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JNK001601 - 天理大学情報ライブラリーOPAC

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JNK001601 - 天理大学情報ライブラリーOPAC
天理大学人権問題研究室紀要 第1
6号:1―1
8,2
0
1
3
生殖補助医療と親子という関係について
堀内みどり
A Study of Assisted Reproductive Technology
and Family Relationships
HORIUCHI Midori
書に基づく自国の義務に従い,これらの
はじめに
1
9
8
9年の第4
4回国連総会において採択さ
権利の実施を確保する。
と示す。
れ,1
9
9
0年に発効した「児童の権利に関する
一方,不妊症で悩むカップルや子を望む
条約(子どもの権利条約)
」は,子どもの基
「親」から生まれた子どもたちのなかからは,
本的人権を国際的に保障するために定められ
生物的なつながりのある「親」を知りたいと
た。条約は,1
8歳未満を「児童(子ども)
」
いう強い思いを抱く人たちの声が聞こえてき
と定義し,国際人権規約(第2
1回国連総会で
ている。AID(Artificial Insemination by
採択・1
9
7
6年発効)が定める基本的人権を,
Donor:非 配 偶 者 間 人 工 授 精,ま たDI:
その生存,成長,発達の過程で特別な保護と
Donor Insemination も用いられる)という
援助を必要とする子どもの視点から詳説して
生殖補助医療によって誕生した子どもである
いる。前文と本文5
4条からなり,子どもの生
と知ったとき,ドナーが匿名である(日本で
存,発達,保護,参加という包括的な権利を
はドナーが匿名であることがAIDの条件)
実現・確保するために必要となる具体的な事
ことから,「親を知る」ことに大きな壁があ
項を規定するものである。日本は1
9
9
4年に批
る。
准している。
その「第7条 名前・国籍を得る権利,親
を知り養育される権利」は,
ここで考えてみたいのは,子が親を知る権
利と主に生殖補助医療がもたらした「親と
子」という関係性の変容についてである。生
子どもは,出生の後直ちに登録される。
殖補助医療は,不妊症で悩むカップルに大き
子どもは,出生の時から名前を持つ権利
な希望をもたらしたといえる。しかし,生ま
および国籍を取得する権利を有し,かつ,
れてきた子どもたちからは,この技術が単に
できるかぎりその親を知る権利および親
医療における治療という側面ではなく,子ど
によって養育される権利を有する。
も自身の「存在」に深くかかわり,そのアイ
締約国は,とくに何らかの措置をとらな
デンティティを危うくしていると語られても
ければ子どもが無国籍になる場合には,
いる。「産む」
「生まれる」
「生きる」という
国内法および当該分野の関連する国際文
ことの根底をつなぐともいえる「親子」とい
おやさと研究所
Oyasato Institute for the Study of Religion
1
生殖補助医療と親子という関係について
う関係の重要性をあらためて考えてみたい。
の技術によって男性から卵子,女性から精子
さて,一般に生殖補助医療は,人工授精や
を作るということもできることになり,技術
体外受精などの生殖技術を用いて子をもうけ
をどのように適用するのかについては大いに
ようとする不妊治療の総称を指している。不
議論されなければならない。報道によれば,
妊治療には,排卵誘発剤を用いたり,また,
「人工多能性幹細胞(iPS細胞)から精子
卵管不妊の手術的治療などもあるが,これら
に続いて卵子を作製し,子供を誕生させるこ
は,女性に不妊原因がある場合に有効である。
とに成功」している(「iPS細胞から卵子
男性に原因がある場合,あるいは双方にその
生命の作製,倫理に課題 不妊治療には期待」
原因が求められれば,その原因如何によって
『産經新聞』2
0
1
2年1
0月5日)
。
は,より高度な治療が必要となり,人工授精
親子の関係そのものには,直接関係しない
や体外受精などの生殖技術を用いることにも
と思われるが,昨今著しく進んできた着床前
なる。こうした生殖補助医療の技術は,体外
診断は,従来の出生前診断に比べ,より早い
受精が実用化された1
9
7
0年代末から1
9
8
0年代
段階で胎児の状態を知ることができる技術で
には人工生殖などと言われたが,1
9
9
0年代後
ある。2
0
1
2年7月1
1日の『読売新聞』は,着
半 以 降,英 語 の assisted
reproductive
床前診断について「夫婦の精子と卵子を取り
technology の訳語として,日本で定着し,
出し,培養液の中で体外受精させる。受精卵
英語の略称「ART」も用いられるようにな
を5日間培養し,「胚盤胞」と呼ばれるもの
った。フランスでは,「生殖への医学的介助
に成長した時点で,一部の細胞を取り出し,
assistance médicale à la procréation,AM
染色体の異常の有無を検査する。異常がない
P」という言葉が,1
9
9
4年の立法で採用され
と判定された受精卵だけを子宮に戻す。着床
ている。精子,卵子,あるいは両方の提供を
前診断による最初の赤ちゃんは1
9
9
0年に英国
受けた場合,代理母に出産を委ねた場合にお
で生まれ,すでに世界で3万人以上が誕生し
いて,血縁や法律の面から親子という関わり
たという。
」と解説している。この場合は,
合いが明瞭でなくなる可能性が出て来る。
夫婦間体外受精の一環として行われ,受精卵
昨年,大いにマスコミを賑わした「iPS
が子宮に着床して妊娠が成立する前に,受精
細 胞(人 工 多 能 性 幹 細 胞,Induced
卵の染色体や遺伝子に異常がないかどうかを
pluripotent stem cells)は,難病や不妊症な
調べる。受精卵診断とも呼ばれている。着床
どの治療に大きな可能性を開いた。iPS細
の可能性が低い受精卵や流産しやすい受精卵
胞は,非常に多くの細胞に分化できる分化万
を調べることができるので,流産の可能性を
能性(pluripotency)と,分裂増殖を経ても
減らし,人工妊娠中絶の負担がない。また,
それを維持できる自己複製能を持たせた細胞
体外受精での妊娠率を上げることができる技
のことのことで,再生医療の現場では,理論
術のひとつと考えられている。そして,この
上,体を構成するすべての組織や臓器に分化
技術は,男女の産み分けをも可能にする。こ
誘導することが可能なので,ヒトの患者自身
のようなことから,「障害の有無による命の
からiPS細胞を樹立する技術が確立されれ
選別」という生命倫理上の批判や,親が望む
ば,拒絶反応の無い移植用組織や臓器が作製
性質を備えた「デザイナーベビー」につなが
できると期待されている。しかしながら,こ
るという懸念が出ている。
2
堀内
こうした技術の進展は,子を望みつつ,そ
