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国際航空と競争政策 - 株式会社ANA総合研究所

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国際航空と競争政策 - 株式会社ANA総合研究所
市 場 化と公 共関与
S p e c i a l Fe a t u r e
3
市 場 化と公 共関与
国際航空と競争政策
―独占禁止法適用除外制度の見直しに関する議論と
今後の課題
ジョーンズ・デイ法律事務所
弁護士
宮川 裕光
はじめに
運賃協定、アライアンス加盟航空会社間で設定され
2007 年12月5日、公正取引委員会は、政府規制
るアライアンス運賃協定等について独占禁止法の適
等と競争政策に関する研究会(規制研)の取りまと
用除外が認められている。この適用除外制度につい
めた「国際航空市場の実態と競争政策上の課題に
ては、1997 年および1999 年の見直しにより範囲の
ついて―国際航空協定に関する独占禁止法の適用
限定等が行われてきたが、諸外国においても競争法
除外制度の在り方を中心として―」と題する報告書
の適用除外が認められていたこと等を理由として
(規制研報告書)を公表した。そして、その内容を踏
適用除外制度それ自体は今日まで維持されてきた。
まえ、現行の国際航空協定に関する独占禁止法の適
しかしながら、最近では、EUおよび米国等において
用除外制度を維持する合理的な理由を説明するこ
航空市場の自由化や適用除外制度の見直しが進め
とは困難であり、国土交通省に対しても適用除外制
られており、こうした状況を背景として、公正取引委
度の抜本的な見直しを行うことを求めたとの内容の
員会においても適用除外制度の抜本的見直しが必
「国際航空協定に関する独占禁止法の適用除外制度
要との結論に至ったものと考えられる。但し、今般
についての考え方」を発表した。
の規制研報告書および公正取引委員会の考え方の
現在、国際航空協定に関しては、航空法第110 条
公表により、直ちに適用除外制度の見直しが実現す
において、国土交通大臣の認可を受けて行う国際運
るものではなく、今後は国土交通省において航空法
賃協定等については、不公正な取引方法を用いる場
改正の要否を含めた検討が行われることとなる。
合および一定の取引分野における競争を実質的に制
独占禁止法は、価格カルテル等の競争を制限する
限することにより利用者の利益を不当に害すること
行為を禁止することにより、市場における公正かつ
となる場合等を除き、独占禁止法は適用されない旨
自由な競争の促進、ひいては、一般消費者の利益お
が規定されている。そして、世界各国の航空会社を
よび国民経済の民主的で健全な発展を図ることを
構成員とする国際航空運送協会(IATA)において
目的とした法律である。そのため、今回の独占禁止
協議、決定される運賃協定等、日本の指定航空会社
法適用除外制度の見直しの議論についても、国際航
と相手国の指定航空会社の間で合意されるキャリア
空市場における公正かつ自由な競争の促進にはどの
18 ていくおふ . Spring 2008
国際航空と競争政策 ― 独占禁止法適用除外制度の見直しに関する議論と今後の課題
ような競争政策上の制度が必要であるのかという観
格協定)刑事事件最高裁判所判決では、独占禁止法
点からの検討が必要不可欠である。そこで、本稿に
の直接の保護法益は自由競争経済秩序であるが、その
おいては、独占禁止法の目的、適用除外制度の概要
究極の目的は「一般消費者の利益を確保するとと
と見直しの経緯、独占禁止法の基本的な考え方およ
もに、国民経済の民主的で健全な発達を促進する」
びその適用の具体例について概観した上で、国際航
ことにあるとの考え方が明らかにされている。
空市場への独占禁止法適用上の問題点について、主
ところで、独占禁止法が促進する自由な競争に
に現在の国際航空市場における競争の本質はどのよ
基づく経済活動が、一般消費者の利益や国民経済
うなものであるのかという点に着目しながら検討し
の発展等の本来期待される効果を実現し得ない場
てみたい。
合もある。例えば、電力やガス等の公益事業につい
ては安定的かつ公平なサービスの提供が要請され、
独占禁止法の目的と適用除外制度
また、小規模事業者や知的財産権を保護することも
産業政策上重要である。そこで、こうしたさまざま
な政策目的を達成するために、独占禁止法の制定当
且つ自由な競争を促進し、事業者の創意を発揮させ、
初より、特定の行為については独占禁止法の適用を
事業活動を盛んにし、雇傭及び国民実所得の水準を
