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転生青年Operations EX-AID ID:103302

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転生青年Operations EX-AID ID:103302
転生青年Operations EX
─AID
次郎鉄拳
︻注意事項︼
このPDFファイルは﹁ハーメルン﹂で掲載中の作品を自動的にPDF化したもので
す。
小説の作者、
﹁ハーメルン﹂の運営者に無断でPDFファイル及び作品を引用の範囲を
超える形で転載・改変・再配布・販売することを禁じます。
︻あらすじ︼
││君は自分のことを≪人生の主人公≫だと思った事があるか。
この物語は、原作と呼ばれる物語が通り過ぎた地球の話。
主人公がいないこの場所で、新しい主人公が定められた、そんな話。
目 次 転生青年Operations EX│
AID ││││││││││││
1
海沿いの爽やかな潮風が吹き抜ける町、海鳴。
││││そう、あの日までは
俺は負かされる方、脇役だった││そう、信じていた
奴を負かしていくか、より強大な敵の凄さを見せつけるためだけの踏み台
あんまり見た眼がさえないとか言われるような奴が主人公として、こういうタイプの
やくだし咬ませじゃん
それはなぜか││だって、こういう立ち位置のキャラクターって大体脇役だしやられ
とが無かった
明らかな人生の勝ち組でありながらも、俺は自分のことを人生の中心だって思ったこ
界では天才ゲーマーと評されたこともあることもあるこの俺││ 鏡 夢羽
かがみ ゆ め は
市内の私立大学付属病院院長の一人息子で、若いころは神童と讃えられ、ネットの世
俺はずっと自分のことを、誰かを引き立てるための脇役だと思っていた
君は自分のことを≪人生の主人公≫だと思った事があるか
転生青年Operations EX│AID
1
起きて
事実なんだ
しっかりして
﹂
もう病室の空きがないらしいぞ
﹂
!
﹁どうしたらいいんだよ
﹂
大学の方にこのままってわけにはいかないだろ
﹂
ボサッとしてないでお前も運ぶの手伝え
そして││
﹁おい、鏡
﹁││あっ、ええ、わかりました
﹂
目の前に広がるのは、俺が通っている聖祥大学の巨大な校舎。
!
﹁近隣の病院も空いてる病室はそんなにないぞ﹂
!
││││原因不明で倒れ伏す、教授や生徒たち。
!
﹂
俺の頭は目の前の光景を頭で飲み込むことを拒んでいるが、目の前で起きているのは
!
﹂
一か所に倒れた人たちを集めろ
近隣の市から救急車をありったけ借りろ
陽気な春の日差しに反して、剣呑且つあわただしい雰囲気が俺のいるこの場を支配し
ていた。
﹁救急車が足りない
﹁手が空いてるやつは手伝え
!
!
!
!
﹁各教室の被害状況はどうなっている
﹁ねぇ
!
││どうなってるんだ
!
﹂
!
!
!
!
﹁おい
転生青年Operations EX─AID
2
皆、よく見ると何かに苦しむようにうなされている。
﹂
その倒れ伏す人たちの中に、よく知った顔を見つけた。
﹁││ッ、月村さん⋮⋮バニングスさんまでも⋮⋮
月村すずか、アリサ・バニングス。
﹄
?
﹃そう、アナタは、新たな世界で新たな生を授かる││アナタが中心となる物語を紡ぐた
﹃⋮⋮新たな生
﹃ええ、普通ならそうね。でもアナタはここにいる、新たな生を授かる選ばれた者﹄
りたいものだよ﹄
﹃選ばれたって、そんな馬鹿な、死ぬことが選ばれるってことなら、そんな選択はご免被
﹃││アナタは選ばれたの﹄
を触れさせた││
フラフラと、気づけば彼女たちのそばに座り込み、バニングスさんの肩に自身の右手
﹁いったい、なにがどうなって⋮⋮﹂
なぜこの原因不明の状態に彼女たちまで││
学校から人気だった女性達。
聖祥大学の二大マドンナとして入学当初から││いや、聖祥大学付属の高校、中学、小
?
3
めに﹄
﹂
﹂
﹂
バニングスさん、大丈夫
﹁ぅぅ⋮⋮﹂
﹁ッ
﹁っわ
﹂
!
!?
バニングスさん何してるの
﹂
変な声が、≪俺≫のことを話してた⋮⋮
なんだ今の⋮⋮真っ白で、光がすっげーまぶしくて⋮⋮
﹁││ッ
!?
