 2010 9 日本共済協会共済相談所は、法務大 臣公認のADR機関になりました 共済相談所は本年1月、ADR促進法に基づく法務大臣認証を取 日本共済協会は2009年6月にADR検討プロジェクトを発足 得しました。法務大臣によるADR認証取得は、これまでの共済 し、ADR関連法制への対応における論点整理と法令の検証など 相談所の活動に法的裏付けを与えるとともに、中立・公正な第三 を行いました。その結果、日本共済協会とその会員は、日本共済 者機関として公的に証明された地位を与えることとなります。こ 協会としての対応方針「現時点の金融ADR法は実施にあたって のことは、共済相談所の社会的な信用を高め、消費者がより安心 の十分な条件が整っていないため、これに基づく公認を共済相談 して利用できる環境を整備することにつながると考えています。 所がうけることは利用者にとって必ずしも利益にならないので、 当面は公認申請を見送る」を決定しました。 投資信託を組み込んだ保険商品や変額年金商品などの出現、保険 会社による不払い不祥事など、日本の金融業界は1990年代以 しかし、第三者機関としての中立性・公平性についての公認を得 降、社会的に厳しい批判にさらされました。行政は、苦情・紛争 ることは社会的信用の点で重要であり、そのためにADRに関す 等に関して消費者が利用しやすく簡易・迅速で中立・公平な第三 る基本法であるADR促進法に基づく認証の申請を決定、それに 者による裁判以外での解決手段の早急な促進をめざし、ADR促 基づいて法務大臣認証を取得しました。 進法(※)の制定を行うとともに、各金融機関の監督官庁は、事 業者に財務基盤の強化および消費者対応の強化を指導してきまし (※)ADR促進法 た。 民事上の紛争解決を図るのにふさわしい手続きを選択することを さらに近年に入り、英国ファイナンシャルオンブズマンサービス (FOS)を参考にした、金融分野に特化したADR機関の設置 容易にし、国民の権利利益の適切な実現に資することを目的とし て、裁判外紛争手続きについての基本理念などを定めるとともに、 が金融庁により検討され、金融ADRに関する保険業法の改正( 民間紛争解決手続き(民間事業者が行う調停、あっせんなど)の 金融ADR法)が行われました。各種協同組合法も保険業法に準 業務に関し、法務大臣による認証を設け、併せて、時効の中断等 じた金融ADR法の改正が行われました。 に係る特例を定めてその利便の向上を図ることを目的に制定され た法律です。 組合員のために運営されている協同組合にとって、組合員からの 苦情・紛争への適切な対応は当たり前の課題であり、日本共済協 会の会員である共済団体は、法令改正前の2003年7月に、第 三者紛争解決機関として日本共済協会内に「共済相談所」を設置 し対応してきました。共済相談所は、弁護士や学識経験者等の第 三者による「審査委員会」を運営し、契約者からの紛争申し立て について、審査委員会による裁定または仲裁による紛争解決支援 業務を行っています。 日本共済協会は、ADRについて必要な情報の収集・調査・研 究を行ってきました。2009年2月には、日本におけるADR のあるべき姿を十分に理解し、行政の意図を適切に把握し、協 同組合として組合員にとって何が最善であるかを見極めて適切 に対処するために、英国FOSについての詳細な海外調査を行い ました。 ICMIFのご協力を得て行ったこの海外調査を通じて、金融A DR機関の特徴、現時点での日本の行政による金融ADRモデル と英国FOSとの相違点、日本版金融ADRに欠けている要素と、 それが今後の共済事業に与える影響の可能性についての認識を深 めることができました。 10 インド・ビハール州で災害 支援を行うICMIF会員 インド北部ビハール州カティハール県のプルドビ の月収を得ることができるようになりました。この 村に住むヌタンベンさん(35)は、2008年 収入から、緊急融資として消費者金融から借りたロ に州を襲った大洪水で被災した多くの女性の一人 ーンの返済をしています。 です。ヌタンベンさんはその後、ICMIF会員 のSEMA(女性自営業者協会)の活動、またIC SEWAは、洪水による災害支援として雇用創出 MIF災害救援ネットワークを通じたICMIF会 と健康、医療、子育てを組み合わせた活動をビハー 員の団結のおかげで、生活再建をすることができ ル州で実施しましたが、ICMIFの支援があった ました。 からこそ、95家族に直接的な雇用を創出し、37 人の子どもに保育の機会を提供し、地元民958人 Voice65号でもお伝えしたように、ICMIF に直接的な保健サービスを提供することができたと に加盟する5組織はAOAと協力して、ICMIF 報告しています。 災害救援ネットワークを活用したビハール州の災害 復興支援活動を行いました。このネットワークは2 ビハール州での被災者支援活動を行っているIC 004年12月にスマトラ沖大地震によるインド洋 MIF会員は、フォルクサム(スウェーデン)、全 大津波が発生した直後に結成されました。SEWA 労済、コープ共済連、アメリカン・アグリカルチ は、このネットワークとともに行った支援活動の最 ュラル(アメリカ)、EMC(アメリカ)の5組 終報告をこのほど発表しました。 織です。 報告では、ビハール州に住むSEWA会員は、在 宅労働者、職人、農業労働者など最貧困層の女性 たちだと指摘、「この地域におけるSEWAの強み を生かして、生活再建と社会保障、とくに健康、保 険、子育てに焦点を当てた復興計画を立案した」と 説明しています。 ヌタンベンさんは、洪水で家や、飼っていた羊、 家財などが流され、生活基盤を失いました。夫は農 業労働者で、洪水発生時は職探しのためにほかの土 地に行っていましたが、その後まもなく結核を患っ て村に戻ってきました。ヌタンベンさんは、竹細工 を製作するSEWA主導のプロジェクトを通じて職 竹細工を製作する女性たち。新しいスキルを学び収入を得ています。 を得ることができ、2100ルピー(47米ドル) Image copyright © Sourav Das icmif voice issue 69 | september 2010 11 南北に細長い国スウェーデン。