排除するという適用除外制度が設けられ、不況カル
高め、以て、一般消費者の利益を確保するとともに、
テル(旧第 24 条の3)および合理化カルテル(旧第 24
国民経済の民主的で健全な発達を促進すること」で
条の4)等の独占禁止法上の適用除外規定に加え、
あると規定する。そして、1984 年の石油カルテル
(価
独占禁止法適用除外法および航空法を含めた個別
の法律に基づく適用除外制度が創設された。
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独占禁止法第1条は、同法の目的について、
「公正
しかしながら、適用除外制度については、①特定
の産業や既存の事業者を保護するものである、②非
効率な企業を保護することにより経済の停滞を招く、
③競争制限的行為が不当に波及する等の弊害が指
摘され、経済の国際化や規制緩和の推進という政策
にも反する―との批判が強まった。そのため、1990
年代より適用除外制度の見直しが進められ、独占
禁止法上の適用除外規定の削除、独占禁止法適用
除外法の廃止、個別法による適用除外制度の整理
が行われてきた。
国境を越えた経済活動がますます進む中で、構造
改革による国際競争力の強化は重要な要請である。
そのため、適用除外の是非や適用範囲の見直しを継
続する一方、独占禁止法の適用による競争原理の導
入を推進するという傾向は、今後も継続するものと考
えられる。
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市 場 化と公 共関与
独占禁止法の基本的な考え方およびその適用に関
する具体的事案
仮に、現在の適用除外制度の見直しにより国際航
空協定に対しても独占禁止法が適用されるものと考
えた場合、例えば、IATA協定やキャリア運賃協定
については、市場で競争関係にある航空会社間の合
意として価格カルテル等を規制する不当な取引制限
の禁止との関係が問題となる。また、アライアンス
協定については、競合企業間における経営資源の相
互補完という側面において合併等の企業結合規制の
観点から問題点を分析することができる。そこで、
以下においては、不当な取引制限の禁止および企業
結合規制に関連して、独占禁止法の考え方およびそ
の具体的事案への適用について検討する。
まず、一定の取引分野は、取引の対象となる商品
役務の範囲(製品市場)および取引が行われる地域
■一定の取引分野における競争の実質的制限
の範囲(地理的市場)
を基準として、基本的には需要
不当な取引制限の本質は、複数の事業者間の協調
者にとっての商品選択の代替性、すなわち、商品A
行動であり、合併等の企業結合の規制は、複数の企
の価格が引き上げられた場合に需要者が商品Aに
業間に組織上の結合関係が形成されることにより市
代えて商品Bを購入するかどうかという観点から分
場構造が反競争的に変化することを防止しようとす
析され、その程度が大きければ商品Aと商品Bは同
るものであるが、いずれの行為についても、
「一定の
一の製品市場に含まれる。例えば、東京―フランク
取引分野における競争の実質的制限」という概念が
フルト便の航空運賃が引き上げられた場合に、需要
要件とされている。
者が東京―ミュンヘン便に乗り換える程度が大きい
まず、
「一定の取引分野」とは、競争が行われる場
(市場)であり、需要者と当該需要者に対する同種
と判断されれば、2つの路線は同一の製品市場を構
成する。
また、必要に応じて供給者にとっての代替性、
または類似の商品役務の供給者により構成される。
すなわち、商品Aの価格引上げに対して他の商品の
競争制限の有無を判断するについては、その前提と
供給者が商品Aの供給を開始する可能性の程度も
して、どの範囲で競争が行われているのかを画定し
考慮される。地理的市場についても、ある商品につ
なければならないのである。一定の取引分野の画定
いて需要者が A地域における価格引上げに対応し
については、公正取引委員会が公表している「企業
てB地域の供給者から当該商品を購入することが予
結合審査に関する独占禁止法の運用指針」
(企業結
測される場合、両地域は同一の地理的市場に属する
合ガイドライン)において、その考え方が詳細に説明
ものと判断され、供給者にとっての代替性について
されている。
も製品市場と同様の分析が行われる。
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国際航空と競争政策 ― 独占禁止法適用除外制度の見直しに関する議論と今後の課題
次に、
「競争の実質的制限」については、1951年の
東宝・スバル事件東京高等裁判所判決において、特
