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万惣尾道店の氷蓄熱システム
―― 実 施 例 ―― 万惣尾道店の氷蓄熱システム !中電アクセス 事業開発部 !中電工 尾道営業所 桝 谷 暹 山 本 則 光 ■キーワード/エコ・アイス・店舗 構 造 鉄骨造 地上1階 1.はじめに 設計監理 1杉田三郎建築設計事務所 空調施工 1中電アクセス 今も市街地に25の古寺が点在する街,多くの文人が 1中電工 尾道営業所 訪れ住んだ街,絵画の題材や映画・TVの舞台になって 工 期 平成12年8月∼平成12年11月 きた街,いろいろな表情をもった街,尾道。そんな尾道 の街に1975年の創業以来26年間,ボックスストアや 3.氷蓄熱システムの基本設計 SSM(スーパースーパーマーケット)などの店舗を展開し 氷蓄熱システムについての基本設計コンセプトは,次 てきた㈱万惣が「万惣尾道店」をオープンさせた。 「安くておいしい,しかも健康によくて便利な商品, のとおりである。 ① 電力使用量を昼間から夜間へ蓄熱運転による負荷移 地球にやさしい商品を毎日提供し続ける」という同社の 行を行い,電力の負荷平準化に努める。 企業理念にベストマッチする空調システムはエコ・アイ ② 電力の負荷平準化により,トータルとしての発電効 スであるとの観点に立ち,大型のスーパーマーケットの 率のアップをはかる。 売り場全域をまかなう氷蓄熱空調システムを計画,施工 ③ 熱源機器容量の小型化により,受電設備費および契 したのでここに紹介する。 約電力の低減をはかる。 2.建物概要 ④ 昼間に使用する熱を夜間の安価な電力を使って蓄え 建物名称 1万惣 尾道店 るため,電力使用料金の低減がはかれる。また契約電 所 在 地 広島県尾道市栗原町 力が小さくてすみ,毎月の基本料金の低減化がはかれ 建物用途 スーパーマーケット るため,ランニングコストの低減ができる。さらに蓄 延床面積 2,957g 熱ピーク調整制度の利用による一層の電力料金の低減 写真−1 建物外観 ヒートポンプとその応用 2001.7.No.55 ―2― ―― 実 施 例 ―― 化がはかれる。 4.空調設備概要 ⑤ エコ・アイスの運転方式は,大別してピークカット タイプ(冷媒ポンプ方式),ピークシフトタイプ(冷媒 4−1 主要空調機器 過冷却方式),ピークシフト・ピークカット併用タイ 氷蓄熱ヒートポンプエアコン プの3種類に分類できるが,当事例ではピークカッ 室外機 (冷) 28.0kW (暖) 25.0kW ×12台 ト+ピークシフト機を導入した。図−1に運転電力量 室内機 天井カセット形 ×24台 比,図−2にピーク時の炭酸ガス排出低減率を,また (冷) 14.3kW (暖) 12.5kW 表−1にランニングコストメリットを示す。 蓄熱槽 蓄熱量 447MJ ×12台 非蓄熱ヒートポンプエアコン (%) (℃) 電 100 力 80 量 比 60 非蓄熱システム ;;;;;;;;;;;;;;;;; ;;;;;;;;;;;;;;;;; ;;;;;;;;;;;;;;;;; ;;;;;;;;;;;;;;;;; ;;;;;;;;;;;;;;;;; ;;;;;;;;;;;;;;;;; ;;;;;;;;;;;;;;;;; ;;;;;;;;;;;;;;;;; エコ・アイス 夜間 外 気 40 20 0 ピークシフト率 20% 2 4 6 8 10 12 14 時 刻 16 18 20 9.0kW × 2台 5.0kW (暖) 5.6kW × 1台 (冷) 2.5kW (暖) 3.4kW × 1台 (冷) 8.0kW (暖) 9.0kW × 2台 天井カセット形(防災センター) (冷) 5.0kW (暖) 5.6kW × 1台 天井カセット形(刺身室) 夜間 0 8.0kW (暖) (冷) 