門医は非常に少ない。
れが叶わないと思われていたカップルに,選
$女性不妊症の治療は産婦人科で,男性不
択肢を多数提示すことになった。同時に,子
妊症の治療は泌尿器科で行われる。不妊症
の誕生を期待し,期待されるカップルにとっ
の治療方針を決める場合,産婦人科医と泌
ては,“悩み”ともなり得ている。
尿器科医の方針が食い違うケースもありう
1.子を持ちたい親:不妊症の現状
「子供が好きなのに妊娠できない」
「精子
る。
%ストレスなど様々な要因により精子数が
減少,ますます男性不妊症の患者数が増加
無力症と診断され,希望がなくなった」
「妊
する傾向にある。
娠しても流産してしまう」
「自分の子が欲し
&不妊症は,女性のみ,男性のみ,男女両
い」
「彼の子を産みたい」など,子どもを望
方に原因があり,また原因不明の場合も
んでもなかなか恵まれないカップルの悩みは
1
0%程度ある。男女両方に不妊症の原因の
さまざまである。結婚すれば子どもは生まれ
ある夫婦は約4組に1組ともいわれる。不
てくるものと,自分たちも周囲のものも,多
妊の責任を女性に求めてきた風潮があった
くの人々はそのように思っている。しかし,
が,実際には,男女双方にその原因がある
不妊症や不育症などによって,子どもが授か
と認識すべきである。
らないカップルは少なくない。
'妊娠の方法として,人工授精のほか,体
不妊は,正常な男女が結婚して,正常な夫
外受精や顕微受精という高度不妊治療があ
婦生活を営んでいるのにもかかわらず,2年
る。
以上たっても妊娠が認められない状態をいい,
(人工授精(AIH:夫の精子を利用)の
不妊症に悩むカップルは,6組に1組の割合
妊娠率は低く1
0%強,体外受精・胚移植(I
であるとも,7組に1組,1
0組に1組ともい
VF―ET)や顕微授精(ICSI)な ど
われる。昨年放送されたNHKの「不妊社会
の高度生殖補助医療であっても,その妊娠
∼産みたい,育てたい∼」という番組は,日
率は2
0%ほどである。こうした技術を使っ
本で,不妊の検査や治療を受けたことのある
て妊娠に成功したとしても,必ず出産でき
夫婦は,6組に1組の割合であると報じた。
るわけではない。また,費用が高額であ
日本の不妊症に関する現状を概観すると,お
り,1回で授精すること,妊娠すること,
(1)
およそ,以下のようになる。
出産することは稀である。
!年齢が若いほど妊娠率は高く,卵巣は3
0
)「卵子提供」という選択をして,海外で
代後半で老化が進み,妊娠は4
5歳がほぼ限
の治療を行う人が増加している。費用は高
界といわれる。加齢とともに子宮内膜症な
額になる。
ど不妊症になりやすい病気も増加する。
2
0
1
0年1
2月,『毎日新聞』は「こうのとり
"卵子老化による不妊が深刻化している。
追って(1部∼5部)
」を連載 し,2
0
1
3年2
晩婚化および社会での女性の働き方と労働
月,それを『こうのとり追って 晩産化時代
のあり方,また,卵子老化に対する認識の
の妊娠・出産』として出版した。そこでは,
低さなどが関連して指摘されている。
上記のような日本の妊娠・出産を「進む晩産,
#男性不妊に対する認識が低く,また,専
広がる『妊活』
」と捉えている。同書の「は
3
生殖補助医療と親子という関係について
じめに」は次のように記され,妊娠や出産が
してきている。選択肢が多くなればなるほど
“ごく自然に”
“当たり前のように”可能で
に不妊症は「病気」なのだから,「治せるの
はないということが読みとれる。
なら治さなければ」と考えてみたり,また,
いつか子どもを持ちたい,という思いは
結婚したのだから「子どもを産まなければ」
自然な感情だ。しかし,それは必ずしも
と思ってみたりもする。子どもを持ちたいと
簡単にかなえられる願いではない。日本
真剣に思う不妊症のカップルこそ,選択を迫
の平均年齢は2
0
1
1年,初めて3
0歳を超え
られる。一旦始めた不妊治療は何年も続く可
た。1
0年間でほぼ2歳上がり,晩婚化は
能性がある。可能性があれば,産まれるまで
加速している。背景には,育児と仕事を
止められそうにない「気分」になってしまう
両立する難しさや,経済的な不安定さな
こともある。まさに「出口の見えないトンネ
どの事情があるとみられる。しかし,女
ル」に入り込んでしまうことになる。費用や
性は年齢とともに「卵子の老化」が進み,
時間,仕事との兼ね合い,女性への負担など,
妊娠しにくくなる。たとえ妊娠しても流
不妊治療が抱える課題は多い。しかし,実際
産や死産に至ったり,子どもが障害を持
は子どもが授かったから,それで終わりとい
つ可能性も増える。妊娠・出産できる年
うのではない。そこからが始まりとなる。不
齢に限界があることを知らずに年を重ね,
不妊治療にかかわる議論は,もっぱら親の立
いざ妊娠を考えた時に高いハードルに直
場の発言や技術にかかわる事柄が中心となっ
面する人は少なくない。「出口の見えな
ている。一方,近年になって遺伝的なつなが
いトンネル」に例えられる不妊治療に突
りが見出せない子どもたちからの発言が見ら
き進むのか。苦悩の日々が始まる。検査
れるようになってはきたが,彼らにとって,
技術や機器の進歩に伴い,妊娠中から胎
高度な不妊治療技術がもたらしたものは何だ
児の「異常」が見つかりやすくなった。
ったのか,父がわからないままに結婚した子
その結果,妊婦たちは望むと望まざると
どもたちにリスクにどう対処できるのかなど
にかかわらず,産むか否かという「命の
の議論は本格的ではない。
選択」に直面することになる。予期しな
日本の人工授精は,1
9
4
8年に慶應大学病院
かった不妊や,わが子をおなかの中で失
で始まり,これまでに数千∼1万人以上生ま
う苦しみは,命のはかなさと,努力や意
れたと見られている。これは非配偶者間人工
志だけでは解決しない重い現実を突き付
授精(AID)で,ドナーは匿名である。こ
ける。新たな治療方法や技術が生み出さ
の場合,少なくとも「遺伝的につながってい
れ,選択肢は増える。第三者から精子や
る父」と「育ての父(母の夫)
」という2人
卵子の提供を受けたり,養子縁組といっ
の「父」の存在がある(配偶者の精子による
た方法で,遺伝的なつながりはなくても
も の は,配 偶 者 間 人 工 授 精(AIH:
親子となる道を選ぶ人もいる。だが,そ
Artificial Insemination by Husband)
)
。
(2)
こに絶対的な「正解」はない。思い悩み
ながら,幸せを求め続ける人々の姿を追
った。
このように不妊症をめぐる現況は,複雑化
4
2.生殖補助医療をめぐる“環境”
「子の出自」が問題となる技術は,AID
以外にも多数ある。理論的技術的には実践可
堀内
能という点で見た場合,難しいとされていた
なっていなかったのは,まさに,当事者を形
卵子の冷凍保存もまさに実用化されて,精子
成する医療機関や親が「出産の秘密」として
だけでなく,卵子,胚,子宮も第三者からの
隠し通してきた経緯があるからである。生ま
提供を受けることができる。根津八紘氏が『代
れた子どもたちの実数が不明であることもそ
理出産』
(2
0
0
1,p.