る力は⋮⋮絶対おかしい。
なんだ、この、目。
バニングスさんが⋮⋮﹂
!?
﹂
バニングスさんのこの目は、なんか⋮⋮おどろおどろしい
なんだあれ
﹁我々ガ集メラレタ、ソウイウコトカ││ウォァァアアア
﹁なっ
!
!
!
華奢ながらも友達をアイアンクローで沈めていたバニングスさんだが、この締め上げ
バニングスさんは突如立ち上がり、俺の喉元を締め上げる。
﹁鏡君
!? !?
!
!?
﹁││キサマガ、修正者カ
転生青年Operations EX─AID
4
﹁逃げろっ
﹂
化け物だぁ
!
﹂
!
﹄
?
放される﹄
?
アナタが必ず主人公となれる時まで、アナタがアナタであった記憶は封じるわ﹄
なかったことを﹁約束を破った﹂と暴れられて、それで死なれたら私が困るの。だから、
﹃アナタはその主人公が物語を紡いでいる間は一切中心になることが無い。中心になれ
﹃⋮⋮つまり
﹄
人公の物語が、アナタと交わらない位置にまで動いてから、アナタの記憶はようやく解
﹃これからアナタを転生させるのは、既に運命に定められた主人公がいる世界。その主
﹃その心は
く封印しておくわね﹄
﹃││でもね、転生させてすぐ記憶を解放してしまったら、悲しいことになるからしばら
││ああ、月村さん、起きて⋮⋮そこで寝てたら危ないよ⋮⋮
バニングスさんはどうしたんだろう⋮⋮なんで変な目をしてるんだろう⋮⋮
耳の遠くとかでなんか聞こえる⋮⋮
ぶん投げられた。
﹁キャァァアア
!
5
﹃⋮⋮そうまでして、なんで俺を主人公にしたがるんだ
葉でいうと、﹁鉄則﹂かしら﹄
﹄
﹃⋮⋮随分と俗っぽいことをいうもんだな、女神とやらも﹄
私たちの在
アナタたちの言
﹃あら、私たちに﹁こうであれ﹂って望んだのはアナタたち人間でしょう
?
﹁⋮⋮急に思い出すと少しばかり頭がイテェな⋮⋮﹂
おそらくこれが││あの時の神とやらのいう≪世界のバグ≫なのだろう。
なぜか俺は立っていて││目の前には異様にうねうねとした巨大なバケモン。
目を開けると、そこは見慣れた聖祥大学の敷地内。
ら、アナタを目覚めさせるわ。私たちの使い、修正者さん﹄
﹃ノ ー コ メ ン ト よ。で も こ れ だ け は 神 の 私 が 祈 っ て あ げ る │ │ よ い 人 生 を。時 が 来 た
?
げなくちゃアナタの存在が溶けちゃうわ﹄
﹄
信仰がなきゃ存在できないし││あら、話し込みすぎちゃったわね。そろそろ送ってあ
り方は、アナタたちの想い一つでいくらでも変質するの。だって私たちはアナタたちの
?
と戦うのだから、主人公くらいじゃなきゃ喧嘩は売れないでしょう
﹃アナタが戦うのは、私たちが創り出してしまった世界のバグそのもの。要するに、世界
?
﹃⋮⋮分かった、よくわからないけど、俺はめんどくさいことに巻き込まれたんだな
転生青年Operations EX─AID
6
しかし、おかげで全部理解できた。
俺が神童って言われていた理由も、やけに金持ってた癖にゲームばっか買ってたこと
も、なんで月村とバニングスの二人にはいつも目を奪われていたのかも。
俺が俗にいう≪転生者≫だったからだ。
元庶民、現医者の卵の俺は強くてニューゲーム。ただし転生したという事実はロック
してた。
だから俺は勝ち組だった、必ず主役として登場できるように、どこで問題が起きても
どこにでも行けるような家に生まれた。
うんだ
﹂
﹁修正者、倒ス、倒ス
﹂
しまった、そこらへん何も聞いてなかった
世界のバグと戦うって言ってもどうやって、何を使って、どんな方法で
││そう、結局色々と分かったところでこれが問題だ。
?
﹂
大学敷地内の人影が見えない場所をぐるぐると逃げ回る。
走ってデカブツから俺は逃走を始める。
﹁うわわわわ、やべぇちょっと撤退しなきゃ
!