問題となり得る。
また、
「標準化に伴うパテントプールの形成等に
定の事業者が、その意思で、ある程度自由に、価格、
関する独占禁止法上の考え方」では、標準化活動に
品質、数量、その他各般の条件を左右することに
ついて、製品の仕様・性能等の共通化により参加者の
よって、市場を支配できる状態をいう、との考え方
事業活動に一定の制約を課すものではあるが、製品
が示されており、企業結合ガイドラインにおいても
間の互換性の確保により市場の迅速な立上げや需要
同判決の考え方が引用されている。この競争の実質
の拡大を図り、消費者の利便性向上に資する面も
的制限の要件については、市場支配力がどの程度ま
あり、活動自体が直ちに独占禁止法上問題となるも
で形成された場合に違反行為が成立するかという
のではないと述べられている。さらに、企業結合に
点が問題となるが、その判断基準は規制対象行為に
ついては、①当事会社グループの市場における地位
応じて個別に検討されなければならない。
および競争者の状況、② 取引実態等、③輸入、参入
および隣接市場からの競争圧力等、④ 効率性および
制約を加えて市場における競争を直接侵害する行為
当事会社グループの経営状況等の各要素が総合的
であり、協定当事者の市場シェアのみならず、他の
に勘案される。
事業者が追随することによって市場における価格
以上のように、独占禁止法の適用については、どの
を左右し得る状況等が認められるかどうかにより、
ような範囲で競争が行われているのか、そして、当該
競争の実質的制限の成否が判断される。一方、同じ
行為により市場支配力が形成されるのか、という一定
競争者間の共同行為であっても、共同研究開発や標
の取引分野の画定および競争の実質的制限の認定が
準規格の策定作業等については、生産・流通の合理化
極めて重要な問題となるのである。
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や効率性の向上による競争促進効果も認められる。
公正取引委員会は、
「共同研究開発に関する独占禁止
法上の指針」
(共同研究開発ガイドライン)において、
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例えば、価格カルテルは、各事業者の価格設定に
■ 競争の範囲の画定
市場で行われている競争の範囲を意味する一定
共同研究開発による研究開発コストの削減や技術の
の取引分野は、業界や商品毎に固定的に画定される
相互補完等の競争促進的な効果を認めた上で、参加
ものではなく、取引の対象、地域、態様等に応じて
者の当該製品の市場シェアの合計が 20%以下で
判断される(社会保険庁発注シール談合刑事事件
ある場合には、通常、独占禁止法上問題とはならず、
東京高等裁判所判決)
。また、一定の取引分野は、
市場シェアの合計が 20%を超える場合であっても、
ある特定の商品役務の範囲または地理的範囲につい
参加者の数、研究の性格、共同化の必要性等を総合
て成立するとともに、それよりも広い範囲または狭
的に勘案して競争制限効果の有無を判断するとの
い範囲についても重層的に成立し得る(企業結合ガ
考え方を明らかにしている。但し、共同研究開発が
イドライン)
。不当な取引制限の場合、一定の取引
業界における統一規格や標準化につながる等の当
分野は、基本的に協定の対象となる競合商品または
該事業に不可欠なものである場合に、ある事業者
役務の範囲と合致するものと考えられるが、企業結
が活動への参加や成果の利用を制限されて市場か
合については、競争制限効果の有無を判断する前提
ら排除されるおそれがあるときには、独占禁止法上
として、どの範囲で一定の取引分野を画定すべきか
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市 場 化と公 共関与
が重要な問題となる。
パソコンメーカーは全世界における需要を本社で一
この点、日本航空と日本エアシステムの事業統合
括して調達していること、光ディスクドライブメー
の事案において、公正取引委員会は、国内航空旅客
カーは供給する製品について世界的に統一価格を設
運送の事業分野に加えて、羽田空港および伊丹空港
定していること等の事情から、光ディスクドライブ
発着の各航空旅客運送の事業分野および国内各路線
の販売については世界的な市場が形成されており、
の事業分野について、それぞれ一定の取引分野を画
世界市場における競争の状況が日本国内にも反映さ
定した。すなわち、国内航空市場全体における競争
れていると判断されたのである。