1
3
3)で示した 表 は 次 の
の実態をよく物語っている。
ような場合を示す。(
〈
〉内は遺伝上のつな
また,!"#は日本でも学会が容認する技
がりのない親を示す。本項では,これら技術
術であるので,国内で施術できる。しかし,
を受ける際にかかる費用や時間および社会環
生殖医療に関する法整備は頓挫しており,し
境の変化,この技術に至る準備的な施術・投
たがって,海外へと向かうカップル,女性は
薬・検査,患者の肉体的・精神的負担につい
増加しているといわれる。医療ツーリズムの
ては言及しない。
)
1つとして報じられることもある。タレント
)人工授精
!精子=夫
や国会議員などの経験が報道されることは,
卵子=妻
"精子=ドナー
出産=妻
出産(子宮)
=妻
卵子=妻
〈父〉
自民党の野田聖子元郵政相(5
0)は米国
卵子=妻
$精子=ドナー
出産=妻
%精子=夫
卵子=妻
卵子=ドナー
〈母〉
&精子=ドナー
出産=妻
卵子=ドナー
で第三者による卵子提供を受けて体外受
精をし,現在妊娠7カ月。来年2月中旬
に出産予定。いまの日本でも卵子提供は
できます。だけど,こっそりやることに
なる。「お金がある人しかできない」と
も言われました。確かに米国では5
0
0万
〈父母〉
円以上かかる。……日本ではその1
0分の
卵子=ドナー
1の値段でできるらしい。だからこそ,
出産=ドナー
(精子=夫
出産=妻
〈父〉
出産=妻
'精子=夫
が,いずれも親からの発言であることに注意
しておかなければならない。
*体外受精
#精子=夫
これらの技術に対する問題提起となっている
〈母〉
(代理母)
卵子=妻
出産=ドナー
(代理出産)
国内でできるようにしようよと訴えたい
んです。普通の妊娠が難しい場合,人工
授精,体外受精とステップがあって,日
ここから分かるように,8つの場合におい
本はここで終わり。でも諸外国では卵子
て,父母と遺伝的なつながりがあるのは,3
提供,代理母……と,次の段階がいろい
つの場合である。"$では父と,%'では母
ろある。私が一石を投じたいのは,体外
と,そして&では両方との遺伝的なつながり
受精を何十回もやる必要があるのかとい
はない。養子縁組で親子になった場合,その
うこと。体外受精は始める勇気より,や
すべてではないが跡をたどって親にたどり着
める勇気のほうがいる。可能性が数%で
けないことはない。しかし,"の場合がそう
もあると言われるとやめられない。(
「不
であったように,匿名ドナーの「父」を探す
妊治療―卵子提供,日本も整備を
手がかりさえない状態がある。日本では,国
体外受精,野田議員語る」
『朝日新聞』
内で精子バンクの広告が出るまでは問題にも
2
0
1
0年1
1月6日)
米で
5
生殖補助医療と親子という関係について
こういったことに加え,法律がどのように
の男性が養子縁組をすることはインドの
「親子」を定めているのかという点を考慮す
法律でできないので,男性は赤ちゃんを
ると,事態はより複雑になる。例えば,日本
引き取れない。女の子は両親が確定せず,
では,子の母は「分娩した」女性ということ
インドから出国できない状態。インドで
になっているので,代理出産($)を選択し
は,政府がこうした代理出産を認める指
た親たちは,たとえその子の遺伝子が両親の
針を2
0
0
5年に出し,ここ数年,欧米諸国
ものであったとしても,遺伝子上の母は「母」
からの依頼を中心に代理出産が多く行わ
になれない。また,アメリカで話題となった
れている。
(3)
「ベビーM事件」は,代理母(#)を選択す
この事例は,前記#に当てはまるが,卵子
るときに生じる問題の1つを提示した。この
ドナーと出産ドナーは異なった女性である。
事例に最終判断をした最高裁判所は,!代理
その後の報道から,インドでの出生届には,
母契約は,ニュージャージー州の法律と公序
遺伝上の父と遺伝上の母を記入することにな
良俗に反すること,"代理母契約における合
っているが,卵子ドナーが匿名であったため,
意は全て,代理母が懐妊する以前に交わされ
出生届の母親欄が不明となっている(=イン
たものであり,実の父と養母(依頼した夫婦)
ド国籍が取れない)
(『朝日新聞』2
0
0
8年8月
にわが子を引き渡すことが何を意味するか,
8日,インドでは,遺伝的親子の明記によっ
代理母にはほとんど理解できていなかった事
て血縁関係を明らかにすることによって,近
情さえ見受けられる,として,代理母契約を
親婚防止に役立っているといえる)ことや,
無効とした(フェリス・チェスラー:1
9
9
3,
元妻が女児の引き取りを拒否している上(
『朝
p.
3
6
2)
。
日新聞』2
0
0
8年8日8日)
,独身男性が女児
また,最近では,渡航先の法律と両親の事
と養子縁組できないこと(依頼した夫婦が女
情によって,生まれてきた子どもが出生を登
児出生前に離婚,出生届の父親欄が遺伝上の
録できない状態となってしまったという事例
父親=自分の子は養子にできないという原則,
がある。2
0
0
8年8月7日,NHKは「代理出
独身男性と女児の養子縁組は人身売買の危
産 赤ちゃん出国できず」と報じた(BBC
惧)から,女児は「孤児」のような状態にあ
やインドの新聞が報道し,その後,日本のメ
る。また,周知されているように,日本の「国
ディアも報道)
。
籍法」は血統主義なので,出生時に法律上の
6
インド西部グジャラート州のアナンドで,
父か母が日本人なら,生まれた子は日本国籍
先月2
5日,日本人の夫婦と代理出産の契
を取得できる。しかし,今回の場合は出生前
約を結んだインド人の女性が女の子を出
に離婚しているので,この女児は日本人男性
産。代理出産を担当した医師によると,
とインド人女性(外国人女性)とに生まれた
卵子は別の第三者から提供された。イン
「子」となって,国籍は取得できない。出生
ドでは,代理出産の赤ちゃんについては,
時にこの2人が法的な婚姻関係にあるか,日
依頼をした夫婦が養子縁組をして引き取
本人男性が出生前に子の認知をしていれば,
ることになっているが,この日本人夫婦
日本国籍は取得できる(国籍法では,出生後
は女の子の出生前の6月に離婚し,男性
に認知された子は2
0歳までに両親が結婚した
が赤ちゃんを引き取ろうとしたが,独身
場合に日本国籍を取得)
。こうしたさまざま
堀内
な事情で,インド・日本両国から女児のパス
細胞から卵子を作り出し,体外受精を行っ
ポートは発行できず,日本に帰国できない状
てマウスを誕生させることに世界で初めて
(4)
態となっていた。
成功。一方,慶応大学のグループは,ヒト
この事例では,遺伝上の母は不明である。
のiPS細胞から精子や卵子の元になる
これを社会的な側面から見ると,「産んだ」
「始原生殖細胞」を作ることに成功しまし
母と,父の妻である「母」が想定できる。日
た。
本では,「産んだ」母が法的にも母となるが,
今回のように外国で代理出産を依頼し,依頼
夫婦が子の出生前に離婚してしまうと,子に
3.子どもの思い:AID で生まれたというこ
と
とっての母はいなくなってしまう。いったい
前項で示したように,生殖医療技術は進展
誰が親なのかということと,親とはいったい
するばかりである。そうした中,第三者を巻
何なのかということが問題となる。
き込んだ生殖技術に対してAIDで生まれた
さらに,最近のニュースで次のような事例
子どもたちの声が取り上げられるようになっ
が報告されている。これらは,まさに遺伝上
てきた。卵子,胚,子宮提供に比べて長い歴
の親―子の意味をその根底から問うものであ
史をもつAIDのそのまさに当事者である子
る。
どもたちの声である。かれらの主張を手がか
ニュース1:「3人の親」を持つヒト胚を作
りにすると,生殖技術は子どもという当事者
成(ブランドン・ケイム,2
0
0
8年2月6日付
にとってどういうものなのだろう。
Wired Achieves,http : //wired.jp/2
0
0
8/0
2
2
0
0
5年,『毎日新聞』は「非配偶者間授精
/0
6/「3人の親」を持つヒト胚を作成/)
子どもたちが『父親を知る権利』訴え」とい