南端のマルメ市 近くにありスウェーデンとデンマークを結ぶオア スン海峡橋から1500キロ北上しても、まだ国 内。しかも国土の15%は北極圏内にあります( ただし、北極圏内の人口は15%以下です)。 「私たちの生活 に違いをもたら すような取り組 みを続けたい」 12 Image copyright © Lars Nyman ボスニア湾に面したスウェーデン北部の町ピテア。オアスン海 当時から、スウェーデン国内の労働組合や社会運動と強い結び付 峡橋から1500キロものドライブをする必要はありませんが、 きを持っています。この関係は、フォルクサムの組織構造やガバ それでもアイスランドの首都レイキャビクより北に位置していま ナンス構造にも組み込まれており、理事会理事の多くは、労働組 す。夏にはボスニア湾のビーチを楽しみ、冬は凍った湖でアイス 合会議、協同組合運動、その他社会的組織の代表が務めています スケートを楽しむ観光客が訪れる美しい町です。 (フォルクサムにはフォルクサム生保とフォルクサム損保に、そ れぞれ別の理事会があり、生保、損保とも傘下に子会社を多数抱 ICMIF会員のフォルクサムでCEOを務めるアンデルス・ えている)。また、各理事会には、職員代表理事も5名います。 スンドストロム氏の自宅はピテアにあると聞くと、驚かれる方も 多いでしょう。スンドストロム氏のオフィスは、ストックホルム ですからフォルクサムは、「お客様が経営に参加している組 にあるフォルクサム本社ビルの最上階にあるからです。スンドス 織」を強調することで、競合他社との差別化を図ることができま トロム氏自身、「毎週日曜日に自宅からストックホルムに出勤し す。ウェブサイトには、「フォルクサムを所有しているのはお客 て、週日は市内の小さなマンションで過ごし、週末にピテアの自 様です。収益は株主に配当する必要はなく、社内で全員の利益の 宅に帰って妻と週末を過ごす」往復1700キロに及ぶ飛行機通 ために使われます」というメッセージが掲載されています。ま 勤の大変さを認めています。 た、このような結び付きがあるためフォルクサムは、労働組合員 や、その他社会運動のメンバーにアフィニティグループ向け保険 しかし週末ピテアの自宅へ帰れば、スウェーデン大手保険者の 商品を提供し、顧客層を開拓することができます。創立後102 トップとしてのプレッシャーから解放され、リラックスすること 年が経ち、国内市場にも深く根を下ろした保険者として、住宅保 ができます。「狩猟や魚釣りをするのが好きで、これから秋にな 険のシェア50%、自動車保険のシェア20%と予測されるまで る時期は、ヘラジカ猟が楽しみでなりません。ヘラジカ猟は、何 の規模に成長しました。 といっても狩猟シーズンのクライマックスですから。」 しかし、過去の業績にのんびりしていられないことを、スンド スンドストロムCEOは、実業界に入る前は政治の世界にいま ストロムCEOは十分承知しています。スウェーデンは急速に変 したが、政治家としてのキャリアを始めたのが、このピテアで わりつつあり、例えば移民受け入れ政策により、今では海外から す。ストックホルムから北に300キロ、小さな町フディクスバ の移民が人口の2割を占めています。フォルクサムはこのような ルで1952年に生まれたスンドストロム氏は、その後、生まれ 現状に対して、多国語対応コールセンターの設置(Voice65号 た町よりもっと北にあるウメア大学に進学、社会科学を専攻しま を参照)やイスラム金融商品の開発(Voice67号を参照)など した。その後も北上を続け、20代でピテア市議会議員に社会民 の革新的なアプローチで対応してきました。スウェーデン人の社 主党から立候補して当選、14年間にわたり議員を務めました。 会そのものも変わりつつあります。親世代と比べて若者は、労働 同氏の活躍は党中央執行部の目にとまり、最北端にある広大なノ 組合その他従来の急進運動に共感することが少なくなりました。 ルボッテン県の党支部長に抜擢され、同時に党中央執行委員会の 労働組合加入率は、他の欧州諸国と比べて依然として高いもの メンバーになりました。必然的に、次のステップは国会議員で の、低下傾向にあります。フォルクサムへの影響はあるのでしょ す。その期待に応え、社会民主党が政権を奪取した1994年か うか。 ら4年間大臣を歴任しました。労働大臣を務めた後、96年には 企業大臣になり、その後社会保障大臣を短期間務めました。しか スンドストロムCEOは、「今でも若者は、社会問題に対する し98年に、政治から引退し実業界に転身することを決意、ピテ 高い意識を持っていると思います。ただその表現方法が昔とは違 アに戻り、地域の貯蓄銀行の頭取になりました。その後、北部に うだけです」と、現代の若者に対する希望を捨てていません。「 ある別の貯蓄銀行に移り、2004年にフォルクサムのCEOに 昔のように労働組合やNPO団体に加入するのではなく、今の若 迎え入れられました。 者は例えばフェイスブックで市民運動に参加するという形で社会 問題に取り組んでいると思います。ですから、国民の福利や環境 スンドストロム氏は、政治家としての20年を「関心があった の健全性を大切に思う会社の姿を積極的に示し続け、だからフォ 問題に直接取り組めた素晴らしい経験」と振り返りながらも、今 ルクサムは魅力的な会社だということを、若者に認知してもらう は政治家とは違った立場で、私たちの生活に違いをもたらすよう ことが重要です。」 な取り組みを続けていると語ります。「(政治家の時は)社会保 障制度で、フォルクサムでは保険で、同じように保障を提供する 社会的活動、環境活動という点でフォクサムは優れた実績を誇 仕事をしています。政治家の時は、私に仕事を与えてくれたのは っています。例えば、車の安全性向上に関する長年にわたる取り 市民や国民で、今は、お客様が私に仕事を与えてくれているとい 組みは有名で、車の設計や安全装置にも影響を与えています。最 う違いがあるだけです。」 近では、企業の社会的責任について多岐にわたる取り組みをして います。 