...

ヒ ドリ ド移動を選択的に駆動する光触媒

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ヒ ドリ ド移動を選択的に駆動する光触媒
《
総説
マイ レビュー》
ヒ ドリ ド移動 を選択的に駆動す る光触媒
ANovelTypeofHydr
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erPhot
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大 学院 理=学研究科 環境制御 工学専攻
今野 英雄 ・小 林罵生 ・槻木和彦 ・
石谷
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)
2
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py)
H】
+
.
[1】
従来 の酸化還元光触 媒の 問題点
光 触 媒 を利 用 した酸 化還 元反 応 は 、有機 合成 や光 エ ネル ギ ーの変換 な ど様 々な 分野 へ の応 用 が
期待 され る こ とか ら、 これ まで数 多 くの研 究 が な され て きた。 しか し、 多電 子 移動 を駆 動 す る光
触媒反 応 の機 構 を分類 してみ る と、 その ほ とん どは 、分子 間の光電 子移動 に よ って開始 され る も
ので あ る
。
光電 子移動 は原理 的 に 1光 子 に よ り 1電 子 しか移動 しないの で 、 多電 子移動 を駆動 す
るため に は、系 中に電 子 プール とな る触媒 (
錯体 、金属 や 半導 体微 粒子 、酵 素 な ど) を共存 させ
なけれ ば な らな い
。
この よ うな光 触媒 系 は、安 定 な生成物 を得 るため に多電 子還 元 が不可 欠 な基 質 の還 元 に は適 し
て い る。実際 これ まで に 、水 素発生 や二酸 化炭 素 の還 元 を行 う光触媒 が数 多 く報 告 されて い る14)。
一方 、不飽和 有機 化 合物 等 、 1電 子還 元 が比 較 的容 易 に起 こる基 質 の水素 化 や ヒ ドリ ド還 元反応
は、従 来 の光 触 媒 で は うま くい か ない場 合 が 多い。 なぜ な ら、 この よ うな反 応 系 にお いて は、基
質の 1電 子酸 化 も しくは還 元反 応 に よ り活性 な ラ ジカル種 が生成 し、その カ ップ リング等 に よ り
多様 な生成物 を与 えて しま うためで あ る5)。次 に述 べ る補酵 素 NADPお よび その モ デル化 合物 の ヒ
ドリ ド還 元反応 は、その典型 的 な例 で ある
[
2】
。
補酵素 NADPお よびその モデル化合物 の ヒ ドリ ド還 元
植物 の光 合成 にお け る明反応 は、太陽 光 を駆動 力 に水 を還 元剤 と して用 い る こ とに よ り、補酵
素 NADPを ヒ ドリ ド還 元 して NADPHを生成 して い る (
式
酸 化還 元 プ ロセ スに変換 す る重 要 な素過程 で あ る
。
1) この反応 は、 1電 子移動 を多電 子
。
したが って 、非 酵素系 の 光 触 媒 を用 いて補酵
素 NADPお よび その モ デル化合物 を選択 的 に ヒ ドリ ド還 元 しよ うとす る試 み は、 これ まで も興味 が
持 たれ て きたが 、光合成 と同様 の生成物 分布 を高 い収率 で達成 した報告 はほ とん どな い 6)。 この還
元反応 が容 易で ない理 由 は、上述 した ラジカル種 生成 の問題 を含め 3点 ある (こ こで は 、NADPの
代表 的 なモデル化 合物 で あるBNA+を用 いて説 明す る)。
ー2-
+
H
2
0
野
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"
H
…
R
CONH2
-
NADP
(
問題点 1)
(
1)
+1
/
202+H十
防I
R
NADPH
BNA+を植物 の光合成 と同様 に 1
,
4
ジヒ ドロ体 (
1
,
4BNAH) へ変換 す るためには、 ヒ