室内機 天吊り耐油形(惣菜作業場) 夜間 昼間 室外機 (冷) (冷) 22 2.5kW (暖) 3.4kW × 1台 ピークカット率 90% エコ・アイス ・ピーク電力量 80% ・ピーク発生時刻 17:00 非蓄熱システム ・ピーク電力量 100% ・ピーク発生時刻 15:00 図−1 運転電力量比 ;;;;;;;;;;;;;;;;; ;;;;;;;;;;;;;;;;; ;;;;;;;;;;;;;;;;; ;;;;;;;;;;;;;;;;; ;;;;;;;;;;;;;;;;; ;;;;;;;;;;;;;;;;; ;;;;;;;;;;;;;;;;; ;;;;;;;;;;;;;;;;; 非蓄熱システム (%) 100 80 60 ピーク炭酸 ガス低減率 41% エコ・アイス 昼間 夜間 40 20 0 0 2 夜間 4 6 8 10 12 14 16 18 20 22 写真−2 売り場 時 刻 エコ・アイス ・ピーク発生時刻 17:00 ・ピーク炭酸ガス排出低減率 41% 非蓄熱システム ・ピーク発生時刻 14:00 図−2 ピーク時の炭酸ガス排出低減率 表−1 ランニングコストメリット指数比較 消 費 量 室 室 外 内 計 機 機 基 本 料 金 (業務用電力) 夏 季 従 量 料 金 その他季従量料金 金 夜 間 従 量 料 金 ランニングコスト計 電 力 料 非 蓄 熱 ビル用マルチ方式 100 − 100 エ コ ・ ア イス ビル用マルチ方式 66 − 66 100 66 100 71 100 69 (非蓄熱ビル用マルチ方式を100とした) 写真−3 室外機まわり ―3― ヒートポンプとその応用 2001.7. No.55 ―― 実 施 例 ―― エコ・アイス10馬力システム(標準形)×2 エコ・アイス10馬力システム(低騒音形)×10 ACP 2 ACP 1 蓄熱槽 ACP 4 ACP 3 ×2 蓄熱槽 RF 天井カセット形室内機×4台 天井カセット形 室内機×1台 天井カセット形室内機×20台 防災センター 天吊露出形 室内機×2台 売 場 惣菜作業場 1F 図−3 系統図 ACP 1 ×2 ACP 3 ×2 冷媒配管 冷媒配管 男子トイレ ACP 冷媒配管 冷媒配管 5 ACP 1 ×2 ポンプ室 女子トイレ 排水配管 トイレ 身障者用トイレ UP 排水配管 空箱置場 リサイクル回収箱置場 売場 倉庫 惣菜作業場 機械置場 倉庫1 排水配管 冷蔵庫 冷蔵庫 (C) (C) 売場 (C) ゴミ置場 RS×12 冷蔵庫 RS 倉庫2 防災センター (休憩室) 事務室 カート 置 場 排水配管 ACP 1 ACP 2 ×2 ACP 1 ×5 ACP 4 図−4 1階平面図および屋上室外機置き場 4−2 空調方式 5.おわりに 当建物では,図−3,図−4に示すとおり店舗の大 部分を占める売り場エリアに氷蓄熱空調システムを採 本件はスーパーマーケットの店舗部分へ大々的に(延 用している。 床面積の8割超,約2,480g)氷蓄熱空調システムを採用 ビルマルチタイプに比べてイニシャルコストが低減 した例である。長引く消費不況のなかで大型スーパーや でき,大空間に向く店舗用同時発停ツインタイプ12系 ショッピングモールなどの建設が続く現在,ヒートポン 統とし,万が一の故障にも追従できるように配慮した。 プを利用した氷蓄熱システムはランニングコスト低減に エコ・アイスの夜間蓄冷運転時の騒音については12 寄与し,クリーンで効率のよい空調システムとして今後 台の室外機の配置を検討し,騒音計算の結果,距離減 一層の普及が期待される。 衰により隣地境界線上で運転騒音45dB以下をクリアで 最後に,施工にあたりお世話になりました建築主なら きた。 ヒートポンプとその応用 2001.7.No.55 びに関係各位の方々へお礼申しあげます。 ―4―