フォルクサムは1908年、農業や産業に従事する労働者が保 険による保障を利用できるようにとの目的(フォルクサムはこれ その一例として、社会的責任投資におけるパイオニア的な活動 を「不公平を正す」目的と表現している)で設立されましたが、 を挙げることができます。フォルクサムは2005年、国連が提 icmif voice issue 69 | september 2010 13 Image copyright © Lars Nyman 唱する責任投資原則の開発作業に直接参加したのをはじめ、この フォルクサムは、他に求めることは自らが実践することをモッ 分野におけるICMIFの活動においても主要メンバーとして活 トーとしています。同社のサステナビリティに関する活動は特に 躍しています。フォルクサムは現在、2億5千万スウェーデンク 有名ですが、国内で初めてカーボンニュートラルの考えを事業に ローネ(3400万米ドル)の資産を運用していますが、資産運 導入したのはフォルクサムです(Voice61号参照)。ICMI 用でも社会的責任投資を進めています。 Fが昨年トロント総会で発表したサステナビリティレポートの作 成では上級スタッフが積極的な役割を果たしました。 「国内外の会社の株式を保有し資産を運用していますが、持続 可能な開発に貢献する一方法として、株主となっている会社の温 「我々が持続可能な発展に寄与できる唯一の方法は協同組合的な 暖化対策や環境活動について達成目標を提示するといった、企業 企業統治を通じてのみです」 のガバナンスへの積極的取り組みがあります。このようにして、 温暖化や環境に対する効果だけでなく、フォルクサムにとって一 このような環境問題や社会問題への取り組み、またフォルクサ 番大切なステークホルダーに価値を創造し、プラスの効果をもた ムが明解な意見を持つ汚職問題や人権問題などへの取り組みは、 らすような取り組みを進めています」。 国内の急進運動との歴史的な結びつきと密接に関係しています。 しかし、そこには事業上のメリットもあります。このような問題 スンドストロム氏によると、このような活動は時として苦労を でリードする会社は、将来の勝ち組になるというのが、フォルク 伴います。昨年フォルクサムは、株主として35社の株主総会に サムの考えです。スンドストロムCEOが語るように、自分が関 出席、環境問題について会社の方針を問いただしました。また、 係する会社に社会的責任を求めるお客様が増えています。つま 業績とは不釣り合いな巨額の役員・管理職ボーナスにも反対票を り、CSRは事業改善にも寄与します。 投じました。一昨年、女性の登用が少ない会社に対して公開書簡 を送り、男女平等に向けてもっと努力するよう促しました。こう しかし事業体としては、このような問題に取り組むだけでなく、 した形で圧力をかけても望む効果が得られない場合は、その会社 事業としての成果が当然求められます。スンドストロム氏はこの の株式を売却することをもいといません。実際2009年には、 数年間、グループ会社間の相互関係について見直しを行っていま この理由で2つの会社の株式を手放しました。しかし成果も上が す。以前は、グループ内の会社が独自に商品を開発販売していた っています。例えば国際的な警備保障会社G4Sは、労働条件に ので、同じような商品が数社で重複するケースがありました。そ ついて国際的な労組と協定を結び、水処理大手の多国籍企業ベオ こで会社別ではなく事業別体制に再構築し、同時に人事、IT、 リアは、エルサレム東部のイスラエル占領地区における建設工事 保険金請求処理、会計、財務、総務、コミュニケーションなどの の見直しを行いました。 本社機能を一か所にまとめました。 14 さらに、顧客サービスについても、今までの地域ベースのサービ ストロム氏は個人的に、損害保険部門の強化を自分の業績の中で ス体制を改めようとしています。保険を地域の支店で購入すると いちばん誇りにしており、「フォルクサム損害保険会社が、健全 いう従来のやり方では地域ベースのサービス体制は適しています で高い競争力を持った会社になったのが、とてもうれしい」と語 が、インターネット社会では、必然性が薄れてきます。「フォル っています。ピテアとストックホルムを結ぶ長距離通勤の苦労が クサムは地域ベースの組織から機能ベースの組織へと変わろうと 報われた思いではないでしょうか。 しています。今までは、地域ベースと機能ベースの両方を採用し ていたので、リソース確保において衝突が起きたり、意思決定が できないという事態が起こっていました。そこで、各機能を明確 化し、それを中心にマネジメントを集中させ、保険商品販売、保 険金請求処理の両方の向上に役立てています。リソースと販売ル ートを駆使してお客様の要望に応えることができる組織を作り上 げることが、事業戦略の目的です。」 フォルクサムは各種の販売チャンネルを活用しています。例え ば労働組合ルートについては、労働組合は、組合員に付加価値を もたらすことによって加入率低下に歯止めをかけようとしている こともあり、このルートで各種商品を販売しています。また重要 性が増している販売ルートに、スウェド銀行ルートがあります。 スウェド銀行は、地域貯蓄銀行網と提携関係にある全国銀行で、 フォルクサムは同行の筆頭株主として10%近くの株式を所有、 スンドストロムCEOは非常勤役員となっています。現在、フォ ルクサム商品の一部は、スウェド銀行の商品名で同行を通じて販 売されています。「スウェド銀行の株式保有は、長期的な資産運 用として行っています。自分のところで銀行を持つことは考えて いませんが、地域の貯蓄銀行と提携しているスウェド銀行との協 力体制からメリットを得たいと考えています。保険と銀行は商品 構築、販売などの分野で共通する点があり、そこで協力できると 思います。」 フォルクサムは従来から、ICMIFや現AMICEなど欧州 の相互保険者団体で積極的な役割を果たしており、ユーレサ(ヨ ーロッパ社会的経済保険連合会)を通じて欧州の相互組織と密接 に協力しています。この国際的な視点をもとにスンドストロムC EOは、相互保険・協同組合保険各社の動きを総合的に評価でき る有利な立場にありますが、少なくとも現時点では、国内市場に 専念した事業を行う考えです。「大きいことは必ずしも美しいこ とではないと、昨今の金融危機が教えてくれました。