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第17回 市民公開がん講座 婦人科癌
第17回 市民公開がん講座 婦人科癌 市立函館病院 婦人科 馬場 剛 婦人科がんの種類 その他(絨毛癌など) 婦人科がんをみつけるために (婦人科診察) まずは腫瘍があるかどうか確認します まず 腫瘍がある どう 確認 ます ・視診 ・内診 超音波(1800円) ・超音波 ・細胞診 頸部:600円 体部:1700円 卵巣腫瘍は細胞診ができな い! 腫瘍が見つかったら? 腫瘍は良性か悪性か? 証拠固め 腫瘍は良性か悪性か?=証拠固め ・画像診断 画像診断 ・組織検査(2000~2600円) (2000 2600円) (CT:4900円、MRI:5600円) ・腫瘍マーカー(600~2000円) SCC, CA125, CA19-9, CEAなど 悪性腫瘍だった ら? 腫瘍のひろがり(進行度)と組織型で治療方針を決定 顕微鏡で見た形による分類 (組織型) どの部分の正常組織に似ているか? ど 部分 常組織 似 る (皮膚、粘液分泌腺など) 婦人科がんでは、扁平上皮癌もしくは腺癌がほとんど 子宮頸癌:扁平上皮癌>腺癌 子宮体癌・卵巣癌:腺癌>>扁平上皮癌 宮体癌 巣癌 腺癌 皮癌 扁平上皮癌:放射線が効きやすい 皮癌 放射線が効き す 腺癌:放射線が効きにくい 進行度による分類 (病期) 病期診断における3つの因子 ・ T因子:癌の発生部位の状況(大きさ、周囲への浸潤度) ・ N因子:リンパ節転移の状況 ・ M因子:遠隔転移の状況 癌の進行期が決定される 子宮頸癌 ・統計 ・原因(ウイルスと発癌) ・症状 ・診断 ・治療 ・予防(最近の話題から) 日本では 1年間に約8 000人が子宮頸癌と診断 日本では、1年間に約8,000人が子宮頸癌と診断 約 約2,400人(約7人/日)が死亡 約 が 子宮頸癌の原因ウイルスの発見者が 2008年ノーベル医学生理学賞を受 賞! 独がん研究センターのHarald Zur Hausen名誉教授 1983年にヒトパピローマウイルス(HPV)が原因であることを発見 年にヒトパピ ウイルス が原因である とを発見 HPVは性行為の始まる10-20歳代に初感染 (性交経験 ある 性 (性交経験のある女性の80%ほどに感染します) 感染 ます) 90%以上は、1~2年くらいの間に免疫学的に排除 以上は 年くらいの間に免疫学的に排除 持続感染例で変化(異形成や癌)が現れる。 HPVには高リスクと低リスクがある には高リ クと低リ クがある 100種類以上あるうちの一部(=高リスクHPV)が 癌化と関連がある。 ちなみにHPV6,11・・・尖圭コンジローマの原因 子宮頸癌は若い女性にも発生します 日本人女性 日本人女性20-29歳の癌罹患率の推移 歳の癌罹患率の推移 浸潤癌症例の年齢分布 浸潤 症 年齢分布(札医大)) 人 数 90 80 1995~1999 (N=239) 平均: 48.3 70 2000~2004 (N=253) 平均: 45.6 60 50 40 30 20 10 0 21 30 31--40 21--30 31 40 41--50 41 50 51--60 51 60 61--70 61 70 71--80 71 80 年 齢 81 81-- つまり、子宮頸癌は すべての女性に起こりうる病気です。 若いからとい て油断できません 若いからといって油断できません。 子宮頸癌は無症状のことが多い! 誰にでも起こる病気+無症状 ・・・・怖い病気? 怖い病気? 検診が有効です 検診が有効です。 早期発見できれば、子宮温存も可能です。 HPV感染から子宮頸癌への進展 には、時間がかかります。 軽度異形成 中等度異形成 高度異形成~上皮内癌 子宮頸癌の検診はそれ程痛くありません! 外来 簡単に きます 外来で簡単にできます 結果は早ければ2-3日で判明します 子宮がん検診で使う器具 宮 検診 使う器具 子宮内膜ブラシ(体部) スパーテル(頸部) 細胞像 正常例 異常(癌)例 細胞診結果(日母分類) 1~2年毎の検診 癌の病期と混同しないように! 