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ヒ ドリ ド移動を選択的に駆動する光触媒
《 総説 マイ レビュー》 ヒ ドリ ド移動 を選択的に駆動す る光触媒 ANovelTypeofHydr i deTr ans f erPhot ocat al ys t s 大 学院 理=学研究科 環境制御 工学専攻 今野 英雄 ・小 林罵生 ・槻木和彦 ・ 石谷 治★ De pa r t me n to fEn v i r o n me n t a l S c i e n c ea ndHuma nEn gi ne e r i n g, Gr a d ua t eS c ho o l o fSc i e n c ea n dEn gi ne e r i n g Hi de oKONNO, At s uoKOBAYASHI , Ka z u hi koS A… OTO, Os a muI SHI TANI★ T w or ut he ni um p yr i di nec ompl e xesl Ru( t p y)( bp y)( p y) ] 2 +( t p y-2, 2' : 6' , 2"t er pyr i di nC,bp y=2, 2' - bi p yr i di ne,py-pyr i di ne )a nd【 Ru( bpy ) 2 ( py) 2 1 2 十phot oc a t a l yz edt her e gi oc ont r ol l edr educ t i onof1 be nz y1 3 I C rba a mo y1 p yr i di ni um c a t i ont ot hedi hydr of or m( BNAH)wi t hnof or ma t i ono fha l f r educ ed di mer s ,a ndBNAHwa snotc ons umede vena f t e rl ongper i odi r r adi a t i on. Ther eg iOs e l ec t i v i t yo f BNAHf om edc oul dbec o nt r ol l edbys e l e c t i ngt hel i ga ndsoft hepho t o c a t a l ys t s . m eno ve lt ypeof p hot oc a t a l ys i spr oc e edst hr ough仇epr i orphot os ubs t i t ut i ono fap yl i ga ndo f仇eRuc omp l e xesa nd t hes ubs eque ntphot o f br ma t i onof【 Ru( t p y )( bp y) H】 +or【 Ru( bpy ) 2 ( py) H】 + . [1】 従来 の酸化還元光触 媒の 問題点 光 触 媒 を利 用 した酸 化還 元反 応 は 、有機 合成 や光 エ ネル ギ ーの変換 な ど様 々な 分野 へ の応 用 が 期待 され る こ とか ら、 これ まで数 多 くの研 究 が な され て きた。 しか し、 多電 子 移動 を駆 動 す る光 触媒反 応 の機 構 を分類 してみ る と、 その ほ とん どは 、分子 間の光電 子移動 に よ って開始 され る も ので あ る 。 光電 子移動 は原理 的 に 1光 子 に よ り 1電 子 しか移動 しないの で 、 多電 子移動 を駆動 す るため に は、系 中に電 子 プール とな る触媒 ( 錯体 、金属 や 半導 体微 粒子 、酵 素 な ど) を共存 させ なけれ ば な らな い 。 この よ うな光 触媒 系 は、安 定 な生成物 を得 るため に多電 子還 元 が不可 欠 な基 質 の還 元 に は適 し て い る。実際 これ まで に 、水 素発生 や二酸 化炭 素 の還 元 を行 う光触媒 が数 多 く報 告 されて い る14)。 