のみならず、羽田、伊丹という混雑空港発着の路線
および国内各路線のそれぞれにおける航空会社間の
■ 競争制限の認定
競争を認めたのである。また、大阪商船三井とナビッ
一定の取引分野が画定されると、そこで事業活動
クスラインの合併の事案においては、定期船による
を行う競争者の数および市場シェア等の競争制限
輸送と不定期船による輸送とでは契約形態が異な
効果の有無を判断するために必要な情報が明らかと
ること、輸送される貨物の種類ごとに商慣行に差異
なる。そして、共同行為や企業結合の結果として市
があること等を根拠として、日本と外国間の不定期
場支配力が形成される場合には、基本的に競争を実
船による輸送について、鉄鉱石、石炭、チップ、原油
質的に制限する行為として独占禁止法違反が認定
等の貨物の種類ごとに一定の取引分野が成立するも
されることになる。
のと判断された(平成10年度企業結合事例集事例6)
。
ところで、形式的には競争の実質的制限と考えられ
さらに、阪急ホールディングスによる阪神電鉄の株
る行為であっても、技術革新の促進、効率性の向上
式取得の事案では、両社の競合路線のうち、乗客に
等の競争促進効果から独占禁止法上問題なしと判断
よる路線選択の観点から、徒歩15分以内で乗換え
される場合もあり、特に知的財産権に関わる共同研究
可能な駅を結んだ10区間をもって一定の取引分野が
開発や標準化活動については、公正取引委員会の公
画定された(平成18年度企業結合事例集事例12)
。
表するガイドライン上においてもその競争促進効果
次に、地理的市場については、日本国内のみなら
が広く認められていることは前述のとおりである。
ず国境を越えた国際市場を画定することの可否が議
例えば、携帯電話については、アナログ方式の第
論されてきたが、2007 年3月28日の企業結合ガイ
一世代およびデジタル方式の第二世代を経て、現在
ドラインの一部改正において、内外の需要者が内外
では高速且つ大容量の通信を可能とする第三世代
の供給者を差別することなく取引しているような場
の通信規格へと移行しているが、この第三世代通信
合には、国境を越えて地理的範囲を画定し得ること
については世界中のどこでも利用できるようにする
が明記された。
ことを目的として規格の標準化作業が行われてきた
この点については、企業結合ガイドラインの一部
(
「IMT-2000」
)
。公正取引委員会は、IMT-2000 に
改正に先立ち、ソニーとNECによる光ディスクドラ
基づく第三世代通信規格に関して日本、韓国および
イブ事業の統合の事案において、すでに世界全体を
欧州の通信機器メーカーおよび通信事業者等が特許
1 つの市場とする考え方が採用されていた(平成1 7
権のライセンスシステム
(
「3G特許プラットフォーム」
)
年度企業結合事例集8)
。すなわち、需要者である大手
を構築することの可否について、特許権の利用者が
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国際航空と競争政策 ― 独占禁止法適用除外制度の見直しに関する議論と今後の課題
造・販売を行うことにより相互に競争している。1990 年
代後半の再生用DVD規格の標準化に伴う複数事業
者間の共同ライセンス協定について、米国司法省は、
DVD - ROM・DVDビデオの規格に準拠したディスク
やプレーヤーの製造に必要となる特許権の効率的な
ライセンスを可能にすることにより、当該特許権の
利用の促進および製造費用の低減という競争促進効
果が認められ、DVD機器の生産、開発における競争
を妨げるものではないとの考え方を提示した 1。
国際航空市場への独占禁止法適用上の問題点
現行の国際航空協定に関する独占禁止法の適用
多数の権利者と個別に交渉する負担を軽減すること
取引委員会の考え方は、適用除外制度の検証を進め
により当該特許権の利用が促進されること、プラッ
ながら、独占禁止法の適用による競争原理の導入を
トフォームへの参加はいかなる者に対しても開放さ
推進するという今日の競争政策の潮流に合致する。
れており競争者を不当に排除するものではないこと、
但し、IATA運賃協定やアライアンス運賃協定等に
プラットフォームに参加しない特許権者も利用者と自
対する独占禁止法の適用を考えるについては、それ
由にライセンス契約を締結できること等により、第三
が自由かつ公正な競争の促進を阻害するものである
世代通信規格への新規参入を促して競争促進効果
のか、特に、国際航空の分野において各航空会社が
が認められるとともに、個別のライセンス契約が妨
どのような競争を行っているのか、また、IATAの活