英国の科学者チームが,3人の親を持つ胚
う見出しの記事を掲載した。
を作成した。ニューカッスル大学の研究者
夫以外の第三者から提供された精子を使
たちは,生殖補助医療の過程で作られた胚
うAID(非配偶者間人工授精)で生ま
から核を取り出し,それを,もとからあっ
れた人たちが2
6日,東京都内で一般向け
たDNAを除去した卵子に入れた。この卵
の講演会を開き,「自分のルーツの半分
子の提供者のミトコンドリアは残されたま
を知らないのは不安だ」などとして,提
まだ(ミトコンドリアは卵子の細胞質に約
供者(遺伝上の父親)を知る権利の獲得
2
5万存在する)
。つまり,
完成した胚には,
3
を訴えた。国内で生まれたAID児は1
人から提供された遺伝子が含まれているこ
万人を超すとされるが,現在は匿名を条
(5)
とになる。
件に精子の提供がなされており,提供者
ニ ュ ー ス2:NHKweb ニ ュ ー ス,2
0
1
2年
を知る道は閉ざされている。2
0代の女性
1
0月5日「人工精子・卵子 利用どこまで」
は「生まれた人たちの気持ちを調査しな
( http : / / www 3. nhk. or. jp / news / web
いで,AIDに問題がないというのはお
tokushu/1005 02.html)
かしい」と訴えた。3
0代女性は「これか
体のあらゆる組織や臓器になるとされるi
らAIDで生まれる人には,自分のルー
PS細胞の研究で大きな進展がありました。
ツを知る権利を認めてほしい。提供者が
京都大学の研究グループがマウスのiPS
減っても仕方ない」と語った。いずれも,
7
生殖補助医療と親子という関係について
今春結成された「DI Offspring Group(非
の告知は親にも辛いことであるが,当事者に
配偶者間人工授精で生まれた子どもの
とっては知らせられないことを知ってしまっ
会)
」のメンバーで,今後も当事者の連
たと時に起こる葛藤は尋常ではないことが語
帯を呼び掛ける。厚生労働省の生殖補助
られる。「DI Offspring Group(非配偶者間
医療部会は0
3年,AIDなどで生まれて
人工授精で生まれた子どもの会,DOG)
」
来る子どもに「出自を知る権利」を認め
は,
る報告書をまとめたが,法制化は進んで
生殖技術について,今考えてほしいこと
いない。(
『毎日新聞』2
0
0
5年1
1月2
6日)
精子・卵子・胚の提供,そして代理出産
また,同月1
5日の紙面には,「精子バンク
と第三者が関わる生殖技術はどんどん拡
少年がネット活用,DNAで実の父発見」
(
『毎
大しています。しかし一方,その当事者
日新聞』2
0
0
5年1
1月1
5日)という記事が掲載
たちにどんな問題が起こっているのか,
された。それによると,「1
5歳の少年が,米
実態は明らかではありません。私たち非
国のDNA検査会社やインターネットを活用
配偶者間人工授精(AID)で生まれた
して,匿名で精子を提供した実の父を割り出
人の自助グループは,第三者の精子提供
していたことが1
4日までに分かった。
」とい
により生まれた人の当事者グループです。
う。そして,「欧米にはで親子関係や家系を
当事者の立場から,この技術の問題点,
調べる企業がいくつもあるが,匿名の精子提
今考えてほしいことを伝えていきたいと
供者(ドナー)の特定に結び付いたのは初め
思っています。
てとみられる。同様に匿名のドナーの精子や
と綴る。そして,
卵子から生まれ,自分のルーツを知りたいと
昭和2
0年代後半から3
0年代の資料による
願う人たちは少年の成功を歓迎。一方で米国
と,ある医療機関では,AIDは,匿名
の精子バンクは『こうした試みが拡大すれば
からの提供だと問題があるとして,親類
ドナーのプライバシーが守れない』と警戒し
など提供者を連れて来た場合のみ行って
ている。
」と記事は続く。子どもを望んだ母
いたとあります。また,親類などからの
親が精子バンクからの匿名ドナーの精子で妊
提供だと問題があるとして,匿名のみ実
娠したため,少年は,遺伝上の父の名も顔も
施していた医療機関もありました。
知らずに育った。
いずれにしても,問題があるという指摘
AIDで生まれた海外の男性が精子提供者
があったにもかかわらず,AIDは行わ
をしらみつぶしに捜しているドキュメンタリ
れ続けていたことになります。AIDで
ーが2
0
0
2年にNHKで放映され,2
0
0
4年には
生まれた子どもの自助グループには,匿
彼が当事者グループを作り運動を始め,マス
名からと親類からの提供で生まれた人が
コミにも取りあげられるようになっていく。
います。提供者がわかっていても,アイ
2
0
0
3年,2
3歳で自分がAIDによって生まれ
デンティティーの喪失と,親,親類との
たことを知ったAさんは,マスコミを通して,
関係の破たんを経験しています。
や っ と 同 じ 立 場 の2人 に 出 会 う こ と が で
問題は,治療の成果として,命を作って
き,3人で自助グループを立ち上げた。実際
しまうということではないでしょうか。
に自分がAIDで生まれた子どもであること
作られた人の,人間としての尊厳は,ど
8
堀内
のように守られるのでしょうか。
方の気持ち!」という講演会が,日本弁護士
(2
0
1
3年2月1
1日付DOGブログ)
連合会主催によって,2
0
1
2年6月2
9日開催さ
と問いかける。さらに,DOGは,2
0
1
0年3
れた。その趣旨は「当連合会は,2
0
0
0年に『生
月2
0日に慶応義塾大学信濃町キャンパスで,
殖医療技術の利用に対する法的規制に関する
「第三者の関わる生殖技術について考える会
提言』を発表し,生殖医療技術の法的規制に
―第三者の関わる生殖技術にSTOP!―」
ついて提言をしました。その時点では,子を
の立ち上げ集会を開催した。その開催趣旨文
持ちたい親の声はマスコミにもしばしば取り
には,以下のことが述べられた。
上げられていましたし,その気持ちはある程
現在日本では,夫婦以外の第三者の精
度想像することも可能でした。しかし,生殖
子や卵子を用いて子どもを得たり,他人
医療技術を利用して生まれてきた方の声を聞
に出産を依頼するといった生殖技術が行
くことはできませんでした。最近になってよ
われ始めています。不妊に悩む人が子ど
うやく,非配偶者間人工授精で生まれてきた
もを得ることができる,という部分だけ
方たちが,生殖医療技術の在り方について声
を見れば,技術の拡大はすばらしいこと
を上げ始めています。私たちが,生殖医療技
かもしれません。しかしそれに伴い起こ
術の是非やその規制の在り方を考えるに当た
っている問題については,どう考えれば
っては,生まれてきた子どもの立場の方の声
よいのでしょうか。
を真摯に聞くことが不可欠だと考えます。
」
日本では匿名の第三者による精子提供
というもので,前述およびこの会には,当事
(AID)が6
0年以上前から行われてい
者からの発言とともに,当事者側からの研究,
ますが,その振り返りは行われていませ
特に告知に関する研究を行っている才村眞理
ん。しかし近年になってやっとこの技術
帝塚山大学心理福祉学部教授が講演を行って
で生まれた人たちが自分達の抱える深い
いる。
悩みや技術に対する疑問の声を挙げ始め,
AID当事者は,自分たちが出自を知るこ
子どもが生まれた後に起こっている問題
とができないのはおかしい,精子・卵子・胚
についても少しずつ明らかになってきま
の提供,代理出産と第三者が関わる生殖技術
した。しかしこのAIDが社会的な議論
はどんどん拡大している一方,その当事者た
もないままに事実先行で進んできたよう
ち起こっている問題の実態は明らかではない,
に,今,卵子提供や代理懐胎も行われ始
治療の成果として,命を作ってしまうという
めています。これまでの技術を振り返り,
ことが問題ではないのか,作られた人の人間
そしてこれ以上の技術の拡大がさらにど
としての尊厳はどのように守られるのかと,
んな問題を生み出す可能性があるのかを
声を上げ始めたのである。そして,AIDが
考え,そしてそのうえでも私たちは第三
社会的な議論もないままに事実先行で進んで