家庭向け損 害保険については、そもそも損害保険は基本的に国の法律と福祉 モデルに基づいており、福祉モデルは各国で体制が異なるため、 海外との提携でシナジー効果が生まれる可能性は少ないと思いま す。年金についても同様で各国によってシステムが異なるので、 海外の相互保険者との統合は考えていません。」 ソルベンシーIIについてフォルクサムは十分対応できるとし ています。「規制強化によってリスクマネージメントの要件が厳 格化されるのはよいことだと思います。フォルクサムは問題なく 要件をクリアできると思います。」 2004年にスンドストロム氏がCEOに就任した時フォルク サムは、今と比べて厳しい状況にありました。同氏の手腕がなけ れば、現在のように強力な企業にならなかったでしょう。スンド 15 保険業界で100年生き 残る事業スタイル ニューヨークにある保険情報研究所所長でエコノミストでもあ 内に対処すること。第四に、顧客を大切にすること。「お客様は るロバート・ハートウィグ氏は、創業100年以上の老舗損害保 優先順位トップだ」と所長は強調しています。第五に、ローカル 険者の老舗の秘密について研究を続けています。 なレベルで監督規制を受け入れること。 今年フロリダで開催されたジェン・リーの経営者フォーラムで ハートウィグ所長が称賛するのは、どのような保険者・経営 ハートウィグ所長は、保険業界で長生きするための秘訣について 者でしょうか。所長はプレゼンテーションの締めくくりに、老舗 持論を展開、「どのような生き物も最終的には、変化する環境に 企業の教訓から、成功した保険会社として以下の6点を挙げまし 適応できなくなる」と自然界で多くの生き物が絶滅したことを示 た。 し、企業の大多数が破綻しても何ら不思議はないと述べました。 さらに「経済は常に変貌しているから、産業界では、自然界と比 まず、経営者のインセンティブが顧客、職員、代理店、地域な べて企業の大量絶滅が起こりやすい」とし、現在の金融危機は何 ど主要ステークホルダーの方を向いている会社。次に、中小であ 十万という企業を破綻に追いやる可能性があると警告しました。 りながら、経営者が業界の傾向や問題、機会について知識を有し ている会社。また、企業リスクマネージメントについて、経験に その一方で、500年も前に興され、今でも存続している会社 基づき、しかも総合的な理解力を持つ経営者を有する会社。自分 が存在することを指摘しています。保険業界からは、500年の のエゴで動くのではなく、他人の助言を求め、コンセンサスを築 歴史には及ばないものの、300年以上の歴史を持つ由緒ある会 こうとする最高責任者を持つ会社。主要な支持基盤を大切にして 社として、ビルセナー(ドイツ)、ロイズ(英国)、ジョンジダ いる会社。最後に、「本業以外のことに目を奪わて視点が定まっ イジェ(ノルウェー)を含む4社の名前が挙げられています。も ていない」経営者でない会社。 う少し若い100年以上の老舗企業となると、損害保険業界には 驚くほど多数が存在します。同所長によると、調査の対象とした 保険業界は、他の業界と比べ長寿の可能性が高いかもしれませ 2,266社のうち13%弱が100年以上営業しており、その んが、長生きするチャンスを生かすための秘訣は、やっぱりある うち62.4%は相互組織であることが明らかになりました。 ようです。 もし存続の秘訣があるとしたら、失敗から学ぶこともできるは ずです。ハートウィグ所長によると、この40年間にアメリカ国 内で破綻した損保会社の破綻理由は、約38%が採算を度外視し た価格設定、14%が無理な成長路線、8%がカタストロフィ・ リスクへの過度なエクスポージャー、7%が資産運用の失敗だと 報告、「破綻理由の多くは、不適切な価格設定、準備金不足、過 度な成長路線など、経営者がコントロールできる要因なので、破 綻損保の死因は自殺とすることができる」と皮肉な見方を示しま した。 では、老舗の秘訣とは一体何でしょうか。ハートウィグ所長は 自身の研究から重要点を5つ挙げています。まず第一に経営者が 自己の役割を、次の経営者とお客様に健全な形で会社を引き渡す ための管理人ととらえること。第二に、経営幹部の報酬が職員の 報酬に比べて上昇率が緩やかなこと。 第三に、状況の変化に鋭敏に対処すること。他社に先駆けて新 しい状況に適応することは必ずしも必要ではないが、適切な時間 16 写真 AMベスト社(英国)地域販売部マネージャーのブライア ン・マーティン氏とR+V再保険のビアン・ピルガー氏 (2010年5月にウィスバーデンで開催されたICMIF再保険会議にて) 勢いが衰えない相互保険セクター: AMベスト社のレポートから 相互保険者は全体的に、世界的な経済不況の中で強いポジショ っかりした資本基盤を持っているが、欧州の相互保険者はソルベ ンを確保しているが、大きな難局が待ち構えている‐格付け機関 ンシーIIの実施によって資本要件が厳格になることを認識し、 のAMベスト社は最新レポートの中でこう報告しています。 再保険の購入による資本解放の可能性を探っている」とレポート しています。さらに、新しい保険監督規制のもとでは、中小の相 「相互組織の詳細分析レポート」(Voice65号で紹介)の発 互保険者の中に破綻するところが出てくると予測、相互保険者間 表後半年たってから、AMベスト社は再度相互保険セクターの調 の統合や提携が一層進むとしています。 査を行い、今年4月半ば時点での状況を報告した最新レポートを 5月10日に発表しました。 また、リスクの高い運用戦略を採用して成長しようとする相互 保険者が出てくる可能性を警告、「相互保険者は一般に堅固な資 その中で、2008年以来、相互保険者は株式会社より高い安 本基盤を持っており、多くは景気後退の中でも成長してきた。し 定性を維持しているとレポート、「相互組織には、収益を株主に かし、果敢な成長戦略を取り、比較的リスクの高い運用をして利 配当として還元しなければならないプレッシャーがない」こと、 回りを高めようとするなら、このような従来の姿が変わる。資本 また、アフィニティグループ(職能団体であることが多い)にロ の調達ができないと成長の機会が制限されるが、もし相互保険者 イヤルティーの高い顧客層を持つ傾向があることを、その理由と が資本の調達や借り入れをするなら、その組織はより脆弱な状況 して挙げています。