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ファッションのマイクロ波を使用
記者発表資料 ○神戸経済記者クラブ(神戸商工会議所) 平成12年10月23日11時 ○兵庫県政記者クラブ(兵庫県庁) 財団法人 新産業創造研究機構(NIRO) ○神戸市政記者クラブ(神戸市) 問合せ先: 財団法人 新産業創造研究機構 担当: 研究一部 三隅隆也 中嶋勝己 桂川敬史 TEL: 078-306-6802; FAX: 078-306-6812 e-mail:[email protected] [email protected] [email protected] 〒650-0047 神戸市中央区港島南町 1―5−2 財団法人 新産業創造研究機構は指輪大の生体情報検出センサーを開発しました。現 物は、10 月 31 日午後開催の介護システム研究会にて公開します。 記 新産業創造研究機構が指輪大の生体情報検出センサーを開発 財団法人新産業創造研究機構(大庭浩理事長、神戸市中央区)は、常時装着して人の 生体情報を検出し、健康状態のチェックを行うためのセンサーを開発した。センサーは 指輪状をしており、光を使って指の血管で脈波(脈動による血管の太さの変化)を検出 し、無線で送信することができる。開発は、一部を科学技術振興事業団のRSP制度の 支援を受けて行われ、介護システム研究会(委員長:徳島大学工学部木内教授)を組織 し、委員の方々の知恵もいただきながら、可能性試験として実施され、兵庫県立総合リ ハビリテーションセンター中央病院の助言も得た。無線送信された脈波は、パソコン上 に波形として表示され、脈拍数が表示される。この解析はPDA(携帯型情報端末)で も可能であり、携帯電話やPHSと組み合わせることで、屋内ばかりでなく、戸外での 使用も可能となる。センサーが指輪大まで小型化できたことから、どのような形状のセ ンサにも適用可能と考えれる。今後は、自社での事業化を希望する企業に開発で得られ た技術を移転し、新産業創造に役立てていきたい。 添付資料 ・開発品の写真(配布希望の方は連絡下さい) ・対外発表資料 1999 年 10 月 28、29 日 第1回福祉技術シンポジウム ・対外発表資料 2000 年 10 月 25、26 日 ME学会中四国支部大会 リングセンサーを使った健康管理システムの開発 (財)新産業創造研究機構 中嶋 勝己、桂川 敬史、三隅 隆也 1.はじめに (財)新産業創造研究機構は、阪神・淡路大震災 が、高齢者向け住宅等で使われている。象印のポッ トのセンサーもこの種の試みである。 における被災地の産業を復興し地域経済を発展させ 生体信号をオンラインで収集し健康管理に使うシ るために兵庫県、神戸市および同地域で活動してい ステムは、すでに開発されているが、これらは、計 る民間企業や団体等が協力し、その推進の核となる 測自体は本人または介助者が行うことが必要で独居 研究機関として平成9年に設立された。研究機能を 高齢者の緊急時の場合には役立たない。 持ち、国内外の大学・研究機関の研究成果をシーズ 常時リアルタイム計測の試みは、メディケアが腕 技術とし、企業が事業化可能なレベルにまで研究開 時計大の脈波センサーとPHSの組合せて、日本光 発を行うところが特徴の一つである。 電が心電図とPHSの組合せで、試みられている。 主な研究テーマの一つに福祉・介護分野の研究が ある。この研究の一つには、米国マサチューセッツ 工科大学の浅田教授が主催し、日米の主要企業が参 加する「ホームオートメーションとヘルスケアに関 する研究コンソーシアム」において開発された技術 をシーズ技術としており、そのうちのウェアラブ ル・センサーを取り上げた。 ウェアラブル・センサーは常時装着する形の生体 情報計測センサーである。リングセンサー(指輪状 センサー)はその一つで、光を使って脈波情報を計 測し、そのデータから先ずは生存の検知(アライブ チェック)を、さらには健康状態をモニターし、病 気の予防や病後の管理などに用いることを目標と している。 震災後、兵庫県下では仮設住宅における独居高齢 者の孤独死が大きな問題になった。仮設住宅がほぼ 図1 脈波検出の原理 解消された現在にあっても、復興住宅に住む独居高 齢者は今までのコミュニティーが崩壊し、なおも孤 独死の問題が残っており、アライブチェックは大き な課題になっている。 この分野で実用化されている例は水道メータ(愛 知時計計器)がある。居住者に緊急事態が発生した 場合、水道が使われなくなることで、あるいは風呂 場で倒れた場合等、水が出しっぱなしになることで アライブチェックを行う。検知に時間遅れがあるこ 2.計測原理 指に光を当て、その透過光または反射光をフォト ディテクターで検知すると、検出された成分はほと んど一定であるが、脈拍に対応して少し変動する成 分を持つ。