一方 、不飽和 有機 化 合物 等 、 1電 子還 元 が比 較 的容 易 に起 こる基 質 の水素 化 や ヒ ドリ ド還 元反応 は、従 来 の光 触 媒 で は うま くい か ない場 合 が 多い。 なぜ な ら、 この よ うな反 応 系 にお いて は、基 質の 1電 子酸 化 も しくは還 元反 応 に よ り活性 な ラ ジカル種 が生成 し、その カ ップ リング等 に よ り 多様 な生成物 を与 えて しま うためで あ る5)。次 に述 べ る補酵 素 NADPお よび その モ デル化 合物 の ヒ ドリ ド還 元反応 は、その典型 的 な例 で ある [ 2】 。 補酵素 NADPお よびその モデル化合物 の ヒ ドリ ド還 元 植物 の光 合成 にお け る明反応 は、太陽 光 を駆動 力 に水 を還 元剤 と して用 い る こ とに よ り、補酵 素 NADPを ヒ ドリ ド還 元 して NADPHを生成 して い る ( 式 酸 化還 元 プ ロセ スに変換 す る重 要 な素過程 で あ る 。 1) この反応 は、 1電 子移動 を多電 子 。 したが って 、非 酵素系 の 光 触 媒 を用 いて補酵 素 NADPお よび その モ デル化合物 を選択 的 に ヒ ドリ ド還 元 しよ うとす る試 み は、 これ まで も興味 が 持 たれ て きたが 、光合成 と同様 の生成物 分布 を高 い収率 で達成 した報告 はほ とん どな い 6)。 この還 元反応 が容 易で ない理 由 は、上述 した ラジカル種 生成 の問題 を含め 3点 ある (こ こで は 、NADPの 代表 的 なモデル化 合物 で あるBNA+を用 いて説 明す る)。 ー2- + H 2 0 野 c o ・ " " H … R CONH2 - NADP ( 問題点 1) ( 1) +1 / 202+H十 防I R NADPH BNA+を植物 の光合成 と同様 に 1 , 4 ジヒ ドロ体 ( 1 , 4BNAH) へ変換 す るためには、 ヒ ドリ ド還 元 を選択 的 に行 わ な けれ ば な らな い。 しか し、電 子移動 を経 由す る光触媒 を用 い る と、 BNA+はよい電 子受容 体 で あ るため直 ちに 1電子還 元 され 、BNAラジカル ( BNA ・ ) が生成 す る 。 この ラジカル の プ ロ トン化 は容 易で はな くカ ップ リング反応 の方 が効率 よ く起 こるため 、光合成 で は全 く生成 しない ダイマ ー ( BNA2 )が主 に生成 して しまう 。 したが って 、 目的の1, 4BNAHだけ を選択 的 に得 る こ とはで きな い ( スキ ー ム 1)。実 際 、電 子 移 動 を経 由 して二 酸 化 炭 素 を-醍 Ht r ans t er E y co""2 .D・ CH2 Ph 1, 4 8NAH . ′ ′ H-.e・t , ans . e, e-t r ansf er 斗 二::.H_ T :^ D i m e n z a t 1 0 n I ( p h H 2 C N q 2 N H 2 P h H 2 ' H 2 N ( 0 CH2Ph BNA・ ) C BNA2 Schemel Redu c t i onofanNADPmodeT c ompoundBNA' ・ 化炭素へ効率 よ く 2電 子還 元す る光触媒 で ある レニ ウム錯体 Re( bpy)( CO)3 Br ( bpy-2 , 2しビピ リジ ) を用 いてBNA+の還元 を試 み ると、BNA2 がほぼ定量的 に生成 し、 ヒ ドリ ド還元体 は全 く得 ら ン)4 れ なか った ( 式 2)7)0 BNA+ h′ /Re( bpy) ( CO) 3 Br BNA2 ( 2) NEt 3 ( 問題点 2) 1, 4 BNAHは良 い電 子供与体で あ り、通常の光触媒系 で は容 易 に酸化 され るため、反 応溶液 中に蓄積 す るのが困難 で ある 。 ( 問題 点 3) NaBH4の よ うな ヒ ドリ ド還元 剤 を用 いてBNA十を還 元す る と、光合成 で は全 く生成 しな い1 , 6 ジヒ ドロ体 ( 1 , 6BNAH) が優先 的 に生成 して しま う ( 式 3). BNA・一 空 ㌔ H 0 甜 co"" .2 6日2 Ph 1, 6・ BNAH p ""2 ( 3, dH2 Ph 1, 4BNAH これ らの問題 点 、特 に (1) と (2)の解決 は、従来 の分子間電子移動 を経 由す る光触媒 反応 系 を用いては困難で あろ う で は、 どの よ うな光触媒設計 を行 えば 、NADPお よび そのモデル化 合 O 物 の選択 的 ヒ ドリ ド還元 が可能 にな るので あろ うか。 -3- [ 3] ヒ ドリ ド移動 を選択的 に駆動 す る光触 媒の分子設計 我 々は 、2 , 2しビピ リジン ( bpy)や 2 , 2′ : 6′ , 2〝一夕- ピ リジン ( t py)等のポ リピ リジン多座 配位子 を持つ 金属 錯体 に注 目 した。 これ らの錯体 の最低励起状態 は、MLCTと呼 ばれ る中心 金属 か らポ リピ リジ ン配位子へ電荷 が移動 した状態 で ある ことが 多い。す なわ ち励起状態 において 、中心 金 属 は酸 化 され て い る. したが って 、 トリエ チル ア ミンの よ うな第 3ア ミンを配位 子 と して導 入 し ておけば 、ア ミン配位 子 か ら中心金属への分子内電子移動 が起 こって もおか しくない ( 式 4)。第 3ア ミンが 1電 子酸 化 され るとプ ロ トンを容 易 に脱離 し、還元 力の強 い αア ミノラジカルが生成 す ることはよ く知 られてい る ( 式 5)。 この よ うに して生成 す る ラジカル配位子 か ら中心金属へ も う 1電 子 が移動 すれ ば 、結果的 に錯 体 が外 圏的電子移動反応 を経 由せず に 2電 子還 元 され た こと にな る ( 式 6)0 ・ 万、ア ミン配位 子 は 2電 子酸化 され る ことによ り配位能の ない イ ミニ ウム カチ オ ンにな るため脱離 し、代 わ りにプ ロ トンが配位 す る ことによ りヒ ドリ ド錯体 が生成 す るだ ろ う ( 式 7) 0 ( t py, ( bpy, Ru"-NE. ? 2' i ( 4) ( t p, ・ . , ( bpy, Ru目 しNEt 3 1 2+ MLCT ( H+) 「+ +cHC' H ・ t py ・ ・ , ( bpy, RuJ Et Et , ( t py一 ・ ) ( bpy) Rul+ Et 2N+ -CHCH3 _ _ 十二 ( t p,) ( bpy) 。u‖ _ H「 + ( 5) ( 6) ( 7, この よ うな光触媒 設 計 を もとに、種 々の錯体 の反応性 を検 討 した結 果 、 【 Ru( t py)( bpy)( py)1 2 + ( 1:py-ピ リジン) お よび 【 Ru( bpy) 2 ( py) 2 1 2 +( 2) が、BNA+を選択 的 に ヒ ドリ ド還元す る光触媒 と して働 くことを兄いだ した8)。 これ らの錯体 は、最低励起状態 が 3垂項 MLCTで あるが 、代表 的 な 光増感剤 で ある【 Ru( bpy) 3 1 2 +と比 べ る と桁違 いに励起 寿命 が短 い。 その主 な原因 が錯体 の光 分解 、 す なわ ち ピ リジ ン配位 子の置換反応 で あ るため、 これ まで光増 感剤 及び光触媒 と して用 い られ た 例 はなか った9 ) 。 [ 4] 光触媒反応 反応 は、錯体 1 お よび2 のP F 6 塩 ( 2〃mol )、BNA+ PF6 ( 1 0〃mo l ) 及び トリエチル ア ミン( 0. 5M) を含む 5ml のDMF溶液 に脱気下 、高圧水銀灯 を用いて>5 0 0nmの光 を照射す ることによ り行 った。 BNA+由来の生成物 は異性化や酸 化 分解 を起 こ しやすいため 、よい定量法が報告 され ていなか った が 、ODSカ ラム及びpH7の リン酸緩 衝液 とメ タノールの混 合溶離液 を用 いた高速液 体 クロマ トグ ラフ ィーによ り生成量 を正確 に求 め る方法 を確 立 した。 