ドリ ド還 元 を選択 的 に行 わ な けれ ば な らな い。 しか し、電 子移動 を経 由す る光触媒 を用 い る と、
BNA+はよい電 子受容 体 で あ るため直 ちに 1電子還 元 され 、BNAラジカル (
BNA ・
) が生成 す る
。
この ラジカル の プ ロ トン化 は容 易で はな くカ ップ リング反応 の方 が効率 よ く起 こるため 、光合成
で は全 く生成 しない ダイマ ー (
BNA2
)が主 に生成 して しまう
。
したが って 、 目的の1,
4BNAHだけ
を選択 的 に得 る こ とはで きな い (
スキ ー ム 1)。実 際 、電 子 移 動 を経 由 して二 酸 化 炭 素 を-醍
Ht
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CH2
Ph
1,
4
8NAH
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0
CH2Ph
BNA・
)
C
BNA2
Schemel Redu
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c
ompoundBNA'
・
化炭素へ効率 よ く 2電 子還 元す る光触媒 で ある レニ ウム錯体 Re(
bpy)(
CO)3
Br (
bpy-2
,
2しビピ リジ
)
を用 いてBNA+の還元 を試 み ると、BNA2
がほぼ定量的 に生成 し、 ヒ ドリ ド還元体 は全 く得 ら
ン)4
れ なか った (
式 2)7)0
BNA+
h′
/Re(
bpy)
(
CO)
3
Br
BNA2
(
2)
NEt
3
(
問題点 2)
1,
4
BNAHは良 い電 子供与体で あ り、通常の光触媒系 で は容 易 に酸化 され るため、反
応溶液 中に蓄積 す るのが困難 で ある
。
(
問題 点 3) NaBH4の よ うな ヒ ドリ ド還元 剤 を用 いてBNA十を還 元す る と、光合成 で は全 く生成
しな い1
,
6
ジヒ ドロ体 (
1
,
6BNAH) が優先 的 に生成 して しま う (
式 3).
BNA・一
空
㌔
H 0
甜
co""
.2
6日2
Ph
1,
6・
BNAH
p ""2
(
3,
dH2
Ph
1,
4BNAH
これ らの問題 点 、特 に (1) と (2)の解決 は、従来 の分子間電子移動 を経 由す る光触媒 反応
系 を用いては困難で あろ う で は、 どの よ うな光触媒設計 を行 えば 、NADPお よび そのモデル化 合
O
物 の選択 的 ヒ ドリ ド還元 が可能 にな るので あろ うか。
-3-
[
3]
ヒ ドリ ド移動 を選択的 に駆動 す る光触 媒の分子設計
我 々は 、2
,
2しビピ リジン (
bpy)や 2
,
2′
:
6′
,
2〝一夕- ピ リジン (
t
py)等のポ リピ リジン多座 配位子
を持つ 金属 錯体 に注 目 した。 これ らの錯体 の最低励起状態 は、MLCTと呼 ばれ る中心 金属 か らポ
リピ リジ ン配位子へ電荷 が移動 した状態 で ある ことが 多い。す なわ ち励起状態 において 、中心 金
属 は酸 化 され て い る. したが って 、 トリエ チル ア ミンの よ うな第 3ア ミンを配位 子 と して導 入 し
ておけば 、ア ミン配位 子 か ら中心金属への分子内電子移動 が起 こって もおか しくない (
式 4)。第
3ア ミンが 1電 子酸 化 され るとプ ロ トンを容 易 に脱離 し、還元 力の強 い αア ミノラジカルが生成
す ることはよ く知 られてい る (
式 5)。 この よ うに して生成 す る ラジカル配位子 か ら中心金属へ も
う 1電 子 が移動 すれ ば 、結果的 に錯 体 が外 圏的電子移動反応 を経 由せず に 2電 子還 元 され た こと
にな る (
式 6)0 ・
万、ア ミン配位 子 は 2電 子酸化 され る ことによ り配位能の ない イ ミニ ウム カチ
オ ンにな るため脱離 し、代 わ りにプ ロ トンが配位 す る ことによ りヒ ドリ ド錯体 が生成 す るだ ろ う
(
式 7)
0
(
t
py,
(
bpy,
Ru"-NE.
