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柏の葉キャンパスタウン
Case Study 1 柏の葉キャンパスタウン 市民の都市に対する自負や愛着を醸成するための 戦略的な施策展開に関する先進事例調査 柏の葉キャンパスタウン Case Study 1 柏の葉キャンパスタウン ■ 柏の葉キャンパスタウン構想とは 千葉県柏市の新しい街開発である「柏の葉国際キャンパスタウン構想」は、それまでも「環境・健 康・創造・交流の街」をコンセプトとして、公・民・学の連携で柏の葉地域で進められていたまちづ くりの成果、検討結果、また2006年の基礎調査を踏まえ、地域の関係者である千葉県・柏市、 大学、民間企業、市民・NPOなどが連携・協働し、先端的な都市づくりを具体的に実践するため の構想として策定された。 この構想は、千葉県、柏市、東京大学、千葉大学の共同調査で作成しており、新たな地域ビジョ ンに基づく新しい政策テーマを先取りした構想となっているため、現在の法制度や政策を越えた 提案となっている。 8 市民の都市に対する自負や愛着を醸成するための 戦略的な施策展開に関する先進事例調査 柏の葉キャンパスタウン ■ 柏の葉国際キャンパスタウン構想に参画する組織や団体 新たな学問領域の創造を目指す 「東京大学柏の葉キャンパス」 東京大学は「キャンパスの三極構造構想」を推進中。本郷と駒場キャンパスのリニュー アルを図りながら、成熟度の異なる研究分野を新たな拠点に配置することによって、多 様な研究分野の融合による新たな学問領域の創造をめざすという目的のもと、「柏の葉 キャンパス」へ進出した。 ● 物性研究所 ● 宇宙線研究所 ● 大学院新領域創成科学研究科 環境と人の健康を軸に多面的な研究を展開する 「千葉大学環境健康都市園芸フィールド科学教育研究センター」 現代人がさらされる心理的ストレス、環境ストレスをポジティブに解決するキーワードとし て東洋医学と園芸、LOHAS(Lifestyles of Health and Sustainability:健康と持続可能な 発展を優先した生活スタイル)を掲げ、環境・健康・共生・生きがい創出など多面的な研 究活動を推進中。 ● 都市環境園芸部門 ● 環境健康総合科学部門 ● 千葉大学柏の葉診療所(東洋医学) 最先端の癌研究拠点 「国立がんセンター」 高度先進医療である陽子線治療で著名。臨床開発センターでは、臨床腫瘍病理や粒子 線医学開発など、癌に対する多角的な研究を展開している。 新事業分野のインキュベート事業を推進する 「東葛テクノプラザ」 千葉県が設立。県内理工系大学や地域企業との産官学連携を軸に、新事業分野進出 のための研究室の提供や共同研究のコーディネート等の総合的インキュベート事業を 行っている。 街の将来像を立体的に紹介する 「柏の葉アーバンデザインセンター(UDCK)」 「柏の葉キャンパス」駅の前にある「柏の葉アーバンデザインセンター(UDCK)」。東京大 学、千葉大学、柏市を中心に運営し、三井不動産がサポートするこのUDCKは、市民の 方々に街の未来計画を提示し、街づくりの提案に参加が可能なこの街ならではの画期 的な施設です。ラウンジやテラスも交流の場として、自由に利用が可能。 広大な敷地に多様な施設を整備した 「柏の葉公園」 柏市が運営する開園面積45haにおよぶ広大な公園。3万人収容の総技場のほか、多様 な庭園や野球場、ボート池など、さまざまな施設が整備されている。 ● 庭園/桜の広場・冒険のとりで・西洋庭園・野外ステージ 他 ● 主な施設/コミュニ ティ体育館・茶室・総合競技場・ボートハウス・レストハウス・野球場・庭球場 他● アク ティビティ/緑の講習会などさまざまなアクティビティを実施 9 市民の都市に対する自負や愛着を醸成するための 戦略的な施策展開に関する先進事例調査 柏の葉キャンパスタウン ■ 柏の葉キャンパスタウン概要 「柏の葉キャンパス」は、都心から25キロ圏、秋葉原からつくばエクスプレスで26分というアクセ ス環境の良さもあり、首都圏屈指の研究拠点として、大学や病院など多様な研究機関が進出し ている。 「柏の葉キャンパス」駅を中心とした柏 北部地区は、千葉県を事業主体とす る土地区画整理事業によって都市基 盤の整備が着々と進行している。 10 市民の都市に対する自負や愛着を醸成するための 戦略的な施策展開に関する先進事例調査 柏の葉キャンパスタウン ■ 柏の葉キャンパスタウン現状 現状、柏の葉キャンパスタウンでは、着々と開発が進み、実際新たな住民が住み始めている。 2009年3月、駅南側の151街区に総戸数 977戸の大型マンション群が竣工し、入居が開始され た。民間デベロッパーである三井不動産レジデンシャルによる当開発の足元には、商業施設や 医療施設が入っており、中庭の緑も街へ開放されている。また、街区内には柏市のサテライトオ フィスが設置され、柏の葉国際交流ラウンジが入居し、外国人向けに情報提供や日本語習得支 援などを行っている。 11 市民の都市に対する自負や愛着を醸成するための 戦略的な施策展開に関する先進事例調査 柏の葉キャンパスタウン ■ 柏の葉キャンパスタウンの今後 国際的な学術研究都市を目指す当エリアの顔として整備を進めるため策定された「アーバンデ ザイン方針」に沿って、 「アーバンデザイン委員会(委員長:北沢猛東京大学大学院教授)」によ り指導・調整され、次街区の開発も三井不動産レジデンシャルと京葉銀行グループ((株)京葉 銀行・医療法人社団康喜会東葛辻仲病院・日立キャピタル(株)・大和ハウス工業(株)・三井不 動産(株)・三井不動産レジデンシャル(株))により開発が進められている。 147及び、148街区と呼ばれる駅前の約7.4haの用地には、集合住宅900戸、商業施設、ホテ ル、業務ビル、京葉銀行柏の葉キャンパス支店、柏の葉辻中病院(仮称)などが計画されている。 2011年完成予定。 12 市民の都市に対する自負や愛着を醸成するための 戦略的な施策展開に関する先進事例調査 柏の葉キャンパスタウン ■ 柏の葉アーバンデザインセンター UDCK 柏の葉アーバンデザインセンター(UDCK:Urban Design Center Kashiwa-no-ha)は、平成18年 11月20日、「新時代に対応する都市、環境及び生活の在り方を研究し、必要な空間計画を作成 実践する場及び支援する場」として、つくばエクスプレス柏の葉キャンパス駅前に開設された。 運営は、東京大学、千葉大学、柏市、三井不動産、柏商工会議所、田中地域ふるさと協議会、 首都圏新都市鉄道の7者共同。 運営の基本方針は次の5点。 (1) 自治体、企業、大学、市民団体等(公民学)の連携による人材育成、会議、ワークショップ (2) 大学や研究機関の提案に基づく新規事業創出の拠点 (3) 大学から市民への知の開示と連係 (4) 柏の葉地区ならびにTX沿線の都市デザイン (5) まちづくりの進捗に応じた柔軟な組織運営 設立の契機は、平成18年4月柏市主催の「大学と地域との連携交流会」において、現センター長 北沢猛東京大学教授がまちづくり拠点の必要性を提唱したことに遡る。同6月には、柏の葉地区 で住宅等開発事業を進めていた三井不動産からも同様の提案があり、同9月には施設概要、設 置目的、活動内容、管理運営体制、オープニング式典などのUDCKの骨格が決まり、翌10月設 立会議を開催、要綱、運営基本方針、役員人選を承認した。 