2009年の相互保険者の業績は、前年度を に追い込まれ、株式会社より不利な立場に置かれる」と述べてい 上回ったと報告、「株式会社と同様相互保険者も株式市場の一部 ます。 回復により運用益が上がったため」としています。 このAMベスト社のレポートはICMIFのサイト、あるいは しかしAMベスト社は、相互保険者が現在持つ優位性は短期的 AMベスト社のサイト(アドレスは下記)からご覧になれます。 なものに終わる可能性があると指摘、「財務柔軟性に限度がある ことが、相互保険セクターにとって最大の課題になっており、こ http://www3.ambest.com/DisplayBinary/DisplayBinary. れが成長可能性に影響する。反対に株式会社は、資本市場が回復 aspx?TY=P&record_code=172451&URatingId=227173 すれば、事業拡大の資金を調達する機会が増える」と断言してい ます。 さらに、新しい保険規制要件についても、とくに欧州における 資本要件の厳格化について言及、「相互保険セクターは現在、し icmif voice issue 69 | september 2010 17 写真 2010年5月の第20回再保険会議(於ウィスバーデン)でLARGコーディネーターのマ ルタ・フリア・デマロキン氏(グアテマラ)と話すミック・サージェント社長 最新のソリューシ ョンを使用したI T化のメリット ITフリーダム社が協賛会員として新しくICMIFに加盟 しました。なぜ相互保険者にとってテクノロジーへの投資 が必要か、ミック・サージェント社長に聞きました。 18 ITフリーダム社が協賛会員として新しくICM ります。また、改善に対応する余力がないと感じた IFに加盟しました。なぜ相互保険者にとってテク り、IT部門や事業部門が改善を望んでいないこと ノロジーへの投資が必要か、ミック・サージェント もあります。 社長に聞きました。 次に、旧来システムについて考えてみましょう。 ガートナー社の予測によると2010年、IT技 旧来のシステムを一部でも使っている相互保険者は 術への投資額は世界中で回復することが見込まれて 多いと思います。しかし旧来のシステムに頼り続け います。しかし、金融サービス業界の中で唯一この ると、保守コストが高くつき、運用柔軟性が制限さ 傾向に反していると思われるのは相互保険セクター れかねません。すると新商品を開発しようとする場 です。相互保険会社にはIT化で後れを取っている 合、システムの調整が簡単に進まないので販売まで ところがよく見受けられますが、テクノロジーに投 の期間が長くなります。 資しないと競争力を失い、ひいては相互社員に損 を与えることになります。将来の成長を考えると 相互会社は、株式会社と比べてリスク回避策を取 き、IT技術に投資しないという選択肢はありえ ると認識されていますが、新テクノロジー導入プロ ません。 ジェクトは実施に時間がかかり投資回収期間も長い ことで有名です。効果的なシステムがないと効率的 Q 相互保険セクターが後れを取っている理由は何 なサービスを提供できず、相互社員数の維持さえ困 でしょうか。「最新の」ソリューションとは何でし 難になり、社員数が増えないので収益が下がり、ま ょうか。またどのようにして後れを取り戻すことが すます投資をしなくなるという悪循環に陥ります。 できるでしょうか。 また、相互保険会社に特化したソリューションも A まず、相互会社は株式市場で資金調達ができな 不足していると考えられています。相互保険者向け いので、ITシステム再構築などの設備投資に必要 に開発され、実際に使われて実証されているシステ な資金の調達が株式会社ほど簡単ではない、という ムは比較的少なく、株式会社向けに開発されたシス のが理由の一つです。 テムは、「相互社員」ではなく「保険契約者」とい う用語が使われていたりします。 新システム導入費用も問題になります。保険契約 管理、保険金請求処理、保険料請求、経営情報シス Q 最新のアプリケーションを使ったソリューショ テムなどの機能を持つ許諾応用ソフトは高額だとい ンを考える場合、相互保険者は何に注目すればよい う認識があります。また実装とデータ移行作業にか でしょうか。 かる費用も考えると、 導入を見送るという選択を しがちです。 A 最新の保険事務処理システムは、マルチチャネ ルコミュニケーション戦略をサポートするものでな 2012年にソルベンシーIIが実施されると、資 ければなりません。保険契約書を郵送で送ってほし 本増強が求められ(これがリスク量とは釣り合わ い人がいれば、メールでも構わないという人もいま ない場合もあることは承知しています)、IT技 す。ネット上で保険者にコンタクトし、携帯メール 術投資に回せる資金はますます少なくなると思わ で最新情報や通知を受け取りたいとする消費者が増 れます。 えています。このようなサービスは、旧来のシステ ムでは改良のためにかなりの投資をしないとサポー 相互保険者は相互社員のために収益を保留するの トできません。 で、設備投資をすればそれだけ社員へのリターンが 下がります。そこで、テクノロジーへの投資を正当 最新のソリューションを選択するに当たっては、 化できないケースもあります。 手作業で行う不必要な工程や紙ベースのシステムの 撤廃を最優先に考える必要があります。事務工程と また中小企業は大企業に比べて信用アクセスが制 ワークフローをきるだけ自動化すれば、仕事の効率 限される場合がありますが、中小相互保険会社の場 性が上がり、職員は、より個人レベルでサービスを 合は、地域に焦点を置いた事業を行っていることが 提供することに焦点を当てながら業務を行うことが 多いので、相互社員数を増やすのが難しく、資金調 できます。 達も難しいという問題が加わります。このように会 社の規模も、設備改善への投資を抑制する要因にな u icmif voice issue 69 | september 2010 19 保険契約管理・保険金請求処理システムは進化し 実装コストをかなり低く抑えられるという利点が ており、以下のような新機能が開発されています。 