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(
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・
.
,
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3
1 2+
MLCT
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H+)
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Et
Et
,
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Rul+ Et
2N+
-CHCH3
_
_
十二
(
t
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(
bpy)
。u‖
_
H「 +
(
5)
(
6)
(
7,
この よ うな光触媒 設 計 を もとに、種 々の錯体 の反応性 を検 討 した結 果 、 【
Ru(
t
py)(
bpy)(
py)1
2
+
(
1:py-ピ リジン) お よび 【
Ru(
bpy)
2
(
py)
2
1
2
+(
2) が、BNA+を選択 的 に ヒ ドリ ド還元す る光触媒 と
して働 くことを兄いだ した8)。 これ らの錯体 は、最低励起状態 が 3垂項 MLCTで あるが 、代表 的 な
光増感剤 で ある【
Ru(
bpy)
3
1
2
+と比 べ る と桁違 いに励起 寿命 が短 い。 その主 な原因 が錯体 の光 分解 、
す なわ ち ピ リジ ン配位 子の置換反応 で あ るため、 これ まで光増 感剤 及び光触媒 と して用 い られ た
例 はなか った9
)
。
[
4]
光触媒反応
反応 は、錯体 1
お よび2
のP
F
6
塩 (
2〃mol
)、BNA+
PF6 (
1
0〃mo
l
) 及び トリエチル ア ミン(
0.
5M)
を含む 5ml
のDMF溶液 に脱気下 、高圧水銀灯 を用いて>5
0
0nmの光 を照射す ることによ り行 った。
BNA+由来の生成物 は異性化や酸 化 分解 を起 こ しやすいため 、よい定量法が報告 され ていなか った
が 、ODSカ ラム及びpH7の リン酸緩 衝液 とメ タノールの混 合溶離液 を用 いた高速液 体 クロマ トグ
ラフ ィーによ り生成量 を正確 に求 め る方法 を確 立 した。
錯体 と して1を用 い た場 合 、反応 溶 液 に 5時 間光照射 す ると、1,
4BNAHが 59%の収 率 で生成
した (
式 8)。 また、 ジエチル ア ミンが 、生成 した 1
,
4BNAHとほぼ 当モル量検 出 され 、アセ トア
ル デ ヒ ドも生成 した ことが確認 され た。 ジエチル ア ミンとアセ トアル デ ヒ ドは、 トリエ チル ア ミ
ンが 2電 子酸化 され る ことによ り生成 す る イ ミニ ウム カチオ ンが加水 分解 され た もの で あ る (
式
9) 1,
4BNAH生成 に対す る錯体1の ター ンオ ーバ ー数 は約 3で あ り、反応 が触媒的 に進 行す るこ
0
とがわか った。
-4-
1/hv
1,
4BNAH+HNEt
2+CH3
CHO
BNA十十NEt
3
Et
2
日+
=CHCH3
(
8)
H20 F HNEt
2+CH3
CH0
(
9)
この反応 においてBNA2
は全 く検 出 されず 、選択的 に ヒ ドリ ド還元だけがお こることがわかった。
また、1
,
4
BNAHの生成が頭打 ちになった後、 さらに光照射 を続 けて も、1
,
4
BNAHの分解 はほ とん
ど観測 されなか った。 この よ うに、本光触媒系は、分子間電子移動 を経 由 して進行す る従来の光
触媒反応の問題点 (
上述の 1および 2) を解決 した ものである
。
さらに これ は予想 しなかった こ
とだが、本光触媒反応 は完全 に位置選択的で あり、1,
6
ジヒ ドロ体
い。すなわち、問題点 3も解決で きた。
(
1,
6
BNAH)は全 く生成 しな
は
光触媒 として錯体2を用いた場 合 も、やは りヒ ドリ ド還元反応 だけが選択 的 に進行 し、BNA2
全 く生成 しなかった。ただ し、生成 したBNA+の ヒ ドリ ド還元体 には、1
,
6
ジヒ ドロ体が7%含 まれ
ていた (
式
10)
。配位子bpyの4,
4′位 に電子供与性 の置換基 を導入す ると1
,
6
ジヒ ドロ体の生成量
は増大 し、メ トキシ基の場合1