13 市民の都市に対する自負や愛着を醸成するための 戦略的な施策展開に関する先進事例調査 柏の葉キャンパスタウン ■ UDCK 施設内容 利用時間 午前10時∼午後7時 / 休館日 12月26日∼1月7日 / 入場 無料 【オープンデッキ】 休憩、飲食の場として自由に使える。ウッドデッキには屋台が置かれ、 市民イベントの場としても利用できる。 【ギャラリー・ラウンジ】 柏の葉キャンパスエリアの模型を常設。ワークショップ、企画展にもフレキ シブルに対応できる空間。脇にも小さな企画展、ミーティング、セミナーにも 対応できる空間がある。 14 市民の都市に対する自負や愛着を醸成するための 戦略的な施策展開に関する先進事例調査 柏の葉キャンパスタウン ■ UDCK の活動 ∼ 様々な活動の拠点として UDCKは、柏の葉の都市空間を考察する空間デザイン部会、東京大学大学院のデザイン教育プ ログラムの一貫である都市環境デザインスタジオ、そのほか、地域教育部会、環境フォーラム、 教育フォーラム、モビリティフォーラム、地域大学連携部会、などさまざまなまちづくりの研究開 発部会の拠点となっている。 15 市民の都市に対する自負や愛着を醸成するための 戦略的な施策展開に関する先進事例調査 柏の葉キャンパスタウン ■ UDCK の活動 ∼ 住民参加活動のプロデュース _1 またUDCKは、以前よりの柏の葉エリアの住民と、これからの柏の葉の住民の交流を図るために 行われる様々なコミュニティ醸成活動の拠点ともなっている。 ●柏の葉エコ・デザインツアー 16 市民の都市に対する自負や愛着を醸成するための 戦略的な施策展開に関する先進事例調査 柏の葉キャンパスタウン ■ UDCK の活動 ∼ 住民参加活動のプロデュース _2 ●ピノキオプロジェクト (アート) 「子どもは街で育てる」をコンセプトに、ピノキオ衣装に身を包んだ子どもたちが、仮設の市場(マルシェ)や食堂 、情報センターで、地域通貨「Pi」を用いながら職業体験するアートプログラム。 情報センタ で 地域通貨「Pi」を用いながら職業体験するア トプログラム 地域通貨「Pi」 高い評価を獲得した「ピノキオプロジェクト」 第2回(2008年)キッズデザイン賞金賞(共創デザイン賞) 2008年度グッドデザイン賞を受賞 2007年11月に開催した第1回目の「ピノキオプロジェクト」は、柏の葉駅前にある UDCK内に、花屋、八百屋などを出店し大好評を博しました。その成果を評価され 2008年、第2回キッズデザイン賞金賞(共創デザイン賞)、2008年度グッドデザイン 賞を受賞しました。 3 シビックプライドは、柏の葉でどのように育まれているか ー 17 市民の都市に対する自負や愛着を醸成するための 戦略的な施策展開に関する先進事例調査 柏の葉キャンパスタウン ■ UDCK の活動 ∼ 住民参加活動のプロデュース _3 ●柏の葉はちみつプロジェクト 2008年にスタートした、柏の葉での養蜂プロジェクト。 フランス人アーティスト、ジャン=リュック・ヴィルムートによ り作品化された養蜂箱(写真)で養蜂を行い、地域住民に 自然環境への関心を高めてもらう。 ●五感の学校 五感をフルに使い、柏の葉で新たな学びの場を創造して いくための、ワークショップ型プログラム。UDCKで定期的に 開催し、人気プログラムとして定着しつつある。 プログラムの対象は小学生が中心だが、子どもの学びを 通じて、その両親が「街」への気づきを誘発させることも、 「五感の学校ワークショップ」を実施する目的でもある。 18 市民の都市に対する自負や愛着を醸成するための 戦略的な施策展開に関する先進事例調査 ■ UDCK の活動 ∼ 街のプロモーション _1 住民に向けての様々な活動支援はまちづくりにおいて、とても重要な事項だが、これからのまち づくりでは、外部に向けての街のプロモーションも必須であると考える。 