!
!
?
﹁思い出せたってことは││主役として戦う時が今ってことだろ⋮⋮だがどうやって戦
7
逃げながら対策を考えてみるが、結局考えられるのは物理的な解決策。
しかし、そのための道具がないのだから話にならない
││ふと思い出した。
前に、よくわからないカセットを買ったことを。
?
セットを、俺は内側のポケットから取り出す。
﹁このタイミングで思い出すってことは││これがそのアイテムってことか
確証はない。
だけど、確信はあった。
﹀
﹂
息を吸って、ゆっくりと吐き、カセットについているボタンを押す。
うわ、外れねぇ
!
!!
なんだなんだ││ベルト
?
︿GAME START
﹁うぉっ
!?
﹂
机の引き出しに入れっぱなしだったくせに、今日に限って持ってきていた謎のゲームカ
捨てようと思ったものの、絵柄に飛行機があったからなのか結局捨てきれず、自室の
かったもの。
そのカセットはなぜだかわからないが、ハードが存在せず、いじっても何も反応がな
﹂
!
叫びながら、建物の陰に飛び込み、息を整える。
﹁ちっくしょう、大体わかったで済ませなきゃよかったぁ
!
転生青年Operations EX─AID
8
どこか聞きなれた音声とともに緑色ベースのちょっとごてごてした厚いバックルの
ベルトが腰に巻きつく。
外れない不良品、このベルトを用意したのはおそらくその神とやら。
なるほど、これがそのゲームカセットを挿入するハードっていうわけか。
﹂
よし、これで手段はわかった。目的もハッキリしている││なら、あとはやるだけ。
﹁⋮⋮大丈夫、主人公なら、何とかできる﹂
脳裏に浮かぶのは倒れ伏す学友たちや、バニングス達。
待たせたな、相手してやるよ、ゲームでだがな
﹀
スイッチを押して聞こえた音声とともに、脳内に流れてくるゲーム映像は、昔自分が
!
彼女たちを救えるのは俺だけなら││やってやる。
﹁おいデカブツ
︿CAPTAIN FLIGHT
怖くたって、立ち向かわなきゃいけない
でも││バニングスは今もアイツに取り込まれてるから。
正直怖い、目がどこにあるかわかんない見た目してて怖い。
啖呵に反応してこっちを向くバケモン。
﹁││修正者、発見。排除スル﹂
!
﹁キャプテンフライト⋮⋮航空機を操縦するゲーム││﹂
!
!
9
触りなれた航空機の操縦席のもの。
﹂
明らかに場違いな戦闘機のようなエンジン音が聞こえたとき、目に映る舞台はさっき
までいた大学のものではなくなり、空港のようなものになっていた。
﹁││じゃあ、記念すべき初フライトだ。離陸から着陸まで、お付き合い願うぜ
︿Gasshatte
﹀
カセットの透明部分を上から下に反転させ、中央寄りのバックル挿入部に差し込む。
!
Muttya Game
m a Kamen Rider﹀
!
手ではじくように選択する。
││ I
s Game Mettya Game
││なんか、俺の視線が変だ。
うそ⋮⋮俺の姿、等身変すぎ⋮⋮
﹂
?
││実に変な見た目だ、鏡はどこかにないのか
﹁なぁにぃこれぇ⋮⋮
?
!
俺その中から一つ、戦闘機パイロットのヘルメットのような見た眼をしたキャラを右
グルグルと自分の周囲に、キャラクター選択をさせるような顔の表示が現れる。
!
What Your Name
!
体を見る、なんかずんぐりむっくりしている。
'
'
いや、後でもいいや、自分の姿を笑いものにするのはしばらく後でも問題ない。
?
!?
︿Let
転生青年Operations EX─AID
10
﹂
まずは││あのデカブツをつぶして、バニングスを助け出さなければ。
﹂
!
どうやらこれは一定時間自分のスピードを速めるものらしい。
チャラリンという音とともに、黄色のメダルっぽい何かが俺の体に入り込む。
﹁よし、アイテムゲット
下に落ちる前に、感覚に従って両腕を広げ、リングに向かって飛び込んでいく。
うまい具合にリングより高い位置にふわっと行けた。
デカブツに背を向け、勢いよくジャンプする。
いうならそういうのがあっても確かにおかしくはない。
レースゲームだとブーストかかったりしてくれる奴だ、ゲームを利用した戦いだって
どうやらあれをくぐると強化アイテムが手に入るらしい。
ふと空を見上げると、なんか金色に輝くリングがある。
﹁あれは⋮⋮﹂
うのはデカブツだけだ。
実際の航空機でこんなことやったら死亡事故待ったなしだが、今はゲーム。被害にあ
の羽っぽい見た目の何かをぶつける。
デカブツの真横をすれ違うように通り抜けて、いつの間にか腕に引っ付いてた航空機
﹁どうやって戦うかなんとなくわかるのも、主人公特典ってやつかい
!