,
8BNAHは全BNAH生成量の 45% を占めた (
表 1)
。
2/hv
1,
4BNAH+1,
6BNAH
(
1
0)
NEt
3
この ようにNADPモデル化合物の ヒ ドリド還元反応の位置選択性 を制御で きた例 は、我 々の知 る
、2と還元剤 トリエチル ア ミンを組 み合わせ た光触媒
限 りにおいて初 めてで ある。 ピ リジン錯体 1
系 は、 これ までに報告 された光触媒 と異 な り、基質間の 1電子移動 は全 く駆動せず 、選択的 に ヒ
ドリ ド還元反応 だけをお こす とい う際立 った特徴 を有 している
。
で は、どの よ うな機構 で この反
応 は進行 したのであろ うか。 また、1を光触媒 と して用いたBNA+の還元で、なぜ位置選択性 が発
現 したのか。次 に、これ までの研究で明 らかになった本光触媒反応の機構 について述べ る
。
Tabl
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【
RU(
4,
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1,
4BNAHs
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0 3 9 5
0
1 9 7 5
CF3
H
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(
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l,
4l
BNAH)
+l
l,
6BNAH]
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r
r
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i
on.
[
5】 反応機構
[5- 1】
アミン錯体およびヒ ドリ ド錯体の生成
および2
は、溶液 中光照射 され ると効率 よ くピ リジン配位子 を脱離 し、代わ りに溶液 中に
錯体 1
存在す る配位能の ある分子 を取 り込 む ことが知 られてい る9
)
。本光触媒反応の初期において も、錯
体 に由来す る可視紫外部の吸収 はすばや く変化 し、 ピ リジン配位 子が溶媒で あるDMFもしくは還
元剤で ある トリエチルア ミンと置換 した錯体が生成 した。立体障害の ため錯体 に配位で きない ト
ー 5-
リイ ソプ ロ ピル ア ミンを トリエチル ア ミンの代 わ りに用 い る と、反応 は全 く進 行 しない ことか ら、
DMF錯体 は本反応 の光触媒 で はない ことが明 らかで あ る
。
したが って 、本光触媒反応 は、 ピ リジ
ン錯 体 1
お よび2
が光配位子 置換 反応 をお こ しア ミン錯体 が生成 す る ことによ り開始 され る (
式
1
1、 12)
。
h
v
1
+NEt
3
hv
2+NEt
3
>
l
R
u
(
t
py)
(
b
py)(N E t
3)]
2++ py
(
ll
)
> 【
Ru(
bpy)
2
(
Py)
(
NEt
3
)
1
2
++py
(
1
2)
次 に、 ア ミン錯体 が光励起 され る ことによ り、 どの よ うな構 造 を持 つ 錯体 に変化 したの かが問
題 とな る
。
光触 媒 の設計 の ところで述 べ た機構 で反応 が進 行 してい るので あれ ば、 トリエチル ア
ミンの かわ りに ヒ ドリ ドが配位 した錯体 が生成 す る と予想 され る
l
Ru(
t
py)
(
bpy)
(
NEt
3
)
】
2
・
h
L 与
。
辛 い な こ とに、予想 され る と
【
Ru(
t
py)
(
bpy)
H]
・
(
1
3)
ドリ ド錯体 の一つ 【
Ru(
t
p
y)(
bpy)
H】
+(
3) を合成 、単 離 す る ことがで きた8,1O)。 この ヒ ドリ ド錯体3
は 、次 章 で詳 しく述 べ るが 、BNA+と反応 す る
,
4
BNAHを生成 す る
と定 量的 に1
。
ヒ ドリ ド錯体
(a)
l
I
I
l
-卜6h
l
i
r
r
-i
l
一
i
on
3が本光触媒反応 において重要 な中間体 と して生
2h千irradi
a
t
i
○
成 して い る ことは、次 の実験 事実 か ら明 らかで
時 間 お よび 6時 間光照射 した後 、暗 中でBNA+を
a
)は、反応 溶液 にBNA十を加 える前後の
た。図 1(
千j
nO
r
r
a
di
a
tn
2
.