げられていないことから、統一的なライセンス料率が
動やアライアンスについて市場支配力の形成、競争
設定されていても製品の販売価格に及ぼす影響は小
の実質的制限が認められるのか、の各観点から慎重
さいと考えられること等、製品間及び規格間の競争を
に分析することが必要不可欠である。
制限するものではないと判断している
(平成12年度
相談事例集事例13)
。また、かつてのアナログVTR
に関する「VHS」と「ベータ」および 現在の次世代
■需要の動向
まず、競争の範囲である一定の取引分野の画定は、
DVDに関する「HD DVD」
と「Blu-ray Disc」
の規格
基本的に需要者にとっての代替性という観点から行
間競争についても、形式的には複数の事業者が共同
われるものであることから、国際航空に関する航空
で規格を策定するという点において競争の制限が行
会社間の競争の範囲を画定するについても需要者の
われているようにも考えられるが、規格の標準化に
行動を把握することが重要となる。
より消費者の利便性は向上し、各企業は標準規格を
前提として新たな機能やデザインを有する新製品の製
例えば、ビジネス目的の旅客については、通常、
特定の目的地までの路線に代えて他の路線を利用
1 司法省プレスリリース
「Justice Department Approves Joint Licensing of Patents Essential for Making DVD-Video and DVD-ROM Discs Players」、1999年6月10日
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除外制度の見直しを求める規制研報告書および公正
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市 場 化と公 共関与
するということは考え難い。一方、観光目的の旅客
特徴が指摘されている2。アライアンスと同様の企業
については、特定路線内の直行便と経由便の間の代
間の戦略的な提携関係は合併等の企業結合によって
替性のみならず、東京―バンコク便の価格が引き上
も実現可能であるが、アライアンスについては、需要
げられた場合には東京―シンガポール便を利用す
の多様化による市場の変化に迅速かつ柔軟に対応
る等、同一地域内の各路線間の代替性、さらには、
し得ること、パートナー間の人的・組織的交流によ
欧州路線の価格が引き上げられた場合には目的地
る戦略的行動の発揮という側面に加え、施設利用の
を北米に変更する等、異なる地域の路線間の代替性
共同化に伴う費用削減、制度的制約により発生する
も認められる可能性がある。また、法人顧客につい
取引費用およびブランドの構築等に伴う海外市場に
ては、その従業員の世界各地への業務渡航を対象と
おける取引費用の低減化等、取引費用の観点からの
することから、全世界的なネットワーク間の代替性
優位性も認められている 3。このように、国際航空の
を考えることが可能であろう。
分野におけるアライアンスについては、競争事業者間
このように、一定の取引分野は特定の需要者層に
の共同事業として、統合と集約化の進展によるハブ
応じて相対的に画定され得るものであり、独占禁止
空港間の路線における市場支配力の形成により競争
法による審査の対象となる取引の態様等に応じて適
が阻害されるリスクも指摘されているが、一方にお
切に判断される必要がある。
いては、消費者にとっての利便性および事業活動
の効率性の向上による競争促進効果の存在も認め
■ 航空会社の事業活動
られる。そのため、独占禁止法の適用に当たっては、
次に、役務の供給者である各航空会社の事業活動
アライアンスによる競争促進効果と競争制限が認め
については、ハブ・アンド・スポーク・システムとコー
られる範囲の評価と判断についての明確な基準を確
ドシェアによる効率的な路線網の構築、Frequent
立することが必要不可欠である。
Flyer Program(マイレージ・プログラム)による
マーケティング活動等、さまざまな競争戦略が採用
されてきたが、1990 年代以降、国際航空の分野にお
けるアライアンスの展開が顕着である。
■ 競争の制限
国際航空の分野における航空会社間の競争は、各路
線から世界全体のネットワークに至るまでの、さまざ
アライアンスは、
「各パートナーが競争上の優位を
まな範囲において多様な形態で行われている。また、
獲得するために、独立性を維持しつつ、戦略目的を
例えば、米国においては、航空規制緩和政策の後、
もって、グローバル規模での市場の競争条件に巧み
企業レベルでの集中度は高くなり正規運賃の水準は