街の知名度が上がることで、街の価値、住民の街に対する誇り・愛着は高まり、「シビック・プラ イド」へと繋がっていく。 このようなことを意識して、UDCKでは街のプロモーションの一環として、外部からも人々を呼び 込むような魅力的なイベントや、グッズの開発などを行っている。 ●柏の葉ピクニックEXPO 2007年よりスタートしたプロジェクト。柏の葉に新たな交流のスタイルとして「ピクニック」を定着させ、住 民に新たな交流機会を提供することを目的に実施。新たな交流のイメージを定着させるために、「ピク ニック」自体をアートとして位置づけ、プログラムを構築している。 ● 柏の葉ピクニッククラブ 柏の葉ピクニッククラブは、2007年7月7日に設立された任 意団体。千葉県柏市の柏の葉エリアを拠点として活動して いる。広大な柏の葉エリアの中にあるオープンスペースで ピクニックを楽しむことを通して、身近にある「地域で楽しむ 面白さ」を伝えていくことを目標にしている。 19 市民の都市に対する自負や愛着を醸成するための 戦略的な施策展開に関する先進事例調査 柏の葉キャンパスタウン ■ UDCK の活動 ∼ 街のプロモーション _2 ●マルシェコロール 春と秋の2回、駅前を中心に色とりどりの食材やグッズが並ぶ市場=マルシェコロールは、地元 産品にあふれ、市民みんなで運営することを目指す住民による住民のための市場。 合言葉は「みんなで作る、みんなのマルシェ」。回を重ねるごとに、地元との密着度も増え、好 評を得ている。 20 市民の都市に対する自負や愛着を醸成するための 戦略的な施策展開に関する先進事例調査 柏の葉キャンパスタウン ■ UDCK の活動 ∼ 街のプロモーション _3 ● はっぱっぱ体操 はっぱっぱ体操は、柏の葉のまちのオリジナル体操。 柏の葉にキャンパスを置く東京大学名誉教授の小林寛道氏監修により、体操の制作から実践まです べてのフェーズで、地元チアリーダー、小学校児童など柏の葉に関わる人々がかかわり、3分半の体 操を構成している。 そして、クリエティブにもこだわり、美術(映像、衣装デザイン)は日本を代表するグルービジョンズ、振 付は齋藤美音子、音楽はジム・オルークと、一流どころが名を連ねている。 地元住民の関係性づくりだけでなく、話題性などから外部への情報発信の役割も果たしている。 2009年、キッズデザイン賞受賞、グッドデザイン賞受賞 21 市民の都市に対する自負や愛着を醸成するための 戦略的な施策展開に関する先進事例調査 柏の葉キャンパスタウン Case Study 1 柏の葉キャンパスタウン 調査 所感 全く新しい街を、これから作り始めている柏の葉キャンパスタウン。 従来のニュータウン開発であれば、集合住宅を地形と収支にあわせて作っていくことに開発者 の焦点は当てられていたが、住民のつながり作りを重点的に完成前から行っている点が、これ からのニュータウン開発のリーディングモデルとなるだろう。 また、産官学が連携し、街の活性という一つの目的に向かって活動している状況は理想的。 街が盛り上がることが、それぞれの利益につながるという構造は、次の調査対象としてヒアリン グを行 た ム グを行ったアムステルダムではさらに進んで利潤を生むまでになっているが、日本ではまだまだ ダム はさらに進ん 利潤を生むま にな るが 本 はまだまだ 始まったばかり。今後、どのように街が発展していくのか、さらなるベネフィットを生むのか、その ベネフィットは住民たちにも享受され、彼らの誇りや愛着=シビックプライドへとつながっていくの か? 柏の葉キャンパスタウンの今後の開発も引き続き、注目していきたい。 22