あります •現在の保険管理システムの機能に加え、既存、 最新システムは投資収益を短い間で上げることが および新規のメンバーの方々が単一、もしくは複数 でき、相互保険会社とその社員に利益をもたらしま の契約を購入するのに対応できるシステム す。その結果、顧客満足度が高まり、保険継続率も 上がります。 • 保険金請求処理の漏れを最小限に抑えつつサー ビス改善を図れる保険金請求処理システム。支払い このようなソリューションを提供するITベンダ 管理コストを、最大で保険金支払額の10~15% ーは、従来のライセンス・保守契約管理ベースでな 相当節約できるため、資金に余裕が生じ、保険料を く、契約ベースで業務を請け負うところがほとんど 下げるなど競争力強化につながる。 です。したがって資本投資額を減らし、使った分だ け課金される方法を採用することができます。 • 経営者の意思決定支援システム。強力でしかも 使いやすいツールを使い、事業のあらゆる点に関 相互保険者は常に競争のプレッシャーに直面して するデータを高度に解析し、主要業績指標の測定 おり、プロセス改善の重要性がますます高まってい やサービスレベル合意書の検討に役立てることが ます。 プロセス改善は、営業部隊から事務管理部 できる。 門まで、保険契約から保険金支払いまですべての事 務処理を自動化して事業効率を高めることのでき •取引き相手先との関係の最適化を可能にする統 る、最新のITシステムなしに成し遂げることはで 合システム。取引き相手先に自動的に指示を出し、 きません。 今、IT技術に投資して、将来の課題 取引き相手先はオンラインで請求処理状況を報告す 克服に備えることが必要だと思います。 ることができる。 • 不正防止技術。SIRAなどの不正防止管理シ ステムを利用し、外部からのアクセスに対して効果 的な解析とデータスクリーニングを行う。 • 最新のウェブ対応技術を活用した拡張可能なソ リューション。整備コストの削減と実装時間の最短 化ができるので、投資収益率を月ごとに測定できる ようになる。保険契約・保険金請求処理管理システ ムを最短4カ月で利用可能にすることができるの で、プロジェクトリスクを低減できる。 • 最新のソリューションでは、ユーザーによる各 種設定や保守が可能になりつつあるので、事業リソ ースを強化し、ITベンダー費用を節約できる。 Q このような最新のソリューションを導入するに はどうしたらよいですか。 A ユーザーが管理できるようなソリューションを 提供するITベンダーは、コストベネフィットを理 解してもらいIT技術への投資を正当化できる条件 を整備するために、お客様企業との共同作業を望む ケースが多いといえます。このようなソリューショ ンには必要な機能がすべて揃っており、長期化する ITプロジェクトというより、ユーザーの教育研修 と習熟プログラムが実装の主な内容になるため、 20 スイス再保険が保険監督規制に関 する最新調査レポートを発表 保険業界は金融危機を比較的うまく乗り にとって好ましくない」とし、シグマレポ 組み合わせたものでなければならない」と 切り、国際金融システムの安定に寄与した ートの中で、監督規制を考える上で金融危 述べています。 が、保険に関する監督規制の欠点も浮き彫 機に過剰反応しないようくぎを刺しながら りになった‐スイス再保険は最新版シグマ も、改善が必要なところもあると指摘し 今回の金融危機は、資産を市場価格で評 で「保険に関する規制監督の課題」と題す ています。 価する規制要件がどのようなプロシクリカ る調査レポートを発表、保険の規制環境を リティーをもたらすかを浮き彫りにしまし 改善することは可能だが、金融危機に対す 保険会社は金融危機を乗り切ってきまし た。資産の時価が下がると、資産基盤を適 る過剰反応は有害な結果をもたらしかねな たが、銀行と保険を包括する金融グループ 切に保つために高リスク資産を売却しなけ いと警告しています。さらに規制改革を考 の中には、深刻な問題が生じたところがあ ればならない場合があり、そうすると株式 える上で重要なのは、保険会社グループの り、銀行・保険グループの監督を効率的に などの更なる下落を招き、保険会社はリス 監督、流動性リスクの管理、資本リスクチ 行う重要性が明らかになりました。問題の ク回避型の資産運用に向かうという下方ス ャージのプロシクリカリティ(循環の増幅 発生源は銀行部門であったにもかかわら パイラルが起きる可能性があります。フラ 効果)だとしています。 ず、グループ全体が影響を受け、問題とな イ氏は「ソルベンシーの枠組みから生じる った銀行部門は解散、もしくは政府の支 このような事態は好ましくなく、できる限 保険業界は金融危機でも通常に営業し、 援を受ける結果になりました。本調査レポ り避けたい。当局は、市場が厳しいストレ 保険に関する規制監督は妥当であったと考 ートの共同執筆者アストリッド・フライ氏 スにさらされている間は資本要件を緩和す えられます。政府の金融支援を必要とした は、「このようなグループの保険部門は金 ることができないか検討している」と指摘 保険会社は数えるほどしかありませんでし 融危機の影響を受けたが、資本基盤は確保 しています。 た。それにもかかわらず、規制環境の大改 していた。しかし会社のリスクプロフィー 革が考えられており、それが実施されると ルを総合的に判断するうえで、保険グルー 保険業界の監督は、契約者保護のために 市場に歪みをもたらし、経済、保険契約者 プ、特に国際的保険グループの監督が必要 必要です。ソルベンシーIIやスイスのソ の両方にマイナスに働きかねません。 だという認識が、今回の危機をきっかけに ルベンシーテストなどの最近の規制監督 高まった」としています。IAISでは、 は、経済的視点に基づいており、リスクベ 金融規制改革はこれまで主に銀行を対象 国際的な保険グループを、グループ全体を ースのフレームワークを持っています。カ としていましたが、規制の一部が、一貫性 対象に、より強力でかつ効果的に監督する ール氏は「このような規制は適切に実施さ 確保という考えのもと保険にも適用されよ ための取り組みに着手しました。 