判定 ClassⅠ ClassⅡ ClassⅢ Ⅲa Ⅲb ClassⅣ ClassⅤ 細胞所見 異型細胞を認めない 良性の異型細胞を認める 悪性を疑うが断定できない 悪性を少し疑う 悪性をかなり疑う きわめて強く悪性を疑う 悪性 精密検査の対象 推定病変 正常上皮 炎症性変化など 異形成 軽度・中等度異形成 高度異形成 上皮内癌~微小浸潤癌 浸潤癌 コルポスコピー(+狙い組織診) (2000円) 細胞診による推定病変が本当に正しいか? ⇒確認作業が必要 コルポスコピー(+狙い組織診) こんな感じで見えます 感 見 す 正常(酢酸-) 正常(酢酸+)) 異常(酢酸+)) 異常部分を狙い撃ち 診断的円錐切除術 細胞診で異常があるのに、コルポスコープで病変が見つからない 細胞診の結果(推定病変)とねらい組織診の結果が一致しない 治療 ・治療的円錐切除術 ・単純子宮全摘出術 ・準広汎子宮全摘出術(+骨盤リンパ節郭清術) ・広汎子宮全摘出術 ・放射線療法+化学療法(扁平上皮癌) 子宮頸癌治療ガイドライン 広汎子宮頸部摘出術 条件: ・子宮頸癌Ⅰa2~Ⅰb1期の症例(リンパ節転移陰性) 子宮頸癌Ⅰa2~Ⅰb1期の症例(リンパ節転移陰性) ・扁平上皮癌 HPV検診とは ・現時点でHPV(高リスク型)に感染しているか調べる検査 ・通常の癌検診と一緒にできますが、保険適応外のため、 自費診療となります。 自費診療となります 細胞診+HPV検査 細胞診異常なし HPV(-) 3年後検診 細胞診異常なし HPV(+) 6~12ヵ月後再検診 月後再検診 細胞診異常あり 精密検査 アメリカでのガイドラインより HPVワクチンについて 日本でも2006年から治験が開始・・・・現在承認申請中 半年間に3回接種 抗体産生 感染からの防御 問題点 問題点: ・すでに感染したウイルスを除去する効果はない ⇒若い世代(アメリカは11 12歳を推奨) の接種が必要 ⇒若い世代(アメリカは11-12歳を推奨)への接種が必要 ・ワクチンで防げるのは日本では6割程度 ・長期的な効果 長期的な効果 ・費用の問題(約4万円) ・親の理解 親の理解 子宮体癌(内膜癌) ・統計 ・原因・リスク因子 ・症状 ・診断 ・治療 ・予防 最近、 宮体癌 増 最近、子宮体癌は増えてきています す 日本人では子宮がんの40%以上が子宮体癌です。 (20年くらい前は約20%と言われていました) 子宮体癌は閉経前後に増加します 何故 子宮体癌が増えているのか? 何故、子宮体癌が増えているのか? 子宮体癌はエストロゲンとの関連が深い病気です 食生活の欧米化と晩婚化は、その一因となります リスク因子 ・肥満・・・・脂肪組織でのエストロゲンへの変換 組織 ゲ 変換 平均より13-14kg増えると、リスク約3倍 ・少子化・・・・エストロゲン優位な期間が延長する ゲ 優位な期 が す ・月経不順・・・・持続的な高エストロゲン環境にさらされる ・早い初経、遅い閉経・・・・52歳以降の閉経はリスク2-3倍 初経 経 歳 降 経 倍 その他、糖尿病、高血圧、甲状腺機能低下症など その他 糖尿病 高血圧 甲状腺機能低下症など (意見が分かれます) 子宮体癌は早期に発見しやす 病気です 子宮体癌は早期に発見しやすい病気です 不正性器出血・・・・90%程度のヒトに初期症状としてみ られます ⇒早く受診するため、約70%は進行期Ⅰ期の早期癌 茶色いおりもの程度の方から、たくさん出る方まで程度 はさまざまです 閉経後の出血、閉経前の繰り返す出血(とくに月経不 閉経後の出血 閉経前の繰り返す出血(とくに月経不 順の方)をみたら検診を受けましょう 子宮体癌の診断 基本は頸癌と同じです まず細胞診 怪しい場合は診断確定のため組織検査 まず細胞診→怪しい場合は診断確定のため組織検査 ①細胞診(1700円) ・子宮頸部に比べ広範囲 ・盲目的操作 盲目的操作 ・頸癌検診と比べて痛い ・判定が難しい(偽陽性が比較的多い) 判定が難しい(偽陽性が比較的多い) ②組織診(搔爬)(2600円) ( ) ・疼痛が強い(個人差があります) ・盲目的操作(狙い撃ちができない) 盲目的操作(狙い撃ちができない) ③子宮鏡(2700円) 太さ約4mm こんな感じで見えます 細胞診のできない場合、超音波検査で 細胞診のできない場合 