錯体 と して1を用 い た場 合 、反応 溶 液 に 5時 間光照射 す ると、1, 4BNAHが 59%の収 率 で生成 した ( 式 8)。 また、 ジエチル ア ミンが 、生成 した 1 , 4BNAHとほぼ 当モル量検 出 され 、アセ トア ル デ ヒ ドも生成 した ことが確認 され た。 ジエチル ア ミンとアセ トアル デ ヒ ドは、 トリエ チル ア ミ ンが 2電 子酸化 され る ことによ り生成 す る イ ミニ ウム カチオ ンが加水 分解 され た もの で あ る ( 式 9) 1, 4BNAH生成 に対す る錯体1の ター ンオ ーバ ー数 は約 3で あ り、反応 が触媒的 に進 行す るこ 0 とがわか った。 -4- 1/hv 1, 4BNAH+HNEt 2+CH3 CHO BNA十十NEt 3 Et 2 日+ =CHCH3 ( 8) H20 F HNEt 2+CH3 CH0 ( 9) この反応 においてBNA2 は全 く検 出 されず 、選択的 に ヒ ドリ ド還元だけがお こることがわかった。 また、1 , 4 BNAHの生成が頭打 ちになった後、 さらに光照射 を続 けて も、1 , 4 BNAHの分解 はほ とん ど観測 されなか った。 この よ うに、本光触媒系は、分子間電子移動 を経 由 して進行す る従来の光 触媒反応の問題点 ( 上述の 1および 2) を解決 した ものである 。 さらに これ は予想 しなかった こ とだが、本光触媒反応 は完全 に位置選択的で あり、1, 6 ジヒ ドロ体 い。すなわち、問題点 3も解決で きた。 ( 1, 6 BNAH)は全 く生成 しな は 光触媒 として錯体2を用いた場 合 も、やは りヒ ドリ ド還元反応 だけが選択 的 に進行 し、BNA2 全 く生成 しなかった。ただ し、生成 したBNA+の ヒ ドリ ド還元体 には、1 , 6 ジヒ ドロ体が7%含 まれ ていた ( 式 10) 。配位子bpyの4, 4′位 に電子供与性 の置換基 を導入す ると1 , 6 ジヒ ドロ体の生成量 は増大 し、メ トキシ基の場合1 , 8BNAHは全BNAH生成量の 45% を占めた ( 表 1) 。 2/hv 1, 4BNAH+1, 6BNAH ( 1 0) NEt 3 この ようにNADPモデル化合物の ヒ ドリド還元反応の位置選択性 を制御で きた例 は、我 々の知 る 、2と還元剤 トリエチル ア ミンを組 み合わせ た光触媒 限 りにおいて初 めてで ある。 ピ リジン錯体 1 系 は、 これ までに報告 された光触媒 と異 な り、基質間の 1電子移動 は全 く駆動せず 、選択的 に ヒ ドリ ド還元反応 だけをお こす とい う際立 った特徴 を有 している 。 で は、どの よ うな機構 で この反 応 は進行 したのであろ うか。 また、1を光触媒 と して用いたBNA+の還元で、なぜ位置選択性 が発 現 したのか。次 に、これ までの研究で明 らかになった本光触媒反応の機構 について述べ る 。 Tabl e1Phot ocat al y t i cr educ t i onofBNA'by2・ 【 RU( 4, 4x2 bpy) ( py) 2 】 2 + 1, 4BNAHs eL ec t i vi t ya)/ % 0 3 9 5 0 1 9 7 5 CF3 H Me MeO a )1 00xl l, 4BNAH] / ( l l, 4l BNAH) +l l, 6BNAH] ) ,af t er2hi r r adi at i on. [ 5】 反応機構 [5- 1】 アミン錯体およびヒ ドリ ド錯体の生成 および2 は、溶液 中光照射 され ると効率 よ くピ リジン配位子 を脱離 し、代わ りに溶液 中に 錯体 1 存在す る配位能の ある分子 を取 り込 む ことが知 られてい る9 ) 。本光触媒反応の初期において も、錯 体 に由来す る可視紫外部の吸収 はすばや く変化 し、 ピ リジン配位 子が溶媒で あるDMFもしくは還 元剤で ある トリエチルア ミンと置換 した錯体が生成 した。