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第34回長崎県糖尿病治療研究会 症例検討会 使用したスライドは近日中に研究会のHPへ掲載いたします http://www.mh.nagasaki-u.ac.jp/ndmm/ 症例1.70歳、女性。2型糖尿病、脂質異常症、高血圧。 現病歴:平成21年3月に糖尿病で初診。この時の体重64.2kg(BMI 27.8)、 血圧 131/72mmHg、随時血糖226mg/dl、HbA1c 8.9%、AST 48U/l、 ALT 50U/l、LDL-C 176mg/dl、TG 243mg/dlにて、アマリール0.5mg、ク レストール2.5mgを開始。その後アマリールを2mgまで増量し、テネリア 20mgを追加したところ平成25年3月にはHbA1c 7.3%となった。しかし、さ らなる改善を目的に平成25年6月にアクトス15mgを隔日で追加投与したと ころ、10月にはHbA1c 6.7%まで改善した。糖尿病網膜症(-)、腎症(-)、 神経障害(-)。 現症:身長 151.9 cm、体重 66.2 kg(BMI 28.7 kg/m2) 検査所見:Hb 13.3g/dl、AST 22IU/l、ALT 22IU/l、γ-GTP 19IU/l、BUN 15.9mg/dl、Cr 0.66mg/dl、LDL-C 88mg/dl、TG 173mg/dl、随時血糖 204mg/dl、HbA1c 6.7%、GAD65抗体(-) 内服薬:アマリール 2mg 2x、テネリア 20mg 1x、カデュエット3番 1T 1x、ア クトス 15mg 1x 【質問】 今後の治療方針について教えてください。 症例1のまとめ 70歳、女性 2型糖尿病、脂質異常症、高血圧 糖尿病罹病期間 4年 アマリール 2mg 2x、テネリア 20mg 1x、 アクトス15mg 1x (隔日)にてHbA1c 7.3→6.7% に改善した BMI 28.7と肥満(+) 【質問】 今後の治療はどうしたらよいか それでは実臨床において このような患者さんの目標HbA1cを どの辺りに設定しますか? <6.0% ? <7.0% ? <8.0% ? 症例1の目標HbA1cは? 低血糖をきたす可能性のある薬を使用している? (SU薬、グリニド薬、インスリン) いいえ は い <6.0% 低血糖などの副作用そ の他の理由で治療強化 が困難? を目指しましょう いいえ は い <7.0% <8.0% はクリアしましょう を目標にしましょう 患者ごとのHbA1c目標値の設定因子 最も強化された やや強化された 6.0% 最も強化しない 7.0% 高いモチベーション・アドヒアランス、豊富 な知識、優れた自己管理能力、包括的な 支援システム 8.0% 低いモチベーション・アドヒアランス、限ら れた知識、劣った自己管理能力、弱い支援 システム 精神 社会経済的 低血糖リスク 低 中 高 年齢 40 45 50 55 60 65 70 75 罹病期間 5 10 15 20 併存疾患 なし 少数/軽度 複数/重度 血管病変 なし なし 心血管疾患 早期細小血管障害 進行細小血管障害 Ismail-Beigi F. et al.: Ann Intern Med 154: 554-559, 2012. 症例1の治療方針 アマリール 2mg 2x、テネリア 20mg 1x、 アクトス15mg 1x (隔日)を継続 低血糖 体重増加 浮腫 に注意 症例2.63歳、男性。2型糖尿病、結核性胸膜炎。 現病歴:平成8年に結核性胸膜炎を発症し入院した際、血糖値302mg/dl、 HbA1c 8.1%にて2型糖尿病と診断され、治療が開始された。結核性胸膜 炎は治癒し、以後、糖尿病治療にて外来通院となった。現在、ベイスン 0.6mg 3x、アマリール 2mg 2x、アクトス 30mg 1x、グラクティブ 50mg 1x、 メトグルコ 250mg 1xにて、食後2~3時間血糖値 190~240mg/dl、 HbA1c 6.2~6.3%にコントロールされている。職業(理容業)柄食事時間が 不規則となり、しばしば低血糖を自覚し常に飴玉などを用意している。また 運動は地域でソフトボールをしているがシーズンオフになると体重が増え、 HbA1cも上昇する。 