者の関わる生殖技術を本当に望んでいる
きたように,今,卵子提供や代理懐胎も行わ
のか,今改めて考えるべき時期にきてい
れ始めていることを危惧し,第三者が介在す
るのではないでしょうか。(後略)
る生殖補助医療の事実先行を考えなおすべき
また,「生殖医療技術で生まれた当事者の
時であると主張する。弁護士会が指摘するよ
声を聴く非配偶者間人工授精で生まれてきた
うに,AID当事者の声を聞くことこそ,こ
9
生殖補助医療と親子という関係について
れまで論じられなかった不妊に関する事柄や
んありましたが,納得した面もありまし
課題の全容が明らかとなっていくことにつな
た。……病院では隠し通すことを前提に
がるだろう。人が生きるという実体の根底に
AIDが実施され,親も隠し通さねばと
あるはずの“親―子”というかかわりが,著
思っていて,でも実は隠し通せていない。
しく「不全」であると感じられる当事者にと
それが問題を深くしているのです。
っては,産む親の視点での不妊治療の議論は,
(http : //www.babycom.gr.jp/ranshi/
一方的である。前述のAさんは,インタビュ
ranshi-41.html)
ーで次のように語っている。
……AIDで生まれたという事実が知ら
ければならない重要な課題として,!親自身
されるのは,家族の危機的状況と重なる
がこのAIDという技術を肯定できていない
ことが多いのです。例えば私のように,
こと,"親と子どもの意識の違い,#告知の
親の重大な病気。あるいは父親の死,両
ための情報がない,の3点を指摘している。
親の離婚など。危機的状況と告知で二重
AIDが「夫婦がいて血のつながった子ども
のショックを受けることになります。
がいる」という家族に見せかけるための技術
また,そういう時期は,かなり年齢が
になっているので,親はAIDを肯定できて
いってからになります。私の場合は2
3歳
いない。そのために告知もできない。告知す
で,これは早かった方です。他の人は3
0
るのにも前例もない,情報もない,相談でき
代,4
0代など,結婚や出産など大きな決
る機関や人がいない,同様の立場にいる人と
断をしたあとに知ることになります。自
の交わりがない。告知に関する親子での意識
分のルーツの2分の1がわからないとい
差を子どもは誠実さの尺度として読み込んで
うことは,子どものルーツも4分の1が
いるとも言う。告知後の人生の再構築(ある
わからないということになる。自分のせ
いは自我の再構築)はさらに困難だと思われ
いで同じ悩みを子どもにも引き継いでし
るので,家族をどうイメージしていくかとい
まったと苦しむことにもなります。
うことにも直面せざるを得ない。
また,同じ立場の人と話すようになっ
こうした語りや課題の指摘は,子どもにと
てわかった共通点は,家庭内の違和感や
っては「私とは誰であるのか」を問う第1段
緊張感を感じていた人が多いということ
階が,さまざまな意味において「親を知るこ
でした。私は,それが血のつながりがな
と」であって,それが家族での立ち位置につ
いからなのか今となっては確かめられま
ながっていると考えられる。不妊治療のもう
せんが,父が私に関心をもってくれてい
片方の当事者がいること,それが生まれてき
ないという違和感をもってきました。自
た子どもであるという視点で,個人的なこと
分が養子なのではないか,母が不倫をし
がらとしてだけではなく,むしろ,社会に向
て生まれた子なのではないかと感じてき
かって発信されているということの意味は重
た人もいます。子どもは非常に敏感で,
大である。
隠し通している,隠し通せていると思っ
ているのは大人だけだと思います。実際,
私が事実を知った時には,驚きももちろ
10
彼女は,自分の経験から,今後解決されな
4.告知と子どもの福祉
以上のことから,生殖医療の現場では,そ
堀内
れが生殖にかかわる補助医療技術であるとい
ID告知が端緒となる。知らされなければ「第
う立場で医療が臨んでいたとしても,総体と
三者が介入した生殖」によって生まれた子で
して技術が先行している印象を受ける。生殖
あることは知らずに生きることになる。告知
医療では,その実施者である医師およびカッ
そのものがもたらす本人(子どもと親)の葛
プル(法的夫婦)という当事者のほかに,ま
藤も生じている。前述のAさんは,自分の体
さに当事者でしかない生まれた子どもたちが
験を次のように語っている。
いる。その子どもたちには,冒頭で掲げた「親
……父の遺伝性の疾患がきっかけです。
を知る権利」が保障されている。しかしなが
父に進行性の遺伝性疾患がわかったので
ら,日本の実状はその権利を使うことを阻ん
すが,私には隠されていたんですね。で
でいるといえる。AIDドナーは,匿名であ
も私が診断名を見てしまい,5
0%の確率
り,精子以外のドナーは国内では認められて
で遺伝するとのことで,不安で夜な夜な
いないため,国外での実施となるからである。
調べる私に,母はこれ以上黙っていられ
日本産婦人科学会は,2
0
0
6年「非配偶者間人
ないと思ったようです。「実はあなたは,
工授精に関する見解」についての会告を改訂
お父さんと血がつながっていない」
「A
し,精子提供の商業目的でないこと,心身健
病院で精子の提供を受ける不妊治療をや
康な提供者から提供された精子を冷凍保存し
っていた」
「提供者はわからない」
。話さ
て使用し,同一提供者からの出生児は1
0名以
れたのは,ただ,これだけでした。母親
内とすること,精子提供者の記録を保存する
もとても動揺していました。それ以上は
こと,実施夫婦との同意書を保管することな
何も語られず,その話題は一切出すな,
どを示した。これによって,これまでAID
という態度でした。
の子どもたちは,父親を知りたいと思って
私はそれまでの生活がまったくできな
も,
」また,親から告知されたとしても,さ
くなってしまいました。毎日泣いてばか
らに,偶然にAIDの子どもであることを知
りで,通っていた学校に行こうとしても
ったときも,「父」を探す方法が見つからな
行く道で泣けてきたり,それ以外のこと
かったので,保存されたドナー記録は手がか
が考えられないので,そもそも学校に行
りとなる。
くことさえどうでもよいような状況にな
「子どもの親を知る権利」からすれば,A
り,結局退学してしまいました。このこ
ID告知は当然のように思われる。しかし,
とに触れたくないという親の態度に傷つ
これについての日本での歴史を見ると,「隠
き,事実を知って1カ月で私は家を出て
す」ことが前提で実施されてきた。知らない
しまいました。
まま結婚し,家族を形成してきている人の方
私が感じた問題は,大きく2つ。1つ
が,全体としては多数ではないかと推測され
は,長い間,親が隠していたということ,
る。AIDが初めて実施された当時はドナー
隠したいと思っていること。父親と血が
の身元やAID出産であったことを明かすこ
つながっていないということそのもので
とは想定すらされなかったのかもしれない。
はなく,これまでずっと親に隠し事をさ
近親婚についての配慮はなかったのだろうか。
れていたことの辛さです。なぜ隠したい
AIDの子どもであることを知るのにはA
と思うのか。タブーとして扱われること
11
生殖補助医療と親子という関係について
で,自分自身が恥ずべき存在であるかの
時は形がなくても,一人の人間をやりと
ように感じました。
りしているんです。もしそれが自分だっ
2つ目は,今まで信じていたものが突
たら,自分もそういう風にやりとりされ
然崩れてしまう感覚です。事実を知るま
たら,そういう風に生まれてきたらどう
での自分の人生が,嘘の上に成り立って
感じるのか,と想像してみてほしい。
きたように感じました。親は,私がAI
Dで生まれたことを隠すために,嘘に嘘
きちんと自分に問うてほしい。
を重ねてきました。父と似ていないこと
(http : //www.babycom.gr.jp/ranshi/
について,父には似ていないけれども,
ranshi.html,2
0
1
1年6月1日付)
父の祖父には似ていると言われてきたり,
と訴える。