に対応し、外部の経営資源を補完し相互利益の獲
上昇したものの、割引運賃の普及により実質的な平均
得をはかる極めて意識的な協調形態」と定義され、
運賃は低下して輸送量は増加したことが報告されて
①ネットワークを軸とした水平的な経営資源の相互補
いる 4。そして、国際航空協定についても、共同研究
完と対等な提携関係、②パートナー間の情報共有に
開発ガイドライン等に示された考え方と同様に、形式
よるマーケティング効果、③外国人による所有の制限
的には競争阻害と見られる場合であっても競争促進
等の国際航空に関する制度的制約の下において市
効果が認められる事案が存在するものと思われる。
場や航空施設へのアクセスを獲得する手段、という
例えば、IATAの運賃調整会議において各航空会
2 塩見英治
「国際航空市場におけるアライアンスと企業統合」
『海運経済研究』
第36 号14頁、2002年
3 塩見英治、前掲14 ~ 15頁、遠藤伸明
「航空輸送産業の国際化 : 多国間アライアンスの進展をめぐる取引費用アプローチからの試論」
『海運経済研究』
第 40 号 27 ~ 28頁、2006年
24 ていくおふ . Spring 2008
国際航空と競争政策 ― 独占禁止法適用除外制度の見直しに関する議論と今後の課題
社が運賃等に関する協議、決定を行うことについ
ては、インターライニングによる消費者への利便性
の提供という側面を考慮しても、独占禁止法上の問
題を否定することは難しいであろう。但し、EUにお
ける一括適用除外規則の見直しに対応して導入され
たフレックスフェアおよびeタリフの制度については、
IATA運賃の市場価格への影響や航空会社間の価
格情報の交換という問題点を回避しながら消費者利
便を維持するものであるという点において、独占禁
止法の観点からも問題なしと判断し得る可能性が高
いと思われる。特に、極東の島国というわが国の地
理的特徴を考えた場合、例えば EU域内の需要者と
比較して、日本の需要者による複数航空会社間の乗
る需要は相対的に高いものと考えられる。
することが必要不可欠である』
。急激に変化する市
国際航空協定に対する独占禁止法適用の可否に
場環境の中でグローバルな競争を行っているわが国
ついては、こうした需要の特性をも考慮した上で、
の航空会社にとって、法適用に関する予見可能性の
市場における競争制限効果の有無についての分析
欠如は重大な不利益となる。
『第2に、独占禁止法の
および検討が行われなければならない。
適用について、海外の法制度と整合性のある国際的
にも通用する基準を確立すべきである』
。国際航空
これからの展望
運輸事業それ自体が国境を越えて行われるもので
あり、必然的に複数国の市場に関与する。また、アラ
国際航空輸送の分野については、競争の範囲をど
イアンスの展開に見られるように、各航空会社は国際
のように画定するか、また、市場における競争制限
市場における戦略的な事業活動を行っており、こう
効果をどのように評価するかについて、複雑で難し
した国際的な事業活動に対応した国際的に整合性の
い問題が存在する。そのため、各種協定や業務提携
ある競争法上のルールが確立されるべきである。
等について、それが独占禁止法上どのように評価さ
れるかについて判断することは容易な作業ではない。
一方、各航空会社は、国際市場におけるグローバル
な競争に対応して、さまざまな戦略的対応を日々模索
している。こうした現状を踏まえ、
『第1に、適用除外
制度の見直しを行うについては、それと同時に、どの
ような行為が独占禁止法に違反するのかについて、
ガイドラインの策定等による明確な判断基準を提示
PROFILE
宮川 裕光(みやかわ・ひろみつ)1968 年東京都生まれ。
92 年 慶 應 義 塾 大 学 法 学 部 法 律 学 科 卒 業。96 年 弁 護 士
登録後、小林・藤堂法律特許事務所に勤務。02 年バージ
ニア大学スクー ル・オブ・ロー 修了(LL.M.)
。その後、ワ
シ ント ン DC の ア メリカ 独 占 禁 止 法 研 究 所(American
Antitrust Institute)に勤務。05 年ニューヨーク州弁護
士登録。06 年ジョーンズ・デイ法律事務所勤務(現職)
。
4 村上英樹・加藤一誠・高橋望・榊原胖夫、
「航空の経済学」75 ~ 90頁、2007年、ミネルヴァ書房
ていくおふ . Spring
2008 25
S p e c i a l Fe a t u r e
継便の利用頻度は高く、インターライニングに対す
3
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