11
﹁スピード制限超過はここだけだからな
﹂
さっきから出てくる≪HIT
≫の表記が邪魔
!
していく。
││ええい
!
飛ぶ姿勢を保ちながら、風を切る感覚でついでにデカブツの体に体当たりを数度かま
!
﹂
﹂
!
決まった。
ウオォォォオァッ
﹂
!
の文字と共にデカブツを落とした場所で爆発が起こる。
﹁やってやる、やぁってやるぜぇッ
GREAT
!
││あとはギリギリまで地面に落下し、そのギリギリで地面から逃れるだけ
デカブツをひっつかんだまま俺はゲームステージギリギリまで上昇。
﹁グゥォ
!?
ヤツを離して急上昇する俺の体にも過度の重力がかかるのだ、相手も無事では済まな
上空上限ギリギリからの落下衝撃のダメージはバカにならない。
!
!
こういうゲームはぶつかることなく飛び続けることでスピードが上がっていくのだ。
しかし度重なる突撃によってスピードが落ちているので、一度奴の周囲から離脱。
うに空中までひっつかんでやろうと考えた。
あんまりにも表記が邪魔なので、一発で勝負を決めたいと思い、フリーフォールのよ
!
﹁││うっし、このスピードなら一発で上まで
転生青年Operations EX─AID
12
いはずだ。
﹂
きっとこれで、バニングスは助かる。
﹁ガァァァァァ
撃ツァ
うわっうわわっ
﹂
!
これ対空砲かよ
撃ツ
﹂
!
﹁撃ツ
﹁ちょっ
!
!
だが、意識ははっきりしている。
まだ戦える。
﹁修正者、案外大シタコトガナイナ
気ノセイダッタカ
││いた、バニングスはステージの端位にいる。
バケモノに啖呵を切りつつ、周辺に目を向ける。
﹂
﹁うるっせぇ、今のは驚いただけだ、こちとらピンピンしてんぞ
!!
ホッとする。
﹂
勢いあまって彼女ごとバケモノを倒す心配はしなくてもよさそうだと確認し、少し
!
!
対空砲の爆風にやられ、地面に激突する。けっこう衝撃が強くて痛い。
!
!
恐らくさっきのデカブツが進化をしたのだろう。
煙のなかから現れたのは、大砲のような見た目をしたバケモノ。
﹁⋮⋮うっそ、なんか姿変わってる⋮⋮﹂
!
13
﹂
││ならこっちも容赦なくやっちまってもいいわけだ。
﹁ナラバ、完膚無キマデニ叩キ潰シテヤルワ
ボコにされてしまうだろう。
多勢に無勢というもので、今の時点で少し苦戦しそうなのだから、このままだとボコ
どこかからか、戦闘員のような雑魚臭漂う軍勢がバケモノの周りに続々と現れる。
﹁⋮⋮うわぁ、なんかワラワラ戦闘員みたいなのわいてきたぁ⋮⋮﹂
!!
﹂
だがなんとかなる、レベルをあげて物理で勝てば数などおそるるにたらず。
そのレベルのあげかたは⋮
!
︿LEVEL UP
﹀
ベルトから現れた四角形のよくわからない光が上に昇る。
あれをジャンプして潜れということか。
⋮⋮なんか怖いが、ええい、ままよ
!
!
キャープテェンフラァイッ
!
!
インザースカイ
!
ていることに気づいた。
一瞬の異様な浮遊感のあと、地面に降り立った俺は自分の目線がいつもの高さになっ
︿テェイクオフ
﹀
バックルの真ん中、閉じた蓋のような場所を開くように右に動かす。
﹁ここを、開くように、こう
転生青年Operations EX─AID
14
なるほど、こっちの姿は等身がいつも通りになるのか。
﹂
!
﹂
!