立体障害の ため錯体 に配位で きない ト ー 5- リイ ソプ ロ ピル ア ミンを トリエチル ア ミンの代 わ りに用 い る と、反応 は全 く進 行 しない ことか ら、 DMF錯体 は本反応 の光触媒 で はない ことが明 らかで あ る 。 したが って 、本光触媒反応 は、 ピ リジ ン錯 体 1 お よび2 が光配位子 置換 反応 をお こ しア ミン錯体 が生成 す る ことによ り開始 され る ( 式 1 1、 12) 。 h v 1 +NEt 3 hv 2+NEt 3 > l R u ( t py) ( b py)(N E t 3)] 2++ py ( ll ) > 【 Ru( bpy) 2 ( Py) ( NEt 3 ) 1 2 ++py ( 1 2) 次 に、 ア ミン錯体 が光励起 され る ことによ り、 どの よ うな構 造 を持 つ 錯体 に変化 したの かが問 題 とな る 。 光触 媒 の設計 の ところで述 べ た機構 で反応 が進 行 してい るので あれ ば、 トリエチル ア ミンの かわ りに ヒ ドリ ドが配位 した錯体 が生成 す る と予想 され る l Ru( t py) ( bpy) ( NEt 3 ) 】 2 ・ h L 与 。 辛 い な こ とに、予想 され る と 【 Ru( t py) ( bpy) H] ・ ( 1 3) ドリ ド錯体 の一つ 【 Ru( t p y)( bpy) H】 +( 3) を合成 、単 離 す る ことがで きた8,1O)。 この ヒ ドリ ド錯体3 は 、次 章 で詳 しく述 べ るが 、BNA+と反応 す る , 4 BNAHを生成 す る と定 量的 に1 。 ヒ ドリ ド錯体 (a) l I I l -卜6h l i r r -i l 一 i on 3が本光触媒反応 において重要 な中間体 と して生 2h千irradi a t i ○ 成 して い る ことは、次 の実験 事実 か ら明 らかで 時 間 お よび 6時 間光照射 した後 、暗 中でBNA+を a )は、反応 溶液 にBNA十を加 える前後の た。図 1( 千j nO r r a di a tn 2 . 9%お よび 3. 5%の収率 で生成 し い た 1に対 して 1 T J o・ 4 BNAHがそれ ぞれ用 加 え数時間放置す ると、1, q JS OqV V 1と トリエ チル ア ミンだけ を含 むDMF溶液 を2 1 0 o・ 13) O Uue ある ( 式 差 スペ ク トル で あ る 。 光照 射 した溶 液 の場 合 、 5 35nmに吸収極大 が観測 され る 一方 、図 1( b) 。 は ヒ ドリ ド錯 体 3と トリエ チ ル ア ミン を含 む DMF溶液 に、暗 中で BNA+を加 えた前後 の差 ス ペ ク トル で あ る 。 の光励起 によ りヒ ドリ ド錯体3が生成 した ことが 。 l l 350 400 450 50 l 0 55 l 0 Wa v e 図1( a)と1( b)に示 した吸 収 ス ペ ク トル が よ く 一 致 した こ とか ら、ア ミン錯体 わか る ( b) l l l l また、 これ らの差 スペ ク トル か ら生成 した3の収 率 を計算す ると、光照射 2時間お よび 6 時間で それ ぞれ 1. 9%、3. 4%で あ り、上述 したよ うに光 照 射 後 の 溶液 にBNA+を加 えた と きに生 l i On l l l 600 650 700 l e n g t h/nm Fi gur e1.( a)Di f f er encespect r aobt ai nedby f r om t heUVVJ Sabsor pt i onspect r a subt r act i ng sol ut l onsof1t hathadbeeni r r adi at e o df fD or MF 0NEt 3 t heabsor pt i onspect r aa允erBNA+hadbeen .2and6h. samepr ei r r adi at edsor ut i onst henaH owedt oaddedt ot he dar kf orlmi n.