えすれば、保険業界の効率的な事業運営と うとしています。スイス再保険(アメリ 金融安定化、経済成長をもたらすと思われ カ)のチーフエコノミストで、この調査レ 流動性リスクは、保険会社にとって一般 ポートの執筆者の一人でもあるカート・カ に大問題とはなりませんが、金融危機に際 ール氏は、「保険のビジネスモデルと銀行 して、十分な流動性の確保を余儀なくされ 出典: Swiss Re Economic Research & のビジネスモデルは根本的に異なる。第一 た会社にとって問題となったケースがあり Consulting. に保険会社は、負債(保険金)を顧客の要 ます。これは、証券貸出制度のもと適切な 請で支払うのではなく、支払い対象となる 評価をすることなく度を超えた額の資産を この調査レポートは www.swissre.com/ 事故が発生してから支払う。第二に保険会 貸し出して担保の一部を運用したところ、 sigmaから入手可能です。 社は、銀行のような相互関連性が薄く、負 それが金融危機で流動性を失い、流動性エ 債支払いのスパンが長いため、保険会社が クスポージャーを大きくした一部生命保険 破綻しても金融システムの安定性を脅かす 会社などのケースです。格付け機関も、資 ことにはならない」と述べています。 産や保険会社・再保険会社の評価を下げ、 る」とレポートしています。 それが流動性ニーズを一層押し上げまし 規制改革で大きく懸念されるのは、資本 た。カール氏は、「保険者・再保険者は、 要件を厳格化しすぎると、保険会社は超低 流動性ニーズについて、厳しいストレスシ リスクの資産運用に走り、その結果保険契 ナリオに基づいた評価を定期的に行うこと 約者の利回りが下がるという点です。カー が必要で、シナリオは、資本市場の一部が ル氏は「マクロ経済の観点から言うと、超 一時的に流動性を失う事態を想定するもの 低リスク資産へシフトすると、経済成長に とし、場合によっては、市場ストレスと支 必要な資本が回らなくなるので、経済全体 払い対象となるカタストロフィーの発生を icmif voice issue 69 | september 2010 21 素晴らしい機会をもたらす協 同組合というブランド SURCO(ウルグアイ)でコーポレート・コミ ュニケーションマネージャーを務めるマリア・デバ ルディビア=アンジェレス氏(右写真)は、ラ・エ キダード(コロンビア)の創立40周年記念講演 会でICMIFのショーン・ターバック事務局長が 行った講演(Voice68号参照)に刺激を受け、協 同組合というブランドが持つ重要性について考察 しました。 経営コンサルタントのトム・ピーターズ氏は著書 の中で「事業の差別化は、価値、信頼性、ブランド の独自性など、企業の無形財産から始まる。ブラン ドはただ単にマーケティングのためのツールやロゴ ではなく、情熱、ストーリー、企業を動かす大義を 伝えるものだ」と述べています。 です。革新的な事業戦略を実施し、自分たちの価値 について考え、協同組合の価値を組織戦略の中心に ベストセラー「ドリーム社会」の著者ロルフ・イ 据え、お客様の考えをくみ取った責任ある対応をす ェンセン氏も「製品よりストーリーのほうが大切な ることが求められます。強力な協同組合ブランドと ことを、企業は理解しなくてはならない」とブラン は、外部がそれと認識できる事業戦略の顔であり、 ドについて言及しています。「情報社会では、人間 職員や経営幹部の行動を促すものでなくてはなりま の能力のうち唯一自動化できないもの、つまり『感 せん。スタッフが自分たちの使命と戦略的ビジョン 動』が重んじられる。想像、神話、儀式など、感動 を達成するために必要なのはブランドです。 を伝える言葉は、物を買うか買わないか、他人と一 緒に働くとどう思うかといったことを含めすべてに 協同組合というブランドが持つ力を、優秀な組織 影響を与える。だから会社は、会社のストーリーと を作り出し、お客様のロイヤルティーを獲得し、消 神話をよりどころにして繁栄する。」 費者の認知度を上げ、政府や監督機関を含む周囲の ブランドは消費者の生活に影響し、消費者の購買 とができます。 事業環境に対する影響力を強める目的に活用するこ 意欲を左右します。消費者はブランドを、ある種の 価値を持つものととらえ、同じ価値を共有しない会 社の製品やサービスは買おうとしません。 今日、これらの目的を達成するのに使えるツール が多く存在します。従来の方法、斬新な方法、マー ケティング、インターネットなど、各種ツールを使 伝統的な商業構造がなくなりつつあり、金融シス ってブランドを構築し「自分たちの価値を維持しな テムが劇的に崩壊しているとき、世界は協同組合組 がら両手を大きく広げて将来を歓迎する」ことがで 織とその経営モデルに改めて関心を寄せています。 きます。 協同組合は、相互扶助、責任、民主主義、平等、公 正、団結という価値に基づいており、19世紀と同 ウォルフ・オリンズ氏が「ミューチュアルという じように21世紀の今日においても協同組合の価値 ブランド」で述べたように(Voice66号を参照)、 は、正直、透明性、社会的責任、他者への思いやり 「次世代では、倫理的関心や環境に関する議論が活 という倫理的価値に根を下ろしています。協同組合 発になり、ブランドに高い社会的責任が求められる モデルは、かつてないほど有望で責任ある選択肢と と思われる。そのような次世代のお客様に向けて、 なっています。 ミューチュアルのメッセージを意味が分かるような 形で発信する時が来た」のです。 ターバック事務局長が示すように、協同組合の価 値に基づいて事業を行うダイナミックな協同組合を 作り出すためには、すべてのステークホルダーを認 識し、事業に組み込み、影響を与えることが必要 22 CFSが名誉ある賞を受賞 フィナンシャルタイムズ紙はこのほど、44カ国111金融機 CFSのネビル・リチャードソンCEOは、「CFSは、組 関の中からICMIF会員のCISを傘下に持つCFS(英国) 合員が所有・主導し、倫理の精神で導かれた事業体です。ですか を、本年度の「最も持続可能な銀行」に選定しました。 