現症:身長 165.0 cm、体重 62.0 kg(BMI 22.8 kg/m2)、糖尿病網膜症(-) 検査所見:尿たんぱく(-)、Hb 15.6g/dl、AST 19IU/l、ALT 17U/l、Cr 0.95mg/dl、LDL-C 143mg/dl、HDL-C 49mg/dl、TG 184mg/dl、随時血 糖 206mg/dl、HbA1c 5.8% 【質問】 今後の治療方針について教えてください。 症例2のまとめ 63歳、男性 2型糖尿病、結核性胸膜炎 糖尿病罹病期間 17年 BMI 22.8と肥満(ー) ベイスン 0.6mg 3x、アマリール 2mg 2x、アクト ス 30mg 1x、グラクティブ 50mg 1x、メトグル コ 250mg 1xにてHbA1c 6.2~6.3% 食事時間が不規則となり、しばしば低血糖を自覚 【質問】 今後の治療はどうしたらよいか 症例2に対する回答 1. GAを測定し、HbA1cの妥当性を検討すると共に、空腹 時CPRを測定して内因性インスリン分泌を評価。 2. アマリールが空腹時低血糖をきたしている原因と考え られるため、アマリールを1mgへ減量→中止するか、よ り持続時間の短いグリミクロンあるいはグリニド系薬へ 変更。グルベス配合錠も考慮。 3. メトグルコ 1Tの効果は?→中止して経過をみる。 4. アクトス 30mgの効果は?→15mgへ減量 or 中止し て経過をみる。 5. 配合錠(メタクト、ソニアス、リオベル)への切り替え。 症例3.36歳、男性。2型糖尿病、肥満症、脂質異常症、 脂肪肝、高尿酸血症 生活歴:アルコール 機会飲酒、喫煙(-) 現病歴:幼少時より肥満しており、小学6年で100kg、中学3年で120kg、高 校2年で160kgあった。平成22年11月、麦粒腫にて眼科を受診した際、初 めて糖尿病網膜症(福田分類AII)を指摘され近医受診しHbA1c 14.4%に て糖尿病と診断され、アマリール 1mg、メトグルコ 500mg、ジャヌビア 50mgが開始された。平成23年1月には体重 125.8kg(BMI 39.5)、随時血 糖 172mg/dl、HbA1c 9.1%まで改善したが、その後仕事が多忙で外食が 多くなりHbA1c 10~11%に悪化している。 現症:身長178.0 cm、体重 139.5kg(BMI 44.0 kg/m2 )、血圧 151/93 検査所見:尿たんぱく(-)、AST 63U/l、ALT 135U/l、γ-GTP 68U/l、BUN 13 mg/dl、Cr 0.73mg/dl、尿酸 9.1mg/dl、LDL-C 154mg/dl、HDL-C 48mg/dl、TG 249mg/dl、随時血糖値 276 mg/dl、HbA1c 12.6%、 GAD65抗体(-) 【質問】 今後の治療方針について教えてください。 症例3のまとめ 36歳、男性 2型糖尿病、肥満症、脂質異常症、脂肪肝、 高尿酸血症 BMI 44.0と肥満(4度) 糖尿病網膜症(+):増殖性 アマリール 1mg、メトグルコ 500mg、ジャヌビ ア 50mgでHbA1c 12.6% 【質問】 今後の治療はどうしたらよいか 症例3に対する回答 1. 糖尿病教育も含め入院加療を勧める。その上で、 インスリン治療を導入。 2. 増殖糖尿病網膜症を認めるため、緩徐な血糖コ ントロールに努める。特に低血糖をきたさないよ う注意を払う。 3. 肥満外科治療(メタボリックサージェリー)。 メタボリックサージェリー 腹腔鏡下調節性 胃バンディング術 スリーブ状 胃切除術 Roux-en-Y 胃バイパス術 (月刊 糖尿病 9, 2011) 症例3の入院後の経過 糖尿病増殖網膜症、末梢・自律神経障害、糖尿病 腎症(3期A)と診断 食事 2000kcal(IBW x 28.5)とし、経口薬を中 止して強化インスリン療法を開始。最終的に ヒューマログ(66、8、24)、ランタス(0、0、32) で退院 入院中に糖尿病教室、計量教室、個人栄養指導に 参加、体重は20日間で6kg減量 腎症に対してニューロタン25mgを開始し、2期ま で改善 今回、症例をお寄せいただいた先生方 (50音順) さかもとクリニック 坂本 晃先生 白髭内科 白髭 豊先生 千々岩医院 千々岩秀夫先生 ありがとうございました。