( b)Adi f f er encespect r um st i ri nt he subt r acl ngf r om t heabsor pt i onspect r um obt ai nedby sol ut i onof3.t f aDMFNEt 3 heabsor banceoft hesames o BNA+hadbeenaddedt hena" owedt ost i r l ut i onaf t er , 4 1 BNAHの収率 とほぼ一致 した。 成 した1 [ 5-2】 ヒ ドリ ド錯体 による B i nt hedar k. NA+の ヒ 以上 の結 果 よ り、光反応 に よって生成 した ドリ ヒド ドリ 還元反応 ド錯体 3に よって 、B 行す る ことは明 らかで ある 。 実際 、単離 した3と等 モル最 の BNA+を、D NA十の ヒ ドリ ド還 元 が進 MF溶液 中混合 し、数時 間 ドロ体 だけが位 置選択 的 光合成 も含め酵素存在 下 で お こるNADPの還元反応 におMF いて ] 、1 2 十が生成 , 4ジヒ した。 ) 放 置す ると定 量的 に1, 4 BNAHとDMF錯体 [ Ru( t py)( bpy)( D に生成す る理由が明確 にな っていない ことを考 えあわせ ると、3とBNA+の反応 において発現 す る 位置選択性 ( 1 , 4 ジヒ ドロ体 だけが生成)の原因 を明 らかにす ることは重要である。 3とBNA+の反応 をス トップ ドフロー法 を用いて追跡す ると、 この反応 は少 な くとも 2段 階で進 行 していることがわか った。す なわち スキ-ム 2に示 したよ うに、3とBNA+との反応 によ りまず 付加体4が生成 し( ステ ップ 1)、 この付加体が1, 4 BNAHと溶媒 ( S) の配位 した 【 Ru( t py)( bpy)( S)】 2 + ( 5 )へ と開裂す る (ステ ップ 2)。 ステ ップ 1は数秒以内に完結す る早い反応であ り、一 方、ステ HNMRお よびエ レク トロ ップ 2は数時間 を用す る遅 い反応 であるため、反応の 中間体で ある4の 1 スプ レー イオ ン化質量分析 スペ ク トル を測定す ることがで きた。その結果 よ り、4はBNAHの ア ミ , 4 ジ ド基か らプロ トンが一つ脱離 してルテニ ウムに配位 した構造で あ り、BNAHの部分はすで に1 ヒ ドロ体構造 をとってい ることが明 らかになった。 ( bpy) ( t py ) 「u 3+BNA+ St ep7 灯I co"" CH2Ph ( 4) St e p2 +【 Ru( t py ) ( bpy) ( ら) 】 2 ◆ 灯I co"" 2 CH2Ph SchemeZ Mechani sm f ort her eact i onoft hehydr i docompl ex3wi t hBNA+,wher eS i sasol ventmol ecul e. 溶媒錯体 5と1, 4BNAHを混合 して も付加体 4はまった く生成 しなか った ことか ら、錯 体 3か ら BNA+に ヒ ドリ ドが移動す る過程 で、すで にBNA+のア ミド基 とル テニ ウム錯体の間 に相互作用が この よ うにNAD( P)モデル化合物 の ア ミド基が ヒ ドリ ド供与 存在 していることが強 く示唆 され る 。 体 と相互作用す るとい う単純 な機構で生成物 の位置選択性 が制御で きることは、酵素反応 による NAD( P) の還元反応 における位置選択性発現の機構 を考 える上で非常 に興味深い。 付加体4生成時 に、形式的 には3か らBNA+へ ヒ ドリ ドが移動 した ことになる。 この過程 は、 ヒ ド リ ドの直接移動 なのかそれ とも電 子移動 を含む多段階反応 なのであろ うか。 この ことを明 らかに を導 入 した錯体 t Ru( t py)( bpy) D] +( 3・ D)を合成 し、BNA+との す るために、 ヒ ドリ ドのかわ りにD反応 を検討 した。