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清浄な乾燥空気ボンベ

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清浄な乾燥空気ボンベ
RDDS disk のコンタミネーションについて
伊藤嘉朗*、人見宣輝**
(*エルアンドエム株式会社、**高エネ研)
On the contamination of RDDS disks
Yoshio ITOH*, Nobuteru HITOMI**
(*L and M Corporation, **KEK)
This is a brief proposal to eliminate the contaminations from the RDDS disks introducing the technologies of semi-conductor
manufacturing process focused on cleaning, handling, and stock.
Key Words: contamination, X-band accelerator, electron microscope, ultraviolet, cleaning, handling
1.
緒言
X-バンド加速管の研究において高電界実験での放
電痕の発生が大きな問題となっており、それがディス
ク表面の加工面の性状、各種のコンタミネーションに
関連する洗浄や表面処理についての議論がなされてい
る。RDDS 型ディスクの表面観察結果から見た測定ツ
ールの適用の可能性と、それらのコンタミネーション
除去に関する半導体産業からの技術の転用について検
討したので報告する。
2. コンタミネーションの発生要因
2. 1 ディスクのコンタミネーション要因
RDDS 型ディスクの製造工程からコンタミネーショ
ンの要因と考えられるものを挙げると以下のようにな
る。すなわち、
(1)機械加工時
超精密旋盤で加工をする際に、
現在の工程では切削油としてケロシンを空気アスピレ
ータで微粒化して加工点に吹き付けて、加工をしてい
る。良好な切れ味を示すので、長期にわたってこの方
式をとってきているが、油剤のコンタミが問題である
可能性もあるので、現在はドライ、プロピルアルコー
ル、純水などのトライアルが始まっている段階である。
加工が終るとワークのディスクをエタノールに浸漬
し、さらにエタノールによる超音波洗浄をおこない、
さらにアセトンによる超音波洗浄をしている。さらに、
洗浄後のアセトンの乾燥にはボンベから直接減圧し4
kg/cm2(390kPa)にした窒素ガスを使用して液滴を吹
き飛ばしている。
このような工程から、切削油、有機溶剤、空気中の
塵埃などがコンタミネーションとして付着するものと
考えられる。
これらのワークはクリーンルームの中のデシケータ
で注意深く保管し、組み立て時に1枚ずつリントフリ
ー紙で包装しシャーレに入れて組み立て現場に移送し
ている。
(2)組み立て時
現在はクリーンルームあるいは
比較的注意深く管理された恒温室で組み上げているが、
チリなどのコンタミネーションについては厳密に見る
と注意を払いきれているとは言えない。したがって、
空気中のチリは勿論のこと、クリーンウエアを使用し
てるとは言え、作業者の皮膚などの破片が付着するこ
とは避けられないと言えるであろう。
(3)その他
コンタミネーションという目でみる
と、切削後の表面の酸化なども見逃せない問題である。
2. 2 RDDS 型ディスクの表面観察
2. 2. 1 観察方法
形状測定実験に供された後に、実
験室の中でサンプルとして保管され、特に表面の清浄
度について格段の管理がされていなかったRDDS型ディ
スクの表面観察した。観察は ZEISS の展示室にある図
1に示すような LEO1500 シリーズの走査型電子顕微鏡
を用いて写真撮影をおこなった。状況把握という観点
からの観察であるから、定量的な分析は一切おこなわ
なかった。
なお、ディスクの保管状況、測定室の環境ともども、
コンタミネーションという観点からは相当悪い条件で
あるため、これをもって現状のディスクの表面状況を
示めすものではないことは言うまでもない。
2. 2. 2 観察結果
図2は 3000 倍で観察した比較
Figure 4. Particles on the Surface (3 dimentional photograph)
Figure 1. ZEISS LEO1500 Electron Microscope
的汚れたと思われる面の観察結果である。これによる
Figure 5. Erased Particles by different focusing
Figure 2. Dried up Solvent and Contamination
コンタミが固まり、溶剤成分が噴出している状況が観
察できる。一方、表面を電顕で全体的に観察して比較
的綺麗に見える場所を探して観察したのが図4であり、
表面の形状が分かり易いように画像処理したものであ
る。
図5は右下に見える粒状の物体に着目して、物体部分
よりも深いところに焦点を当てて撮影したものである。
このことからこのパーティクル粒状物体は、加工表面
の上にあるチリなどの粒子であることが予想できる。
3. コンタミネーションの除去
Figure 3. Contamination Particles
とケロシンなどを切削油として用いて切削したあとに
有機溶剤で洗浄し、乾燥させるときに、溶剤が凝縮し
ながら周囲のコンタミ成分を引き込んで固まったとい
う解釈をすることができる。この、丸く見える部分の
縁の部分を 30000 倍に拡大すると図3のようになり、
これらのコンタミネーションの除去については比較
的注意深く工程を組んでいるが、可能性を考え一般論
的な除去技術について検討いたしたい。
3. 1 除去ステップ 1
KEKの工程ではかなり厳密に洗浄を行っているので
問題はないとは思われる。しかし高電界試験用の試験
片を 2. 1 の(1)で示した洗浄工程にさらに清浄なア