ならば使ってみよう、対空砲に落とされないような操縦をしろということならばそれ
のだっていうのはなんとなくわかった。
あれは俺が飛び上がって、背中にくっつくことでさっきよりも滑空の精度が伸びるも
的なものを空に投げる。
一斉に敵がエフェクトとともに爆発するのを視認し、すぐさま戻ってきたブーメラン
てぶん投げる。
ブーメランのようなナニカになったそれを、見た目通りの使い方で敵の軍勢に向かっ
腕の武器を取り外して、端同士を繋げる。
大量のHITエフェクトと共に戦闘員たちは爆散する。
﹁そぉれっ
これはいい、周囲の雑魚を倒すにはうってつけだ。
態に見たものよりも鋭く、細い物が現れる。
なんか武器が無いかなと思ったところ、ベルトから両腕の部分にさっきのずんぐり状
こちらに走ってくる戦闘員擬きを一体、一体ずつ殴り飛ばす。
﹁ホザケ
﹁よくわかんねぇけど、この姿ならお前を倒せる﹂
15
なりに自信はある。
︿ガシャコン・ウィング
﹀
なんかこれマジンガーなんたらだ
﹂
!
!
﹂
何度か空は飛んだけど、風が肌に当たる感覚は初めてで││
になるところだった。
空をビュンビュンと飛んでいる感覚が気持ち良すぎて、一瞬何をしているか忘れそう
││超気持ちいい。
しかない。
地面からはバカスカと爆撃音が聞こえるが、今の俺にはまるで輪ゴム鉄砲程度の衝撃
超合金系のスーパーロボットみたいな感じで空を飛ぶ。
﹁うぉあ
!
!
﹀
!
キメワザということは、必殺技スイッチ。
︿キメワザ
スイッチがあるので一度押す。
装填。
突撃中、左手でカセットを左腰のあたりにあるホルダーのような見た眼をした場所に
まっすぐ、急な速度を以って大砲のバケモノに突撃する。
﹁││さて、そろそろきっちり片付けないとな
転生青年Operations EX─AID
16
﹀
しかしエネルギーが集まる感じがしない、もう一度押せというお達しのようだ。
脚にエネルギーが集まる感覚がする。
︿CAPTAIN CRITICAL FINISH
だが││
﹀
﹁││主人公なら││やれないわけがない
︿会心の││ 一発
﹂
速度をほぼ保ったまま、見事視点を空に向けることに成功。
!
態勢を蹴りの形に変え、バケモノにぶつかると≪Perfect
﹀
同時にエネルギーが││爆ぜた。
︿GAME CLEAR
!
!
思う存分、暴れられるということだ。
ようなもの。
なるほど、さっきまで戦っていたのはこのカセットによって創り出された隔離空間の
軽快な音声とともに、自身のいる場所が見慣れた大学の敷地へと戻る。
!
≫のエフェクトと
大変危険だ。速度が上がっている航空中に急な方向転換をすればどうなるか。
わせること。
つまりやるべきことは、この急降下の速度を保ったまま反転、そして蹴りを奴に食ら
!
17
﹁⋮⋮⋮⋮うぅ﹂
﹁││バニングスさん
﹂
﹁月村さん││だと思いたいけど、誰だ
﹂
いや、違う。あれは俺がよく知っている月村ではない。
左右に視線を向けると、右側の方に月村が立っていた。
バニングスの元へ駆け寄ったその時、自身の足元で軽い爆発が起こる。
!
!
なんだこの圧は⋮⋮体が震えている⋮⋮
﹁まぁいい、少しばかり調査といこう﹂
﹂
私が先ほどまで姿を借りた人間なら││そこらへんで倒れているの
﹁なんだか意味わかんないけど、月村はどこだ
﹁ツキムラ⋮⋮
﹂
?
?
こいつはきっとバグの中ボスか大ボス系。
心底どうでもよさそうにいう人型。
ではないかな
!
!?
も人間のような││なんだか、俺の今の姿に少し似たような黒い人型。
月村さんの姿がゆがむ││代わりに現れたのは、さっきまで戦っていたバケモノより
殺すつもりだったが⋮⋮﹂
﹁ほう、一目で見抜くか。やはり修正者は一味違うな。油断しているところを近寄って
転生青年Operations EX─AID
18
気を抜いたら、やられる。
﹂
ぐおっ、重ッ
﹁では、楽しませてくれ
﹁くっ⋮⋮
﹂
﹁へぇ、あの程度の仲間なら倒せても、俺とかには圧倒されちゃうんだぁ
腕を組み合った時にはっきりと分かった。
﹂
こいつは強い。こいつらとやりあうほどの力は俺に無いっていうのに⋮⋮
?