ら主要ステークホルダー全員の利益となるような持続可能なやり この「持続可能な銀行年間最優秀賞」は、社会目的や環境目 した」と受賞の喜びを語りました。「協同組合のビジネスモデル 方を確保できるのですが、これは金融危機の間も変わりませんで 的の活動で革新的で先導的な取り組みをした銀行を表彰するもの は、いつの時代も今日的な意味があることを内外に示すことがで で、世界銀行グループの国際金融公社が後援、金融業界の世界的 きました。CFSの事業基盤は、ブリタニアとの合併後、一段と リーダーたちが審査員となって選定します。CFSは、高い収益 強化されました。消費者が従来の銀行とは違う新鮮な銀行を求め 性、成長、倫理的リーダーシップを保ちながら長期間にわたり取 ている今、サステナビリティに対する地に足がついた取り組みを り組んできた、サステナビリティへの揺るぎない取り組みが評価 もとに、私たちは常に前進し続けていきたいと思います。」 されての受賞となりました。 icmif voice issue 69 | september 2010 23 ミューチュアル監督に関するIAIS討 議報告書が正式承認へ 相互組織・協同組合、その他地域団体の規制監督についてIA くの意見が寄せられました。そこでIAISの技術委員会は6月 ISがマイクロインシュランス・ネットワークと共同で検討して の会合で、正式承認の延期を決定、意見をまとめて原案の修正が きた討議報告書が(Voice57号参照)、今年中には承認される 行われました。IAISのガバナンス・コンプライアンス小委員 見込みとなりました。 会は修正案を技術委員会に勧告、この10月にも修正案が正式に 承認される見込みだとのことです。 ICMIF事務局のシニアバイスプレジデント、サビエ・パテ ル氏から承認に至るまでの経緯をお聞きしました。パテル氏によ ると、今年初めに、報告書原案に対する意見を募集した結果、多 高い評価を受けるICMIF会員 全労済は「平成21年度日本版顧客満足度調査」 で、損害保険(共済)業界1位、生命保険(共済) 業界2位という高い評価を受けました。この調査 は、経済産業省の委託によりサービス産業生産性 協議会が実施したもので、今年3月に結果が発表さ れました。 今回の調査は、生命保険(共済)、損害保険(共 済)とも、それぞれトップ12保険会社・共済団体 を対象に行われ、顧客期待、知覚品質、知覚価値、 顧客満足を含む6項目が審査されました。 全労済はプレスリリースで「組合員から『お客様 サービスセンター』に寄せられる苦情、そして感謝 の声を『お客様の声』として一つひとつ大切に取り 扱ってきました。顧客満足度調査の結果は、このよ うな活動が評価されたものだと思います。『お客様 の声』はデータベースに登録して共有化し、分析を 行います」と、顧客の苦情に迅速かつ誠実に対応す る取り組みが評価されたと指摘しています。 「全労済では、『お客様の声』の分析および職員 の提案に基づき、小野岡正専務理事(左写真)が委 員長を務め、各部門の責任者が出席する『全労済C S・苦情委員会』を毎月開催し、業務改善課題を特 定しています。その結果、満足されるお客様の数が 年々増加傾向にあります。」 24 中村浩子さんが事務局出 向を終え、本帰国へ ICMIF会員のコープ共済連から、英国にあるICMIF事 した。英国滞在中にイギリス生活のいろいろな面と接することが 務局に出向していた中村浩子さんは、任期を終え本帰国となりま できたと思いますが、駐在中に見たこと行った場所など、多くの した。 思い出を日本に持ち帰られると思います。ICMIFの全員を代 表して心から感謝の気持ちを表するとともに、今後のさらなるご 中村さんは2008年7月から事務局でコミュニケーション 活躍を期待したいと思います。」 チームに所属、VoiceをはじめとするICMIF出版物の記事を 執筆・編集したほか、ICMIFサイトの運営にも携わりまし 中村さんは、ICMIFへの出向を非常に有意義な経験だった た。昨年のトロント総会では、コミュニケーションチームの一員 と語っています。「世界中の人々とお会いできて、素晴らしい経 として活躍した中村さんを覚えてらっしゃる方も多いのではない 験になりました。トロント総会や会合、研修コースなどで、IC でしょうか。 MIF会員の相互組織や協同組合で働くたくさんの方々にお会い することができました。日本に帰っても、このような方々と交流 「中村さんは、コミュニケーションチームにとってかけがえの を続けたいと思います。」 ない人材でした。日本語や日本文化独特の視点をもたらしてくれ ました」と、チームの責任者でシニアバイスプレジデントのジョ また、「イギリスでは、仕事とプライベートのバランスをうま ン・ガリー氏は語ります。「中村さんをはじめとする日本からの く取れたので、ライフスタイルが豊かになりました。また、自分 出向者の努力のおかげで、日本の会員とのコミュニケーションは の生活を楽しみ、将来のことを考える重要性を学びました。マン 飛躍的に改善されました。来年、ICMIF総会が東京で開催さ チェスターでは地域のグループにいくつか参加していたので、グ れることを考えると、日本とのコミュニケーションは、ますます ループを通じて友達ができ、新しいことにもチャレンジしまし 重要になっています。」 た」と、仕事以外でも有意義に送った英国生活を振り返りまし た。 「出向していた2年の間に、コミュニケーションチームが手掛 けた数々のプロジェクトに深くかかわり、日本だけでなく世界各 地の会員とのコミュニケーション構築で貴重な貢献をしてくれま icmif voice issue 69 | september 2010 25 2010年 詳細についてはICMIFウェブサイトをご覧ください 。www.icmif.org/events International Cooperative and Mutual Insurance Federation La Fédération Internationale des Coopératives et Mutuelles d’Assurance Federación Internacional de Cooperativas y Mutuales de Seguros 国際協同組合保険連合