(図1参照)この変動分(AC成分)を 脈波、厳密には光電指尖容積脈波、フォトプレシス モグラフと呼び、心拍動による血圧の増減により血 管が膨張収縮することに起因している。[1] とと、在宅・外出を別のスイッチに頼る欠点はある 第1回福祉技術シンポジウム(1999年10月28、29日つくば工業技術院筑波研究センター) 図3 試作したセンサーの外形 図2 波長による吸光度の差 さらに光として赤色と赤外の2色を使用する。血 液中のヘモグロビンは酸素と結びついているか否か で、光を吸収する度合いが異なる。しかも、赤色と 赤外で異なる。(図2参照)この性質を使い、赤色 で検出される脈波と赤外で検出される脈波の両方が 得られると、ヘモグロビン中、酸素を結びついてい 図4 信号処理部と検出部の基板 るものの割合、酸素飽和度を求めることができる。 これがパルスオキシメトリーである。 リングセンサーは脈波の波形と酸素飽和度を、ア ED、2個の赤外LED、そしてフォトダイオード ライブチェックや健康状態監視に使用することを目 が基板の片面に配置されている。リングはアルミ製 的としている。 とし、外部からのノイズに対してシールド効果を持 たせている。 3.試作センサー 図5にセンサーのブロック図を示す。酸素飽和度 リングセンサーを試作した。究極の目標はセンサ を検出するため、赤色と赤外のLEDを使っている。 ー全体をIC化したファッションリング大のリング 同時に点灯させられないので、CPUからの指示で センサーであるが、試作途中では、ハイブリッドI 交互に点灯させる。フォトディテクターで得られた Cの技術を使い、指に装着できる最大限界の大きさ 信号は、赤色と赤外の点灯のタイミングに合わせて を目指して試作を行った。ハイブリッドICとは、 切り換えられるアナログスイッチによるサンプラー ICプロセスで作るICとは異なり、プリント基板 サンプル& ホールド 上にICの表面実装チップとチップ抵抗やコンデン 赤外光 サを用いて、いわばマイクロプリント基板を作る技 術である。 図3に試作したセンサーの外形を、図4に信号処 ローパス フィルタ バンドパス フィルタ A/D 赤色光 RS232C プロトコル 赤外光 赤色 サンプル& ホールド ローパス フィルタ バンドパス フィルタ 理部と検出部の基板を示す。信号処理部にはCPU、 OPアンプ、アナログスイッチ、無線送信部が基板 の表裏に配置されており、検出部には1個の赤色L 図5 センサーのブロック図 A/D LEDスケ ジューリング CPU 無線 送信機 とローパスフィルターにより、赤色、赤外それぞれ し、医師の判断による健康管理システムの開発を目 で検出されたアナログ波形を復元する。その後、バ 的としている。さらに、受信端末を小型化し携帯電 ンドパスフィルターを通して、その交流分である脈 話回線と組合せることで屋外使用を可能としたり、 波を求めている。酸素飽和度を求めるには、検出さ 危険場所で作業する人や公共交通機関の運転手が身 れた波形の直流成分を等しくしたときの交流分の比 につけることでの事故防止等への応用も考えている。 を求める必要があり、CPUには内蔵のA/D変換器で 赤色、赤外検出波形の交流分と直流分の計4波形を 5.まとめ 取り込んでいる。 指に付けた指輪大のセンサーで脈波を検出し、そ 無線は76∼80MHz帯の搬送波を用い、RS232Cプロ れによって得られる脈波波形と酸素飽和度から、ア トコルでディジタル伝送している。送信されたデー ライブチェックや健康管理に用いるリングセンサー タはパソコンに取り込まれ、Javaを使ってリアルタ を開発した。今後は介護システム研究会を中心とし イムに波形表示される。Javaのソフトウェアはデー てハード・ソフトの改良とアプリケーションの開発 タ表示部とネットワーク配信部に分かれているので、 を行う。 インターネット上の他の計算機にデータの配信が可 能である。無線は電波法で使用が許されている微弱 謝辞 無線帯を用いている。そのため、一般的な使用距離 本研究開発の一部は、科技庁の地域研究開発促進 は10m程度(理想的な状態では100m以上届く)であ 拠点支援事業(RSP事業)の費用で行った。科学 る。しかし、このセンサーでは出力が小さいことと 技術振興事業団の支援に謝意を表する。 アンテナが小さいことから、その半分程度が現状で [参考文献] ある。 [1] Moyle J., Hahn C., and Adams A.; Pulse Oximetry, 図6にCPUに取り込まれる部分での脈波のアナ BMJ Books (1998) ログ波形を、赤色LED検出波形と臨床検査機器(パ ルスオキシメータ)による検出波形を比較して示す。 図7にはパソコンに取り込まれ画面表示された脈波 波形の1例を示す。 4.