!?
たが⋮⋮結構怖いぞこれも
﹂
!
﹂
?
キメワザをバンバン撃つことはできない以上、撃てる
?
﹂
!
突如声とともに何かが俺に向かって投げられる。
﹁││受け取りなさい
時まで耐えなければならない、だが、耐えられるほど俺のHPが保つかどうか││
どうすればこいつに勝てる
まりゼロになったらゲームオーバー⋮⋮死だ。
胸あたりに表示されているゲージが半分を切った。これは俺のHPを示すものだ、つ
売り言葉に買い言葉といわんばかりに言葉を返すが、実際のところはだいぶ厳しい。
﹁うるっせぇよ⋮⋮まだぴんぴんしてるって言ってんだろ
それとも、さっきまでの戦いで疲れちゃった
﹁君の力ってそんなものかい
?
!
奴に簡単に投げ飛ばされる、アニメで人を投げ飛ばす描写とか他人事のように見てい
!
!
?
19
﹂
投げつけられたのは││俺が使用しているCAPTAIN FLIGHTとはまた
違ったカセット。
これは⋮⋮バニングス
投げてきたのは││
﹁ッ
!?
たら気張りなさい
﹂
﹁アンタに渡せって⋮⋮誰かに言われた気がしたの⋮⋮負けんじゃないわよ 男だっ
!?
!
!
てくれて││
﹂
﹁悪いバニングス、少しばかりビビってたようだ││もう、恐れない﹂
﹁ハッ⋮⋮その意気よ、ヒーローさん
﹂
﹁来なよヒーローさん、その道具使ってどこまでやりあえるか見ものだな
﹁俺がヒーローならさしずめお前はヴィランだな
︿COSMO WARS
﹀
人型を見据え、バニングスから受け取ったカセットのスイッチを押す。
!
!
?
コスモウォーズ⋮⋮宇宙を主な舞台にした戦略シミュレーションゲーム。
!
﹂
自分だってつらいだろうに、わざわざこれを渡すために立ち上がって、激励まで送っ
さっきまで倒れていたバニングス。
﹁へぇ⋮⋮人間ってそういうことをする種族なのかぁ⋮⋮面白いなぁ﹂
転生青年Operations EX─AID
20
頭の中で広がる映像だけ見れば﹃これなんてスパロボ ﹄って言いたくなるものでは
あるが、一応違うゲームだと思う。
カセットをキャプテンフライトの隣の窪みに挿入。
一度開いた部分を閉じ、再び開いて││
﹀
︿LEVEL UP
!
?
のだ。
︿A│Gattya
﹀
!
⋮⋮うわ、ますますロボットみたいな見た眼になったな⋮⋮﹂
モウォーズ
!?
思う。
﹂
じゃあ、改めてその力見せてもらおう
﹂
﹂
!
﹁なに⋮⋮今の音声
第二ラウンドはこうもいかねぇぞ
!
?
﹁おお、面白い姿をしているね
﹁上等
!
!
どう見ても言い逃れのできないくらいスーパーロボットしているが、多分大丈夫だと
音声とともに船はバラバラになり、パーツごとに自分の体に装着される。
﹁うぉ
!
ドコモ・カシコモ・ユクモ・ユカヌモ・ウミモ・ダイチモ・コス
四角形のエフェクトが二つ重なり、中から何かが出てくる││船のような形をしたも
﹂
﹁レベル⋮⋮アップ
!
21
︿ガシャコン・バズーガ
喚。
﹀
牽制として数発撃ち、即座に収納。
脚をもたつかせた敵に近づき、拳を叩き込む。
反動があまり来ない、体もさっきよりさらに軽く感じる
!
先ほどからキープしているガシャコン・ウィングに引き続き、バズーガ状の武器を召
!
レベルを上げて物理で殴る、常識だろ
のだけどねぇ﹂
﹁知るか
﹂
COSMO CRITICAL FINISH
!
!
││決まった。だが、倒したわけではない。
が起こる。
敵にぶつかった船ごと、敵を蹴り飛ばすと、≪Perfect≫の表示とともに爆発
先導するように敵へと向かう。
続いて、跳び蹴りの体制をとると、自身のアーマーとなっていた船が再び現れ、脚を
ぐ。
キメワザを発動させると同時に、無数の砲弾やらレーザーやらが敵の周囲へと降り注
!