9%お よび 3.
5%の収率 で生成 し
い た 1に対 して 1
T
J
o・
4
BNAHがそれ ぞれ用
加 え数時間放置す ると、1,
q
JS
OqV V
1と トリエ チル ア ミンだけ を含 むDMF溶液 を2
1
0
o・
13)
O Uue
ある (
式
差 スペ ク トル で あ る 。 光照 射 した溶 液 の場 合 、
5
35nmに吸収極大 が観測 され る 一方 、図 1(
b)
。
は ヒ ドリ ド錯 体 3と トリエ チ ル ア ミン を含 む
DMF溶液 に、暗 中で BNA+を加 えた前後 の差 ス
ペ ク トル で あ る
。
の光励起 によ りヒ ドリ ド錯体3が生成 した ことが
。
l
l
350 400 450 50
l
0 55
l
0
Wa
v
e
図1(
a)と1(
b)に示 した吸 収 ス
ペ ク トル が よ く 一
致 した こ とか ら、ア ミン錯体
わか る
(
b)
l
l l
l
また、 これ らの差 スペ ク トル か ら生成
した3の収 率 を計算す ると、光照射 2時間お よび 6
時間で それ ぞれ 1.
9%、3.
4%で あ り、上述 したよ
うに光 照 射 後 の 溶液 にBNA+を加 えた と きに生
l
i
On l
l
l
600 650 700
l
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BNA+hadbeenaddedt
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er
,
4
1
BNAHの収率 とほぼ一致 した。
成 した1
[
5-2】
ヒ ドリ ド錯体 による B
i
nt
hedar
k.
NA+の ヒ
以上 の結 果 よ り、光反応 に よって生成
した
ドリ
ヒド
ドリ
還元反応
ド錯体 3に よって 、B
行す る ことは明 らかで ある
。
実際 、単離 した3と等 モル最 の BNA+を、D NA十の ヒ ドリ ド還 元 が進
MF溶液 中混合 し、数時 間
ドロ体 だけが位 置選択 的
光合成 も含め酵素存在 下 で お こるNADPの還元反応 におMF
いて
]
、1
2
十が生成
,
4ジヒ
した。
)
放 置す ると定 量的 に1,
4
BNAHとDMF錯体 [
Ru(
t
py)(
bpy)(
D
に生成す る理由が明確 にな っていない ことを考 えあわせ ると、3とBNA+の反応 において発現 す る
位置選択性 (
1
,
4
ジヒ ドロ体 だけが生成)の原因 を明 らかにす ることは重要である。
3とBNA+の反応 をス トップ ドフロー法 を用いて追跡す ると、 この反応 は少 な くとも 2段 階で進
行 していることがわか った。す なわち スキ-ム 2に示 したよ うに、3とBNA+との反応 によ りまず
付加体4が生成 し(
ステ ップ 1)、 この付加体が1,
4
BNAHと溶媒 (
S)
の配位 した 【
Ru(
t
py)(
bpy)(
S)】
2
+
(
5
)へ と開裂す る (ステ ップ 2)。 ステ ップ 1は数秒以内に完結す る早い反応であ り、一 方、ステ
HNMRお よびエ レク トロ
ップ 2は数時間 を用す る遅 い反応 であるため、反応の 中間体で ある4の 1
スプ レー イオ ン化質量分析 スペ ク トル を測定す ることがで きた。その結果 よ り、4はBNAHの ア ミ
,
4
ジ
ド基か らプロ トンが一つ脱離 してルテニ ウムに配位 した構造で あ り、BNAHの部分はすで に1
ヒ ドロ体構造 をとってい ることが明 らかになった。
(
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(
t
py
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溶媒錯体 5と1,