父の遺伝性疾患は女児には遺伝しないと
AIDで 子 ど も が 生 ま れ る よ う に な っ
嘘をついたり。でも,私以外の家族全員
て,6
0年以上が経過している。「親」
「子」
「ド
がこのことについて知っていたのです。
ナー」は,何を抱えて,人生を過ごしてきた
(http : //www. babycom. gr. jp / ranshi /
のか。もちろん,商業ベースで精子や卵子を
ranshi.html,2
0
1
1年6月1日付)
提供すること,「代理」で子を産むことを法
また,Aさんと同様にAIDで生まれたB
さんは,社会に訴えたいこととして,
的に認めている国と日本とでは,こうした生
殖医療にかかわる社会環境は異なる。日本で
子どもは,この人が母,この人が父,
も議論されるようになった子の「出自を知る
と認識していく中で,自分を確立してい
権利」は,「ドナーの匿名性の権利(ドナー
くのだと思います。それが違っていたと
の個人情報保護)
」や「親が子どもをもつ権
いうことになると,自分が根こそぎ崩れ
利(子に告知するかしないかも自由に選べる
てしまいます。崩れるのが遅ければ遅い
権利も含めて)
」と敵対しているとは思えな
ほど,もう一度,自分を作っていくのは,
い。しかしながら,AさんやBさんの語りは,
大変になります。私の親が私に言えなか
親にも子にも支援がないと,親は子どもに伝
ったこと,親族に言えなかったこと,周
えられないということを告げている。最も考
囲に言えなかったことは,社会がそうい
えなければならないことは,「AIDで生ま
うあり方だったからだろうと思います。
れる」ということはどういうことなのか。そ
社会に対する怒りは,あります。
れを親に隠されてきたということは,どのよ
医療の責任も大きいです。子どもがで
うな経験なのか。これらは当事者の子どもに
きた,おめでとう,で終わってはいけな
とって,「生きていること」の土台に直接か
い。
かわる,子どもの福祉の根源ではないのか,
子どもができないことが治療の対象と
12
自分はそういう風に生まれたいのか,
ということである。
いうこと自体,違うと思います。病気を
つまり,告知をするとして,
治すことと,命をつくるということは,
!親は子に何を知らせるか。
全然違います。つくった命で,その人が
"親は子にどのように知らせるか。
7
0年,8
0年生きていくイメージがあるの
#いつ,知らせるのか。
かどうか。精子提供,卵子提供は,その
$ドナー匿名の壁をどうするのか。初期の
堀内
場合には,あるいは医療機関によっては,
理:2
0
1
0,p.
6
1)
。そのうち,日本でAID
親も子も医療関係者もドナーも「知らな
を最初に行ったのは慶応大学である。その産
い」
「分からない」ことがある。
婦人科の久慈直昭医師は,AIDの問題と関
!子の福祉とは何か。
わるなかで告知の必要性を感じ,診療の場で
"どのような家族をイメージして,AID
伝えてきたが,看護師も意欲的に患者と向き
を選択したのか。
合うようになり,患者側も告知への意識が変
#告知後の家族のイメージを持っているの
わりつつあると語る。
か。
かつてAIDで子どもを持った親の中
などの点は考慮する必要が出てきている。才
で,告知を考える人はわずか2,
3%ほど
村眞理は,オリビア・モンツチの著書を翻訳
でした。ところが,ここ数年,4分の1
し,『大好きなあなただから,真実を話して
くらいの人が『最初から話すつもりで
おきたくて 精子・卵子・胚の提供により生
す』と答えています。看護師も時間をか
まれたことを子どもに話すための親向けガイ
けて患者と話すことで,最終的には半数
ド』として出版している。その情報の多さは
ほどの人たちが告知を考えるようになり
告知が親にとって「簡単ではない」というこ
ました。
とを如実に示している(才村氏には『生殖補
今,僕らが考えているのは,出自を知
助医療で生まれた子どもの出自を知る権利』
る権利が認められるまでの間,生まれた
(福村出版,2
0
0
8)の編著書もある)
。しか
子どもと精子提供者がボランティアで登
し,AIDの子どもたちが持っている「自己
録するような情報バンクを作ることです。
否定感」的な感覚を何とかするために,「告
そこで子どもたちは自分と血のつながっ
知」そのものしか端緒にはなりえないのでは
たきょうだいや遺伝上の父親を見つける
ないか。
ことができるかもしれない。海外では患
まとめにかえて
者やサポートする団体によって作られ,
実際に生まれた子どもが父親を探すケー
2
0
0
9年のAID患者数は,8
0
6人。そのう
スが増えています。医師としては,同じ
ち,生まれた子は9
7人だった。これは日本産
ドナーの精子で生まれた子どもどうしの
婦人科学会の会告にしたがって報告された数
近親婚によって,遺伝的リスクが高くな
である。過去1
0年間で,およそ年間1
0
0∼2
0
0
ることも気にかかる。そうした問題を回
人が誕生している。また,2
0
0
9年の体外授精,
避するためにも,法制化を進めることが
胚移植で生まれた子は2
6,
6
8
0人で,過去1
0年
重要だと思うのです。(歌代幸子:2
0
1
2,
間で2倍以上になったという。そのうち,先
p.
2
4
8,p.
2
4
9)
(6)
8
0例あった(日本産婦人科学会
天性異常が4
告知をすることやドナー情報開示は,世界
2
0
1
1年9月に報告されたデータ)
。ARTに
的な傾向であるといわれている。産婦人科の
よって出生するこどもたちは少なくはないの
医師である石原理氏は,スウェーデンを「家
が実状であるともいえる。世界中で,2
0
0
4年
族のあり方についてまじめに試行錯誤を続け
には約1
3
0万回のARTが行われ,2
0万人の
てきた国」といい,「少子高齢化」
「女性の社
子どもが生まれたと考えられている(石原
会進出」
「家族の変容」といったことばを日
13
生殖補助医療と親子という関係について
本社会を表現する「時代のキーワード」とす
註
るなら,スウェーデンの試行錯誤がとても参
(1) 歌代幸子『精子提供 父親を知らない子ども
考になるとする(同上書,はじめに)
。石原
たち』
(新潮社,2
01
2年)
,大野和基『代理出産
氏の解説によるスウェーデンの「人工授精
生殖ビジネスと命の尊厳』
(集英社,2
0
09年)
,金
法」
(1
9
8
4年制定)
,「体外受精法」
(1
9
8
8年制
城清子『生殖革命と人権 産むことに自由はある
定,2
0
0
3年改正)をまとめると次のようにな
のか』
(中央公論社,1
9
96年)
,辻村みよ子『代理
る。
母問題を考える』
(岩波書店,2
0
12年)
,根津八紘
「人工授精法」:DI(AID)によっ
『代理出産 不妊患者の切なる願い』
(小学館,
200
1
て生まれた子どもに対して,本人が十分
年)
,毎日新聞取材班『こうのとり追って 晩産化
に成熟した年齢(1
8歳)に達した時点で,
時代の妊娠・出産』
(毎日新聞社,2
0
1
3年)
,DO
その出自を知る権利を認めた(「精子提
G『子どもが語るAID』
(DOG,2
0
07年)
,お
供者の個人情報を知る権利と権利行使の
よび,杉原徹「新優生学と教育―生殖系遺伝子改
方法」の規定)
。
良と子どもの
〈他者〉
性をめぐる考察を通して―」
「体外受精法」:ARTによる治療を婚
(
『東京大学大学院教育研究科教育学研究室紀
姻中あるいはサムポ(住居登録している
要』第3
2号,2
0
06年6月)
,才村眞理「生殖補助
住所に同居し,継続的な共同生活をして
医療に伴うこどもの権利擁護とソーシャルワー
いる性的関係をもつカップル)内に限定,
ク」(http : //www.mhlw.go.jp./shingi/2002/07/s
提供精子,提供卵子,提供胚の生殖医療
0726-10 c.html),遠矢和希「日本におけるDI
への使用禁止。2
0
0
3年「親子法」ととも
(提供精子人工授精)の親子関係について」
(大
に改正。第三者に由来する配偶子を体外
阪大学知識アーカイヴ http : //ir.library.osaka-u.