セトンによる超音波洗浄をおこなっているように徹底
的な洗浄が重要となる。しかしながら、これは図3で
示したような乾燥後の残留物やわずかな油分の可能性
はないわけではない。これは洗浄雰囲気にあるチリ、
窒素ガスで表面の洗浄液を吹き飛ばすときに、雰囲気
の中にあるチリの巻き込みによる付着なども可能性と
しては少ないものの無視はできない。また、有機溶剤
の中に、それまでの洗浄により凝縮されてくる油分の
存在による汚染は否定できないからである。
3 2 除去ステップ2
上述した乾燥後の残留物についてはすでに KEK で
も実験が進んでいる超純水による高圧洗浄などの湿式
洗浄は有効であろう。
窒素ガスによる洗浄液の吹き飛ばしの変わりに半導
体産業などでウエハの洗浄などでおこなうスピンドラ
イをおこなって液滴も含めて残留物を除去することも
考えられる。
一方、有機溶剤の中に洗浄のたびに増加する油の付
着による微量な残留油分はシリコンウェハや液晶ディ
スプレイなどのガラスの洗浄に用いられている紫外線
洗浄の適用が考えられる。これは比較的簡単な装置で
効果が高いものである。この洗浄原理は図6で示すよ
うに 172nm の波長を持ったエキシマ光源で空気中にオ
ゾンを発生させ、このオゾンが分解して酸素と活性酸
素(O+)になり、この活性酸素がワーク表面の有機系
のコンタミ(−CO、−COOH、
・・・) と反応して二
酸化炭素や一酸化炭素に分解するものである。ワーク
の表面から数ミリ位に光源位置を置かないと活性酸素
がすぐ反応して酸素になってしまうのでセッティング
は注意が必要である。工業的には広い面積の液晶画面
などには有効な装置である。[1], [2]
高圧洗浄で水滴でコンタミを飛ばすことの限界があ
る場合も油分の分解をすることによる洗浄方法が力を
発揮する可能性を持っていることが期待できる。
Figure 6. Ultraviolet Cleaning
3.3 除去ステップ 3
どの程度清浄にすべきかということが今明確になっ
ているわけではないが、空気中のチリを極小化するの
はクリーンルーム内での作業ということになるが、す
でに KEK では実施している。しかし、クリーン度の一
層の向上あるいはクリーンルーム内の管理の徹底によ
る適正なクリーン度の維持向上が重要である。しかし
ながら、作業エリヤから移動の途中のクリーン度管理
は重要である。現在もワークの移動は 1 枚ずつ注意を
して包装、パッケージングをしているが、半導体のウ
エハ移動に用いられる図7で示すような搬送用ポッド
のような考え方を導入することも考えられる。[3],[4]
Figure 7. Transfer Pod for Semiconductor Wafer
図では 25 枚入りの搬送用ポッドで搬送後、製造装置本
体部に取り付けた状態を示すが、作業者が歩く場所よ
りも高いクリーン度を維持できるので、コンタミの立
場からは非常に有効といえる。作業者のワークへのア
クセスの機会は自動化、ロボット化で減少して行くが、
皮膚片などのワークへの付着などもありうるので、防
塵服の清浄度管理などが必要である。
3 4 除去ステップ 4
切削直後から表面酸化するのはやむをえないことで
あるが、窒素雰囲気での加工などで工具寿命を延ばす
とともに、ワークを酸化から保護するという目的で、
その後の工程も不活性ガス雰囲気の中で行うというこ
とも考えられる。すなわち前述の搬送用ポッドの中に
不活性ガスを充填して工程間を移動するという手段も
ある。
これらのディスクのスタッキング、拡散接合工程間
の移動なども、同様なコンタミネーション回避あるい
は酸化防止の工夫が必要である。
拡散接合後の加速管の保管については、RDDS 型の
接合後に石川島播磨重工業㈱から KEK およびその後
SLAC に運搬したときに使った図8で示すような運搬
治具(専用大型ポッド)が使われることになる。
さらに、ロウ付け工程を経て完成したストラクチ
ャ・アッセンブリも同様な完成品専用大型ポッドを用
5. 結言
い窒素封入して、最終組立てを待つことになる。
KEKではディスク表面の清浄化の対策として高圧超
純水による洗浄の実験などが行われている。表面のコ
ンタミネーションについては SEM や光学顕微鏡によ
る解析が行われている。この結果かなり表面を清浄に
保つための効果が見られるが、すでに半導体産業で行
われている手法を転用することも重要ではないかとい
う観点で検討した。かなりの部分はすでに、KEK の中
で実行されているものもあるが、今後の工程設定に活
かされれば幸甚である。
参考文献
Figure 8. Large Scale Transfer Pod for Structure
4. インストレーション
トンネルの中にインストールするときには、設置場
所近傍をクリーンハットにして、その中で、完成品専
用大型ポッドからストラクチャ・アッセンブリを取り
出して清浄な雰囲気を維持しながらインストールする
という工程になると思われる。現実には移動する設置
場所の中で、クリーンハットを逐次移動させながら適
当なクリーン度を維持するという大きな課題が残って
いる。
[1] 菱沼宣是; エキシマ VUV/O3 洗浄装置:電子材料 7
月号別冊「液晶ディスプレイ技術 2001 年」
(2001 年 7
月)
[2]Yukihiro Morimoto, et. al.;Water-associated surface
degradation of CsLiB6O10 crystal during harmonic generation
in the ultraviolet region; J. Master Res,. Vol16, No7, Jul 2001
[3] 竹田菊男;ハードディスクドライブ製造における
コンタミネーションコントロール:月刊トライボロ
ジ,3 30-32(2000)
[4] 藤本武利ほか;クリーンルーム空気中およびウエ
ハ表面上の有機汚染物の分析(日本エアロゾル学会)
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