4BNAHを混合 して も付加体 4はまった く生成 しなか った ことか ら、錯 体 3か ら
BNA+に ヒ ドリ ドが移動す る過程 で、すで にBNA+のア ミド基 とル テニ ウム錯体の間 に相互作用が
この よ うにNAD(
P)モデル化合物 の ア ミド基が ヒ ドリ ド供与
存在 していることが強 く示唆 され る
。
体 と相互作用す るとい う単純 な機構で生成物 の位置選択性 が制御で きることは、酵素反応 による
NAD(
P)
の還元反応 における位置選択性発現の機構 を考 える上で非常 に興味深い。
付加体4生成時 に、形式的 には3か らBNA+へ ヒ ドリ ドが移動 した ことになる。 この過程 は、 ヒ ド
リ ドの直接移動 なのかそれ とも電 子移動 を含む多段階反応 なのであろ うか。 この ことを明 らかに
を導 入 した錯体 t
Ru(
t
py)(
bpy)
D]
+(
3・
D)を合成 し、BNA+との
す るために、 ヒ ドリ ドのかわ りにD反応 を検討 した。3
・
DとBNA+の反応 を、l
HNMRで追跡 した結果 、生成 した1,
4
BNAHの ジヒ ドロ
生成 の反応
ピリジン環 には全 く重水素 が導入 されていない ことが明 らかになった。 また、付加体4
I
d(
垂水素化
速度 に、同位体効果 は全 く認め られなかった。一方、ア ミド基 を重水素化 したBNA十
,
4
ジヒ ドロ体の 4位 に 1つ
率 35±5%) と重水素化 されていない3を反応 させ ると、得 られた1
,
4-ジヒ ドロ体の割合 35%).以上 の結 果 よ り、
重水素が導 入 され た (
式 14:重水素化 され た 1
BNA+が1
,
4
ジヒ ドロ体 に変換 され る過程 において、 ヒ ドリ ド錯体3か らBNA+へ直接 ヒ ドリ ドが移
動 したのではない ことは明 らかで ある
。
この過程は電子移動 を含むプロセスであ り、水素 はBNA+
のア ミド基か ら供給 され る。 この ことが 、3によるBNA+の還元反応 において 、1
,
4
ジヒ ドロ体だけ
が位置選択的に生成 した原因で あろ う す なわち、ア ミド基の近傍 にある 4位 に水素 は選択的 に
。
移動 し、遠 い 6位 には移 ることはない と考 えると、 この位置選択性 をよ く説明で きる。
以上述べて きた結果 よ り、 ピ リジン錯体 1を光触媒 と して用いたBNA+の ヒ ドリ ド還 元反応の機
構 を、スキーム 3のよ うに まとめ ることがで きる
。
すなわち、
(1) ピリジン錯体の光配位子置換反応 によるア ミン錯体の生成。
- 7-
(2)ア ミン錯体の光反応 によるヒ ドリ ド錯体への変換
(3)電子移動 を経由 した ヒ ドリ ド錯体 とBNA†の付加体生成
(4)付加体の光配位子置換反応 による1
,
4
BNAHの生成 とア ミン錯体の再生
【
6] おわ りに
これ まで述べて きたよ うに、 ヒ ドリ ド移動 を選択的 に駆動す る新 しい タイプの光触媒 を開発す
ることがで きた。 これ までにない高い生成物選択性 が発現で きたの は、この光触媒反応 は分子間
光電子移動 を経 由 しないためである。 この タイプの光触媒 は分子内の光反応 を利用す るので、従
来の光増 感剤や光触媒の よ うに長い励起寿命 を持つ必要 がない。 したがって、 これ まで励起寿命
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が短 く光触媒 と して使 えない と考 えられて きた錯体が、今後再評価 され る可能性 を本研究 は示 し
ている。
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