受精に提供することが可能。(同上書,
ac.jp./dspace/,2
0
06年)
,安田裕子「血のつなが
0
6参照)
pp.
7
6―1
りのない家族を築くということ―非配偶者間人工
「私とはいったい誰なのか」と問うAID
授精を試み,その後,養子縁組で子どもをもった
の子どもたち,「どうしても子どもが欲しか
女性の語りから―」(『立命館人間学研究』第11
った」という不妊に悩んだその親たちという
号,20
0
6年2月)
,由井秀樹「日本初の人工授精
当事者たちを取り囲む社会的環境が,「人」
成功例に関する歴史的検討―医師の言説を中心に
のいのちをどのように大切にできるかという
―」(Core Ethics Vol.8,2
0
12年)
,幸順子・村上
ことを,家族という視座で考え直さなければ
哲生・河口尚子「生命の線引き論を自然物の権利
ならないのではないか。
思想と人間の権利思想の両者から考える」
(
『名古
家族は多様に存在する。離婚や再婚にたい
屋女子大学紀要5
8(人・社)
』
,2
01
2年)など参照。
するハードルが低くなった。シングルでも子
(2) DOG(http : //blog.canpan.info/dog/ 20
1
3
をもつこともできる。同性婚による家族も存
年2月2
0日参照)はAIDの基本的情報として,
在する。「血縁」をどのように捉えていくの
AIDの歴史!"#
(それぞれ2
0
0
7年7月2
2日,
23
かも課題である。「家族となる/である」選
日,2
8日付)にして次のように書かれている。A
択肢の多さが家族の本質を問いただしている
IDの技術は1
9
4
8年に慶應義塾大学病院で初めて
ように感じられる。
実施され,翌4
9年に女児が生まれたのがはじまり
だと言われている。その後数十年の間は,特に何
14
堀内
の規制もなく行われた。精子提供者は匿名である
技術先行で行われていたため,1
99
7年に,日本産
こと,実施する医師,選択した夫婦もその事実は
科婦人科学会が会告においてこの技術の実施を認
伏せ,表立った問題が起きなかった。1
9
9
6年,イ
めるまで,詳細については明らかではなかった。
ンターネット上で精子提供者を募集するという,
以降,学会に実施の登録をしている施設は技術の
国内初の民間精子バンクが誕生。提供者は匿名で
実施回数や生まれた子どもの数を報告しているが,
はなく,利用者が希望をすれば面接のうえ,提供
結果追跡ができていない件数も多く,生まれた子
者を選べる点に特徴があった。商業目的の精子売
どもの数ははっきりしていない。報告数からは,
買という問題が出てきたことで,日本産科婦人科
年間1
6
0名前後の子どもが生まれていると推測さ
学会は1997年5月に「非配偶者間人工授精と精子
れる。
提供者に関する見解」という会告を発表,AID
(3) 1
9
85年2月,当時2
8歳で,2人の子の母だっ
を実施する際の夫婦の条件や,選択時の同意書の
たメアリー・ベス・ホワイトヘッドは,不妊セン
作成と保管,それら夫婦および生まれてくる子ど
ター(ニューヨーク州)を介して,スターン夫妻
もへのプライバシーに配慮すること,精子提供者
(夫3
8歳で生化学者,妻3
8歳で小児科医)と,代
の条件,また提供者へのプライバシーの保護と記
理母の契約を結ぶ。契約内容には,妊娠したら薬
録の保存,営利目的の精子売買の禁止,AIDを
を飲まない。羊水診断を受ける。胎児に障害があ
実施する医療施設の学会への登録等が示した。
れば中絶する(報酬はない)
。流産・死産の報酬
19
99年から旧厚生省にて生殖補助医療技術に関す
は1,
00
0ドル,健康な子の場合は1
0,
0
00ドル。出
る専門委員会の話し合いが始まり,2
0
0
0年12月に
産後は養子契約にサインし,親権を放棄する。2
は「精子・卵子・胚の提供等による生殖補助医療
年以内に妊娠しなかったら,報酬はない。契約後,
のあり方についての報告書」が出された。この報
すぐ人工授精が始まり,9回目の人工授精で妊娠。
告では,提供者の情報は「提供者が特定できない
19
8
6年3月に女子を出産(精子は夫,卵子及び子
ものについて」
「提供した人がその子に開示する
宮は代理母)したが,
「産んだ子」をわが子と感
ことを承認した範囲内で」など,出自を知る権利
じたメアリーは子の引き渡しを拒否。夫婦が裁判
に一定の制限があった。厚生労働省は,2
0
0
1年か
に訴えた。1
9
87年3月3
1日,ニュージャージー州
ら生殖補助医療部会を設け,2
0
0
3年4月に生殖補
上位裁判所は,代理母契約を合法とし,依頼者ス
助医療部会の最終報告書を提出。そこでは,第三
ターン夫妻に親権を認め,メアリーには親権も養
者からの精子・卵子・胚の提供を認める一方,代
育権も認めなかった。翌年2月3日,州最高裁判
理出産や営利目的の精子等の売買は禁止とし,ま
所の代理母契約を無効とする逆転判決では,父親
た生まれた子どもの「出自を知る権利」を認め,
をスターン,母親をメアリーとした。しかし,親
子どもが15歳になり希望をすれば,提供者の情報
としての適格性を父親側に,メアリーに訪問権を
をその個人が特定できる範囲まで認めるというも
認めた。この事件は日本でも話題となり,多くの
のとなった。
著作もある。
その後,この報告書を土台に法案が国会に提出
(4) 日本からインドに「代理出産」
「代理母」の
される予定だったが,2
0
0
4年,20
0
5年,2
0
0
6年と
治療にいくことについては,インド女性の社会的
通常国会への提出は見送られている状態。以上の
地位の低さ,両国の経済格差,宗教,カーストな
ような経緯のため,現在までに生まれた人の数は
どと関連した報道もあったが,ここでは,それら
1万人以上と言われているが,実際の数は不明。
についての検討はしない。
15
生殖補助医療と親子という関係について
(5) ブランドン・ケイム氏は,この方法で子ども
月にかけ,9
7組の夫婦に「新型」を1回ずつ実施
が生まれた場合,3人の親を持つことを意味する
した。女性の年齢は2
8∼4
5歳(平均3
9.