!
︿キメワザ
﹀
﹁へぇ⋮⋮パワーがさっきとはけた違いだ。どういう理屈なのかおしえてもらいたいも
転生青年Operations EX─AID
22
﹁ぐうぅ⋮⋮痛いなぁ⋮⋮死ぬところだったよ⋮⋮﹂
﹂
?
に言うなら││気に入ったよ、修正者のことを﹂
﹁つまり、最後まで邪魔には来ないってことでいいんだな
上げて物理で殴るというのは﹂
﹂
?
?
﹁ああ、私も自分のレベルを上げなければならないしね。常識なのだろう
人型は、月村とはまた違う人間の姿に変わる。
レベルを
としないのだ。君との戦いは君の戦いの最後まで残しておきたいものでね。君たち風
﹁私としてはだが、ここで私を仕留め弱った君がほかのバグに仕留められることを良し
⋮⋮奴の言う通り、俺のHPはもう限界に近い。
﹁無理をしない方がいい、君のその胸のゲージはもうギリギリじゃないか﹂
﹁ふざけんな、俺はここで終わらせるつもりだぞ﹂
わないか
﹁やっぱり人間って面白いねぇ、ここで戦いを終わらせるのはすごくもったいないと思
だが││その目に戦意は感じなかった。
ぼろぼろな姿から見るに、間一髪何かしらの方法で逃れたに違いない。
爆風の中から奴が現れる。
﹁うそ⋮⋮あいつまだ⋮⋮﹂
23
﹁私にはまだ名前がないが⋮⋮次会う時までには名前を決めておくことにするよ。君の
名前を教えてくれ、修正者﹂
﹁⋮⋮パイロット。仮面ライダーパイロットだ﹂
﹁パイロット⋮⋮いいね、じゃあまた会おう、仮面ライダーパイロット、我が宿敵よ﹂
││なぜこう名乗ったのかはわからない。
だけど、自然と頭に浮かんだのはこの名前だった。
開いている蓋を閉じ、カセットを両方抜いて変身を解除する。
体力はもうぼろぼろ。
正直、もう││休まないと⋮⋮
***
目を覚ますと、そこは見慣れない部屋だった。
豪華なベッドの、おそらく客用の部屋だろう。
俺の家ではない。俺の家だったら俺の部屋に入れればいいだけだ。
││ドアからノック音がする。
﹁はい、起きています﹂
転生青年Operations EX─AID
24
﹂
﹁お目覚めになられましたようでよかったです、鏡夢羽様﹂
﹁⋮⋮アンタは確か、バニングスの⋮⋮
からない
﹁来たわね鏡。よく眠れたかしら
たけれど﹂
﹂
?
?
﹁世の中のお金持ちがみんな豪華な部屋に住んでると思うなよ
﹂
﹁そうなの 意外、次期院長の立場が約束されてる身なんだから寝具も相応だと思っ
がないのが少しばかり惜しい気がしたけれど﹂
﹁おかげさまでぐっすりだ。あんなに良いベッドで寝たことが無いから寝てる時の記憶
?
?
││あれ、カセットはあるのに、昨日のごてごてしいバックルがついたベルトが見つ
では、さっさと着替えて呼んでいるらしいバニングスの元に向かわなくては。
わざわざおこしに来てくれたのだから、ありがたい話である。
﹃では﹄といいながらドアを閉めるバニングスの執事、鮫島さん。
のそちらのボタンでお呼びください﹂
す。お召し物はベッド脇の籠に入れてございますので、着替え終わりましたらベッド脇
﹁はい、鮫島と申します。お目覚めしてすぐで申し訳ありませんが、お嬢様がお待ちで
?
25
応接室に連れてこられた俺は、出合い頭にバニングスから声をかけられる。
﹂
挨拶もそこそこに、バニングスへとこちらからの疑問を投げつける。
﹁││で、なんで俺はバニングスの家にいるんだ
からも一件ずつメールが来ているな⋮⋮後で返しておかないと。
﹁どういたしまして⋮⋮それで、次は私から聞いてもいいかしら
﹁ああ、こたえられることはそんなに多くなさそうだけど﹂
﹂
首都県最大の病院、聖徒大学付属病院の院長でもある灰馬伯父さんと、従兄弟の飛彩
アプリの通知がすごいことになっている。
バニングスの言葉に携帯を開くと、確かに両親からの不在着信やメール、メッセージ
からもう大丈夫よ﹂
からないから使えないし。あ、でも事後承諾という形でパパから連絡を入れてもらった
混乱が起こって連絡できる余裕がなかったのよ。携帯借りようにもパスワードとかわ
倒れていた人たちがみんな何事もなかったかのように起き上がってきたの。病院側も
﹁アンタが倒れて本当だったらアンタの家に連絡するところだったけど、同時になぜか
?
