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山口県総合周産期母子医療センターの空調設備

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山口県総合周産期母子医療センターの空調設備
―― 実 施 例 ――
山口県総合周産期母子医療センターの空調設備
ñ朝日工業社 中国支店 技術部
瀬 戸 邦 博
■キーワード/
■キーワード/病院・空調設備
1.はじめに
2.建物概要
「周産期(しゅうさんき)
」という表現は,一般にはな
建 物 名 称 山口県立総合医療センター 総合周産期
じみが薄いが,赤ちゃんが生まれる前後の時期を指す言
母子医療センター
葉である。山口県では,赤ちゃんを望むすべての親のた
所
在
地 山口県防府市大字大崎
めに「山口県周産期医療システム基本構想」を策定し,
建
築
主 山口県
その中核となる「総合周産期母子医療センター」が,山
用 途 病院
口県立総合医療センター内につくられた。
産科…12床
総合周産期母子医療センターには,子どもをなかなか
MFICU
(母体胎児集中治療室)
…6床
授からない人のための不妊治療部門,子宮の中で赤ちゃ
NICU
(新生児集中治療室)…9床
んが育ち,生まれることを助ける産科部門,生まれてき
GCU
(新生児後方病室)…15床
た赤ちゃんを治療して両親の待つ家に帰れるようにする
敷 地 面 積 61,089.0fl
新生児部門がある。
既存建築面積 13,338.3fl
産科部門・新生児部門は,平成18年1月にオープン
既存延床面積 15,178.1fl
し,不妊治療部門は,旧NICUを改修し,平成18年4月
増築延床面積 01,848.6fl
にオープンをし,本格稼働となった。
構 造 鉄骨鉄筋コンクリート造
山口県立総合医療センターは,診療科目22科,病床
階 数 地上4階 塔屋1階
数,一般490床・感染14床の山口県の中核をなす総合病
院である。
(1・2階は既存建物,1997年建築)
設 計 ・ 監 理 山口県土木建築部建築指導課
委託設計・監理 ñ横河建築設計事務所
施 工 建 築 清水建設・澤田建設共同企業体
電 気 ñ中電工
機 械 朝日工業社・白上水道共同企業体
写真−1 建物外観
ヒートポンプとその応用 2006.11.No.71
― 32 ―
―― 実 施 例 ――
写真−2 室外機置場
写真−4 NICU(クラス10,000)
3.空調設備概要
3−1 熱源設備
基本的に既設熱源を使用し,中間期に冷房・暖房を必
要とするエリアにおいては,個別に空気熱源ヒートポン
プエアコンにて対応している。
3−2 空調設備
外調機+空気熱源ヒートポンプエアコン
(ビルマルチ)
方式,外調機+ファンコイルユニット方式,単一ダクト
方式(空気熱源ヒートポンプエアコン床置ダクト型)
。
加湿方式は,すべて間接式蒸気発生器にて行う。
次の室が,エアコンによるクリーンルームになってい
写真−5 陣痛分娩室
る。
A
MFICU
(母体胎児集中治療室)
:
B
分娩手術室,NICU(新生児集中治療室)
:
3−4 自動制御
天井カセット型クリーンエアコン クラス10,000
外調機の温度,露点温度制御,単一ダクト方式の室の
湿度制御を行っている。単一ダクト方式の室の温度制御
床置ダクト型パッケージエアコン クラス10,000
C
は,エアコンのサーモにて行っている。
GCU
(新生児後方病室):
床置ダクト型パッケージエアコン クラス100,000
4.空調設備
3−3 換気設備
山口県立総合医療センターは,1983年に新築され,
外調機+中央排気ファン
(フロアごとの系統),全熱交
換換気扇,局所排気ファンとなっている。
1997年に救急棟(2階建て)が増築された(1階救命救
急・内視鏡科,2階山口県立大学看護学部)。救急棟は,
当初より5階建てとして計画されており,総合周産期母
子医療センターは,その救急棟の3・4階部分に増築さ
れた
(5階は建設せず)。1・2階建設時の計画では,3
∼5階部分は病室の予定であった。病室は,冷温水によ
るFCUにて空調を行っており,将来対応として,冷温水
配管については,分岐取り出しバルブが用意されていた
が,冷水・温水系の配管は,救急棟に配管自体がなかっ
た。そのため,中間期に空調が必要なエリアには,空気
熱源ヒートポンプエアコンが採用されている(1階も同
様)
。
4−1 FCUとエアコンの使い分け
A
写真−3 分娩手術室
(クラス10,000)
FCU:病室,カンファレンス,廊下,スタッフの休
憩室,更衣室など
― 33 ―
ヒートポンプとその応用 2006.
11.