1歳)
。い
ものではないという意見を「科学者チーム(およ
ずれも受精卵の染色体異常で着床しなかったり,
び,素早く反応した読者の1人)は,今回の方法
流産を繰り返したりした経験……9
7組の中で,受
を使った場合でも,胚のほとんどすべてのDNA
精卵が順調に育ち,子宮に移植できたのは5
3組。
は2人 か ら 提 供 さ れ た も の に な る と 述 べ て い
そのうち3
9人が妊娠し,1
6人が出産。3人は流産
る。」
と紹介しつつ,これは間違いだと述べる。
「核
したものの,2
0人が妊娠中だ。受精卵を子宮に移
が取り除かれた卵子を提供する『3人目』が胚に
植できた人の妊娠率は7
4%で,通常の体外受精の
対して提供するものは,3
7個の遺伝子しか含まれ
妊娠率(3
9歳の平均で2
5%)と比べると,3倍近
ていないミトコンドリアだからだという(ミトコ
く高かった。…」…」
(
『読売新聞』2
0
1
2年7月1
1
ンドリアには,核内にあるDNAとは別のDNA
日)
(ミトコンドリアDNA)がある)
。たしかに,
ヒトの遺伝子数が2万3
0
00個程度と推測されてい
参考文献
ることに比べれば,3
7個というのは少ない。しか
【書籍】
し,量が少ないから影響がないというわけではな
石原理『生殖医療と家族のかたち 先進国スウェー
い。われわれの身長や目の色,あるいはもっと微
デンの実践』平凡社新書,2
01
0年。
妙な特質である性格や好みなどにミトコンドリア
岩田重則『
〈いのち〉をめぐる近代史 堕胎から人工
が影響を与えることはないかもしれないが,ミト
妊娠中絶へ』
(歴史文化ライブラリー2
7
1)吉川弘
コンドリアには,有機物を分解して得られたエネ
文館,2
009年。
ルギーをわれわれの細胞が使える形のエネルギー
に変える過程を支えるという,恐るべき務めがあ
るのだ。」
(http : //wired.jp/2
0
0
8/02/0
6/「3
人の親」を持つヒト胚を作成/)
上野圭一『代替医療―オルタナティヴ・メディスン
の可能性』角川書店,2
0
02年。
歌代幸子『精子提供 父親を知らない子どもたち』
新潮社,2
0
1
2年。
(6) 「体外受精による受精卵を子宮に戻す前にす
大野明子『子どもを選ばないことを選ぶ―いのちの
べての染色体を調べ,異常を見つけることができ
現 場 か ら 出 生 前 診 断 を 問 う―』メ デ ィ カ 出
る新型の着床前診断が,神戸市の産婦人科医院で
版,2
00
3年。
不妊患者を対象に行われ,これまでに1
6人が出産
したことがわかった。着床前診断は,異常の見つ
英社,2
0
09年。
かった受精卵を除くため,命の選別につながると
オリビア・モンツチ(才村眞理訳)
『大好きなあな
の指摘もある。
日本産科婦人科学会は会告
(指針)
ただから,真実を話しておきたくて 精子・卵子・
で,重い遺伝病の患者などを除いて認めておらず,
胚の提供により生まれたことを子どもに話すため
今後,議論を呼びそうだ。……従来の着床前診断
のの親向けガイド』帝塚山大学出版会,2
01
1年。
では,23対(4
6本)ある染色体の一部しか調べら
香川知晶『命は誰のものか』ディスカヴァー・トゥ
れなかったが,新型の「比較ゲノムハイブリダイ
ゼーション(CGH)法」だと,すべての染色体
を調べられる。精度も従来より高く,ほぼ確実に
異常を見つけられる。……2
0
1
1年2月から1
2年5
16
大野和基『代理出産 生殖ビジネスと命の尊厳』集
エンティワン,2
00
9年。
金城清子『生殖革命と人権 産むことに自由はある
のか』中央公論社,1
99
6年。
M.H.
クラウス/J.
H.
ケネル(竹内徹,柏木哲夫,
堀内
横尾京子訳)
『親と子のきずな』医学書院,1
9
8
5
然物の権利思想と人間の権利思想の両者から考え
年。
る」
(
『名古屋女子大学紀要5
8
(人・社)
』,2
0
1
2年)
M.H.
ク ラ ウ ス/J.
H.
ケ ネ ル/P.
H.
クラウス
(竹内徹訳)
『親と子のきずなはどうつくられる
堀内みどり「教学の立場からの家族再考」
『天理教
学研究』4
2号,天理教道友社,2
0
06年。
【web】
か』医学書院,2
0
01年。
辻村みよ子『代理母問題を考える』岩波書店,2
0
1
2
年。
「児童の権利に関する条約(子どもの権利条約)に
ついて」
,日本ユニセフ協会
デイヴィッド・ブロック(酒井泰介訳)
『ノーベル
賞受賞者の精子バンク 天才の遺伝子は天才を生
http : //www.unicef.or.jp/crc/about/index.html#
kenri 2
「DI Offspring Group(非配偶者間人工授精で生ま
んだか』早川文庫,2
0
0
7年。
根津八紘『代理出産 不妊患者の切なる願い』小学
れた子どもの会,DOG)
」
http : //blog.canpan.info/dog/
館,2001年。
フェリス・チェスラー(佐藤雅彦訳)
『代理母・ベ
ビーM事件の教訓』平凡社,1
9
93年。
「DIで生まれた方へのインタビュー:非配偶者間
の提供精子で生まれて:子の立場から考える:イ
毎日新聞取材班『こうのとり追って 晩産化時代の
妊娠・出産』毎日新聞社,2
0
1
3年。
ンタビュー!提供精子で生まれたことを知らされ
て…田口陽子さん(仮名)
,インタビュー"AI
【論文】
Dで生まれるということ…佐藤さん(仮名)
」
,
杉原徹「新優生学と教育―生殖系遺伝子改良と子ど
babycom,http : //www.babycom.gr.jp/ranshi /
もの〈他者〉性をめぐる考察を通して―」
(
『東京
大学大学院教育研究科教育学研究室紀要』第32
号,20
06年6月)
ranshi.html
日本産婦人科学会,
「非配偶者間人工授精に関する
見解」
才村眞理「生殖補助医療に伴うこどもの権利擁護と
http : / / www. jsog. or. jp / about us / view / html /
kaikoku/H 18 4 hihaigusha.html,
ソーシャルワーク」
http : //www.mhlw.go.jp./shingi/2002/07/s 072610 c.html
―――
「生殖補助医療実施医療機関の登録と報告
に関する見解」
遠矢和希「日本におけるDI(提供精子人工授精)
の親子関係について」
(大阪大学知識アーカイヴ
http://www.jsog.or.jp/ethic/
iryoukikantourokuhoukoku 20100422.html
http : //ir.library.osaka-u.ac.jp./dspace / ,2
0
06
【ニュース】
年)
「iPS細胞から卵子 生命の作製,倫理に課題 不
安田裕子「血のつながりのない家族を築くというこ
妊治療には期待」
『産經新聞』2
0
1
2年1
0月5日
と―非配偶者間人工授精を試み,その後,養子縁
「新型の着床前診断で1
6人出産…学会指針に違反新
組で子どもをもった女性の語りから―」
(
『立命館
型の着床前診断で1
6人出産…学会指針に違反」
『読
人間学研究』第1
1号,20
0
6年2月)
売新聞』2
0
12年7月1
1日
由井秀樹「日本初の人工授精成功例に関する歴史的
「不妊治療――卵子提供,日本も整備を 米で体外
Ethics
受精,野田議員語る」
『朝日新聞』20
1
0年1
1月6
検 討―医 師 の 言 説 を 中 心 に―」
(Core
Vol.8,201
2年)
幸順子・村上哲生・河口尚子「生命の線引き論を自
日
「インドで代理出産の赤ちゃん,夫婦離婚し帰国困
17
生殖補助医療と親子という関係について
難に」『朝日新聞』2
0
08年8月8日
ブランドン・ケイム「
『3人の親』を持つヒト胚を
作成」20
08年2月6日付 Wired Achieves,http :
//wired.jp/2
0
0
8/0
2/06/「3人 の 親」を 持 つ
ヒト胚を作成/
「人工精子・卵子 利用どこまで」NHKweb ニュ
18
ー ス,20
1
2年1
0月5日,http : //www 3.nhk.or.jp
/news/web tokushu/1005 02.html
「非配偶者間授精 子どもたちが『父親を知る権利』
訴え」
『毎日新聞』2
0
05年1
1月2
6日
「精子バンク 少年がネット活用,DNAで実の父
発見」
『毎日新聞』2
00
5年1
1月1
5日
Fly UP