3 ・ DとBNA+の反応 を、l HNMRで追跡 した結果 、生成 した1, 4 BNAHの ジヒ ドロ 生成 の反応 ピリジン環 には全 く重水素 が導入 されていない ことが明 らかになった。 また、付加体4 I d( 垂水素化 速度 に、同位体効果 は全 く認め られなかった。一方、ア ミド基 を重水素化 したBNA十 , 4 ジヒ ドロ体の 4位 に 1つ 率 35±5%) と重水素化 されていない3を反応 させ ると、得 られた1 , 4-ジヒ ドロ体の割合 35%).以上 の結 果 よ り、 重水素が導 入 され た ( 式 14:重水素化 され た 1 BNA+が1 , 4 ジヒ ドロ体 に変換 され る過程 において、 ヒ ドリ ド錯体3か らBNA+へ直接 ヒ ドリ ドが移 動 したのではない ことは明 らかで ある 。 この過程は電子移動 を含むプロセスであ り、水素 はBNA+ のア ミド基か ら供給 され る。 この ことが 、3によるBNA+の還元反応 において 、1 , 4 ジヒ ドロ体だけ が位置選択的に生成 した原因で あろ う す なわち、ア ミド基の近傍 にある 4位 に水素 は選択的 に 。 移動 し、遠 い 6位 には移 ることはない と考 えると、 この位置選択性 をよ く説明で きる。 以上述べて きた結果 よ り、 ピ リジン錯体 1を光触媒 と して用いたBNA+の ヒ ドリ ド還 元反応の機 構 を、スキーム 3のよ うに まとめ ることがで きる 。 すなわち、 (1) ピリジン錯体の光配位子置換反応 によるア ミン錯体の生成。 - 7- (2)ア ミン錯体の光反応 によるヒ ドリ ド錯体への変換 (3)電子移動 を経由 した ヒ ドリ ド錯体 とBNA†の付加体生成 (4)付加体の光配位子置換反応 による1 , 4 BNAHの生成 とア ミン錯体の再生 【 6] おわ りに これ まで述べて きたよ うに、 ヒ ドリ ド移動 を選択的 に駆動す る新 しい タイプの光触媒 を開発す ることがで きた。 これ までにない高い生成物選択性 が発現で きたの は、この光触媒反応 は分子間 光電子移動 を経 由 しないためである。 この タイプの光触媒 は分子内の光反応 を利用す るので、従 来の光増 感剤や光触媒の よ うに長い励起寿命 を持つ必要 がない。 したがって、 これ まで励起寿命 【 R u ( t p y 1 , N E t 3 ニ ー つ k 【 R U ( t p y ) ( b p y ) ( N E t が短 く光触媒 と して使 えない と考 えられて きた錯体が、今後再評価 され る可能性 を本研究 は示 し ている。 ) ( bpy) ( py) 1 2 十 4BNAH 某 H・ 3 ) 】 2 ◆ 【 R u ( t p y ) ( b p y 州+ 二 三、 一一 BNA十 日+ Sc h e me3 Me c h a n i s mt o r r e d u c t i o no IBNA+u s i n g1a sp h o t o c a t a L y s t , 文献 1)K.Ka l ya nas unda r a ma n dM.Gr 畠t z e l .Phot os e ns i t i z a t i ona ndPhot oc a t a l ys J ' sus J ' n gl no r ga nL ' ca nd Ot ga no met a I I L ' cco mpou nds , 氾uwe rAca t de mi cPubl i s he r s , Dor dr ec ht ,1 993. , J.R We s t we l l ,M.I s hi z uka,K Ta keuc hi ,T.I bus uki ,K En j ou j i ,H.Konno,K 2)K.Koi ke,H.Hor i Sa ka mot oa nd0. 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