超音波検査で 代用することがあります 子宮内膜 閉経後で4-5mm以上を異常と判断 子宮体癌の治療 基本は手術:子宮全摘出術+両側付属器摘出術+リンパ節郭清 リスク因子があれば、化学療法を追加 放射線療法は効果が不十分なことが多い ・・・・腺癌が圧倒的に多いため 腺癌が圧倒的に多いため 特殊な体癌 乳癌・大腸癌の既往・・・・Lynch症候群 タモキシフェン(乳癌治療薬)使用中 多のう胞性卵巣症候群 エストロゲンのみを用いたホルモン補充療法 子宮体癌の予防 ・有効な検診プログラムが存在しない 有効な検診プ グ が存在 な ⇒出血をきたした時点で早期に受診する ・体重コントロール 体重 ・経口避妊薬の使用:発生を約50%減少させる (約3000円/月) ・月経不順の改善 子宮体癌の妊孕性温存療法 進行期が0~Ⅰa期の高分化類内膜腺癌に限って、 黄体ホル ン療法による子宮温存の可能性がある。 黄体ホルモン療法による子宮温存の可能性がある。 ただし、 ・一時的に改善しても再発することが多い 時的に改善しても再発することが多い ・治療効果が得られず病状が悪化する場合がある ・ホルモン療法の副作用(血栓症・肝機能障害など) 加えて 手術を選択すると ほぼ100%治癒することを考慮 手術を選択すると、ほぼ100%治癒することを考慮 卵巣癌 ・統計 ・リスク因子 ・症状 ・診断 診断 ・治療 ・予防 予防 ・最近のトピック(子宮内膜症の癌化) 卵巣癌も増えています! 卵巣癌のリスク因子 確立されたリスク因子としては ・卵巣癌の家族歴・・・・遺伝性乳癌卵巣癌症候群 その他考えられる要因としては ・未産婦 ・骨盤内炎症性疾患 ・ライフスタイルの欧米化 卵巣癌には特徴的な症状がありません 初期には無症状 進行して腫瘍が増大 腹水貯留 腹部膨満感、 進行して腫瘍が増大・腹水貯留→腹部膨満感、 腫瘤触知、頻尿(膀胱圧迫症状) 婦人科検診で偶然見つからない限り、 進行した状態で発見される とが多い 進行した状態で発見されることが多い (約7割は進行癌) 婦人科癌の進行期分布 他の癌に比べて卵巣癌は圧倒的に 他の癌に比べて卵巣癌は圧倒的に3~4期が多い 期が多い 卵巣癌の診断 子宮がんと異なり、細胞診や組織診ができない(直接腫 瘍部分を取り扱うことができない) ⇒画像診断(超音波、CT、MRIなど)が主 その他 腫瘍マ カ 検査など その他、腫瘍マーカー検査など 確定診断は手術(摘出物)の病理検査で 卵巣癌の治療 ・まずは手術(単純子宮全摘出術+両側付属器摘出術 +骨盤・傍大動脈リンパ節郭清術+大網切除術) ・化学療法を追加 (腺癌がほとんど=放射線は効果不十分) 卵巣癌の治療方針 卵 卵巣癌に対する分子標的薬 す 標 薬 Bevacizumab (一般名:ベバシズマブ、商品名:アバスチン) 血管内皮増殖因子(VEGF)の活性を抑制 米国・・・大腸癌 肺癌 乳癌 米国・・・大腸癌、肺癌、乳癌 日本・・・大腸癌のみ 卵巣癌においても有効性が示された 欠点:ときに腸管穿孔、動脈血栓症など重篤な副作用あり 増殖因子 受容体 抗癌剤の作用 する場所 分子標的薬の 作用する場所 核 核 癌細胞 癌細胞 卵巣癌の予防 ・有効な検診プログラムが存在しない ・生活習慣の改善 ・経口避妊薬の使用・・・・服用期間が長いほどリスク減少 (5年で3割、10年で4割、15年で5割減) 子宮内膜症は卵巣癌の原因となる! ・チョコレート嚢腫を持つ人の0.72%で卵巣癌が発生 (持たない人の発生率は0.012%。単純に考えて約60倍) ・平均約10年くらいの経過後に発症 ・明細胞癌(抗癌剤が効きにくい)が多い⇒発症すると治療困難 リスク因子 40歳以上で4-6cm以上の嚢腫 歳以上で 以上の嚢腫 年齢に関係なく10cm以上の嚢腫 手術を考慮 最後 最後に 症状がなくても1~2年に1回は検診を受けましょう 細胞診や超音波検査は簡単に受けられます 早期発見が重要です 気になる症状があれば すぐ受診しましょう 気になる症状があれば、すぐ受診しましょう 癌の発信するサインを逃さずに (出血は重要なサインです) 癌になりにくい身体作りも重要です 月経不順・肥満などを改善することで、リスクは低下します チョコレート嚢腫も積極的に手術?