今後の開発計画 本年9月、リングセンサーのハード・ソフトの改 良とアプリケーションの開発を目標とした介護シス テム研究会を学識経験者、民間企業により発足させ 図6 検出波形例(上:センサー、下:臨床機器) た。今後は、この研究会を中心に、改良試作および 研究プロジェクトの立ち上げを行っていく予定であ る。 ハードの開発テーマとしては、無線、ノイズ低減、 省電力化、小型化等、ソフト面では、波形の解析、 酸素飽和度の算出、スリープ等のソフト面での省電 力化、多人数の同時検知対応等が考えられる。 アプリケーションでは、屋内に設けた受信端末で リングセンサーの微弱無線の電波を受け、異常時や 定期的な情報を電話回線経由で管理センターに送信 図7 パソコンに取り込まれ画面表示例 指輪型脈波センサーの開発と PDA による生体情報監視システム ○桂川敬史 中嶋勝己 三隅隆也 (財)新産業創造研究機構 Development of Ring-Type Photoplethysmograph Sensor and Monitoring System using PDA T. Katsuragawa, K. Nakashima, T. Misumi The New Industry Research Organization 1. まえがき 高齢者は自分の健康状態に不安を感じており、 独居老人の場合その不安は一層大きくなる。この ため在宅にて、非侵襲で、常時健康状態をモニタリ ングする技術に対するニーズは高まってきている。 家屋内に各種のセンサーを設置して、高齢者の生 活状態を常時モニタリングする研究は様々なとこ ろで実施されている[1]が、非侵襲型の生体情報監 視センサーを身につけて、健康状態を常時モニタ リングすることができれば、高齢者は屋内、屋外に 関わらず安心して生活を送ることができる。 我々は在宅で一人暮らしの高齢者を対象として、 その生体情報を24時間非侵襲計測可能な指輪型脈 波センサーを開発してきた[2]。指輪サイズの生体 情報センサーであれば装着感を意識することはな いし、身体の別の部位にも容易に適応可能である。 また携帯端末装置(PDA)を利用し、PCを設置 しなくても健康状態をモニタリングできるシステ ムも同時に提案する。 2. 指輪型脈波センサー 開発されたセンサー(Fig. 1)は、反射型の光電 容積脈波法によって、脈波を常時モニターするも のである。脈波はA/D変換され、指輪内のCPUで 処理されて、無線発信される。センサーは、LEDと Photodiode を組み込んだ検出基板と、CPU 基板一 枚、ボタン電池1個のみにて構成され、小型軽量で ある。CPU 基板には、アナログ回路と、CPU、無 線発信回路が組み込まれている(Fig. 2)。 無線は、マンチェスター符号を用い、FSK 方式 の微弱電波で、10m離れていても受信可能である。 無線送信された脈波データは受信機で受信され、 RS-232C ケーブルを介してPC などで処理されて、 脈拍演算などの処理がなされる。 3. 携帯端末(PDA)によるデータ解析 受信した脈波データを PC の代わりに PDA で処 理すれば、どのような場所でも常時健康状態を把 握することができる。さらに、PDA に携帯電話を 接続しておけば、緊急時にあらかじめ決められた 電話番号に緊急発信をすることも可能である。 本システムでは、Palm Platform(日本 IBM WorkPad 8602-30J)で、指輪型脈波センサーから発 信される脈波データの波形表示と脈拍の計測を 行った(Fig. 3)。 受信機や携帯電話機能が一つの筐体に組み込み こまれた、より小型の端末の開発すれば、装着者の 負担はより軽減されることになる。 4. おわりに 高齢者の常時健康管理を実現するためには、非 侵襲センサーだけでなく、計測システムも身につ けられるほど小型、軽量に開発することが鍵とな る。指輪型の脈波センサーを装着し、そこから無線 発信された脈波をPDAで受信して解析することに より、高齢者に負担の少ない生体情報モニタリン グ・システムが実現される。 参考文献 [1]井筒他: 「独居高齢者の健康と ADLの家庭内モ ニタリング」, 第16回ライフサポート学会 , 2000 [2]T. Katsuragawa: "Development of a Ring Sensor System for the Elderly People, " 30th International Symposium on Robotics, 1999 LED/Photodiode 14mm Battery CPU board Fig. 1. Ring-type photoplethysmograph sensor φ20mm Fig. 2. CPU board Fig. 3. Measurement of photoplethysmograph using Palm Platform