No.71
―― 実 施 例 ――
R
ACP
302
R
ACP
301
ACP
401
ACP
404
ACP
403
ACP
304
ACP
303
R
R
ACP
305 (病院工事)
R
ACP
402
R
F
×3
R
RFL
機械室(2)
AAA
CWR-4
CW-4
CWR-4
T
CWR-4
CW-4
CWR-4
R
SV×2
※2
D
※2
(病院工事)
男性 検査室 母児室
更衣室
(家族指導)
NICU
4FL
GCU
待合
調乳室 リネン庫 もく浴室 コーナー
隔離室 面談室 事務室
廊下
FCU
2K
器材
洗浄室
NS休憩室
FCU
4K
×2
×2
スタッフ室
FCU
2K
ACP
403A
ACP
403A
ACP
403A
FCU
3K
FCU
3K
×2
FCU
3K
D
S
SR
CW-4
CWR-4
CWR-4
FCU
4K
R
FCU
3K
D
ACP
305
R
R
FCU
2K
D
ACP
402
流し台に放流
ACP
404
R
W-4
WR-4
R
R
SR
S
”
●
機械室(3)
D
4,200
R
D
ACP
401
GV×2
CWR-4
CW-4
CWR-4
×2
図書・ 仮眠室 仮眠室 新生児 女子
資料室 (1) (2) 当直室 更衣室 MW休憩室 カンファレンス室
機械室(1)
D
機械室
CWR-4
CW-4
CWR-4
T
R
3,900
CWR-4
CW-4
CWR-4
R
R
BV×2
CWR-4
CW-4
CWR-4
R
SV×2
T
※1
※1
ACP
303A
ACP
303A
ACP
303A
ACP
303A
ACP
303A
ACP
303B
ACP
304B
ACP
304B
3FL
ACP
304D
ACP
304C
FCU
3K
待合
スタッフステーション 受付 コーナー
ACP
304A
廊下
FCU
2K
FCU
2K
FCU
2K
FCU
2K
FCU
2K
FCU
2K
FCU
2K
FCU
2K
FCU
2K
FCU
2K
FCU
2K
FCU
2K
産科 病室(1)
病室(3)
病室(5)
病室(7)
病室(9)
病室(11)
当直室
病室(10)
病室(12)
病室(2)
病室(4)
病室(6)
病室(8)
D
S
SR
CW-4
ACP
303A
CWR-4
FCU
2K
D
ACP
304B
D
ACP
302A
陣痛分娩室(2)
陣痛分娩室(1)
準備室
器材コーナー
MFICU(2)
MFICU(4)
MFICU(6)MFICU
分娩手術室(LDR) (LDR) 前室 もく浴室
MFICU(1)
当直室 薬品庫 内診室
MFICU(3)
MFICU(5)
D
ACP
302A
D
W-4
WR-4
SR
S
D
ACP
302A
D
ACP
301
ACC
301
機械室
図−1 配管系統図
B
エアコン:クリーンルーム(分娩手術室,MFICU,
NICU,GCU)
,当直室,仮眠室,診察室,陣痛分娩室,
スタッフの作業エリア(スタッフステーション,沐浴
室など)
4−2 エアコンによるクリーンルームの方式
A
MFICU:天井カセット型クリーンエアコン
B
その他:床置ダクト型パッケージエアコンの吸込側
にプレフィルタ+中性能フィルタ,室内天井面に
HEPAフィルタを設置。RA側は,専用のファンを設置
している。
温湿度制御は,天井カセット型クリーンエアコンでは,
リモコンサーモおよび外調機での露点制御を行ってい
写真−6 分娩手術室用機械室
る。
床置ダクト型パッケージエアコンでは,温度は,本体
サーモを使用。ただし,外気を取り入れているため,外
グがあり,一時的に室内が負圧となる状況が見られた。
分娩手術室では,当然開腹手術を行うことがあり,取
気取り入れ部より前まで,延長をしている。湿度は,
り出した新生児が超未熟児の場合,感染の問題も懸念さ
RAダクトに挿入型ヒューミを使用している。
加湿は,熱源からの生蒸気の噴霧ではなく,間接式蒸
れる。また,未熟児は,手術室まで移動できないことも
あり,NICU内での手術が発生する。
気発生器にて行っている。
そこで,
NICU・GCUの室内条件について,設計条件では,夏
…温度26.0℃,湿度50%,冬…温度26.0℃,湿度55%と
A
デフロスト時でも,送風を停止しないようにする。
なっていたが,医師の要望は,温度26℃以上,湿度55
B
冷風対策として,温水コイルを組み込み,デフロス
∼60%ということであった(新生児のため)。実際の設
ト信号を受けて,温水コイルにて温度制御を行う。
定は,温度27℃,湿度57%としていたが,この条件で
という対策をとった。温水コイルには,冷温水配管から
は,エアコンの特性上,設定値に対する制御幅が大きい
温水を供給するようにしている。
ため,クレーム対象となる恐れがあり,空調方式の選定
5.おわりに
が重要であることを痛感した。
今回の工事は,1階が救命救急,2階が山口県立大学
エアコンにてクリーンルームの空調を行うにあたり,
「デフロスト時の送風停止対策をどのようにするか」と
看護学部の講義室になっており,常時使用しながらの工
いう問題があった。デフロスト時は,室内機の送風が停
事であったが,無事に無事故・無災害で終了することが
止するため,短時間ではあるが清浄度が悪化してしまう。
できました。これも,関係者各位のご協力とご指導のた
また,RAファンの発停は,室内機の送風信号と連動
しており,RAファンの運転停止まで,多少のタイムラ
ヒートポンプとその応用 2006.11.No.71
まものと心から感謝しております。紙面をお借りしまし
てお礼申しあげます。
― 34 ―
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