ンタはアイツの何を修正するの
﹂
﹁そう、じゃあまず最初に、アイツは何 アンタのことを修正者って呼んでたけど、ア
?
﹁そっか、ありがとうバニングス﹂
転生青年Operations EX─AID
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?
?
﹁⋮⋮あいつらは、世界のバグってやつらしい。俺はそいつらを倒すためにバニングス
それと、らしいらしいって⋮⋮
のくれたカセットとかを使って戦う││仮面ライダーっていうヒーローらしい﹂
﹂
﹁あいつら 他にもあんな奴らがいるっていうの
アンタ自分が何やってるか把握できてないの
?
かねんぞ。
?
?
の﹂
﹁そっか、月村はこんなカセットを持ってはいないのか
﹂
﹁露骨に話をそらしたわね⋮⋮すずかなら元気よ。ほかの人たちと同じように目覚めた
﹁⋮⋮そういえば、何事もなく起き上がったって話だが、月村はどうだった
﹂
やっぱバニングスは鋭い。変に追及させると俺が転生者だって話まで掘り下げられ
なぜ知ってるかはわからないってことは普通ならあり得ないもの﹂
﹁ふうん、アンタ知識だけどこぞの誰かさんに与えられてるって感じね。知ってるけど
﹁まぁ、な。正直言うとなんであのカセットを使えるのかとかも微妙にわかってない﹂
らに自称記憶喪失とか認識されかねん。
││とは言えないんだよなぁ、ただでさえ変なこと言ってるって思われてるのに、さ
それと把握できてないことはしかたがない、記憶を取り戻したのは昨日なんだから。
うん、鋭い。きっと間違いなくほかにもあんな奴らはいるだろう。
?
?
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懐からバニングスより受け取ったコスモウォーズのカセットを見せる。
しばし考えるそぶりをしたが、バニングスは記憶にないと言わんばかりに首を横に振
る。
﹂
﹁そもそも、そのカセットを私が受け取ったのはパパがパーティーでもらったからなの
よ﹂
﹁もらった⋮⋮
?
﹁助かる﹂
しょ、私ですら半信半疑なんだから﹂
﹁み な ま で 言 わ な く て も い い わ。黙 っ て て あ げ る わ よ 皆 に は。人 に は 言 い づ ら い で
﹁まぁ、出所がわからなくてもいいさ││なぁバニングス﹂
だけど⋮⋮﹂
うから謎よね。奇抜なゲームを作ることに定評があるから作るとしたらあそこくらい
﹁大手ゲームメーカーのGanme Corporationでは作っていないってい
しかし、まるで示し合わせたかのように誰かの手にあるものなんだな⋮⋮
このカセットというのは大変謎な代物らしい。
だって﹂
﹁古い付き合いの社長さんなんだけど、その人もどこで手に入れたか覚えてなかったん
転生青年Operations EX─AID
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るから、頑張りなさいよ、仮面ライダーパイロット
実は俺もそう考えたことはあった。
﹂
││君は、自分が人生の主役になれると考えたことはないか
!
面ライダー、パイロットなんだ。
俺たちの戦いは││ここから始まる
!
俺は聖祥大学附属病院次期院長で、天才ゲーマーの鏡夢羽││そして、世界を救う仮
ていた女性たちの一人に応援されているのだから、意地でも負けたくないだけだ。
主役であるべきだからではなく、こうしてバニングスが││幼いころから目を奪われ
だがそうだとしても俺は戦うしかほかない。
この戦いはもしかしたら神とやらにとって都合のいい筋書きなのかもしれない。
神が創り出した世界、そこに潜んでいるバグと。
だけど、この日││俺は主役として戦うこととなった。
きらめてしまっていた。
だが当時、あまりにも自分の立場が恵まれすぎていて、逆に無理なんじゃないかとあ
?
﹁いいのよ。見ちゃった私の責任みたいなもんだし、できることならサポートしてあげ
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